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李艳泽 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成23年2月

李艳泽 学位論文審査要旨

主 査 佐 藤 建 三 副主査 汐 田 剛 史 同 押 村 光 雄

主論文

SIRT2 down-regulation in HeLa can induce p53 accumulation via p38 MAPK activation-dependent p300 decrease, eventually leading to apoptosis

(SIRT2発現低下によるp53依存性細胞死誘導とその機序)

(著者:李艳泽、松森はるか、中山祐二、尾崎充彦、小島裕正、栗政明弘、井藤久雄、

森誠一、加藤基伸、押村光雄、井上敏昭)

平成23年 Genes to Cells 16巻 34頁~45頁

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学 位 論 文 要 旨

SIRT2 down-regulation in HeLa can induce p53 accumulation via p38 MAPK activation-dependent p300 decrease, eventually leading to apoptosis

(SIRT2発現低下によるp53依存性細胞死誘導とその機序)

Sirtuin 2 (SIRT2)はNAD+依存性脱アセチル化酵素であり、これまでにSIRT2が紡錘体チ ェックポイントを制御することが報告されている。本研究ではSIRT2の新しい機能として、

癌細胞の生存に果たしていることを見いだした。具体的にはsiRNAによりSIRT2の発現を抑 制することで、p38 MAPK活性化がおこり、p300のリン酸化による蛋白分解、それに伴うMDM2

(murine double minute 2)の不安定化が複合的に起こる結果、p53が蓄積し、caspase-3 活性化を伴う細胞死が誘導されることが示された。正常細胞ではこの細胞死は起こらない ことから、SIRT2は癌治療の標的になる。SIRTファミリーの中でもっともよく解析が進んで いるSIRT1はp53を直接脱アセチル化し不安定化させることから、その阻害剤はp53のアセチ ル亢進および安定化をもたらすことから抗癌剤として着目されている。それに対し、本研 究ではSIRT2阻害はSIRT1阻害とは別の経路でp53を蓄積させることを示しており、SIRT2は SIRT1と同様、癌治療の一つの標的であることを意味する。

方 法

HeLa細胞、不死化間葉系幹細胞とその他の8種のヒト癌細胞株、および正常線維芽細胞株 TIG-1を用い、siRNAでSIRT2をノックダウンし、コロニーフォーメーションアッセイ、MTT

(3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide)アッセイ、FACS 解析(fluorescence activated cell sorting)で細胞増殖に対する効果を調べた。 同様 にAnnexin V-FITC Apoptosis Detection Kitによるフローサイトメトリーでアポトーシス の割合を解析した。SIRT2ノックダウンによる増殖抑制、アポトーシス誘導がもっとも顕著 であったHeLa細胞を用いて、アポトーシス誘導機序をp53制御経路に着目し解析した。この 制御経路を構成する蛋白分子群(p53,アセチル化p53、リン酸化p53、p38MAPK

(mitogen-actiated protein kinase)、p300、p21、MDM2)についてその量的変化、活性 化のレベルをウエスタンブロットで解析した。p38 MAPK阻害剤としてはSB203580を用い、

その他の分子の発現抑制はsiRNAのトランスフェクションにより行った。

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3 結 果

SIRT2 siRNA導入することによって、正常線維芽細胞株では細胞増殖の変化が見られなか ったが、10種のヒトの癌細胞株のうち、5種の細胞株の増殖が抑制されたことを観察できた。

これはgenotypeとして正常p53を保持する細胞株では細胞増殖が抑制され、一方そうでない 細胞では効果がないという傾向が認められた。以後の実験では効果がもっとも顕著であっ たHeLa細胞(genotypeとして野性型p53を保持する)を用いて、その増殖抑制の機構を解析 した。この増殖抑制は細胞周期によるものではなく、アポトーシスによって引き起こされ ているものであった。SIRT2 siRNAを導入して24時間内で、p53とp21が蓄積し、caspase-3 の活性化されることによってアポトーシスが起きており、このアポトーシス誘導はp53依存 的であることを確認した。p53の蓄積の機構については、p53のリン酸化とアセチル化の変 化が全く観察できなかったことから、p53の不安定化にも働くp300の分解であるという可能 性を検討し、p53蓄積の少なくとも一部はp300の分解により起きていることであることを証 明した。p300の分解誘導についてはSIRT2 siRNA導入後の初期に認められるp38 MAPKの活性 化によるものであり、p38 MAPKが直接p300をリン酸化、そして不安定化させるためである ことを示した。

考 察

SIRT2はSIRT1-7からなる脱アセチル化酵素SIRTファミリー蛋白である。この中でもっと もよく解析が進んでいるSIRT1は直接p53を脱アセチル化することで不安定化する。SIRT1 の阻害剤はp53蓄積を誘導することから抗癌薬として着目されている。今回の結果では SIRT2もSIRT1と同様に、その抑制によりp53依存的に細胞死を誘導するが、p53蓄積の機構 は両者で全く異なることが分かった。このことはSIRT2がSIRT1と同様に癌治療標的分子と なることを示し、p38 MAPK-p300経路を標的とする新たな癌治療戦略を提示している。この 経路におけるSIRT2の基質は未だ不明であり、これを明らかにすることは、p53制御の新た な機構を提示し、またこの機構に基づく制癌のために重要となる。

結 論

この研究では、SIRT2を抑制することによって、p38 MAPKの活性化、とそれに依存するp300 の分解を介してHeLa細胞の中でp53依存的にアポトーシスを引き起こすことがわかった。一 方、正常細胞ではアポトーシスが観察されなかったことから、SIRT2は癌治療のための新し い標的として期待できる。

参照

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