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学位論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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(別紙様式第7号)

学位論文審査の結果の要旨

氏 名 小川智史

審 査 委 員

主査 横田 一成 印 副査 地阪 光生

副査 一柳 剛 印 副査 赤壁 善彦 副査 長屋 敦 印

題 目

トチノキ種皮(Aesculus turbinata BLUME)ポリフェノールの構造解 析と食品機能性

(Structural analysis and nutraceutical activity of polyphenols from Japanese horse chestnut (Aesculus turbinata BLUME)

審査結果の要旨(2,000字以内)

本論文は、日本産のトチノキ種皮から得られる重合型のポリフェノール類の化学構造の特 徴を機器分析により明らかにし、さらに、抗酸化性や糖質と脂質の消化に対する抑制作用を 指標として、これらの重合型のポリフェノール類の食品機能性を解明した研究である。

トチノキ(Aesculus turbinata BLUME)の種子,すなわちトチノミは,日本各地で栃餅,トチノ ミ団子等の食品原料となる.この際に生じる種皮は、これまで有効利用されずに廃棄されて きた.本研究ではこの種皮中のポリフェノール類に着目して、それらを抽出しして分離を行 い,成分の構造解析や食品機能性を検討した.トチノキ種皮からポリフェノール成分を熱水 抽出し,Diaion HP-20,および Chromatorex ODS 1024Tのカラムクロマトグラフィーにより分 画し,最後に,Sephadex LH-20カラムクロマトグラフィーにより,F1,F2,そして F3の3つの 成分に分離した.これらの分離成分の構造を,マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行 時間型質量分析により解析した.その結果,F1には,主に,低分子量のポリフェノール成分 が含まれていた.F2およびF3は,flavan-3-olの重合体であるプロアントシアニジンであるこ とが明らかになり,それぞれ19と23の重合度であることが確認された.F2とF3を1-ドデカ ンチオールを用いて加チオール分解して得られたドデシルスルフィド誘導体を,逆相HPLC とエレクトロスプレーイオン化質量分析により解析した.それによると、これらプロアントシアニ ジンのflavan-3-ol同士の結合は,単結合のB-typeの結合に加えて,二重結合であるA-type

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interflavan結合を有していた。また,構成単位のflavan-3-olが,ガロイル基を有するかを確 認するため、その加水分解酵素であるタンナーゼにより処理して生成物を確認したところ,

ガロイル基は検出されなかった。これらの結果から、トチノキ種皮ポリフェノールの主成分 は,ガロイル基を有していないflavan-3-olを構成単位とする高重合のプロアントシアニジン であり,また,flavn-3-ol同士の結合には,B-typとA-typeの両方の interflavan 結合がある ことがわかった。

心疾患などの生活習慣病の発症が、生体内での活性酸素・フリーラジカルの過剰発生と 関連しており,これらの予防や治療には活性酸素の消去が効果的である。トチノキ種皮由来 のポリフェノール成分の抗酸化作用をDPPHラジカル消去試験およびβ-カロチン退色試験 により評価した。その結果,強い抗酸化作用を示すことが明らかになった.また、生活習慣 病のひとつである糖尿病は,様々な合併症をきたす危険性のある病気である.糖尿病の予 防には,食後の急激な血糖値の上昇を抑制することが有効である.この血糖値上昇抑制の 手段のひとつとして,食事と一緒に,糖質消化酵素を阻害する成分を摂取する方法がある。

糖質消化酵素の α-グルコシダーゼやα-アミラーゼに対するトチノキ種皮由来のポリフェノー ル成分の阻害作用を検討した結果,これらは、強い阻害作用を示すことが明らかになった.

このことから,糖質の過剰摂取による血糖値の急上昇を抑制することが期待できる.さらに、

近年,肥満が社会問題になっている.この予防には食事に含まれる脂肪の吸収を抑制する ことが有効である.食事中のトリアシルグリセロールは,膵液リパーゼにより,2-モノアシルグリ セロールと脂肪酸とに分解されて吸収される.そのため,膵液リパーゼを阻害することによ り,肥満の予防が期待できる.トチノキ種皮由来のポリフェノール成分のリパーゼに対する阻 害作用を検討した結果,強い阻害作用を示すことが明らかになった.また,マウスに,油脂と 一緒に経口投与したところ,血中トリアシルグリセロールの上昇が抑制された。このことによ り,in vivoの動物実験系でも、ポリフェノール成分は脂肪の消化酵素のリパーゼを阻害し,

脂質の分解吸収を抑制することが確認された。

以上のように、本論文は、食品製造に実際に利用されているトチノミの廃棄物であった種 皮に由来する重合型のポリフェノール類の化学構造の特徴を明らかにすることができた。ま た、分離した各成分は、抗酸化性や糖質と脂質の消化作用を有意に抑制する食品機能性 を有する証拠を示した。従って、これらの重合型ポリフェノール類は、潜在的に食品素材とし て有望と考えられる。本論文で記載されている研究成果は、食品機能化学分野の発展に寄 与する新規の知見であり、学位論文として十分な価値を有する。従って、本学生は、本学連 合農学研究科博士課程修了者として、博士(農学)の学位を与えるのに適合していると判断 した。

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