Title
数種の植物の炎症抑制成分に関する研究( 内容の要旨 )
Author(s)
董, 玫
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第174号
Issue Date
2000-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2515
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学 位授 与年月 日 学 位授 与 の 要件 研 究科 及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 董 故 (中華人民共和国) 博士(農学) 農博甲第174号 平成12年3月14日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物生産科学専攻 信州大学 数種の植物の炎症抑制成分に関する研究 主査 信 州 大 学 教 授 有 馬 副査 信 州 大 学 教 授 柴 田 副査 岐 阜 大 学 教 授 篠 田 副査 静 岡 大 学 教 授 衛 藤 副査 信 州 大 学 助教授 鹿 田 博 夫 彦 男 満 久 喜 英 論 文 の 内 容 の 要 旨 本論文で,著者は発がんプロモーターが細胞増殖作用に関連した種々の生理作用ならび に細胞増殖性の炎症を示すことに着目し,発がんプロモーターm(12-0■tetaradecanoyol-pborbol-13-aCe也此)によって引き起こされる皮膚の炎症を抑制する化合物は細胞増殖と関連 した病気,たとえば,がんやウイルス病などの抑制作用を持つ可能性が高いと考え,・植物 から炎症抑制物質の探索研究を行なっている。 最初に,マウス耳炎症抑制試験を用い,147種植物をスクリーニングし,41種の植物に 強い抑制作用を認めている。このうち多量の試料が得られることから,マルバチシヤノキ (且わ柁血加血0乃ff)及びゴンズイ(血叩加ノ申0乃血),タイミンタチバナ砂相加e∫eg扇如才) を選び,炎症抑制物質の精製を行なったQ マルパテシヤノキからは炎症抑制物質として,10(の,12(勿,15(み9-by血0Ⅹy-10,12,15- octadeca血enoicacidmethylester(1)及び既知化合物の1,2心α一1inolenoyl-3-Lβ一galacto-pyranOSyl一glycerol(2)を得ている。さらに,1と構造の類似した,1inolenicacidと1inoleic acidの酸化物を合成し,それらの炎症抑制活性を調べている。合成した化合物の中で,13 位に水酸基あるいはケトンを持つlinolenicacidと1inoleicacidの誘導体に化合物1より強 い炎症抑制活性を認めている。特に血01eicacidの酸化物は抗炎症薬として用いられている indomethacinやglycy血eticacidと同等の強い抑制作用を示す。このことから,炎症抑制活 性発現には,炭素数18の不飽和脂肪酸に,アリル位水酸基あるいはケトンを持ち,共役二 重結合が存在することが重要であると考えている。また,最近,共役二重結合を有する Iin。1enicacidやIinoleicacidが抗がん作用や高血圧の予防効果を示すことが報告されている
-32-ことから,化合物1及びその関連化合物も同様の作用を示す可能性が高いと推論してい る。 ゴンズイからは炎症抑制物質として,5,7Jihydroxy-2-methyl-benzopyran4-One(3),gal1ic acidmethylester(4),euSCaPholide(7),VOmifo1iol(8)を得ている。これらの化合物に炎症抑制 作用を見出したのは今回が初めてである。また,新規物質として,3,7Jihydroxy-5-octanolide(5),methy15,7Jihydroxy-2-OCtenOate(6)を単離した。 タイミンタチバナからは炎症抑制物質として,3-geranyl-4-hydroxy-5-(3.-methyl-27-butenyl)benzoicacid(9)を得ている。これは同種の植物から単離されていたが,炎症抑制作 用を見出したのはこの研究が初めてである。さらに構造活性相関の検討をおこない,9の 炎症抑制活性の発現には脂溶性テルペン部位と遊離のカルポン酸が重要であること述べて いる。 さらに,得られた化合物について,炎症に関するアラキドン酸カスケードのキー酵素リ ポキシゲナーゼに対する阻害活性を検討した。化合物1,2,3,4,8,9はいずれも炎症抑制作 用を示すと共に,1ipoxygenaseに対して,阻害活性を示すことを見いだしている。このこ とから,これらの化合物は,1ipoxygena5eを阻害する経路で炎症抑制を示している可能性 が高いと考えている。 さらに,ゴンズイから多量に得られた化合物3,5,7について,カラゲナンで誘導するラ ットの足瞭浮腫に対する急性炎症抑制活性を調べている。化合物5は抑制活性を示さなか ったが,化合物3と7はindomethacinと同程度まで,浮腫を抑制した。これらはmで誘 導する皮膚の炎症を抑制すると共に,急性炎症にも抑制活性を示した。 最後にまとめとして,この研究で単離,構造決定した化合物の炎症抑制作用の強さを比 較しているが,これらの中には薬として使われているindomethacinやglycyrfheticacidと同 程度の強い活性を示す化合物もある。その作用機構について,考察し,この研究では, mによっておこる炎症の抑制活性を指標として種々・の化合物を単離したが,これらが, 1ipoxygenaseの阻害やその他の酵素,例えばcyclooxygenaseを阻害する可能性について述 べている。 審 査 結 果 の 要 旨 董攻の論文は,新しいタイプの炎症抑制物質の発見を目的に,発がんプロモーターによ っておこる細胞増殖性の炎症を抑制する物質を植物に求め,3種の植物マルバチシヤノキ (動作血加血刀可及びゴンズイ(助∫C甲加ノ申0乃血),タイミンタチバナ仰i乃e∫e紳乃ガ) から活性成分の精製を試み,その構造を明らかにしたものである。その内容は以下の5点 に要約できる。 1.マルバチシヤノキから炎症抑制物質として,10(の,12(の,15(み9克y血oxy-10,12,15- octadecatrienoicacidmethylester(1)及び既知化合物の1,2Ji-a-1inolenoyl-3-β-galacto-pyranOSyl-glycerol(2)を得た。さらに,lと構造の類似した,1inolenicacidと1inoleicacid
の酸化物を合成し,それらの炎症抑制活性を調べている。合成した化合物の中で,13位に 水酸基あるいはケトンを持つIinolenicacidとIinoleicacidの誘導体に化合物1より強い炎 症抑制活性を認めている。特にIinoleicacidの酸化物は抗炎症薬として用いられている indomethacinやglycyrdleticacidと同等の強い抑制作用を示す。このことから,炎症抑制活 性発現には,炭素数1Sの不飽和脂肪酸に,アリル位水酸基あるいはケトンを持ち,共役二 重結合が存在することが重要であると考えている。 2.ゴンズイから炎症抑制物質として,5,7-dihydroxy-2-methyl-benzopyran-4-One(3), gallicacidmethylester(4),及びvomifo1iol(8),euSCaPholide(7)を得た。これらの化合物 は既知化合物ではあるが,炎症抑制作用については知られていなかった。また新規物質 として,3,7Jihydroxy-5-OCtan01ide(5),methy15,7Jihydroxy-2-OCtenOate(6)を単離してい る。 3.タイミンタチバナから炎症抑制物質として,既知化合物の3-geranyl-4-hydroxy-5-(3f-methyl-2.-butenyl)benzoicacid(9)を単離した。この化合物に炎症抑制作用を見いだした のは初めてである。 4.単離した化合物について,炎症反応におけるアラキドン酸カスケードのキー酵素の一 つである1ipoxygenaseに対する阻害活性を検討している。化合物1,2,3,4,8,9はいずれ も炎症抑制作用を示すと共に,1ipoxygenaseに対して,阻害活性を示した。これらの化 合物は,1ipoxygenaseを阻害する経路で炎症抑制を示している可能性が高いと考察して いる。 5.ゴンズイから多量に得られた化合物3,5,7を用いて,ラット足庶にカラゲナンで誘導 した浮腫に対する急性炎症抑制活性を調べている。化合物5は全く抑制活性を示さない が,化合物3と7は腫れを,CyClooxygenase阻害作用を持つ抗炎症薬のindomethacinと 同程度にまで低下させた。 この論文で,著者は炎症抑制物質の検索を行ない,新規化合物2種および既知化合物 7種の炎症抑制作用を明らかにした。その構造解析は適確であり,構造と活性との関係 および,作用機構の考察も十分行なっている。最近,共役二重結合を有する1inoleic acidや1inolenicacidが抗がん作用や高血圧の予防効果を示すことが報告されているが, これに類似の化合物1およびその関連化合物に炎症抑制作用だけでなく抗がん作用があ る可能性も高い。今後これらの化合物のなかから,薬のモデルが生まれることが期待で きる。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐鼻大学大学院連合農学研究科の学位論 文として十分価値あるものと認めた。
-34-基礎となる学術論文 1)3-Gerany14-hydroxy-5-(3,一methyl-2,一butenyl)benzoicacidasananti-innammatory compound丘om叫′TTineseguinii,MeiDong,MakiNagaoka,ShintaroMiyazaki,RyozoIriyeand MitsuruHirota,Biosci.Biotech.Biochem・,63(9),1650-1653,(1999)・ 2)(10E,12Z,15Z)-9」Hydroxy-10,12,15→)Ctadecatrienoicacidmethylesterasan anti-innammatorycompoundfromB7zrefiadicksonii,MeiDong,YukikoOdaandMitsuruHirota, Bi。SCi.Biotech.Biochem.,64(4),(2000)印刷中.