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金融商品課税 と企業会計
―― ニュージーラン ドの事例 ――
久 保 田
秀 I は じめに ニュージーラン ドでは,1985年 に,そ れまでの厳 しい為替管理が突然撤去 さ れた。それによって生 じる脱税の機会 に対処すべ く,ニ ュージーラン ド政府 は デ リバ テ イブを含 むすべ ての金融商品の課税 を扱 う包括 的ルール (「発生 ルー ル」Ⅲ accrual rules打として知 られる)を 1986年に制定 した。その後,1997年 , ニュージーラン ド政府は,道 守 コス トを引 き下げ,制 度の問題点解消 を目指 し て,発 生ルールの見直 しに着手 した。内国歳入局 による,発 生ルールの見直 し は,「金融約定課税」 (Ⅲ Tttθ免冴aけあο物 げ 見物attctaJ Aγγattgθttθ物けsⅢ)と題 す る討議資料の公表 に至 った。利害関係者か ら意見具 申が行われ,1998年後半, 議会 に法案が提 出 された。当法案 に関 して さらなる意見具 申が行 われ,1999年 5月に議会 を通過 した。 1999年5月に通過 した法制 は,第 2部 ルール (Division 2 rules)として知 られ る,新 しい発生 ルールヘ とつながった。新 ルールは,1999年 5月 (当法案の勅 裁 日)以 降に締結 される金融約定 に適用 されている。 発生 ルールは金融約定が存在す る場合 にのみ適用 されるため,「金融約定」 の定義が当ルールの基礎 となる。すべての金融約定 を当ルールの適用範囲 とす るため に,金 融約定の定義は とて も広範囲に及んでいる。第 2部 ルールには, 「金融約定」 とい う用語の新 しい定義がある。そこでは以下の ように定義 され ている。 ( 1 ) 債 務 ( d e b t ) また は債 務 証券 ( d e b t i n s t r u m e n t i 法律 に よって生 じる債 樹108 彦 根論叢 第 331号 務 を含 む),も しくは, (2)あ る者が他の者 に(ア)将来の時点,ま たは (イ)ある事象が将来発生 もし くは発生 しない時,貨 幣 を与える対価 として,貨 幣を受け取 るとい う約定 (債務 または債務証券,も しくは期待金融約定 を含 む場合がある) 貨幣 とい う用語 は,「貨幣 に転換 されるか否かにかかわ りな く,貨 幣の価値 があるもの,お よび全額か一部かにかかわ らず貨幣支払いの義務の繰延 または 取消 を含 む,貨 幣 に対する権利」 を含 む。そのため,貨 幣 とい う用語は,現 金 または現金等価物 による単 なる対価以上の ものを意味す る。 したがって,「金 融約定」 とい う定義の本質的特徴 は,一 方の当事者が,「貨幣」 とい う対価で, もう一方の当事者 に将来 「貨幣」 を提供するとい う場合の協約 を意味する。合 意の下での,「貨幣」 もしくは便益 の流れの タイ ミングのずれの存在 は,明 ら かに金融約定 を構成す るのに十分 な要件である。その結果,デ リバテイブ等 も 適用対象 に含めることがで きる包括的な定義 となっている。 ニュージーラン ドの発生ルールは,金 融約定の課税 に対する包括的アプロー チ とい うことがで きる。一定の条件 を満たせ は,企 業会計上の処理法 も代替法 として認め られる。それ らの代替法 はすべて,「商業上認め られた実務 に一致 す る」 ことを要求 している。 日本で も平成12年度の法人税法改正 において,金 融取引課税の抜本的改正が行 われたが,そ れに先行 して企業会計上,金 融商品 の時価評価 とヘ ッジ会計が制度化 されたことを踏 まえている (武田2000,578 頁)。いずれの国で も,金 融商品に関 しては,企 業会計上の処理法 を税法が追 認 していることが伺 える。本稿では,ニ ュージーラン ドにおける金融商品の新 課税制度の仕組みについて概観 を得,そ こでの金融商品課税 と企業会計の関連 を考察することを目的 とする。 正 発 生ルールの適用範囲 発生 ルールには,司 法解釈 を支援するための法廷への指針提供のため,そ の 目的が掲 げ られている。当規定は,次 の ようにい う。 「本 ルールの 目的は,金 融約定の当事者が,当 金融約定の期 間にわたって発
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金融商品課税と企業会計 109 生す る所得 もしくは損失の公正且つ合理的な金額 を計上することを要求する ことによって,所 得の繰延お よび損失の繰上 を防 く`ことにある。」 発生 ルールは,(1)金融約定の当事者であ り,且 つ(2)所得課税 目的について, ニュージーラン ドの居住者である者に適用 される。 発生 ルールが金融約定 に適用 されためには,金 融約定の存在が前提 となる。 以下の 3つ の条件 を満たす とき,金 融約定が存在すると判断 される。 (1)セ クシ ョンEH22の 「金融約定」の定義 を満足する。(2)当 金融約定 は,セクシ ョンEH24に い う期待金融約定 (expected finacial arrangements)ではない。
(3)セ クシ ョンEH25に い う金融約定 として当期待金融約定 を取 り扱 うこと を選択 しないか,ま たは選択で きない。
金融約定 について,後 述の基準価格修正 (basic pAce adiustment)を算定す る年度ではな く,か つ現金基準適用者 (cash bads persons)でなければ配分法 (spreading methods)が適用 される。現金基準適用者 として知 られるカテゴリー の納税者 には,発 生ルールは部分的に適用 される。現金基準適用者は,そ の者 が基準価格修正 を算定することを要求 される所得年度 (つまり,納 税者が当事 者である金融約定が売却,ま たは満期償還,あ るいは免除 される所得年度)に のみ発生ルールの適用 を受ける。 したがって,ニ ュージーラン ドにおける金融 約定の会計処理のポイ ン トは,配 分法 と基準価格修正 とい うことになる。 なお,政 策上の理由によって特定の金融約定が,発 生ルールの適用範囲か ら, 特別 に除外 されている。それ らの除外 される金融約走 は,期 待金融約定 と呼ば れ,セ クシ ョンEH2411)で規定 されている。そこでは,除 外 される期待金融約 定の例が,以 下の ように規定 されている。 (「一定の条件付 き」 と付 している項 目は,当 該項 目がすべ て期待金融約定 とみなされるのではな く,一 定の条件 を 満た した ものに限 られる。) 終身年金 財貨 ・サービスの売買約定 (一定の条件付 き)
110 彦 根論叢 第 331号 (C)賭 ,鏡 または射幸 (d)保 険契約 (e)雇 用契約 (f)徴 収権授与約定 (g)家 畜 またはサ ラブ レッ ドの分割払い購入約定 (h)団 体投資 ファン ドヘの出資持分 (1)(フ ァイナ ンス ・リース以外の)リース (j)外 貨建てローン (一定の条件付 き) (k)NZド ル建て無利子請求償還 ローン (一定の条件付 き) (1)(金 融協約の持分以外 の)財産の売買 オプシ ョンまたは処分 オプシ ョン (一定の条件付 き) lml パー トナーシ ップまたはジ ョイン トベ ンチ ャーヘ の出資持分 (n)非 公開または国内の 「財貨 ・サービスの売買約走」 (一定の条件付 き) (0)1999年 5月20日以降に取得 された,(償 還可能株式以外の)株 式 または株 式売買オプシ ョン (p)「 財貨 ・サービスの短期売買約定」 (一定の条件付 き) (q)短 期 オプシ ヨン (一定の条件付 き) (r)セ クシ ョンFZ lに よる指定優先株 (S)退 職年金制度の会員権 (t)ト ラベ ラーズ ・チ ェ ック (u)元 本変動債務証券 (一定の条件付 き) (V)財 貨 ・サービスに対す る保証 「現金基準適用者」 とい う用語 は,セ クシ ョンEH27で 定義 されている。当 定義 は第 2部 ルール については改訂 され,旧 発生 ルールの ように単 に保有者 (つま り債権者)だ けが該当するのではな く,金 融約定のすべての当事者が含 まれる。現金基準適用者は,以 下のいずれかの条件 を満たす 自然人 をい う。 (1)発 生ルールで算定 される,納 税者が当事者である全金融約定か ら生 じる
金融商品課税と企業会計 1 1 1 所 得 お よび損 失 の総 額 が 1 0 0 , 0 0 0 N Z ドル ( 約6 , 0 6 0 , 0 0 0 円* ) を 超 えない か,も しくは納税者が当事者である各金融約定の総額が所得年度の各々の 日において1,000,000 NZド ル (約60,600,000円*)を 超 えない。 (2)セ クシ ョンEH27(3),(4)お よび (5)の所得差額公式 によって算定 される 額が40,000 NZド ル (約2,424,000円ホ)を 超 えない。所得差額公式 とは以 下の もの をい う。 (発生所得 ―現金基準所得)十 (現金基準損失 ―発生損失) 現金基準適用者 は,そ の者が望む場合,発 生ルールによって自己の金融約定 を処理 し,承 認 された配分法 を利用する選択権 を有する。そ うした選択権 を行 使す る者 は,選 択権行使時 にその者が当事者であるすべての金融約定 に,そ し て次所得年度 にはすべての金融約定 に配分法 を利用 しなければならない。 2001年4月9日のオース トラリア ・ニュージーランド銀行の対顧客売 レー ト :NZS l=¥60.60で 計算 皿 金 融約定の会計処理 セ クシ ョンEH3訳 4)による と,納 税者が 「基準価格修正」 を計算 しなければ な らない所得年度でない場合,つ ま り金融約定が解消する年度以外の所得年度 には,当 納税者 は各金融約定 について,承 認 された 「配分法」か ら 1つ を利用 して所得お よび各所得 に対する損金 を害Jり当てなければならない。そ うした割 り当てを行 う際,金 融約定 によって支払済みの対価 もしくは自己に支払われる べ き☆立価,お よび金融約定によって免除 した金額,並 びに免除を受けている債 務額 を顧慮 しなければな らない。 これ らの配分法の適用 は,現 金基準適用者お よび補償信託 (compensadon trust)の受託者 には要求 されない。 発生ルールにおいて認め られている主要な配分法は,最 終利回 り法 (yiel伊to一 maturity method)である。納税者が一走の基準 を満 たす ことを条件 に,最 終 利 回 り法の代替法 として,定 額法 (strttght―line method)と市場評価法 (market valuation method)が認め られている。
1 1 2 彦 根論叢 第 3 3 1 号 定額法 は,所 得年度の各 々の 日において1,500,000 NZド ル (約90,900,000 円*)を 超 えない金融約定の当事者である者 (法人 を含 む)の 選択権 として利 用で きる。 したが って,比 較的小規模 な主体 に適用 される,あ る種の筒便法 と い うことがで きよう。一旦,こ の方法が採用 されると,納 税者は当所得年度に 当事者である金融約定のすべてについて,内 国歳入局長がそれ以外の認定 を行 わない場合,「基準価格修正」計算が行 われるまで,当 金融約定の期 間中ず っ と定額法 を継続 して利用 しなければならない。 市場評価法 は,以 下のいずれかの者の選択権 として利用可能である。 (1)金 融約定 (但し当事業で扱 われるタイプの金融約定 に関 してのみ)の 取 扱 を含 む事業 を行 っている者 (2)金 融約定が,外 国為替の先渡 し契約,先 物契約 または為替取引オプシ ョ ンである場合のすべての者 この ように,市 場評価法 は,金 融事業者等 に適用 される方法である。デリバ テ イブについては,基 本的にはこの方法,ま たは,後 述するような配分法の代 替法 としての財務報告向けの企業会計上の処理法が適用 されることになる。 こ の場合 も,一 旦,市 場評価法が採用 されると,納 税者は,当 金融約定について, 「基準価格修正」が行 われるか,内 国歳入局長がそれ以外の認定 を行 うまで, 当金融約定の期 間中ずつと市場評価法 を継続 して利用 しなければならない。な お,市 場評価法は,金 融約定の両当事者が 「特殊関係人」 (H assocねted persons Ⅲ) である場合 には,当 金融約定 には適用で きない。 2001年4月9日のオース トラリア ・ニュージーランド銀行の対顧客売 レー ト :NZ$1=¥60。 60で計算 配分法 を採用 している納税者 は,租 税債務の減額,繰 延 もしくは前払い以外 の健全 な商業 目的により,他 の方法 に変更する自由がある。但 し,方 法の変更 は,金 融約定が市場評価法か,定 額法の何 れかの適用 を受ける場合は,認 め ら れない。そ うした変更 を行 った納税者 は,セ クシ ョンEH44に よ り,修 正額 を
風 ド ー ー ー ー ー ー ー 金融商品課税と企業会計 1 1 3 算 定 す る こ とを要求 され る。 なお,現 金基準適用者 は,「基準価格修正」 を行 うことを要求 される所得年 度 にのみ,発 生ルールの適用 を受 ける。それ以前の所得年度 (すなわち基準価 格修正 を行 わねばな らない年度以外 の年度)に は,セ クシ ョンCEl,CE3お よ びDDl(b)によつてのみ現金基準で金融約定か らの所得 または損失 を会計処理す るこ とが要求 される。但 し,現 金基準適用者がセクシ ヨンEH31に よる金融約 定 の会計処理 を選択する場合 には,納 税者は,毎 所得年度,発 生ルールによつ て当金融約定 を会計処理 しなければならない。 い くつかの点で,発 生ルール制度は,必 要最小限の骨組 とみなす ことがで き る。当制度 における基本的要件 は,最 終利 回 り法 を使 って金融約定 を会計処理 す る点 にある。 この要件 は,特 定の債務証券 には容易 に適用で きるが,他 の タ イプの金融約走 には容易 に適用で きない場合がある。発生ルールの範囲 と適用 は,内 国歳入局長 による決定 (determination)が考慮 される とき,一 層 明確 に なる。 内国歳入局長 は,1994年 租税行政法第90条によって,自 身の意思 または納税 者の申請 に応 じて,発 生ルールについて広範囲の問題 に関 して決定 を発するこ とがで きる。特定の タイプの決定 は,発 生ルールの目的のために納税者 を拘束 す るが,他 方,他 の決定は,必 ず しも拘束的なものではな く,納 税者 に選択権 を提供 している。 1999年8月現在 で,内 国歳入局長 は,発 生ルールについて29の一般決定を発 している。それ らは,以 下の ように分類で きる。 (1)特 定 の配分法 が どの ように適用 され るべ きか についての決定 (GlA, G 3 , G 1 0 B , G l l A , G 2 3 , G 2 4 々 字)。 (2)期 待金融約定が,よ り広範 な金融約定の一部を構成するとき,ど のよう に会計処理 されるべ きかについての決定 (G4,G5C,G22) (3)金 融約定 を評価す るための市場価値 の承認 された源泉 についての決定 (G6D, G7C, G13A) 律)特 殊 なタイプの金融約定が どの ように会計処理 されるべ きかについての
114 彦 根論叢 第 331号
決気
こ (G9A, G9B, G12, G14, G14A, G16A, G17B, G19, G20, G21,
G 2 1 A , G 2 5 , G 2 6 , G 2 7 , G 2 9 ) (5)そ の他の決定 (G15) ヽ 上記の29の決定の うち,最 も重要な決定 は,G9Aと G9Bで ある。これ らの決 走 は,金 融約定の当事者 に未実現為替差損益 を発生主義で処理することを要求 している。未実現為替差損益 は,そ の後,金 融約定によるすべてのキャッシュ フローが最終的 に実現 した ときに,基 準価格修正計算 によって修正 される。 G9Bに よっては,既 知のキャッシュフローのすべ てが固定 されているならば, 納税者 は,金 融約定が締結 された ときに実効先渡交換 レー トを使 って,予 測基 準 によってのみ未実現為替差損益 を会計処理する方法 を選択で きる。 IV 基 準価格修正 基準価格修正 は,金 融約定が売却,満 期償還 または免除 される所得年度 に算 定 される。基準価格修正 は,本 来,取 引のすべての流入が所得 として扱 われ, すべ ての流出が損金控除 として認め られる場合の 「洗い替 え」計算であ り,そ の結果は,そ れ以前の所得年度 に認識 された所得 と損失について修正 される。 したが って,そ れ以前の所得年度 に認識 されていないすべての所得 と損失は, この時点で全キャッシュフローが最終的且つ全額実現 したとして算入 される。 た とえ現金基準適用者がそれ以前の所得年度 に承認 された 「配分法」 を利用す る要件 を免除 されていた として も,現 金基準適用者にも基準価格修正が要求 さ れる。 セ クシ ョンEH45(1)によって,以 下の 日付 に 「自己のポジシ ョンを最 もよく 表す」基準価格修正の計算が行 われねばならない。 (1)金 融約定 を売却 または移転 した 日。 (2)金 融約定の満期 日。 (3)金 融約定の当事者である者が税務 目的でニュージーラン ドの居住者であ ることを止めた 日。 (4)債 務が,セ クシ ョンEH53で 指定 された ように,特 殊関係人に割 り引い
金融商品課税と企業会計 115 て売却 された 日。 (5)金 融約定の当事者が,適 切 な対価 な しに当金融約定 によるすべての支払 残 を免責 された 日。 (6)金 融約定の当事者が,1967年 支払不能者法,1955年 会社法 または1993年 会社法 もしくはニュージーラン ド外 の類似 の法律 により,当 金融約定 によ るすべての支払残 を免責 された 日。 (7)金 融約定 によるすべての支払残が,時 間の経過 により取戻不能 もしくは 強制執行不能 になる日。 セクシ ョンEH47(1)によって,基 準価格修正は以下のように計算 される。 基準価格修正 三 対価 一 所得 十 損失 十 免除額 上記公式 中,「損失」 とは,そ れ以前の所得年度 に金融約定 によ り納税者 に 発生 した損失 である。「免除額」 とは,そ れが納税者 または法 によって免除 さ れた とい う理由で,当 納税者 に支払われた対価 または支払われるべ き対価 に算 入 されない金額である。 なお,基 準価格修正公式 において 「対価」 (H consideration Ⅲ)とい う変数が 鍵 となる ものなので,セ クシ ヨンEH48に は,対 価 を決定す る方法 についての 特 別 ルールが含 まれてい る。対価 は,セ ク シ ヨンEH49(1)または (20)または GDll,も しくはGDl訳 3)または“)が適用 されない場合,成 功報酬 を無視 して, すべ ての支払対価 または受取対価 を含 むように定義 されている。財産,も しく は用役や特定オプシヨンの売却 または購入に関する合意の場合,対 価はセクショ ンEH4訳 3)によって決定 される。 上記公式 により算定 された金額がプラスの場合,当 金額 は,当 所得年度 に納 税者 によって得 られた所得 (つま り課税所得)で あるとみなされる。当金額が, マイナスの場合,当 金額は,当 所得年度 に納税者に 「発生 した損失」であると みなされる。基準価格修正が 「発生 した損失」 をもた らす場合,当 金額は,セ
116 彦 根論叢 第 331号 ク シ ョンD D l ( b ) での支払利子控 除 テス トを納税者 が満 たす場合 にのみ控 除可能 である。例示によつて,基 準価格修正の算定方法 とその効果を示そう。 【例示 1】 (Smith1999,p.313よリー部修正の上引用) 投資家Aは ,受 取利息を得るために1,000 NZドル(NZD)で 外貨建債券を取 得する。下記の年度にわたって,投 資家Aは ,以 下の所得を最終利回 り法 と決 定9Aを利用 して申告する。下記に示 された金額は,受 取利息が当年度の未実 現為替差損益 と合算 された後 の正味金額 である。 ( 第3 年度 と第4 年度 は, 為 替 損失が受取利息 を上 回つている。) 年 度 受 取利息 正 味所得 正 味の結果 (NZD) (NZD) 第 1年 度 50 40 課 税所得 第 2年 度 45 25 課 税所得 第 3年 度 40 (10) 発 生 した損失 第 4年 度 30 (10) 発 生 した損失 第5年度初頭 ,当 金融約定 (外貨建債券)は 820 NZドルで売却 される。当金 融約定 (外貨建債券)か らの全体損益 は,15NZド ルの損失である。 〔ケース 1〕 第3年度 と第4年度 に発生 した損失が,セ クシ ョンDDl(b)により控 除可能 と仮定 した場合 対価 =820+50+45+40+30-1,000=-15 NZド ル (損失) 所得 =65 損失 =20 免 除金額 =ゼ ロ 基準価格修正 三十15-65+20+ゼ ロ=-60 NZド ル (損失) これは,第 3年度 と第4年度 に発生 した損失が控除可能 として,セ クションDD l(b)によ り控除が認め られた と仮定 されている。
金融商品課税と企業会計 117 金融約定 か らの全体所得 =40+25-10-10-60=-15 NZド ル (損失) 〔ケ ース 2〕 第3年度 と第4年度 に発生 した損失が,セ クシ ョンDDl(b)に よ り 控除不能 と仮定 した場合 対価 =820+50+45+40+30-1,000=-15 NZド ルの損失 所得 =65 損失 王ゼロ 免除金額 =ゼ ロ 基準価格修正 =-15-65+ゼ ロ十ゼロ=-80 NZド ル (損失) 第 3年 度 と第 4年 度 に発生 した損失がセクシ ョンDDl(b)に よ り控除不能 と 仮定す る と,セ クシ ョンEH47(4)によ り基準価格修正金額 は,そ れ以前 に認識 された所得の範囲 (すなわち65 NZド ル)ま で控除可能である。 金融約定か らの全体所得 =40+25-65=ゼ ロNZド ル (租税 目的にとって)。 投資家Aは ,-15 NZド ルの全体損失 を控除で きない。 V 配 分法および基準価格修正の計算例 皿節で概観 した 3つ の配分法お よびIV節で説明 した基準価格修正計算の方法 と効果 を例示で もって示 してみ よう。
【
例示 2】 (Smith1999,p。
314-15よ
リー部修正の上引用)
1996年
6月1日に,以 下の条件の NZド ル建債券が,9,562.36 NZドルで発行
される。 額面10,000 NZドル 6.0%の年間クーポ ン得J札) 利息四半期毎の後払い 満期 日1998年6月30日 最終利 回 り,年 8.6683%(四 半期当た り2.1%に等 しい。)最終利 回 り法 を利用 した所得の配分 は以下の とお りである。 118 彦 根論叢 第 331号 1 9 9 7 年3 月3 1 日の市場価値 1 9 9 8 年3 月3 1 日の市場価値 1 9 9 8 年5 月5 日 に当債券 は, れ る。 日付 元 本 (NZD)利 率 (%) (クーポン支払い前) '96.09.30 9,562.36 2.1 '96。 12.31 9,613.17 2.1 '97.03.31 9,665.05 2.1 '97.06.30 9,718.01 2.1 '97.09.30 9,772.09 2.1 '97.12.31 9,827.30 2.1 '98.03.31 9,883.68 2.1 '98.06.30 9,941.23 2.1 10,260。52 NZド ル 10,002.23 NZド ル 9 , 9 6 7 . 7 3 N Z ドル ( 未収利息 を含 む) で 売却 さ 四半 期 利 息 200.81 201.88 202.97 204.08 205.21 206。37 207.56 208.77 ク ー ポ ン 元 本( N Z D ) ( クーポン支払い後) 150.00 9,613.17 150。00 9,665。05 150.00 9,718.01 150.00 9,772.09 150.00 9,827.30 150.00 9,883.68 150.00 9,941.23 150.00 10,000.00 基準価格修正 を含 む,1996/97,1997/98お よび1998/99所得年度の所得が下 記の方法 によって算定 される。 (1)最 終利 回 り法 一一一i (2)定 額法 ――一――一十一 配分法 (3)市 場評価法 ――一― 」 (4)現 金基準 (1)最 終利回 り法 決算 日 1997年 3月31日 最終禾U回 りによる利息 :200.81+201.88+202.97=605,66 NZドル 決算 日 1998年 3月31日 最終利 回 りによる利息 :=204.08+205。21+206。37+207.56=823.22NZド ル 決算 日 1999年 3月31日
金融商品課税と企業会計 119 1998/99所得年度 に,当 債券 は,セ クシ ョンEH33(1)に よって発生主義計算 が要求 されない ように売却 される。その代 わ り,基 準価格修正が計算 されねば な らない。その公式 は以下の とお りである。 基準価格修正 三 対価 ― 所得 十 損失 十 免除金額 対価 =9,967.73+450.00+600。00-9,562.36=1,455。37 NZド ル 所得=605。66+823.22=1,428.88 NZド ル 損失 =ゼ ロ NZド ル 免除金額 =ゼ ロ NZド ル 基準価格修正 三1,455.37-1,428.88+ゼ ロ十ゼロ=26。49 NZド ル (所得) (2)定 額法 決定G24に よる定額法 を利用 した,社 債発行差金のアモーチゼーションの計算 償還元本 受取利息総額 ―取得原価 配分 されるべ き金額 配分 されるべ き期 間 (四半期) 各期 の所得 決算 日 1997年 3月31日 所得 =204.71+204.71+204.71=614.13 NZド ル 決算 日 1998年 3月31日 所得 =204.71+204.71+204,71+204.71=818.84 NZド ル 決算 日 1999年 3月31日 基準価格修正の計算 : 基準価格修正 三 対価 一 所得 十 損失 十 免除金額 対価 =9,967.73+450。00+600.00-9,562.36=1,455,37 NZド ル 所得=614.13+818.84=1,432.97 NZド ル 10,000,00 1,200.00 ( 9 , 5 6 2 . 3 6 ) 1,637.64 NZド ル キ8 204,71 NZド ル
120 彦 根論叢 第 331号 損 失 =ゼ ロ NZド ル 免 除金額 =ゼ ロ NZド ル 基準価格修 正 =1,455137-1,432.97+ゼ ロ十ゼ ロ=22.40 NZド ル (所得) (3)市 場価 値 法 各 年度 の所得 は,受 取済みの クーポ ンに加 えて,決 算 日の当債券 の市場価値 にお ける (未実現 の)変 動額 を含 む。 決算 日 1997年 3月31日 所得 =150.00+150.00+150,00+(10,260.52-9,562.36)=1,148.16NZド ル 決算 日 1998年 3月31日 所得 =150。00+150。00+150.00+150.00+(10,002.23-10,260.52)=341.71 NZド ル 決算 日 1999年 3月31日 基準価格修 正 の計算 : 基準価格修 正 三 対価 ― 所得 十 損失 十 免 除金額 対価 =9,967,73+450,00+600。 00-9,562.36=1,455。37 NZド ル 所 得=1,148.13+371.71=1,489.87 NZド ル 損 失 =ゼ ロ NZド ル 免 除金額 =ゼ ロ NZド ル 基準価 格修 正 三1,455.37-1,489.87+ゼ ロ 十ゼ ロ=-34.50 NZド ル (発生 した損失 ) この金額 は,納 税者 が セ クシ ョンDDl(b)の 要件 を満 たす場合 ,控 除で きる。 セ クシ ョンDDl(b)に よる控 除が認 め られ ない場合 ,当 金額 は,そ れが セ クシ ョ ンEH4ス 4)によって以前 の年度 に報告 され た,金 融約定 か らの所得 を超 えない 範 囲 で ,控 除可 能 で あ る。 したが って,34.50 NZド ル は 自動 的 に控 除可 能 と なる。
金融商品課税と企業会計 121 (4)現 金基準 セ クシ ョンEH3訳 4Xa)によって,現 金基準適用者 は,配 分法 を適用す ること を要求 されていない。現金基準適用者の所得 は,セ クシ ョンCEl(a)ぉよび(b) (つま り現金収入基準 で)決 定 される。 各年度の所得 は以下の とお りである : 決算 日 1997年 3月31日 所得 =150,00+150,00+150.00=450.00 NZド ル 決算 日 1998年 3月31日 所得 =150.00+150.00+150,00+150.00=600,00 NZド ル 決算 日 1999年 3月31日 基準価格修正の計算 : 基準価格修正 三対価 ―所得 十損失 十免除金額 対価 =9,967,73+450,00+600.00-9,562.36=1,455。37 NZド ル 所得=450.00+600.00=1,050.00 NZド ル 損失 =ゼ ロ NZド ル 免 除金額 =ゼ ロ NZド ル 基準価格修正 =1,455。37-1,050.00+ゼ ロ十ゼロ=405。37 NZド ル (所得) ( 5 ) 4 つ の方法 の結 果比較 所得 年度 最 終禾U 回 り法 定 額法 1996/97 605.66 614.13 1997/98 823.22 818.84 1998/99(BPA) 26.49 22.40 合計 (NZD) 1,455。 37 1,455。 37 市 場 評 価 法 現 金 基 準 1,148.16 450。00 341,71 600。00 -34.50 405。 37 1,455,37 1,455。37 上掲の表 中,1998/99所得年度 (最終年度)の 数値 は,基 準価格修正 (BPA) による金額 を示 している。 4つ の異 なる方法が,債 券の期間全体 については同 一金額の所得 を認識 しているが,所 得のうち異なる金額を各所得年度に配分 し ていることを示 している。基準価格修正 によって,結 果 として,ど の処理法 に
122 彦 根論叢 第 331号 よろうと同一の課税が行われることが分かる。 したがって, 4つ の方法間の唯 一の相違は,所 得認識のタイミングに過ぎない。 Ⅵ 配 分法の代替法 としての企業会計 上述の ように,金 融約定 について,現 金基準適用者でなければ配分法が適用 される。配分法の うち,最 終利 回 り法が原則的処理法であ り,定 額法は比較的 小規模 な金融約定 に対す る簡便法,そ して市場評価法は金融事業者等 に対する 処理法であった。 最終利 回 り法の適用対象者 は,以 下の条件 を満たす場合,代 替法 を利用する こと力ざで きる。 (a)当 代替法が,発 生主義会計の原則 を顧慮 している。 (b)当 代替法が,商 業上認め られた実務 に一致する。 (C)当 代替法が,財 務報告向けとして同一,も しくは類似の金融約定 に継続 して適用 される。 (d)当 代替法が,最 終利 回 り法 を利用 して配分 される金額 と著 しく異ならな い配分額 になる。 市場評価法の適用対象者 は,以 下の条件 を満たす場合,代 替法 を利用するこ とがで きる。 (a)当 代替法が,商 業上認め られた実務 に一致する。 (b)当 代替法が,財 務報告向けとして同一,も しくは類似の金融約定 に継続 して適用 される。 (C)内 国歳入局長が,市 場価値 を決定するための市場,方 法お よび情報源 を 承認す るか,も しくは納税者が当市場価値が信頼で きるものであることを 立証で きる。 最終利 回 り法 を利用で きず,ま た定額法 と市場評価法の何 れ も利用 しない, もしくは利用で きない場合,以 下の順序でセクシ ヨンEH38,39お よび40で指 定 された方法 により金融約定か らの所得 または損失 を配分 しなければならない。 (1)内 国歳入局長 によって発せ られた決定 において規定 された方法 (セクショ
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金融商品課税と企業会計 123 ンEH38) (2)適 用可 能 な決定が存在 しない場合 に利用 され るべ き代替 的方法 (セクシ ョ ンEH39)(3)残 余不履行法 (residual default method iセクシ ヨンEH40)
この ように残余不履行法が認め られるのは,セ クシ ョンEH38お よび39に指 定 された一般 的方法 を適用で きない場合であるが,そ の際,商 業上認め られた 実務 に一致 し,且 つセ クシ ョンEH20に 準拠 して各所得年度 に配分 されるべ き 金額 に至 る方法が適用 されなければならない。残余不履行法の適用は,財 務諸 表 を作成 しない者,も しくは財務報告向けに金融約定か らの所得 と損失 を報告 しない者 に限 られる。 上掲の利用可能な代番法 は,す べ て,「商業上認め られた実務 に一致す る」 ことを要求 している。つ ま り,こ の要件 は,財 務報告向けに確立 された会計処 理法, もしくはその方面の ビジネスで報告実体 によって広 く採用 されている方 法が,基 礎 となる取引の経済的実態 に近似 していることを仮定 している。その 意味で,企 業会計上の処理法 を税法が追認 している例 といえるだろう。 V 結 びに代えて 情報革命 とグローバル経済の進展によって,人 々は国家の管轄から容易に逃 れることができるようになった。また資本,環 境汚染,病 原体,兵 器の流れが 国家が管理するには大 きくなりす ぎ,突 然移動するため,規 制当局がそのルー ルを徹底 させる能力に男 りが生 じている (Slaughter 1997,p.192)。したがっ て,特 定の国の当局が 「強行な」規制を実施 しようとしても,単 に資金の流出 を招 くだけという結果になりかねない。もちろん,決 して規制が無意味 という ことではなく,こ うした現実を踏まえた新たな課税制度が要求されている。ま た,金 融商品,特 にデリバテイブについては,新 たな商品が次々に開発 される ため,会 計基準の設定についても一国ではとうてい対応できない状況にあるた め,国 際協力が不可欠 となる。 そうした国際協力を実現すべ く,ニ ュージーランドの基準設定主体である,
124 彦 根論叢 第 331号
財務報告基準審議会 (Financial Reporting Standards Board:FRSB)の現在 の関心の焦点は,会 計基準の国際的調和化 と国際会計基準委員会 (InternadOnal Accoundng Standards Committee:IASC)レ ベルでの議論へ の影響力確保 に
あ る とい う(Ravlic 2000,p。18)。 また,金 融商品の会計処理 については, 「金融商品ジ ヨイン ト ・ワーキング ・グループ」 (以下ではJWGと 略称する。) が 「金融商品及び類似項 目」 に関す る ドラフ ト基準 を公表 し,各 国の金融商品 に関する会計基準の設定 に役立てようとしているが,ニ ュージーラン ドも参加 している。因みに,」WGに は,そ の他,米 ,英 ,加 ,豪 ,仏 ,独 ,ノ ルウェー, 日本の,会 計基準設定主体並 びに職業会計士団体,及 びIASCが 参加 している。 ニュージーラン ドにおける金融約定課税制度は,ニ ュージーラン ド固有の制度 とい うよ り,各 国の金融商品課税全般 にとつての示唆 を含む といえるだろう。 参考文献
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武田隆二2000『法人税法精説 [平成12年度版]』森山書店。 ニュージーランド内国歳入局ウェブサイ ト www.ird.govt.NZ