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中学生の問題行動に対する意識とストレス反応に関する検討

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中学生の問題行動に対する意識とストレス反応に関する検討

大 木 桃 代* 神 田 信 彦**

The Relation between Junior High School Students' Awareness of Juvenile Delinquency and Problem Behaviors

and Stress Responses

Momoyo OHKI Nobuhiko KANDA

The purpose of this study was (1) to understand more clearly junior high school students' awareness and behavior in relation to delinquency and problem behaviors, and (2) to discuss about the relationships among the causes of stress, stress responses and awareness and behavior in relation to those behaviors. The subjects were junior high school students (male 125, female 89) who live in the Tokyo area.

The results of the study showed that almost all of the students thought criminal behavior was a bad thing and they have not done anything criminal. But there were different opinions about delinquency and school rules. Especially more than half of the students thought that using cosmetics and 'running away from home' were not bad things.

The result of factor analysis of awareness and behavior concerning delinquency, three factors, use of cosmetics, delinquency, and bulling were obtained. The stress response behaviors had four factors that showed irritation and anger, depression, truancy, and bullying. The result of multiple regression analysis suggested that the students who did not wish to attend school regularly when under stress accepted changing their appearances. And the students who tended to bully accepted the concept of delinquency and school problems.

Therefore, the possibility of stress management education for these stress responses in preventing the delinquency and problem behavior of junior high school students was suggested.

Key Words: delinquency and problem behaviors, stress responses, junior high school students

* おおき ももよ 文教大学人間科学部人間科学科

**かんだ のぶひこ 文教大学人間科学部人間科学科

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1998年に全国で補導された非行少年と不 良行為少年は1,124,787人であり、近年増加 の傾向にある(警視庁生活安全部,1999)。

さらに犯罪・非行の低年齢化や凶悪化、少年 の犯罪行為に対する罪悪感の無さ等、その質 の変化も教育・司法・行政様々な立場から大 きな問題とされている。西村(1991) によ ると、従来の非行・犯罪理論は非行少年を受 動的な存在とみなしていたが、「非行の一般 化」と言われる現状においては、非行少年は 種々の状況要因によってやむをえず非行に走 るのではない。彼らなりの判断に基づき、目 標達成に最適だから非行を行うという「非行 の自発性」を重視する必要があるとしている。

これを受けて國吉(1997)は、非行少年を 分析の対象として取り上げる場合、その見方 として「受動的な非行少年」と「能動的な非 行少年」の2つの立場を考えるべきであると している。 また石毛・糟谷(1987) は「退 屈を感じやすい若者が、覚醒を維持しようと する欲求に動機づけられ、センセーションを 求めて行う」現代型非行の一類型として「セ ンセーション追求型非行」を提唱している。

さらにこれらの行為はいわゆる問題視され ている少年だけではなく、大人側からは問題 がないと思われていた子どもたちが起こして いる場合も少なくない。全国の中学生を対象 とした調査(中学生の問題行動研究会,2000)で は、各問題行為の社会的基準からみた悪さの 度合いを挙げ、これらの行為を「刑法犯」

「特法犯」「不良行為」「校則違反」「健全育成 上の問題」に分けている。「健全育成上の問 題」は少年の健全育成の上問題となる行為で あり、「不良行為」は少年にのみ特有の補導 対象行為、また「特法犯(刑事特別法;刑罰 条項を有する法令に触れる行為)・刑法犯」

は少年のみならず、国民全体が処罰の対象と なる犯罪行為である。したがって、社会的基 準からすれば、行為の悪性度は「健全育成上 の問題」「不良行為」「特法犯・刑法犯」の順 に高くなっていくべきであり、中学生がこの

ような社会的基準(行為の悪性度のヒエラル キー)を理解しているかどうかを検討するこ とが大切であるとしている。つまり実際にこ れらの行動を実行に移すか移さないか、とい うことも検討すべき課題ではあるが、まず大 人の観点からみた非行・問題行動は現在の中 学生にとって同じような意味を持っているの か、という意識を検討することは、現在の非 行発生のメカニズムの理解や抑止を考えるに 当たり重要な課題である。もし両者間に違い があるのであれば、捉え方の違いはどの側面 において現れるのであろうか。彼らが非行・

犯罪行為を悪いことだと思いながらも行なっ ているのか、あるいは悪いことだとは思わず に行なっているのかを検討することは、今後 の非行問題を考えていく上で重要な第一段階 である。

さらにこのような非行・問題行動を生じる 子どもたちに関しては、いわゆる「キレる」

というような表現がされるストレス耐性やセ ルフコントロール能力の低下も大きな問題と されている。もしストレッサーに対する反応 が非行・問題行動に対する考え方に何らかの 影響を及ぼしているのであれば、将来的にス トレス・マネジメント教育によって彼らの非 行・問題行動に対する意識が変化する可能性 を見出すことができる。

そこで本研究では、中学生を対象に、 彼 らの「非行・問題行動」に対する意識と実態 を把握する、 ストレッサー及びストレス反 応と問題行動に対する意識との関連を検討す る、の2点を目的とした。

調査用紙:ストレスの有無を尋ねる1項目、

ストレスを感じた時の身体・感情反応24項 目、非行・問題行動に対する意識と経験の有 無を尋ねる各25項目、その他クラスの人間 関係や学校生活、家庭生活等を尋ねる16項 目の計91項目から成っていた。 ストレスの 有無、ストレスを感じた時の身体・感情反応、

学校生活・家庭生活に対しては「とても感じ

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る」「やや感じる」「あまり感じない」「全く 感じない」、非行・問題行動に対する意識は 問題だと「とても思う」「やや思う」「あまり 思わない」「全く思わない」、実態は「よく行 う」「何回か行ったことがある」「一度だけ行っ たことがある」「一度も行ったことがない」

のそれぞれ4件法で回答する形式であった。

本研究で取り上げた非行・問題行動を中学生 の問題行動研究会(2000) にしたがって分 類すると表1のようになる。

被調査者:東京都の公立中学生215名(男子

126名,女子89名)を対象とした。調査時期は 1999年9月〜12月であった。

非行・問題行動に対する意識と実態

非行・問題行動と言われる25の項目に対 して、悪いことだと思うかどうかという意識 を尋ねた結果を図1に示す。これらの行動の 中で、「シンナー・薬物を吸う」「家の金を持 ち出す」 などの犯罪行為に対しては、90%

前後の生徒が「問題である」と回答した。一 方、「マユ毛など顔を整える」「髪を染める」

などの外見に関する項目や「家出」に対して は、半数以上の生徒が問題行動であるとは思っ ていないということが示された。また各項目 の性差を検討したところ、「制服やかばんに

表1 非行・問題行動の法律的意義

非行・問題行動 問題行動の法律的意義

暴走行為をする シンナー・薬物を吸う

特法犯:集団危険行為

特法犯:毒劇物取締法・覚醒剤取締法 万引きをする

親・祖父母をなぐる 先生をなぐる

刑法犯:窃盗 刑法犯:暴行 刑法犯:暴行

無免許運転をする 道路交通法:無免許運転

家出をする 飲酒 喫煙

ナイフなどの武器を持ち歩く 家のお金を持ち出す

不純異性交遊をする 無断外泊をする 夜遊びをする

不良行為:家出 不良行為:飲酒 不良行為:喫煙 不良行為:凶器所持 不良行為:金銭持出し 不良行為:不純異性交遊 不良行為:無断外泊 不良行為:夜間徘徊 授業を妨害する

カンニングをする

制服やかばんに手を加える 学校に教科書を持ってこない

校則違反・学校管理上の問題 校則違反・学校管理上の問題 校則違反・学校管理上の問題 校則違反・学校管理上の問題 髪を染める・パーマをかける

化粧をする

将来自分の特性を害する可能性のある行為 将来自分の特性を害する可能性のある行為 先生を無視する

人をいじめる 人のものを隠す いたずら電話をかける

道徳的問題 道徳的問題 道徳的問題 道徳的問題

マユ毛など顔を整える 法律的・道徳的問題はない

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手を加える(t(210.63)=3.66, p<.001)」「マ ユ毛など顔を整える(t(208.58)=2.56,p<.05)」 の2項目は、女子の方が男子より肯定的に捉 えていた。

次に実際にこれらの行動を行ったことがあ るかどうか、という経験を尋ねた結果を図2 に示す。飲酒は40%以上、 夜遊びやいじめ は30%以上が経験していた。 とくに飲酒や 夜遊び等は10%前後が「よく」 行っている と回答した。また「人のものを隠す」「人を いじ める」 も20% 以上 が 「よ く」 ま たは

「何回か」行っていた。これらの行動の性差 を検討したところ、「先生をなぐったことが ある(t(125)=2.61,p<.05)」「家の金を持ち 出したことがある(t(213.00)=2.00,p<.05)」

「人のものを隠したことがある (t(211.71)=

4.67,p<.001)」は男子の方が多く経験して いた。一方「制服やかばんに手を加えたこと がある(t(144.87)=4.73,p<.001)」「化粧を したことがある(t(97.53)=6.64,p<.001)」

「学校をさぼったことがある(t(134.68)=5.61,

p<.001)」は女子の方が多く経験していた。

さらにこれらの因子構造を検討するため、

意 識 ・ 実態 各 25 項 目 それ ぞ れ の 因 子 分析

(主成分分析、プロマックス回転)を行った。

その結果、問題行動に対する意識は「化粧を する」「髪を染める」などの9項目から成る

『外見』、「シンナーを吸う」などの6項目から 成る『犯罪行為』、「人をいじめる」「授業を 妨害する」など7項目から成る『学校問題』

の3因子がそれぞれ抽出された(表2)。各 因子間の相関は、『外見』−『犯罪行為』間 がr=.59,『外見』−『学校問題』間がr=.60,

『犯罪行為』−『学校問題』間がr=.63であっ た。また実態も「人のものを隠す」「人をい じめる」などの8項目から成る『いやがらせ』、

「無免許運転をする」などの7項目から成る

『反社会的行動』、「化粧をする」「髪を染める」

などの4項目から成る『外見』の3因子が抽 出された(表3)。各因子間の相関は『いや がらせ』−『反社会的行動』間がr=.48,『い やがらせ』−『外見』間がr=.34,『反社会的 行動』−『外見』間がr=.37であった。各因 子ごとに因子負荷量が高く、因子を代表する

図1 非行・問題行動に対する意識

(5)

図2 非行・問題行動の実態

表2 非行・問題行動に対する意識の因子分析結果(主成分分析・プロマックス回転)

非行・問題行動 第1因子 第2因子 第3因子 共通性

* 髪を染める・パーマをかける 0.907 0.693

* 化粧をする 0.855 0.629

* マユ毛など顔を整える 0.800 0.508

不純異性交遊をする 0.756 0.569

* 制服やかばんに手を加える 0.748 0.518

学校に教科書を持ってこない 0.729 0.592

暴走行為をする 0.554 0.598

先生を無視する 0.552 0.476 0.660

夜遊びをする 0.539 0.575

家出をする 0.426 0.529

* シンナー・薬物を吸う 0.929 0.609

* 無免許運転をする 0.752 0.469

* 飲酒 0.731 0.660

* 家のお金を持ち出す 0.683 0.587

万引きをする 0.632 0.628

喫煙 0.609 0.598

無断外泊をする 0.495 0.633

* 人をいじめる 0.924 0.644

* 人のものを隠す 0.803 0.568

* 授業を妨害する 0.643 0.590

* カンニングをする 0.639 0.486

いたずら電話をかける 0.614 0.555

親・祖父母をなぐる 0.502 0.543

先生をなぐる 0.491 0.501

(*は各因子の代表として選択した項目)

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表3 非行・問題行動の実態の因子分析結果(主成分分析・プロマックス回転)

非行・問題行動 第1因子 第2因子 第3因子 共通性

* 人のものを隠す 0.786 0.482

* 人をいじめる 0.695 0.498

* いたずら電話をかける 0.627 0.381

カンニングをする 0.620 0.356

* 授業を妨害する 0.591 0.378

家のお金を持ち出す 0.539 0.375

先生を無視する 0.526 0.443

万引きをする 0.506 0.419

飲酒 0.423 0.471

* 無免許運転をする 0.767 0.536

* 家出をする 0.657 0.432

先生をなぐる 0.608 0.299

* 無断外泊をする 0.601 0.375

暴走行為をする 0.563 0.337

* 喫煙 0.549 0.402

ナイフなどの武器を持ち歩く 0.532 0.359

* 化粧をする 0.806 0.581

* マユ毛など顔を整える 0.800 0.591

* 制服やカバンに手を加える 0.700 0.486

* 髪を染める・パーマをかける 0.419 0.506 0.575

不純異性交遊をする 0.411 0.442 0.389

(*は各因子の代表として選択した項目)

内容の4項目を選択してα係数を算出したと ころ、意識は順にα=.84,.76,.78、実態はα=

.69,.65,.73の信頼性係数が得られた。そこで 各因子ごとにそれらの4項目を合計し、各因 子の代表値として今後の分析に用いた。

ストレッサーを感じたときの身体・感情 反応

ストレスを感じた時の身体・感情反応24 項目の実数を図3に示す。

これらの因子構造を検討するため、 24項 目の因子分析(主成分分析・プロマックス回 転)を行った。その結果、「腹が立つ」「大声 を出したい」など7項目から成る『苛立ち・

怒り』、「おなかが痛い」「食欲がない」など5 項目から成る『抑うつ』、「学校をさぼりたい」

など5項目から成る『学校逃避』、「人をいじ めたい」など4項目から成る『いじめ』の4 因子が抽出された(表4)。各因子間の相関は

『苛立ち・怒り』 −『抑うつ』間がr=.26,

『苛立ち・怒り』−『学校逃避』間がr=.55,

『苛立ち・怒り』 −『いじめ』間がr=.48,

『抑うつ』−『学校逃避』間がr=.28,『抑う つ』−『いじめ』間がr=.14,『学校逃避』−

『いじめ』間がr=.40であった。各因子ごとに 因子負荷量の高いもの4項目を選択してα係 数を算出したところ、それぞれα=.80,.70, .80,.70の信頼性係数が得られた。そこで各因 子ごとにそれらの4項目を合計し、各因子の 代表値として今後の分析に用いた。

ストレッサーの存在と身体・感情反応お よび非行・問題行動との関連

ストレッサーとして「クラスの人間関係の 良好さ」「いじめ」「受験」「多忙」「親からの 期待」を挙げ、それぞれのストレッサーの実 感によって4群に分けた(表5)。次に各4 群間で、身体・感情反応4因子、非行・問題

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表4 ストレスを感じたときの身体・感情反応の因子分析結果

(主成分分析・プロマックス回転)

非行・問題行動 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 共通性

* 腹が立つ 0.779 0.495

* 物を投げつけたい 0.776 0.635

* 大声を出したい 0.776 0.515

* 暴れたい 0.745 0.687

イライラする 0.740 0.514

物を壊したい 0.585 0.609

泣きたい 0.516 0.300

* おなかが痛い 0.689 0.486

* 食欲がない 0.667 0.493

* 頭が痛い 0.644 0.473

* よく眠れない 0.606 0.475

友人と話したくない 0.553 0.383

* 学校をさぼりたい 0.840 0.757

* 授業をさぼりたい 0.831 0.751

* 授業を受けるのがきつい 0.762 0.605

* 教室に入りたくない 0.467 0.523 0.486

先生に反抗したい 0.413 0.527

* 人をいじめたい 0.900 0.738

* 誰かをいじめたい 0.749 0.558

* 誰かとけんかしたい 0.593 0.592

* 動物をいじめたい 0.568 0.320

(*は各因子の代表として選択した項目)

図3 ストレスを感じたときの身体・感情反応

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表5 各ストレッサーを感じている人数(N=215)

ストレッサー とても思う やや思う あまり思わない 全く思わない

クラスの人間関係はうまくいっている 49 101 39 26

クラス内で他の人からいじめられている 11 19 44 141

受験は負担だ 84 64 45 21

毎日忙しい 65 79 50 21

親は自分に期待しすぎている 26 37 82 70

行動の意識・実際各3因子、計10因子の合 計得点の分散分析を行った。

「クラスの人間関係」ストレッサーの有無 による群間では、身体・感情反応の「抑うつ

(F(3,211)=2.83,p<.05)」において主効果が認 められた。多重比較の結果、人間関係がうま くいっていないと「とても感じる」群が「全 く感じない」群より多く抑うつを示した。

「いじめられ」ストレッサーの有無による 群間では、身体・感情反応の「苛立ち・怒り

(F(3,211)=5.41,p<.01)」「抑うつ(F(3,211)=

6.66,p<.001)」「学校逃避(F(3,211)=6.46,p<

.001)」「いじめ(F(3,211)=6.19,p<.001)」、非行・

問題行動に対する意識の「外見(F(3,210)=

3.29,p<.05)」において主効果が認められた。

多重比較の結果、いじめられていると「全く 感じていない」群の方が、他の群よりストレッ サー時の身体・感情反応は少なかった。

「受験」ストレッサーの有無による群間では、

身体・感情反応の「苛立ち・怒り(F(3,210)= 7.70,p<.001)」「学校逃避(F(3,210)=13.75,p<

.001)」「いじめ(F3,210)=3.91,p<.05」」に おいて主効果が認められた。多重比較の結果、

すべての項目において、受験を負担であると

「とても感じる」群が他の群よりこれらの反応 を多く示していた。

「多忙」ストレッサーの有無による群間で は、 身体・感情反応の 「苛立ち・怒り (F

(3,211)=3.59,p<.05)」「学校逃避(F(3,211)= 8.19,p<.001)」において主効果が認められた。

多重比較の結果、毎日忙しいと「とても感じ る」群は「全く感じない」群よりストレッサー を感じたとき怒りや学校から逃げたいという 感情を抱いていた。

「親からの期待」ストレッサーの有無によ る群間では、非行・問題行動の「犯罪行動

(F(3,210)=4.67,p<.01)」 において主効果が 認められた。多重比較の結果、親が自分に期 待しすぎていると「とても感じる」群の方が、

「あまり感じない」群よりこれらの行動を実 際に行っていた。

ストレスに対する反応と問題行動に対す る意識の関連の検討

ストレスに対する反応と問題行動に対する 意識との関連を検討するため、問題行動に対 する意識の3因子の得点を従属変数、ストレ スを感じたときの反応4因子の得点を独立変 数とした重回帰分析(ステップワイズ式、各 選択基準はPin=.05,Pout=.10) を行った。

その結果『外見』に対しては『学校逃避』

(β=.24,r2=.06)、『犯罪行為』と『学校問題』

に対しては 『いじめ』(β=.21,r2=.05;β=

.23,r2=.05)の各変数が選択された(図4)。

図4 問題行動に対する意識とストレス 反応の重回帰分析結果

問題行動に対する意識 ストレス反応

(9)

すなわち、ストレスを感じたときに「学校や 授業をさぼりたい」と思う生徒は、外見の変 化を肯定的に捉えているということ、またス トレスを感じたときに「人や動物をいじめた い」と思う生徒は、犯罪行為やいじめ、カン ニング等の行為に対して問題であるとは思っ ていないことが示された。

同様に問題行動の実態3因子の得点を従属 変数、ストレスを感じた時の身体感情反応4 因子の得点を独立変数とした重回帰分析を行っ た。 その結果、『いやがらせ』 に対しては

『いじめ』(β=.30,r2=.09)、『反社会的行動』

に対しては『いじめ』(β=.08)と『学校逃 避』(β=.19,r2=.09)、『外見』には『学校逃 避』(β=.30,r2=.09)が選択された(図5)。

すなわち、ストレスを感じたときに「人や動 物をいじめたい」と思う生徒は、実際に他者 に対していやがらせをしたり、反社会的行動 をとっていること、また「学校や授業をさぼ りたい」と思う生徒は実際に外見を変化させ、

反社会的行動の経験が多いことが示された。

非行・問題行動に対する意識と実態

行為の悪性度のヒエラルキーという観点か ら、犯罪行為に対しては成人と同様の規範意 識を持つが、不良行為や校則違反に関しては

彼ら独自の規範意識を持っていることが明ら かになった。たとえば「シンナー・薬物を吸 う」などの特法犯行為や「万引きをする」な どの刑法犯行為に対しては、ほとんどの生徒 が「問題である」と考えている。一方、校則 違反ではあるが犯罪行為とはならない「制服 やカバンに手を加える」や、将来自分の特性 を害する行為である「化粧をする」「髪を染 める」等外見に関する項目、および不良行為 である「家出」に対しては、半数以上の生徒 が問題行動であるとは思っていない。中学生 の問題行動研究会の調査でも、同様の内容に ついて「非常に悪い」〜「まったく悪くない」

の5段階評定で意識を調査したところ、「髪 の毛を茶パツにする」は28.6%が「悪くない」、 24.4%が「どちらでもない」とし、「家出」

は24.7%が「悪くない」と回答していた。し たがって本研究で得られた結果はこの全国調 査と同様の傾向を示しており、現在の中学生 一般の傾向と考えることができよう。近年化 粧をしたり髪を染める高校生が急増し、マス コミでもその映像がよく取り上げられている。

また数日間親に無断で友人宅などに外泊する

「プチ家出」なども珍しくないという。この ような流れが中学生の意識にも反映し、外見 を変化させたり外泊することに抵抗が少ない 生徒が多くなってきたのかもしれない。ある いはこれらの行為は他人に迷惑をかけるわけ ではなく個人の自由であると考えていたり、

年長者に対する反抗の象徴として捉えられて いるのかもしれない。

実態としては、全体的にはこれらの行動は 多くはないが、 飲酒や夜遊びなどは10%前 後がよく行っており、今後大きな問題に発展 する可能性が示唆されている。また道徳的問 題であるいじめについては、意識レベルとし てはかなり多くの生徒が問題であると答え、

その程度は犯罪行為と同程度の割合である。

それにもかかわらず、実態としていじめ行為 が少なからず生じているということは注目す べきことである。 國吉(1997) は自己提示 や印象操作という観点から非行を捉え、自信

図5 問題行動の実態とストレス反応の

重回帰分析結果

ストレス反応

問題行動の実態

(10)

のなさや自分の弱さを隠すために、ことさら 虚勢を張ったり強がったりするという自己呈 示的な心理機制を強調している。また、他者 に嫌われたくない、周囲から承認されたいと いう思いから、同調的に振舞うことも指摘し ている。いじめについても同様の解釈を行う ことができる。あるいはセルフコントロール の未熟さによる行動であるとも解釈できる。

ストレス反応と問題行動に対する意識の 関連の検討

本研究では、特定のストレス反応の生じや すさが、ある問題行動に対する意識及び実態 に影響しているかどうかを検討することを目 的のひとつとした。もしこれが成り立つので あれば、逆に問題行動に対する意識の変容や 実行の予防を試みる際に、ストレス・マネジ メント教育を加えることにより、より効果が 高まる可能性があるからである。

今回の調査から、ストレッサーに対して怠 学傾向を示す中学生は外見の変化を肯定し、

他者に対する攻撃性を抱く中学生は犯罪行為 や学校での他者への攻撃性を肯定しているこ とが明らかになった。したがってこれらのス トレス反応への適切な対処法の指導や援助を 行うことによって、非行・問題行動に対する 意識の変容が可能になり、最終的には実際の 問題行動生起の予防に役立つ可能性があると いえよう。

いじめに関しては、ストレッサーに対して 苛立ちが生じ、その結果弱者に対するいじめ という行動が生じているという可能性、また 自分の弱さを隠すためにより弱い存在に攻撃 を向けたり、先の意識と実態とのギャップの ように自分が被害者にならないために加担し ているという可能性も考えられるが、本研究 の結果はそれらを支持しなかった。これは石 毛・糟谷(1987)が指摘した「センセーショ ン追求型非行」と同様、現在のいじめは単に

「おもしろい」からいじめているというよう に、罪悪感をまったく抱いていない者も多い という可能性を示唆している。また自分が行

う「いじめ」について、「正当な理由がある」

と考えていることや、あるいは時に自分の行 為を対象化できないために「いじめ」である という認識ができないという可能性も指摘で きよう。問題行動に対して「悪いことをして いる」という意識がなければ、その行動は予 防・改善されない。今までのストレスマネジ メント教育は、怒りや抑うつなどのストレス 反応の生じやすさに対して応用が試みられて きた(竹中,1997など)。しかし非行・問題行 動に対する意識の変革が生じている現在にお いては、そのような自己に向かう反応とは別 に、逃避傾向や他者に対する接し方等に対す るソーシャル・スキル・トレーニングの必要 性も検討すべきであると考えられる。

引用文献

石毛博・糟谷光昭 1987 Sensation seekingと非 行 犯罪心理学研究,25 ,1-18.

警視庁生活安全部 1999 平成10年少年非行の概況 國吉真弥 1997 自己呈示行動としての非行 ―構 造化面接の結果から― 犯罪心理学研究,35 , 1-14.

西村春夫 1991 能動的非行少年のイメージ 比較 法制研究,14,81-125.

竹中晃二(編) 1997 子どものためのストレス・マ ネジメント教育 北大路出版

中学生の問題行動研究会 2000 平成11年度児童環 境づくり等総合調査研究事業研究報告書 中学生 の問題行動の背景にある心理社会的要因に関する 調査研究

付記 本研究の一部は日本教育心理学会第42回総会

(2000)において発表された。なお本研究にご協力 賜りました中学校の先生方並びに生徒の皆さんに深 く感謝申し上げます。またデータ収集には篠原未和 子氏の協力を得た。ここに感謝の意を表します。

参照

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