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畑作における機械利用組織の展開に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 松 本 浩 一

学 位 論 文 題 名

畑作における機械利用組織の展開に関する研究

―網走市の機械利用組織を対象として一

学位論文内容の要旨

こ れまで北 海道の 畑作農業は、経営の規模拡大とともに機械化の大型化が図られてきたが、

その中で農家間組織である機械利用組織は、複数の作物生産にわたる機械の所有と作業という ニつの側面から農業経営を支援してきた。その一方で、多くの機械利用組織が、組織参加農家 の個々の経営展開の事情等によって継続されることなく中止にいたってきている。しかしなが ら、農産物価格の低迷など、今後農業経営のおかれた経済的条件は好転するとはいえず、ます ますコスト低減を図る工夫が不可欠であり、そのためにも農家間組織のあり方に関する検討を 行 う 中 で 新 知 見 を 導 き 出 し 、 新 た な 認 識 を 培 っ て お く 必 要 性 が あ る 。   本論文は、そのような農家間組織の代表的事例のひとつである畑作地帯における機械利用組 織に焦点を当て、組織参加の農家構成のあり方から機械利用組織を類型化しながら、組織結合 カの強い類型から弱い類型への変容をもたらす要因を、構成農家個々の経営展開と組織運営の あり方との関係の中に見い出し、そこから機械利用組織の管理運営のあり方に関する知見をう ることを目的としている。分析対象は、種々多様なかたちを示しているが、現在においても機 械 利用組織 が活発 に活動しているとみられる網走市における49の機械利用組織すべてを取り 上げ、実態調査に基づく実証分析を試みている。

  第1章( 問題意 識)に続く第2章では、既存の統計資料を用い、同じく畑作地帯と位置づけ られる斜網地域および十勝地域との比較分析により、考察対象の網走市における農業構造の特 徴を析出している。すなわち網走市農業は、北海道の畑作農業全般にみられる面積規模の拡大

・大型機械化の進展という動向のもと、麦類、馬鈴しよ、てん菜の3作を基幹作目とする原料 農産物生産地帯という特徴をもっが、この原料農産物生産地帯という性格は、同じく畑作地帯 である十勝地域よりもより強くもつこと。網走市特有の特質として、大型機械化の推進におい て は機械利 用組織 の存在が、他の地域よりもより大きく関与してきたことを確認している。

  第3章では、機械利用組織とその構成農家の結合関係を、複数の機械の所有とそれらの機械 作業の状況から、四つの組織類型を抽出し、@すべての機械の所有と作業を共同している全面 共同型、◎すぺてのまたは一部の機械の所有と一部の作業を共同している部分共同型、◎すべ てのまたは一部の機械の所有のみを共同している持ち回り型、@一部の機械を共同所有として いるが共同利用はまったく行っていない名目型、に分類した。

  次いで、これら組織類型の現段階的特徴を、機械利用組織の構成農家の経営面積と土地利用、

機f戒利用組織の管理運営の中から経理、機械利用、共同作業に関して整理することにより、各 類型の性格の特徴と位置づけを明らかにし、そこから各類型の組織がかかえる構成農家間の組 織調整課題とメリット・デメリットを抽出している。

  第4章では、現在の各組織類型が組織化当初においては部分共同型から開始され、その後、

全面共同型へと組織強化、あるいは持ち回り型さらに名目型へと推移してきた変容過程を示し、

@全面共同型、◎部分共同型、◎持ち回り型、@名目型という序列で組織結合カの強弱を整序

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し、網走市においては、この間、全体的には全面共同型から組織結合カが弱い類型へと組織結 合カの低下傾向が基調であったととらえた。さらに、組織結合カがとくに低下してきた機械利 用組織を抽出し、組織結合力低下の要因 を、第1に構成農家の経営面 積の拡大、第2に構成農 家の新規作物導入といった、畑作農家個々の経営展開における条件変化にあることを実証的に 明らかにしている。

  第5章では 、前章で明らかになった構成農家における経営面積の拡大という組織結合カ低下 の側面に焦点を当て、個々の経営展開条件変化に対する機械利用組織の対応のあり方を検討し ている。その結果、経営面積拡大に対す る機械利用組織の対応には、第1に農地取得に対する 集団的対応、第2に共同耕作地の活用、第3に作業の専任オベレー夕制という諸側面があり、

そこにおける対応の相違が、組織変容の糸口となることを指摘している。農地取得の集団的対 応は、構成農家間の経営面積格差を縮小させる方向で農地配分することにより、機械導入と機 械の利用に係わる費用負担と出役の公平性という調整課題の発生を防ぐものであり、共同耕作 地は、離農など構成員規模の変動による機械装備の能率低下の防止と構成員の能カに応じた農 地の時差的取得を可能にするものであり、専任者による作業請負は、構成農家個々が機械を利 用する場合に発生する利用順序の調整課題を解決するものであり、また出役の不公正性など種 々の調整課題の顕在化を防ぐ機能をもつことを明らかにしている。

  第6章では 、組織結合カ低下のもうひとつの側面であった新規作物の導入、とくに野菜作導 入という側面に焦点を当て、個々の経営展開条件の変化に対する機械利用組繊の対応のあり方 を検討した。個人あるいは一部農家による野菜導入に対する機械利用組織の管理運営上の対応 として、第1に野菜の品目選択など、野菜導入によって機械利用組織全体の共同作業に支障を きたさなぃという条件設定、第2に野菜作付に対する厳しい作付上限 面積の設定であり、第3 には機械利用組織としての野菜導入に取り組む場合には、数年間の試作期間を設け、一般畑作 物の作業体系の中に完全に組み入れることが可能なことを全体で確認の上、導入に踏み切って いることを指摘している。

  以上の実態把握を踏まえ第7章(結論)では、畑作経営展開に対する機械利用組織運営のあ り方に関して以下のような知見を導出している。

  第1に、四 つの組繊類型はそれそれ調整課題に相違があり、とくに部分共同型が最も多くの 調整課題をもつ。個別対応と組織集団との間の作業遂行や出役のあり方において合理的調整方 法がなかなか見っからないからである。今後、構成農家が個別でさらに経営面積の拡大や新規 作物の導入・拡大を行うならば、より自由裁量余地の大きい持ち回り型ヘ移行する可能性が大 きい。

  第2に、全 面共同型における組織展開は、あらゆる側面での調整課題をもっものであるが、

個々の構成農家の経営面積拡大や新規作物導入の問題に対しても、基本的に組織全体の合意に よる農家間の公平性を保つ方法によって組織の結合力低下を回避してきたといえる。このよう な機械利用組織の組織強化への対応は、構成農家個々の自由裁量の余地を減少させるが、個別 展開による経済的リスクの回避あるいはコスト削減効果の方により大きな成果を見いだしてき たためといえる。

  第3に、これまで野菜作による収益性確保は個別的裁量能カによるところが多いと認識され、

そのために機械利用組織自体による取り組みは困難であると考えられてきた。しかし本論文で 示したように、完全共同型機キ戒利用組織による野菜導入の場合は、機械導入に対する平等出資、

利用量に応じた利用経費の負担、共同作業の編成方法など、従前からの基幹作目である一般畑 作物に関する管理運営方法がそのまま適用可能であると全員が確認するものとなっており、特 別な調整課題をさらに発生させずに野菜導入を実現させていた。

  以上のように本論文は、野菜作においても諸条件(機収作目であることなど)を満たすなら ば、機f成利用組織による取り組みが可能であることを具体的に明らかにしながら、今後、野菜 作の機キ成化技術開発が進展するならば作目の選択範囲はさらに広カsる可能性のあることを示唆

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している。同時に、個別的経営展開を補う組織化にあっては、組織機能の低下をもたらす所有 と作業にかかわる調整課題の発生を可及的に回避する仕組みを賦与しておくことが肝要である と指摘するものとなっている。

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学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助教授

黒河 太田原 長南 志賀

学 位 論 文 題 名

    功 高昭 史男 永一

畑作 における 機械利 用組織の展開に関する研究

一網走市の機械利用組織を対象として一

  本 論 文 は 、 図11、 表34、 弓 | 用 ・ 参 考 文 献87を 含 み 、7章 か ら な る 総 頁 数117の 和文論文 である 。別に5編の参 考論文 が添えら れてい る。

  本論文は 、農家 間組織の 代表的 事例のひ とつで ある畑作 地帯にお ける機 械利用組織に焦 点を当て 、組織 結合カの 強い類 型から弱 い類型へ の変容 をもたら す要因 を、構成農家個々 の経営展 開と組 織運営の あり方 との関係 の中に見 い出し 、そこか ら機械 利用組織の管理運 営に関す る知見 をうるこ とを目 的として いる。分 析対象 は、現在 におい ても機械利用組織 が活発に 活動し ていると みられ る網走市 の機械利 用組織 を取り上 げ、実 態調査に基づく実 証分析を 試みて いる。

  第1章( 問 題 意識 ) に 続く 第2章 では 、 既存の統 計資料 を用い、 考察対象 の網走 市にお ける農業 構造が 、原料農 産物生 産地帯と いう特徴 を同じ <畑作地 帯であ る十勝地域よりも より強く もち、 それを推 進して きた背景 には、機 械利用 組繊によ る大型 機械化の推進が、

他の地域 よりも より大き く関与 してきた ことを指 摘して いる。

  第3章で は 、機 械利用 組織とそ の構成 農家の結 合関係を 、複数 の機械の 所有状 況と共同 作業の状 況から 四つの組 織類型 として抽 出し、こ れら組 織類型に おける 構成農家の経営面 積規模お よび土 地利用と 、組織 の管理運 営すなわ ち経理 、機械利 用、共 同作業に関して整 理しなが ら、各 類型の性 格と位 置づけを 明らかに してい る。

  第4章で は 、部 分共同 型から開 始され た各組織 類型が、 その後 、全面共 同型へ と組織強 化あるい は持ち 回り型さ らに名 目型へと 推移して きた変 容過程を 示し、 @全面共同型、◎

部分共同 型、◎ 持ち回り 型、@ 名目型と いう序列 で組織 結合カの 強弱を 整序し、網走市に おいては 、この 間、全体 的には 組織結合 カが弱い 類型へ と結合カ の低下 傾向が基調であっ たこ と 。 さら に そ の要 因 を 、第1に 構 成農 家におけ る規模 拡大、第2に構 成農家 の新規作 物導入と いった 、構成農 家の経 営展開に おける条 件変化 にあるこ とを実 証的に明らかにし ている。

  第5章で は 、前 章で明 らかにし た構成 農家にお ける経営 面積の 拡大とい う組織 結合力低

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下の側面に焦点を当て、経営面積拡大に対する機械利用組織の対応には、第1に農地取得 の集団的対応、第

2

に共同耕作地の活用、第

3

に作業の専任オペレー夕制という諸側面が あり、そこにおける対応の相違が、組織変容の糸口となることを指摘している。農地取得 の集団的対応は、構戚農家間の経営規模格差を縮小させ、機械導入と利用に係わる費用負 担と出役の公平性という調整課題の発生を防ぐものであり、共同耕作地は、離農など構成 員規模変動による機械装備の能率低下の防止と構成員の能カに応じた農地の時差的取得を 可能にするものであり、専任者による作業請負は、利用順序の調整課題を解消し、また出 役の不公 正性など種 々の調整 課題の顕 在化を防 ぐ機能を もつこと を明らかにした。

  

6

章では、組織結合力低下のもうひとつの側面であった新規作物の導入、とくに野菜 作導入という側面に焦点を当て、個人あるいは一部農家群による野菜導入に対する機械利 用組織の管理運営上の対応として、第1に野菜の品目選択など、野菜導入によって組織の 共同作業に支障をきたさないという条件設定、第2に野菜作付に対する厳しい面積上限設 定、第3には組織全体で野菜導入に取り組む場合には、数年間の試作期間の設定、一般畑 作物作業体系への組み入れ可能性を、構成員全体で確認すぺきであることを指摘している。

  

以上の実態分析を踏まえ第7章(結諭)では、畑作における機械利用組織運営のあり方 に関して以下のような知見を導出している。

  

第1に、四つの組織類型の中で、とくに部分共同型が最も多くの調整課題をもち、今後、

組繊的対応のないままに構成農家が個別で経営面積拡大や新規作物の導入・拡大を行うな らば、より自由裁量余地は大きくなるが、より組織結合カの弱い持ち回り型ヘ移行する可 能性が大きいこと。

  

2

に、全面共同型における組織展開は、個々の構成農家の経営面積拡大や新規作物導 入の問題に対して、農家問の公平性の遵守を核する合意形成によって組繊化を強化し、組 織結合力低下を回避してきたといえる。このような組織強化への対応は、構成農家個々の 自由裁量の余地を減少させるが、個別展開による経済的リスク回避あるいはコスト削減効 果による成果を構成員が認識した結果であること。

  

3

に、これまで野菜作の収益性は個別的能カに依るとみられてきたために、組織自体 による取り組みは困難であると考えられてきた。しかしながら完全共同型機械利用組織に よる野菜導入の場合は、機械導入に対する平等出資、利用量に応じた利用経費の負担、共 同作業の編成方法など、従前からの基幹作目である一般畑作物に関する管理運営方法がそ のまま適 用可能であり、新たな調整課題を発生させずに野菜導入が実現しえること。

  

4

に、共同耕作地保有の意義は野菜作導入による輪作体系の錯乱防止、構成員問の収 益格差の緩和という意義ももち、今後、高齢化・離農が進む中、離農跡地や大型機械など 地域資源 の効率的利 用を維持 するため の地域対 策として も有効な 方策であること。

  

以上のように本論文は、今後、農業をとりま<諸条件変化に対応する取り組みにおいて も、農家問組織化が重要な鍵となる可能性を示し、そこでは組織における調整課題の発生 を可及的に回避する仕組みを賦与しておくことが肝要であるとしている。以上の研究成果 は学術上および実際界においても高く評価しうる。

  

よって審査員一同は、松本浩一が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有する ものと認めた。

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参照

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