38 (6) 氏名(生年月日)
本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ヤマ ザキ マサ コ山崎昌子(昭和3
博士(医学) 甲第197号平成3年11月15日
学位規則的4条第1項該当(医学研究科専攻,博士課程終了者)
心原性脳塞栓症と脳血栓症における凝血学的分子マーカーの変動 (主査)教授 丸山 勝一 (副査)教授 高桑 雄一,細田 瑳一論 文 内 容 の 要 旨
目的 血栓形成には心原性脳塞栓症においては凝固系の活 性化が,また,動脈硬化性脳血栓症においては血小板 系の活性化がそれぞれ重要であると考えられている. 本論文では,各種凝固線溶分子マーカーを測定し,こ れらのマーカーの脳梗塞の病型診断や治療の指標とし ての有用性についてを検討した. 対象および方法 心原性脳塞栓症(E)群38例(男性22例,女性16例, 年齢64±19歳),動脈硬化性脳血栓症(T)群63例(男 性47例,女性16例,年齢66±13歳)および患者対照(C) 群23例(男性11例,女性12例,年齢60±12歳)につい て,急性期(第7病日以内),亜急性期(第14~28病日), 慢性期(第29病日以後)の各期毎に比較を行った.分 子マーカーは凝固活性の指標として五brinopeptide A (FPA),thrombin-antithrombin III complex(TAT), antithrombin III活性値(ATIII), protein C(PC) の抗原量(PCAg)および活性値(PCAc)を,線溶活 性の指標としてfibrinopeptide Bβ15_42(FPBβ5-42), D-dimer,α2-plasmin inhibitor-plasmin complex (PIC)を測定した. 結果1.急性期にはE群でT群,C群よりも有意に
TAT, D-dimerが高値, PCが低値であった. 2.亜急性期にはE群ではFPA, FPBβ15.、2がT 群,C群よりも, TAT, D-dimer, PICがC群よりも 有意に高値であった. 3.慢性期にはFPA, FPBβ15-42, D-dimerがE群で C群よりも有意に高値であった.4.凝固線溶の相対的な活性の指標であるTAT/
PICは,急性期にC群よりもE群で有意に高値であっ 、た. 5.抗凝固療法を行ったE群の8例では,治療後に PC, PICが有意に低下した. 考察 T群よりもE群において著明.であった凝固線溶系 の活性化は,主として心内血栓形成によると考えられ た.しかし,凝固線溶系の活性化は急性期に最も著明 でその後慢性期にかけて低下する傾向が認められ,梗 塞後の凝固系の活性化が関与している可能性が考えら れた. 結論 1.心原性脳塞栓症では動脈硬化性脳血栓症よりも 凝固線溶系が高度に活性化されており,心内血栓形成 を主に反映していると考えられた.2.今回測定した分子マーカーの中では特にTAT
とD-dimerが急性期の病態把握に有用であると考え られた. 一642一39