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博 士 ( 工 学 ) 熊 谷 剛 彦

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 熊 谷 剛 彦

学 位 論 文 題 名

鉄鋼精錬プロセスにおける気液問物質移動のモデル解析 学位論文内容の要旨

  鉄 鋼 精 錬 を は じ め , 多 く の 金 属 精 錬 プ 口 セ ス に お い て 高 温 の 溶 融 金 属 中 に 大 量 の ガ ス を 吹 き 込 み , 化 学 反 応 を 進 行 さ せ , 組 成 制 御 を 行 う こ と は 古 く か ら 広 く 行 わ れ て い る . し か し , 現 在 の 環 境 , 工 ネ ル ギ ー 問 題 を 鑑 み る と 将 来 の 材 料 製 造 プ 口 セ ス に は ェ ネ ル ギ ー 効 率 や , 排 出 物 な ど 対 環 境 特 性 の 更 な る 向 上 が 求 め ら れ る こ と は 明 ら か で あ る , し た が っ て , ガ ス 吹 き 込 み に よ る 精 錬 プ 口 セ ス に は よ り 一 層 の 効 率 化 が 期 待 さ れ , 溶 湯 と ガ ス と の 迅 速 な 反 応 , 正 確 橡 反 応 量 制 御 に よ る ク リ ー ン な 排 気 な ど , 反 応 を よ り 精 確 に 制 御 す る 技 術 が 求 め ら れ て い る ・

  鉄 鋼 精 錬 プ 口 セ ス に お い て ガ ス と 溶 鉄 、 溶 鋼 と の 反 応 の 解 析 で は , 高 温 の 環 境 下 で あ る こ と か ら , 素 過 程 と し て の 反 応 は 十 分 に 早 く , 律 速 す る の は 物 質 移 動 の 側 に あ る と 考 え ら れ て い る . そ こ で , 物 質 移 動を 促 進 する た 、 め の様 々 な 試み と そ の解 析 が 行 わ れ て い る . 理 想 的 に は , 気 液 界 面 積 と 物 質 移 動 係 数 を そ れ そ れ 独 立 に 評 価 す べ き で あ る が , 溶 鉄 、 溶 鋼 は 一 般 的 に1500℃ 以 上 の 高 温 で , 気 泡 の 観 察 も 困 難 な こ と か ら , 気 液 界 面 積 を 求 め る の は 非 常 に 難し い . その た め , `気 液 界 面積 と 物 質移 動 係 数 と の 積 を 液 体 の 体 積 で 除 し た 容 量 係 数 に よ る 評 価 が 一 般 的 で あ る .   ま た , 物 質 移 動 現 象 に 関 す る 解 析 で は 水 モ デ ルを 用 い た 報告 が 多 し` が , 物質 移 動 係 数 に 関 し て は 気 泡 噴 流 な ど , 気 液 界 面 積 の 評 価 の 難 し い も の に 対 す る 報 告 は 少 な く 、 さ ら に 界 面 近 傍 の 液 流 れ と 物 質 移 動 係 数 と の 関 係 を 調 査 し た 報 告 は 単 一 上 昇 気 泡 に つ い て の も の が 多 く , 強 い 乱 流 場 に お け る 物 質 移 動 係 数 を 調 べ た 例 は ほ と ん ど な い , ま た こ れ ま で に 為 さ れ た 報 告 の ほ と ん ど は 蒸 留 を 二 回 以 上 施 し た 非 常 に 清 浄 な 水 を 用 い て い る が , 通 常 , 大 量 に 使 用 さ れ る 蒸 留 水 や イ オ ン 交 換 水 程 度 の 純 度 の 水 を 用 い た 場 合 の 知 見 は 少 な い ,

  本 研 究 は 気 泡 噴 流 中 の 気 液 界 面 に お け る 物 質 移 動 係 数 の 評 価 を 目 的 と し て 実 施 し た . 第1章 は 緒 言 で あ り 、 従 来 の 研 究 状 況 を 調 査 し 、 本 研 究 の 意 義 を 明 確 に し た ・   第2章 で は 面 積 が 一 定 で 水 平 に 静 置 し た 気 液 界 面 に お い て 自 然 対 流 の み 生 じ る 条 件 で 物 質 移 動 係 数 を 測 定 し た . 水 平 に 静 置 し た 固 体 平 板 か ら の 熱 移 動 に 近 似 性 が 高 い こ と が 判 り 、 そ の 式 を も と に 実 験 式 を 導 出 し た ・

  第3章 に お い て , ラ ン ス を 用 い て 気 液 界 面 の 面 積 を 一 定 に 保 っ と と も に , そ の 界 面 に 対 し て 任 意 の 流 速 , 乱 れ 強 さ の 乱 流 噴 流 を 衝 突 さ せ た . 流 れ の 種 類 は 対 向 流 , 平 行 流 , 後 流 で , そ れ そ れ に つ い て 物 質 移 動 係 数 を 測 定 し , 流 れ の レ イ ノ ル ズ 数 ,

(2)

乱れ強さとの関係を調ベ,実験式を導出した.この結果によればイオン交換水程度

(中程度)に汚染された液中では,固液間物質移動係数に対する実験式で精度よ<

近似できることがわかった.

   第 4 章では界面に噴流を高い速度で衝突させた際の波動が生じる条件での物質移 動係数を測定した.これによると,波動の生成しない場合の物質移動係数に較べて 2 ‑‑3 倍の高い値を示し,物質移動促進への大きな効果を見出した.これは,気液界 面に蓄積している汚染物質の物質移動への影響が,波動の生成により小さくなり,

清 浄 な 気 液 界 面 をも つ 場合 の 物質 移 動係 数 に漸 近 し たも の と考 え られ る .    第5 章 では第 3 章までに述べた3 種類の流れ場を組み合わせて,単一上昇する気 泡の周囲に生じる流れ場をモデル化し,その気泡モデルにおける物質移動係数を既 知の実験式から推算した.これを実際の単一気泡について測定した物質移動係数と 比較した.その結果,気泡高さが小さな場合には第3 章で明らかにした汚染された 界面をもつ気液間物質移動係数に漸近し,気泡高さが約 5mm を越えると第4 章で明 らかにした清浄な界面をもつ気液間物質移動係数に漸近した.気泡高さが約5mm 以 上の気泡表面には波動が観察されることから,この物質移動係数の変化も気泡表面 に生成する波動に起因すると考えられる・

   第 6 章では気泡噴流における気液間物質移動係数の測定を行った.ガス流量をO

〜40crr13/s までの範囲で変化させながら行ったところ,流量が0N2crri3/s の範囲では 気泡の下半分が汚染され,上半分が清浄な界面をもっと仮定した気泡について推算 した物質移動係数に漸近した.流量が2 〜40cm3/s の範囲では全表面が清浄な場合の 物質移動係数に漸近した.ガス流量が大きくなると気泡間の相互作用が強まり界面 近傍の流れの乱れが非常に大きくなるので,界面汚染物質の影響が低下して界面が 清浄な場合と同じ物質移動挙動を示したものと考えられる.また,本研究のように 中程度に汚染された液体を用いた場合,気液間の物質移動係数は液流れの条件によ り大きく 変化するが ,その上限 は,液が清浄な場合の物質移動係数に等しい・

   第 7 章では上吹きランスを用いてガスの効果的な溶解,撹拌を試み,界面の不安 定現象観察とともに,気液界面積の評価を行った.また,底吹きの場合には気泡同 士の重合,分裂を考慮していない既存の界面積推算式と比較し,本方法による新た な推算式を導出をした,

   第8 章では本研究の成果を総括し、今後の展望を述ぺた・

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

鉄鋼精錬プロセスにおける気液問物質移動のモデル解析

  現在の環境,エネルギー問題に関連して,鉄鋼精錬プ口セスをはじめ多くの金属精錬プ ロセスには,エネルギー効率の格段の向上,排出物,排出ガスの無害化,減量化,リサイ クルなど環境負荷をより小さくする方策が求められている.高温の溶融金属を機械的に撹 拌することは回転羽根の溶損の問題が避けられないことから、既存の多くの精錬プロセス では専ら溶融金属中に吹き込まれたガスの浮カを利用して撹拌を行うとともに、気液聞反 応によって不純物の除去を行っている。本研究は,このようなガス吹き込みを伴う精錬プ ロセスの内、代表的な精錬反応容器である転炉や取鍋に着目し、精錬のより一層の効率化 に 資する資 料を得る ことを 目的とし て実施 したもの である 。溶融金 属の温度は1500℃ という高温のため気液間反応の律速過程は物質移動であり,反応の効率化には物質移動係 数の正確な評価が必要となるが、実機での評価は難しく,モデル実験に頼らざるを得ない。

本研究でも水モデルを用いて非常に強い乱流場における気液聞物質移動についてモデル実 験を行い、多くの有用な知見を得ている。

  本 論 文 は8章 か ら 構 成 さ れ て お り , そ の 概 略 は 以 下 の と お り で あ る 。   第1章は 緒言であ り,従 来の研究 と比較 しながら本研究の位置付けを明らかにした。

  第2章では、円筒形ランスを用いて面積が一定で水平な気液界面を作り、自然対流のみ が生じる条件下で物質移動係数を測定し、物質移動係数の測定値は水平に静置した固体平 板 か ら の 熱 移 動 に 近 い 値 を と る こ と を 示 す と と も に 、 実 験 式 を 導 出 し た .   第3章では、上述のランスを用いて気液界面の面積を一定に保っとともに,その界面に 対して流速,乱れ強さの異なる乱流噴流を衝突させた結果について述べている。流れの種 類は対向流,平行流,後流で,それぞれについて物質移動係数を測定し,レイノルズ数,

乱れ強さとの関係を調べ,実験式を導出した.この式は乱れ強さを気液聞物質移動係数の 推算に初めて反映させたもので,金属精錬プロセスにとどまらず,多くの化学工学プ口セス に有用な知見である.また、イオン交換水のように中程度に汚染された液中では,固液聞 物 質 移 動 係 数 に 対 す る 実 験 式 で 精 度 よ く 適 用 で き る こ と を 明 ら か に し た 。

271

学 宜

行 夫

   

   

口 井

藤 田

井 石

工 増

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

  第4章では、水平な気液界面の周りに下向きの流れを生じさせ、気液界面に波動が生じ る条件下で測定した物質移動係数は、波動の生成しない場合の物質移動係数に較べて2〜3 倍の高い値を示すことを見出している。これは,気液界面に蓄積している汚染物質の物質 移動への影響が,波動の生成により小さくなり,清浄な気液界面をもつ場合の物質移動係 数に漸近したためである。

  第5章では 、第3章で構 築した3種類 のモデル を組み合 わせて,上昇する単一気泡を模 擬的に再現して物質移動係数を推算し、実測値と比較している。このように,気泡を幾つ かの代表的な部位に分割して物質移動を解析し,その結果を再び持ち寄って全体の物質移 動の解析に役立てる手法は,本研究の特徴であり、今後いろいろな状況下にある気泡の物 質移動係数の推算に利用できる。

  第6章では、多くの気泡が群をなして上昇する気泡噴流における気液聞物質移動係数の 測定結果について述べている。ガス流量を0〜40crr13/sの範囲で変化させたところ,流量 が0〜2c rTi3/sの範囲では気泡の下半分が汚染され,上半分が清浄な界面をもっと仮定して 推算した物質移動係数の値に漸近し、流量が2〜40cfri3/sの範囲では全表面が清浄な場合 の物質移動係数に漸近することを明らかにした,ガス流量が大きくなると気泡間の相互作 用が強まり界面近傍の流れの乱れが非常に大きくなって、界面汚染物質の影響が低下し界 面が清浄な場合と同じ物質移動挙動を示すためである。また,本研究のように中程度に汚 染された液体を用いた場合,気液問の物質移動係数は液流れの条件により大きく変化する が,その上限は,液が清浄な場合の物質移動係数に等しいことを見出すとともに、気液界 面積の推算式を提案している。このことは、液相の純度を上げることが困難な実機におい て ガ ス の 溶 鋼 へ の 溶 解 を 促 進 さ せ る た め の 大 き な 指 針 を 与 え て い る 。   第7章では、上吹きランスを用いてガスの効果的な溶解,撹拌を試み,界面の不安定現 象 の 観 察 結 果 を 示 す と と も に , 気 液 界 面 積 の 評 価 を 行 っ て い る 。   第 8章 は 結 言 で あ り , 本 研 究 を 総 括 し , 今 後 の 展 望 を 述 べ て い る .   これを要するに著者は、強い乱流場における気液聞物質移動のモデル実験を行うに際し、

多くの斬新な手法を提案するとともに、単一気泡だけでなく気泡噴流内の気泡の物質移動 係数について有用な知見を得ており、金属精錬工学のみならず、化学工学分野に対しても 貢献するところ大なるものがある。よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与さ れる資格あるものと認める。

    以上

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参照

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