博士課程用(甲)
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(様式4)
学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨
品川 知司 印
(学位論文のタイトル)
Intraoperative Neuromonitoring during Reverse Shoulder Arthroplasty (リバース型人工肩関節置換術における術中神経モニタリング )
(学位論文の要旨)2,000字程度、A4判
広範囲腱板断裂を伴う変形性肩関節症では、従来の解剖学的インプラントを用いた人工関 節置換術(TSA)が行われても除痛は得られるが腱板機能不全によって肩関節挙上制限が残存した。
そのような症例に対してリバース型人工肩関節置換術(RSA)が行われ、腱板機能不全を三角筋が 代償し肩関節を挙上することを可能にし、よりよい成績が得られるようになってきた。しかしなが ら、RSAではTSAよりも神経損傷の合併症が多いとの報告もされている。そこで我々は、RSA術中に 神経モニタリングを行い、神経損傷リスクに晒される可能性が高い神経および手術操作を明らかに することを本研究の目的として調査した。
2015年1月から2016年3月までの間に当科でRSAを行った15例15肩(男性4例、女性11例)を対 象とした。原因疾患の内訳は腱板断裂症性変形性肩関節症 9肩、広範囲腱板断裂 3肩(1肩は特発 性上腕骨頭壊死を併発)、変形性肩関節症 2肩、関節リウマチ 1肩であった。
神経モニタリングにはThe neuromaster MEE-1200 (Nihon Koden, Tokyo, Japan)を用いて、正中神 経の体性感覚誘発電位(SEP)、上肢 6筋(三角筋:腋窩神経、上腕二頭筋:筋皮神経、上腕三頭筋
:橈骨神経、長橈側手根伸筋:橈骨神経、短母指外転筋:正中神経、小指外転筋:尺骨神経)の経 頭蓋運動誘発電位 (TcMEP)および持続筋電図(Free-EMG)を術中に測定した。神経損傷リスクのア ラートとして、SEPおよびTcMEPにおいては術直前に測定したコントロール波形に対して50%以上の 振幅減衰、10%以上の潜時延長とし、Free-EMGでは異常波形出現と定義した。手術操作は①アプロ ーチ、②脱臼、③関節窩操作、④上腕骨操作、⑤整復、⑥閉創の6段階に別けて評価した。アラー ト出現時は、筋鈎を除去し、それでも電位の回復がなければ、患肢の肢位を中間位に戻した。アラ ートの回復を認めたら注意深く次の操作に移った。
15例のうち11例(73.3%)に合計31件のアラートを認めた。そのうち17件が腋窩神経に関連 し、11件が関節窩のインプラント設置中に出現していた。腋窩神経は筋皮神経、正中神経、尺骨神 経よりも有意にリスクが高かった。同時に複数生じたアラートを1回とカウントすると1手術あたり の平均アラート回数は1.3回で手術操作別にみると関節窩操作と上腕骨操作時に有意にアラートが 生じていた。31件のうちの29件がTcMEPsで出現し、アラート平均値は30%、その分布は5例が0-5%、
1例が11-20%、6例が21-30%、7例が31-40%、9例が41-50%だった。アラート出現時の神経と手術操作 との間、およびアラート出現の有無と背景因子との間に明らかな関連性は認めなかった。
今回の術中にアラートが出現しなかった4例はすべて術後神経障害が生じなかったが、アラ ートが出現した11例中 2例に術後神経障害を認めた。1例は71歳女性、関節窩インプラント設置後
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に腋窩神経のアラート(TcMEPs 4%)が出現した。筋鈎除去および肢位を中間位に戻してもアラー トが継続した。腋窩神経の直接損傷を鑑別するため、関節窩に設置したインプラントを一旦除去し、
腋窩神経を確認したが明らかな損傷は認めなかった。注意深くインプラントを再設置し手術を完遂 したが、最終的にアラートの回復は得られず(TcMEPs 6%)、術後に三角筋不全麻痺を生じた。も う1例は75歳、この症例も関節窩インプラント設置中に腋窩神経のアラート(TcMEPs 41%)を認め たが、肢位を中間位に戻すと回復が得られた。術後に正中神経領域の母指しびれが生じたが、術後 2ヶ月までに回復した。
RSA術中の神経障害リスクについて、肩関節の伸展外旋位を強めることで腕神経叢(特に腋 窩神経および橈骨神経)にかかる牽引ストレスが増大することが報告されている。本研究で多くの アラートが出現した関節窩操作や上腕骨操作時も同様の肢位で手術を行っており、術中に腋窩神経 への牽引ストレスが生じた可能性が考えられた。また、腋窩神経は関節窩のすぐ下方を走行してお り、関節窩インプラント設置中に筋鈎による直接的な損傷のリスクも考えなければならい。今回設 定した振幅に関するアラートの閾値は、先行研究と同じ50%と定義した。脊椎手術では70-80%が閾 値として用いられることが標準的である。本研究において仮にアラートを80%と定義したとすると、
31件のアラートのうち6件が検出されたことになる。術後に腋窩神経の不全麻痺を生じた1例もこの なかに含まれている。閾値を80%に設定することは臨床的な術後神経障害を検出するためには十分 で受け入れられるものかもしれない。しかしながら、われわれは予防的な観点からは早期に閾値は 50%を使用することが、神経損傷リスクに晒された状態をできる限り早期に検出し回避するために 好ましいと考える。
Limitationとして、症例数が少ないこと、術後鎮痛のために留置した腕神経叢ブロックカテ ーテルによる神経損傷の可能性も考えなければならない。後者の対策として、カテーテルの留置は 全身麻酔の導入前に熟練した麻酔科医がエコーガイド下に行い、臨床的に明らかな神経損傷がない ことを確認後に麻酔導入を行った。
本研究の結果からRSAでは腋窩神経および関節窩操作時に損傷リスクが高い可能性が示唆さ れた。伸展外旋肢位で神経損傷リスクが高く、RSA手術操作において神経損傷を予防するためには その肢位を必要最小限にするべきである。