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黒板講義型遠隔講義におけるWebを用いた教室間の情報共有

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(1)2003−DD−40  (3) 2003/7/25. 社団法人 情報処理学会 研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 黒板講義型遠隔講義における Web を用いた教室間の情報共有 菅沼 明 九州大学 大学院システム情報科学研究院 e-mail : [email protected] 近年、インターネットの急速な発展に伴い、これらを利用した遠隔講義を取り入れる大学または 各種学校が増えている。遠隔教室は物理的、空間的に分散するので、従来の教室の授業形態に比 べて教師と学生のコミュニケーションが特に難しくなる。講義内容に対する学生の理解や反応を 講義中に教師が正確に把握することは、適切な教授活動を行う上で不可欠のものである。本研究 では、講義中に遠隔教室の学生がとる行動をリアルタイムに分析し、教師に学生の状況を伝える 手法を提案する。さらに、この方法に基づいて遠隔講義を支援するシステムを開発し、それを利 用して本研究室の修士課程 1 年生の演習を利用して、遠隔演習実験を行った。. Transmitting Complexion of the Classrooms with Web for a Distant Lecture with Videoing a Normal Classroom Akira SUGANUMA Faculty of Information Science and Electrical Engineering Kyushu University Distance Education Course (DEC) has been becoming more and more popular in many university with the fast development of Internet technology. The communication between the teacher and the students in DEC environment, however, is a more difficult problem in comparison with conventional courses. This paper proposes a real-time evaluation method to enhance the communications between the teacher and students. This method analyzes the distribution of the reference behavior of students with the lectured page, and informs the teacher the learning state immediately. Experimental results have illustrated the feasibility of this method.. 1.. はじめに. 近年、インターネットの急速な発展に伴い、 これらを利用した遠隔授業を取り入れる大学ま たは各種学校が増えている[1, 2] 。遠隔教室は物 理的、空間的に分散するもので、従来の教室の 授業形態に比べて、教師と学生との間のコミュ ニケーションが特に難しい。教授学習過程は、 主に教師側の講義活動、学生側の反応、それら の反応に対して教師の働きかけという 3 つのコ ミュニケーションで構成されている。普通の教 室で行われる授業過程は教師と学生との間の双. 方向コミュニケーションの過程とみなすことが できる[3] 。より効果的な教授活動を実現するた めに、授業中に講義内容に対し学生側の理解や 反応を正確に把握することは、教師が適切な教 授活動を行う上で不可欠ものである。と同時に、 学生は、自分の理解や反応が正しいかどうかを 知らされたり、励ましや注意を与えられれば、 より効果的な学習活動を行うことができる。 この学生の反応を教師に伝える従来の支援方 法として、学生の学習履歴や学習行動などを分 析する方法がある[4, 5] 。しかし、これらの方法. −17−.

(2) Control. ACE. Blackboard Pan, tilt and zoom in/out. Distant classroom Visual and Audio Sound. Network. Control Active camera Image & sound processing component. Image. Camera. Steady camera. Classroom Lecture Scene. Distant room. Distant classroom. 図 1: 想定する遠隔講義の風景. Image Sound. Recording component. Screen Still Image. PC2 Status of the active camera. 図 2: ACE の構成図. のいずれも学生が教材に従って自習することを 想定したもので、講義時間中の進み具合に沿っ た学習状態を取り扱っていない。本研究では講 義中に遠隔教室の学生がとる行動をリアルタイ ムで分析し、教師に学生の状況を伝える手法を 提案する。さらに、この方法に基づいて遠隔講 義を支援するシステムを開発し、これを利用し て本研究室の修士課程 1 年生の演習を利用し、 遠隔演習実験を行った。本論文では、構築した システムの概要とそれを用いた実験の結果に関 して述べている。. 2.. PC1. Microphone. 遠隔講義. 2.1 想定する遠隔講義の形態 本研究では図 1 に示すような遠隔講義形態を 想定している。普通の教室で行う講義をカメラ で撮影し、その映像を音声とともに遠隔地の教 室 (遠隔教室と呼ぶ) に転送する。遠隔教室では、 教室の前方に用意したスクリーンに転送されて きた映像を投影し、学生はその映像を見ながら 講義を受ける。遠隔教室にいる学生には、ネッ トワークに接続されたコンピュータを 1 台ずつ 使用できる環境を提供する。学生は Web ブラ ウザを使用して、本システムで動的に生成する 黒板の静止画像を自由に参照できる。一方、教 師側にもネットワークに接続されたコンピュー タを 1 台設置し、教師はそれを介して遠隔教室 の学生の学習状況を得ながら講義を進める。. 2.2 講義の自動撮影 普通の教室で行う講義を自動的に撮影する システムとして、我々は講義自動撮影システム. ACE(Automatic Camera control system for Education) を構築している[6] 。ACE は黒板だけを使 用する講義を対象にして、画像処理と音処理に よって撮影対象を判定し、それを中心に撮影す る。ACE の構成を図 2 に示す。ACE は 2 台のビ デオカメラと 2 台の PC で構成される。1 台の ビデオカメラは画像処理用の映像を撮影するも ので、常に同じ位置を撮影している。このカメ ラからの映像は画像・音処理用の PC に送られ、 それを基に教師の位置、板書の位置などを画像 処理で判断する。さらに、マイクからの音と映 像によって、教師の板書動作の開始と終了の判 定を行う。これらの情報を用いてカメラワーク を決定する。画像・音処理用 PC は、撮影が決 定した対象を撮影するために、アクティブカメ ラ (可動式雲台と DV カメラ) を制御する。アク ティブカメラで撮影した映像とマイクで集音し た音とを遠隔教室に送り、講義風景としてスク リーンに投影する。 ACE で採用しているカメラワークは次のと おりである。通常の状態では、ACE はカメラ を若干引いて教師と教師の周りの板書が写るよ うに撮影する。教師が板書を行い、板書動作が 終了すると、最後に書いた板書 (最新の板書) を ズームして撮影する。最新の板書を撮影して一 定時間が過ぎると、カメラを少し引いて、最新 の板書とその周りが写るように撮影する。その 後しばらく最新の板書を検出できなければ、通 常の状態に戻る。 上で示したカメラワークは、学生が見たいも のを撮影するという方針ではなく、教師が説明. −18−.

(3) しているであろうものを撮影するという方針で 作成した。しかし、学生が見たいと思う箇所の 映像を見ることができれば、それはよりよいも のになる。そこで ACE では、アクティブカメ ラで撮影した映像のうち妥当なものを静止画と して保存し、Web ブラウザで表示できるイン ターフェースを提供している。黒板上の内容で 変化がある部分は最新の板書として ACE に撮 影される。そのため、教師が黒板上に書いた内 容は 1 回はアクティブカメラによって撮影され る。つまり、図 2 中の PC2 に映像として伝わっ てくる。教師が以前に書いた部分は、教師が書 き加えない限り変化がないので、遠隔地に送る 情報としては静止画で十分である。保存してお く静止画は最新の板書をズームしている画像よ りも、少し引いて周辺の内容も写っている画像 とする。アクティブカメラから送られてくる映 像をキャプチャし、教師が黒板を隠していない 画像を選択して保存している。これの機能によ り、遠隔教室の学生は、講義の最初から現在ま でに生成された静止画を自由に見直すことがで きる。. 2.3 学生のブラウザ操作の取得 本研究に先だって、我々は教師と学生との ブラウザで同期表示を行うためのシステム CACCE(Computer Aided Cooperative Classroom Environment) を構築してきた[7] 。このシステム は教師用ブラウザと学生用ブラウザからなる。 これらのブラウザはソケット通信で結ばれてお り、情報のやり取りが可能である。. CACCE は、教師用ブラウザが現在表示して いるページの URL を学生用ブラウザに伝え、 学生用ブラウザはそのページを自動的に表示す ることで、ブラウザ間の同期表示を実現してい る。これにより、学生が学生用ブラウザを使用 している限り、いつでも、どこを参照していて も、教師用ブラウザのページが変わるたびに同 期表示可能である。逆に、以前の内容を確認す るなどのために、学生は自由に他のページを参 照することができる。学生用ブラウザは教師用 ブラウザから送られてきた URL と異なるペー ジを表示するとき、その URL を教師用ブラウ ザに通知する。これにより、学生が教師と同じ. Active camera. Visual. Recording component. Student’s browsers. URL (if a student watches another page). Teacher’s URL of browser the latest page. URL. URL. Store Display Synchronous displaying Still images & HTML files. PC2. Students. 図 3: ACE の板書保存機能と CACCE との連携 ページを見ているか否かを教師が把握しながら 講義を進めることができる。 本研究では、これまでに紹介した ACE と CACCE とを連携させた。このシステムの構成 を図 3 に示す。ACE の板書保存機能で画像を キャプチャするとともに、URL を CACCE の教 師用ブラウザに通知する。静止画が生成された ときは ACE がそのシーンを撮影していること になるので、教師用ブラウザはその URL を学 生用ブラウザに伝える。あとは CACCE の機能 を使用して、教師用のブラウザは、学生用ブラ ウザからの通知を待っている。これにより、学 生の参照行動をトレースできる。これを学習履 歴と呼ぶ。この学習履歴を解析することで学生 の状況を推定し、それを教師に提供する。. 3. 学習履歴モデル 3.1 参照の分類 学生が過去の静止画を参照する際の理由は、 主に下の 5 つが考えられる。これを参照タイプ と呼ぶことにする。. −19−. (1) 教師の指示による参照 講義中に教師が「前の... ページを見なさい」 などと言って学生に参照させる場合に相当 する。学生に問題を解かせた後などに、以 前のページを見させて解説する場合もこの 状態になる。この場合、学生が教師の指示 に従って以前のページを一斉に見るため、 同時に参照する可能性が大きい。同時参照 というのは教師がある静止画を教えている ときに各々の学生が別の同一静止画を参照.

(4) (2) 黒板の大きさによる参照 普通の教室では、黒板のサイズが大きいた め、板書の内容の全てをはっきり見える解 像度で 1 枚の静止画に収めることは難し い。大学などの講義室では上下稼働式の複 数の小黒板で構成されることが多い。この ため ACE では、講義の通常時の映像は小 黒板単位で撮影し、静止画も小黒板単位の 画像を提供する。このため、教師が参照可 能な黒板の範囲と静止画に映っている黒板 の範囲には差が生じる。教師が最新の板書 の以外の部分に戻った場合、教師の説明場 所に合わせて過去の板書を参照する学生も いるであろう。教師が明確な指示をしてい ない場合、学生の参照の同時性は「教師の 指示による参照」より小さくなる。. (3) 難しさによる参照 講義の内容が難し過ぎて理解できないた めに、学生が過去の静止画を自分なりに参 照する場合がある。この場合、それぞれの 学生の理解度が異なるので、難しいと感じ る学生もいれば、そうは思わない学生もい る。そのため、学生の参照にばらつきが生 じる。また、難しいと感じてすぐに参照す る学生もいるし、後になって参照する学生 もいるので同時参照性は考えにくい。. (4) 講義の進行が速いための参照 講義の進行が速すぎてついていけないた め、学生が 1 つ前の静止画を参照している 場合である。. (5) 内容を確認するための参照 学生が過去の内容を忘れたときや相関の ある内容を調べるときに参照する行動を指 す。このような参照は、一般に参照してい る時間が短いのが特徴である。. Time length of reference. したときに参照の開始時刻、参照の時間長 が似ていることに加え、参照した学生の人 数が多いことを意味する。. (Ti,j , Li,j). Window. Max(li,j,k) L. (ti,j,k , li,j,k). Min(li,j,k) Min(ti,j,k). T. Max(ti,j,k). Beginning time of reference. 図 4: 同時参照の判定法. 3.2 分析方法 教師にとって重要なのは学生の学習状況であ る。つまり、学生が講義内容を理解しているか どうかという情報である。また、学生が理解で きなかったところはあるのか。それがあるなら、 それはどこなのか。講義の進行は適切な速さで あるかどうか。このような情報は教師にとって 非常に重要なものだと考える。従って、前節で 述べた参照タイプの中で (3) と (4) を抽出した い。しかし、この 2 種類の参照は他の参照と区 別できる特徴がないために直接抽出するのは困 難である。本研究では、他の参照タイプを排除 する方法を使用して目的の参照行動を抽出する。 最初に、教材以外のページを参照している場 合と最新の静止画を参照している場合を排除す る。次に、参照時間が短い特徴を利用して、上 記 (5) の参照を排除する。更に、参照の同時性 を利用し、(1) と (2) の参照を排除する。最後に 残った参照行動を (3) か (4) に分類する。. 3.2.1 同時参照の判断 多くの学生が同時に同じ静止画を参照する場 合を同時参照と呼ぶ。上記の分類では (1) と (2) の参照が該当する。同時参照は、参照行動が発 生したときの最新の静止画 (最新ページと呼ぶ) と、学生がそのときに参照した静止画 (参照ペー ジと呼ぶ) との両方に関係がある。そのため、最 新ページ i のときに参照ページ j の参照行動を 抽出する必要がある。i と j が同じ参照行動に 対して、その参照の開始時刻と参照時間長が似 ている参照行動をした学生を求める。この学生 の参照行動記録において、参照開始時刻と参照 時間長のずれが閾値を超えていないときに、そ. −20−.

(5) 表 1: 参照時間長によるクラス分け. Lank (k) 1 2 3 4 5. Time length (t) t ≤ 30 30 < t ≤ 60 60 < t ≤ 120 120 < t ≤ 180 180 < t. (a) 学生側. 図 5: システムのインタフェース. れらが似ているとして抽出する。この判断方法 を図 4 に示す。図では、横軸を参照開始時刻、 縦軸を参照時間長として、各学生の参照データ (ti,j ,li,j ) をプロットしている。この図において、 最も多くの学生が集まっている箇所を検索し、 その矩形に入る学生の数を同時参照人数 (ci,j ) と する。また、この矩形の中心を同時参照開始時 0 と同時参照時間長 L0 と定義する。ここ 刻 Ti,j i,j で定義した同時参照人数が遠隔教室の学生数の 一定割合より多くなった場合に、その参照ペー ジ j の参照を同時参照と判断する。. 3.2.2 難しさによる参照の判断 学生が難しいと感じて以前の静止画を参照す る場合、学生によって参照時期にばらつきがあ ると考えられるので、難しさによる参照では同 時性を持つことは考えにくい。一方、内容が難 しそうな場合、学生が静止画を参照する時間が 長くなるであろうし、多くの学生が参照する場 合には、その内容は難しいと考えることができ る。そのため、本研究では、参照時間長と参照 人数を基にしてページの難しさを判断する手法 を採用している。各学生の各ページの参照を参 照時間長で表 1 のように 5 つに分類し、各カテ ゴリごとの学生数 θk を求め、ページ i の難しさ の指標 (di ) を下の式で計算する。. di =. 5 X. (b) 教師側. kθk ÷ N × α. k=1. ここで、N は遠隔教室の学生の数、α は規 格化定数である。本研究では、参照時間の長い (180 秒以上の) 学生が遠隔教室の学生の半数を 超えたとき、難しさを 1 とすると仮定した。こ の仮定により、α = 2/5 となる。. 3.2.3 進行が速いための参照の判断 講義の進行が速すぎるとき、学生が教師の説 明に付いていけない場合がある。このようなと き、学生は教師が説明している静止画の 1 つ前 を参照していることが多いと考えられる。また、 このような行動をする学生が多い場合は、進行 がより速いと考えることができる。このため、 教師がページ i を説明している時にページ (i−1) を参照した学生の数 (θ) を用いて、2(θ/N −0.2) を進み方の指標として採用している。この式に よると、1 ページ前の参照人数が 2 割以下であ ると講義の速度が適当であるとし、1 ページ前 の参照人数が 7 割以上になると講義の進み方は 速すぎであると判断する。. 4. 提供する情報 前章までに述べた分析方法によって遠隔講義 支援システムのプロトタイプを実現した。学生 は、講義が開始される前にまず接続要求を教師 側のシステムに送る。これにより、学生側のシ ステムと教師側のシステムとの間に通信路を確 保し、それ以降、この通信路を介して情報のや りとりを行う。この接続要求は講義が始まった 後でも受け付けられる。教師側のシステムはこ の接続要求を利用して、教師に出席リストを提 供する。 講義が始まると、学生側のシステムは図 5 に あるように、生成された静止画のサムネイルを 時間順に表示する。また、画面右側には、数枚 のサムネイルで教室の大黒板を構成する形で提 示される。これらのサムネイルはリンクになっ ていて、クリックすると静止画が大きく表示さ れる。学生は、見たい内容をこれらのリストか ら探し、自由に参照することができる。その際、. −21−.

(6) 学生側のシステムは自動的にブラウザの操作を 教師側のシステムに知らせる。また、掲示板を 利用して質問を発することもできる。 教師側のシステムは学生側のシステムからの 情報を蓄え、2 分おきに分析を行う。分析した結 果は、即座に教師側のシステムの表示に反映さ れる。普段の教師側のシステムは図 5 にあるよ うな表示を行っている。これには、今までに生 成された静止画のうち最も難しいと判断された ものが表示され、その右側にその静止画を参照 した学生の数や参照回数などこの静止画を難し いと判断した情報が表示されている。教師は講 義を行っているので、説明に集中してもらうた めに、特別に注意を引くような動作は行わない。 分析の結果、特に教師に伝えるべきことが発 生したときは、音を鳴らし、別のウィンドウを 表示するなどして、教師の注意を引ようにして いる。この範疇にはいるのは、学生が質問を送っ て来たときや、ある静止画の難しさが極端に増 大したときなどである。教師によってはこれら が起こってもきりの良いところまで説明してか ら対処しようとすることもあるであろう。その ようなときにも対処できるように、表示ウィン ドウには要点だけを表示し、確認に時間を取ら れないようにしている。さらに、教師が望めば、 講義終了後に提供するものと同様な情報を、こ れまでの情報で分析・集計し提供できるように している。 本システムは講義中の支援だけではなく、講 義後の支援も考えた。講義後の支援は学生全体 の学習状況により教材の設計や調整、各々の学 生の学習状況により特定の学生の指導に役立つ と考えられる。本システムでは、下の 4 つの情 報を提供する。. (1) 分析情報 この情報はシステムによる分析結果を同時 参照と講義の進行、講義の難しさの 3 つの グラフで表示する。同時参照の情報は、教 師があるページ i を教えているときに以前 のページの内容を説明を行った際の情報で ある。何人の学生が教師の説明にあわせて 参照したかを知りたい場合に使用する。教 師が教えていたページ番号を入力すると、. そのときの同時参照状況をグラフで表示す る。講義の進行に関する情報は、講義全体 または各ページについてそれらの進み方が 適切な速度であったかどうかを確かめるた めの情報である。講義の難しさの情報では、 各々のページの難しさの変化や分布を表示 する。. (2) 全体的な情報 この情報では、学生が過去のページを参照 したときの各ページの参照情報を分かりや すいようにグラフで表示している。講義中 の参照人数の変化、参照時間長の変化が表 示される。. (3) 教師がページ i を教えていたときの情報 教師がある特定のページを教えていたとき に、学生がどこを見ていたかなどの情報を 知りたい場合がある。また、あるページの 参照状況が他のページとは著しく相違する ときに、その参照行動が起こった原因を調 べたい場合もある。この情報はそのような 際に役に立つ。. (4) 学生ごとの参照状況 ある特定の学生に対して、参照時間長と参 照回数を提示することで、学生の参照行動 を知ることができる。また、その学生の参 照状況と学生全体の参照状況とを比較し て、似ているのかどうかを調べることがで きる。. 5. 実験と評価 本手法を評価するにあたって、本研究室の修 士課程 1 年生の演習を利用して実験講義を行っ た。実験は 45 分の演習を 4 回と離散数学の 20 分の講義を利用した。講義室と廊下を挟んだ教 室を遠隔教室として使用し、映像と音声は LAN を通さず専用のケーブルを使用して転送した。 また、静止画は専用の Web サーバ上に保存し、 学内 LAN を通して転送した。教師が講義をし ている教室では 3 人∼5 人の学生が講義を受け、 遠隔講義室では 5 人∼10 人の学生が講義を受 けた。学生の演習を実験に使用したため、黒板. −22−.

(7) 少し難しかったと言う学生が多かった。さらに 講義中に流れた静止画の中では、10 ページ前後 の内容が難しかったとの意見があった。図 6 の 下のグラフをみると、10 ページ付近が難しいと いう判定になっている。これは、学生の感想と 合致している。. 図 6: 分析結果の表示例. を使用した講義ではなく、パワーポイントのス ライドを使用した講義を行った。1 枚のスライ ドを小黒板にみたてて、スライド毎に静止画を 生成した。離散数学の講義では、黒板のみを使 用した講義を行った。講義の直後に、講義に関 するアンケート調査を行った。 講義中の静止画の参照の理由に関するアン ケートの結果を表 2 に示す。表にあるように参 照の理由は 3.1 節で分類したものとほぼ同じも のになった。これにより、参照行動のモデルが 適切であることがわかる。 今回の 5 回の実験講義では、教師が明示的に 以前の内容を参照して説明したものもあれば、 以前の内容には振り返らずに説明を進めた講義 もあった。第 2 回目の演習には教師が以前の内 容を参照する場面がふくまれていたので、この 演習のデータを使用して話を進める。第 2 回目 の演習のシステムによる分析結果を図 6 に示す。 この演習内容の発表時において、教師が過去の ページに戻って説明したのは 3 箇所があり、質 疑応答の時間に 2 箇所あった。説明中に過去の ページに戻ったときには、説明時間が非常に短 かったために、学生はそのページを参照するこ とができなかった。そのため、演習の説明時に は同時参照は検出されていない。一方、質疑応 答の時間の場合は、学生からの質問に答えるた めに 15 ページ目と 20 ページ目の静止画に戻っ て説明した。この説明は長い時間継続したので、 ほとんどの学生がそのページを参照することが できた。そのため、システムも 15 ページと 20 ページの同時参照を検出している。 アンケート結果によると、第 2 回目の演習は. 講義の進行速度に関しては、第 2 回目の演習 は少し速いと感じた学生が多かった。しかし、 システムでは適切な速さであると判定されてい る。これは、この講義の 31 ページの静止画の うち、学生が 1 ページ前を参照したページは 4 箇所であった。しかし、この参照は毎回 1 人し か行わなかったため、システムは速すぎるとは 判断しなかった。 最後に、5 回の実験を総合的にみると、以下 のようなことが言える。同時参照の抽出に関し ては、教師が指示をして適当な時間説明を行っ ている場合、学生がそのページを参照すること ができ、それを正確に抽出している。また、そ れ以外の参照を誤って同時参照として抽出した ことはなかった。これにより、同時参照の判断 手法は有効であると考えられる。次に、学生が アンケートで難しいと述べたページは全て難し いページとして抽出できている。このため、難 しさによる参照の分析方法の有効性も確認でき た。表 3 に示しているアンケートで講義が速い と言った学生の人数と 1 ページ前を参照した学 生の人数と比較した結果より、講義の進行が速 いときには 1 ページ前の内容を参照する学生が 多くなることがわかる。これは「講義の進行が 速いための参照」の判断方法と一致している。. 6. おわりに 黒板を使用した講義を撮影して行う遠隔講義 において、遠隔教室の学生に PC を 1 人に 1 台 利用可能な状況において、学生の行動を覗き見 することが可能なシステムを提案した。この手 法は、学生が教材以外のページを見ている場合 でも有効であり、学生が見ているページの URL が教師側に伝わる。さらに、伝えられる情報を 基にして、教師側のサブシステムで学習履歴分 析を行い、講義を進める上で有用な情報を教師 に提示する。さらに、実際の講義と演習発表に このシステムを適用して遠隔講義実験を行った. −23−.

(8) 表 2: 学生の参照理由 参照理由. 演習 1. 演習 2. 演習 3. 演習 4. 講義. 内容が理解しにくかった. 60% 80% 60% 0 0 0. 80% 100% 0 20% 20% 0. 80% 80% 0 0 0 0. 60% 80% 20% 20% 20% 0. 40% 30% 0% 60% 0 10%. 内容と直接関連があった 講義の進行が速すぎた 前の内容を忘れた ツールが面白い 他の理由. 表 3: 講義の進行についての比較 比較項目. 演習 1. 演習 2. 演習 3. 演習 4. 講義. 80% 100% 7 / 38. 60% 60% 4 / 31. 20% 40% 2 / 27. 40% 40% 5 / 41. 20% 30% 5 / 38. 講義が進行が速いと言った学生. 1 ページ前を参照した学生 1 ページ前を参照されたページ数 / 総ページ数. 結果、提案した学習履歴分析方法の有効性が確 認できた。 今回の実験では、遠隔教室の学生が少ないた め、1 人、2 人の学生の参照行動も実験結果に 大きい影響を与えてしまっている。このため、 今後の課題として遠隔地に多くの学生が受ける 講義でも実験を行い、分析方法の有効性のさら なる確認が必要である。. 参考文献 [1] 高田伸彦, 竹本宜弘, 本橋昭二: “分散型教 育における講師環境の操作改善への考察,” 電子情報通信学会論文誌, D-II, Vol.J79-D-II, No.4, pp.639–644, 1996. [2] 吉野孝, 井上穣, 由井薗隆也, 宗森純, 伊藤 士郎, 長澤傭二: “インターネットを介した パーソナルコンピュータによる遠隔授業支 援システムの開発と適用,” 情報処理学会論 文誌, Vol.39, No.10, pp.2788–2801, 1998.. based portfolios,” Advanced Research in Computers and Communications in Education, pp.452– 459, 1999. [5] 佐藤宏之, 江天鳳, 渡辺成良: “ハイパークラ スルーム:同期的学習環境における学習履 歴と学習評価の関連について,” 日本教育工 学会, 研究報告, JET98-1, pp.67–74, 1998. [6] A.Suganuma, S.Nishigori: “Automatic Camera Control System for a Distant Lecture with Videoing a Normal Classroom,” Proc. World Conference on Educational Multimedia, Hypermedia and Telecommunications, pp.1892– 1897, 2002. [7] A.Suganuma, R.Fujimoto, Y.Tsutsumi: “An WWW-based Supporting System Realizing Cooperative Environment for Classroom Teaching,” World Conference on the WWW and Internet, pp.830–831, 2000.. [3] 松田稔樹: “教授活動モデルに基づく教授改 善”, 教育システムの設計と改善, pp.89–109, 1993. [4] C.Liu, G.Chen, K.Ou, C.Lee, C.Lu: “An instrument for on-line learning performance analysis by using decision tree technology on web. −24−.

(9)

表 1: 参照時間長によるクラス分け Lank (k) Time length (t)
図 6: 分析結果の表示例 を使用した講義ではなく、パワーポイントのス ライドを使用した講義を行った。 1 枚のスライ ドを小黒板にみたてて、スライド毎に静止画を 生成した。離散数学の講義では、黒板のみを使 用した講義を行った。講義の直後に、講義に関 するアンケート調査を行った。 講義中の静止画の参照の理由に関するアン ケートの結果を表 2 に示す。表にあるように参 照の理由は 3.1 節で分類したものとほぼ同じも のになった。これにより、参照行動のモデルが 適切であることがわかる。 今回の 5 回の実験講
表 2: 学生の参照理由 参照理由 演習 1 演習 2 演習 3 演習 4 講義 内容が理解しにくかった 60% 80% 80% 60% 40% 内容と直接関連があった 80% 100% 80% 80% 30% 講義の進行が速すぎた 60% 0 0 20% 0% 前の内容を忘れた 0 20% 0 20% 60% ツールが面白い 0 20% 0 20% 0 他の理由 0 0 0 0 10% 表 3: 講義の進行についての比較 比較項目 演習 1 演習 2 演習 3 演習 4 講義 講義が進行が速いと言った学生

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