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多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究 : 自己評価論を取り入れた「学習評価問題」の開発

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(1)Title. 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究 : 自己評価論を取り入れ た「学習評価問題」の開発. Author(s). 佐藤, 健翔; 藤本, 将人; 内山, 隆. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(1): 221-236. Issue Date. 2016-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8016. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究 ― 自己評価論を取り入れた「学習評価問題」の開発 ―. 佐藤 健翔*・藤本 将人**・内山 隆** *. 北海道教育大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修大学院生 **. 北海道教育大学教育学部釧路校社会科教育学研究室. Assessment of Diversity Recognition in Social Studies ― Development of “Learning Assessment” in Self Assessment ―. SATOH Kento*, FUJIMOTO Masato** and UCHIYAMA Takashi** *. Department of Social-Studies Education, Student of the Graduate School of Education, Hokkaido University of Education **. Department of Social-Studies Education, Hokkaido University of Education, Kushiro Campus. 概 要 今日の学校教育では,変化の激しい時代に生きる人材を育成するために,自身の必要に応じ て学び続ける力を育成することが目指されている。社会科教育においてそのような力を育成す るには,授業で実際に形成された多様な認識形成の事実を評価するための理論が必要である。 本研究の目的は,多様な認識形成を保障する社会科において,子どもが自身の必要に応じて学 ぶことを保障するために自己評価を取り入れた学習評価の方法を開発することである。本研究 の手続きは,次に示す通りである。①多様な認識形成を保障する学習評価方法の評価目標と評 価方法を明らかにする。②教育学で示されている自己評価の方法の転用可能性を考察する。③ 多様な認識形成を保障する社会科学習評価の方法と自己評価の方法を掛け合わせることで,新 たな学習評価の方法を開発する。. Ⅰ.問題の所在. の高度化によって,社会が常に変化を続けている と言われて久しい。現代社会で生きていくには,. 本研究の目的は,多様な認識形成を保障する社. 教育機関を出た後も自身の必要に応じて学び続け. 会科における学習評価の方法を開発することであ. ていくことが求められているが,従来の社会科授. る。. 業においては一定の内容を教師が教えることを主. グローバル化,知識基盤社会化やテクノロジー. とするカリキュラムが組織・実施されてきた。こ. 221.

(3) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. のようなカリキュラム論に基づく授業では,一定. バックされており,子どもが自身の必要に応じて. 期間に知識を暗記・再生する力が育成されてお. 学ぶためにフィードバックされていない点に課題. り,実際の評価も何をどれだけ覚えているかに注. を指摘することができる。. 視した問題が作成され続けている。. 自身の必要に応じて学ぶ力を育成するには,子. 自身の必要に応じて学び続けていく力を育成す. どもが評価活動を通して可視化された自身の学習. るには,授業においても,子ども自らが学ぶカリ. の事実を目標と照らして確認し目標達成のために. キュラムを実施し,育成した力に対応した評価問. 必要な学習内容を決定する活動を保障すべきであ. 題を作成していく必要があろう。自身の必要に応. る。このような子どもによる評価活動を「学習を. じて学び続けていくという教育全体の理念とそこ. 目的とした評価」3)と言うが,社会科においてこ. で育成された学力を知識の記憶・再生に注視した. の視点を取り入れた評価研究は未だない。. 評価問題でみとっていくという現実の齟齬を埋め. 学習を目的とした評価論が確立されることに. るために,学びと評価の質の実質的転換が必要と. よって,社会科教育を通して自身の必要に応じて. なっている。. 学び続けていく力を育成することが可能となろう。. 自身の必要に応じて学び続けていく力を育成す. 本研究では,以上のような問題意識に基づき,. るために,本稿では構成主義的教育観に着目する. 評価活動を通して収集した学習の事実が子どもの. こととする。構成主義的教育観とは,子どもが多. 学びにフィードバックされる学習評価の方法を開. 種多様な意味と理解を組み立てることができるよ. 発する。. うに,主体的・能動的に授業や学習を組織してい. 具体的には,子どもの学習の事実を教師と子ど. 1). くことを重視する思想である 。自身の必要に応. もの評価活動に必要な視点から可視化するための. じて学び続けていく力を蓄えていくには,構成主. 「学習評価問題」を構想した。さらに,「学習評. 義的教育観に立った学習の訓練が必要である。. 価問題」を多様な認識形成を保障する社会科で想. 学びと評価の質の実質的転換をもたらすために. 定されている評価目標によって類型化して開発し. は,子ども個々人が多様に形成した社会的事象に. た。. 対する見解を評価する理論が必要となる。これま. 以上のような「学習評価問題」を開発するため. での社会科における評価研究では,日本や海外の. に本稿では次のような研究の手続きを採る。まず,. 評価活動の事例分析やそこから得られた評価手法. これまでに社会科教育学において開発された多様. を可視化する作業を通して,授業改善の方法が示. な認識形成を保障した学習評価方法を分析し,評. されてきたが,そこで描かれている学力は細分化. 価目標と評価方法を明らかにする。次に,教育学. され一方向に系統化され説明されていた。. で示されている学習を目的とした評価方法の多様. しかし,授業で実際的現実的に育成される学力. な認識形成を保障する社会科への転用可能性につ. は個々人の資質・能力に応じて多様な様相をみせ. いて考察する。最後に,多様な認識形成を保障す. る。それらの質をみる視点こそ論じるべきである. る社会科における学習評価の方法と教育学で示さ. が,先行研究においてこれらのことに言及したも. れている「学習を目的とした評価方法」を掛け合. 2). のは多くない 。. わせることで,評価活動を通して収集した学習の. 先行研究では,パフォーマンス評価法を用いる. 事実が子どもの学びにフィードバックされる学習. ことによって個々人に多様に形成される学力を. 評価の方法を開発する。. ペーパーテストによってみとる方法や授業におけ る子どもの認識の変化の様相をみとる方法が示さ れている。その一方で,評価活動を通して収集し た学習の事実が教師の教育活動のみにフィード. 222.

(4) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. Ⅱ.多様な認識形成を保障する学習評価方法 の類型 これまでに社会科教育学界に蓄積された評価研 究のうち子どもの多様な認識形成を保障した評価. 表1 本研究で採用する多様な認識形成を保障する 社会科における学習評価の方法 パタ ーン. パフォーマンスの内容. 評価方法. 1. 社会科における討論の 要素と論理性の有無. ペーパーテスト法. 2. 民主主義的価値と論理 性の有無. ペーパーテスト法. 3. 想定した思考過程と論 理性の有無. ペーパーテスト法. 2). 研究は,十六の研究が存在する 。これらの先行 研究では,子どもの多様な認識形成を評価するた めにパフォーマンス評価法が採用されていた。 パフォーマンス評価法とは,評価しようとする. (筆者作成). 能力や技能を実際に用いる活動の中で評価しよう とする方法である4)。 先行研究では,パフォーマンス評価法を採用す ることによって,パフォーマンスを行うまでに形 成された社会認識形成の事実を評価対象としない. Ⅲ.教育学における学習を目的とした評価方 法の実際. ことで認識の多様性を保障したのである。そして,. 教育学において,学習を目的とした評価方法を. 学習目標として設定したパフォーマンス行為が学. 体系化した研究として安彦の研究5)が挙げられる。. 習後に行えていたか否かをそのパフォーマンス行. 安彦は,学習を目的とした方法として自己採点. 為に関する要素を評価基準として設定することで. 法,自己評価票法,相互採点法,相互討議法,と. みとっていたのである。. いう四つの方法を示している。. パフォーマンスの内容に関しては次の三つの類 型が示されていた(表1)。一つ目は,「社会科に. ⑴ 自己採点法. おける討論の要素と論理性の有無」から評価を行. 自己採点法とは,次の三つの場面で行われると. うものである。二つ目は,「民主主義的価値と論. している。第一にテスト結果の返却の場面である。. 理性の有無」から評価を行うものである。三つ目. 第二にテストの自己採点の場面である。第三に練. は, 「想定した思考過程と論理性の有無」によっ. 習問題の模範解答による自己点検の場面である。. て評価を行うものである。. テスト結果の返却の場面では,次の三つの段階. 評価方法に関しては,観察による評価法とペー. を経るとしている。第一に教師が採点後に返却す. パーテストによる評価法の二つが示されていた。. ることである。第二に子どもの自己点検を促すこ. しかし,観察法に関しては,「社会科における討. とである。第三に個々の子どもの質問に答え,共. 論の要素と論理性の有無」のみで評価枠組みが示. 通の誤りは全体に向けて指導することである。こ. されており, 「民主主義的価値と論理性の有無」. れらの過程を経ることによってテストでわからな. や「想定した思考過程と論理性の有無」の場合の. い部分や間違った部分のみについて自分で点検,. 方法論は確立されていなかった。. 評価し,わかるように教師に援助を求めるという. 本研究では,教師と子どもの評価活動に必要な. 学びを主体的に行うことが可能になるとしている。. 情報を可視化する必要性からペーパーテスト法を. テストの自己採点の場面では,次の三つの段階. 採用し,示された三つのパフォーマンスに類型化. を経るとしている。第一に教師による正答提示ま. して学習評価の方法を開発する。. たはシートやプリントなどの解答集による提示を 行うことである。第二に自己採点させ,誤りを修 正することである。第三に続けて自由に質疑応答 することである。これらの過程を経ることで,自. 223.

(5) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. 身で正誤の内容を確認し,自身で誤りを修正する. ⑶ 相互採点法. という学びを主体的に行うことが可能となる。. 相互採点法とは,グループ学習や班学習の際に. 練習問題の模範解答による自己点検の場面は,. 互いの活動やテストを採点し合う学習方法であ. 次の三つの段階を経るとしている。第一に模範解. る。安彦は,その際の留意点を次のように述べて. 答による自己採点を行うことである。第二に誤り. いる。第一に子ども間の人間関係をよくすること。. の自己修正とその原因の自己発見をすることであ. 第二に相互に誤った部分を修正させるために話し. る。第三に原因の自己解決と教師の確認を行うこ. 合わせること。第三に最終的な成績づけには結び. とである。これらの過程を経ることによって,自. つかないテストだけに用いること。第四にグルー. 身で正誤の内容を確認し,誤りを修正するという. プやクラス全体の結果の向上が求められている場. 学びを主体的に行うことが可能となるとしてい. 合にのみ用いること。第五に教師の確認や教師や. る。さらに,最終的に教師が確認を行うことで正. クラスとの自由な質疑応答が許されること。. しさが保障されるとしている。. 以上のような相互採点学習に取り入れることで. 以上のような自己採点法を学習に取り入れるこ. 自己評価の課題である信頼性や妥当性を確保する. とで子どもは正答を目指して自身の必要な学びを. ことが可能となるとしている。. 行うことが可能となるとしている。 ⑷ 相互討議法 ⑵ 自己評価票法. 相互討議法とは,子どもに評価活動の全てを委. 自己評価票法とは,子どもに自己評価のための. ねる評価方法である。具体的には,学習課題は教. 用紙を常時持たせて学習を進めることであるとし. 師が示すが正答も評価規準も示さずに子どもにそ. ている。また,自己評価票では,毎時間一枚ずつ. れを考えさせ,教師は相談に乗るだけにするとい. 持たせるものもあれば,一単元全体の数時間,十. うものである。安彦は,相互討議法は次のような. 数時間分をまとめたカードもあるとしている。安. 四つの段階を経るとしている。第一に子ども同士. 彦は,自己評価票の効果的な内容構成と使用方法. で正答を出し合うことである。第二に討議によっ. を次のようにまとめている。自己評価票の効果的. て正答を決定することである。第三に誤答も検討. な内容構成は次の六つである。第一に学習目標の. することである。第四に相互に正答がわかるまで. 明記である。第二に学習目標達成のための計画で. 教え合い,正答の確認をすることである。. ある。第三に目標達成の程度の規準の明記と達成. 以上のような相互討議法を学習に取り入れるこ. 度の明記である。第四に未達成の部分の明記とそ. とで子ども自身が学習課題に対する正答を探究す. の原因の明記である。第五に反省の文章の書き込. るという自身の必要に応じた学習を行うことが可. み欄の設定である。第六に教師のコメント欄の設. 能となるとしている。. 定である。安彦は特に,第四の未達成の部分の明 記とその原因の明記場面を確実にすることによっ て次時への仮説としての足がかかりとなり自身の. Ⅳ. 「学習評価問題」の開発. 必要な学びを形作ることにつながるとしている。. ⑴ 学習を目的とした評価論の転用可能性. 以上のような自己評価票法を学習に取り入れる. 安彦の示した四つの評価方法は,多様な認識形. ことで,子どもは単元や十数時間に及ぶ一連の学. 成を保障する社会科における学習評価法にどのよ. 習を目標達成のために自身の必要な内容を選択し. うに活用することができるだろうか。それぞれの. ながら意識的に行うことが可能になるとしている。. 方法について検討していく。まず,自己採点法で ある。この方法は,子どもがテスト問題への解答 の正誤を採点する活動を通して,不正解の解答を. 224.

(6) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. 修正するために自身に必要(正答を明らかにする). はできない。以上の理由から相互討議法は,多様. に応じた学習を行うことが可能になる自己評価法. な認識形成を保障する社会科の学習評価に転用す. である。この時,子どもが行う自身の必要に応じ. ることは不適である。. た学びは,既に設定されている正答を探求するこ. 以上の考察を踏まえ,本研究では,多様な認識. とであり,正答に多様性を保障することはできな. 形成を保障する社会科における学習評価に自己評. い。以上の理由から自己採点法は,多様な認識形. 価票法と相互採点法の二つを採用する。. 成を保障する社会科の学習評価に転用することは 不適である。. ⑵ 「学習評価問題」の構想. 次に自己評価票法である。この方法は,子ども. 教育学における学習を目的とした評価の方法と. に自己評価票を配布し,学習目標と照らして学習. 社会科教育学における多様な認識形成を保障する. 活動を確認させる活動を通して,学習目標を達成. 学習評価法を結合すると次のような評価方法を構. するために自身に必要に応じた学習を行うことが. 想することができる。. 可能になる自己評価法である。この時,子どもが. まずは,教育目標となるパフォーマンスの内容. 行う自身の必要に応じた学びは,学習状況を学習. である。パフォーマンス内容は,これまでに示さ. 目標と照らして判断することで以降の学びを確定. れた多様な認識形成を保障する社会科における学. することであり,学習状況をどのように判断する. 習評価の方法を受けて次の三つが想定できる。一. かによって,個々人で多様な学びの様相を保障す. つ目は,「社会科における討論の要素と論理性の. ることができる。以上の理由から自己評価票法は,. 有無」によるパフォーマンス評価を行うものであ. 多様な認識形成を保障する社会科の学習評価に転. る。二つ目は, 「民主主義的価値と論理性の有無」. 用することは可能である。. によってパフォーマンス評価を行うものである。. 次に,相互採点法である。この方法は,互いの. 三つ目は,「想定した思考過程と論理性の有無」. 活動やテストを採点し合い,自己評価の内容を他. によってパフォーマンス評価を行うものである。. 者の意見を取り入れながら修正する活動を通し. そして,これら三つのパターンに「自身の必要に. て,自身の必要に応じた学びが可能になる自己評. 応じて学ぶことができたか」が追加される。翻っ. 価法である。この時,子どもが行う自身の必要に. てこれらのパフォーマンスは学習目標となる。. 応じた学びは,他者の意見が自身の目標達成にど. このような学習目標への達成を目指すカリキュ. のように活用できるのかを考察することであり,. ラムは,子どもが自身の必要とする学習内容を決. 他者の意見の採用の仕方によって,その後の学び. 定し,学習目標への到達度を随時確認することで. の多様性を保障することができる。以上の理由か. 展開される。子どもが自己評価を行うことを通し. ら自己評価票法は,多様な認識形成を保障する社. て自身に必要な学びを形作るには自己評価票法を. 会科の学習評価に転用することは可能である。. 用いて子ども自身の学びの様相を可視化すること. 最後に,相互討議法である。この方法は,教師. が必要である。. は学習課題のみを設定し,それを基に子どもに正. 本研究では学習の事実を表出するために,自己. 答を考えさせる活動を通して,学習課題に正答す. 評価票法とペーパーテストを掛け合わせたものを. るために自身の必要に応じた学びを行うことが可. 「学習評価問題」と命名し開発する。. 能になる自己評価法である。この時,子どもが行 う自身の必要に応じた学びは,学習課題に対する. ⑶ 「学習評価問題」の内容構成. 正答を考え,他者との交流を通して正答を決定し. 「学習評価問題」は,子どもの学習の事実を可. ていくことであり,正答が最終的に一つへと帰結. 視化することで教師と子どもが評価活動を行うこ. していくことから多様性を最後まで保障すること. とを可能にするものでなければならない。. 225.

(7) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. 本研究では, 「学習評価問題」を学習段階に応. る。また,学習計画を立案する活動を支援するた. じて三種類開発する。これによって,学習の各段. めに「今わかることは何か,今わからないことは. 階での子どもの学びの様相を表出させる。 「学習. 何か,なぜ知りたいのか」について回答する小項. 評価問題」は,子どもの自己評価を促す大項目と. 目を設定する。そして,教師が子どもの現段階で. 教師の評価活動に必要な情報を収集する大項目,. の社会的事象に対する見解を確認するために子ど. それぞれの大項目に子どもが回答することを支援. もが現段階での社会的事象に対する見解を表現す. する小項目から構成した(表2)。. る大項目を設定する。. 一段階目の「学習評価問題」は,単元の開始時. 二段階目の「学習評価問題」は,単元の学習中. に行うものである。この「学習評価問題」は,子. に行うものである。この「学習評価問題」は,子. どもが学習の方向性を決定するための場面を保障. どもが以降の学びを形作る場面を保障することと. することと教師が子どもの現段階での社会的事象. 教師が子どもの認識変容の様相を確認し,子ども. に対する見解を確認することを目的とする。「学. の学習の方向性を確認することを目的とする。 「学. 習評価問題」には,子どもが学習の方向性を決定. 習評価問題」には,子どもが以降の学びを形作る. する場面を保障するために,学習目標や目標達成. 場面を保障するために学習目標の達成度について. の規準について明記する大項目と学習目標を達成. 回答する大項目と学習目標の未達成の部分につい. するために必要な学習計画を立案する大項目,単. て回答する大項目,次時の学習内容を確定させる. 元の学習時間について明記した大項目を設定す. 大項目を設定する。また,子どもが以降の学びを. 表2 「学習評価問題」の構成要素 大 項 目. 単元 の開 始時. 小 項 目. 教師が学習目標,目標達成の規準の提示する 教師が単元の学習時間を提示する 今わかることは何か 子どもが学習目標を達成するために必要な学習計画の立案する 今わからないことは何か なぜ知りたいのか 子どもの現段階での社会的事象に対する見解の確認する. 単元 の学 習中. 子どもの学習目標の達成度の確認する. 現段階で何が明らかになったか. 子どもの学習目標の未達成の部分の確認する. どこでつまずいているか なぜつまずいているか. 子どもの次時の学習内容の確定する. 次に問題になることは何か. 子どもの現段階の社会的事象に対する見解の確認する. 単元 の学 習後. 子どものこれまでの学習に対する自己評価の確定する 子どもが他者から意見を受ける. 学習成果は何か 自己評価についての他者との意見交流を 通じて明らかになったことは何か. 子どもが単元の学習の反省を行う. 単元の学習の成果は何か 単元の学習にはどのような意味があるの か 今後に残されている問題は何か 学習目標の未達成の部分は何か 学習目標が未達成な原因は何か. 子どもの最終的な社会的事象に対する見解の確認する (筆者作成). 226.

(8) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. 形作る活動を支援するために, 「現段階で何が明 らかになったか,どこでつまずいているか,なぜ つまずいているか,次に問題になることは何か」. Ⅴ. 「社会科における討論要素と論理性の有 無」を評価する「学習評価問題」の開発. について回答する小項目を設定する。そして,教. ⑴ 評価目標. 師が子どもの認識変容の様相を確認し,子どもの. 「社会科における討論要素と論理性の有無」を. 学習の方向性を確認するために,子どもの現段階. パフォーマンス課題とする「学習評価問題」の目. での社会的事象に対する見解を表現させる大項目. 的は,授業における討論の事実と単元を通しての. と次時の学習内容を確定させる大項目を設定する。. 子どもの学びの様相を可視化し,学習目標への到. 三段階目の「学習評価問題」は,単元の学習の. 達度をみとることである。. 終了時に行うものである。この「学習評価問題」. 学習目標は「討論を通して社会的制度などに対. は,子どもがこれまでの自己評価を再考する場面. しての自身の立場表明を行うことができる」であ. を保障することと単元の学習の反省を行う場面を. る。このような学習目標達成のために行われる自. 保障すること,教師が最終的な子どもの社会的事. 身の必要に応じた学びとは,立場表明のために必. 象に対する見解を確認することを目的としてい. 要な情報を収集し,自身の立場表明をより説得力. る。 「学習評価問題」には,子どもがこれまでの. のあるものとするための追究活動である。. 自己評価に関して再考する場面を保障するために. このような学習目標への到達度を評価するため. これまでの学習に対する自己の評価を確定させる. のルーブリックは次のように構想される(表3)。. 大項目と他者からこれまでの自己評価に対する意. 学習目標の到達度は四つの評価の観点によってみ. 見を受ける大項目を設定する。また,自己評価を. とられる。一つ目の評価の観点は,「討論で話し. 再考する活動を支援するために「これまでの学習. 合われた内容を踏まえて立場表明ができる」であ. 成果はどのようなものか,自己評価についての他. る。二つ目の評価の観点は,「立場表明の文章が. 者との意見交流を通じて明らかになったことは何. 論理的で他者の納得を促す表現がみられる」であ. か」について回答する小項目を設定する。子ども. る。三つ目の評価の観点は,「授業において行わ. が単元の学習の反省を行う場面を保障するために. れた討論の意義を的確に捉えている」である。四. 単元の目標と照らして自身の学習を自己評価する. つ目の評価の観点は,「立場を表明するまでの過. 大項目を設定する。また,単元の学習を反省する. 程で自身の必要な情報を収集し,その情報を立場. 活動を支援するために「単元の学習の成果は何か,. 表明に活用できる」である。. 単元の学習にはどのような意味があるのか,今後. これらの評価の観点における評価基準を次のよ. に残されている問題は何か,学習目標の未達成の. うに設定する。評価基準はA:十分満足できる,B:. 部分は何か,学習目標が未達成な原因は何か」に. おおむね満足できる,C:努力を要する,の三段. ついて回答する小項目を設定する。. 階からなる。. そして,子どもの最終的な社会的事象に対する. 評価の観点「討論で話し合われた内容を踏まえ. 見解を確認するために,子どもが最終的な社会的. て立場表明ができる」は,A:討論で話し合われ. 事象に対する見解を表現する大項目を設定する。. た複数の内容を踏まえて立場表明を行うことがで. これらの三種類の「学習評価問題」を三種類の. きる,B:討論で話し合われた内容を踏まえて立. パフォーマンス内容に即して開発することで多様. 場表明を行うことができる,C:討論で話し合わ. な認識形成を保障した社会科における学習評価法. れた内容を踏まえて立場表明を行うことができな. に自己評価を取り入れた「学習評価問題」を開発. い,から構成される。評価基準の段階は,立場表. する。. 明を行うことができたか否か,討論の内容をどの 程度立場表明に取り入れることができたのかに. 227.

(9) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. 表3 「社会科における討論要素と論理性の有無」におけるルーブリック 評 価 の 観 点 1. 観点の 説明. 2. 3. 4. 討論で話し合われた内 立場表明の文章が論理 授業において行われた 立場を表明するまでの 容を踏まえて立場表明 的で他者の納得を促す 討論の意義を捉えるこ 過程で自身の必要な情 を行うことができる。 表現が見られる。 ができる。 報を収集し,収集した 情報を立場表明に有効 に活用できる。. 討論で話し合われた複 数の内容を踏まえて立 A:十分満 場表明を行うことがで 足できる きる。 評 価 基 準. 立場表明の文章が論理 授業において行われた 立場を表明するまでの 的で他者の納得を促す 討論の意義を捉え立場 過程で自身の必要な情 ための表現が多数見ら 表明に活用できる。 報を計画的に収集し, れる。 収集した情報を立場表 明に活用できる。. 討論で話し合われた内 立場表明の文章が論理 授業において行われた 立場を表明するまでの B:おおむ 容を踏まえて立場表明 的で他者の納得を促す 討論の意義を捉えるこ 過程で自身の必要な情 ね満足でき を行うことができる。 表現が見られる。 とができる。 報を収集し,収集した る 情報を立場表明に活用 できる。 討論で話し合われた内 立場表明の文章が論理 授業において行われた 立場表明をするまでの 容を踏まえて立場表明 的で他者の納得を促す 討論の意義を捉えるこ 過程で自身の必要な情 C:努力を を行うことができない。 ものとなっていない。 とができない。 報を収集し,その情報 要する を立場表明に活用でき ない。 (筆者作成). よって判断される。. 評価の観点「立場を表明するまでの過程で自身. 評価の観点「立場表明の文章が論理的で他者の. の必要な情報を収集し,その情報を立場表明に活. 納得を促す表現がある」は,A:立場表明の文章. 用できる」は,A:立場を表明するまでの過程で. が論理的で他者の納得を促すための表現が多数見. 自身の必要な情報を計画的に収集し,収集した情. られる,B:立場表明の文章が論理的で他者の納. 報を立場表明に活用できる,B:立場を表明する. 得を促す表現が見られる,C:立場表明の文章が. までの過程で自身の必要な情報を収集し,収集し. 論理的で他者の納得を促すものとなっていない,. た情報を立場表明に活用できる,C:立場表明を. から構成される。評価基準の段階は,立場表明の. するまでの過程で自身の必要な情報を収集し,そ. 文章に論理性があるか否か,他者の納得を促すよ. の情報を立場表明に活用できない,から構成され. うな表現があるか否かで判断される。. る。評価基準の段階は,自身の必要に応じて収集. 評価の観点「授業において行われた討論の意義. した情報を立場表明に活用できたか否か,収集活. を的確に捉えることができる」は,A:授業にお. 動が計画的であったか否かで判断される。. いて行われた討論の意義を捉え立場表明に活用で きる,B:授業において行われた討論の意義を捉. ⑵ 学習評価問題の構成. えることができる,C:授業において行われた討. このようなルーブリックによって評価を行うた. 論の意義を捉えることができない,から構成され. めに,子どもの学習の事実を収集する「学習評価. る。評価基準の段階は,討論の意義を捉えている. 問題」は次のように構成される(表4)。. か否か,その意義を用いて立場表明を行っている. 「社会科における討論要素と論理性」を評価す. か否かで判断される。. る「学習評価問題」固有の要素は次の二つである。. 228.

(10) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. 表4 「社会科における討論要素と論理性の有無」における「学習評価問題」の構成要素 大 項 目. 単元 の開 始時. 小 項 目. 教師が学習目標,目標達成の規準の提示する 教師が単元の学習時間を提示する 今わかることは何か 子どもが学習目標を達成するために必要な学習計画の立案 今わからないことは何か する なぜ知りたいのか 子どもの現段階の立場表明の様相を確認する. 単元 の学 習中. 子どもの学習計画の達成度の確認する. 現段階で何が明らかになったか. 子どもの学習計画の未達成の部分の確認する. どこでつまずいているのか なぜつまずいているのか. 子どもが本時の学習成果が立場表明にどのように価値付く のかの考察する 子どもの現段階の立場表明の様相を確認する. 単元 の学 習後. 子どもの次時の学習内容の確定. 次に問題になることは何か. 子どものこれまでの学習に対する自己評価の確定する 子どもが他者からの意見をうける 子どもが他者の意見が自身の立場表明に与えた影響につい て考察する. 学習成果はどのようなものか 目標到達度を判断した自己評価 自己評価についての他者との意見交流を通じ て明らかになったことは何か. 子どもが授業でおこなわれた討論の確認する 子どもが討論を踏まえての最終的な立場の表明する. 子どもが単元の学習の最終的な自己評価を行う. 単元の学習成果は何か 単元の学習にはどのような意味があるのか 今後に残されている問題は何か 目標の未達成の部分は何か 目標が未達成な原因は何か (筆者作成). 一つは, 「最終的な立場表明を行うことによって. 「子どもの討論活動に至るまでの追究の過程を. 学習目標への到達度をみとる」ための要素である。. 可視化する」ための要素は,単元の学習前学習中. これによって,評価の観点1,2,3によって評. に行う「学習評価問題」に位置づき,次の二つか. 価を行うために必要な学習の事実を収集すること. ら構成される。一つは,現段階の子どもの立場表. を達成する。もう一つは,「子どもの討論活動に. 明の様相を確認する大項目である。二つ目は,自. 至るまでの追究の過程を可視化する」ための要素. 身の必要に応じて収集した情報が立場表明にどの. である。これによって,評価の観点4によって評. ように価値付くのかを確認する大項目である。. 価を行うために必要な学習の事実を収集すること を達成する。 「最終的な立場表明を行うことによって学習目 標への到達度をみとる」ための要素は,単元の学. Ⅵ. 「民主主義的価値と論理性の有無」を評価 する「学習評価問題」の開発. 習後に行う「学習評価問題」に位置づき,次の二. ⑴ 評価目標. つから構成される。一つ目は,授業でおこなわれ. 「民主主義的価値と論理性の有無」をパフォー. た討論の事実を確認する大項目である。二つ目は,. マンス課題とする「学習評価問題」の目的は,単. 討論を踏まえての立場表明を行う大項目である。. 元の学習を通しての子どもの学びの様相を可視化. 229.

(11) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. し,学習目標への到達度をみとることである。. これらの評価の観点における評価基準を次のよ. 学習目標は「ある社会的な論争問題について賛. うに設定する。評価基準はA:十分満足できる,B:. 成か,反対かの立場表明を行うことができる」で. おおむね満足できる,C:努力を要する,の三段. ある。このような学習目標達成のために行われる. 階からなる。. 自身の必要に応じた学びとは,立場表明のために. 評価の観点「民主主義的な価値に基づいて立場. 必要な情報を収集し,自身の立場表明をより説得. 表明ができる」は,A:複数の民主主義的な価値. 力のあるものとするための追究活動である。. に基づいて立場表明ができる,B:民主主義的な. このような学習目標への到達度を評価するため. 価値に基づいて立場表明ができる,C:民主主義. のルーブリックは次のように構成される(表5)。. 的な価値に基づいて立場表明ができない,から構. 学習目標の到達度は四つの評価の観点によってみ. 成される。評価基準の段階は,立場表明を行うこ. とられる。. とができたか否か,民主主義的価値をどの程度立. 一つ目の評価の観点は, 「民主主義的な価値に. 場表明に取り入れることができたのかによって判. 基づいて立場表明ができる」である。二つ目は,. 断される。. 「立場表明の文章が論理的で他者の納得を促す表. 評価の観点「立場表明の文章が論理的で他者の. 現が見られる」である。三つ目は,「授業で示さ. 納得を促す表現がある」は,A:立場表明の文章. れたデータを基に自らの立場を根拠づけることが. が論理的で他者の納得を促すための表現が多数見. できている」である。四つ目は,「立場を表明す. られる,B:立場表明の文章が論理的で他者の納. るまでの過程で自身に必要な情報を収集し,収集. 得を促す表現が見られる,C:立場表明の文章が. した情報を立場表明に有効に活用できる」である。. 論理的でなく他者の納得を促すものとなっていな. 表5 「民主主義的価値と論理性の有無」におけるルーブリック 評 価 の 観 点 1. 観点の 説明. 2. 3. 4. 民主主義的な価値に基 立場表明の文章が論理 授業で示されたデータ 立場を表明するまでの づいて立場表明ができ 的で他者の納得を促す を基に自らの立場を根 過程で自身の必要な情 る。 表現が見られる。 拠づけることができる。 報を収集し,収集した 情報を立場表明に有効 に活用できる。. 評 価 基 準. 複数の民主主義的な価 立場表明の文章が論理 授業で示された複数の 立場を表明するまでの 値に基づいて立場表明 的で他者の納得を促す データを基に自らの立 過程で自身の必要な情 A:十分満 ができる。 ための表現が多数見ら 場を根拠づけることが 報を計画的に収集し, 足できる れる。 できる。 収集した情報を立場表 明に活用できる。 民主主義的な価値に基 立場表明の文章が論理 授業で示されたデータ 立場を表明するまでの B:おおむ づいて立場表明ができ 的で他者の納得を促す を基に自らの立場を根 過程で自身の必要な情 ね満足でき る。 表現が見られる。 拠づけることができる。 報を収集し,収集した る 情報を立場表明に活用 できる。 民主主義的な価値に基 立場表明の文章が論理 授業で示されたデータ 立場表明をするまでの づいて立場表明ができ 的でなく他者の納得を を基に自らの立場を根 過程で自身の必要な情 C:努力を ない。 促すものとなっていな 拠づけることができな 報を収集し,その情報 要する い。 い。 を立場表明に活用でき ない。 (筆者作成). 230.

(12) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. い,から構成される。評価基準の段階は,立場表. 用できる」は,A:立場を表明するまでの過程で. 明の文章に論理性があるか否か,他者の納得を促. 自身の必要な情報を計画的に収集し,収集した情. すような表現があるか否かで判断される。. 報を立場表明に活用できる,B:立場を表明する. 評価の観点「授業で示されたデータを基に自ら. までの過程で自身の必要な情報を収集し,収集し. の立場を根拠づけることができる」は,A:授業. た情報を立場表明に活用できる,C:立場表明を. で示された複数のデータを基に自らの立場を根拠. するまでの過程で自身の必要な情報を収集し,そ. づけることができる,B:授業で示されたデータ. の情報を立場表明に活用できない,から構成され. を基に自らの立場を根拠づけることができる,C:. る。評価基準の段階は,自身の必要に応じて収集. 授業で示されたデータを基に自らの立場を根拠づ. した情報を立場表明に活用できたか否か,収集活. けることができない,から構成される。評価基準. 動が計画的であったか否かで判断される。. の段階は,授業で示された資料を立場表明に活用 することができているか否か,いくつの資料を用. ⑵ 学習評価問題の構成. いて立場表明を行っているかで判断される。. このようなルーブリックによって,評価活動を. 評価の観点「立場を表明するまでの過程で自身. 行うために,子どもの学習の事実を収集する「学. の必要な情報を収集し,その情報を立場表明に活. 習評価問題」は次のように構成される(表6)。. 表6 「民主主義的価値と論理性の有無」における「学習評価問題」の構成要素 大 項 目. 単元 の開 始時. 小 項 目. 教師が学習目標,目標達成の規準の提示する 教師が単元の学習時間を提示する 今わかることは何か 子どもが学習目標を達成するために必要な学習計画の立案 今わからないことは何か する なぜ知りたいのか 子どもの現段階の立場表明の様相を確認する. 単元 の学 習中. 子どもの学習計画の達成度の確認する. 現段階で何が明らかになったか. 子どもの学習計画の未達成の部分の確認する. どこでつまずいているのか なぜつまずいているのか. 子どもが本時の学習成果が立場表明にどのように価値付く のかの考察する 子どもの現段階の立場表明の様相を確認する. 単元 の学 習後. 子どもが次時の学習内容の確定する. 次に問題になることは何か. 子どもがこれまでの学習に対する自己評価の確定する 子どもが他者からの意見をうける 子どもが他者の意見が自身の立場表明に与えた影響につい て考察する. 学習成果はどのようなものか 目標到達度を判断した自己評価 自己評価についての他者との意見交流を通じ て明らかになったことは何か. 子どもが授業で示した資料や民主主義的価値を確認する 子どもが最終的な立場の表明を行う. 子どもが単元の学習の最終的な自己評価を行う. 単元の学習成果は何か 単元の学習にはどのような意味があるのか 今後に残されている問題は何か 目標の未達成の部分は何か 目標が未達成な原因は何か (筆者作成). 231.

(13) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. 「民主主義的価値と論理性の有無」を評価する. このような学習目標への到達度を評価するため. 「学習評価問題」の固有の要素は次の二つである。. のルーブリックは次のように構想される(表7)。. 一つは, 「授業で示された資料や民主主義的価値. 学習目標への到達度は五つの評価の観点によって. を確認し,学習目標への到達度をみとる」ための. みとられる。一つ目の評価の観点は,「資料に基. 要素である。これによって,評価の観点1,2,. づき,社会に関する問いを作り出すことができる」. 3によって評価を行うために必要な学習の事実を. である。二つ目の評価の観点は,「資料から情報. 収集することを達成する。もう一つは,「最終的. を取り出し,総合したり複合したりできる」であ. な立場表明までの子どもの追究の過程を可視化す. る。三つ目の評価の観点は,「資料から読み取っ. る」ための要素である。これによって,評価の観. た情報を活用して,問いに答えるために考える方. 点4によって評価を行うために必要な学習の事実. 向を決めることができる」である。四つ目の評価. を収集することを達成する。. の観点は,「資料や自身が調査した内容に基づい. 「授業で示された資料や民主主義的価値を確認. て決定を行うことができる」である。五つ目の評. し, 学習目標への到達度をみとる」ための要素は,. 価の観点は,「議論などを通して問いに対する新. 単元の学習後に行う「学習評価問題」に位置づき,. たな考えを作りだすことができる」である。. 次の二つから構成される。一つ目は,授業で示し. これらの評価の観点における評価基準を次のよ. た資料や民主主義的価値を確認する大項目であ. うに設定する。評価基準はA:十分満足できる,B:. る。二つ目は,それらを踏まえて立場表明を行う. おおむね満足できる,C:努力を要する,の三段. 大項目である。. 階からなる。. 「最終的な立場表明までの子どもの追究の過程. 評価の観点「資料に基づき,社会に関する問い. を可視化する」ための要素は,単元の学習中に行. を作り出すことができる」は,A:複数の資料に. う「学習評価問題」に位置づき,次の二つから構. 基づき,社会に関する問いを作り出すことができ. 成される。一つ目は,子どもの現段階での立場表. る,B:資料に基づき,社会に関する問いを作り. 明の様相を確認する大項目である。二つ目は,自. 出すことができる,C:資料に基づき,社会に関. 身の必要に応じて収集された事実が立場表明にど. する問いを作り出すことができない,から構成さ. のように価値付くのかを確認する大項目である。. れる。評価基準の段階は,問いを作り出せたか, いくつの資料を活用できたかによって判断される。. Ⅶ. 「想定した思考過程と論理性の有無」を評 価する「学習評価問題」の開発. 評価の観点「資料から情報を取り出し,総合し たり複合したりできる」は,A:複数の資料から いくつもの情報を取り出し,総合することができ. ⑴ 評価目標. る,B:資料から情報を取り出し,総合したり複. 「 想 定 し た 思 考 過 程 と 論 理 性 の 有 無 」 を パ. 合したりできる,C:資料から情報を取り出せな. フォーマンス課題とする「学習評価問題」の目的. い,から構成される。評価基準の段階は,どの程. は,単元の学習を通しての子どもの学びの様相を. 度資料を用いることができたか,資料から情報を. 可視化し,学習目標への到達度をみとることであ. 引き出すことができたかによって判断される。. る。. 評価の観点「資料から読み取った情報を活用し. 学習目標は「想定した思考方法を習得すること. て,問いに答えるために考える方向を決めること. ができる」である。このような学習目標達成のた. ができる」は,A:資料から読み取った情報を活. めに行われる自身の必要に応じた学びとは,想定. 用して,問いに答えるために考える方向を明確に. した思考活動を用いることが求められる課題に対. 決めることができる,B:資料から読み取った情. して自身の意見を形成していく追究活動である。. 報を活用して,問いに答えるために考える方向を. 232.

(14) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. 表7 「想定した思考過程と論理性の有無」におけるルーブリック 評 価 の 観 点 1. 2. 3. 4. 5. 資料に基づき,社 会に関する問いを 作り出すことがで きる。. 資料から情報を取 り出し,総合した り複合したりでき る。. 資料から読み取っ た情報を活用し て,問いに答える ために考える方向 を決めることがで きる。. 資料や自身が調査 した内容に基づい て決定を行うこと ができる。. 議論などを通して 問いに対する新た な考えを作りだす ことができる。. 複数の資料に基づ き,社会に関する A:十分満 問いを作り出すこ 足できる とができる。. 複数の資料からい くつもの情報を取 り出し,総合した り複合したりでき る。. 資料から読み取っ た情報を活用し て,問いに答える ために考える方向 を明確に決めるこ とができる。. 資料や自身が調査 した内容に基づい て,各々の考えを 比較検討し,一人 で決定を行うこと ができる。. 議論などを通して 問いに対する対策 や提案などの新た な考えを作り出す ことができる。. 資料に基づき,社 会に関する問いを B:おおむ 作り出すことがで ね満足でき きる。 る. 資料から情報を取 り出し,総合した り複合したりでき る。. 資料から読み取っ た情報を活用し て,問いに答える ために考える方向 を決めることがで きる。. 資料や自身が調査 した内容に基づい て決定を行うこと ができる。. 議論などを通して 問いに対する新た な考えを作りだす ことができる。. 資料に基づき,社 資料から情報を取 資料から読み取っ 会に関する問いを り出せない。 た情報を活用し C:努力を 作り出すことがで て,問いに答える 要する きない。 ために考える方向 を決めることがで きない。. 資料や自身が調査 した内容に基づい て決定を行うこと ができない。. 議論などを通して 問いに対する新た な考えを作り出す ことができない。. 観点の説明. 評 価 基 準. (筆者作成). 決めることができる,C:資料から読み取った情. たな考えることを作りだすことができる」は,A:. 報を活用して,問いに答えるために考える方向を. 議論などを通して問いに対する対策や提案などの. 決めることができない,から構成される。評価基. 新たな考えを根拠をもって作りだすことができ. 準の段階は,考える方向性が明確か,考える方向. る,B:議論などを通して問いに対する新たな考. 性を決定できているかどうかによって判断される。. えを作りだすことができる,C:議論などを通し. 評価の観点「資料や自身が調査した内容に基づ. て問いに対する新たな考えを作りだすことができ. いて,決定を行うことができる」は,A:資料や. ない,から構成される。評価基準の段階は,新し. 自身が調査した内容に基づいて各々の考えを比較. い考えを作りだすことができているか,根拠を示. 検討し,その検討を踏まえて一人で決定を行うこ. すことができているかから判断される。. とができる,B:資料や自身が調査した内容に基 づいて決定を行うことができる,C:資料や自身. ⑵ 「学習評価問題」の構成. が調査した内容に基づいて決定を行うことができ. このようなルーブリックによって,評価活動を. ない,から構成される。評価基準の段階は,比較. 行うために,子どもの学習の事実を収集する「学. 検討の内容を踏まえることができているか,決定. 習評価問題」は次のように構成される(表8)。. を下すことができているかによって判断される。. 「想定した思考過程と論理性の有無」を評価す. 評価の観点「議論などを通して問いに対する新. る「学習評価問題」の固有の要素は次の二つであ. 233.

(15) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. 表8 「想定した思考過程と論理性の有無」を評価の観点とする場合の「学習評価問題」の構成要素 大 項 目. 単元 の開 始時. 小 項 目. 教師が学習目標,目標達成の規準の提示する 教師が単元の学習時間を提示する 今わかることは何か 子どもが学習目標を達成するために必要な学習計画の立案 今わからないことは何か する なぜ知りたいのか 子どもの現段階の立場表明の様相を確認する. 単元 の学 習中. 子どもの学習計画の達成度の確認する. 現段階で何が明らかになったか. 子どもの学習計画の未達成の部分の確認する. どこでつまずいているのか なぜつまずいているのか. 子どもが次時の学習内容の確定する. 次に問題になることは何か. 子どもがこれまでの学習に対する自己評価の確定する 他者からの意見をうける 子どもが他者の意見が自身の立場表明に与えた影響につい て考察する. 学習成果はどのようなものか 目標到達度を判断した自己評価 自己評価についての他者との意見交流を通じ て明らかになったことは何か. 子どもが授業でおこなわれた議論の確認する 単元 の学 習後. 子どもの最終的な社会的事象に対する見解の確認する. どのように考えてその見解を決定したか どの資料を根拠として選択したのか 議論のどのような内容を踏まえたのか. 子どもが単元の学習の最終的な自己評価を行う. 単元の学習成果は何か 単元の学習にはどのような意味があるのか 今後に残されている問題は何か 目標の未達成の部分は何か 目標が未達成な原因は何か (筆者作成). る。一つは, 「資料を踏まえて想定した思考活動. 程を行うに当たってどの資料を根拠として選択し. を行うことによって学習目標への到達度をみと. たのかを確認する小項目である。これら二つの小. る」ための要素である。これによって,評価の観. 項目は,子どもの社会的事象に対する見解を確認. 点1,2,3,4によって評価を行うために必要. するための大項目に位置づく。. な学習の事実を収集することを達成する。もう一. 「議論を踏まえて,新しい考えを提案すること. つは, 「議論を踏まえて,新しい考えを提案する. によって,学習目標への達成度をみとる」ための. ことによって,学習目標への達成度をみとる」た. 要素は,単元の終了時に行う「学習評価問題」に. めの要素である。これによって,評価の観点5に. 位置づき,次の二つの要素から構成される。一つ. よって評価を行うために必要な学習の事実を収集. 目は,授業で行われた議論の内容を確認する大項. する。. 目である。二つ目は,議論の内容を踏まえて新し. 「資料を踏まえて想定した思考活動を行うこと. い考えを提案させる小項目である。この小項目は,. によって学習目標への到達度をみとる」ための要. 子どもの社会的事象に対する見解を確認する大項. 素は単元の開始時に行う「学習評価問題」と単元. 目に位置づく。. の終了時に行う「学習評価問題」に位置づき,次 の二つの要素から構成される。一つ目は,思考過 程を可視化する小項目である。二つ目は,思考過. 234.

(16) 多様な認識形成を保障する社会科学習評価研究. Ⅷ.本研究の意義と課題 本研究は,多様な認識形成を保障する社会科に おける学習評価の方法を開発することを目的とし. 校第6学年単元「佐賀市まちづくりについて考えよう」 におけるパフォーマンス評価-」佐賀大学文化教育学 部『研究論文集』第14号⑵,2010年,pp.81-91.藤本 将人「社会科における目標準拠評価の方法-ミシガン 州社会科評価プロジェクトにおける評価テンプレート. ていた。. の分析-」中国四国教育学会『教育学研究紀要』第48. このために本研究では,社会科教育学における. 巻第2号,2002年,pp.156-161.藤本将人「市民性教. 評価研究では学習を目的とした評価に関する研究 が行われていないという課題に照射し,教育学に. 育におけるオーセンティック(Authentic)概念の特質 -ミシガン州社会科評価プロジェクトの場合-」全国 社 会 科 教 育 学 会『 社 会 科 研 究 』 第61号,2004年,. おける自己評価法から知見を得て教師と子どもの. pp.21-30. 藤本将人『知識構成型社会科授業モデル-. 評価活動を保障する「学習評価問題」を開発した。. ポートフォリオによる知識公正過程のメタ認知-』長. 本研究の意義は, 「学習評価問題」を開発した ことによって,社会科教育学における評価研究に. 崎大学教育学部『教育実践総合センター紀要』第5巻, 2006年,pp.117-127.藤本将人「オーセンティック概 念に基づく社会科授業開発モデル-知識構築型授業へ. 自己評価と言う視点を導入することができたこと. の転換-」長崎大学教育学部『教育実践総合センター. である。. 紀要』第6巻,2007年,pp.79-91.藤本将人「市民性. 一方で,本研究には課題も指摘することができ る。. 教育における意思決定の評価-ミシガン州評価プロ ジェクト(MEAP)の場合-」2007年度~2009年度科 学研究費補助金基盤研究 (B)研究成果報告書 アメリカ. 本研究では,社会科教育学における自身の必要. 社会科のシティズンシップ教育に関する理論的・実践. に応じて学び続ける力の評価方法を提示すること. 的研究(研究代表者 唐木清志,課題番号18330185). ができた一方で具体的な学習内容を踏まえること ができなかった。. 2009年,pp.141-150.細川遼太「構成主義に基づく社 会科学習評価の設計-単元 「ごみ問題と社会」 の場合-」 北 海 道 教 育『 大 学 紀 要 』 教 育 科 学 編 63,2012年,. 「学習評価問題」を地理や歴史,公民などの学. pp.211-224.平成17~19年度度科学研究費補助金基盤. 習内容を前提として開発する場合,それぞれに固. 研究 (C)研究成果報告書『Authentic Assessment 概. 有な要素を取り入れる必要があるのではないだろ うか。. 念に基づく社会科学習評価研究』(研究代表者 峯明秀, 課題番号17530660)2008年3月.池野範男「連載 社会 科の読解力を鍛えるテスト問題1~12」明治図書出版. このような課題を受け,今後は, 「学習評価問題」. 『社会科教育』No.562~573,2006年~2007年.豊嶌啓. を社会認識形成の事実を評価するための論理も加. 司,柴田康弘「社会科討論学習の真正評価-対話実践. えて開発することが求められよう。. の検証を通して市民的資質をみとる-」福岡教育大学 教育学部附属教育実践総合センター『教育実践研究』 第17号,2013年,pp.1-8.豊嶌啓司「パフォーマンス. 【註】 1)構成主義的な教育観に基づく社会科像は次の研究に 依った。豊嶌啓司「社会蘇生の脱構築-「かかわり」 の知を目指す社会科授業設計-」全国社会科教育学会 『社会科研究』第67号,2007年,p.1. 2)多様な認識形成を保障する社会科の評価研究として 以下の研究がある。佐長健司「社会科討論授業に対応 したテスト問題の開発」佐賀大学文化教育学部『研究 論文集』第5号⑵,2000年,pp.17-29.佐長健司,真 子靖弘「公民的資質を育成する社会科パフォーマンス 評価の開発」佐賀大学文化教育学部『研究論文集』第 13号⑴,2008年,pp.155-174.田本正一,佐長健司「状 況論的アプローチによる社会科学習評価の開発-小学. 評価による中学校社会科のペーパーテスト開発-「社 会の形成者としての市民的資質」を評価するペーパー テストの可能性-」福岡教育大学『研究紀要』第63号, 第2分冊,2014年,pp.59-74.平成24~26年度科学研 究費助成事業基盤研究(C)研究成果報告書『他者との 関係構築的な社会認識形成を評価する中学校社会科の ペーパーテスト開発』(研究代表者 豊嶌啓司,課題番 号24531143)2015年3月.岡田了祐「社会科学習評価 への質的研究法Grounded Theory Approachの導入- 社会認識形成過程における評価のための視点提示に関 する方法と実際-」日本社会科教育学会『社会科教育 研究』第121号,2014年,pp.91-103.岡田了祐「意思 決定型社会科における子どもの飛躍とつまずき-構築 型評価モデルによる子どもの社会認識形成過程の分析. 235.

(17) 佐藤 健翔・藤本 将人・内山 隆. -」全国社会科教育学会『社会科研究』第81号,2014年, pp.39-50. 3)辰野千尋「教育評価の概念・意義」辰野千尋,石田 恒好,北尾倫彦『教育評価事典』図書文化,2006年,p.20. 4)鈴木秀幸「パフォーマンス評価」辰野千尋,石田恒好, 北尾倫彦『教育評価事典』図書文化,2006年,p.175. 5)安彦忠彦『自己評価-「自己教育論」を越えて-』 図書文化,1987年.. (佐藤 健翔 釧路校大学院生) (藤本 将人 釧路校准教授) (内山 隆 釧路校准教授) . 236.

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