博 士 ( 工 学 ) 城 戸 章 宏
学 位 論 文 題 名
雰囲気 LIF 法による間欠ガス噴流の 画像計測と特性解明に関する研究
学位論文内容の要旨
近年 ,各 種燃 焼機 器か らの 排出 ガス,あるいはそれに起因する環境問題に対 し て社 会的 関心 が極 めて 高く なっ ており,例えばエンジン等においても混合気 形 成 な ら び に 燃 焼 過 程 の 解 明 が 更 に 強 く 求 め ら れ て い る , 本論 文は ,特 に間 欠ガ ス噴 流の 混合過程を定量的に解明することを目的とし て ,レ ーザ 誘起 螢光 法を べー スと する噴流濃度・温度同時定量計測手法,すな わ ち雰 囲気LIF法 を開 発し ,更 にこ の手 法の 適用 によ って 間欠 ガス噴流の混合 推 移特 性, 特に それ と各 種噴 射条 件,雰囲気ガス温度,および噴流衝突壁面温 度 と の 関 連 に っ い て 論 述 し た も の で あ り , 全8章 か ら 構 成 さ れ て い る . 第1章は 序論で あり ,本 研究 の目 的お よび 得ら れた 結果 の概 要について述べ る と共 に, 研究 の背 景, なら びに 間欠噴流の濃度・温度計測法および噴流特性 に関する研究動向について記述した.
第2章で は,本 研究 の供 試螢 光物 質で ある ヨウ 素の 螢光 特性 解明のための装 置 ,噴 流の 噴射 系と 観測 容器 ,濃 度・温度画像計測光学系,および画像処理装 置 等に つい て記 述し た. また ,実 験に用いた噴流の流速計測法,ならびに温度 計測法にっいても触れた.
第3章 に お い て は, 本研究 で開 発し た雰 囲気LIF法によ る噴 流濃 度・ 温度 の 画 像計 測理 論に っい て論 述し た. 本手法による噴流濃度計測では濃度を螢光物 質 の螢 光強 度か ら解 析的 に決 定し 得るため,濃度の絶対校正が不要になること
, 温度 計測 にっ いて は, 螢光 物質 の発光特性に対する波長およぴ温度依存性を 応 用す るこ とに よっ て, 温度 の瞬 時画像計測が可能となること等に対して理論 背景を提示した.
第4章で は,供 試螢 光物 質で ある ヨウ 素の 吸光 係数 およ び量 子収率について 記 述し た. ヨウ 素は 可視 域に 吸光 バンドを有しており,かっモル吸光係数が常 温でおよそ1 80ni2/rriolと非常に高く,また発光強度も高いためLIF計測に適合し て いる .ヨ ウ素 の吸 光係 数は ,525nm付 近で 最大 値と なる 波長 特性を示すこと
. 温度 の上 昇あ るい は圧 カの 減少 に伴って全般に減少する特性を示すものの,
580nmより も長波 長で は温 度に よっ てほ とん ど変 化し ない こと ,また共存ガス
の種類にはほとんど依存しないこと等を示した.
一方, ヨウ 素の 量子 収率 は温 度,圧力,共存ガス,および螢光波長の関数と し て 与 え ら れ ,理 論的 には アイ ンシ ュタ イン のA定 数, クエ ンチ ングQ,お よ び無輻射速度定数k。,に支配されるが,なかでも支配的因子はクエンチング,す な わち励 起ヨ ウ素 分子 への 共存 分子の衝突による失活であって,共存分子の巨 大 化に伴 って 低下 する こと を明 らかにした.従って,共存ガスがへりウムの場 合 におけ る量 子収 率は 極め て大 きくなるが,その反面ヨウ素濃度増加に伴う消 光現象,すなわち濃度消光が顕著となることを示した.
量子収 率の 温度 特性 に関 して ,特 にア ルゴ ン雰 囲気 にお ける特定の2波長で の 量子収率比には温度依存性が存在することを見出した.すなわち,雰囲気LIF 法 におい て特 にア ルゴ ンガ スを 雰囲 気と した 場合 ,2っ の異 なる波長での螢光 画 像 強 度 比 か ら 温 度 の 画 像 計 測 が 可 能 と な る こ と を 示 唆 し た . 第5章 に お い て は,雰 囲気LIF法を 噴流 濃度 計測に 適用 する 際の 実験 条件 の 設 定方法 ,な らび に各 種計 測精 度について論述した.すなわち本研究で使用し た 雰囲気 螢光 法で は, 観測 容器 中で螢光が減衰するため,供試観測容器のサイ ズ および 螢光 物質 の吸 光係 数に 応じた螢光物質濃度を特定することによって濃 度 計測の 精度 向上 が可 能に なる こと,またその特定によって本手法による螢光 強度の計測精度は95%以上になること等を示した.
ー方, 雰囲 気LIF法 によ る温 度計測 では ,螢 光観 測レ ンズ 系の集光効率を位 置 毎に補 正す るこ とが 計測 精度 上非常に重要であることを明らかにすると共に
,この補正による温度計測の妥当性をも示した.
また, 雰囲 気LIF法 によ る質 量噴流 濃度 の計 測に おい ても ,温度計測の場合 と 同様に ,集 光効 率の 補正 が必 要不可欠であること.また噴流濃度の計測精度 は ,希薄 域で 悪化 する もの の, 螢光物質濃度および温度の計測精度の向上によ って改善し得ること等を示した.
第6章 で は , 雰 囲気LIF画 像か ら得 られ た噴 流中心 軸断 面で の噴 流濃 度分 布 を 基に解 析さ れる ,間 欠噴 流の 形状および濃度場の推移特性について論述した
. 間欠ガ ス噴 流の 構造 はそ の先 端部分が傘状に半径方向に拡がること,雰囲気 ガ ス の 取 り 込 み は 傘 状 構 造 の 上 流 側 で 著 し く な る こ と 等 を 示 し た , 噴流中 心軸 上に おけ る噴 流濃 度のスペクトル解析から,噴流の混合は,波数 の 大きな 濃度 成分 のパ ワー スペ クトルの増加,っまり小規模渦の増加によって 顕著となることを明らかにした.
更に, 各種 噴射 条件 およ び噴 射ノズルの設計諸元と噴流濃度との相関につい て ,噴流 全体 を平 均し た濃 度, すなわち平均噴流濃度は,噴射ガスおよび雰囲 気 ガスの 密度Piお よびpa, 噴孔 径D,噴流の動粘性係数および渦動粘性係数vお よ び vt, 噴 射 後 の 経 過 時 間 Atか ら 構 成 さ れ る パ ラ メ ー タ , っ ま り (Pi/Pa )(A2/((V+Vt )At)によってー義的に記述し得ること,またこのパラメータの減 少 に 伴 っ て 平 均 噴 流 濃 度 は 単 調 に 減 少 す る こ と 等 を 提 示 し た .
第
7章においては,雰囲気LIF 法による噴流温度・濃度同時計測手法を用い て間欠自由噴流および壁面衝突噴流の特性を解明した結果について論述した,
まず,本研究で用いた手法によって噴流の温度・濃度の同時計測が可能である ことを実証すると同時に,噴流内部では温度と濃度とは単純な相関関係にある こと,すなわち単純な物質のエンタルピー混合によって温度場が概ね決定され ること等を示した.
一方,壁面衝突噴流においては,自由噴流に比べて壁面衝突噴流での雰囲気 巻き込みが著しいこと,衝突壁面の温度によって壁面衝突後の噴流の混合過程 が著しく影響を受け,特に壁面上の噴流先端部では壁面温度が高いほど混合が 促進されること等を明らかにした.
第
8章 は 本 研 究 の 結 論 で あ っ て , 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し た .
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
雰囲気 LIF 法による間欠ガス噴流の 画像計測と特性解明に関する研究
近 年 、 各 種 燃 焼 機 器 に お い て は 排 出 ガ ス 、 お よ び そ れ に 起 因 す る 環 境 問 題 に 対 し て 社 会 的 関 心 が 極 め て 高 く な っ て お り 、 燃 料 の 混 合 気 形 成 な ら び に 燃 焼 過 程 の 解 明 が 強 く 求 め ら れ て い る 。
本 論 文 で は 、 特 に 間 欠 ガ ス 噴 流 の 混 合 過 程 を 定 量 的 に 解 明 す る こ と を 目 的 と し て 、 レ ー ザ 誘 起 螢 光 法(LIF法 ) を べ ー ス と す る 噴 流 濃 度 ・ 温 度 同 時 定 量 計 測 手 法 、 す な わ ち 雰 囲 気LIF法 を 提 案 す る と 共 に 、 こ の 手 法 の 適 用 に よ っ て 間 欠 ガ ス 噴 流 の 混 合 推 移 特 性 を 解 明 し た 結 果 に つ い て 取 り ま と め て い る 。 第1章 は 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 目 的 お よ び 得 ら れ た 結 果 の 概 要 に つ い て 述 べ る と 共 に 、 研 究 の 背 景 、 な ら び に 間 欠 噴 流 の 濃 度 ・ 温 度 計 測 法 お よ び 噴 流 特 性 に 関 す る 研 究 動 向 に っ い て も 記 述 し て い る 。
第2章 で は 、 本 研 究 の 供 試 螢 光 物 質 で あ る ヨ ウ 素 の 螢 光 特 性 を 解 明 す る た め の 装 置 , 噴 流 の 噴 射 系 と 観 測 容 器 , 濃 度 ・ 温 度 画 像 計 測 光 学 系 , お よ び 画 像 処 理 装 置 等 に つ い て 記 述 し て い る 。
第3章 に お い て は 、 間 欠 ガ ス 噴 流 に お け る 濃 度 お よ び 温 度 を 瞬 時 画 像 計 測 す る た め の 雰 囲 気LIF法 に 対 す る 理 論 背 景 に つ い て 論 述 し て い る 。 す な わ ち 、 雰 囲 気 内 蛍 光 物 質 の 螢 光 強 度 を 基 に し た 濃 度 画 像 計 測 と 、 そ の 発 光 特 性 に お け る 波 長 お よ び 温 度 依 存 性 を 応 用 し た 温 度 画 像 計 測 と に 対 す る 可 能 性 を 理 論 上 か ら 示 唆 し て い る 。
第4章 で は 、 供 試 螢 光 物 質 で あ る ヨ ウ 素 の 吸 光 係 数 お よ び 量 子 収 率 に つ い て 論 述 し て い る 。 ヨ ウ 素 の 吸 光 係 数 は 、 温 度 の 上 昇 あ る い は 圧 カ の 減 少 に 伴 っ て 全 般 に 減 少 す る 特 性 を 示 す が 、580nmよ り も 長 波 長 で は 温 度 に よ っ て ほ と ん ど 変 化 し な い こ と 、 ま た 共 存 ガ ス の 種 類 に ほ と ん ど 依 存 し な い こ と 等 を 明 ら か に
登 勝
一 巌
献
本 谷
藤 崎
宮 木
伊 山
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
している。
一方,ヨウ素の量子収率、特にその温度特性について、アルゴン雰囲気では 特定の2 波長における量子収率比に温度依存性が存在することを見出し、雰囲 気LIF 法において2 っの異なる波長での螢光画像強度比から温度の画像計測が 可能であることを具体的に提示している。
第5 章においては、雰囲気LIF 法を噴流濃度計測に適用する際の実験条件の 設定方法、および各種計測精度について論述している。すなわち雰囲気LIF 法 では、観測容器中で螢光が減衰するため、供試観測容器のサイズおよび螢光物 質の吸光係数に応じた螢光物質濃度を特定することにより濃度計測の精度が、
また、螢光観測レンズ系の集光効率を位置毎に補正することにより温度計測の 精 度 が そ れ ぞ れ 大 幅 に 改 善 さ れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。
第6 章では、雰囲気
LIF画像から得られた噴流中心軸断面での噴流濃度分布 を 基 に 、 間 欠 噴 流 の 形 状 あ る い は濃 度 場の 推 移特 性 を解 明 して い る 。
特に、各種噴射条件およぴ噴射ノズルの設計諸元と噴流濃度との相関にっい ては、噴流全体を平均した平均噴流ガス濃度が、噴流ガスおよび雰囲気ガスの 密度、ノズル噴孔径、噴流の動粘性係数および渦動粘性係数、噴射後の経過時 間から構成されるーっのパラメータによって一義的に記述し得ること等を提示 している。
第7 章では、雰囲気
LIF法によって間欠ガス噴流の温度と濃度の同時画像計 測が可能であることを実証すると同時に、間欠自由噴流および壁面衝突噴流の 特性を解明している。特に、壁面衝突噴流においては、自由噴流に比べて壁面 衝突噴流での雰囲気巻き込みが著しいこと、衝突壁面の温度によって壁面衝突 後の噴流の混合過程が著しく影響を受け、壁面上の噴流先端部では壁面温度が 高 い ほ ど 混 合 が 促 進 さ れ る こ と 等 を 明 ら か に し て い る 。
第
8章 は 本 研 究 の 結 論 で あ っ て , 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し て い る 。
これを要するに、著者は、間欠ガス噴流の画像計測手法を確立すると共に噴 流特性に関わる新知見を得ており、内燃機関工学、燃焼工学に貢献するところ 大なるものがある。