能力の滞在と技館の顕在
教科・領域教育専攻 生活・健康系コース(保健体育) 森藤孝文o
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問題の所在 スポーツは、あらゆる事物が複雑に連関した 事象のー側面として、われわれ人間の眼前に現 象している。観察者の一人である指導者は、試 合やトレーニングで、選手の動きをみる。経験 のある指導者は、ウォーミングアップやトレー ニングで選手の様子や表情をみるだけで、選手 の調子を知ることができる。指導者は、何をみ ているのか?スポーツにおいて見えている物や 見えていない物、見えているできごとや見えて いないできごとがあり、我々の現前から立ち顕 われては消え、消えては立ち顕われるというこ とを常に繰り返している。そのなかで、選手は、 トレーニングで技能や能力を獲得している。そ の獲得のプロセスで、指導者は、ある視座をも って現象をみている。本研究においては、この ようなスポーツの現象やできごとを、スポーツ 文化における「言葉」を手がかりにして考察す る。考察は、以下の文献資料をもとに行う。 ①Gunter Schnabel, Sportliche Technik undBewegungskoordination als Gegenstand und Arbeitsgebiet inder Theorie des Trainings(1976)
②Gunnar Drexel, P釘adigmen in Sport und
Sportwissenschaft (2002) また引用・参考文献は本文の巻末に記載する。 1 .スポ』ツの顕在住とスポ』ツ科学の潜在 住 指 導 教 員 綿 引 勝 美 我々が実際に見ることのできるのは、オリン ピックの100メートル走であれば、わずか10秒 足らずの出来事でしかない。スポーツの場面で 顕在している選手のプレイの背景に、膨大な時 間と労力がかけられていることは、想像に難く ない。指導者、科学者をはじめとする、選手の プレイに関わるすべての潜在的な役割が十分に 果たされてはじめて、より高度なパフォーマン スとして顕在化すると考えられる。その一役を 担っているのが、スポ}ツ科学であり、スポー ツ文化といえる。知の体系であるスポーツ科学 が、選手のパフォーマンスやスポーツにどのよ うに影響するのか、というのが問題になる。ス ポ}ツ科学の客観性が、いかにプレイの主体で あるスポーツ選手に影響し、パフォーマンスと してあらわれるのか。 スポーツにおける主観的あるいは客観的な術 語の脊在を前提にすることで、トレ}ニングや 試合で顕在化する選手のパフオ}マンスのみえ かたは、違うのではないだろうか。指導者の主 観を指し示す言葉は、科学の客観性を指し示す 言葉とは区別する必要がある。 また、スボ}ツにおける術語は、スポーツ選 手の行為や運動をどのように記述するかという 問題がある。人間の運動は、常に変化しつづけ、 また一極性の出来事である。それを記述しよう とすると、言葉は断絶し、時間の流れを静止さ せる。言葉は、運動を記述することができない。 つ U Q u q u
しかし、言葉の差異や同一性あるいは言葉で 記述できないことカ宝、スポーツの見えている現 象とみえない現象とを際立たせるきっかけにな る。言葉を用いてテキストにする、指導者や選 手が議論をしていくことで、言葉の潜在的な前 提を顕在化させる。スポーツ選手の行為と言葉 の関係性は、記述することで可能性が拓かれる。 例えば、実践という術語は、選手の行為やス ポーツ活動などを対象化する概念装置になって いる。実践という術語は、言葉として記述され ることによって、論理上の一つの概念になる。 そこでは、理論と実践という術語が、一般的に 相対する概念として、同じ土俵に位置づけられ る。理論と実践を同じ足場に位置づけることで、 概念的なメタ領域を設定することができる。