Key words: 1.緒 言 (1)家族を扱う教育実践の傾向と課題 教師が授業を設計・実施する上で,目標は明確 に記述されなければならない。石井(2015)によ れば目標は,「指導と評価の指針となるため,『(教 師の側で)意図された学習効果』,いわば教育活 動の出口での子どものイメージとして明確化され なければいけない」と述べられている。だが,「目 標が明確に認識・吟味されていない場合,教育実 践は子どもたちによる活発な活動のみがあって知 的な学びが成立していない活動主義的傾向や,教 科書の内容をただなぞるだけの網羅主義的傾向に 陥る」可能性があるとされている。 家族を扱う教育実践では,これまで内容や方法 に焦点が当たっている傾向にある。伊深(2016) は,平成元年学習指導要領改訂後に出版された家 庭科教育に関する専門書に掲載されている家族の 実践を対象に,内容や教材・方法の視点から分析 し,多様な教材や方法で学習が設計されているこ とを明らかにしている。平成10年学習指導要領の 内容の取扱いでは,家族の学習においてロールプ レイングなどを用いて学習することが例示された (文部省1998)。このロールプレイングを学習方法 として用いることでの効果に関する研究は近年活 発に行われている(中村・夫馬2007,鎌野2016, など)。 一方で,内容や方法に比べ,目標については課 題がいくつか報告されている。片田江(2010)は, 家庭科教員が家族を教えることに意義を見出すこ とができず,当たり障りなく教える姿を抽出した。 これは授業後の生徒の様子をイメージできず,網 羅的な指導傾向にあることが推察される。村田ら (2017)は,家族や地域などを題材にした実践論 文を分析し,学習内容や指導方法に関する記述は 多く見られたものの,目標に関する記述が欠如し ているものや評価の妥当性の低い実践論文を確認 している。牧野(2006)は「家族を『どう』教える かを考える前に,学習目標,すなわち生徒がどん な能力を身に付けることを目標とするのかを明ら かにしておくことが大切である」と指摘している。 家族に関する教育実践では内容や方法に比べて, 目標が明確に認識・吟味されていないという実践 上の課題があると言える。 (2)家庭科教育における目標に関する研究 家族を扱う領域に限定せず家庭科教育全体に対 象を広げると,衣生活や食生活を対象にした目標 の明確化に関する研究はいくつか行なわれている。 岩見・瀧沢(1974)は,昭和44年学習指導要領の 目標が「∼の能力を養う」「∼について知る」と
研 究 論 文
改訂版ブルーム・タキソノミーを用いた目標の明確化
―中学校学習指導要領技術・家庭 家庭分野「家族・家庭や地域との関わり」
「ア 次のような知識を身につけること」を題材にして―
日本家庭科教育学会誌,63(1):3-14,2020 家族・家庭や地域との関わり,学習指導要領,目標の明確化,改訂版ブルーム・タキソノミー,理解する (受付日 2019年7月13日/受理日 2020年2月17日) Shintaro MURATA Tomoko NAGATA〒673-1494 兵庫県加東市下久米942-1
村田 晋太朗
*1永田 智子
*2不明瞭であり,目標の明確化が課題であると指摘 している。また,目標分類の理論であるBloom et al.(1956)によるBloom’s Taxonomy(以下, BT)注1)の「認知領域」を用いて,中学校1年食 物領域の内容の一部における明確な目標を作成し た。木村・田辺(1976)は,学習指導要領の「目 標の抽象的な文章表現」及び「目標と内容の対応 の不明確さ」を指摘した。さらに,「知る」「考える」 「できる」の3種類しか使用されておらず,抽象 的な語句に対する解釈の多様さを許していること を明らかにしている。岡・三好(2018)は,木村・ 田辺(1976)の指摘を引用し,平成29年学習指導 要領においても同じ課題が残っているとしている。 具体的な研究内容としては,BTの改訂版である L. W. Anderson et al.(2001)のRevised Bloom’s Taxonomy(改訂版ブルーム・タキソノミー, 以下RBT)の理論を用いて平成29年学習指導要 領解説編の記述を分類することであった。その結 果として,学習指導要領解説編は記述の表現も多 様であったため,RBTの2次元テーブル(4つ の知識次元,6つの認知過程次元からなる分類表) に記述を分類することができた。解説編を読み取 ることで明確な目標を把握することができると述 べている。 家庭科教育における目標に関する先行研究では, 衣・食生活に関する学習指導要領の記述が抽象的 であることを背景に,目標分類の理論(BTや RBT)を用いて学習指導要領の記述の性質を明 らかにすること,目標の記述を作成することが試 みられてきた。 (3)問題の所在 以上より,家族を扱う領域において,目標の明 確化が吟味されていないという実践上の課題があ る。一方で,衣生活に関する領域においては,学 習指導要領及び解説編における記述を,RBTの 理論で分析することで,知識次元及び認知過程次 元に整理し,目標の記述の性質について把握する ことができた岡・三好(2018)の研究がある。家 族を扱う領域においても,学習指導要領及び解説 編における記述を,RBTの理論で分析すること で目標の性質が明らかとなり,課題把握ができる のではないかと考えるに至った。加えて,岩見・ 瀧沢(1974)の研究にもあるように,目標分析の 理論を用いて,不明瞭な目標の明確化を試みるこ とで,実践課題の解決の一方策となり得ると考え る。 (4)研究の目的 本研究は,中学校学習指導要領 技術・家庭 家庭分野(以下,学習指導要領家庭分野)及び中 学校学習指導要領解説 技術・家庭編 家庭分野 (以下,解説編)A(3)の「ア 次のような知識を 身につけること」で示されている目標の記述に関 する課題を明らかにすることが第1の目的である (研究1)。さらに,明らかになった課題に対して, 明確な目標の記述を作成することが第2の目的で ある(研究2)。 2.学習指導要領家庭分野と解説編における 目標の記述分析(研究1) (1)分析方法 まず,岡・三好(2018)の研究方法にもあるよ うに,学習指導要領の記述と解説編に記載されて いる目標に関する記述をそれぞれ知識と行動(述 語の部分)で整理する。さらに,解説編では,学 習指導要領に記載されている目標に対してどの程 度言及しているのかを明らかにする。次に知識と 行動をRBTの理論に当てはめて,知識及び行動 の性質について考察し,目標の記述に関する課題 を明らかにする。 RBTについて,石井(2002)の概説を用いて 以下のように整理する。RBTは,BTの改訂版と して,L. W. Anderson et al.(2001)が初等・ 中等教育段階の現場向けに開発した理論である。 RBTの基本方針は,(1)目標・授業活動・評価の 全過程を対象,(2)目標の記述方法では,動詞(例 えば,BTでは〈理解〉だったものがRBTでは〈理 解する〉)で表現されるようになったことである 注2)。また,BTの〈知識〉の中に混在していた名
詞の側面と動詞の側面が分けられ,名詞の側面は 「知識次元」に,動詞の側面は〈記憶する〉とされ, BTの構造を継承した「認知過程次元」として位 置付けられた(図1)。まず,「知識次元」は knowing that(事実や法則についての「宣言的 知識」) と knowing how(やり方についての「手 続き的知識」) とに分けられる。「宣言的知識」 はさらに,「個別・具体的な内容要素を指し示す 知識である『事実的知識』と,より一般化された 知識である『概念的知識』とに分割される」。自 分自身についての知識や人間一般に関する知識と して「メタ認知的知識」がある。これら知識次元 は,「具体→抽象」という原理で「事実的知識」「概 念的知識」「手続き的知識」「メタ認知的知識」の 順に配列された。次に,「認知過程次元」は,〈記 憶する〉〈理解する〉〈応用する〉〈分析する〉〈評価 する〉〈創造する〉の6つが複雑性の原理によっ て配列され,二次元の表が開発された。なお,本 章以降,6つの認知過程には〈山括弧〉を付す。 以上にまとめたRBTの「4つの知識次元」と「6 つの認知過程次元」を用いて,知識と行動の記述 を分類し,目標の課題について検討する。 (2)結果及び考察 図2,3は,学習指導要領家庭分野A(3)「ア 次のような知識を身に付けること」の(ア)(イ)の記 述と解説編の記述を知識と行動に分けて関連付け たものである。図の「学習指導要領」列は,学習 知識 別の次元 知識次元 認知過程 次元 記憶する 理解する 応用する 分析する 評価する 創造する 理解 応用 分析 総合 評価 名刺の側面 動詞の側面 図1 BTの枠組みからRBTへの構造的変化の概要 (出典:Anderson et al.(2001)p.268より,筆者訳) 指導要領家庭分野の記述であり,「解説編」列は それに対応した解説編の記述である。実線で囲ん だ部分が知識に関する記述,点線で囲んだ部分が 行動に関する記述である。それぞれの記述の関連 があるもの同士を矢印で結んでいる。関連させた 解説編の知識部分には番号①∼⑧を付した。「分 類」列には,解説編の知識,行動部分をRBTの「4 つの知識次元」「6つの認知過程次元」に分類し た結果を示した。 図2より,知識①では「家族の互いの立場や役 割」に対して,解説編で「自分自身を含め家族に はそれぞれの立場や役割がある」と,説明に用い る語句が増えていることがわかる。この知識は RBTの「4つの知識次元」では,「概念的知識」 に分類できた。「概念的知識」は,「分類とカテゴ リーに関する知識」「原理と一般化に関する知識」 「理論,モデル,構造に関する知識」の3種類が ある(L. W. Anderson et al.,2001)。「事実的 知識(家族一人一人の具体的な立場や役割)」を 基に抽象化していき,1つの概念(家族にはそれ ぞれ立場や役割がある)にまとめられた知識であ ると考えられるため,「一般化に関する概念的知 識」と推察された。知識②も同様に「一般化に関 する概念的知識」に分類できた。 行動の表現は,「分かる」は「理解できるよう にする」,「理解すること」は「理解できるように する」となっており,2語が同義で扱われていた。 よって,RBTの「6つの認知過程次元」では「理 解する」に分類できた。だが,解説編において「理 解する」や「分かる」の説明が不十分であり,「理 解する」のさらに詳しい性質については明らかに することはできなかった。 図3より,知識③∼⑦は,「一般化に関する概 念的知識」に分類できた。例えば,知識③「地域 のお祭りなどの行事や,清掃,防災訓練等の活動」, 知識⑥「地域での決まりを守ったり,仕事を分担 したりするなど」,知識⑦「視力や聴力,筋力の 低下など」のように具体例を提示して解説を行っ ている。これらの具体例に着目すると個別・具体 的な内容要素を指し示す知識である「事実的知
識」に分類できる。しかし,これらの知識は,続 いて「③(地域の行事や活動によって)家庭が支 えられている」「⑥進んで協働することが必要で ある」「⑦それらを踏まえて関わる必要がある」 と記述されており,「事実的知識」を基に,抽象 的にまとめられた知識であると判断できる。本研 究では「一般化に関する概念的知識」に分類した。 知識⑧は「方法」と表現されており,「やり方」 についての知識と解釈でき,「手続き的知識」に 分類した。「手続き的知識」は,「科目に関する特 定のスキルとアルゴリズムの知識」「科目におけ る特定の技術・方法の知識」「適切な手続きを使 用する時の判断基準の知識」の3種類がある(L. W. Anderson et al.,2001)。高齢者などを適切 に援助する方法を指すことから「科目に関する特 定のスキル」としての「手続き的知識」に分類す ることができる。「理論,モデル,構造に関する 知識」として「概念的知識」に分類する考え方も あるが,本研究では,「方法」という単語に着目し, 「手続き的知識」に分類した。 行動については,(ア)と同様に「分かる」「理解 する」のみが用いられており,行動面については 解説されていないが,すべて「理解する」に分類 することができた。 学習指導要領及び解説編の目標の記述に関する 課題として,知識①∼⑧については,解説編にお いても具体的な知識などが用いられて表現されて おり,RBTの「知識次元」において下位の種類 にも分類することができた。ただし,解説編の記 述が不十分であるため,分析する者の視点によっ ては分類結果が分かれる可能性も包含している。 一方,行動は「理解する」「分かる」の2語が 使用されているだけであり,具体的な性質につい ては明らかにすることができなかった。 この結果は,昭和44年学習指導要領において, 抽象的であり,多様な解釈を許すと指摘している 木村・田辺(1976)の結果と同じである。約50年 経ってもなお同様の課題を抱えている。平成29年 学習指導要領では,「育成を目指す資質・能力の 明確化」を基本方針の一つに据えており(文部科 学省,2016a),令和3年度からの全面実施に向 けて,「理解する」の具体化は喫緊の課題である と言える。 3.明確な目標の記述作成(研究2) (1)作成方法 学習指導要領家庭分野A(3)の「ア 次のよう な知識を身につけること」の解説編で示されてい る8つの知識とRBTの認知過程次元の〈理解す る〉を表す7つの行動との関連性について検討し, 一覧表を作成する。〈理解する〉は,《解釈する (interpreting)》《例示する(exemplifying)》《分 類する(classifying)》《要約する(summarizing)》 《推論する(inferring)》《比較する(comparing)》 《説明する(explaining)》の7つの行動が並列に 表現されている(L. W. Anderson et al.,2001)。 また,L. W. Anderson et al.(2001)は,〈理解 する〉を表す7つの行動を概説し,各教科等にお ける目標例をいくつか提示している。さらに,提 示した目標に対応した評価方法も例示し,読者へ 分類 概念的知識 概念的知識 <理解する> <理解する> 番号 解説編 学習指導要領 家族の互いの立場 や役割が 自分自身を含め家族にはそれぞれの立場や役割があることを 家族一人一人が,互いの立場や 役割の違いを踏まえて協力する ことで家族関係がよりよくなる ことを 分かり 理解できるようにする 理解すること 理解できるようにする。 行動 知識 協力することによって 家族関係をよりよくで きることについて ① ② 図2 A(3)ア(ア)の関連図(筆者作成) 図3 A(3)ア(イ)の関連図(筆者作成) 分類 概念的知識 概念的知識 概念的知識 概念的知識 概念的知識 概念的知識 手続き的知識 <理解する> <理解する> <理解する> <理解する> <理解する> 番号 解説編 学習指導要領 家庭生活は地域と の相互の関わりで 成り立っていること 地域の祭りなどの行事や清掃,防災訓練等の活動に よって,家庭生活が支えられていること 中学生の自分は支えられるだけではなく,家族や地域の 一員として支える側になることができること 地域での決まりを守ったり,仕事を分担したりするなど, 進んで協働することが必要であること 視力や聴力,筋力の低下など中学生とは異なる高齢者の 体の特徴 自分や家族もそれらに関わることで地域を支えていること 分かるようにする 理解できるようにする 理解できるようにする 理解できるようにする 分かり それらを踏まえて関わる必要があること 立ち上がりや歩行などの介助の方法 高齢者など地域の 人々と協働する必 要があること 介護など高齢者と の関わり方につい て 分かり 理解すること 知識 行動 ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑦ ⑧
の理解を促している。これらの情報を用いること で,理解した生徒の姿を明確にイメージできる資 料になる。 なお,本章以降,認知過程の具体的な行動は《二 重山括弧》で示す。 学習指導要領家庭分野及び解説編の行動部分を 具体化するための手続きは次の①∼③の通りであ る。 ① 関連性の検討 解説編で示されたA(3)に関する8つの知識と RBTの認知過程〈理解する〉を表す7つの行動 との関連性(知識に対して,その動詞を組み合わ せることで目標として成り立つかどうか)を検討 する。その際,RBTの各行動の概説を参考にする。 ② 目標の作成 関連性を確認できた場合は,知識と行動を組み 合わせて,目標を作成する。その際,RBTの各 行動の目標例を参考にする。 ③ 対応する評価方法の作成 ②で作成された目標に対応した評価方法を作成 する。その際,学習指導要領家庭分野に記されて いる内容の取扱いやRBTで述べられている指導 方法や例示されている評価方法を参考にする。 (2)結果及び考察 以下では,RBTにおける〈理解する〉を表す7 つの行動の概説及び他教科の目標例,それに対応 した評価方法例を紹介する。その上で,知識と7 つの行動との関連性を見出すことができた理由や 作成した目標の中から典型的な目標や対応する評 価方法を紹介する。ここで紹介する目標や評価方 法は一例であり,他の目標の表現方法や評価方法 も考えられる。なお,本章で「鉤括弧」を用いて いる箇所は,すべてL .W. Anderson et al.(2001) による。また,【隅付き括弧】は,作成した目標 及び対応する評価方法を表す。 1)解釈する(interpreting) 《解釈する》とは,「一つの表現形式における情 報を与えられた時に,生徒は他の形式に変えるこ とができる」ことを指す。さらに,「言葉から言葉, 絵から言葉,言葉から絵,数字から言葉,言葉か ら数字,音符から音調」などのように表現方法を 変えることである。 目標例として,科学における「様々な自然現象 の絵画表現を描くこと」がある。対応する評価方 法は「光合成を説明する一連の図を描くこと」で ある。光合成という概念を図示することを求めて いる。 表1より,A(3)において《解釈する》は知識 ①∼⑧のすべてと関連させることができた。《解 釈する》は,表現方法を変えることを求めるもの であり,知識の性質が明らかになっていれば,「言 葉を絵に」などに形式を変えて表現させることが できるため,関連させやすいと考えられる。 例えば,知識①に関する目標として,【ある表 現方法で示されている家族の立場や役割を別の表 現で言い換えることができる】がある。《解釈する》 という行動に対して馴染みがないことを想定し 【別の表現で言い換える】という表現にしている。 対応する評価方法は,【ある家族に関する物語や 漫画,映像(ドキュメンタリーやドラマ,アニメ など)を見て,家族にはそれぞれの立場や役割が あることを文章で言い換える】である。様々なメ ディア(物語や漫画,ドキュメンタリー,ドラマ, アニメなど)により表現された家族の立場や役割 を読み取り,文章で言い換えた結果を評価するこ とで目標の達成度を測ることができる。 2)例示する(exemplifying) 《例示する》とは,「概念もしくは原則が与えら れており,指導の間に遭遇しなかった特定の例も しくは実例を選択,生成することができる」こと を指す。 目標例として,美術史では「様々な芸術家の画 風の例を挙げること」がある。対応する評価方法 は,「印象派の4つの画風を選ぶこと」である。 これは,様々な画風に関する概念を学習した上で, 印象派の画風を複数の選択肢の中から4つ選択す ることができるかどうかにより,概念の理解を確 認する方法と言える。 表1より,A(3)において《例示する》は,知
識①∼⑦と関連させることができた。知識①∼⑦ は,「一般化に関する概念的知識」であることから, 概念を理解しているかどうかを実例を挙げさせる ことで理解しているかどうかを確認できると考え た。一方で,概念や原則ではない知識⑧とは関連 させることができなかった。例えば,知識③に関 する目標として【地域の活動によって,家庭生活 が支えられていることの例を挙げることができ る】がある。対応する評価方法は,【地域の活動に 参加することや地域行事に関する資料(例えば, 回覧板や市報やウェブページなど)を見て,地域 の活動によって,家庭生活が支えられていること の実例を挙げる】である。内容の取扱いでは,地域 の行事や活動などを取り上げ,家庭生活と地域と の関わりについて振り返ることを学習方法として 明記している。そこで,活動に参加して観察した ことや感じたこと,地域行事に関する様々な資料 を基に,家庭生活が支えられていることを例を用 いながら説明できているかを評価するものである。 3)分類する(classifying) 《分類する》とは,「特定のカテゴリー(概念や 原則)に属するもの(特定の実例や例)を認識す る」ことを指す。また,「《分類する》は《例示す る》を補完するプロセスである」とされている。 「《例示する》は,一般的な概念や原則で始まり, 生徒に特定の実例や例を探すことを要求するが, 《分類する》は,特定の実例や例から始まり,生 徒に一般的な概念や原則を発見することを要求す る」とある。《例示する》は先述のように演繹的 なアプローチであり,《分類する》は帰納的なア プローチと言える。 目標例として,社会科では「観察もしくは述べ られた精神障害の原因を分類すること」がある。 対応する評価方法は「精神疾患を患っている人の 行動に関する映像を観察し,そのあとで,画面に 表示された特定の精神障害を明らかにする」であ る。精神疾患に関する分類結果を使用して,特定 の精神障害を診断する方法である。 表1より,A(3)において《分類する》は,知 識①∼⑦については,一般化に関する「概念的知 識」であり,分類やカテゴリーに関するものでは ないため,関連させることはできなかった。手続 き的知識である知識⑧は,分類の視点を設定する ことで関連させることは可能であると考えられる。 知識⑧に関する目標として,【介助の方法を分類 することができる】がある。対応する評価方法は, 【介助に関する映像や介護の専門家へのインタビ ューなどから,介助の方法を分類する】や【介助 の体験を基に,介助の方法を分類する】である。 内容の取扱いでは,高齢者の介護の専門家などか ら介助の仕方について話を聞くなどの活動を学習 方法として明記している。介護の専門家に対して, どのような高齢者に対し,どのような介護を行っ ているか,をインタビューした結果や介護に関す る映像における情報を様々な観点で分類すること を求める課題である。さらに,介護の基礎に関す る体験的な活動を通して,実感を伴って理解でき るようにする,と内容の取扱いにも明記されてい ることから,介助の体験結果を基盤に,介助方法 を分類することも考えられる。分類する観点につ いては,例えば介護を要する場面や,身体の部位 (例えば,手や下半身など)で分類することが考 えられる。 4)要約する(summarizing) 《要約する》とは,「情報が与えられたとき,一 般的なテーマで簡単にまとめる,または要約す る」ことを指す。 目標例として,社会科では,「絵で描かれた出 来事に対して短い要約を書くこと」がある。対応 する評価方法は「フランス革命のビデオテープを 見て,短い要約を書くことを求める」である。映 像にある雑多な情報から主要な視点を抽出して, 要約を書くことを求めた課題である。 表1より,A(3)において《要約する》は,8 つすべての知識と関連させることができた。知識 ①∼⑦は,一般化に関する知識であるため,日常 生活の個別の知識などを用いて要約することに適 している。また.知識⑧についても,介助に関す る個別の知識から介助の方法について要約するこ とを目指すことは可能である。例えば,知識⑤に
例えば,知識⑥に関する目標として,【複数の地 域の活動から,地域での決まりを守ったり,仕事 を分担したりするなど,進んで協働することが必 要であることを推論することができる】がある。 対応する評価方法は【グループで地域での決まり を守ったり,仕事を分担したりするなどについて 話しあったことから,進んで協働することが必要 であることのパターンを見つける】である。例え ば,知識③④のような「一般化に関する知識」を 見つける際には,地域の活動に関する資料(例え ば,掲示板や市報など)や地域の人へのインタビ ューや生徒同士の話し合い活動で挙げられた複数 の具体的な活動から,家庭生活がどう支えられて いるか,どう支えているかなどのパターンを見出 すことで推論できているかを評価する。 6)比較する(comparing) 《比較する》とは,「2つもしくはそれ以上の対 象,出来事,考え,問題などよく知られている事 とあまり馴染みのない事(例えば,最近の政治的 不祥事と歴史的な不祥事)の間にある共通性と相 違性を見つける」ことを指す。また,比較するた めには,《推論(初めに,より似ている状況から 法則を見つける)》し,その法則に沿ってそれぞ れの事象の比較を《実行する》としている。 目標例として,社会科では「似ている状況を比 較することによって歴史的な出来事を理解するこ と」がある。そのために,「家族内の争いや友人 との議論のようなアメリカ革命とはどのようであ るか?」という発問により,家族での争いごとや 友人との議論とアメリカ革命を比較し,その類似 性や相違性を見出すことを求めている。 表1より,A(3)において《比較する》は,知 識⑦の前半部分に「中学生とは異なる高齢者の身 体的特徴」とあり,中学生と高齢者の相対する知 識を用いているため,関連させることができた。 知識⑦に関する目標として,【中学生と高齢者の 身体の特徴を比較することができる】がある。対 応する評価方法は【介護の基礎に関する体験的な 活動や介護の専門家へのインタビューを基に,中 学生と高齢者の身体の特徴を比較する】である。 関する目標として,【家族や地域の一員として支 える側になることを要約することができる】があ る。対応する評価方法は,【中学生の自分は支え られるだけではなく,家族や地域の一員として支 える側になることについて,グループで話し合っ たことを要約する】である。内容の取扱いでは, 自分が地域の人々とともにできることについて話 し合ったりするなどの活動とあるため,地域で行 なわれている活動などを取り上げ,その中で自分 自身が家族や地域の一員としてどのように支える ことができるか,もしくはできているかというテ ーマで議論した内容を要約する課題である。グル ープの一人一人の考えから,重要な視点を取り上 げ要約することを求める。 5)推論する(inferring) 《推論する》とは,「一連の例題や文章を与えら れたとき,それらの内容から概念や原則を見つけ る」ことを指す。推論を説明するための実例とし て,「1,2,3,5,8,13,21」という一連の数 字が用いられている。この一連の数字からあるパ ターンを見出すとき,各桁にある数字やそれが偶 数か奇数かという関係のない視点に焦点を当てる のではなく,数量に着目することでパターンを区 別できるとしている(連なる2つの数字を合計し たものが,その後に来る数字になる)。このように, 複数の例から,概念や原理,原則やパターンを見 出すことを《推論する》と説明している。 目標例として,第二言語のスペイン語において は「例文から文法の原則を推測することができる こと」がある。対応する評価方法は「 la casa, el muchacho, la senorita, el pero を与えられ,冠 詞 la や el を使った時の原則を公式化するこ と」である。 表1より,A(3)において《推論する》は,《解 釈する》,《要約する》と同様に,8つすべての知 識と関連させることができた。知識①∼⑦は,個 別の知識から一般化する過程が《推論する》と言 える。また,知識⑧について,介助に関する複数 の事実的知識から,介助の方法という「手続き的 知識」に《推論する》という過程が考えられる。
内容の取扱いでは,介護の基礎に関する体験的な 活動を通して,また,高齢者の介護の専門家など から介助の仕方について話を聞くなどの活動を方 法として明記されているため,これを参考に評価 方法を設定した。 7)説明する(explaining) 《説明する》は,「体系的な情報を与えられたと き,体系の原因ー結果のひな形を使用すること」 を指す。 目標例として,自然科学において,「基本的な 物理原則のしくみを説明することができる」があ る。対応する評価方法は「オームの法則を学んだ 生徒に二次電池(蓄電池など)を回路に使用した 時に電流の割合がどうなるかを説明すること」で 表1 8つの知識と7つの行動を関連させた目標及び対応する評価方法 認知過程 「理解する」
8つの知識 (interpreting)解釈する (exemplifying)例示する (classifying)分類する (summarizing)要約する (inferring)推論する (comparing)比較する (explaining)説明する
ア ① 自分自身を含 め家族にはそ れぞれの立場 や役割がある こと 行動 目標例 ある表現方法で示されている家族の立 場や役割を別の表現で言い換えること ができる 家族の立場や役割の例を挙げること ができる 家族の立場や役割について要約することができる 複数の家族の情報から,家族の立場や役割を推論することができる 自分自身を含め家族にはそれぞれの立場や役割があることを説明することができる 評価 方法例 ある家族に関する物語や漫画,映像(ド キュメンタリーやドラマ,アニメなど) を見て,家族にはそれぞれの立場や役 割があることを文章で言い換える ある家族に関する物語や漫画,映像 (ドキュメンタリーやドラマ,アニ メなど)を見て,特定の家族の立場 や役割の実例を挙げる ・家族の立場や役割に関する教 科書の記述を要約する ・ある家族に関する物語や漫画, 映像(ドキュメンタリーやドラ マ,アニメなど)を見て,家族 の立場や役割について要約する 家庭で行なわれている様々な活動に ついて話し合い,家族の立場や役割 のパターンを見つける 「∼なので,∼のような立場や役割がある」 のように,因果関係を明確にし,家族には それぞれの立場や役割があることを文章で 説明する ② 家族一人一人 が,互いの立 場や役割の違 いを踏まえて 協力すること で家族関係が よりよくなる こと 行動 目標例 ある表現方法で示されている協力する ことで家族関係がよりよくなることを 別の表現で言い換えることができる 家族関係をよりよくするために協力 できることの例を挙げることができ る 家族関係をよりよくするために 協力できることを要約すること ができる 複数の家族の情報から,家族一人一 人が,互いの立場や役割の違いを踏 まえて協力することで家族関係がよ りよくなることを推論することがで きる 家族一人一人が,互いの立場や役割の違い を踏まえて協力することで家族関係がより よくなることを説明することができる 評価 方法例 ある家族に関する物語や漫画,映像(ド キュメンタリーやドラマ,アニメなど) を見て,協力することで家族関係がよ りよくなることを文章で言い換える ある家族に関する物語や漫画,映像 (ドキュメンタリーやドラマ,アニ メなど)を見て,特定の家族関係を よりよくするために協力できること の実例を挙げる ある家族に関する物語や漫画, 映像(ドキュメンタリーやドラ マ,アニメなど)を見て,家族 関係をよりよくするために協力 できることを要約する 家庭における家族関係について話し 合い,家族一人一人が,互いの立場 や役割の違いを踏まえて協力するこ とで家族関係がよりよくなることの パターンを見つける 「∼によって,家族関係は∼のようにより よくなる」という文章構成で,因果関係を 明確にし,家族一人一人が,互いの立場や 役割の違いを踏まえて協力することで家族 関係がよりよくなることを説明する ア ③ 地域の祭りな ど の 行 事 や, 清掃,防災訓 練等の活動に よって,家庭 生活が支えら れていること 行動 目標例 ある表現方法で示されている地域の活 動によって,家庭生活が支えられてい ることを別の表現で言い換えることが できる 地域の活動によって,家庭生活が支 えられていることの例を挙げること ができる 地域の活動によって,家庭生活 が支えられていることを要約す ることができる 複数の地域の活動から,地域の活動 によって,家庭生活が支えられてい ることを推論することができる 地域の活動によって,家庭生活が支えられ ていることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,地域の 活動によって,家庭生活が支えられて いることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 地域の活動によって,家庭生活が支 えられていることの実例を挙げる 地域の行事を主催する人へのイ ンタビューを基に,地域の活動 によって,家庭生活が支えられ ていることを要約する いくつかの地域の活動を取り上げ (資料やインタビューなど),家庭生 活が支えられていることのパターン を見つける 「∼により,家庭生活は∼のように支えら れている」という文章構成で,因果関係を 明確にし,地域の活動によって,家庭生活 が支えられていることを説明する ④ 自分や家族も それらに関わ ることで地域 を支えている こと 行動 目標例 特定の表現で示されている自分や家族 も地域の活動に関わることで地域を支 えていることを別の表現で言い換える ことができる 地域を支えていることの例を挙げる ことができる 自分や家族もそれらに関わることで地域を支えていることを要 約することができる 複数の地域の活動から,自分や家族 もそれらに関わることで地域を支え ていることを推論することができる 自分や家族もそれらに関わることで地域を 支えていることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,自分や 家族も地域の活動に関わることで地域 を支えていることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 地域を支えていることの実例を挙げ る 地域の行事を主催する人へのイ ンタビューを基に,自分や家族 も地域の活動に関わることで地 域を支えていることを要約する ことができる いくつかの地域の活動を取り上げ (資料やインタビューなど),自分や 家族が地域を支えていることのパ ターンを見つける 「∼により,自分や家族も地域を∼の面で 支えている」のように,因果関係を明確に し,自分や家族もそれらに関わることで地 域を支えていることを文章で説明すること ができる ア ⑤ 中学生の自分 は支えられる だけではなく, 家族や地域の 一員として支 える側になる ことができる こと 行動 目標例 ある表現方法で示されている家族や地 域の一員として支える側になることが できることを別の表現で言い換えるこ とができる 家族や地域の一員として支える側に なることができることの例を挙げる ことができる 家族や地域の一員といて支える 側になることを要約することが できる 複数の地域の活動から,家族や地域 の一員として支える側になることが できることを推論することができる 中学生の自分は支えられるだけではなく, 家族や地域の一員として支える側になるこ とができることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,家族や 地域の一員として支える側になること ができることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 家族や地域の一員といて支える側に なることができることの実例を挙げ る 中学生の自分は支えられるだけ ではなく,家族や地域の一員と して支える側になることについ て,グループで話し合ったこと を要約する グループで自分が地域の人々と地域 のためにできることを話し合ったこ とを,家族や地域の一員として支え る側になることができることのパ ターンを見つける 「∼という点で,家族や地域の一員として ∼の面で支える側になる」のように,因果 関係を明確にし,中学生の自分は支えられ るだけではなく,家族や地域の一員として 支える側になることができることを文章で 説明する ⑥ 地域での決ま りを守ったり, 仕事を分担し たりするなど, 進んで協働す ることが必要 であること 行動 目標例 ある表現方法で示されている地域での 決まりを守ったり,仕事を分担したり するなど,進んで協働することが必要 であることを別の表現で言い換えるこ とができる 地域での決まりを守ったり,仕事を 分担したりするなど,進んで協働す ることが必要であることの例を挙げ ることができる 地域での決まりを守ったり,仕 事を分担したりするなど,進ん で協働することが必要であるこ とを要約することができる 複数の地域の活動から,地域での決 まりを守ったり,仕事を分担したり するなど,進んで協働することが必 要であることを推論することができ る 地域での決まりを守ったり,仕事を分担し たりするなど,進んで協働することが必要 であることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,地域で の決まりを守ったり,仕事を分担した りするなど,進んで協働することが必 要であることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 地域での決まりを守ったり,仕事を 分担したりするなど,進んで協働す ることが必要であることの実例を挙 げる 地域での決まりを守ったり,仕 事を分担したりするなど,進ん で協働することが必要であるこ とについて,グループで話し 合ったことを要約する グループで地域での決まりを守った り,仕事を分担したりするなどにつ いて話しあったことから,進んで協 働することが必要であることのパ ターンを見つける 「∼であるため,地域での決まりを守った り,仕事を分担したりするなど,進んで協 働する必要がある」のように,因果関係を 明確にし,進んで協働することが必要であ ることを文章で説明する ⑦ 視 力 や 聴 力, 筋力の低下な ど中学生とは 異なる高齢者 の 身 体 の 特 徴(が分かり, それら)を踏 まえて関わる 必要があるこ と 行動 目標例 ある表現方法で示されている高齢者の 身体の特徴を踏まえて関わる必要があ ることを別の表現で言い換えることが できる 中学生とは異なる高齢者の身体の特 徴をふまえて関わることが必要であ ることの例を挙げることができる 中学生とは異なる高齢者の身体 の特徴をふまえて関わる必要が あることを要約することができ る 中学生とは異なる高齢者の身体の特 徴をふまえて関わる必要があること を推論することができる 中学生と高齢者の身体の特徴 を比較することができる 中学生とは異なる高齢者の身体の特徴をふまえて関わる必要があることを説明するこ とができる 評価 方法例 高齢者へのインタビューや高齢者との 触れ合い活動などを通して,高齢者の 身体の特徴をふまえて関わる必要があ ることを文章や絵に言い換える 高齢者へのインタビューや高齢者と の触れ合い活動などを通して,高齢 者の身体の特徴をふまえて関わるこ とが必要であることの実例を挙げる 高齢者の身体に関する資料(文 献,映像など)から,高齢者の 身体の特徴踏をふまえて関わる 必要があることを要約する 高齢者の身体に関する資料(文献, 映像など)から,高齢者の身体の特 徴をふまえて関わる必要があること のパターンを見つける 高齢者へのインタビューや高 齢者との触れ合い活動などで 得た情報を基に,中学生と高 齢者の身体の特徴を比較する 「∼という点で中学生とは異なる高齢者の 身体の特徴があるため,∼のように関わる 必要がある」という文章構成で,因果関係 を明確にし,中学生とは異なる高齢者の身 体の特徴をふまえて関わる必要があること を説明する ⑧ 立ち上がりや歩行などの介助の方法につ いて 行動 目標例 ある表現方法で示されている介助の方 法を別の表現で言い換えることができ る 介助の方法を分類することができる 介助の方法を要約することがで きる 介助の方法を推論することができる 立ち上がりや歩行などの介助の方法についてを説明することができる 評価 方法例 ・介助に関する映像や介護の専門家へ のインタビューなどから,介助の方法 を文章や絵に言い換える ・介助の体験を通して,介助の方法を 文章や絵に言い換える ・介助に関する映像や介護の専門家 へのインタビューなどから,介助の 方法を分類する ・介助の体験を基に,介助の方法を 分類する (どちらもどのような観点で分類す るかを話し合わせる) ・介助に関する資料(文献,映像, 専門家へのインタビュー)を要 約する ・介助の体験を通して,介助の 方法を要約する ・介助に関する資料(文献,映像, 専門家へのインタビュー)から,介 助の方法のパターンを見つける ・介助の体験を通して,介助の方法 のパターンを見つける 「(介助の方法)することで(結果)になる」 のように,因果関係を明確にし,介助の方 法を文章で説明する
表1 8つの知識と7つの行動を関連させた目標及び対応する評価方法
認知過程 「理解する」
8つの知識 (interpreting)解釈する (exemplifying)例示する (classifying)分類する (summarizing)要約する (inferring)推論する (comparing)比較する (explaining)説明する
ア ① 自分自身を含 め家族にはそ れぞれの立場 や役割がある こと 行動 目標例 ある表現方法で示されている家族の立 場や役割を別の表現で言い換えること ができる 家族の立場や役割の例を挙げること ができる 家族の立場や役割について要約することができる 複数の家族の情報から,家族の立場や役割を推論することができる 自分自身を含め家族にはそれぞれの立場や役割があることを説明することができる 評価 方法例 ある家族に関する物語や漫画,映像(ド キュメンタリーやドラマ,アニメなど) を見て,家族にはそれぞれの立場や役 割があることを文章で言い換える ある家族に関する物語や漫画,映像 (ドキュメンタリーやドラマ,アニ メなど)を見て,特定の家族の立場 や役割の実例を挙げる ・家族の立場や役割に関する教 科書の記述を要約する ・ある家族に関する物語や漫画, 映像(ドキュメンタリーやドラ マ,アニメなど)を見て,家族 の立場や役割について要約する 家庭で行なわれている様々な活動に ついて話し合い,家族の立場や役割 のパターンを見つける 「∼なので,∼のような立場や役割がある」 のように,因果関係を明確にし,家族には それぞれの立場や役割があることを文章で 説明する ② 家族一人一人 が,互いの立 場や役割の違 いを踏まえて 協力すること で家族関係が よりよくなる こと 行動 目標例 ある表現方法で示されている協力する ことで家族関係がよりよくなることを 別の表現で言い換えることができる 家族関係をよりよくするために協力 できることの例を挙げることができ る 家族関係をよりよくするために 協力できることを要約すること ができる 複数の家族の情報から,家族一人一 人が,互いの立場や役割の違いを踏 まえて協力することで家族関係がよ りよくなることを推論することがで きる 家族一人一人が,互いの立場や役割の違い を踏まえて協力することで家族関係がより よくなることを説明することができる 評価 方法例 ある家族に関する物語や漫画,映像(ド キュメンタリーやドラマ,アニメなど) を見て,協力することで家族関係がよ りよくなることを文章で言い換える ある家族に関する物語や漫画,映像 (ドキュメンタリーやドラマ,アニ メなど)を見て,特定の家族関係を よりよくするために協力できること の実例を挙げる ある家族に関する物語や漫画, 映像(ドキュメンタリーやドラ マ,アニメなど)を見て,家族 関係をよりよくするために協力 できることを要約する 家庭における家族関係について話し 合い,家族一人一人が,互いの立場 や役割の違いを踏まえて協力するこ とで家族関係がよりよくなることの パターンを見つける 「∼によって,家族関係は∼のようにより よくなる」という文章構成で,因果関係を 明確にし,家族一人一人が,互いの立場や 役割の違いを踏まえて協力することで家族 関係がよりよくなることを説明する ア ③ 地域の祭りな ど の 行 事 や, 清掃,防災訓 練等の活動に よって,家庭 生活が支えら れていること 行動 目標例 ある表現方法で示されている地域の活 動によって,家庭生活が支えられてい ることを別の表現で言い換えることが できる 地域の活動によって,家庭生活が支 えられていることの例を挙げること ができる 地域の活動によって,家庭生活 が支えられていることを要約す ることができる 複数の地域の活動から,地域の活動 によって,家庭生活が支えられてい ることを推論することができる 地域の活動によって,家庭生活が支えられ ていることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,地域の 活動によって,家庭生活が支えられて いることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 地域の活動によって,家庭生活が支 えられていることの実例を挙げる 地域の行事を主催する人へのイ ンタビューを基に,地域の活動 によって,家庭生活が支えられ ていることを要約する いくつかの地域の活動を取り上げ (資料やインタビューなど),家庭生 活が支えられていることのパターン を見つける 「∼により,家庭生活は∼のように支えら れている」という文章構成で,因果関係を 明確にし,地域の活動によって,家庭生活 が支えられていることを説明する ④ 自分や家族も それらに関わ ることで地域 を支えている こと 行動 目標例 特定の表現で示されている自分や家族 も地域の活動に関わることで地域を支 えていることを別の表現で言い換える ことができる 地域を支えていることの例を挙げる ことができる 自分や家族もそれらに関わることで地域を支えていることを要 約することができる 複数の地域の活動から,自分や家族 もそれらに関わることで地域を支え ていることを推論することができる 自分や家族もそれらに関わることで地域を 支えていることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,自分や 家族も地域の活動に関わることで地域 を支えていることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 地域を支えていることの実例を挙げ る 地域の行事を主催する人へのイ ンタビューを基に,自分や家族 も地域の活動に関わることで地 域を支えていることを要約する ことができる いくつかの地域の活動を取り上げ (資料やインタビューなど),自分や 家族が地域を支えていることのパ ターンを見つける 「∼により,自分や家族も地域を∼の面で 支えている」のように,因果関係を明確に し,自分や家族もそれらに関わることで地 域を支えていることを文章で説明すること ができる ア ⑤ 中学生の自分 は支えられる だけではなく, 家族や地域の 一員として支 える側になる ことができる こと 行動 目標例 ある表現方法で示されている家族や地 域の一員として支える側になることが できることを別の表現で言い換えるこ とができる 家族や地域の一員として支える側に なることができることの例を挙げる ことができる 家族や地域の一員といて支える 側になることを要約することが できる 複数の地域の活動から,家族や地域 の一員として支える側になることが できることを推論することができる 中学生の自分は支えられるだけではなく, 家族や地域の一員として支える側になるこ とができることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,家族や 地域の一員として支える側になること ができることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 家族や地域の一員といて支える側に なることができることの実例を挙げ る 中学生の自分は支えられるだけ ではなく,家族や地域の一員と して支える側になることについ て,グループで話し合ったこと を要約する グループで自分が地域の人々と地域 のためにできることを話し合ったこ とを,家族や地域の一員として支え る側になることができることのパ ターンを見つける 「∼という点で,家族や地域の一員として ∼の面で支える側になる」のように,因果 関係を明確にし,中学生の自分は支えられ るだけではなく,家族や地域の一員として 支える側になることができることを文章で 説明する ⑥ 地域での決ま りを守ったり, 仕事を分担し たりするなど, 進んで協働す ることが必要 であること 行動 目標例 ある表現方法で示されている地域での 決まりを守ったり,仕事を分担したり するなど,進んで協働することが必要 であることを別の表現で言い換えるこ とができる 地域での決まりを守ったり,仕事を 分担したりするなど,進んで協働す ることが必要であることの例を挙げ ることができる 地域での決まりを守ったり,仕 事を分担したりするなど,進ん で協働することが必要であるこ とを要約することができる 複数の地域の活動から,地域での決 まりを守ったり,仕事を分担したり するなど,進んで協働することが必 要であることを推論することができ る 地域での決まりを守ったり,仕事を分担し たりするなど,進んで協働することが必要 であることを説明することができる 評価 方法例 地域の活動に参加することや地域行事 に関する資料(例えば,回覧板や市報 やウェブページなど)を見て,地域で の決まりを守ったり,仕事を分担した りするなど,進んで協働することが必 要であることを文章で言い換える 地域の活動に参加することや地域行 事に関する資料(例えば,回覧板や 市報やウェブページなど)を見て, 地域での決まりを守ったり,仕事を 分担したりするなど,進んで協働す ることが必要であることの実例を挙 げる 地域での決まりを守ったり,仕 事を分担したりするなど,進ん で協働することが必要であるこ とについて,グループで話し 合ったことを要約する グループで地域での決まりを守った り,仕事を分担したりするなどにつ いて話しあったことから,進んで協 働することが必要であることのパ ターンを見つける 「∼であるため,地域での決まりを守った り,仕事を分担したりするなど,進んで協 働する必要がある」のように,因果関係を 明確にし,進んで協働することが必要であ ることを文章で説明する ⑦ 視 力 や 聴 力, 筋力の低下な ど中学生とは 異なる高齢者 の 身 体 の 特 徴(が分かり, それら)を踏 まえて関わる 必要があるこ と 行動 目標例 ある表現方法で示されている高齢者の 身体の特徴を踏まえて関わる必要があ ることを別の表現で言い換えることが できる 中学生とは異なる高齢者の身体の特 徴をふまえて関わることが必要であ ることの例を挙げることができる 中学生とは異なる高齢者の身体 の特徴をふまえて関わる必要が あることを要約することができ る 中学生とは異なる高齢者の身体の特 徴をふまえて関わる必要があること を推論することができる 中学生と高齢者の身体の特徴 を比較することができる 中学生とは異なる高齢者の身体の特徴をふまえて関わる必要があることを説明するこ とができる 評価 方法例 高齢者へのインタビューや高齢者との 触れ合い活動などを通して,高齢者の 身体の特徴をふまえて関わる必要があ ることを文章や絵に言い換える 高齢者へのインタビューや高齢者と の触れ合い活動などを通して,高齢 者の身体の特徴をふまえて関わるこ とが必要であることの実例を挙げる 高齢者の身体に関する資料(文 献,映像など)から,高齢者の 身体の特徴踏をふまえて関わる 必要があることを要約する 高齢者の身体に関する資料(文献, 映像など)から,高齢者の身体の特 徴をふまえて関わる必要があること のパターンを見つける 高齢者へのインタビューや高 齢者との触れ合い活動などで 得た情報を基に,中学生と高 齢者の身体の特徴を比較する 「∼という点で中学生とは異なる高齢者の 身体の特徴があるため,∼のように関わる 必要がある」という文章構成で,因果関係 を明確にし,中学生とは異なる高齢者の身 体の特徴をふまえて関わる必要があること を説明する ⑧ 立ち上がりや歩行などの介助の方法につ いて 行動 目標例 ある表現方法で示されている介助の方 法を別の表現で言い換えることができ る 介助の方法を分類することができる 介助の方法を要約することがで きる 介助の方法を推論することができる 立ち上がりや歩行などの介助の方法についてを説明することができる 評価 方法例 ・介助に関する映像や介護の専門家へ のインタビューなどから,介助の方法 を文章や絵に言い換える ・介助の体験を通して,介助の方法を 文章や絵に言い換える ・介助に関する映像や介護の専門家 へのインタビューなどから,介助の 方法を分類する ・介助の体験を基に,介助の方法を 分類する (どちらもどのような観点で分類す るかを話し合わせる) ・介助に関する資料(文献,映像, 専門家へのインタビュー)を要 約する ・介助の体験を通して,介助の 方法を要約する ・介助に関する資料(文献,映像, 専門家へのインタビュー)から,介 助の方法のパターンを見つける ・介助の体験を通して,介助の方法 のパターンを見つける 「(介助の方法)することで(結果)になる」 のように,因果関係を明確にし,介助の方 法を文章で説明する ある。説明する際には,原因と結果を自然科学の 法則(ここではオームの法則)に即して文章など で説明することが必要である。 本研究の対象である「家族・家庭や地域との関 わり」は,自然現象のような科学的法則を用いて 説明することが難しい領域である。だが,日常生 活における個別の事象を用いて因果関係を文章で 構成することはできる。 表1より,A(3)において,《説明する》は,8 つの知識すべてと関連させることができた。知識 ①∼⑦については,一般化された概念を説明する ことを求めることができる。また,知識⑧につい ても,「介助の方法」という「科目に関する特定 のスキル」に関する「手続き的知識」を説明する
ことを求めることができる。例えば,知識②に関 する目標として,【家族一人一人が,互いの立場 や役割の違いを踏まえて協力することで家族関係 がよりよくなることを説明することができる】が ある。対応する評価方法は【∼によって,家族関 係は∼のようによりよくなる,という文章構成で, 因果関係を明確にし,家族一人一人が,互いの立 場や役割の違いを踏まえて協力することで家族関 係がよりよくなることを説明する】である。日常 生活での家族関係において,家族一人一人が,互 いの立場や役割の違いを踏まえて協力することで 家族関係がよりよくなることを発見し,ひな形に 沿って,協力することを目的にしたある行動によ って,家族関係がどのようによりよくなるのか, を因果関係的に表現することができるだろう。 4.総合考察 研究1では,解説編は学習指導要領をどの程度 言及しているのかを明らかにした。結果として, 知識は具体的な知識を用いて説明されていたため, 一定の性質を把握することができた。ただし,知 識⑦や⑧のように,情報量が少なく,判断が分か れる可能性がある記述も確認された。行動の記述 は,「理解する」もしくは「分かる」の2語のみ で表現されており,それ以上の性質については明 らかにできなかった。 そこで,研究2では,「理解する」の明確な姿 を明らかにするため,解説編の8つの知識とRBT の「認知過程次元」〈理解する〉を表す7つの行動 を組み合わせた目標及び対応する評価方法を作成 した。結果として,《解釈する(interpreting)》,《要 約する(summarizing)》,《推論する(inferring)》 と《説明する(explaining)》の4つの行動は, 知識①∼⑧すべてと関連させることができた。よ って,A(3)を題材にした授業設計をする上で, 目標を設定する際は,この4つのどの行動を用い ても知識と行動との間にある妥当性が担保される。 《例示する(exemplifying)》は,「概念的知識」 を扱う場合(知識①∼⑦)に関連させることがで きた。他方,《分類する(classifying)》は《例示 する》とはアプローチが異なっており,具体的な 知識からカテゴリーを生成する過程であるため, 知識⑧のみと関連させることができた。《比較す る(comparing)》は,2つもしくは複数の対応 する事象を扱う場合のみに使用できるため,中学 生と高齢者の身体(知識⑦)を比較する学習のみ に適用可能であった。これら3つの行動は,知識 の特性を検討した上で組み合わせることが必要で ある。 本研究で作成した目標の記述は学習指導要領及 び解説編で示された知識にすべて依拠している。 評価方法も学習指導要領の内容の取り扱いを参考 にしている。結果として,これらの記述は,文意 の判断が分かれてしまう箇所を包含していた。そ のため,本研究の成果である表1の目標や評価方 法に関する記述はあくまでも一例となる点に本研 究の限界がある。 だが,一例だとしてもRBTを用いることで, A(3)において曖昧だった行動を具体的かつ多様 に表現するとともに評価方法まで検討し,目標を 明確にすることができたことに本硏究の意義があ る。本研究で紹介した〈理解する〉の7つの行動 に関する概念を教師が正しく理解することで,家 族を扱う学習における生徒の出口の姿を明確にイ メージし,知的な学習が担保された授業づくりを 行うことが期待できるためである。実践での活用 を想定すると,表1のどの記述も〈理解する〉姿 を表したものであり,評価方法の妥当性も担保さ れた授業設計の足がかりとなり得る。 5.今後の課題 今後の課題として,次の2点が挙げられる。1 点目は,本研究で作成した目標及び対応する評価 方法に対する教員の認識について把握する必要性 である。これまで,学習指導要領家庭分野及び解 説編における目標の行動部分の解釈については, 各教員の専門性に委ねられていた。本研究では, RBTにある〈理解する〉の多様な行動を参考に したが,そこには普段の実践で馴染みのない単語 である可能性が考えられる。よって,この作成結
果に対する教員の認識を把握し,補足しなければ いけない箇所や研修のための指針を得る必要があ る。2点目は,「イ 家族関係をよりよくする方 法及び高齢者など地域の人々と関わり,協働する 方法について考え,工夫すること」における行動 面についても明確化していくことである。先述の 通り,「ア」は基本的な知識の理解を目指しており, 「イ」を育成するための基盤である。そこで,「考 え,工夫する」とはどのような姿であるかについ ても検討することで,題材全体をデザインするた めの視点を得ることができる。
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A. Harrow (1972). A Taxonomy of the Psychomotor Domain: A Guide for Developing Behavioral Objectives, David Mckay.
B. J. Simpson (1966). The Classification of Educational Objectives: Psychomotor Domain, Illinois Journal of Home Economics, Vol.10(4).