強制渦領域内の乱流せん断応力
著者 葦埜 勲, 吉田 喜美, 前田 茂
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 33
号 1
ページ 147‑152
発行年 1985‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/4315
第33巻 第1号 昭 柿O年3月
強制渦領域内の乱流せん断応力
葦 埜 勲噂 吉 田 喜 美 * 前 田 茂紳
Turbulent Shearing S七ress in a Forced Vor七ex Region
工sao ASHINO
,
Kiyoshi YOSHIDA,
and Shigeru MAEDAReceived Feb. 9
,
1985 )Turbulence was formed in a rota七ing circular cylinder by force
,
and velocity dis七ribu七ions of three direc七ions and Reynolds shearing stress were measured wi七h ho七 wire anemome七er.On七he one hand
,
we solved numerically七he equa七ion of an angular momen七um. Comparing wi七h七he experimen七al results,
calcula七ed resul七s coincide with its ・Supposing Reynolds shearing s七ress of七angen七ial direc七ion differs from the expression used up to now,
experimen七al shearingS七ress agrees much wi七h七he calculated resul七s using τ=ρE θv/θr
1 ま え が き
著 者 ら は 円 管 内 乱 流 旋 回 流 れ の 減 衰 1 ) の 研 究 よ り , 強 制 渦 領 域 及 び 自 由 渦 領 域 に お け る 乱 流 せ ん 断 応 力 を 与 え る 式 の 符 号 が 正 負 異 な る 乙 と 及 び そ の 式 は 簡 単 な ブ ジ ネ ス ク の 式 で 与 え ら れ る こ と を , 角 運 動 量 方 程 式 の 数 値 計 算 と 実 験 結 果 と が よ く 一 致 す る 乙 と か ら 明 ら か に し たo
乙 れ に 対 し , 旋 回 流 の 場 合 , 従 来 か ら 軸 対 称 流 の 変 形 速 度 を 用 い て , 乱 流 せ ん 断 応 力 を 与 え て い る が , こ れ を 用 い る と 実 験 結 果 と 合 致 し な い こ と が わ か っ たo
* 機械工学科
帥 機 械 工 学 専 攻 大 学 院 生
148
本報告においては,これらの乙とを更に明確にするために,強制渦領域内の乱流せん断応力をX 形熱線風速計を用いて直接測定し,乙れと運動方程式を解析した結果と比較検討したものである。
乙の結果,著者の提案した乱流せん断応力を与える式は,従来から用いられている式に比べて,
極めて良好な結果を与えるものであることがわかった。
2 基磁方程式
流れは非圧縮性,軸対称,定常流と仮定する。図 1I乙示す座標系及び速度記号を用いて,円周方 向のナピエ・ストークスの運動方程式の時間的平均値をとると次式を得るO
。
(rv)目 。
(rv) rθ2 (rv) 1 a ( rv) , a 2 (rv川
U
一 一 。 一
r一 一 一
I千 山
YVθz一 一 一 一 一 ̲
' 1..#I 1 ‑一
ar文 一 可
~了。 rθz l!一 一 一 一 一 一 一 一 千 一 一 一 ‑ ‑ ‑ ‑ r ‑
J II av' w' au ' v ' , 2 u ' v ' I
r
卜一一一一+ーコ一一+一一一一│
…".・H・......・H・..……...・H・..(1)│ θ Z びr r
乙乙I乙, u, v, wはそれぞれ半径方向,円周方向,軸方向の速度成分の時間的平均値を, u',
v', w'は変動速度成分を, νは動粘度を表わす。
レイノルズせん断応力を渦動粘度E寄与用いて,前報と同じく次式で仮定する。
ー7 θ v ρu'v' =ρεπ.σr 一 │
ト………...・H・H・H・..…...・H・..….,.・H・..……...・H・.....・H・.....・H・..… (2)
ー
av一 ρv'W'=ρE弓言 │
強制渦領域を作るため円筒を角速度ωで回転させる。円筒の内半径をa,円筒の最大接線速度を vm(=ωa)として,物理量の無次元量を次式で定義する。
U
=
u/vm, V=
v/vmI
W=W/vm, R = r/a ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) Z
=
z/a , M=
R V式(2),(3)を式(1)に代入して整理すると次式を得る。
。
M, ~T aM 1r
a 2M 1 aM θ2M 1 θ 2 M a2Mロ百
+ W; f Z = 広 三 同 一 長 石 + 日 J
+δ1 aR2十九百五
T 凶 乙乙}乙,Q
~Z
z r
図 l 座標系と速度記号 図 2 熱線と速度との位置関係
NR,七=vma/ν E:t = ε / ν l
ト … … … . . . ・H・..…...・H・.....・H・‑・ (5) O 1 = E: t/NR, t' O 2 = E:七2/NR, t
であるo NR, tは回転レイノルズ数を, εtは無次元渦動粘度を表わす。
軸方向の変化が極めて小さいと仮定すると ,a/âZ~O , また管壁近くを除外すると,粘性項は省 略できるので,式(4)は次式のように簡単化される。
dM ..d2M
U一一一 = δ, で て す ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (6) dR ‑1 dR 4
境界条件は
R=O :M=O, R=l :M=l . (7) である。
3 乱れの測定法
図21i:示すように, r‑{}平面内に熱線(HW)を置き,熱線とr軸とのなす角を
8
とする。熱線 が感じる有効速度Ueは次式で表わされるoUe = { ( U sin s ‑V cos s)2
+
W 2 }ν2 . (8)有効速度Ueとリニアライザ出力電圧E との聞には
E=αUe ‑・… (9)
なる関係が成立つ。乙こに, αはリニアライザ変換係数である。出力電圧の直流分を9,交流分を ゲと表わすと式(8)より,その時間的平均値をとり,更に交流分のみとれば次式を得る。
9/2/α2
=
(U' sin s ‑v'ωs s)2+
W/2ととで, ß= π/4 及び 3π/4 のときの交流出力電圧を 9~ 及び ejとすると,
9~2/α2=;( ピイ )2
+W'29~2/α2=j( ピ +V')2
+ W/2瑚 1)を辺々差ヨ│くと
ーァ.̲I f ̲ ,吉 ‑,言、
‑u'v' =2a2~9íw ‑9iW)
. .00
‑・(L2l を得る。それゆえ, X形プロープを用いて,出力の MS値(自乗平均値)の差をとれば,式
ω
より,レイノルズ応力が求められる。
また,無次元レイノルズ応力は次式で与えられる。
. (13) ーァ‑:::t/ ^ ~~ 2 TT Iー っ {~ I吉 一7言、
τ ρu' v' /ρv!=‑u'V 一一ーヲーーす (9í~-9í~)
l I"'vm 2allv~ 、~4!
4 実験装置及び実験法
図 3Iζ 実験装置の概要を,図 4I乙供試円筒の詳細図を示す。円筒は内径 78.8mmのアクリル製で,
乙れをモータ軸に直接取付けるために,直径 25mmのアクリル円筒の周辺に厚さ 1mm,長さ約 27皿の
150
1 CTA 2 LlNEAR LlZER 3 DC METER 4 RMS METER
5 OSC IllO SCOPE
6 TEST CYLI NDER 7 AC MOTOR 8 TRAVERSABlE STAND
9 STROBO SCOPE
図3 実 験 装 置 の 概 要
図4 供試円筒の詳細図
鋼工ヨコ / L J
μ 叫 (0)
アルミ板4枚を十字形民取付け,との板の周辺を円筒に接着剤にて 固定しである。円筒の回転数はストロポスコープによって測定され
る。
( b)
乙の十字形の支持板が羽根の役目をして,円筒内に強制うずを作 る役目を果している。また, ζの影響で円筒内には軸方向の速度が 生じている。
図5 速度分布測定に用い た熱線プローブ 速度分布及び円周方向のレイノルズ応力は円筒の中央で測定した。速度成分の測定には,図5(a), (b)に示すように標準プロープをアクリル製パイプで囲み,軸方向速度のみ感知するようにした熱線 プロープを用いて測定した。乙の熱線は予め,風洞内で検定を行い風速と出力電圧との関係を調べ ておいた。
3 : メ 0 2
d噌AV
‑ a e '
X R
u
n u
qd
a z
‑ ‑
a
‑MH
. コ
0 . 1
oa o P
Q:U,O:V ,<D:1t' 図6 速 度 分 布
o o
年 2OFat‑04
1 . 0
O O R 1 . 0 R
ー一一一一ーblJeXJI4)一一‑‑blJ eX.(/7)
図7 円周方向のレイノルズ応力分布
レ イ ノ ル ズ 応 力 の 測 定 に は , ク ロ ス 形 及 び エ ン ド フ ロ ー 形 熱 線 プ ロ ー プ 壱 用 い , リ ニ ア ラ イ ザ よ りの出力を RMS メーターに入れ, MS値 を 交 互 に 読 み と っ た 。 測 定 は 円 筒 中 心 よ り 左 右 Ir., そ れ ぞ れ5回行い,その平均値をとった。
5 実 験 結 果 及 び 考 察
前 章 で 述 べ た 熱 線 プ ロ ー プ を 用 い て 速 度 分 布 を 測 定 し た 例 を 図6Ir.示す。半径方向の速度は小さ く, Rの 増 加 と 共 に 直 線 的 に 僅 か に 増 加 し て い る 。 円 周 方 向 の 速 度 成 分γは, Rが0.5以 上 で 急 に 増 加 し て い る 。 軸 万 向 速 度 成 分Wは , 中 央 部 で ほ ぼ 一 定 で , 管 壁 近 く で 増 加 し て い る 。 熱 線 プ ロ ー プ が 図5の よ う な 構 造 を し て い る の で , 管 壁 近 傍 は 測 定 で き な か っ た 。 回 転 数 は 1860rpmで,回転 レ イ ノ ル ズ 数 はN,Rtニ 2.06x 104であるo
次K, レ イ ノ ル ズ 応 力 ‑
u /
V/の 測 定 例 を 図7I乙示す。 RがOか ら 乱5付 近 ま で は , 殆 ん ど 零 に 等しいが,R>
0.5で急に増加している。図8Iと は , レ イ ノ ル ズ 応 力
‑v/
育7壱測定した例を示した。測定位置は, Z=
0.317, 0.635及び0.952 の3個 所 で あ る 。 壁 面 近 傍 を 除 く と , Z方 向 の 変 化 は 余 り み ら れ な い 。次Ir., 円 周 方 向 の 速 度 成 分Vの 実 験 値 を 用 い て , 角 運 動 量M(=RV)の 分 布 を 図9Ir.示したo
一 方 , 速 度 成 分Uの 実 測 値 を 用 い て , 式(6)を境界条件(7)のもとで数値解析を行った。乙のとき,
o
1=
1. 17 x 10‑3であった。乙の結果を図示すると,図9の 実 線 の よ う に な り , 実 験 結 果 と 極 め て よ く一致する。ま た , 式(2)に よ り 円 周 方 向 の レ イ ノ ル ズ 応 力 を 求 め る と ,
‑̲. ‑ー 0,fdM M¥
‑u /
V/ =ーよ卜一一一一l …・・…~. . ・.H・...・H・..……・・・…...・H・……・…・・・・・…...・H・‑….d4) R ¥dR RJで与えられる。
上 述 の 角 運 動 量 の 解 を 用 い て , 式 凶 の 値 を 求 め 図 示 す る と , 図7の実線のようになり, R= 0 ... 0.8の 聞 で は , 実 験 結 果 と 良 く 一 致 し て い る 。
x 1 0 ‑
3│
と 8 口
R.t=2.0o) 1(046
N
Rn
.t.
=
之Ooxl04 O芝
0 . 2
O
2
@
@ 0 0
@
O
@ O
@ O @
n u
0 . 1 4
1 . 0 R
(): Z ‑0.317 <D: Z‑0.635 0 :Z
=
0.952n u
n v
R 1 . 0
図8 軸 方 向 の レ イ ノ ル ズ 応 力 分 布 図9 角 運 動 量 分 布
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従来から旋回流れの場における円周方向の乱流せん断応力は,次式で仮定されているぞ τ=一 日V'=ρ e
(~工-斗
kσrrJ
上式を用いたとき,式(6)に対応する基礎式は次式で与えられる。
dM . .
r
d 2 M 1 dM1
U一 一 =o, Iで て す 一 一 一 一1・・H・H・‑…'"・H・…H・H・.....・H・‑….,.・H・...・H・H・H・......・H・..(11) dR ‑ 1 IdR~ R dRI
実測値Uの値を用いて,境界条件(7)のもとで上式を数値解析した結果を図9~乙点線で示した。実験結果と解 析結果とは一致しない。
次 l乙,無次元レイノルズ応力は式回より,
一一一 o,I dM 2M ¥
‑U'V'ニ ー ム │ 一 一 一 一 一l…H・H・......・H・‑…H・H・‑…H・H・..…H・H・‑…・・…H・H・‑…・・…間 R ¥dR R )
で与えられる。式闘の解析結果を用いて 上式より,レイノルズ応力を求めたものを図示すると図 7の点線のようになるO 乙れも実験結果と合致しない。
以上の結果,強制渦領域内の円周方向のレイノルズ応力は,著者の提案した式(2)で近似した方が,
従来より用いられている式~5) よりすぐれていることがわかる。
著者らは,先の報告において速度分布の減衰形状から,強制渦領域内の円周方向のレイノルズ応 力を式(2)で与える方がよいことを示したが,今回のレイノルズ応力の測定実験から,乙れが正しい
ことを更に裏付けることができた。
6 結 論
回転円筒内1[作られる強制渦領域内のレイノルズ応力の測定実験から,次のことが明らかになっ た。
円周方向のレイノルズ応力は,従来から用いられている式回は不適当であり,著者らの提案した 式(2)が適当である。
参 考 文 献
1)葦 埜 ・ 前 田 機 論 , 50 ‑ 460, B, (昭59 ,) 30泊
2) Gambi工工,W.R.,et al., Chem. Eng. Symp. Ser. 5. 127