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学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(様式第9号)

学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名 Mohammad Mostafizur Rahman

審 査 委 員

主 査 尾 添 嘉 久 ◯ 副 査 古 田 賢 次 郎 ◯ 副 査 中 島 廣 光 ◯ 副 査 東 政 明 ◯ 副 査 松 井 健 二 ◯

題 目

Synthesis and Structure-Activity Relationships of Iminopyridazine Competitive Antagonists in Insect GABA Receptors(昆虫 GABA 受容体に おけるイミノピリダジン競合アンタゴニストの合成および構造活性相関)

審査結果の要旨(2,000字以内)

γ-アミノ酪酸(GABA)は、神経系において抑制性神経伝達物質として重要な役割を果たしている。

昆虫における GABA 受容体(GABAR)は、殺虫剤の重要なターゲットである。フィプロニルを代表とす るフェニルピラゾール系殺虫剤は、GABAR チャネルのブロッカー(非競合的アンタゴニスト)として GABAR を阻害し、殺虫活性を発現する。しかし近年、フィプロニルに対して抵抗性を示す害虫の出現 が報告され、問題となっている。そのために、植物保護の観点から、既存殺虫剤に対して抵抗性を示 す害虫に対しても作用する、新たな作用点をもつ害虫制御剤の開発が期待されている。GABAR は、医 薬分野では、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸、全身麻酔薬など多様な薬物に対する複数の作用点 をもつことが知られているため、農薬化学の分野でも昆虫 GABAR 特異的な作用点を利用すれば新たな 薬剤の開発が可能であると考えられる。

上記の観点から、有望なリード化合物として競合的アンタゴニストがある。非競合的アンタゴニス トは、前述のように GABAR を阻害する殺虫剤としてすでに活用されているが、同じく GABAR を阻害す る競合的アンタゴニストは殺虫剤創製の観点からは研究されたことがない。そこで本研究では、哺乳 類 GABAR に対する競合的拮抗薬として知られる gabazine(SR95531)というイミノピリダジン系化合 物に注目して研究を行った。

まず、gabazine の母体骨格である 1,6-ジヒドロ-6-イミノピリダジンの1位、3位置換基の変換と 4位への置換基の導入を行い、gabazine を含む 24 誘導体を合成して、昆虫 GABAR におけるアンタゴ ニスト活性を測定した。誘導体は、3-アミノ-6-クロロピリダジンを出発原料として、2-4段階、高 収率で得られた。アンタゴニスト活性は、農業害虫であるヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus) とハスモンヨトウ(Spodoptera litura)からクローニングした GABAR サブユニット Rdl をショウジョ ウバエ S2 細胞に発現させ、電圧感受性蛍光プローブを使って GABA 応答を阻害する活性を測定し評価 した。また、衛生害虫であるイエバエからクローニングした Rdl をアフリカツメガエル卵母細胞に発 現させ、二電極膜電位固定法を用いて GABA 応答を阻害する活性を測定した。さらに、ワモンゴキブリ から単離した神経細胞に発現する GABAR に対する活性はパッチクランプ法で測定した。

まず、農業害虫と衛生害虫とでは gabazine の活性に違いが見られ、前者(特にヒメトビウンカ GABAR)

に対しては活性を示したが、後者に対しては非常に弱い活性しか認められなかった。GABAR 構造の昆 虫種による違いを示していると考えられた。3位置換基に関しては、概して二環式芳香族置換基の場

(2)

合に高活性が認められた。1位置換基としては、gabazine のカルボキシプロピル基のほか、シアノプ ロピル基、ホスホノプロピル基に変換した場合でも活性が認められた。4位へのシクロブチル基の導 入は、1位がカルボキシプロピル基の場合には活性低下を引き起こしたが、1位がシアノプロピル基 の場合は有利に働くという結果が得られた。本研究で合成された誘導体のうち高い活性を示したもの の IC50値は数十 μM であった。代表的な合成誘導体の GABA 濃度応答曲線に及ぼす影響を調べたところ、

誘導体存在下では曲線の平行右シフトが見られ、合成した誘導体が競合的アンタゴニストとして作用 することが示唆された。最後に、GABAR ホモロジーモデルへの誘導体のドッキングシミュレーション から、GABAR のオルトステリック部位には GABA 結合のための重要なアミノ酸残基のほかに、合成誘導 体の芳香族置換基を受け入れる空間が存在することが推察された。

以上の結果は、1,6-ジヒドロ-6-イミノピリダジン誘導体の昆虫 GABAR に対するアンタゴニズムを初 めて明らかにしたものであり、今後の昆虫 GABAR に作用する殺虫性競合的アンタゴニスト創製のため の指針となる研究成果であると考えられる。本論文に記載されている研究結果は、農薬化学の発展に 寄与する極めて重要な知見であり、本論文は博士(農学)の学位論文に値するものであると認められ る。

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