総 説 〔東女医大誌 第61巻 第9号頁869∼876平成3年9月〕
高齢者心疾患一薬物療法一
東京女子医科大学 循環器内科(主任:細田瑳一教授)クスモトミヤコゥエダ
楠元雅子・上田みどり
(受付 平成3年7月22日)Heart Diseases in the Elderly:Pharmacological Management
Miyako KUSUMOTO and Midori UEDA
Department of Cardiology, Tokyo Women’s Medical College
The mortality and morbidity of heart disease in the elderly has been increasing in Japan. Most elderly patients have multiple organ impairment, and chronic diseases. T紅erefore pharmacotherapy in the elderly pat孟ents should be done carefully to avoid the adverse drug reactions and rena1, cereberal
and/or cardiac events. We have to understand the pharmacokinetics and pharmacodynamics of drugs
which may be changed in the elderly. And characteristics of the patient is most important to select the kind and dosage of drugs.
This paper addresses the pharmacotherapy in the elderly patients with heart d童sease.
はじめに 平均寿命の延長と共に,高齢者における心疾患 の罹病率は高くなってきている.1989年1年間の 東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所入院症 例は2,838例であるが,70歳以上はその内306例 (11%)であった.入院の目的となった主診断で分 類すると,図1のごとくである.狭心症,心筋梗
高齢者入院症例306例
高血圧症 L6箔 弁膜症 2.3毘 心筋症 0.7踏 その他 17.3路 大勤脈瘤 9.2篤 心不全 13.1% 狭心症 21.8% 不整脈 18.3冤 急性心筋梗塞 15.7冤 (生989.1.L∼12.31.東女医大心研入院症例総数 2838例) 図1 高齢者(70歳以上)入院症例の主診断別内訳 塞のいわゆる虚血性心疾患が38%と最も多くなっ ている.不整脈や心不全も病因としては,虚血性 心疾患によるものが多い.大動脈瘤が9%と比較 的高率を占めているが,これは当施設では高齢者 でも積極的に手術を施行しているので,その目的 での入院が多いことを反映していると思われる. 本稿では高齢者における心疾患に対する薬物療 法とその注意点について述べる. 1.高齢者における薬物療法の一般的な注意点 30歳を過ぎると年齢と共に個体差はあるもの の,徐々に身体各臓器の機能は低下していき(図 2)1),特に70歳以上の高齢者で著しい.薬物使用 に際しては,薬物動態(吸収,分布,代謝,排泄) や薬力学(薬物に対する反応性)の,高齢者にお ける特殊性を充分に理解し,細心の配慮をはらう 必要がある2).また高齢者の症例の多くは他臓器 にわたる動脈硬化症や機能障害を合併しており, その個人の病態を充分に考慮し,適切な薬物を若 年者の1/2∼1/3量より開始し,至適投与量を決め るのがよいが,QOL(quality of life)を向上させ(%) 100 90 80 生70 羅・・ 能50 40 30 20 ・ト §.’、
騰ミ\こく憲濃度
、・’、、−一、 ’窯・< 、訟、\.’・、 心拍出量係数\\↓!!
\ 、、 標準糸球体濾過率 へ、r(huli・)決無騒、
\\標準腎血漿流量 (dめdrast) 標準腎血漿流量 (PAH) 最大呼吸容量 表1 高齢者における薬物療法の注意点 1投薬前に心,腎,肝機能の検査 (血漿クレアチニン,アルブミ ン濃度) 2他臓器疾患,現在使用薬剤や 薬剤による副作用の既往を詳 しく問診する (各種薬剤の相互作用による 血中濃度や効果の変化) 3少量より開始し,必要最少量 にする 4効果と副作用を常に評価 5投与回数は少なくする 腎排泄性薬剤か 肝代謝排泄性薬剤か の選択 副作用の予防 服薬コンプライアン スの向上 30 40 50 60 70 80 90 年齢(歳) 図2 加齢による諸生理機能の低下(Shock1)) ることも忘れてはならない. 高齢者においては,胃腸管への血流量の減少や 胃腸管の運動低下などによる薬物吸収の低下があ り,さらに心拍出量および体内水分量の減少や血 漿アルブミン濃度の低下などにより,薬物の体内 分布(組織への移行)や血中濃度が影響を受ける. またアルブミンと結合する薬物では,1血漿アルブ ミン濃度の低下により,その薬物の血中濃度は結 合型が低く,遊離型が高くなり,効果が強くでる ことがある.肝血流量および肝重量の低下などは, 肝臓での薬物の代謝を低下させ,また腎機能障害 は薬物排泄を遅延させる.これらはすべて薬物の 血中濃度の上昇につながる.腎毒性の薬物では若 年者に比し,急激に腎機能を悪化させやすい.す なわち高齢者では常用量でも副作用の出現頻度は 高くなる.Lamy3)は高齢者に対する理想的な薬物 としては次のような性質を持つものが望ましいと 述べている.i)完全に吸収され, ii)生物学的活性 が高く,iii)初回肝通過効=果:が低く,iv)蛋白との 結合が低く,そして,v)腎と肝でのクリアランス がバランスがとれている薬物が,投与量を少な:く でき,肝や腎機能障害,種々の疾患,栄養不良や 他剤との併用などの,その薬物の血中濃度や作用 へ与える影響が少ないと考えられる. 薬物療法を始める前に,心機能,肝機能(血漿 アルブミン濃度)および腎機能(血漿クレアチニ ン濃度)を必ずチェックし,また薬剤に対する反 応性や感受性も若年者とは異なることを常に念頭 におき,個々の症例に応じた処方内容とする.高 齢者は他科の薬物療法を受けていることが多く, 必ず処方内容は聞き出しておく.薬剤の相互作用 にも注意を払う.定期的に前記機能については経 過を追い,また薬物の血中濃度を測定し,薬物療 法の効果および副作用について常に評価すべきで ある.表1に高齢者における薬物療法の一般的な 注意点をまとめた. 2.心不全 急性心筋梗塞の重症度の分類にForresterの分 類がよく用いられる(図3).心拍出量と肺動脈懊 入試により,すなわち肺うっ血および末梢循環不 全の有無により4群に分類している.肺うっ血に 対しては,利尿薬および血管拡張薬を,末梢循環 不全には,カテコラミンやジギタリスを用いるの が原則である.慢性心不全もこれに準じ,心臓の 収縮性の低下に対しては,ジギタリスその他の強 心意,前負荷増大過剰(循環血液量の増大)に対 しては,利尿薬および静脈拡張薬,後負荷増大(動 脈系の緊張)に対しては動脈拡張薬を用いる. 1)利尿薬 高齢者においては,急激な利尿により脱水症, 脳梗塞,腎機能の悪化を来すので,利尿薬の使用 は少量から始める.サイアザイド系薬剤,ループ 利尿剤およびカリウム保持性利尿薬がある.ルー プ利尿薬であるフロセミド(ラシックス⑭)が最も 強力であり,注射では10mgから,内服としては20 mgから始める.フロセミド使用時は,低カリウム 血症と血漿クレアチニンの上昇に注意する.特に心 係 2.2 数 1/皿iロ/㎡) o 1 − 末梢循環不全(一) 末梢循環不全(一) 肺うっ血 (一〉 肺うっ血 (+) 〔治療〕安静,鎮静薬 〔治療〕血管拡張薬,利尿薬 皿 IV 末梢循環不全(+) 末梢循環不全(+) 肺うっ血 (一) 肺うっ血 (+) 〔治療〕輸液,PM 〔治療〕血管拡張薬,利尿薬 カテコラミン カテコラミン,IABP
18
肺動脈襖入圧(m而g) PM;ペーシング, IABP:大動脈内バルーン・パンピング 図3 急性心筋梗塞におけるForresterの分類 ジギタリスを併用する場合には,低カリウム血症 により心室性不整脈を誘発しやすい.多量のフロ セミド単独投与より,カリウム保持性利尿薬のス ピロノラクトン(アルダクトンA⑧25mg/日)を併 用すると低カリウム血症は起こりにくい.サイア ザイト系利尿薬(フルイトラン⑧2∼4mg/日)は, 電解質の異常,高血糖や高尿酸血症を来し易いが, 長期フロセミド投与により,利尿効果の減弱した 時期に併用すると,利尿が得られることがある. 利尿薬内服時には定期的に腎機能と血清電解質, ヘマトクリットなどを検査する.フロセミドで耳 鳴りを訴える人もいるが,中止により消失する. スピロノラクトンでは女性化乳房がみられること がある. カリウム薬を伴用することがあるが,腎機能の 低下により,高カリウム血症を来したり,薬剤の 停滞による消化器潰瘍をつくることもあるので注 意する. 2)ジギタリスおよびその他の強心薬 ジギタリスは心筋の収縮力の低下による急性お よび慢性の心不全,特に心房細動合併例に最も有 用である,最近は急性のポンプ失調に対しては, カテコラミンが静注で用いられることが多い. ジギダリスには経口薬としてジギトキシン,ジ ジ コP 昌卜 4.B ン 2.0血 中 顕盤 度 〔n蜘1)1.6 一69y 70y一 図4 ジゴキシンの経口内服量と血中濃度 経口内服量(mg/日) ●:0.30, 0 :0.25, ▲ :0.20, △ :0.15>, ★:血漿クレアチニン0.18mg/d1〈 ゴキシンとメチールジゴキシンがあり注射薬では ジゴキシン,セジラニドがある.シギトキシンは 肝代謝排泄性であり,ジゴキシンは腎排泄性であ る.ジゴキシンは半減期が38∼48時間で,ジギト キシンの120∼216時間に比し短く,高齢者では使 い易い.腎排泄性であるので,腎機能に合わせて, 投与量をきめる.70歳以上の症例ではまず1日量 ジゴキシン0.125mg,ジギトキシン0.05mg,ある いはメチールジコキシン0.1mgを投与する.強力 な利尿薬の出現により最近はジギタリスの急速飽 和療法は行わず,維持量で充分目的が達せられる. われわれの症例でのジゴキシン経口投与量と1血中 濃度との関係を図4に示した.70歳以上の症例で は69歳以下の症例に比し,同量投与量でも血中濃 度は高くなっている.高齢者ではジゴキシンの血 中濃:度は,投与量が少量にもかかわらず,血中濃: 度は高く,また高齢者ではクレアチニンクリアラ ンスは低く,血漿クレアチニンは高く,アルブミ ンは低値であり,いずれも若年者群との間に有意 差を認めた(表2)4). 治療域の血中濃度は,ジゴキシン0.8∼2ng/ml,表2 高齢者薬物療法一ジゴキシンー 一諸因子の年齢別平均値一 症例数 平均年齢(歳) 体重 (kg) Ccr (ml/min) Cr (mg/dl) Alb (g/dl) 心房細動 ジゴキシン 投与量 (mg/day) (μ9/kg/day) 血清濃度(ng/ml) ジギタリス中毒 65歳未満 65∼74歳 75歳以上
38
49.7±10.4 54.3± 9.3 35 11 69.2± 2.9 80.4± 4.8 [NS] 54.6±10.5 [NS] 51.3±9.4L_一NS一______」
68.5±25.4 [*] 0.93±0.28 [NSコ 56.6±20.8 0.99±0.23 [NS] 51.2±19ユ [寮コ 1.20±0.26L___。*_」
3.90±0.61 [**] 3,65±0.35 [*] 3.30±0.51 18 L_______。*_____」 16 7 0,22±0.05 [NS] 0.20±0.06 [**] 0.14±0,04L_。._______」
4.03±0.98 [NS] 3.72±1.17 [NS] 3.11±1.16 L_________ _______一 〇.97±0.53 〔NS] 1.03±0.46 [NS] 1.23±0.73 L一一___一一一NS一一一一一一一」 0 1 、 1 *p<0.05 **p〈0.01 ジギトキシン15∼25ng/mlである.前者で2ng/ ml,後老で30ng/mlを超えると中毒症状,各種不 整脈特に心室性不整脈,洞徐脈や洞停止,胃腸障 害が出やすい.また高齢者では中毒域でなくても ジゴキシンにより胃腸障害が出やすいが,その場 合にはジギトキシンに変更してみると消失するこ とが多い.メチールジコキシン(ラニラピッド⑧) はジゴキシンより吸収がよい薬剤である. その他の経口強淫薬としてわが国で開発された ものに,β、一受容体に作用し,陽性変力作用をあら わすと考えられている,カテコラミン近縁薬,デ ノパミン(カルグート⑪)がある.従来のジギタリ ス,利尿薬や血管拡張薬によっても心不全の改善 がみられない例に使用し,効果がみられた例を経 験している.15∼30mg/日が常用量であるが,あく までも従来の薬剤で心不全のコントロールが不充 分な例にのみ用いており,第一選択薬ではない. 3)血管拡張薬 うっ血性心不全の治療に,左室に対して,前負 荷あるいは後負荷をとり,心機能の改善を図る血 管拡張療法が最:近よく行われる.薬剤としては次 のよう・なものがある. i)前負荷の軽減一静脈拡張薬 ニトログリセリン 石肖酸イソソノレビト (ニトロール⑪) ii)後負荷の軽減一動脈拡張薬 ヒドララジン(アプレゾリン⑪) Ca拮抗薬(アダラート⑪) iii)両者の軽減一静脈・動脈拡張薬 プラゾシソ(ミニプレス⑪) ACE阻害薬(カプトリル⑧) ニトログリセリンには舌下錠,テープ,静注用 製剤があり,効果の発現も早く,また持続時間も 短いので,高齢者の心不全や狭心症によく用いら れる.舌下錠として使用する場合には,血圧低下 による失神の可能性があるので立ったままでは使 用しないように必ず指導しておく. Ca拮抗薬にはニフェジピン,ジルチアゼム,ペ ラバミルがあるが,これら三者には表3のような 特徴がある.特に高齢者の場合に注意すべきはジ ルチァゼムとベラバミルによる徐脈と心不全の発 現である.図5に不安定狭心症にジルチアゼム(へ表3 Ca拮抗薬 表4 狭心症処方例 ニブエジピソ ジルチァービム ベラバミル 作用発現時間(分) 20 30 30 半 減 期(時間) 2∼4 4∼6 2∼5 洞結節自動能 0 ↓ ↓ 房室結節伝導能 0/↓ ↓↓ ↓↓↓ 心筋収縮力 ↓ ↓ ↓↓ 末梢血管抵抗 ↓↓↓ ↓↓ ↓↓ 心 拍 数 ↑ ↓ ↓ 心拍出量 ↑ 0/↑ ↓ 脳血管拡張 ↑↑ ↑ 商 品 名 アダラート ヘルベッサー ワソラン セパミット (1)発作時 ①ニトログリセリン(0,3mg) ②二硝酸イソソルビド(5mg) ③ニフェジピン (10mg) 舌下 舌下 chewing
不安定狭心症74歳女性
7月? 磐 撃
6日 10 12 13 14 15 16 1ア 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 (2)発作の予防 1)労作性狭心症 ①二硝酸イソソルビド(5mg) 3∼8錠 二硝酸イソソルビド徐放置(20mg) 2∼4錠 二硝酸イソソルビドテープ(40mg)1/2∼1枚 ニトログリセリンテープ(25mg)1∼2枚 ②ジルチアゼム ③プロプラノ・一ル ④ニフェジピγ (30mg) (10mg) (1Gmg) ニフェジピン徐放錠(10,20mg) ⑤ニコラソジル ⑥チクロピジン 2)安静時狭心症 ①ニフェジピン CAG 5σm 200m 500rn 入浴 (2.5,5mg) (100mg) (10mg) Herbesser 4 6 8 ニフェジピン徐放錠(10,20mg) ②二硝酸イソソルビド(5mg) 二硝酸イソソルビド徐放錠(2qmg) 分3∼4 分2∼4 分1 分1 3∼6錠 分3∼4 3∼12錠 分3∼4 1∼6錠 分1∼4 10∼80mg分1∼2 5∼30mg分3∼4 2∼3錠 分1∼3 1∼8錠 分1∼4 10∼80mg分1∼4 3∼12錠 分3∼6 2∼6錠 分2∼4 Adalat 4 Frandol Tape s 儒 踏9・ 三ア0 50 30 ’mmHg 130 血 圧110 9 90 A 70 50 q #1−90% \ !ρ『『℃、炉\・一.へ 過一.鼠 ノ へてプ もつ ウロ幽くン つや .CG 3霞’SAB PVC一
一
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図5 不安定狭心症例に対し使用したジルチアゼムに よりみられた不整脈 SB・SAB:洞徐脈・洞房ブロック, JR:房室結節調 律,PVC:心室性期外収縮 ルベッサー⑪)を使用し,狭心症はコントロールで きたが,洞徐脈,洞房ブロックや心室性期外収縮 の頻発をみた例を図示した.ジルチアゼムを減量 し,ニフェジピソとの併用で不整脈は消失してい る.またニフェジピンとジルチアゼムとの併用で は,ニフェジピソの血中濃度が上昇する点も注意 を要する.ニフェジピンは高血圧や狭心症によく 用いられるが,その血管拡張作用による下腿浮腫 や皮膚紅潮は患者側から最も訴えられる点である が,よく説明しそのまま継続投与していることが 多いが,浮腫に対し時に利尿薬を併用することも ある.硝酸イソソルビトやCa拮抗薬には徐放剤 もあり,高齢者には内服回数を少なくでき,服薬 コイプライアンスの点からも有用である. 3.虚血性心疾患 高齢者では冠動脈に器質的狭窄をもち,しかも 多枝病変であることが多い.また他臓器疾患を合 併している可能性を常に念頭におき,全体の病態 を把握し治療しなければならない.治療は若年者 と原則的には変わらない. 急性心筋梗塞は当然であるが,男女ともに加齢 とともに死亡率は加速的に高くなっている5).治 療は心不全で述べたごとくである.特に高齢老で は脱水や血圧低下に注意する.脳梗塞,腎機能障 害や肺感染などをふくめ,多臓器障害を来しやす いので,厳重な水分バランスの管理が必要である. 狭心症の治療は狭心発作に対する治療と発作予 防に対する治療である.発作時にはニトログリセ リンあるいはイソソルビトを舌下する.表4に狭 心症によく使用される薬剤と常用量をまとめた。 狭心症のタイプと合併症により薬剤を選択する. 最近硝酸薬の耐性についていわれているが,安定 型狭心症に対しては発作の起きる時間帯に向けて 使用し,24時間持続して硝酸薬の血中濃:度を一定表5 β・受容体遮断剤 Prichard
フ分類 1類i非選択性) II類i心選択性) m類iα遮断作用を
群 ISA
MSA
合わせ持つ) 1 十 十 オクスプレノロール アセブトロール (トラサコール) (アセタノール) o Aルフレノール (アプロバール) 2 一 十 プロプラノロール ラベタロール (インデラール) (トランデート) 3 十 一 ピソドロール (カルピスケソ) カルテオロール (ミケラン) 4 一 一 チモロール メトプロロール アロチノロール (プロカドレン) (セロケン,ロプレ (アルマール) ゾール) アテノロール (チノーミソ) ISA:内因性交感神経刺激作用, MSA:膜安定化作用 ()は商品名 以上に保たないようにするのがよいといわれてい る6).β一受容体遮断剤には表5に示したような種 類があるが,高齢者では徐脈になりやすく,心不 全や気管支喘息を合併する例には用い難い.β一受 容体遮断剤の内服を突然中止すると心筋梗塞の発 症や狭心症を増悪させることがあるので減量は 徐々に行う. 4.高血圧 高齢者の高血圧に対する治療の予後に与える影 響については,まだ一定の評価はされていない. しかしながら一般的には70歳代の症例でも収縮期圧が180mmHg以上,拡張期圧が100mmHg以上
で持続する場合は降圧治療の対象と考えられてい る.高齢者における高血圧の特徴として,i)収縮 期高血圧が多い,ii)血圧の日内変動が大ぎい, iii)全身の動脈硬化性変化を伴う, iv)自動調節 能の障害,v)低レニン性高血圧が多いことなど が挙げられる.高齢者での降圧目標をどこに置く かは症例により異なり,下げすぎるのも問題があ る.Cruickshank7)は降圧療法でJ−shapedの関係 を血圧値と合併症の間に認めている.すなわち, 虚血性心疾患の患者では,降圧療法後,心筋梗塞 による死亡率は,拡張期圧が90mmHg以上の群に 次いで,拡張期圧が85mmHg以下に下降した群が 高く,85∼90mmHgの群で最も低かったと報告し ている.Staessen8)も,収縮期圧および拡張期圧で U−shapedの関係があったと報告している.従っ て降圧目標,血圧のレベルは臓器障害が増悪しな い程度におくことになるが,70歳代では収縮期圧 を150∼160mmHgとし,既往の臓器障害の有無に より個々の症例できめる.腎機能障害や動脈硬化 の強い症例ではやや高目にするが,大動脈瘤では 臓器障害の増悪しない限りでぎるだけ低くする. 可能であれば一日1血圧を測定し,その日内変動を みながら治療薬および内服時間をきめるのがよ い. 降圧薬として現在用いられているのは,利尿薬, Ca拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻 害薬,β一受容体遮断剤である.高齢者の場合には, 他の合併症や臓器障害を考慮して薬剤を選択す る.狭心症を持つ症例ではCa拮抗薬やβ一受容体 遮断剤を,心不全の症例には,利尿薬,ACE阻害 薬やCa拮抗薬のニフェジピンを選択する.β一受 容体遮断剤は徐脈傾向のみられる例や心不全例に は使い難い. 5.不整脈 表6に我々の施設で半年間に施行したHolter 心電図での不整脈の種類別頻度を示した.高齢者 になるほど心室性期外収縮や上室性期外収縮の頻 度は高くなっている.表6 Holter心電図一年齢別不整脈出現頻度(%)一 年齢(歳) 例数 上室性 匇O収縮 匇O収縮心室性 上室性 p拍 心室性p拍 心房 ラ動 心房 e動 II・田度 [室ブロック 洞不全 ヌ候群 ヌ候群
WPW
イ律PM
その他 なし 10∼39 @70∼79 @80∼89 @90∼ 344 @156@34
@ 1 60% @ 75 @ 82@100
80 @ 87 @ 94@100
3@23
@35
@一
11 @ 7 @ 9@一
7(2) P5(4)@6
@一 1(0.6) R(3.0)@二
8% @ 3 @ 9 @ 一 5 @17@9
@ 4@1
@二 7@24
@15
@100 13@8
@3
@一 4@3
@= 計 1,501 67 84 12 14 13(4) 2(L4) 4 7 2 12 6 2 1987.1.∼6. ():発作性,PM:ペースメーカー. 表7 抗不整脈薬の適応,半減期,常用量と主な副作用 Vaughan Williams分類IA
IB
II IV 一 般 名 プロカイン Aミド ジゾピラミド リドカイン メキシレチン プロプラノール ベラバミル 商 品 名 アミサリン リスモダン キシ匹田イン メキシチール インデラール ワソラン 適 応 心房性期外収縮, ュ作性心房細動,心房粗動 ュ作性上室性頻拍 S室性期外収縮 S室頻拍 心室性期外収縮 S室頻拍 ュ作性心房細動心房性期外収縮 ュ作性心房山山 ュ作性上室性頻拍 S室性期外収縮 発作性心房細動 ュ作性心房粗動 ュ作性上室性頻拍 生物学的半減期 @ (時間) 3∼4 5∼7 2 8∼10 2∼4 3∼6 半 心 不 全 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 一 減期の @変 @化 腎 不 全 ↑ ↑ → → 一 一 肝機能不全 一 一 ↑ ↑ ↑ 一 主な排泄経路 腎(肝) 腎(肝) 肝 肝 肝 腎(肝) 常用量:経ロ投与 @ (mg/日) 1,000∼2,000 200∼400 一 300∼450 30∼39G 120∼240 心拍出量 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 血 圧 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 不整脈 S室細動,洞停止,洞徐脈,心室性期外収縮,心室頻拍, [室ブロック, S室内伝導障害 心室性期外収縮 S室頻拍心室細動 洞停止 エ徐脈 [室ブロック 洞停止 エ徐脈 [室ブロック その他 排尿障害,肝機能障害,血小板減少症,無穎粒球症,SLE様症候群 昏睡 z肇 ト吸停止 気管支二二 薬物療法の対象となる不整脈は頻拍性不整脈で あり,徐脈性不整脈はペースメーカー療法が選択 されることが多く,薬物療法の意義は比較的少な い.心室頻拍,上室性頻拍,心房細動や心房三山 の発作に対しては緊急治療が必要であるが,日常 の診療でよくみられる心室性期外収縮や上室性期 外収縮に対して,どのような症例を治療すべきか が問題となる..心室性期外収縮の場合には,3連 発以上で1心拍数が150/分以上のもの,基礎心疾 患のあるも.の,めまいや動悸などの症状の強いも の,運動により増加するものが,治療の対象とな る.期外収縮の数が多くても,単発,単一性,運 動により消失するものは投薬せず経過をみてよ い.上室性期外収縮は自覚症の強いものや心房細 動・心房粗動に移行し易いものが治療の対象とな る. 発作性心房細動や心房粗動は,できるだけ洞調 律へ戻すことを試みるが,発作を繰り返すうちに,また高齢者ほど洞調律への変換は難しくなる.慢 性のものは,心拍数のコントロールを主体に,ジ ギタリスあるいはベラバミルを用いる.高齢者で は心拍数も多くなく,自覚症もない例には薬剤は 使用しない.特に高齢者では洞機能や房室結節機 能の低下がみられる例が多く,抗不整脈薬により 洞徐脈,洞房ブロック,房室ブロックなどが起き やすいので慎重に適応を決める. 抗不整脈薬はVaughan Williamsにより,電気 生理学的特性に基づいて分類されている.表7に 抗不整脈薬の適応,半減期や成人での常用量:など を記した9).高齢者では個々の症例の腎機能や心 機能に合わせて薬剤を選択し,投与量も少量から 開始する.どの薬剤も少なからず心機能の低下が みられ,さらに心不全例では半減期の延長と分布 容量の減少を来し,1血中濃度が上昇し副作用も発 現し易い.腎機能障害例ではその程度により,腎 排泄性薬剤,例えばジソピラミドやプロカインア ミドは投与間隔をあけるようにする.高齢者でよ くみられる副作用は,ジソピラミドの抗コリン作 用による口渇や排尿障害,メキシチールによる胃 腸障害,β・受容体遮断剤やベラバミルによる徐脈 などである.また抗不整脈薬自身に催不整脈作用 (不整脈増悪誘発作用)があることを常に念頭にお くべきである.最近新しい抗不整脈薬として,Ia 群のプロパフェノン(プロノン⑪)やIb群のアプ リンジン(アスペノン⑧)が市販され,従来の薬剤 が無効例に用いている. おわりに 高齢者における薬物療法は,常に多臓器に機能 障害があることを念頭におき,個々の症例に合わ せた薬剤を選択し,投与量や回数を考慮すること である.特に腎機能や心機能の低下には注意し, 一般的に少量から開始し,効果と副作用をみなが ら,至適量を決めるようにする. 内容の一部は第11回冠不全研究会で発表した. 文 献
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7)Cruicksha皿k JM, Tborp JM, Zacharias FJ: Benefitis and potential harm of lowering high blood pressure. Lancet i:581−583, 1987 8)Staessen J, Bulpitt C, Clement D et al: Relation between mortality and treated blood pressure in elderly patients with hypertension: Report of the Europian Working Party on High
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9)笠貫 宏:不整脈治療における新しい考え方 3 薬物療法.臨床医 12:19−23,1988