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メンバー間葛藤が集団創造性に与える影響 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)メンバー間葛藤が集団創造性に与える影響 キーワード;集団創造性、集団意思決定、課題葛藤、集団過程. 行動システム専攻 井元. 問 題. 瑞紀. や考え方の不一致のことであり,他の成員に対する緊張や. 職場や家庭など,多くの場面で他者との話し合いによっ. 悪意や不快感を生じさせる.集団創造性を抑制する要因と. て目の前にある問題を解決しようとする営みはよく見られ. して挙げられている葛藤は,この関係葛藤と同義であると. る.例えば,職場で時間外労働を短縮するという問題を解. 考えられる.課題葛藤は,集団成員間で考えや意見,視点. 決するため,仕事の方法について話し合う.その際,これ. が異なり,成員間で一致しないことを言う.先行研究では,. までの仕事の方法にはない新しい方法を提案し,新たな工. この課題葛藤は意見の対立によって新たな意見の誘発や,. 夫を加えることが必要である.つまり,日常の中で視点を. 視点の変換につながる可能性があるという点で,集団活動. 変換し,創造的に問題を解決することが必要とされている.. に有益な影響を与えるという結果を示唆している(Markus,. 1.集団創造性. 2005).過程葛藤は,集団成員の相違を考慮した課題遂行方. 創造性については,多様な定義がされている(Paulus,. 法を実施しなければならないことの葛藤である.集団活動. 2000;日本創造学会, 1983) .本研究では,集団創造性を「集. の場合,実際に行いたい方法以外の方法を実施しなければ. 団レベルで異質な情報群を組み合わせ,統合して問題を解. ならないことが多く,過程葛藤は個人の満足感を低減し,. 決すること」と定義する.そこで,本研究では,集団レベ. 集団成員の態度が消極的になり,その結果集団のパフォー. ルでの解答数,正答数,正答率,誤答数を集団創造性の指. マンスを低下させる恐れがある.. 標とする.. 従来の創造性研究では,関係葛藤に焦点が当てられてお. 2.集団意思決定. り,葛藤は集団創造性を抑制するものだとされてきた.し. 集団が話し合って,共通の決定を下す過程を集団意思決. かし,上記のように分類すると,葛藤がポジティブに影響. 定と言う.投票などによる集合的決定と異なっていて,集. することもあると考えられる.そこで,本研究では集団成. 団成員間の合意形成の為に相互作用を前提とする.集団意. 員間の課題葛藤に焦点を当て,葛藤のポジティブな側面を. 思決定を行う際,集団成員ごとに持っている情報(hidden. 解明する.. profile)が異なり,それらの情報を共有することが,質の高. 仮説1.課題葛藤刺激あり群は,課題葛藤刺激なし群より. い集団意思決定へとつながる(Felix C., Rudolf, Andreas,. 正答率が高いだろう.. Dieter, & Stefan, 2002) .本研究では正解のある課題を用い,. 仮説2.課題葛藤刺激あり群は,課題葛藤刺激なし群より. 集団で話し合いをする際,集団成員がどのように集団成員. 解答数が低いだろう.. 間の情報を共有し,集団意思決定するかについて集団過程. 4.集団過程. に焦点を当て検討する.. これまでの先行研究では,集団レベルの変数として主に. 3.集団のメンバー間の葛藤. アイディアの数や,アイディアの質が扱われ,集団の話し. 集団創造性を抑制する要因のひとつとして考えられてい. 合いの過程について十分な検討がされていない.与えた刺. る葛藤は,集団内葛藤として近年の研究で関係葛藤. 激によって,集団過程がどのように変化するか,また,刺. (Relationship conflict) ,課題葛藤(Task conflict) ,過程. 激とは関係なく集団創造性に関わる集団過程が存在するか. 葛藤(Process conflict)の 3 つのタイプに分類されている. について検討する必要がある.そこで,本研究では課題遂. (Jehn & Bendersky, 2003) .関係葛藤は,集団成員の性格. 行後,事後的に集団の特性について分類し,集団過程と集. 1.

(2) 団創造性,課題葛藤と集団過程の関係についても検討する.. ださい. 」と教示した.決定したアイディアは解答用紙に記 述してもらった.集団で話し合っている様子をビデオ撮影. 課題葛藤. 集団創造性. し,分析の対象とした.. 解答数 正答数 正答率 誤答数. ○実験の手順 (1)個人課題;創造的問題解決課題を個人状況で 5 問行う。. 集団過程 (2)集団課題;(1)とは異なる創造的問題解決課題を集団で行 う.時間は 25 分.出来るだけ多くの問題に 解答するように教示する. ・課題葛藤刺激あり群 ・課題葛藤刺激なし群. 発言を促す 正確さ 時間を気にする 個人の意見をそのまま採用 リーダーの有無. (3)質問紙調査;・集団効力感・集団凝集性 ・コミュニケーション認知・葛藤認知. Figure1.本研究で扱う変数の関係図. Figure2.実験の手順 方 法. 3.質問紙調査セッション 集団効力感(3 項目) ,集団凝. 実験参加者 大学生,大学院生 60 名(男性 30 名,女性 30. 集性(2 項目) ,課題遂行中のコミュニケーション・プロセ. 名;平均年齢 20.98 歳) .各実験参加者は 3 名集団にランダ. スに関する認知(話し手;3 項目,聞き手;3 項目) (三浦・. ムに割り当てられた.. 飛田, 2002) ,葛藤認知(3 項目)について回答を求めた.. 実験課題と手続き 課題は,視点の変換をすることで解決. 評定は 5 件法(1「まったく当てはまらない」∼5「非常に. できるような創造的問題解決課題を用いた.. 当てはまる」 )によった.. 例;(問題)ある検事には,タカシ君という弟がいます.し かし,タカシ君に話を聞くと,「僕のお兄さんは検事じゃ. 結 果. なくて,ケーキ屋だよ」と言っています.タカシ君が嘘を. 1.操作チェック. ついていないとしたら,いったいどういうことでしょう?. 教示によって実際に課題葛藤が生じていると感じたか,. (答え)姉が検事だった.. 質問紙によって操作チェックを行った.. 実験は,個人課題セッション,集団課題セッション,そ. 課題葛藤刺激あり・なしを独立変数,課題葛藤認知を従. して質問紙調査セッションという 3 セッションからなる.. 属変数とした t 検定を行った.その結果,課題葛藤刺激あ. 1.個人課題セッション 個人レベルによる創造的問題解. り群の方がなし群よりも葛藤が生じたと感じている程度が. 決課題を実施した(以下,個人課題) .実験参加者には,個. .このこ 高いという有意傾向が見られた(t(18)=1.85, P<.10). 人で創造的問題解決課題を 5 問解答することを求めた.制. とから,実験での操作は有効であったということが言える.. 限時間は 15 分であり,解答は解答用紙に記述してもらった.. 2.課題葛藤と集団創造性 課題葛藤刺激あり・なしを独立変数,集団課題の解答数,. 周囲とは一切相談せず,正答を目指すように教示した. 2.集団課題セッション 個人課題終了後,3 名集団を形成. 正答数,誤答数,正答率,集団効力感,集団凝集性,コミ. し,集団レベルによる創造的問題解決課題を実施した(以. ュニケーション認知(聞き手,話し手)のそれぞれを従属. 下,集団課題) .作業時間は 25 分である.課題葛藤刺激あ. 変数としたt検定を行った.その結果,課題葛藤刺激あり. り群には, 「必ず,自分の意見やアイディアを発言してくだ. 群の方が課題葛藤刺激なし群より有意に集団課題の解答数. さい.解答は多数決ではなく,話し合いによって決定して. .この結果は,仮説 2 を が少なかった(t(18)=2.97, p<.01). ください. 」と教示した.課題葛藤刺激なし群には「最大 10. 支持している.また,課題葛藤刺激あり群の方が課題葛藤. 問です.なるべく 10 問すべて解答できるように頑張ってく. 刺激なし群より有意に集団課題の誤答数が少なかった. 2.

(3) (t(18)=3.26, p<.01) .それ以外の従属変数に関しては,有意. 集団とそうでない集団で、解答数高群、解答数低群の比率. 差が見られなかった.つまり,仮説 1 は支持されなかった.. 。また、正答 に有意な違いが見られた(χ2(1)=7.59, p<.01). 3.課題葛藤と集団過程. 数高群、正答数低群の比率にも有意な違いが見られた(χ 2(1)=5.69,. 集団課題を遂行しているところをビデオ録画し,実験者. p<.05) 。誤答数高群、誤答数低群の比率の違いに. 。個人の意見 ついて有意傾向が見られた(χ2(1)=3.10, p<.1). が複数の基準を設け,集団過程の特性を分類した. 課題葛藤刺激あり,なし間で,集団過程(発言を促す,. をそのまま採用していた集団とそうでない集団で、解答数. 正確さ,時間を気にする,個人の意見をそのまま採用,リ. 高群、解答数低群の比率に有意な違いが見られた(χ. ーダーの有無など)の違いに偏りがあるか調べるため,そ. 2(1)=10.48,. れぞれについてχ2 検定を行った.結果,他の集団成員の発. も有意な違いが見られた(χ2(1)=6.71, p<.01) 。リーダー的. 言を促す発言が見られるか,見られないかについて,課題. p<.01) 。また、正答数高群、正答数低群の比率に. 集団過程. 集団創造性. 発言を促す. 解答数. 葛藤刺激あり群と課題葛藤刺激なし群の数の比率の違いに .正答を目指す発言 有意傾向が見られた(χ2(1)=3.53, p<.1). 正確さ 正答数. が見られたか見られないかについて,課題葛藤刺激あり群. 時間を気にする. となし群の数の比率の違いに有意傾向が見られた(χ. 個人の意見をそのまま採用. 2(1)=3.81,. リーダーの有無. p<.1) .時間を気にする発言が見られるか,見られ. 正答率 誤答数. ないかについて,課題葛藤あり群と課題葛藤なし群の数の .個人の 比率に有意な違いが見られた(χ2(1)=9.90, p<.01). Figure3.集団過程と集団創造性の関係. 意見をそのまま採用しているか,また,リーダーが存在し. 存在がいたと認知しているメンバーがいる集団とそうでな. ていると認知しているかについては,有意な偏りは見られ. い集団で、正答数高群、正答数低群の違いについて有意傾. なかった(個人の意見をそのまま採用;χ2(1)=0.95, n.s., リ. 。 向が見られた(χ2(1)=2.81, p<.1). . ーダーの有無;χ2(1)=0, n.s.) 4.集団過程と集団創造性. 考 察. 集団課題の解答数の平均値(5.7)を参考に,解答数が 6. 1.課題葛藤と集団創造性. 問以上の集団を解答数高群,解答数が 5 問以下の集団を解. 本実験では,課題葛藤を中心に葛藤のポジティブな側面. 答数低群とした.正答数,正答率,誤答数についても同様. について検討した.課題葛藤が生じたと認知した集団は,. に,平均値(正答数;2.75,正答率;46.57%,誤答数;2.95). 課題葛藤を認知していない集団に比べ,課題の解答数が少. を参考に,平均値を上回っている集団を正答数高群,正答. ないもが,誤答数も少ない.つまり,課題葛藤は意見の衝. 率高群,誤答数高群,下回っている集団を正答数低群,正. 突や視点の変換によって生じるため, 課題葛藤が生じると 1. 答率低群と誤答数低群とした.. 問解くのにかかる時間が長くなってしまうが,誤った決定. 集団過程について分類した各項目について,解答数,正. を行いにくいと言える.反対に,課題葛藤が生じないと 1. 答数,正答率,誤答数に偏りがあるか調べるため,それぞ. 問解くのにかかる時間は少ないが,誤った決定を行いやす. れについてχ2 検定を行った.結果、発言を促す集団とそう. いと言える.集団創造性に関する研究では,葛藤は集団創. でない集団で、誤答数高群、誤答数低群の度数の比率の違. 造性を抑制する要因のひとつと考えられがちだが,葛藤は. 。正答を目指す いに有意傾向が見られた(χ2(1)=2.89, p<.1). 集団創造性を抑制する側面と促進する側面の両方を併せ持. 発言が見られた集団とそうでない集団で、解答数高群、解. っていると考えられる.. 答数低群の度数の比率に有意傾向が見られ(χ2(1)=2.78,. 2.課題葛藤と集団過程. p<.1) 、正答数高群、正答数低群の比率に有意な違いが見ら. 本実験では,課題葛藤刺激が集団過程にどのような影響. 。時間を気にする発言が見られた れた(χ2(1)=5.71, p<.05). を与えているか検討した.課題葛藤が生じない集団では,. 3.

(4) 集団成員の持つ Hidden profile が集団成員間で共有されな. 過程が結果に与える影響などについて検討する必要がある.. いまま集団意思決定が行われるため,最良の決定ができな. 4.総合考察. い可能性が高いと言える.課題葛藤が生じない集団では、. 本研究ではアイディア拡散,収束段階をひとつの集団過程. 集団成員が正解だと思った意見が出ると,それ以上の意見. として扱い,その過程の中で生じる集団のダイナミックス. を出すことなしに集団意思決定を行う傾向があるというこ. に基づいて,集団を分類した。その結果,実験において与. とが示唆されている.正答だと思う解答が出たらそれ以上. えた刺激に影響を受ける集団過程と,影響を受けない集団. の意見交換をしないことは,時間を気にする発言が多く交. 過程に分かれた。課題葛藤の影響を受けたのは,他の集団. わされているという結果と関連しているだろう.課題葛藤. 成員の発言を促すような発言をしている,正解を目指す発. あり群では,時間内に多くの問題を解くことより,集団成. 言をしている,時間を気にしている,の3つの集団過程で. 員の意見を聞くことに焦点が当てられ、課題葛藤刺激なし. ある。個人の意見をそのまま採用している,リーダーの有. 群では,時間内に多くの問題を解くことに焦点が当てられ. 無については,課題葛藤の影響は見られなかった。しかし,. ていたと言える.つまり,課題葛藤あり群と課題葛藤なし. 今回分類した集団過程は全て,集団創造性に何らかの影響. 群では,課題に適した戦略が異なっていたと考えられる.. を与えている。本研究では,集団過程がどのような要因に. 3.集団過程と集団創造性. よって規定されるかについては検討できなかったが,今後,. 本実験では,集団で話し合いをする過程(集団過程)が,. 集団過程に影響を与える要因を解明する必要がある。. 集団創造性に与える影響についても検討した.同じ教示を. また,外部から与えた刺激が集団創造性を強く規定する. していても,同じ集団過程が進行されることは少ない.他. のか,集団の内部で生じる集団過程が集団創造性を強く規. の集団成員の発言を促すような発言が見られた集団という. 定するのかについても今後の検討課題である。. のは,そのような発言が見られなかった集団より誤答数が 少なかった.積極的に発言をしない成員が正答へと導くと. 主要引用文献 Felix C. B., Rudolf K., Andreas M., Dieter F., & Stefan S.. いうこともあり,また,他の成員へ発言を求めることが誤 った解答を修正していくきっかけになったと推測される.. 2002. The. dissemination. of. critical,. unshared. 話し合いが終了し,リーダーが存在していたと答えた集団. information in decision-making groups: the effects of. と,いないと答えた集団との正答数に違いが見られた.リ. pre-discussion dissent. European Journal of Social. ーダーが誤った答えを修正するように導いていたと考えら. Psychology, 32, 35-56. 三浦麻子、飛田 操 2002 集団が創造的であるためには. れる.. !集団創造性に対する成員のアイディアの多様性と類似. 本研究では,課題葛藤刺激と集団創造性,課題葛藤刺激. 性の影響! 実験社会心理学研究,41,124-136.. と集団過程,集団過程と集団創造性のそれぞれの関係につ いて検討した.課題葛藤は集団創造性に影響を与える要因. Paulus, P. B. 2000 Groups, teams, and creativity: The. の一つであるが,集団過程を経た結果である.集団を構成. creative potential of idea-generating groups. Applied. している集団成員の人格や所属,認知などが複雑に絡み合. Psychology: An International Review, 49, 237-262.. って集団過程は進行する.どのような集団過程を経た集団. Paulus, P. B., & Dzindolet, M. T. 1993 Social influence. が集団創造性を発揮するかについて,今後詳細に検討して. processes in group brainstorming. Journal of. いく必要がある.. Personality and Social Psychology, 64, 575-586.. 本実験では,個人要因と集団要因についての詳細な検討 が十分でなかった.近年,集団研究において個人と集団に 関する階層的な分析が可能になりつつある.今後は,その ような分析も行いながら,個人が集団に与える影響,集団. 4.

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