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ウシの記憶に関する予備的試験

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Academic year: 2021

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ウシの記憶に関する予備的試験

植竹勝治・工藤吉夫*.岡本隆史

農 林 水 産 省 北 海 道 農 業 試 験 場 , 札 幌 市 062 *元北海道農業試験場 (1994.1.26 受理) キーワード:動物行動,学習,記憶,ウシ 要 約 ウシにおける条件づけられた行動反応の記憶の保 持ならぴに空間に対する記憶の保持について以下の 実験を行った.生後約6カ月齢のホルスタイン種育 成雌牛12頭を 4頭ずつ白色群,緑色群および赤色群 に分け,餌報酬を用いて75dBの1kHz純音と 10w. の白色,緑色および赤色光のいずれかから成る複合 刺激の提示に対して,鼻先でパーを押すか触れるよ うにオペラント条件づけした.条件づけ完了後, 10, 30, 60, 90日後に再ぴ訓練と同じ条件下で行動反応 の再生率を測定した.またウシの実験場所への自発 的移動から空間的記憶の保持についても検討した. 10, 30, 60, 90日後の再生率は,訓練最終段階の正 反応率を 100とすると,白色群:82.8,110.3,104.3, 88.4 ;緑色群:110.3, 95.0,欠測値, 111.2;赤色 群 :117.6, 101.6, 80.0, 16.1であり,赤色群の 90 日目にのみ有意に低下した(X2

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df=lp< 0.01) .またウシは 90日後でも自発的に実a験場所へ と移動した.したがってウシは90日間にわたる記憶 の保持が可能であるが,刺激の種類によっては忘却 までの期間に差が見られる可能性も示唆された. 緒 C I ウシの学習能力と記憶について知ることは,ウシ の自発的行動を利用した新たな行動制御技術を開発 する上で有益である.

Kov ALeIK and KOVALerK (1986)は 2者択ーのジ

グザク迷路を用いて,ウシの飼槽の位置に関する学 習能力と記憶について調べ, 15カ月齢の若雌牛の方 が2産次の経産牛よりも習得の早さにおいては優れ ているが,

6

週後における記憶の保持については,逆 に若雌牛の正解率46%に対して経産牛 77%であっ たと報告している.またオペラント条件づけ手法を 用 い る こ と で , ウ シ に も 細 や か な 図 形 識 別 能 力 (BALDWIN; 1981)のあることが明らかにされている. さらには迷路を用いた試験によって,複雑な迷路を 認知できる空間学習能力を有することも示されてい る (KILGOUR;1981). 本試験では,ウシが訓練を通じて習得した行動反 応と実験場所に関する空間的記憶を, 90日間にわた りどの程度保持しているのかを検討した. 材料および方法 供試牛は生後約6カ月齢のホルスタイン種育成雌 牛計12頭であった.試験期間中の給餌は,グラスサ イレージ約4kgを8: 30と 15: 30噴に給与し,乾草 ならび、に水は自由摂取とした.配合飼料1.2kgを試 験時に報酬として用い,15: 30にも同量を給与した. 試験場所周辺の施設の配置は図1に示す通りであ り , P甫育用ぺンに自作のオペラント条件づけ装置 (REYNOLDS;1989) を設置した.試験牛は試験開始 まで繋留し,試験終了後はパドックに運動に出した. 試験は牛舎周辺が比較的静かになる 12時前後に実施 した. 供試牛は訓練に用いる光刺激の色に応じて白色群, Preliminary Memory Testing in Cattle: Katsuji UETAKE, Yoshio KUDO* and Takashi OKAMOTO (Hokkaido N ational Agricultural Experiment Station

*Former Hokkaido N ational Agricultural Experiment Station, Sapporo 062)

(2)

植竹勝治・工藤吉夫・岡本隆史 Calving pen Walking line of calves in the experiment Experimental pen Usual walking line Calving pen Observer Q U -E A ' E

A a ι E L I z -2 2 S 1 2 2 ・ ・ 2 n

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- - z A 一 z Z E E -H ・I ・ -1 2 F し F n n M 4 L - z - E ・ E -Q U E ・ E ・ -2 Tie stalls Paddock A plan of the experimental cowshed with the walking lines of calves.

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was usual for calves to go out to a paddock for exercise on no test days

but on the memory testing day they were required to walk to the experimental pen. Fig.1. 1. Travel of calves to the experimental pen Voluntary walk Experimental pen Forced travel Tie stall stimulus Light Tone 10sec. without response 2. Trial procedure Diagrammatic representation of the experimental procedure. Each incorrect response in the intertrial period restarted the intertrial interval and caused a glimmer of the 5-w. white light for feedback. -

46-F

i

g.2.

(3)

ウシの予備的記憶試験 100として,白色群:82.8, 110.3, 104.3, 88.4;緑 色群:110.3, 95.0,欠測値, 111.2;赤色群:117.6, 101.6, 80.0, 16.196であり,赤色群の90日目のウ シだけが有意な再生率の低下を示した (X2

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緑色群の60日目の測定は装置不 調のため欠測となった. 試行聞の待ち時間中の誤反応数については,再生 率と逆の傾向が認められ,訓練最終段階では3.3

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6 回であった赤色群のウシで,90日目には22回の誤反

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緑色群,赤色群の4頭ずつ3群に分けた.試験時に はウシを繋留ストールから試験用ペンに誘導し,そ こで逐次接近法により 75dBの1kHz純音と 10w. の白色,緑色あるいは赤色光のいずれかから成る複 合刺激の提示に対して,鼻先でパーを押すか触れる かして応答するよう訓練した.訓練最終段階におけ る試行手続きでは,複合刺激提示までの待ち時間が 最短10秒で,その聞の誤反応により待ち時間が延長 きれ,待ち時間終了後の3.2秒の複合刺激提示への 正反応に対して,配合飼料約50gが報

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酬として与えられた.正反応の場合に一一ー は報酬獲得後に,あるいは刺激提示3.2 White 秒間に応答がなければそのまま待ち時 聞が復帰した(図2).訓練期間におけ る試行数は毎日1セッション約25試行 であり,正反応率が8096以上かつ誤反 応数が5回以下の規準に達するまで訓 練を続けた.規準達成に続き,複合刺 激とその構成要素である音・光刺激を 計20回提示するセッションを4日間実 施した(植竹;1993)後, 10, 30, 60, 90日後に再び訓練と同じ条件下で,複 合刺激20回提示に対する正反応率を測 定した.訓練最終4セッションの平均 正反応率を 100として,記憶試験時の 相対正反応率(再生率, 96)を求めた. また訓練期間を通して自然に習得した 繋留ストールから実験用ぺンへの試a験 牛の移動を自発的移動か否かに分け, 各処理および実験日毎に記録して,ウ シの空間的記憶の保持についても検討 した. Green bぞ ω . ... ro 1-< 口

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Days after the last training The retention rate of each of the 3 test groups

white (incandescent), green and red (0-・), and the number of incorrect responses (口, ~) at the last stage of training (0) and after 10, 30, 60, or 90 days with no further training. The retention rate was defined as the relative correct response rate to the mean correct response rate of last 4 sessions of training shown as 100 percen

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- 47-Fig.3. 訓練に要した日数は,白色群20.8

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3.6,緑色群16.0

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2.9,赤色群18.0士

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7日であり,緑色群のウシの習得がわ ずかに早い傾向が認められたが,その 差は有意で、はなかった. 記憶試験時の群毎の行動反応の再生 率ならびに誤反応、数は図3に示す通り であった.10, 30, 60, 90日後の複合 刺激に対する行動反応の再生率は,訓 練最終4セッションの平均正反応率を

結果および考察

(4)

植竹勝治・工藤吉夫・岡本隆史 応、が観察された. 繋留ストールから試験用ぺンへのウシの自発的移 動については,白色群および緑色群の60日目以外の 全てのウシで,記憶試験時にも自発的移動が観察さ れた. 今回の結果から,全体的には,ウシが90日という 長期間にわたり習得した行動反応ならびに空間的記 憶を保持・再生できることが示きれた.また環境刺 激の種類(今回の場合には色)によっては忘却まで の期間に差が見られる可能性も示唆された. 植竹ら(1993) はウシにおいて,餌が報酬である 時には,刺激としての色の種類と行動反応との結ぴ 付き易さに差があることを示唆しており,これらが 記憶保持の期間と関係があることも考えられる.し かしながら,ウシの学習能力については遺伝的な要 素(種雄牛効果)の関与が証明され (ARAVEet al. ; 1992) ,習得の早さと記憶保持に月齢による差が見ら れることも示されている(KovALeIK and Kov ALeIK ; 1986) ことから,個体差を含め,今回の結果の一般 化にはさらなる例数の蓄積が必要と思われる.

謝 辞

北 海 道 農 業 試 験 場 業 務 第

3

科 第

2

牛舎の諸氏に は,本実験の遂行にあたり格段のご協力を頂いた. また北海道農業試験場畜産部長伊藤稔氏には本報告 のご校閲を頂いた.ここに記して深〈感謝の意を表 する. 文 献

ARAVE, C.W., R. C.LAMB, M. J.ARAMBEL, D. PURCELL and J.L. WALTERS, (1992) Behavior and maze learning ability of dairy calves as influenced by housing, sex and sire. Appl.Anim. Behav. Sci., 33: 149-163.

BALDWIN, B.A., (1981) Shape discrimination in sheep and calves. Anim. Behav., 29: 830-834. KILGOUR, R., (1981) Use of the Hebb-Williams

closed-field test to study the learning ability of Jersey cows. Anim. Behav., 29: 850-860. Kov ALeIK, K.and M. Kov ALeIK, (1986) Learning

ability and memory testing in cattle of different ages. Appl.Anim. Behav. Sci., 15: 27-29. REYNOLDS,

G

.

S., (1989)オペラント心理学入門.初 版. (浅野俊夫訳)17-25. サイエンス社.東京. 植竹勝治・工藤吉夫・岡本隆史, (1993) ウシの餌獲 得場面における視覚優位性と色による目だち易さ の差. 日本動物行動学会第12回大会発表要旨集,

2

2

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参照

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