西
山
教
学
に
お
け
る
智
に
つ
い
て
釋
真
弥
京 都 西 山 短 期 大 学 釈 尊 の 時 代 よ り 仏 の 教 え は す な わ ち 智 の 顕 れ で あ り 、 仏 の 智 を 学 び 、 自 ら も 智 を 得 る こ と 、 そ れ が 覚 り で あ り 仏 に な る こ と で あ る と え ら れ て き た 。 そ れ は 智 を 得 る こ と で 煩 悩 が 滅 除 し 、 解 脱 を 得 る の で あ る 。 し か し 釈 尊 の 滅 後 、 特 に 大 乗 仏 教 が 起 こ っ て か ら は 智 を 得 る ︵ 自 利 ︶ だ け で は な く 、 他 を 救 う と い う 事 ︵ 利 他 ︶ に 重 点 が 置 か れ る よ う に な る 。 そ し て 様 々 な 仏 、 菩 等 が 登 場 し 、 多 く の 人 々 を 救 う と い う 役 目 を 担 う の で あ る 。 そ う な る と 智 と い う こ と よ り も む し ろ 仏 の 救 い 、 慈 悲 と い う こ と に 焦 点 が 当 て ら れ る よ う に な る 。 そ し て 浄 土 教 に お い て は 阿 弥 陀 仏 の 慈 悲 に よ っ て 衆 生 は 往 生 で き る と 説 か れ る 。 そ れ は 末 法 の 世 で は 衆 生 は 自 力 で 智 を 得 る 能 力 が な く 、 仏 の 慈 悲 、 他 力 に で し か 救 わ れ な い と 説 か れ 、 阿 弥 陀 仏 の 慈 悲 が 強 調 さ れ る 。 し か し 本 来 、 慈 悲 と は 智 に よ っ て 顕 現 さ れ る も の で あ り 、 智 に 裏 付 け さ れ た も の で あ る 。 よ っ て 智 体 悲 用 等 と も い わ れ る 。 で は 浄 土 教 に お い て 智 は 往 生 と の 関 係 、 衆 生 と の 関 係 に お い て 、 い か な る 存 在 で あ り 、 ど の よ う に 捉 え ら れ て い る の で あ ろ う か 。 本 稿 で は 證 空 上 人 ︵ 以 下 敬 称 略 ︶ が そ の 教 学 の 中 で ど の よ う に 智 を 捉 え て い る の か を 中 心 に 察 し て い き た い 。 證 空 の 教 学 に つ い て 察 す る に あ た っ て は そ の 師 で あ る 法 然 、 ま た 善 導 に つ い て も 触 れ て み た い 。 善 導 に つ い て は 證 空 の 著 作 は 観 経 疏 自 筆 御 鈔 を は じ め 大 部 分 が 、 五 部 九 巻 の 善 導 疏 の 釈 と 要 義 か ら な っ て い る 。 そ の こ と 一 二 七 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶か ら え て も 證 空 は 善 導 の 教 学 に 影 響 を 受 け て い た こ と は 明 ら か で あ り 、 検 証 が 必 要 で あ る と 思 わ れ る 。 一 善 導 の 智 観 に つ い て 善 導 は そ の 著 で あ る 五 部 九 巻 観 無 量 寿 経 疏 ︵ 以 下 観 経 疏 と 略 ︶ 四 巻 、 轉 經 行 道 願 往 生 土 法 事 讃 ︵ 以 下 法 事 讃 ︶ 二 巻 、 観 念 阿 彌 陀 佛 相 海 三 昧 功 徳 法 門 ︵ 以 下 観 念 法 門 ︶ 一 巻 、 往 生 禮 讃 ︵ 以 下 往 生 礼 讃 ︶ 一 巻 、 依 観 經 等 明 般 舟 三 昧 行 道 往 生 讃 ︵ 以 下 般 舟 讃 ︶ 一 巻 に お い て 独 自 の 思 想 を 展 開 し て い る 。 そ し て 観 経 疏 は 善 導 の 浄 土 の 教 義 、 教 相 を 知 る 上 の 教 相 分 と も 名 づ け ら れ 、 善 導 教 学 の 中 心 を な す も の で あ る 。 そ の 観 経 疏 玄 義 分 巻 第 一 の 観 無 量 寿 経 の 題 目 を 明 か す 段 で 、 言 者 照 也 。 常 以 信 心 手 以 持 智 之 輝 照 彼 彌 陀 正 依 等 事 ︵ 浄 土 宗 全 書 ︵ 以 下 浄 全 ︶ 二 、 三 頁 下 ︶ と あ り 、 観 と は 照 ら し 見 る こ と で あ り 、 常 に 清 浄 の 信 心 の 手 を も っ て 、 智 の 輝 き の 灯 を 持 ち 、 か の 阿 弥 陀 仏 の 種 々 の 正 報 ・ 依 報 の 事 柄 を 照 ら し 見 る こ と で あ る 。 こ の 観 無 量 寿 経 は そ の よ う な 経 典 で あ る と 説 か れ る 。 こ こ で い う 智 之 輝 と は 凡 夫 の 智 で は な く 、 釈 の 智 之 輝 を 指 す の で あ ろ う 。 そ れ は 、 観 経 疏 玄 義 分 第 一 に 但 以 垢 障 覆 深 體 無 由 顯 照 故 使 大 悲 於 西 化 驚 入 火 宅 之 門 甘 露 潤 於 群 萌 輝 智 炬 則 中 朗 中 重 昏 於 永 夜 三 檀 等 備 四 開 示 長 劫 之 苦 因 悟 入 永 生 之 果 ︵ 浄 全 二 、 一 頁 下 ︶ と あ り 、 凡 夫 は 垢 障 覆 深 の 存 在 で あ り 、 そ の よ う な 凡 夫 の 無 明 の 闇 を 照 ら す の が 釈 の 智 で あ る 。 そ し て 釈 尊 は 智 に よ っ て 無 明 の 闇 を 照 ら し 、 三 施 、 四 摂 法 を も っ て 斉 し く 収 め 取 っ て 悟 入 さ せ る と 説 か れ る 。 ま た 観 経 疏 序 分 義 第 二 に は 、 一 二 八 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
言 佛 日 者 法 喩 雙 標 也 譬 如 日 出 衆 闇 盡 除 佛 智 輝 光 無 明 之 夜 日 朗 ︵ 浄 全 二 、 二 七 頁 下 ︶ と あ り 、 仏 の 智 が 輝 け ば 、 無 明 の 夜 の 闇 は 晴 れ 、 日 が 照 る よ う に 明 ら か に す み わ た る と い い 、 ま た 観 念 法 門 に 問 曰 釋 出 現 度 五 濁 凡 夫 即 以 慈 悲 開 示 十 之 因 報 果 三 塗 之 苦 又 以 平 等 智 悟 入 人 天 生 彌 陀 佛 國 ︵ 浄 全 四 、 二 三 六 頁 上 ︶ 釈 は 五 濁 の 凡 夫 を 度 せ ん が 為 に 慈 悲 を も っ て 十 悪 の 因 、 三 途 の 苦 を 報 果 す る こ と を 開 示 し 、 智 を も っ て 、 人 天 回 し て 弥 陀 仏 国 に 生 ず る こ と を 悟 入 せ し め る と い う 。 つ ま り 釈 は 慈 悲 で は な く 、 智 を も っ て 弥 陀 仏 国 を 説 示 す る の で あ る 。 そ し て 釈 の 智 に よ り 説 示 さ れ る 弥 陀 仏 国 は 観 経 疏 序 分 義 二 に 此 明 彌 陀 本 國 四 十 八 願 願 願 皆 發 増 上 勝 因 依 因 起 於 勝 行 依 行 感 於 勝 果 依 果 感 成 勝 報 依 報 感 成 極 依 顯 通 悲 化 依 於 悲 化 顯 開 智 之 門 然 悲 心 無 盡 智 亦 無 窮 悲 智 雙 行 即 廣 開 甘 露 因 茲 法 潤 普 群 生 也 ︵ 浄 全 二 、 二 八 頁 上 ︶ と さ れ 、 ま た 往 生 礼 讃 に は 弥 陀 の 智 願 に つ い て 、 彌 陀 智 願 海 深 廣 無 二 涯 底 一 聞 名 欲 往 生 皆 悉 到 彼 國 ︵ 浄 全 四 、 三 六 一 頁 上 ︶ と し 、 四 十 八 願 が 阿 弥 陀 仏 の 智 で あ り 、 そ の 願 の 成 就 で あ る 西 方 浄 土 が 大 悲 を 顕 し 、 阿 弥 陀 仏 の 慈 悲 は 尽 き る こ と が な く 、 智 は 窮 ま り が な い 。 そ の 慈 悲 と 智 の 二 門 を 普 く 行 じ て 、 浄 土 の 門 を 開 く と さ れ 、 阿 弥 陀 仏 の 尽 き な い 慈 悲 、 窮 ま り な い 智 願 に よ っ て 土 門 に 入 り て 摂 取 さ れ る の で あ る 。 阿 弥 陀 仏 の 慈 悲 は 智 の 顕 れ で あ り 、 智 ・ 慈 悲 そ れ ぞ れ が 単 独 で 存 在 し て い る の で は な い 。 智 ・ 慈 悲 の 二 門 に よ っ て 土 門 が 開 か れ る の で あ る 。 し か し そ れ ら の 救 い 、 功 徳 を 得 る た め に は 凡 夫 の 無 明 の 闇 を 照 ら す 釈 の 智 の 輝 き の 存 在 が 不 可 欠 な の で あ る 。 阿 弥 陀 ・ 釈 二 尊 一 二 九 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
の 智 に よ っ て 凡 夫 の 智 と な り 往 生 す る こ と が で き る の で あ る 。 二 法 然 の 智 観 に つ い て 次 に 法 然 に つ い て は 、 選 本 願 念 佛 集 と 黒 谷 上 人 語 燈 録 を 中 心 に そ の 中 で 説 か れ る 智 観 に つ い て み て み る 。 ま ず 選 本 願 念 佛 集 の 彌 陀 如 來 不 以 餘 行 往 生 本 願 唯 以 念 佛 願 往 生 本 願 之 文 に 乃 至 第 十 八 念 佛 往 生 願 者 。 ︵ 中 略 ︶ 或 有 以 般 若 信 第 一 義 等 是 也 。 往 生 行 之 土 ︵ 中 略 ︶ 選 取 佛 號 故 云 選 也 。 ︵ 浄 全 七 、 十 八 頁 ︶ と あ り 、 浄 土 に 往 生 す る 行 に 各 種 あ り 、 般 若 す な わ ち 智 を も っ て 往 生 の 行 と す る 浄 土 等 が あ る 。 そ れ ら を 選 捨 し て 専 ら 阿 弥 陀 仏 の 名 を 称 え る 名 号 を 選 取 し て 本 願 と し た の で あ る 。 で は な ぜ 名 号 を 選 取 し た か と い え ば 、 雖 然 今 試 以 二 義 解 之 。 一 者 勝 劣 義 。 二 者 難 易 義 。 初 勝 劣 者 念 佛 是 勝 餘 行 是 劣 。 所 以 者 何 。 名 號 者 是 萬 徳 之 所 也 。 然 則 彌 陀 一 佛 所 有 四 智 三 身 十 力 四 無 畏 等 一 切 内 證 功 徳 。 相 好 光 明 説 法 利 生 等 一 切 外 用 功 徳 皆 悉 在 阿 彌 陀 佛 名 號 之 中 故 名 號 功 徳 最 勝 也 。 ︵ 浄 全 七 、 十 九 頁 ︶ と あ り 、 名 号 は 万 徳 円 具 の 総 和 で あ り 、 そ の 内 証 に は 四 智 、 三 身 な ど の あ ら ゆ る 徳 や 相 好 や 光 明 な ど 外 面 的 対 他 的 功 徳 の 一 切 を み な 名 号 の 中 に 収 め て 衆 生 往 生 の 生 因 と す る 。 よ っ て 名 号 の 功 徳 は 最 も 勝 れ て い る と す る 。 ま た 若 以 智 高 才 而 本 願 則 愚 鈍 下 智 者 定 絶 往 生 望 然 智 者 少 。 愚 癡 者 甚 多 。 ︵ 浄 全 七 、 二 〇 頁 ︶ も し 智 が あ り 才 能 の 勝 れ た 者 を 本 願 の 行 と す れ ば 、 愚 鈍 で 智 な い 者 は 往 生 が で き な い 。 し か し 法 事 讃 を 引 き 彼 佛 因 中 立 弘 誓 聞 名 念 我 總 迎 來 。 不 簡 貧 窮 富 貴 不 簡 下 智 與 高 才 ︵ 中 略 ︶ 但 使 心 多 念 佛 能 一 三 〇 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
令 瓦 礫 變 成 金 已 上 ︵ 浄 全 七 、 二 一 頁 ︶ と い い 、 念 仏 す れ ば 貧 窮 、 富 貴 を 選 ば ず 、 智 が あ る 無 し を 選 ば ず 如 何 な る 者 も 差 別 な く 往 生 で き る と 説 か れ る 。 例 え 智 の な い 者 も 弥 陀 の 智 光 に 照 ら さ れ る こ と に よ り 智 を 心 の 内 に お さ め 、 智 有 る 者 と 同 じ よ う に な る の で あ る 。 そ し て 信 空 上 人 傳 説 の 詞 に 源 空 な ん そ 聖 道 門 を す て て こ の 土 門 に お も む く へ き 。 ま さ に し る へ し 、 聖 道 門 の 修 行 は 、 智 を き は め て 生 死 を は な れ 、 土 門 に 修 行 は 、 愚 痴 に 返 り て 極 に む ま る と 。 ︵ 法 全 六 七 二 頁 ︶ と さ れ 、 智 を 窮 め る こ と に よ っ て 解 脱 を 得 る 聖 道 門 を 捨 て て 愚 痴 に 還 り て 往 生 す る 浄 土 門 を 選 取 し た の で あ る 。 法 然 に よ れ ば 智 は 往 生 す る 為 に 求 め ら れ る べ き 存 在 で は な い 。 そ れ は 弥 陀 の 名 号 、 念 仏 に は 四 智 を は じ め 三 身 十 力 四 無 畏 等 一 切 が 収 め ら れ て お り 、 た と え 無 智 で あ っ て も 阿 弥 陀 仏 の 功 徳 、 智 光 に よ っ て 、 智 を 心 の 内 に お さ め る 事 が で き る と さ れ る 。 む し ろ 無 い も の を 求 め る が 為 に 努 力 を す る 、 つ ま り 智 を 求 め 、 窮 め る の は 聖 道 門 で あ り 選 捨 す べ き 存 在 と し て 捉 え ら れ て い る の で あ る 。 三 西 山 教 学 に お け る 智 證 空 の 著 述 は 善 導 に 依 る と こ ろ が 多 い 。 そ れ は 法 然 が 念 仏 を 選 取 す る 過 程 に 於 い て 善 導 の 著 述 に 触 れ 、 偏 依 善 導 を 主 張 し 、 證 空 も そ れ を 継 承 し た と え ら れ る 。 す な わ ち 善 導 教 学 を 研 す る こ と に よ り 法 然 教 学 の 深 意 を 理 解 し よ う と し た と え ら れ る の で あ る 。 よ っ て 證 空 著 述 の 代 表 で あ る 観 経 疏 自 筆 御 鈔 を 中 心 に 、 般 舟 讃 観 念 法 門 一 三 一 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
等 の 自 筆 御 鈔 に よ り 、 證 空 の 智 に つ い て 見 て い き た い 。 自 筆 御 鈔 は 善 導 の 五 部 九 巻 を 注 釈 し た も の で あ る が 、 語 義 を 解 釈 す る に あ た っ て 独 自 の 見 解 が 展 開 さ れ る 。 そ れ は 特 殊 名 目 で あ る 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 に よ る 理 解 で あ る 。 こ こ で 三 門 に つ い て 簡 単 に 触 れ て お き た い 。 行 門 と 観 門 に つ い て は 観 経 疏 自 筆 御 鈔 序 分 義 二 に 佛 教 於 テ 大 キ ニ 分 カ チ テ 二 ア リ 。 一 ハ 、 行 門 自 力 ノ 教 、 五 乘 ノ 用 ニ 課 セ テ 是 ヲ 説 ク 。 十 住 毘 婆 娑 論 ニ ハ 、 難 行 道 ト 立 テ タ リ 。 安 集 ニ ハ 、 聖 道 門 ト 號 ス 。 三 乘 、 四 乘 、 入 聖 得 果 の 道 皆 此 ノ 中 ニ ス 。 二 ハ 、 他 力 門 ノ 教 、 一 實 ノ 機 ニ 蒙 ラ シ メ テ 是 ヲ 説 ク 。 十 住 毘 婆 娑 論 ニ ハ 、 易 行 道 ト 立 テ タ リ 。 安 楽 集 ニ ハ 、 土 門 ト 號 ス 。 ︵ 西 山 叢 書 ︵ 以 下 西 叢 と 略 ︶ 一 、 二 一 七 頁 上 ︶ と あ り 、 行 門 は 自 力 の 教 え で あ り 、 龍 樹 の 十 住 毘 婆 娑 論 を 引 い て 難 行 道 と い い 、 安 楽 集 を 引 い て 聖 道 門 と す る と し て い る 。 観 門 に つ い て は 他 力 の 教 え で あ り 、 十 住 毘 婆 娑 論 を 引 い て 易 行 道 と い い 、 安 楽 集 を 引 い て 浄 土 門 と す る と し て い る 。 行 門 を 聖 道 門 、 観 門 を 浄 土 門 と 位 置 づ け 、 ま た 観 経 疏 自 筆 御 鈔 玄 義 分 一 に 此 ノ 佛 果 ヲ 求 ム ル 心 ヲ 無 上 心 ト 云 フ 。 是 ヲ 求 ム ル 心 多 シ ト 雖 モ 、 大 キ ニ 分 ツ ニ 二 ア リ 。 一 ハ 難 行 道 、 二 ハ 易 行 道 ナ リ 。 難 行 道 ト 云 フ ハ 、 自 力 行 門 ノ 道 ナ リ 。 五 乘 垂 迹 ノ 用 、 是 ニ 依 リ テ 道 成 ズ 。 彼 ノ 行 門 ニ ハ 菩 提 心 ヲ 指 シ テ 無 上 心 ト 云 フ 。 易 行 道 ト 云 フ ハ 、 他 力 門 ノ 道 ナ リ 。 凡 夫 一 實 ノ 機 是 ニ 依 リ テ 出 離 ス 。 此 ノ 門 ニ ハ 三 心 ヲ 指 シ テ 無 上 心 ト 云 フ 。 二 種 ノ 道 共 ニ 佛 果 ニ 赴 ク ベ シ ト 雖 モ 、 行 門 ハ 一 實 ノ 方 便 ナ リ 。 ︵ 西 叢 一 、 八 頁 上 ︶ 仏 果 を 求 め る 心 を 無 上 心 と い う が 、 無 上 心 に は 二 あ り 、 一 つ は 難 行 道 で 自 力 行 門 で あ り 、 二 つ は 易 行 道 で 他 力 観 門 で あ る 。 行 門 で は 菩 提 心 を 無 上 心 と い い 、 観 門 で は 三 心 を 無 上 心 と し て い る 。 行 門 ・ 観 門 共 に 仏 果 に 赴 く が 、 行 門 は 一 実 の 方 便 で あ る と し て い る 。 そ し て 観 経 疏 自 筆 御 鈔 定 善 義 一 に 一 三 二 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
是 則 チ 、 八 萬 四 千 ノ 隨 宜 行 門 ノ 法 ヲ 以 テ 、 悉 ク 門 ノ 方 便 ト シ テ 彌 陀 弘 願 ノ 體 ニ ス ベ シ ト ノ 事 ヲ 顯 サ ン 為 ニ 、 殊 更 深 ヲ 用 ヰ ル ナ リ 。 是 則 チ 、 行 門 ノ 法 ヲ 以 テ 門 ノ 方 便 ト ス ル 心 ナ リ 。 此 ク ノ 如 ク 心 得 ツ レ バ 、 初 、 華 厳 ヨ リ 、 終 、 涅 槃 ニ 至 ル マ デ 、 八 萬 四 千 ノ 法 門 唯 今 ノ 門 弘 願 ニ ス ル 法 ノ 方 便 ト ナ ル 。 ︵ 西 叢 二 、 一 四 頁 上 ︶ す な わ ち 八 万 四 千 の 法 門 、 つ ま り 行 門 は 観 門 の 方 便 と し て 弥 陀 の 弘 願 に 帰 入 さ せ る た め に 顕 さ れ た の で あ る 。 八 万 四 千 の 法 門 は す べ て 観 門 弘 願 に 帰 す る 法 の 方 便 で あ る と 説 示 さ れ る 。 次 に 弘 願 と は 観 経 疏 自 筆 御 鈔 玄 義 分 一 に 弘 願 ト イ ハ 、 四 十 八 願 ナ リ 。 コ ノ 弘 願 ノ 成 ズ ル 体 ハ 阿 弥 陀 仏 ナ リ 。 然 レ バ 、 定 散 ノ 開 ク 所 ノ 観 門 ハ 三 心 ニ 帰 シ 、 弘 願 ハ 阿 弥 陀 仏 ニ 帰 ス 。 此 ノ 体 成 ズ レ バ 、 南 無 阿 弥 陀 仏 ノ 名 立 ツ ナ リ 。 ︵ 西 叢 一 、 三 六 頁 上 ︶ 弘 願 と は 衆 生 を 弘 く 救 済 す る 阿 弥 陀 仏 の 四 十 八 願 を い い 、 そ の 体 は 阿 弥 陀 仏 で あ る 。 つ ま り 願 行 具 足 の 阿 弥 陀 仏 で あ る 。 そ し て 観 無 量 寿 経 に 説 か れ る 定 散 二 善 の 観 門 は 三 心 に 帰 し 、 弘 願 は 阿 弥 陀 仏 に 帰 す る の で あ る 。 三 心 と は 至 誠 心 、 深 心 、 廻 向 発 願 心 で あ る が こ れ を 一 心 に す れ ば 帰 依 で あ り 、 南 無 で あ る と さ れ る 。 そ し て 阿 弥 陀 仏 の 体 が 成 ず れ ば 南 無 阿 弥 陀 仏 の 名 号 と し て 顕 れ る と し て い る 。 以 上 が 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 の 略 説 で あ る が 、 證 空 は こ れ ら の 特 殊 名 目 に よ り 智 に つ い て の 解 釈 を な し て い る 。 そ れ は 観 経 疏 自 筆 御 鈔 玄 義 分 一 に 無 漏 ト イ ハ 、 定 散 義 ノ 勢 至 ニ 、 以 智 光 、 ノ 文 ヲ 釋 シ テ 云 ク 、 明 光 之 體 用 即 無 漏 體 、 故 名 智 光 ト 。 此 ノ 釋 ヲ 以 テ 知 ル ニ 、 無 漏 ハ 知 ノ 名 ナ リ 。 此 ク ノ 如 ク 心 得 レ バ 、 金 剛 志 、 ト イ ハ 、 知 ノ 志 シ ト 言 ウ ナ リ 。 知 ト イ ハ 、 今 ノ 門 ノ 道 理 ヲ 得 ル 名 ナ リ 。 故 ニ 下 品 上 生 ニ 、 今 ノ 門 ヲ 説 ク 善 知 識 ヲ 指 シ テ 、 智 者 、 ト 云 フ 。 然 レ バ 、 此 ノ 門 ニ 入 ヌ レ バ 、 行 門 ニ テ 厭 ヒ 難 ク 欣 イ 難 キ 謂 、 悉 ク 厭 ヒ 易 ク 欣 イ 易 ク シ テ 成 ズ ベ キ 故 ニ 、 門 ノ 志 ヲ 発 セ ト 勧 ム ル ナ リ 。 是 即 チ 聖 道 行 門 ノ 成 ジ 難 キ ヲ 挙 ゲ テ 、 浄 土 門 ノ 入 リ 難 ク シ テ 成 ジ 易 キ ヲ 勧 ム ル 心 ナ リ 。 一 三 三 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
此 ノ 道 理 ニ 依 レ バ 浄 土 他 力 ノ 門 ニ 入 ル ヲ 智 ト 言 ウ ナ リ 。 ︵ 西 叢 一 、 一 〇 頁 上 ︶ 證 空 は 観 門 の 道 理 を 得 る 事 が 智 で あ る と 理 解 し 、 観 門 を 説 く 善 知 識 を 指 し て 智 者 と い い 、 こ の 観 門 に 入 れ ば 行 門 で は 厭 い 難 く て 欣 い 難 い も の を 厭 い 易 く 欣 い 易 く し て 成 ず る 事 が で き る が 故 に 観 門 の 志 を 発 せ と 勧 め る の で あ る 。 こ の 道 理 に 依 る な ら ば 浄 土 他 力 の 観 門 に 入 る こ と を 智 と い う の で あ る 。 さ ら に つ づ い て 次 の よ う に 述 べ ら れ る 。 是 則 チ 、 浄 土 ヲ 欣 フ 智 ノ 志 シ ニ ア ラ ザ ル ヨ リ ハ 、 生 死 ノ 根 源 タ ル 煩 悩 ヲ 断 ズ ベ カ ラ ズ ト 言 ウ ナ リ 。 浄 土 ヲ 欣 ウ 智 ノ 志 ト イ ウ ハ 、 今 ノ 門 ヲ 指 ス ナ リ 。 志 、 ト イ ハ 、 懇 志 ナ リ 。 智 ハ 愚 ニ 対 ス ル 言 ナ レ バ 、 其 ノ 體 廣 シ 。 今 智 ノ 中 ニ 、 異 ナ ル 智 ヲ エ ラ ビ 取 ラ ン ト 思 ウ 故 ニ 、 志 、 ト 言 ウ ナ リ 。 ︵ 西 叢 一 、 一 〇 頁 下 ︶ 浄 土 を 欣 う 智 の 志 が な け れ ば 生 死 の 根 源 で あ る 煩 悩 は 断 絶 す る こ と が で き な い 。 そ の 智 の 志 と い う の は 観 門 を 指 す の で あ る 。 智 は 愚 に 対 す る 言 葉 で あ り 、 数 多 く の 智 の 中 か ら 選 取 し た も の で あ る の で 志 と い う と 釈 し て い る 。 そ し て 往 生 禮 讃 自 筆 御 鈔 四 に は 彌 陀 願 智 巧 、 ト イ ハ 、 所 成 ノ 法 妙 ナ ル 事 ハ 能 成 ノ 願 智 ノ 巧 ニ ス ル 故 ナ リ 、 ト 釋 成 ス ル ナ リ 。 五 劫 思 惟 ノ 願 思 ヨ リ 起 リ テ 、 兆 載 永 劫 成 就 ノ 智 ニ ナ サ レ タ ル 故 ニ 、 不 思 議 ナ リ 。 ︵ 西 叢 三 、 一 二 三 頁 下 ︶ と い い 、 往 生 禮 讃 自 筆 御 鈔 三 に 五 逆 謗 法 ヲ エ ラ バ ザ ル 不 思 議 ノ 利 益 ハ 、 智 ノ 深 ク シ テ 、 海 ノ 如 ク ニ 深 ク 廣 キ 事 際 ナ キ ガ 如 シ ト 顯 ハ ス 。 海 ハ 深 シ ト 雖 モ 、 八 萬 由 旬 ヲ 際 ト ス 。 願 智 ノ 深 キ 事 ハ 、 十 方 世 界 ノ 五 逆 謗 法 ノ 罪 人 ヲ ス 事 ナ ク 、 無 量 劫 ヲ 經 テ 盡 ク ル 期 ナ ク 度 シ 給 フ 謂 、 譬 ノ 全 ク 顯 ハ ス ベ キ ナ ケ レ バ 、 且 ク 、 分 ニ 海 ノ 深 キ ヲ 借 リ テ 示 ス ナ リ 。 聞 名 欲 往 生 皆 悉 到 彼 國 ト イ ハ 、 上 ニ 智 願 ノ 甚 深 ナ ル 事 譬 ヲ モ テ 顯 ハ シ ツ レ バ 、 機 ニ 對 シ テ 其 ノ 利 益 ア ル ベ キ 故 ニ 、 是 ヲ 聞 キ テ 往 一 三 四 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
生 ヲ 願 フ 機 ハ 必 ズ 其 ノ 願 ヲ 遂 グ ベ シ 、 ト 直 チ ニ 法 ノ 効 能 ヲ グ ル ナ リ 。 ︵ 西 叢 三 、 六 二 上 ︶ と 説 示 し 、 仏 の 智 願 の 深 く て 、 ま た 広 き こ と 限 り が な く 、 十 方 世 界 の 五 逆 誹 謗 の 罪 人 を 残 す こ と な く 浄 土 に 往 生 さ せ る の で あ る の で 甚 深 で あ る 。 そ し て 往 生 を 願 う 者 は 必 ず 浄 土 に 到 る こ と が で き る と い う 効 能 を 示 し て い る の で あ る 。 こ の よ う に 阿 弥 陀 仏 の 願 智 は 深 く 広 き こ と 極 ま り が な い が 、 こ の 願 力 は 凡 夫 が 自 力 で 得 る こ と は で き な い 。 此 の 願 力 を 得 る に は 釈 の 存 在 が 不 可 欠 な の で あ る 。 釈 と 阿 弥 陀 仏 の 関 係 に つ い て は 観 経 疏 自 筆 御 鈔 序 分 義 一 に 依 於 悲 化 顯 開 智 之 門 、 ト イ ハ 、 釋 ノ 大 悲 門 ニ 依 リ テ 、 彌 陀 ノ 願 力 ノ 知 ノ 門 開 ク ト 云 フ 心 ナ リ 。 是 則 チ 、 彌 陀 ノ 弘 願 ニ ア ラ ズ バ 、 釋 ノ 門 ア ル ベ カ ラ ズ 、 釋 ノ 門 ナ ク ン バ 、 又 彌 陀 ノ 願 知 ル ベ カ ラ ズ 、 ト 定 メ テ 、 二 尊 ノ 教 ニ 依 リ テ 、 凡 夫 出 離 ノ 道 ア リ ト 云 フ 心 ナ リ 。 知 ル ベ シ 。 依 於 悲 化 顯 開 智 之 門 ト イ ハ 、 智 、 ハ 、 サ キ ノ 、 悲 化 、 ノ 體 、 門 ノ 智 ニ 顯 ル 。 是 ヲ 指 シ テ 、 智 之 門 、 ト 云 フ ナ リ 。 此 ノ 智 ニ ア ラ ズ バ 、 悲 化 ノ 本 意 顯 ル ベ カ ラ ズ 。 此 ノ 智 ハ 、 源 、 彌 陀 ノ 智 願 ヨ リ 出 デ タ リ 。 故 ニ 、 門 ヲ 指 シ テ 、 智 ト 云 フ ナ リ 。 又 、 サ キ ニ 云 フ 所 ノ 、 悲 化 、 ハ 一 代 八 萬 四 千 ノ 法 門 ヲ 指 ス ナ リ 。 云 ク 、 八 萬 四 千 ノ 法 門 、 彌 陀 ノ 功 徳 ヨ リ 開 顯 ス ト 云 フ ナ リ 。 次 ニ 、 今 、 智 之 門 、 ト イ ハ 、 正 シ ク 門 ヲ 指 ス ナ リ 、 。 云 ク 、 サ キ ノ 八 萬 四 千 ノ 法 門 ニ 依 リ テ 、 衆 機 ヲ 調 ヘ テ 、 今 ノ 門 顯 ル ト 云 フ ナ リ 。 然 悲 心 無 盡 智 亦 無 窮 、 ヨ リ 下 ハ 、 四 十 八 願 ニ 依 リ テ 、 利 生 ノ 道 廣 ク 、 化 導 ノ 用 ア マ ネ キ 事 ヲ 釋 ス ル ナ リ 。 悲 心 無 盡 、 ハ 、 八 相 成 道 ノ 利 生 永 キ 事 ヲ 釋 ス 。 是 ハ 、 行 門 ニ 亙 ル ベ シ 。 門 ヲ 體 ト ス 。 智 亦 無 窮 、 と 云 フ ハ 、 報 身 ノ 化 導 ア マ ネ キ 事 ヲ 釋 ス 。 是 ハ 、 門 ヲ 指 ス 。 弘 願 ヲ 體 ト ス ル ナ リ 。 知 ル ベ シ 。 悲 智 雙 行 、 ト イ ハ 、 凡 夫 ノ 出 離 必 ズ 二 尊 ノ 教 ニ 依 ル ヲ 以 テ 、 釋 ノ 悲 ト 、 彌 陀 ノ 智 ト 、 常 ニ 雙 ビ 行 ズ ト 云 フ ナ リ 。 云 ク 、 釋 ノ 大 悲 ノ 説 ニ ア ラ ズ バ 、 彌 陀 ノ 願 更 ニ 開 ク ベ カ ラ ズ 。 彌 陀 ノ 願 ニ ア ラ ズ バ 、 釋 ノ 説 ア ル ベ カ 一 三 五 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
ラ ズ 、 二 尊 ノ 計 ニ 依 リ テ 出 離 ノ 道 立 ツ 事 明 ラ カ ナ リ 。 ︵ 西 叢 一 、 二 一 五 上 ︶ と 説 示 さ れ 、 釈 の 大 悲 の 観 門 に よ っ て 弥 陀 の 願 力 の 智 の 門 が 開 か れ 、 弥 陀 の 弘 願 が な け れ ば 釈 の 観 門 も 存 在 せ ず 、 釈 の 観 門 が な け れ ば 弥 陀 の 願 を 知 る こ と は で き な い 。 釈 と 弥 陀 の 二 尊 の 相 互 関 係 に よ っ て 凡 夫 救 済 の 道 が 顕 れ る 。 釈 の 悲 化 の 本 体 は 智 で あ り 、 観 門 の 智 で あ る 。 こ の 智 は 弥 陀 の 願 よ り 出 た も の で あ り 、 悲 化 は 釈 の 八 万 四 千 の 法 門 で あ り 、 弥 陀 の 功 徳 よ り 開 顕 し た も の で あ る 。 悲 心 は 観 門 を 指 し 、 弘 願 を 体 と す る 。 悲 智 双 行 と は 釈 の 慈 悲 と 弥 陀 の 智 が 常 に 双 び 行 じ ら れ 、 釈 の 大 悲 の 説 法 が な け れ ば 弥 陀 の 願 は 開 く こ と が で き ず 、 弥 陀 の 願 が な け れ ば 、 釈 の 説 法 も 存 在 し な い 。 釈 尊 と 弥 陀 、 慈 悲 と 智 、 観 門 と 弘 願 は 二 つ が そ ろ っ て 初 め て 充 分 な 働 き を し 、 凡 夫 出 離 の 道 が 開 け る と す る の で あ る 。 し か し な が ら 往 生 禮 讃 自 筆 御 鈔 四 に 説 か れ る よ う に 凡 夫 は 、 衆 生 盲 冥 不 覺 知 ト イ ハ 、 佛 ハ 朗 ラ カ ニ 照 ラ シ 給 ヘ ド モ 、 我 等 ス ベ テ 是 ヲ 知 ラ ザ ル 事 ハ マ ド ヒ ノ 故 ナ リ ト 云 フ 事 ヲ 述 ブ ル ナ リ 。 ︵ 西 叢 一 、 二 一 五 上 ︶ と 仏 は 照 ら し て も 、 凡 夫 は 迷 い に よ り 仏 の 智 を 知 る こ と が で き な い 。 ま た 観 経 疏 自 筆 御 鈔 散 善 義 一 に は 、 次 ニ 、 重 々 ノ 問 答 ア リ 。 是 ハ 、 凡 夫 ノ 位 ニ シ テ 、 往 生 極 決 定 シ テ 退 失 セ ズ 、 ト 信 ゼ ン 事 、 其 ノ 心 知 リ 難 キ ガ 故 ニ 、 難 ヲ 出 シ テ 、 心 ノ 底 ヲ 説 キ 顯 サ ン ト ス ル ナ リ 。 初 ノ 問 ニ 、 凡 夫 智 淺 、 ト イ ハ 薄 地 ノ 凡 夫 愚 迷 ヲ 以 テ 體 ト ス 。 智 淺 、 ト 云 フ ニ 足 ラ ズ 。 今 、 彌 陀 ノ 願 ニ 於 テ 、 信 ジ テ 疑 ハ ズ 。 此 ノ 信 智 ヲ 指 シ テ 、 智 淺 、 ト 云 フ ナ リ 。 惑 障 處 深 、 ト イ ハ 、 マ ド ヒ ハ 無 始 ヨ リ 多 ニ シ テ 、 信 智 ハ 纔 ニ 今 初 メ テ 建 立 ス 、 ト 云 フ ナ リ 。 ︵ 西 叢 二 、 一 六 九 下 ︶ と 釈 し 、 凡 夫 智 淺 と い う の は 弥 陀 の 願 を 信 じ て 疑 わ な い と い う 智 、 信 智 が 浅 い の で あ る 。 惑 い は 無 始 よ り 数 多 い が 、 信 智 は 今 初 め て 建 立 さ れ た の で あ る 。 ま た 往 生 禮 讃 自 筆 御 鈔 三 に は 一 三 六 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
人 有 信 難 、 ト イ ハ 、 タ ト ヒ 佛 ニ 遇 ヒ 奉 レ ド モ 、 教 ヲ 聞 キ テ 信 ズ ル 事 ハ 今 一 重 難 シ 、 ト 云 フ 事 ヲ 述 ブ ル ナ リ 。 ︵ 西 叢 三 、 七 〇 上 ︶ と い い 、 人 は 仏 に 遇 い 教 え を 聞 い て も 信 じ る と い う こ と が 難 し い の で あ る 。 そ し て 観 念 法 門 自 筆 御 鈔 下 に 、 是 故 無 智 人 中 、 莫 レ 説 是 經 ト イ ハ 、 無 智 ノ 者 ハ 聞 キ テ 信 ゼ ザ ル 故 ニ 、 異 熟 、 等 流 ノ 二 重 ノ 果 ヲ 得 レ バ 、 説 ク ベ カ ラ ズ ト 誡 ム ル ナ リ 。 ︵ 西 叢 四 、 二 一 一 上 ︶ 無 智 な 者 に は こ の 経 説 く こ と な か れ と し 、 そ れ は 無 智 の 者 は 聞 い て も 信 じ る こ と が で き ず 、 悪 果 を 得 る の で あ る 。 つ ま り 信 智 を 得 る こ と に よ っ て 釈 の 行 門 が 方 便 と な り 、 釈 の 慈 悲 、 観 門 に よ っ て 調 機 誘 引 さ れ 弥 陀 の 弘 願 に 帰 入 す る こ と が で き る の で あ る 。 観 経 疏 自 筆 御 鈔 玄 義 分 二 に 、 ハ 行 ト モ 釋 セ ズ 、 繫 念 ト モ 釋 セ ズ 、 照 、 ト 釋 ス 。 照 ハ 智 ナ リ 。 彌 陀 ノ 功 徳 ヲ 知 リ テ 門 成 ジ 、 門 成 ジ テ 願 ニ 乘 ズ ベ キ 故 ナ リ 。 十 六 門 ノ 心 、 此 ノ 釋 ニ 明 ラ カ ナ リ 。 常 以 信 心 手 以 持 智 之 輝 ト イ ハ 、 信 ヲ 先 ニ シ テ ハ 成 ズ ベ キ ニ 似 タ レ ド モ 、 ノ 正 シ キ 相 ヲ 釋 ス レ バ 、 ノ 外 ノ 信 ニ 非 ズ 、 門 ニ 入 レ バ 土 ノ 信 心 常 ニ ア リ 。 信 、 手 ノ 如 シ 。 故 ニ 、 持 智 之 輝 ト 云 フ 。 智 生 ゼ ル 信 ナ レ バ 、 還 リ テ 智 ヲ 持 ツ ナ リ 。 此 ノ 彌 陀 ノ 依 正 等 ノ 事 ヲ 照 シ テ 弘 願 ニ ス レ バ 、 無 上 ノ 功 徳 、 信 ノ 手 ニ タ モ タ ル 。 ︵ 西 叢 一 、 四 三 下 ︶ 観 を 照 と 釈 し 、 照 は 智 な り と 説 示 さ れ 、 弥 陀 の 功 徳 を 知 っ て 観 門 が 成 立 し 、 観 門 が 成 立 し て 弥 陀 の 願 に 乗 ず る 事 が で き る の で あ る 。 そ し て 観 門 に 入 れ ば 浄 土 に 対 す る 信 心 は 常 に 存 在 す る 。 信 と は 手 の よ う な も の で あ り 、 そ れ に よ り 弥 陀 の 願 に よ る 智 の 輝 き を 持 す る 事 が で き 、 智 が 生 ず る 信 で あ れ ば 智 は 持 た れ る と す る の で あ る 。 一 三 七 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
四 ま と め 證 空 は 智 と は 観 門 の 道 理 を 得 る 名 な り と し 、 行 門 、 観 門 、 弘 願 に よ っ て 理 解 さ れ る 。 證 空 は 釈 の 八 万 四 千 の 法 門 を 行 門 と し 聖 道 門 で あ る と し な が ら 、 行 門 は 弥 陀 の 弘 願 に 誘 引 す る 方 便 と さ れ 、 阿 弥 陀 仏 の 四 十 八 願 が 兆 載 永 劫 成 就 し た 願 智 を 知 り 、 願 行 具 足 の 弘 願 を 知 る 事 が で き る と す る 。 そ し て そ の 弘 願 に よ り 行 門 が 釈 の 観 門 と な り 弥 陀 の 弘 願 を 示 す も の と な る の で あ る 。 つ ま り 法 然 が 名 号 に 四 智 、 三 身 等 外 面 的 対 他 的 功 徳 の 一 切 が 収 め ら れ 、 無 智 で あ っ て も 阿 弥 陀 仏 の 功 徳 、 智 光 に よ っ て 智 を 心 に 収 め る こ と が で き る 。 そ し て 無 い も の を 求 め 努 力 を す る の は 自 力 で あ り 、 智 を 求 め て 窮 め る の は 聖 道 門 で あ り 選 捨 す べ き 対 象 で あ る と す る の に 対 し て 、 證 空 は そ れ は 選 捨 せ ず 、 釈 の 慈 悲 、 観 門 と 転 換 せ し め る 方 便 と す る の で あ る 。 そ し て 弥 陀 の 弘 願 は 四 十 八 願 で あ り 、 四 十 八 願 は 兆 載 永 劫 成 就 の 智 で あ る 。 善 導 が 弥 陀 の 智 と 慈 悲 と に よ っ て 土 門 が 開 か れ 、 そ れ を 説 示 す る の は 釈 の 智 で あ る と す る の に 対 し て 、 證 空 は 釋 の 慈 悲 ︵ 観 門 ︶ と 弥 陀 の 智 ︵ 弘 願 ︶ の 、 悲 智 が 双 び 普 く 行 わ れ る こ と に よ っ て 浄 土 の 門 は 開 か れ る と し て い る 。 ま た 善 導 の 信 心 の 必 要 性 を 継 承 し つ つ 、 信 心 を 信 じ る 智 、 信 智 と 発 展 さ せ 、 そ の 信 智 を 得 る こ と に よ っ て 初 め て 弥 陀 の 弘 願 に よ る 救 済 が 領 解 さ れ 、 南 無 阿 弥 陀 仏 の 名 号 、 念 仏 と し て 顕 れ 、 凡 夫 出 離 の 道 が 開 か れ る と す る の で あ る 。 善 導 、 法 然 が 凡 夫 を 救 い の 対 象 と し て の み と ら え て い た の に 対 し 、 證 空 は 凡 夫 を 救 い の 対 象 と し て だ け で は な く 、 そ の 信 智 を 認 め 弥 陀 、 釈 と 同 等 と み な し 、 弥 陀 、 釈 、 凡 夫 の 三 者 の 相 互 関 係 に よ っ て 土 門 、 凡 夫 出 離 の 道 が 開 か れ る と す る の で あ る 。 小 稿 で は 西 山 教 学 と い っ て も 證 空 の 教 学 、 し か も 自 筆 御 鈔 の 文 言 に つ い て の 察 で あ っ た 。 し か し そ れ だ け で 一 三 八 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶
は 不 十 分 で あ り 、 衆 生 観 な ど に つ い て も 併 せ て 検 討 し て い か な け れ ば な ら な い 。 ま た 自 筆 御 鈔 だ け で は な く 、 そ の 他 の 著 書 も 対 象 と し 、 ま た 門 弟 な ど に つ い て も 察 す る 必 要 が あ る 。 そ れ ら に つ い て は 今 後 の 課 題 と し た い 。 一 三 九 西 山 教 学 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 釋 真 弥 ︶