僚評価の評価シートの試作( 本文(Fulltext) )
Author(s)
高橋, 優三; 長野, 功; 呉, 志良
Citation
[医学教育 = Medical education] vol.[40] no.[5] p.[355]-[359]
Issue Date
2009-10-25
Rights
Japan Society for Medical Education (日本医学教育学会)
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/38521
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。医学教育 2009,40(5):355~359 報 告
学生がプレゼンテーション技術を学ぶための
自己評価と同僚評価の評価シートの試作
高 橋 優 三* 長 野 功* 呉 志 良* 要約: 1) プレゼンテーション技術は重要であるが,この技術付与のための時間を正規の医学部カリキュラムに盛り込む余裕は 少ない.学生が発表を上手に行うことの重要性に気がつき,かつそのコツを学ぶ事を目的に,自己評価(学生が自分 の発表を)および同僚評価(学生が同僚の発表を)する評価シートを作成した. 2) この評価シートには,プレゼンテーションの技術についてチェック項目が網羅されている.このチェック項目の近辺 には,それに関連した発表技術のコツが併記され,チェックの作業をしているうちに,その技術を学べるように工夫 されている. 3)この評価シートは,学生と教員両者に役立つ.学生は発表の仕方を自から学び,教員は発表内容の指導に専念できる. キーワード:自己評価,同僚評価,プレゼンテーション技術,評価シートDevelopment of a peer evaluation form and a self-evaluation form to acquire oral presentation skills
Yuzo Takahashi* Isao Nagano* Zhiliang Wu*
1) We have developed two forms to evaluate studentsʼ oral presentation skills (important but hard to teach in the medi-cal school curriculum): one is a peer review form for an audience to evaluate a presenterʼs performance, and the other is a form for a presenter to evaluate his or her own performance.
2) The evaluation process is simple: evaluators fill out the forms by checking the items for evaluation. With these evalu-ation forms students can get tips for improving their presentevalu-ations because technical suggestions are written near each item.
3) The forms were beneficial for both students and instructors, because students could get tips for improving their pre-sentations, and instructors could concentrate their efforts on scientific content after the studentsʼ presentations.
Key words: oral presentation, evaluation, tips, form
* 岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻分子・構造学講座寄生虫学分野,Department of Parasitology, Gifu University
Graduate School of Medicine,Gifu 501︲1194 Japan [〒 501︲1194 岐阜市柳戸 1︲1]
医師や医学者が自分の専門の内容を適切にプレ ゼンテーション(口演発表)する能力の重要性 は,充分に強く認識されているが,医学部におけ るこの訓練の問題点として,以下の諸点がある. 1)医学生が教員に代わって,同級生にプレゼン テーションをする機会を,正規のカリキュラムの 中で与えることがあるが,そのような機会は多く 取れない.発表能力は一種の技術であり,何回か 練習しないと身につかない.学生ひとりひとりに 何回か発表の機会を持たせるのは,カリキュラム 上,かなり困難である. 2)学生にプレゼンテーションの機会があって も,直後の省察では,発表した内容に重点がおか れ,発表の仕方に関する指導に時間を割きにく い. 3)プレゼンテーションの仕方だけを教える時間 を正規のカリキュラムに組み込むのが最善である が,窮屈な医学部カリキュラムには,そのような 時間的な余裕がない.また教育目的を発表技術の 訓練に限定しても,やはり専門分野毎に特化した 発表形式というものが存在するので,発表の内容 は医学専門であるべきであろう.そうなると内容 を熟知した教員が必要であり,二つの能力を兼ね 備えた人材を確保しにくい. このような理由で現在の日本の医学部の正式カ リキュラムにおいて,学生のプレゼンテーション 能力の開発のためのカリキュラムの設定は,十分 ではない. このような不利な状況の軽減方法のひとつとし て,我々は(a) Peer Review Form と(b) Self︲ Reflection Form を試作した.この Form の特色 は,以下の諸点である. 1)学生が評価の Form を記入するという作業を 通して,プレゼンテーションの仕方のポイントを 自然に学べるように工夫されている.すなわち (a)の Form では,学生によるプレゼンテー ションを同僚である学生が評価する作業である が,チェックする評価項目の近辺には,これに関 連して留意すべき発表のコツが併記されている. (b) の Form では発表者が自己評価するという 作業であるが,自分のパフォーマンスを省察すべ き視点を想起させる表現が,チェックする項目と して列記されている. 2)同じ発表技術に対する評価項目なので,本来 なら,(a)の同僚評価と(b)の自己評価の項目 は同じであるはずだが,この 2 つの Form では省 察すべきポイントを異なった視点から示してい る.その対比で,学生が自ら気がつくのを期待し ている.本人による “発見” は,教員が直接口に 出して指導をする以上の教育効果がある. 3)発表会では,自分が発表する時の態度だけで なく,他人の発表を聞く態度も重要であるため, どのように他人の発表を聴くべきかについて,気 づきを促す項目を作った. 4)またプレゼンテーションには上手と下手があ り,上手という事が自分の学術活動にどれだけ重 要なのかに気づいて,自己努力するように,コー チング的な表現を織り込んだ. 5)また,他人を “正しく” 評価する事は,自浄 能力と自己成長がある健全な学習集団を形成する ための基本能力として重要である.このため,他 人を評価する時の心構えや適切な方法について も,記載を盛り込んだ. 岐 阜 大 学 医 学 部 の PBL 病 原 体 コ ー ス(3 年 生)の学生発表会において,この 2 つの Form を 実際に用いて有用性の検討を行った.このコース では,学生が同級生(80 名)を相手に,テュー トリアルのグループ(8 名)で自学自習した内容 を共同でまとめ,発表する機会を設置している. 発表のメディアとしては,パワーポイントのファ イル,OHP などが用いられる.発表は 1 グルー プで 10 分程度,引き続いて 20 分程度の質疑応答 がある.発表時には 8 名全員が演壇に立つが,主 に代表者が話す.この発表を担当するのは,3 グ ループのみであり,発表機会がある学生の人数 は,限定的となる. この学生による発表の目的は,PBL による自 学自習の促進と,その成果を教員が確認するため であるため,発表の後の質疑応答は,発表内容に 関することが多く,発表の手技について省察する 時間は取りにくいのが実情である. 発表が終了する毎に,聴衆の学生には Peer
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Review Form の記入,発表者には Self︲Reflection Form の記入を求めた.発表者には同級生からの Peer Review Form が届けられ,自分の発表に関 する同僚評価を知る事になる.同僚評価の教育的 有効性は,よく知られている1, 2).また,Self︲
Reflection Form を自分で記入し,自分で自分の 発表手技を省察する.発表者をしなかった学生 は,Peer Review Form の記載を通して,発表手 技を学ぶ事になる.いずれも,それまで発表のコ ツを学ぶ特別な機会が無かった集団である. この Peer Review Form と Self︲Reflection Form の記入後,この Form が学生の発表能力の向上に 役立つものなのか,その有効性について,匿名の アンケート調査を行った. 質問事項は,いずれの Form に関しても「発表 のコツを学ぶのに役立ったか」と「発表の重要性 を理解するのに役立ったか」の 2 問で,Yes から No までの間の 5 段階評価で答える形式である. アンケート票の回収率は前者の Form が 90%, 後 者 の Form が 67% で あ っ た.Peer Review Form,Self︲Reflection Form のいずれも,発表 の重要性を理解しそのコツを学ぶのに,はっきり Yes と肯定的に評価した回答が多かった(37%~ 50%).はっきり No と否定的にした評価は,少