律
藏
腱
度
部
の
成
立
に
つ
い
て
平
川
彰
一 律 藏 の 現 在 形 が 主 と し て 部 派 佛 教 時 代 に 整 備 せ ら れ た も の で あ る こ と は、 一 般 に 承 認 せ ら れ て よ い。 し か し 律 藏 の 全 部 が、 部 派 佛 教 時 代 に 至 つ て 新 し く 作 り 出 さ れ た も の で な い こ と も、 疑 ふ こ と は で き な い で あ ら う。 帥 ち 律 藏 の 骨 子 と な つ て ゐ る 要 素 は そ れ 以 前 の 更 に 古 い 傳 承 に 基 い て ゐ る。 こ の こ と は 種 汝 の 黙 か ら 云 ふ こ と が で き る。 し か し 與 へ ら れ た 現 在 形 か ら、 ど の 程 度 の 古 さ に ま で 遡 り 得 る か と 云 ふ こ と は、 こ れ と は 別 の 問 題 で あ り、 主 と し て そ の 方 法 論 に 露 着 す る 問 題 で あ る。 し か も 學 的 方 法 に は 自 ら 限 度 が あ る か ら、 現 在 形 に 保 存 さ れ て ゐ る 古 い 要 素 を 残 り な く 選 別 し、 そ の 年 代 を 確 定 す る こ と は 不 可 能 で あ る。 故 に 我 そ は、 古 い 要 素 の 存 在 の 可 能 性 を 認 め つ つ も、 一 慮 學 問 的 に 遡 り 得 る 限 度 で 満 足 し な け れ ば な ら な い。 律 藏 に 含 ま れ る 古 い 要 素 を 取 り 出 す に は、 勿 論 種 汝 の 方 法 が 併 用 さ る べ き で あ る が、 そ の 中 で も ﹁ 諸 律 の 比 較 ﹂ が 依 然 と し て 有 力 で あ る。 律 藏 は 阿 含 と 異 つ て 異 本 が 多 い 爲、 異 本 の 比 較 に よ つ て 獲 見 し 得 る 黙 が 非 常 に 多 い。 律 藏 に は 分 別 上 座 部 の パ ー リ 律、 法 藏 部 の 四 分 律、 化 地 部 の 五 分 律、 読 一 切 有 部 の 十 諦 律、 根 本 有 部 律、 大 衆 部 の 摩 詞 僧 祇 律 の 六 種 の 廣 律 が あ る。 最 後 の 一 つ は 大 衆 部 の 律 で あ り、 資 料 は 上 座 大 衆 の 爾 系 統 に ま た が り、 異 本 も 攣 化 に 富 ん で ゐ る。 さ て 問 題 は 律 藏 の 腱 度 部 が 如 何 な る 経 路 を 辿 つ て 成 立 し た か と 云 ふ こ と で あ る が、 こ れ を 諸 律 の 比 較 に よ つ て 行 き つ く 所 ま で 追 求 し て み た い。 紙 籔 の 關 係 上、 他 の 方 法 論 に 言 及 す る 絵 裕 は な い ( 1 ) し、 ま た 問 題 の 範 園 も 腱 度 部 の ﹁ 形 式 ﹂ の み に 限 定、 内 容 に 關 す る 論 述 は 一 切 省 い た。 二 先 づ 始 め に 腱 度 部 の 組 織 を 示 す と 次 の 如 く で あ る。 パ ー リ 律 の 腱 度 部 は 大 品 小 品 に 二 大 別 さ れ、 大 品 に 十 腱 度、 小 品 に 律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 三 三律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 三 四 十 二 腱 度 が 含 ま れ て ゐ る。 合 し て 二 十 二 腱 度 で あ る。 四 分 律 に は パ ー リ の 如 き 二 大 優 別 は な く、 腱 度 と し て 二 十 二 腱 度 が 含 ま れ て ゐ る。 し か し 勿 論 腱度 Khandhaka と 云 ふ 語 に は 特 殊 な 意 味 は な く、 輩 に 章 節 を 示 す 言 葉 で あ る。 二 百 五 十 戒 の 解 繹 の 部 分 で あ る ﹁ 経 分 別 ﹂ の 章 節 に は、 腱 度 の 語 を 用 ひ な い し、 而 も そ れ に 綾 い て 詮 か れ て ゐ る 台 教 團 蓮 螢 の 諸 規 定 ﹂ の 部 分 に、 章 節 を 示 す の に 此 の 語 が 用 ひ ら れ て ゐ る 爲 に、 便 宜 上 こ の 部 分 を 腱 度 と 云 ふ に 過 ぎ な い。 し か し 次 の 五 分、 十 調 は、 こ の 部 分 の 章 節 に 腱 度 の 語 を 用 ひ な い。 ﹁ 法 ﹂dha-k a を 用 ひ て み る。 五 分 は 二 十 一 法 に 分 け ら れ て ゐ る。 次 の 十 講 律 は 所 謂 腱 度 部 が 一 箇 所 に 纏 め ら れ て ゐ な い。 十 調 律 は 十 調 に 大 別 さ れ て ゐ る が、 最 初 の 三 調 に 比 丘 戒 の 説 明 が あ り、 次 の 第 四 調 ﹁ 七 法 ﹂ 第 五 調 ﹁ 八 法 ﹂ 第 六 調 ﹁ 雑 諭 ﹂ ( 二 法 ) が 他 律 の 腱 度 部 に 相 當 す る が、 省 外 に 第 七 諦 比 丘 尼 律 の 論 明 の ( 2 ) 中 に、 ﹁ 比 丘 尼 八 敬 法 ﹂ と し て、 他 律 の 比 丘 尼 腱 度 に 相 當 す る 竜 の が 含 ま れ て ゐ る。 更 に 律 全 禮 の 附 随 の 部 分 で あ る ﹁ 善 諦 毘 尼 序 ﹂ の 中 に、 他 律 の 五 百 腱 度 ・ 七 百 腱 度 に 相 當 す る ﹁ 五 ( 3 ) 百 比 丘 結 集 三 藏 法 晶 ﹂ ﹁ 七 百 比 丘 集 滅 悪 法 品 ﹂ の 二 法 が 含 ま れ て ゐ る。 以 上 を 合 す る と 二 十 法 に な る。 と も か く 一 箇 所 に 纏 め ら れ て ゐ な い 黙 に、 形 式 の 難 で は 前 三 律 よ り 離 れ て ゐ る と 云 つ て よ い。 次 め 根 本 有 部 律 で 他 律 の 腱 度 部 に 相 當 す る も の
は、﹁律事﹂hdul-ba gsi, Vinayavastu.﹁律雑事﹂hdul-ba
phran-tsegs-kyi gsi. Vinayaksudraka vastuの二者である。
後 者 に は 細 分 は な い が、 前 者 は 更 に 十 七事 vasti に 分 れ て ゐ る。 合 す れ ば 十 八 事 で あ る。 最 後 の 櫓 祇 律 に つ い て 云 へ ば 他 律 の 腱 度 部 に 相 當 す る も の は、 ﹁ 雑 調 蹟 渠 法 ﹂ と そ れ に 綾 く ﹁ 威 儀 法 ﹂ と で あ る。 そ し て 前 者 は 十 四 蹟渠 varga に 分 れ て ゐ る か ら、 こ れ に 威 儀 法 を 加 へ れ ば 十 五 品 と な り、 章 節 の 藪 か ら 云 へ ば こ れ が 最 も 少 い。 ( 4 ) 以 上 の 六 種 の 律 儀 の 腱 度 部 を、 内 容 に 照 し て 相 慮 す る 腱 度 を、 同 じ 順 序 で 墨 げ る と 次 の 如 く で あ る。 便 宜 上 パ ー リ 律 の 順 序 を 基 本 に し て 藪 字 を 附 し た。 他 律 の 腱 度 の 順 序 は、 パ ー リ と 異 る 場 合 の み、 そ の 順 序 を 括 弧 内 に 示 し た。 パ ー リ 律、 大 品 十 腱 度、 小 品 十 二 腱 耳度 1 大 健 度、 2 布 薩 健 度、 3 爾 安 居 腱 度、 4 自 恣 腱 度、 5 皮 革 腱 度、 6 藥 健 度、 7 迦 称 那 衣 腱 度、 8 衣 腱 度、 9 謄 波腱度、10拘啖彌健 度、11翔磨腱度、12別佳腱度、13集腱度、14滅諄腱度、15難事腱 度、 16 臥 坐 具 腱 度、 17 破 檜 腱 度、 18 威 儀 腱 度、 19 遮 読 戒 腱 度、 20 比 丘 尼 腱 度、 21 五 百 腱度、22七百腱度。 四 分 律、 二 十 二 腱 度 1 受 戒 腱 度、 2 読 戒 腱 度、 3 安 居 腱 度、 4 自 恣 腱 度、 5 皮 革 健 度、 6(7)藥健度、7(8)迦編那衣健度、8(6)衣健度、9(1)謄波健度、10 (9 )拘 啖 彌 健度、11呵責健度、12覆藏健度、13人健度、14滅 斡健度、15(20)難健度、16(19)房舎健度、17(15)破僧腱度、18法腱度、 19(14)遮読戒腱度、20比丘尼腱度、21集法毘尼五百人、22七百集
法 毘 尼。 以 上 の 二 律 の 腱 度 は 共 に 二 十 二 腱 度 で あ り、 内 容 も 細 部 に お い て は 種 汝 の 相 違 も あ る が、 骨 子 は 大 燈 合 す る。 形 式 の 上 か ら 云 つ て、 腱 度 の 順 序 が 若 干 異 る こ と と、 腱 度 の 題 名 が 一 致 し な い 竜 の が 二 三 あ る こ 之 の 違 ひ が あ る。 し か し そ れ は 裟 細 な こ と で あ り、 爾 律 の 形 式 が 相 互 に 密 接 な 關 係 が あ る こ と は 否 定 で き な い。 五 分 律、 二 十 一 法 1 受 戒 法、 2 布 薩 法、 3 安 居 法、 4 自 恣 法、 5 (6) 皮 革 法、 6 (7) (8) 薦法・食法、7(9)迦綿那衣法、8(5)衣法、9101113翔磨法、12 (11)別佳法、14滅諄法、15(5)雑法、16臥具法、17(1)破僧法、18 (15) 威 儀 法、19遮布薩法、20比丘尼法、21五百集法、22七 百 集 法、 調 伏 法。 五 分 律 で は そ の 第 十 一 掲 磨 法 に 他 律 の 拘 談 彌 ・ 謄 波 ・ 掲 磨 ( 5 ) ・ 集 の 四 腱 度 を 含 め て ゐ る。 そ し て 逆 に 他 律 が ﹁ 藥 腱 度 ﹂ に 読 く こ と を、 第 七 藥 法、 第 八 食 法 に 開 い て ゐ る。 そ の 爲 に 差 引 二 腱 度 を 減 ず る が、 し か し 五 分 に は 他 律 に な い ﹁ 調 伏 法 ﹂ が 第 十 八 に 挿 入 さ れ て ゐ る。 そ の 爲 に 二 十 一 法 と な る。 以 上 五 分 は 他 律 と 三 黙 の 相 違 難 が あ る が、 そ の 何 れ の 形 が 古 い か を 考 へ て み た い。 第 一 に 五 分 が 藥 法、 食 法 を 別 立 し て ゐ る の は、 五 分 の 形 の 方 が 新 し い。 何 と な れ ば か く 別 立 す る の は 五 分 の み で あ る。 四 分 パ ー リ は 云 ふ ま で も な く、 十 調 も 第 六 ﹁ 讐 藥 法 ﹂ に 爾 者 を 合 し て 詮 き、 根 本 有 部 律 も ﹁ 律 事 ﹂ の 第 六 藥 事 に 爾 者 を 合 し て 論 い て ゐ る。 食 物 を 藥 腱 度 の 中 で 取 扱 ふ の は、 食 物 が 身 膣 を 長 養 す る 黙 で、 藥 の 一 種 と 見 る か ら で あ る。 し か し 食 物 の 取 得 と 浩 費 の 實 際 か ら 云 へ ば、 そ れ は 藥 と は 同 じ で な い。 故 に 五 分 の 如 く 爾 者 を 別 論 す る 方 が 合 理 的 で あ る。 し か し そ れ 丈 に 若 し 始 め か ら 二 腱 度 に 分 れ て ゐ た も の で あ れ ば、 こ れ を 後 か ら 一 腱 度 に 合 す る こ と は あ り 得 な い、 し か も 別 け て ゐ る の は 五 分 の み で あ る か ら、 こ の 黙 か ら 見 て も、 二 腱 度 に 別 け る 五 分 の 形 は、 後 か ら 手 を 加 へ た 改 攣 と 見 な け れ ば な ら な い。 次 に 五 分 の 謁 磨 法 が 他 律 の 四 腱 度 を 含 め て ゐ る 黙 で あ る が、 こ れ も 五 分 の 形 が 新 し い と し な け れ ば な ら ぬ。 四 分 パ ー リ が 四 腱 度 に 別 け て ゐ る の み な ら ず、 十 講 ・ 根 本 有 部 律 も 同 様 で あ る。 四 腱 度 を 合 し て ゐ る の は 五 分 の み で あ る。 し か し 内 容 の 黙 か ら 云 へ ば、 此 等 を 一 つ に 合 し て 取 扱 ふ 五 分 の 方 が 合 理 的 で あ る。 謄 波 腱 度 は チ ャ ン パ ー の 比 丘 達 の 不 正 な 掲 磨 に 關 蓮 し て、 不 正 な 謁 磨 作 法 を 論 明 し た も の で あ り、 拘 啖 彌 腱 ﹁度 は コ ー サ ン ビ ー の 比 丘 達 の 破 櫓 に 關 蓮 し て、 信 伽 が 分 裂 し た 際 の 掲 磨 作 法 を 論 明 し た も の で あ る。 謁 磨 腱 度 は 諸 種 の 謁 磨 を 読 明 し た も の で あ り、 集 腱 度 は 曾 残 罪 を 犯 し た 比 丘 の 塵 分 に 關 す る 掲 磨 作 法 を 論 明 し た も の で あ る。 故 に 此 等 は 凡 て 謁 磨 作 法 の 読 明 で あ る。 た だ 他 律 は チ ャ ン パ ー コ ー サ ン ビ ー 等 の 事 件 の 起 つ た 場 所 を 重 覗 し て、 四 律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 三 五
律 藏 腱 度 部 の 成 立 に っ い て ( 平 川 ) 三 六 つ に 分 け て ゐ る に 過 ぎ な い。 五 分 は 其 等 に 共 通 に 見 ら れ る 謁 磨 に 着 目 し、 論 明 の 重 複 を 省 い て 簡 軍 な 一 章 に 纏 め た も の で あ り、 分 量 も 比 較 的 少 い。 此 等 の 黙 か ら 見 て も、 五 分 の 形 の 薪 し い こ と が 分 る。 第 三 に 五 分 に は 他 律 の 腱 度 部 に 無 い ﹁ 調 伏 法 ﹂ が 何 故 あ る か と 云 ふ に、 こ れ も 五 分 律 の 形 式 の 新 し い こ と を 示 す も の で あ る。 律 藏 は 経 分 別 ・ 腱 度 部 ・ 附 随 の 三 大 部 に 分 れ て ゐ る の が 普 通 で あ る が、 五 分 律 に は 附 随 の 部 分 が な い。 五 分 の 調 伏 法 は、 波 羅 夷 四 條、 櫓 残 の 初 五 條 に 封 す る 到 例 を 示 し た も の で あ る が、 こ れ に 相 當 す る も の が、 四 分 律 の ( 6 ) 附 随 の 一 部 で あ る ﹁ 調 部 ﹂ に 含 ま れ て を り、 同 様 に 十 調 で も ( 7 ) 附 随 の 一 部 分 で あ る ﹁ 比 丘 諦 ﹂ に 見 出 さ れ る。 五 分 が 附 随 の 部 分 を 持 た な い 黙 と、 五 分 の 調 伏 法 が 他 律 の 附 随 の 部 分 に 含 ま れ て ゐ る 黙 と よ り 考 へ て、 こ の 調 伏 法 は 他 律 の 附 随 の 部 分 の 名 淺 り で あ る と 見 た い。 五 分 律 は 三 十 巻 で あ り、 四 分 の 六 十 巻、 十 諦 の 六 十 一 巻 に 較 べ て 約 牛 量 で あ る。 し か し そ れ で 読 く 内 容 は 大 髄 同 じ い。 こ れ は 五 分 が 読 明 を 簡 略 に し、 省 略 の 手 法 を 用 ぴ て ゐ る か ら で 毒 り、 そ の 例 は 随 虞 に 見 ら れ る が、 腱 度 部 に お け る 以 上 の 三 鮎 も、 こ れ に 關 係 が あ る と 思 ふ。 帥 ち 五 分 は、 既 存 の 律 藏 に 手 を 加 へ て 出 來 た 律 で あ り、 そ の 際、 藥 法 と 食 法 と を 分 け、 四 腱 度 を 掲 磨 法 に 纏 め、 附 随 の 部 分 の 中、 調 伏 法 を 淺 し て 他 を 切 り 捨 て、 こ れ を 腱 度 部 の 第 十 八 に 挿 入 し た の で あ る と 見 て よ い と 思 ふ。 十 諦 律 二 十 法 1 受 具 足 戒 法、 2 布 薩 法、 3 (4 )安 居 法、 4 (3) 自 恣 法、 5 皮 革 法、 6 讐藥法、7(8)迦紡那衣法、8(7)衣法、9(1)謄波法、10(9)倶談彌 瀞、11繋茶盧伽法、1213僧残悔法、14(15)課事法、1518(7)難法、 1 6臥具法、17調達・事、19遮法、20比丘尼八敬法、21五 百 比 丘 結 集 三 藏 法品、22七百 比 丘 集 滅 悪 法 品。 形 式 の 黙 で 十 諦 律 が 四 分 パ ー リ と 異 ハ る 黙 は 三 つ あ る。 第 二 は 上 述 の 如 く 十 説 の 腱 度 部 は 七 法 ・ 入 法 ・ 雑 謡 等 と 分 れ て を ( 8 ) り、 一 つ に 纏 つ て ゐ な い。 第 二 に、 そ の 第 十 二 櫓 淺 悔 法 に 他 律 の 別 佳 ・ 集 め 二 腱 度 を 合 し て ゐ る。 五 分 は 集 腱 度 を 腱 磨 法 に 播 す る が、 し か し 別 佳 法 は 猫 立 に 立 て て ゐ る。 帥 ち 五 分 が 腱 磨 法 に 合 す る 黙 は、 十 請 は 四 分 パ ー リ と 同 じ く 四 つ に 分 け て を り、 十 諦 が 僧 残 悔 法 に 纏 め る 黙 は、 五 分 は 四 分 パ ー リ と 同 じ く 二 つ に 分 け て ゐ る。 根 本 有 部 律 は そ の 何 れ の 場 合 に も、 四 分 パ ー リ に 同 じ で、 十 諦 五 分 と 合 は な い。 こ の 黙 か ら 見 る も 四 分 パ ー リ の 形 が よ り 古 い こ と が 云 ひ 得 る。 第 三 に 十 請 の ( 9 ) 第 十 七 雑 法 は、 他 律 の 雑 事 ・威 儀 の 二 腱 度、 比 丘 尼 腱 度 の 少 分 ( 10 ) を 合 し て ゐ る。 こ れ が 根 本 有 部 律 に な る と、 ﹁ 雑 恵 ﹂ に 他 律 の 雑 事 腱 度、 威 儀 腱 度 の み な ら ず、 比 丘 尼 腱 度、 五 百 腱 度、 七 百 腱 度 の 五 腱 度 を 含 め て ゐ る。 故 に 十 講 の 雑 法 が 他 律 の 三 腱 度 を 合 し て ゐ る の は、 根 本 有 部 律 の ﹁ 雑 事 ﹂ に 移 る 過 渡 期 の 形 と 見 る こ と が で き る。 以 上 の 三 黙 は、 十 謂 の 腱 度 部 が 四 分
-389-パ ー リ の 腱 度 蔀 と 異 る 黙 で あ る が、 同 時 に ま た そ こ に 蓮 絡 の 認 め ら れ る こ と も 上 述 の 如 く で あ る。 ( 11) 根 本 有 部 律、 律 事 十 七 事、 律 雑 事 1 出 家 事、 2 布 薩 事、 3 (4) 安 居 事、 4 (3) 随 意 事、 5 皮 革 事、 6 藥 事、7翔恥那衣畢、8衣事、9黄赤比丘事、10コーサソ ビ ー 事、11漏磨事、12別佳事、13プトガラ事、14諄事、 16臥具事、12破僧事、19遮布薩事、1518202122律雑事。 根 本 有 部 律 で は ﹁ 律 雑 事 ﹂ に 他 律 の 五 腱 度 を 含 め て ゐ る 黙 を 除 け ば、 形 式 の 黙 で は 四 分 パ ー リ に よ く 合 す 惹。 し か し 内 容 の 黙 か ら 云 へ ば、 根 本 有 部 律 は 四 分 パ ー リ か ら 最 も 遠 い 律 で あ る。 こ の 黙 は 今 は 論 ず る 絵 裕 が な い。 最 後 に 憎 祇 律 の 腱 度 部 は、 難 遭 訥 蹟 渠 法 の 十 四 蹟 渠 と 猷 儀 法 と で あ る。 こ の 中、 威 儀 法 は 他 律 の 威 儀 腱 度 に 相 當 す る が、 残 り の 十 四 蹟 渠 は 一 一 の 蹟 渠 を 軍 位 と し て は、 他 律 の 腱 度 部 と 比 較 す る こ と が で き な い。 十 四 の 蹟 渠 は、 そ の 中 に 更 に 細 か な 項 目 を 含 ん で を り、 そ の 籔 は 全 部 で 百 十 三 に も 上 る。 こ の 百 十 三 の 項 目 の を、 上 座 部 の 腱 度 の 内 容 と 比 較 す れ ば、 合 致 す る も の が 多 い。 例 へ ば 初 蹟 渠 に は 且 足 法 ( 受 戒 腱 度 ) 謁 磨 事 ( 掲 磨 腱 度 ) が 含 ま れ、 第 四 蹟 渠 の 八 項 目 の 中 に は、 布 薩 法、 安 居 法、 自 恣 法、 迦 繕 那 衣 法、 衣 法 等 が 含 ま れ て ゐ る。 更 に 第 三 蹟 渠 の 十 一 項 目 の 中 に は、 藥 法、 食 法 等 が あ る。 第 二 蹟 渠 に は 學 謁 磨、 別 佳 等 の 項 目 が 含 ま れ、 第 三 蹟 渠 に は 掲 磨 法、 林 褥 法 ( 臥 坐 具 腱 度 ) 等 が あ る。 第 十 蹟 渠 に は 五 百 比 丘 集 法 藏、 七 百 集 法 藏 等 の 項 目 が 入 つ て ゐ る。 第 六 蹟 渠 に は ﹁ 非 謁 磨 ﹂ な る 項 目 の 下 に 二 十 九 種 の 不 正 の 到 決 例 が 示 さ れ て ゐ る が、 こ れ は 五 分 の 調 伏 法、 四 分 の 調 部 ・ 十 調 の 比 丘 諦 等 に 相 當 す る も の が 多 い。 こ れ は 僧 祇 が 五 分 と 同 じ く、 附 随 の 部 分 を 持 た な い 黙 と 共 に 注 意 す べ き で あ る。 以 上 に 百 十 三 の 項 目 の 中 の 若 干 を 學 げ た が、 他 の 項 目 は 項 目 が 飴 り に も 小 さ す ぎ て 他 律 の 一 一 の 腱 度 に は 樹 慮 さ す こ と が で き な い。 し か し 腱 度 の 中 の 一 部 分 を 取 つ て 樹 慮 さ せ れ ば、 相 當 文 章 を 見 出 し 得 る も の が 多 い。 か く 全 膿 と し て は 類 似 の 内 容 が 多 い の で あ る が、 し か し 十 四 蹟 渠 の 一 一 を 輩 位 と す る と、 そ の 含 む 項 目 が 鯨 り に も 雑 然 と し て ゐ る 爲、 他 律 の 腱 度 を 軍 位 と し て は、 相 當 す る も の を 決 定 し 難 い の で あ る。 六 種 の 律 藏 の 腱 度 部 を、 形 式 の 黙 か ら 取 り 上 げ る と 以 上 の 如 く で あ る。 三 以 上 の 六 種 の 律 藏 の 腱 度 部 の 内、 上 座 部 系 の 五 種 の 腱 度 部 は、 腱 度 の 藪 に 若 干 の 出 入 は あ る が、 し か し と も か く 相 互 に 蓮 絡 が 認 め ら れ、 四 分 ・ パ ー リ ・ 五 分 ・ 十 諦 ・ 根 本 有 部 律 と、 攣 遷 の 過 程 を 辿 る こ と が で き る。 こ れ に 封 し て、 櫓 祇 律 の 腱 度 部 の 組 織 は、 此 等 と 全 く 異 つ て を り、 形 式 の 上 で は 前 記 の 律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 三 七
律 藏 健 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 三 八 五 律 と 直 接 の 關 蓮 を 見 出 す こ と は 難 い。 こ れ は 部 派 分 裂 史 の 傳 承 に お い て、 上 座 大 衆 が 先 づ 分 裂 し た と 傳 へ ら れ る の に 慮 ず る も の で あ り、 換 言 す れ ば、 腱 度 部 の 形 式 が 整 備 さ れ た の は、 上 座 大 衆 の 根 本 分 裂 以 後 で あ つ た こ と を 示 す も の で あ ら う。 し か し そ れ と 同 時 に、 信 祇 律 の 細 か い 項 目 が 上 座 部 の 腱 度 の 内 容 と 相 慮 ず る も の が 多 い こ と は、 爾 者 が 腱 度 部 の 形 式 を 作 る 時、 同 一 の 材 料 を 利 用 し た こ と を 示 す も の で あ ら う。 か く 考 へ る と す れ ば、 次 に 上 座 部 大 衆 部 が そ れ ぞ れ の 腱 度 部 を 整 備 し た 時、 そ の 最 初 の 組 織 は ど ん な も の で あ つ た か が 問 題 と な る。 上 座 部 系 統 で は 五 種 の 律 藏 が あ る か ら、 此 等 を 比 較 す る こ と に よ つ て、 或 る 程 度 古 い 形 を 探 求 し 得 る が、 大 衆 部 系 統 で は 櫓 紙 律 の み で あ る か ら、 そ れ が で き な い。 櫓 祇 律 自 身 を 検 討 し て み て も、 内 容 に 部 派 的 檜 廣 の あ る こ と は 種 女 認 め ら れ る が、 形 式 に 現 形 の 十 四 ヴ ァ ル ガ 以 外 の も の が 有 つ た こ と を 示 す や う な 手 掛 り は 全 く 見 當 ら な い。 上 座 部 系 統 の 腱 度 部 の 比 較 は、 前 節 に 既 に 考 察 し た 如 く で あ り、 四 分 パ ー リ の 二 十 二 腱 度 の 形 が 最 も 古 い と 見 て よ い。 し か し こ の 二 十 二 腱 度 の 中 に は、 ﹁ 七 百 腱 度 ﹂ が 含 ま れ て ゐ る か ら、 二 十 二 腱 度 の 形 式 は 十 事 非 事 を 媒 介 と す る 七 百 結 集 よ 匂 後 の 成 立 で あ る こ と は 云 ふ ま で も な い。 尤 も 五 百 ・ 七 百 爾 腱 度 は、 何 れ の 律 で も 最 後 に 附 加 さ れ て ゐ る か ら ( 但 し 曾 祇 律 は 第 十 蹟 渠、 最 後 で は な い )、 こ の 二 つ を 第 二 結 集 以 後 の 附 加 と 見 て、 そ れ 以 前 の 二 十 腱 度 の 形 式 は、 よ り 古 く か ら 存 在 し た と 見 る こ と も 出 來 な い こ と は な い。 次 に 二 十 二 腱 度 成 立 の 下 限 に つ い て 云 へ ば、 こ れ は 上 座 部 の 枝 末 分 裂 の 起 る 前 と 考 へ て よ い。 こ れ は 五 分 ・ 十 調 ・ 根 本 有 部 律 等 の 腱 度 部 は、 二 十 二 腱 度 の 形 を 攣 へ て 作 ら れ た の で あ る と 見 得 る 難 か ら、 上 座 部 の 枝 末 分 裂 の 起 る 時 に は、 既 に こ の 形 式 は 成 立 し て ゐ た と 見 て よ い と 思 ふ。 そ こ で 次 に 第 二 結 集 は い つ で あ り、 上 座 部 の 枝 末 分 裂 は い つ で あ る か が 問 題 と な る。 律 藏 で は 十 事 の 事 件 を 佛 滅 百 年 と し て ゐ る。 ア ソ カ 王 の 年 代 に 關 し て は、 南 北 爾 傳 の 間 に 調 和 し 難 い 矛 盾 が あ る が、 第 二 結 集 の 年 代 に 關 し て は、 南 北 の 間 に 本 質 的 な 相 違 が な い。 ( 12) ( 13) 有 部 系 統 の み は 第 二 結 集 を 佛 滅 百 十 年 と す る が、 パ ー リ 並 び に 四 分 ・ 五 分 等、 有 部 以 外 の 資 料 は す べ て こ れ を 佛 滅 百 年 と ( 14 ) す る。 櫓 祇 律 の ﹁ 七 百 集 法 ﹂ に は 年 代 を 出 さ な い が、 内 容 の 研 究 よ り し て、 僧 祇 に も こ の 年 代 を 適 用 し て 矛 盾 は な い。 爾 系 統 に 十 年 の 差 違 が あ る が、 大 藪 に つ け ば 同 じ と 云 つ て よ い 程 の も の で あ る。 し か し 次 の 枝 末 分 裂 の 年 代 に 關 し て は、 異 部 宗 輪 論 と 島 史 や 大 史 と の 間 に 違 ひ が あ る。 尤 も 大 衆 部 の 枝 末 分 裂 は、 爾 者 共 に 佛 滅 二 百 年 以 内 と し て を り、 同 じ で あ る。 し か し 上 座 部 の 枝 末 分 裂 に つ い て は、 異 部 宗 輪 論 は、 三 百 年 目 の 始 め か ら 分 裂 が 起 り、 大 部 分 は 三 百 年 以 内、 経 量 部 の み は 四 百 年 目 に か か る と 云 ひ、 セ イ ロ ン 傳 で は、 二 百 年 目 に 分
裂 が 起 り、 二 百 年 以 内 に 十 七 部 が 分 派 し、 若 干 の も の が 三 百 年 目 に か か る と 云 つ て を り、 爾 読 に は 百 年 の 差 異 が 出 て く る。 こ れ は 簡 軍 に 會 通 で き な い 問 題 で あ る が、 今 は 部 派 分 裂 史 の 研 究 を 主 題 と し な い か ら、 こ こ に は 便 宜 上 遅 い 年 代 を 取 る こ と と す れ ば、 上 座 部 の 枝 末 分 裂 は 三 百 年 目、 帥 ち 佛 滅 二 百 年 を 過 ぎ た 頃 か ら 起 つ た こ と に な る。 そ う す る と 上 座 部 律 の 二 十 二 腱 度 の 形 式 は、 少 く と も こ の 時 代 ま で に 既 に 成 立 し て ゐ た と 見 な け れ ば な ら な い。 印 ち 佛 滅 百 年 頃 か ら 二 百 年 頃 ま で の 間 に 成 立 し た と 云 ふ こ と に な る。 然 ら ば こ の や う な 二 十 二 腱 度 が 成 立 す る 以 前 の 腱 度 部 の 形 式 は ど の や う で あ つ た で あ ら う か。 櫓 祇 律 と 上 座 部 系 の 律 と を 比 較 し て み て、 腱 度 部 の 内 容 の 骨 子 が 部 派 分 裂 以 前 か ら 存 在 し た こ と は、 さ き に 見 た 如 く で あ る。 し か し 形 式 の 黙 で も、 櫓 祇 律 と 上 座 部 系 の 律 と は 全 く 無 關 係 で は な く、 仔 細 に 見 る な ら ば そ こ に 若 干 の つ な が り を 焚 見 す る の で あ る。 例 へ ば 曾 祇 律 に は ﹁ 威 儀 法 ﹂ が 雑 調 蹟 渠 法 か ら 別 に 立 て ら れ て ゐ る。 こ れ は 他 律 の 威 儀 腱 度 に 相 當 す る も の で あ り、 内 容 は 行 儀 作 法 に 關 す る 心 得 で あ る。 こ の 内 容 は 質 實 的 に は 波 羅 提 木 叉 の ﹁ 衆 學 法 ﹂ と 大 差 な い も の で あ る。 波 羅 提 木 叉 の 中、 衆 學 法 の み は 諸 律 の 條 文 の 立 て 方 が 不 揃 ひ で あ り、 諸 律 の 間 に 一 致 ( 15 ) が 認 め ら れ な い。 故 に 條 文 化 し て、 波 羅 提 木 叉 に 加 へ ら れ た の は、 部 派 分 裂 以 後 と 推 定 さ れ る の で あ る が、 し か し 波 羅 提 木 叉 に 加 へ ら れ る 丈 に、 そ れ 以 前 か ら 重 要 硯 さ れ、 一 箇 所 に 纏 め ら れ て ゐ た の で あ ら う。 櫓 祇 律 が 特 に 威 儀 法 の み を 別 出 し て ゐ る の は、 部 派 分 裂 以 前 の か か る 事 情 の 反 映 で は な い か と 解 繹 さ れ る。 次 に 前 節 に 述 べ た 如 く、 五 分 律 の 腱 暫度 部 に は 第 十 八 に 調 伏 法 が あ る。 こ れ は 四 分 の 調 部、 十 調 の 比 丘 翻、 ( 16 ) 曾 祇 律 の 第 六 蹟 渠 ﹁ 非 錫 磨 ﹂ に 相 當 す る。 こ れ も 現 在 の 調 伏 法 等 の 原 初 形 態 が、 既 に 部 派 分 裂 以 前 か ら 成 立 し て ゐ た こ と を 示 す も の と 思 は れ る。 術、 七 百 腱 度 も 上 座 大 衆 の 爾 方 に あ る が、 し か し こ れ は 内 容 に 合 す る 黙 と 矛 盾 す る 黙 と が あ る。 こ れ は 七 百 會 議 で 上 座 大 衆 だ 分 裂 し た と 傳 へ ら れ る 丈 に、 封 立 す る 意 見 を 含 ん で ゐ る 難 に、 却 つ て 實 際 を 傳 へ て ゐ る 黙 が あ る と 思 ふ。 次 に 上 座 部 の 律 藏 の 中 に、 そ れ 以 前 の 形 式 を 推 知 せ し め る 資 料 が 見 ら れ る。 そ れ は 上 座 部 の 七 百 腱 度 の 中 に は、 現 在 の ( 17) 腱 度 と 異 る 腱 度 名 が 保 存 さ れ て ゐ る。 師 ち パ ー リ 律 に は、 Uposatha-samyutta. Campeyyaka-vinayavatthu の名があ る。 十 調 で は こ れ に 相 當 す る 部 分 は 共 に ﹁ 占 波 國 毘 尼 行 法 ﹂ と な つ て を り、 四 分 で は 爾 者 共 に ﹁ 布 薩 腱 度 ﹂ と な つ て ゐ る。 五 分 や 根 本 有 部 で は 軍 に ﹁ 謄 波 國 に て 制 す ﹂ と な し、 腱 度 名 を 出 し て ゐ な い。 何 分 現 在 の 腱 度 と 矛 盾 す る 名 構 で あ る 爲、 現 形 に 照 し て 改 攣 さ れ 易 く、 諸 律 が 一 致 し た 名 稻 を 保 存 し て ゐ な い の は 止 む を 得 な い。 四 分 が ﹁ 布 薩 腱 度 ﹂ と し て ゐ る の 律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 三 九
律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 四 〇 は、 恐 ら く 現 形 に 照 し て 改 攣 し た の で あ ら う。 と も か く 十 事 ( 18) を 非 事 と 裁 定 す る 典 擦 と し て、 現 形 の 聖 典 と 異 る 名 稻 を 出 し て ゐ る 黙 は 注 意 し て よ い。 U posatha-samyutta は 字 義 通 り に は、 ﹁ 布 薩 に 關 係 の あ る 教 読 を 集 め た も の ﹂ と 云 ふ 意 味 で あ り、 七 百 腱 度 の 文 脈 か ら 見 て、 明 ら か に 現 形 の 布 薩 腱 度 に 相 當 す る。 ま た Campeyyaka-vinayavatthu は、 ﹁ チ ャ ン パ ー に 於 い て 論 か れ た 教 読 の 中 で、 律 に 關 係 の あ る 事 件 を 集 め た も の ﹂ と 云 ふ 程 の 意 味 で あ り、 こ れ は 七 百 腱 度 の 文 脈 か ら 見 て、 現 形 の 謄 波 腱 響度 に 相 當 す る こ と は 疑 ぴ な い。 七 百 腱 度 に は こ の 名 稻 の み が 出 て ゐ る が、 そ れ は 他 の 腱 度 に 關 係 す る 問 題 が 十 事 の 中 に は 無 か つ た か ら で あ る。 こ の 當 時、 す で に ﹁ 布 薩 相 慮 ﹂ や ﹁ 謄 波 律 事 ﹂ が 纏 め ら れ て ゐ た と す れ ば、 受 戒 腱 度 の 原 型 や、 安 居 腱 度 や 自 恣 腱 度 の 原 形 等 も、 當 然 纏 め ら れ て ゐ た と 推 定 し て よ い。 し か も 櫓 祇 律 と の 比 較 に よ つ て、 威 儀 腱 度 の 原 型 も 纏 つ て ゐ た と す れ ば、 七 百 腱 度 は と も か く と し て、 そ れ 以 外 の 腱 度 の 大 部 分 の 原 型 が 既 に 存 在 し て ゐ た と 考 へ て よ い と 思 ふ。 し か し 其 等 は 存 在 し て ゐ た と し て も、 す べ て が 腱 度 と 呼 ば れ て ゐ た の で は な い こ と は、 上 述 の 如 く samyutta や vinayattha が 用 ひ ら れ て ゐ る 黙 か ら 明 ら か で あ る。 恐 ら く こ の 外 に も dharmaka や v a r g a 等 も 使 用 せ ら れ て ゐ た の で あ ら う。 そ し て 部 派 分 裂 後 も 其 等 が 何 等 の 形 で 保 存 さ れ て ゐ て、 パ ー リ や 四 分 は こ れ を 腱 度 に 統 一 し、 五 分 や 十 諦 は d h armaka に 統 一 し、 僧 祇 律 は v a r g a 根 本 有 部 律 は v a s tu を 用 ひ た と 云 ふ や う な 事 情 に な つ た の で は な い か と 想 像 さ れ る。 と も か く 櫓 祇 律 の 威 儀 法 や、 七 百 腱 度 に 布 薩 相 鷹 や 謄 波 律 時 の 名 が 出 て く る こ と よ り 考 へ て、 佛 滅 百 年 頃 ま で に、 律 に 關 係 の あ る 資 料 の 蒐 集 整 理 は、 か な り 現 在 形 に 近 づ い て ゐ た こ と が 推 知 さ れ る。 帥 ち 律 に 關 係 の あ る 教 読 は、 一 方 で は 條 文 化 さ れ、 波 羅 提 木 叉 の 形 式 に 纏 め ら れ ( こ の 形 式 が 根 本 分 裂 以 前 に 成 立 し た こ と は、 諸 種 の 黙 よ り 論 讃 し 得 る )、 他 方 で は、 條 文 化 さ れ な い 教 團 運 螢 に 關 す る 教 詮 が 集 め ら れ て、 こ れ が 分 類 整 理 さ れ、 同 種 類 の 規 則 や 事 件 は 一 箇 所 に 集 め ら れ、 こ れ に 適 當 な 題 目 が つ け ら れ る と 云 つ た 仕 事 が、 か な り 進 ん で ゐ た と 考 へ て よ い。 そ し て 其 等 の 題 目 の 中 に は、 現 在 の 腱 度 名 と 殆 ん ど 同 一 の も の も、 か な り 存 在 し た と 見 て よ い と 思 ふ。 こ の や う な 牟 整 理 の 形 式 が、 根 本 分 裂 ・ 枝 末 分 裂 を 経 て、 各 部 派 の 努 力 に よ り、 現 在 の 腱 度 の 形 式 に 固 定 し た の で あ ら う と 考 へ ら れ る。 形 式 が あ れ ば、 勿 論 内 容 も あ つ た わ け で あ る が、 腱 度 の 原 初 形 態 時 代 の 内 容 が ど の や う な も の で あ つ た か は、 こ れ は ま た 別 個 の 問 題 と し て 研 究 さ れ ね ば な ら な い。 1 形 式 拡 古 く と も 内 容 の 新 し い 部 分 が あ り、 ま た そ の 逆 も あ る。 内 容 考 察 の 一 例 と し て、 腱 度 部 の 最 初 に 位 す る ﹁ 受 戎 腱 度 ﹂ に 佛 傳 が あ る が、 こ の 成 立 に 關 し て、 拙 論 ﹁ 律 藏 の 佛 傳 に つ い て ﹂
倫 理 第 五 四 八 輯 に 論 じ た こ と が あ る。 2 十 論 律 巻 四 七、 大 正 二 三、 三 四 五。 3 同 上、 巻 六 〇、 六 一。 4 諸 律 の 腱 度 部 の 比 較 に つ い て は、 南 傳 大 藏 輕 第 五 唇 々 末 二 四 頁 以 下 ﹁ 南 傳 律 藏 と 三 漢 課 律 と の 封 照 表 ( 腱 度 部 ) ﹂ が あ る。 5 そ の 匿 分 に っ い て 云 へ ば、 五 分 律 巻 二 三、 錫 磨 法 の 最 初 ( 大 正 二 二、 一 五 六 中 よ り ) の 部 分 は、 他 律 の ﹁ 集 腱 度 ﹂ に 相 當 し、 そ の 綾 き 巻 二 四 ( 大 正 同、 一 五 八 下 ) よ り 他 律 の ﹁ 拘 談 彌 腱 度 ﹂ に 相 當 し、 同 じ く 巻 二 四 の 中 間 ( 大 正 同、 一 六 一 上 十 四 行 ) よ り ﹁ 謄 波 健 度 ﹂ に 相 當 し、 絡 り の 部 分 大 正 同、 一 六 三 上 二 行 よ り ) は ﹁ 叛 磨 腱 度 ﹂ に 相 當 す る。 6 四 分 律 巻 五 五 -五 七、 大 正 二 二、 九 七 一 -九 九 〇 上。 五 分 よ り は 量 竜 多 く 説 明 竜 詳 し い。 7 十 謙 律 巻 五 七 -五 九、 大 正 二 三、 四 二 四 中 四 四 五 上。 8 十 諦 律 ﹁ 曾 残 悔 法 ﹂ の 中、 巻 三 二 ( 大 正 二 三、 三 天 中 以 下 ) 他 律 の ﹁ 集 腱 度 ﹂ に 相 當、 同 巻 三 三 ( 大 正 同、 二 三 六 下 以 下 ) 他 律 の ﹁ 別 住 腱 度 ﹂ に 相 當 す る。 9 十 論 律 巻 三 七 -四 一 ﹁雑 法 ﹂ の 中 巻 三 七 ( 大 正 二 三、 二 六 七 上 ) よ り、 他 律 の ﹁難 事 腱 度 ﹂ に 相 當、 同 巻 四 〇 ﹁ 数 明 比 丘 尼 法 ﹂ ( 大 正 同、 二 九 〇 下 ) 以 下、 他 律 の ﹁ 比 丘 尼 腱 度 ﹂ に 相 當、 同 巻 四 一 ( 大 正 同、 三 〇 〇 上 ) よ り 他 律 の ﹁ 威 儀 腱 度 ﹂ に 相 當 す る。 10 漢 誰 に て 示 せ ば、 根 本 有 部 毘 奈 耶 難 事 四 十 巻 の 中、 巻 三 〇 ( 大 正 二 四、 三 五 一 中 ) 以 下 は、 他 律 の ﹁ 比 丘 尼 腱 度 ﹂ に、 同 巻 三 五 ( 大 正 同、 三 八 一 上 ) 以 下 は、 他 律 の ﹁ 威 儀 腱 度 ﹂ に、 同 巻 三 九 ( 大 正 同、 四 〇 二 上 以 下 ) は 他 律 の ﹁ 五 百 腱 度 ﹂ に、 同 魯 四 〇 ( 大 正 同、 四 一 一 下 以 下 ) は 他 律 の 一 七 百 腱 度 ﹂ に 相 當 す る。 11 根 本 有 部 律 の 腱 度 部 は、 漢 繹 で は 出 家 事 四 巻、 安 居 事 一 巻、 随 意 事 一 巻、 皮 革 事 二 巻、 藥 事 十 八 巻、 揚 恥 那 衣 事 一 巻、 破 曾 事 二 十 巻、 雑 事 四 十 巻 の ﹁ 八 事 ﹂ を 存 す る に 過 ぎ な い。 但 し 西 藏 課 に は 完 課 さ れ て を り、 今 は こ れ に 依 つ た。 大 谷 大 學 ﹁ 西 藏 大 藏 経 昔 殊 爾 勘 同 目 録 ﹂ 三 九 九 頁 以 下、 四 一 四 頁 以 下。 東 北 大 學 ﹁ 西 藏 大 藏 経 総 目 録 ﹂ 一、 二 頁。 河 口 慧 海 師 課 ﹁ 西 藏 大 藏 経 甘 珠 目 録 ﹂ 三 頁 以 下。 榊 博 士 ﹁ 醗 課 名 義 大 集 ﹂ 五 八 三 頁。 荻 原 博 士 ﹁ 梵 漢 封 課 佛 教 鮮 典 ﹂ 二 三 五 頁。 根 本 読 一 切 有 部 毘 奈 耶 頒 巻 下 ﹁ 下 明 於 十 七 蹟 塞 槻 等 中 述 其 要 事 ﹂ 大 正 二 四、 六 四 六 上 以 下。 省 十 七 蹟 窒 観、 十 七 事 の 語 は、 根 本 薩 婆 多 部 律 撰 巻 九 一 四、 大 正 同、 五 七 六 下、 六 〇 五 下、 六 〇 八 下 等 に 竜 出 て ゐ る。 最 初 の 三 者 は そ れ ぞ れ、 北 京 版、 デ ル ゲ 版、 ナ ル タ ン 版 の 目 録 で あ り、 ﹁ 律 事 ﹂ を 十 七 事 に 分 け、 他 に ﹁ 雑 事 ﹂ を 畢 げ る 黙 同 じ い。 マ ハ ー ヴ ィ ユ ト パ ッ テ ィ は ﹁ 律 事 ﹂ の 十 七 分 の 名 目 を 畢 げ た 竜 の で あ る。 以 上 の 諸 費 料 に 出 る 西 藏 丈 並 び に 梵 還 は 必 ら ず し も 一 致 し て お ら ず、 十 七 事 の 項 目 の 申 に も 不 審 の 竜 の が あ る。 實 際 の 藏 纏 に 照 し て 訂 正 を 要 す る 竜 の が あ る や う で あ る が、 今 は 紙 敷 の 都 合 で 別 の 機 會 に 譲 り た い。 伺、 河 口 師 の ナ ル タ ン 版 目 録 は、 大 正 大 學 那 須 實 秋 氏 の 御 教 示 と 御 好 意 に ょ り、 爲 得 し て 御 悪 途 い た だ い た も の に 櫨 っ た。 御 好 意 を 深 く 感 謝 す る 吹 第 で あ る。 12 十 諦 律 巻 六 〇 ﹁ 七 百 比 丘 集 滅 悪 法 品 ﹂ 大 正 二 三、 四 五 〇 上。 律 藏 健 度 部 の 成 立 に っ い て ( 平 川 ) 四 一
律 藏 腱 度 部 の 成 立 に つ い て ( 平 川 ) 四 二 根 本 読 一 切 有 部 毘 奈 耶 難 事 巻 四 〇、 大 正 二 四、 四 一 一 下。 薩 婆 多 部 毘 尼 摩 得 勒 伽 巻 六、 大 正 二 三、 五 九 七 中。 寺 本 師 ﹁ タ ー ラ ナ ー タ 印 度 佛 教 史 ﹂ 六 三 頁。 ブ ド ン ﹁善 逝 教 明 法 王 寳 藏 史 ﹂ 前 引 書 三 九 五 頁。 西 域 記 巻 七、 大 正 五 一、 九 〇 九 中 等 が、 佛 滅 百 十 年 読 を 出 す。
13 Cullavagga.XII Sattasatikakkhandhaka vol. 11.
由傳第四巻四三九頁。Dipavamsa IV. 47. 8. pp. 33. 34. 137. M a ha vamsa IV. 8-11. pp. 101. 102. 南 傳 第 六 〇 巻、 二 七、 一六八頁。Samantapasadika vol. 1. p. 33. 南傳第六五巻四四 頁。 善 見 律 毘 婆 沙 巻 一、 大 正 二 四、 六 七 七 下。 四 分 律 巻 五 四、 大 正 二 二、 九 六 八 下。 五 分 律 巻 三 〇、 大 正 同、 一 九 二 上。 毘 尼 母 経 管 四、 大 正 二 四、 八 一 九 中。 高 曾 法 顯 傳、 大 正 五 一、 八 六 二 上 等 が、 佛 滅 百 年 説 を 出 す。 七 百 會 議 の 年 代 に つ い て は、 以 上 の 爾 説 の 外 に 異 読 が な い。 14 僧 祇 律 巻 三 三、 大 正 二 二、 四 九 三 上 下。 曾 紙 律 に 竜 百 年 説 が 要 當 す る こ と は、 ﹁ 宮 本 教 授 還 暦 紀 念 論 丈 集 ﹂ 所 牧 の 拙 論 に 若 干 論 じ た。 15 印 度 學 佛 教 學 硯 究 第 一 巻 第 二 號 一 三 七 頁、 拙 論 ﹁ 波 羅 提 木 叉 の 比 較 ﹂ に 少 し く 論 じ た。 16 僧 祇 律 巻 二 九、 三 〇、 大 正 二 二、 四 六 四 下 -四 七 〇 下。 パ ー リ 律 に 竜 同 性 質 の 丈 章 が あ る が、 し か し 一 箇 所 に 纒 め ら れ て を ら ず、 経 分 別 中 の 波 羅 夷、 僧 残 そ れ ぞ れ の 読 明 の 丈 章 の 中 に 分 散 し て 挿 入 さ れ て ゐ る。 伺、 上 座 部 律 と 大 衆 部 律 と の 形 式 の っ な が り を 示 す 竜 の に、 Majavastu が あ る。 Mahavastu は 大 衆 部 系 統 の Lokottaravadin の 傳 持 し た 律 藏 に 在 つ た。 律 藏 に あ つ た と す れ ば、 當 然 そ れ は 受 戒 健 度 に あ つ た 筈 で あ る。 而 し て パ ー リ の 受 戒 腱 度 は M a ha k k han d haka と 呼 ば れ る が、 こ の k h an d h a k a を v as tu に 取 り か へ れ ば、 當 に M a ha v as-tu に な る。 し か 竜 v as t u は 根 本 有 部 律 で 用 ひ、 十 諦 に も 第 十 六 の 調 達 事 に は、 こ れ を 用 ひ て ゐ る。 僧 祇 律 で も、 小 さ い 項 目 に、 潟 磨 事 と か 治 事 と か 塔 事 と か と、 v astu を 用 ひ て ゐ る。 卸 ち 律 藏 で は v as tu の 用 例 は 珍 し く な い。 し か 竜 内 容 の 上 か ら 云 つ て 竜、 M a ha v astu と パ ー リ の M a ha k k h an d h a ka と の 間
に、類似の丈章が多いことは、E. Windisih; Die
Komposi-tion des M a hav astu. に パ ラ レ ル な 章 句 を 抜 き 出 し て、 論 謹 し て ゐ る 如 く で あ る。 こ の や う に ﹁ 大 事 ﹂ と 云 ふ 名 稔 並 び に そ の 内 容 に は、 大 衆 部 系 の 律 藏 と パ ー リ 律 と の つ な が り を 示 唆 す る 竜 の が あ る。
17 Cullavagga XII. vol. 2. pp. 306. 307. 南傳第四巻四五八
頁。 十 謙 律 巻 六 一、 大 正 二 三、 四 五 四 下 十 四 行、 二 九 行。 四 分 律 巷 五 四、 大 正 二 二、 九 七 〇 上。 五 分 律 巻 三 〇、 大 正 同、 一 九 四 中。 根 本 有 部 律 雑 事 巻 四 〇、 大 正 二 四、 四 一 二 中。 18﹁ 布 薩 相 磨 ﹂ は、a vasakappa ( 住 塵 澤 ) 帥 ち 同 一 結 界 内 で、 各 住 塵 毎 に 布 薩 を し て 竜 よ い と 主 張 す る 竜 の を、 否 定 す る 典 嫁 に 出 さ れ て ゐ る。 ﹁ 謄 波 律 事 ﹂ は anumatikappa ( 随 喜 浮 ) 即 ち 別 衆 鵜 磨 を 後 か ら 承 認 せ し め て よ い と 主 張 す る の を 否 定 す る 典 擦 と し て 出 さ れ て ゐ る。 こ れ は 趣 意 は 前 者 と 通 ず る か ら、 典 擦 と し て ﹁ 布 薩 腱 度 ﹂ を 華 げ て 竜 誤 り で は な い。 ( 本 研 究 は 丈 部 省 科 學 研 究 費 補 助 に よ る 研 究 ﹁ 律 藏 の 研 究 ﹂ の 一 部 で あ る )