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Transport process of terrestrial organic matterin sediments inferred from stable carbon and nitrogenisotopes: a methodological study at the East China Sea and the southwest coast of Thailand.

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 倉 本 敏 克

     Transport process of terrestrial organic matter in sediments inferred from stable carbon and nitrogen isotopes: a methodological study at the East China Sea       and the southwest coast of Thailand.

(安定炭素・窒素同位体より推定される陸起源有機物の堆積物への 輸 送過程 :東シナ海及びタイ南西海岸域における方法論的研究)

学位論文内容 の要旨

  有機物の安定炭素・窒素同位体比(613C,6 ̄5N)は、これまで海底堆積物を用いた古環境 解析などにおいて、その起源を推定するために用いられてきた。こうした研究は、ー般的に 陸上植物の613Cと61sNが、海洋植物プランクトンに比ぺともに低い値を示す性質に基づぃ ている。しか し、陸起源の有機物の同位体比は、地域の植生(例えば613Cの高いC4植物の 影響)によって異なり、さらに海洋植物プランクトンも取り込む無機炭素・窒素の同位体比 や同化の際の同位体分別などにより変動する。また近年の人間活動が河川や沿岸における無 機窒素の615Nに及ばす影響も無視できなぃ。したがって、沿岸域においてどのような有機 物が堆積物として埋没しているかを推定するためには、実際にその海域に供給される陸起源 有機物や海水中で生成している粒状物の特徴を明らかにすることが不可欠である。また、沿 岸域において物質の輸送過程を明らかにすることは、全球的な炭素収支を見積もるうえでも 重要である。このような背景から、本研究は陸上、沿岸、外洋域における有機物(陸上植物、

懸濁粒子、沈降粒子)の同位体比をもとに堆積物中有機物の起源や粒子の輸送過程について 明らかにすることを目的として行った。調査地域はタイ南西沿岸域と東シナ海とした。両地 域とも陸から輸送される粒状物が多いことが報告されている地域であるが、その環境は全く 異なる。

  タイ南西沿岸域は、ゴムなどのプランテーションが多く、また河川や海岸に沿ってマング ローブが、沿岸には海草が分布しており、沿岸堆積物の起源として多種の植物が考えられる 複雑な地域である。同地域の海草にっいては、Chirapart&Yamamuro (1999)により同位体比 が報告されている。そこで本研究では、ゴムなどの陸上植物、マングローブ、さらに河川や 沿 岸の 懸濁 粒子(POM)や堆 積物について分析を行った。 試料は、人為的影響を見るため に、目立った河川の流入がない地域(小河川地域)と都市の隣接するトラン川という調査地 域 の 中 で は 最 も 大 き な 河 川 の 流 域 ( ト ラ ン 川 地 域 ) の2地 域 で 採 取 し た 。   陸上植物及 び河川のPOMや堆積物の613Cは‑28〜‑25960で、C3植物の影響が強く613Cの高 いC。植物の影響は小さかっ た。しかし沿岸堆積物の813Cは、沿岸のPOMに比べてもさら に高い値を示 し、613Cの高い海草の影響を強く受けていたと考えられる。一方、マングロ ーブ、河川のPOMや堆積物の615Nはトラン 川流域で高い値を示した。これは隣接する都市 からの排水の 流入など人間活動による影響の付加によルトラン川の硝酸の615Nが高くなっ ていることを 示唆する。さらに沿岸のPOMや堆積物の8'5Nもトラン川河口付近が高い傾向

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を 示 し、 トラ ン川 流 域に 見ら れる人為的影響は沿岸 まで広がっていることが明 らかになった。

  安 定 同 位 体 を 用 い て 起 源 の 推 定 を 行う 場 合、 通常2〜3種の エ ンド メン バー を 設定 し連 立 方 程 式に より それ ぞ れの 寄与 率を 算出 す るマ スバ ラン ス計 算 が用 いら れる 。 しかし調査地域 で は 、 特 徴的 な 同位 体比 を示 した4種 のエ ン ドメ ンバ ー( 陸上 植 物、 マン グロ ー ブ、 沿岸 の POM、 海 草 ) が 認 め ら れ た 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 確 率 論 的 な 計 算( モン テカ ル ロ法 )を 用 い る こと によ りそ れ ぞれ の寄 与を 推定 し た。 その 結果 、両 地 域に おい て最 も 寄与が大きいの は 海 草 で あ り 、 小 河 川 地 域 で42% 、 ト ラ ン 川 地 域 で36% を 占め る。POMの寄 与 は、 トラ ン 川 地 域で 高く (19% )、 小河 川地域では低い(13% )。陸上植物とマングロー ブの寄与はそれ ぞ れ23%前後で地域による大 きな差は見られなかった。

  沿 岸域 は、 地域 に より さま ざま な有 機 物の 寄与 や変 動が 考 えら れる 。し か し、安定同位体 を 用 いる こと によ り 、本 地域 のよ うに 多 様な 起源 有機 物が 想 定さ れる 沿岸 に おいても、それ ぞ れ の寄 与率 を推 定 する こと が可 能で あ る。 この よう な可 能 性を 示し たこ と は、今後、安定 同 位体を用いて沿岸域で研究 を行っていくうえでも重要だ といえる。

  沿 岸域 にお いて 堆 積し た陸 起源 ある い は海 洋起 源有 機物 の 一部 は、 さら に 外洋に運ぱれて い る こと が予 想さ れ る。 東シ ナ海 は世 界 でも 有数 の大 河川 が 流入 し生 物生 産 が高い広大な大 陸 棚 を有 する 縁海 で ある が、 陸棚 斜面 付 近の セジ メン トト ラ ップ 実験 から 下 層ほど沈降粒子 (SPM)の フ ラ ッ ク ス が 高 い こ と が 報 告 さ れ て お り 、 陸 棚 か ら 沖 繩ト ラフ への 粒 子の 流れ 込 み の 影響 と考 えら れ てき た。 そこ でこ の 海域 では 、河 川か ら 供給 され る有 機 物の同位体的特 徴 を 明 ら か に す る た め に 長 江 河 口 で 採 取 さ れ た2本 の コ ア(CM97,Y4)の 分 析 を 行 っ た 。 さ ら に 河 口 か ら 琉 球 列 島 に か け て の ト ラ ン セ ク ト(PNラ イ ン ) に お い て 採 取 さ れ たPOM の 分 析 を 行 い 、 沿 岸 か ら 外 洋 に か け ての 違 いに つい て調 ぺた 。 また 陸棚 から 離 れた 外洋 の SPMに つ い て も 分 析 を 行 い 、 こ れ ま で 報 告 さ れ て い るSPMや 堆 積 物 の 同 位 体 比 と 比 較 す る こ と に よ り 、 東 シ ナ 海 に お け る 粒 子 の 輸 送 に つ い て 明 ら か に し よ う と し た 。   CM97コ アは 、 すで にHori et al.(1999)に より14C年代 が報 告 され てお り、 コ ア下 部で 約 10,800yrB.P.を示す。本研究で得られたコア中有機物の同位体比は、613Cが‑24〜‑220r60、615N は2〜4%0の 間 で 変 動 し て い た 。Y4コ アに つ いて はま だ年 代値 は 得ら れて いな い が、 同位 体 比 の 変 動 幅 はCM97と ほ ぼ 同 様 で あ っ た 。 っ ま り 、 過 去 約1万 年 間 に 長 江 か ら 供 給 さ れ た 陸 起 源 有 機物 の 同位 体比 は613Cが‑23%0、615Nは3960程度 であ っ たと いう こと に なる 。し か し 、CM97コ ア の8'sNが 上 部 で 急 激 に 増 加 し10%0近 い 値 を 示 し た 。 こ の 上 昇 は 人 為 的 影 響 に よ る も の と 考 え ら れ 、 長 江 か ら 流 入す る 有機 物の615Nが近 年 は上 昇し てい る 可能 性を 示 唆 している。

  POMの613Cは、 河口 付近 から 外 洋の 黒潮 流域 の 表層 においてほぼ一様で‑24〜‑22%0を示し、

河 口 域の コア と比 較 して も大 きな 違い は 見ら れな かっ た。 さ らに 、河 口域 の いくっかの測点 で は‑18%0近 くの 高い 値 を示 した 。こ れは 河 口付 近で は生 物生 産 が高 く、 植物 プ ラン クト ン が 溶 存 二 酸 化 炭 素 を 取 り 込 む 際 の 分 別 が 小 さ く な っ た 可 能 性を 示唆 し てい る。 一方 、POM の81sNは 、 河 口 域 で 高 く 黒 潮 流 域 で 低い と いう 傾向 を示 した 。 河口 域で615Nが 高い 原因 の ー っ と し て は 、613Cと 同 様 で 生 物 生 産が 高 かっ た影 響が 考え ら れる が、CM97コ ア上 部に 見 ら れ た よ う な 陸 か ら 輸 送 さ れ る615Nの高 い 有機 物が 寄与 して い る可 能性 もあ る 。ま た、 黒 潮 流 域 の 低 い815Nは 窒 素 固 定 藻 類 の 影 響 で あ る 。 さ ら にPOMの 同位 体比 は、 深 くな るに つ れ813Cは 低 く615Nは 高 く な る と い う 、 深 度 に 伴 う 変 化 が 見 られ た。 こ れはPOMの質 的な 違 い か、あるいはPOMが深層で受 ける分解の影響と考えられ る。

  SPMの 同 位 体 比 は 、 河 口 域 や 陸 棚 斜 面 か ら 離 れ た 外 洋 域 に お い て は 、 表 層 のPOMと よ く 一 致 し て お り 、SPMは 表 層 のPOMの 影 響 を 強 く 受 け て い る こ と が わ か っ た 。 し か し 陸 棚 斜 面 域 で は 表 層 のPOMと 比 較 し て61sNが 高 く な る 傾 向 を 示 し た 。 これ は陸 棚か ら615Nの高 い 粒 状 物の 流れ こん で いる 影響 であ り、 陸 棚斜 面に おけ る流 れ 込み が安 定同 位 体からも確かめ ら れた。

  沿 岸 域 は 、 陸 起 源 有 機 物 の 寄 与 が ある だ けで なく 、河 川か ら の栄 養塩 の流 入 によ り高 い 生 物 生産 が見 られ 、 その 生産 量は 外洋 全 体に 匹敵 する とい う 報告 もあ る。 こ のためグローバ

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ルな物質循環の見積もりにも少なからず影響を与えると考えられているが、地域によって環 境が異なるため定量的な見積もりは難しい。しかし、本研究は、安定同位体を用いることに より、まったく環境の異なる地域において堆積物の起源や輸送過程について明らかにした。

このことは、他の沿岸域においても同様の研究が有効であることを示しており、今後、沿岸 域の役割を明らかにする研究が進んでいくことが期待される。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

南川 大場 長谷川 山本

雅男 忠道 四郎 正伸

     Transport process of terrestrial organic matter in sediments inferred from stable carbon and nitrogen isotopes: a methodological stucly at the East China Sea       and the southwest coast of Thailand.

(安定炭素・窒素同位体より推定される陸起源有機物の堆積物への 輸送 過程: 東シナ海及びタイ南西海岸域における方法論的研究)

  安定炭素 ・窒素 同位体組 成は, これまで 海底堆 積物を用 いた古環 境研究 において , 有 機物の 起源を 推定する プ口キ シとして 用いられ てきた 。こうし た研究 の原理は ,陸 上 植物と 海洋植 物プラン クトン の同位体 組成が, 一般的 に大きく 異なる ことに基 づい て いる。 しかし ,陸起源 の有機 物の同位 体比は, 地域の 植生や種 類によ っても異 なる こ とが知 られて いるし、 海洋植 物プラン クトンも 無機炭 素・窒素 を取り 込む際の 同位 体 分別の 発現の 違いによ り変動 する。ま た近年の 人間活 動が河川 や沿岸 域の有機 物に 影 響を及 ぼして いる影響 も無視 できない 。したが って, 沿岸域に おいて どのよう な有 機 物が堆 積物と して埋没 してい るかを推 定するた めには ,実際に その海 域に供給 され る陸 起源有 機物や海 水中で生 成して いる粒状物の特徴についての理解が不可欠である。

ま た,沿 岸域に おいて物 質の輸 送過程を 明らかに するこ とは,全 球的な 炭素収支 を見 積 もるう えでも 重要であ る。こ のような 背景から ,本研 究は陸上 ,沿岸 ,外洋域 にお け る起源 有機物 (陸上植 物、懸 濁粒子、 沈降粒子 )の同 位体組成 を分析 すること によ り 堆積物 中有機 物の起源 や粒子 の輸送過 程につい て明ら かにする ことを 目的とし て行 った 。

  夕イ南西 沿岸域 では,人 間活動 の影響を 見るた めに,目 立った河 川の流 入がない 地 域 ( 小河 川 地 域) と 都 市の 隣 接す る河川の 流域( トラン川 地域)の2地 域におい て,

ゴ ムなど の陸上 植物,マ ング口 ープ,さ らに河川 や沿岸 の懸濁粒 子や堆 積物につ いて 採 取した 。陸上 植物及び 河川の 懸濁粒子 や堆積物 の613Cは―28〜―25%0で ,C3植物 の 影 響が強 かった 。またト ラン川 流域から 得られた 試料は 、高い615N値を示し 、隣接す る 都市か らの排 水の流入 など人 聞活動に よる影響 がみら れた。両 地域に おいて, 確率 論的 な計算 (モンテ カルロ法 )を用 いること により4種の エンドメンパー(陸上植物,

マ ングロ ーブ, 沿岸の懸 濁粒子 ,海草) の寄与率 を推定 した。そ の結果 ,両地域 にお

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いて 最も 寄与 が大 きい のは 海草 であ り, 小河 川地域で42%, トラン川地域で36%を占 める。懸濁粒子の寄与は,トラン川地域で高く(19%),小河川地域では低い(13%)。

陸 上 植 物 と マ ン グ ロ ー プ の 寄 与 は そ れ ぞ れ23% 前 後 で 大 き な 差 は な い 。   沿 岸域 は, 地域 によ りさ まざ まな 有機 物の 寄与や変動が考 えられる。しかし,安定 同位 体を 用い るこ とに より ,本 地域 のよ うに 多様な起源有機 物が想定される沿岸にお いて も, それ ぞれ の寄 与率 を推 定す るこ とが 可能である。こ のような可能性を示した こと は、 今後 、安 定同 位体 を用 いて 沿岸 域で 研究を行ってい くうえでも重要だといえ る。

  沿 岸域 にお いて 堆積 した 陸起 源あ るい は海 洋起源有機物の 一部は,さらに外洋に運 ばれ てい るこ とが 予想 され る。 東シ ナ海 は世 界でも有数の大 河川が流入し生物生産が 高い 広大 な大 陸棚 を有 する 縁海 であ るが ,陸 棚斜面付近のセ ジメント卜ラップ実験か ら下 層ほ ど高 い沈 降粒 子フ ラッ クス が報 告さ れており,陸棚 から外洋への粒子の輸送 と考えられていた。東シナ海に流入する河川起源有 機物の特徴を明らかにするために、

長 江 河 口 で 採 取 さ れ た2本 の コ ア に つ い て 分析 を行 った 。CM97コア 中有 機物 の同 位 体比 は,613Cが‑24〜−22%0,615Nは2〜400の 間で 変動 して いた が, 上部 で615Nが急 激に 増加 した 。こ の上 昇は 人間 活動 の影 響に より,長江から 流入する有機物の615Nが 近年は上昇している可能性を示唆している。表層の 懸濁粒子の61sNも,河口域で高く,

また 黒潮 流域 では 窒素 固定 藻類 の影 響で 懸濁 粒子の61sNは低 かった。陸棚の海底付近 では 高濁 度層 がみ られ 、こ れま で海 底堆 積物 の再懸濁と考え られていた。しかしこの 濁度 層内 の懸 濁粒 子の 同位 体比 は, 堆積 物の 同位体比とは一 致せず,613Cが低く61sN が高い陸起源有機物の寄与が示唆された。

  陸 棚か ら輸 送さ れる 粒子 の影 響が 小さ いと 考えられる外洋 の沈降粒子についても分 析を行い懸濁粒子の同位体比と比較したところ,表 層の懸濁粒子とよく一致しており,

沈降 粒子 は表 層で 生成 した 粒子 の影 響を 強く 受けていること がわかった。また沈降粒 子の 同位 体比 は、 懸濁 粒子 と同 様に 陸棚 域と 黒潮域で違いが 見られたことから、マス パラ ンス 計算 によ り陸 棚か らの 輸送 され る粒 子の寄与を見積 もった。その結果,陸棚 斜面 域に おけ る沈 降粒 子中 有機 物の うち38〜56%は,陸棚か らの輸送であると考えら れた。

  以 上の よう に本 研究 で見 いだ した 有機 物の 炭素・窒素安定 同位体の挙動は海底有機 物の 性質 を推 定す るた めに 重要 な知 見で あり 、今後の古環境 研究に大きく貢献するも のといえる。

    審査 員一 同は ,こ れら の成 果を 高く 評価 し,また研究者 として誠実かつ熱心であ り, 大学 院課 程に おけ る研 鑽や 取得 単位 など も併せ申請者が 博士(地球環境科学)の 学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定し た。

参照

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