博 士 ( 医 学 ) 山 下 健 一 郎
学 位 論 文 題 名
Establishment oarぬaryCmtureof&カ 励Dc卯c郷 鰍髭洳c甜 切蠢&m血m&usI
(多包性 エキノコックスgerminal cellの初代培養法の確立)
学位論文内容の要旨
|.目的
多包性肝エキノコックス症は′∴ mu/c´Iocu IN‑ i,s感染に,よる寄生虫症であるが、進行例で は 肝 周囲 組 織 浸潤 や 遠 隔 臓器 転 移 を来し、 悪性腫 瘍と同様 の病態を 呈する ことで知 られて いろ,、本症ぴ)こび)病態ilt、エキノコックス病巣内のgcrminal cellが強く関与しており、こ れ が 血行 性 、 リン バ 行 性 に遠 隔 臓 器に到達 して増 殖・分化 し転移巣 を形成 すると考 えられ てい る,、 本症の病 態解明 やさらな る研究・ 実験のために、germinal ccll培養の確立が必須 であ るが、 未だ実用 的な培養系はない, 今回、gcrmintil cellの初代培養系を確立すろため に、 細胞を (Jishなどび,底面に接着(足場細胞)させて行う従来の培養法を変えて、新たに 非足 場細胞 に着目し て浮遊 培養を行 った‥さ らに、 本症が寒 冷地に 〃)み蔓延する特性を考 慮 し てgcrmiMlcellの 低 温 培 養 を行 い 、 細胞 の 低 温に 対 す ろ抵 抗 性 の 有無 を 検 討し た ‥
II.方法
|.細胞〃)分離:コットンラット(.s'igmo′川7ん´sp´m′s)腹腔内で継代培養されたヒトエキノ コックス病巣を細切し().25%卜リーノシンで6()分間処理した後に消化物を濾過・遠心分離し てRcrmiMlcL、llの分画を抽出した‥
2.細胞培養:25cm び)コラーゲンコートされたフラスコを計1()個用意し、各フラスコ内に 培養液lt| Ml161(H・1()%ウシ胎児血清゛1mlを入れgcrmimIlccIlを8x|() 個播種した‥培 養 条 件 は25ま た は :j7・ じ 、5%C( )2で あ り 、 ′ | 週 間 び ) 浮 遊 培 養 を 行 っ た ,
:j.検討項目:培養期間中び,足場(接着)・非足場(浮遊)細胞を経.日的に光学および位相 差顕微 鏡を用い て形態学的観察を行った‥・.また、培養細胞がgcrminalce11であることを確 認する ため、培 養1日 目f′)非足場細胞を電子顕微鏡で観察した‥フラスコ内び)非足場細胞 の数とそび)viilI)iliLyを、細胞播種日および培養1、3、5、7、H、2()、28日目に検討した‥
細胞数 は培養液 ().lml中に 含まれろ 細胞に 免疫染色を施し陽性細胞数により算出した‥抗 体 と し て 多 包 性 工 キ ノ コ ッ ク ス の 原 頭 節 を 兎 に 投 与 し 得 ら れ た 抗 血 清 を 用 い た ‥ vinhilit,yはM,rT州Myにより評価した‥足場細胞にっいてそ)培養最終日に免疫染色を行つ た,、
′I.´〃y´…実験:培養細胞が実際にエキノコックス病巣に分化するか否かを確認すろため、
細胞播種日および培養:j、7、l一rI、28日目ぴJツラスコ内に含まれる非足場細胞を等張緩衝液 で1回洗浄した後、8週齢雄性スナネズミ(MU´.′川川sMぱ ´洲/nc{′s)の腹腔内に投与し、8週 後に動物を犠牲死させて病巣形成ぴ,有無を検索した.,また、病巣を川tおよびI AS染色を行っ て病理組織学的に検討した‥
5. 実 験 結 果 〃 ) 再 現 性 を 確 認 す る た め に 、 同 様 ″ ) 実 験 を 計 2回 行 っ た ‥ 111.結果
l.培養細胞び)形態学・生物学的特徴:抽出・播種した細胞は、電子頭微鏡観察上形態学的
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に比較的大きな核と数個び)核小体を持っ長径2一:j Umの楕円形細胞であった.,また、培養 非足場細胞は免疫染色で赤色に染まり陽性を呈し た 光学わよび位相差顕徽鏡の観察では、
培養温度びj違いによる非足場細胞び)形態や増殖に差を認めなかった‥足場細胞は、:j7 じの 培養で急速に増殖し培養;j週日にソラスコがc(}nrlucnLとなったが、この細胞の90%以上が 線維芽細胞様であり免疫染色でヰ)陰性であった ,しかし、 25 じで培養したものは細胞増殖 が 不 良 で あ っ た が 線 維 芽 細 胞 様 の 細 胞 増 殖 は な く、 免疫 染色 で もす ぺて 陽性 であ った ‥
2
.非足場細胞の数とvi
ぞIhili t,y:細胞数は培養:j日目に1フラスコ当り約9x10 個まで増加し たが、以後は漸減して1週目にfユ約(xl
() 個となった‥また、培養7日目まで80%以上を保っ て い たvi
;lhiliLyl
よ そ の 後 低 下 し 、 培 養 最 終 日に は約 川% で あっ た, ,細 胞数 およ びvif
、hility
に培養温度による差を認めなかった,.:j.´′´レ/ v実験:培養7日目までの非足場細胞は、実験動物び)腹腔内および肝表面でヰ)病巣 を 形 成 し た ‥ し か し 、培 養日 数H日 以後 の細 胞を 投与 した 動物 に 病巣 を認 めな かっ た‥ 形 成さ れた 病巣 はす べて 病理 組織 学的に!'AS染色陽性のクチクラ層 を外層とするcysLを多数認 め、 一部 には 原頭 節そ )存 在し 、典型的な多包性工キノコックス の像を呈した‥病巣の形成 オjよび病理組織f象に培養温度による差を認めなかった‥
IV.
考察従来び,多包性エキノョックスgcrminそ`lcし、lIの培養法は足場細胞の)み着目しており、以 下の問題点を含んでいたため実用的な培養法は確立されていなかった.、即ち、I)′〃y′ t,ro にお ける 細胞 び) 増殖 が不 良で ある こと 、2)宿主の細胞が混入・増殖して しまうこと、3) 培養 細胞 が真 にエ キノ コッ クス 由来 なの かど うか の 確認 が不 十分 なこと、
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)培養細胞によ ろi〃vivocD
病巣 形成 が 不明 確で ある こと が問 題で あっ た‥ 今回 、新 たに非足場細胞に着目 して浮遊培養を行ったことより、これらのすべてび) 問題を解決することが可能であった.、本 浮遊 培養 法で は、 細胞 増 殖を 待っ こと なく 簡便 に大 量の 細胞 を実 験等 に使 用す る こと が で きろ .ま た、 播種 した 細 胞の 電子 顕微 鏡に よる 形態 学的 特徴 骸過 去に 報告 され て いる
gcrminalc
し、llびJヰ)のと一致しており、免疫学的にも多包性エキノコックスのg
しゝrmlnれ1 ccll
で あ る こ と を 確 認 し た ‥ こ れ ら の こ と よ り 、 上 述 の1
) と2
) の 問 題 を 解 決 し た ‥germinal
い11
が25
じの低温においてヰ)培養可能 であり、しかヰ)、37‥C
培養と同様の細 胞数 とviabiliI,yを維持して実験動物内に病巣 を形成したことは生物学的にも重要な特徴と 考え られ る, 文献 的に ラッ トの 上皮 細胞 は26‥ じの低温下で培養すると数日中に死滅すると 報告されており、通常、´ レifH,におけろ哺乳類細胞fユ低温に対して抵抗性が低いとされ てい7
が 、今 回、germinal cell
が低 温下 にお いて も充 分に 培養 が可 能であったことは新知 見であろ.,.また、これらぴ,生物学的特性から、25′じび)低温培養では宿主由来とゎ)れる線 維 芽 様 細 胞 が 排 除 さ れ 、 純 粋 なgcr‑minal cc
|1
の 培 養 が 可 能 に な っ た と 考 え ら れ た ‥培養7日目宅でu)細胞ぬ′打レiyf堪こおいてエキノコックス病巣に分化することを証明した . しか し、
lI
日 目以 降f/,ヰ ]び ,は 病巣 を形成 しなかった,.これは、培養細胞の数およびvf
;Lhilft y
の 推移と密接に関連し、とくにH日目以降の培養細胞のviahiliLyがの低下(約60
%)が病巣を形成しなかった主因と考えられた..本 実験 結果 より 、浮 遊培 養法 は´ 〃レ ′
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に おける多包性エキノコックス症の病態の解析 や 抗 エキ ノコ ック ス剤 のス ク リー ニン グ等 の研 究お ょび 試験 に応 用可 能で あり 、ひ い ては 本症患者びJ治療に寄与す るヰ)のと考えられる.,今後、培養細胞のviahitiLy低下の問題を解 決することができj1,ば、gcrminalcし、Ilの恒久的なcclI iincを確立することができるヰ)び)と考え7J.、
V
.結 語1
. 浮 遊 培 養 に ょ る 多 包 性 エ キ ノ コ ッ ク スgcrminctl cell
の 初 代 培 養 法 を 確 立 し た ‥2
. 本 細 胞 は25
じ の 低 温 に わ い て モ ) :j7
じ と 同 等 に 培 養 可 能 で あ っ た , 、:
j
.低温 培養では宿主由来r/)細胞が排除され、純粋なgcrminfll cellの培養が可能であったI
. 培 養7
日 目 キ で び ) 細 胞 |1 in vivo
で エ キ ノ コ ッ ク ス 病 巣 を 形 成 し た ‥ー 324 ‑
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Establismentofa・rnlaIIyC血ureof& カ励wDcc郷 鰍MDc 觚蝕rlこni刪&聡
( 多包性エ キノコックスgerminal cellの初代培養法の確立)
多包性肝エキノコックス症は進行例において肝周囲組織浸潤や遠隔臓器転移を来し、悪性腫瘍と 同様の病態を呈する寄生虫疾患である。この病態は、エキノコックス病巣内のgerminal cellが血 行・リンバ行性に散布し惹起されると考えられている。本症の病態解明や更なる研究にはgerminal cell培養法の確立が必要であるが未だ実用的な培養系はない。そこで申請者はgerminal cell初代培 養系を確立するため、細胞を培養器の底面に接着させる従来の培養法に変えて、新たに浮遊培養法 を考案しこれを行った。また、従来から本細胞培養時における問題のーつであった宿主細胞増殖の 解決を意図して低温培養を行い、同時にgerminal cellの低温に対する抵抗性を検討した。さらに、
培養細胞のin vivoにおける病巣形成の再現性を検討した。コットンラット腹腔内で継代培養され たヒ卜エキノコックス病巣を細切しトリプシン処理した後、消化物を濾過・遠心分離してgerminal cellの分画を抽出した。25 CITl2コラーゲンコートフラスコ内に培養液RPMI 1640十10%ウシ胎児 血清4 mlを入れ細胞を8x107個播種し、25または37℃で4週間浮遊培養した。培養期間中の接 着(足場)および浮遊(非足場)細胞を経目的に光学・位相差顕微鏡を用いて形態学的観察を行っ た。また、培養細胞を同定するため播種細胞を電子顕微鏡で観察した。フラスコ内の浮遊細胞の数 とそのviabiliけを、培養0、1、3、5、7、14、20、28日目に検討した。細胞数は免疫染色陽性細 胞数により算出し、その抗体には多包性工キノコックス原頭節を兎に投与し得られた抗血清を用い た。viabilityはMITassavにより評価した。さらに、培養細胞がェキノコックス病巣に分化する か否かを確認するため、培養0、3、7、14、28日目のフラスコ内に含まれる浮遊細胞をスナネズ ミ腹腔内に投与して8週後に病巣形成の有無を検索し、病巣をHE、PAS染色にて組織学的に検討 した。培養浮遊細胞は免疫染色で赤染し陽性を呈した。電子顕微鏡観察で細胞は、比較的大きな核 と数個の核小体を持つ長径約3岬の楕円形細胞であり、免疫・形態学的にgerminむce11と確認さ れた。光学・位相差顕微鏡観察では、浮遊細胞の形態や増殖に培養温度よる差を認めなかった。し かし、接着細胞については37℃培養で増殖した細胞のほとんどが宿主由来の線維芽細胞であった のに対し、25℃ではこれら細胞の増殖を認めなかった。浮遊細胞の数は培養3日目に1フラスコ −325―
省之 紀 紘知 堂藤 川 藤加 皆 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
当り約9x10 個まで増加したが、以後は漸減して28日目には約6x10 個となった。また、培養7 日目まで80%以上を保っていたviabilityはその後低下した。細胞数およびviabilityに培養温度に よる差を認めなかった。培養0、3、7日の浮遊細胞は実験動物腹腔内および肝表面で病巣を形成し た。しかし、培養14、28日の細胞を投与した動物に病巣を認めなかった。病巣はすべて組織学的 に典型的な多包性エキノコックスの像を呈した。
審査に当たり、皆川教授よりgerminal cellの純度およびin vivoにおける病巣形成と投与培養細 胞数の関係について質問があった。これに対し申請者はDieckmannらの方法に準じて高純度の細 胞を抽出していること、病巣形成はviableな細胞の数と密接に関連しており、これに必要な最小細 胞数は不明であるが教室の過去の報告でもl07のオーダーで投与していることなど概ね妥当に答え た。ついで、加藤教授より本培養法の臨床的用途について質問があり、申請者は新薬開発に有用で ある可能性を述べた。さらに、藤堂教授より現在臨床的に使用されている抗エキノコックス剤とそ の実験的評価法および期間に関する質問があった。これに対し、申請者はヌベンダゾールとアルベ ンダゾールの薬剤名を挙げ、感染ラットおよび培養原頭節を用いたニつの評価法があり、その評価 期間は約1力月であると解答した。また、本培養法における7日目以降の培養細胞について改善策 を質問され、肝抽出物を培地に添加することや肝細胞との混合培養の可能性を答えた。最後に、フ ロア ーの細川 教授より37℃と25℃の何れの培養温度が宜しいのかとの質問があり、申請者は germinal cellの生物学的研究には25℃が適している理由を解答した。
浮遊培養によるgerminal cellの初代培養系を確立し、これはgerminal celllineを樹立する端緒 になると共に、基礎・臨床研究に貢献し本症の病態解明と治療に寄与すると期待されるものである。
審査員一同はこれらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり申請者が博士(医 学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判断した。