博 士 ( 獣 医 学 ) 中 川 紀 子
学 位 論 文 題 名
ウ シ 肝 細 胞 の 初 代 培 養 法 の 確 立 と そ れ を 用 いた ノく プ トグ ロビ ン と
C ― 反 応 性 夕 ン ノ ヾ ク 質 の 合 成 調 節 機 構 の 解 析
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
急性 相 タ ンパ ク 質は 、 生 体に感染 症や炎症 がおこると 血中レベ ルが急激 に増 カ‖ する一群 のタンパ ク質の総 称である 。その血中レベルの変勁については、従 来 、m胃 勁物 で 主に 調 べ られ て き たが 、 私に よ る 大き な 迎いは 認められ なぃ。
しか し、反榔 勁物の急 性相タン パク質の 血1やレベル の変勁に ついては 、単胃勁 物とは興なる例がぃくっか報告されており、反御勁物の肝亅職での急´v‑l:相タンパ ク質 の合成船 よび分泌 には、他の勁物とはぅ ̄4なる特有の機榊が存往することを 示 唆 して い る 。本 研 究で は 、ウシ の急性相 タンパク質 の肝臓で の合成調 節機構 を| 蜘らかに すること を目的と し、1)そ の実験系と して概め て有効で あるウシ 肝iIl胞 の分離と 培養法を 榊f立する とともに 培養細胞の生化学的性状を明らかに し 、2)1)で 砿 立 した 系 を 用い て 、特 に 単 胃動 物 とは 異 な ルウ シ 特有 の 血 中 レ ベ ルの 変 勁 が認 め られ る 、 ハプ ト グロ ビ ン (FIp) (炎 症時に 急激に増 加す る) とC‑反応性 タンパク 質(CRP)( 泌乳量に 応じて上曽)JIIする)の 合成調節 について解析し、以下の知見を得た。
1)ウシ肝荊naを分離、培養し、代謝特´にl三を細ぺた。肝細胞は、ウシ肝J懺の 尾 状槃 に0.25 mMエ チ レ ングリ コールピ ス(2‐アミ ノエチル エーテル )四酢酸 と0.05%コ ラ ゲナ ー ゼ を滋 流 して 分 離 した 。 細 胞の 生 存率は70‑93% で、収量 は0.1‑3.6xl07個/g肝臓だった。
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分 離 肝 細 胞 を ウ ィ リ ア ム スE培 地 で 培 養 した とこ ろ、3時 間後 に伸展 が始 ま り 、24時 間 後 には 単層 を形 成し 、こ の単層 は6日問 維持 され た。 肝特異 的な 代 謝機能のーつであるアルブミンの合成および分泌について、細胞を[ S].メ チ オニ ン存 在下 で培 養しそ の上 清を 免疫 沈降 して 分析 した ところ、合成および 分 泌は 分離 直後 の肝 細胞で は低 かっ たが 培養1‑3日後に は増 加し6日後には再び 減 少 し た 。 一 方 、 ア ル ブ ミ ン のmRNAレ ベル は 、 分 離 直 後 か ら 培 養 後3日 目 ま で 同程 度に 維持 され ていた 。し たがって、分離直後の細胞では翻訳以I絳の機能 が 低下 して おり 、培 養する こと によ りそ の機 能が 回復 した ことが示された。さ らに、エピネフリンによって活v!化されるグリコーゲン分鰤を、塒槌上ぬ|fl||に 放 出さ れる グル コー ス量で 調べ たと ころ 、ア ルブ ミン の合 成および分泌と同様 に 、分 離直 後に 比べ て培養1‐3日後に増加したが6日後には減少した。このよう に 、分 離し た肝 細胞 を培養 する と、 肝特 異的 な機 能で ある アルブミンの合成能 と グリ コー ゲン 分解 能が、 数日 間保 持さ れて おり 、こ の実 験系はウシの肝機能 を細胞、分子レベルで研究するのに有用と考えられる。
2) 反 芻 動 物の 肝臓 での 急性 相タ ンパ ク質 の合成 調節 にう ぃて 、他 の動 物と は 異 な る 特 有 の機 構 を 解 明 す る た め 、 ウ シ 初 代 培 養 肝 細 胞 を 用 い てHpとCRP の 合 成 に つ いて 、イン ター ロイ キン (IL) ‑lt3、IL‑6、臓 瘍域 死因 子(TNF) ‑ Q、 グ ル コ コ ル チ コ イ ド 、 お よ び プ ロ ラ クチ ン(PR L)の効 果を 調ぺ た。 肝細 胞 を 各 因 子 で 刺 激 後 、 タ ン パ ク 質 の 合 成 お よび 分 泌 量 とmRNAレ ベ ル を 免 疫 沈 降 法 と ノ ーザ ンブロ ツ卜 法で それ ぞれ 分析 した 。Hpの合 成お よび 分泌 はIL‑
6とTN F‑aに よ り 増 加 し た が 、IL‑lt3で は 効果 は な か っ た 。 こ れ ら はmRNAレ ベルの変化とパラレルなので、ゴこに翻駅IJH調節の効凩と考えられる。また、デ キ サ メ サ ゾ ン はウ シHpの 合 成 お よ び 分 泌 に 対する サイ トカ イン の作 用を 増強 さ せ な か っ た 。CRPのmRNAレ ベ ル もIL‑6とTNF‑aに よ り 増 加 し た が 、IL‑
ipで は 変 化 せ ず、Hpの 合 成 調 節 と 同 様 の 結 果が得 られ た。 これ らの 結果 は、
他 の 動 物 種 の 急性 相 タ ン パ ク 質 合 成 に お ぃ て、TNF‑aと11‑1Bは 共通 した 伝達
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経路により作用するという報告とは一致しなぃ。さらに、従来、急性相タンパ ク 質合成調節 については 報告がなか ったPRL に よっても、
HpとCRP の合成が 誘 導された。 したがって、これらの結果は、ウシHp およびCRP の遺伝子の転 写 調 節 に は ウ シ 特 有 の 情 報 伝 達 経 路が 存 在す る こと を 示唆 し てい る 。
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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査 教授,斉藤昌之
副査 教授 藤田正一 副査 教授 藤永 徹
副査 教授 首藤文栄(岩手大学農学部)
学 位 論 文 題 名
ウ シ 肝 細 胞 の 初 代培 養法 の確 立 と そ れ を 用 い た パ プト グロ ビン と
C ー 反 応 性 夕 ン パ ク 質 の 合 成 調 節 機 構 の 解 析
急 ´H: キ ロ タ ン パ ク質 は 、 感染 や 炎 症に 伴 っ て血 巾 レ ベル が 急 激 に増 加 す る 一 群 の タ ン パ ク 質 の 総 称 で あ る 。 本 研 究 で は 、 ウ シ の 急 性 相 タ ン パ ク 質 の 肝 臓 で の 合 成 調 節 機 織 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し 、1) ウ シ 肝 細 胞 の 分 離 と 初 代 培 養 法 を 硫 立 し 、2) こ れ を 用 い て 、 ウ シ 特 有 の 血 中 勁 態 が み られるハプトグロビン(I・IIつ,炎j正|1むに急激に1¥y/カ‖する)とC‑反応悩:タンパ ク 質(CRI ,泌 乳,蹴に 応じてL¥‑Yカ‖する )の合 成調節に ついて 解析し、以下の 如|見を得た。
1) ウ シ 肝 臓 の 尾 状 葉 に エ チ レ ン グ リ コ ー ル ピ ス (2‑ア ミ ノ エ チ ル エ ー テ ル ) 四 酢 酸 と コ ラ ゲ ナ ー ゼ を 湘 流 し て 肝 細 胞 を 分 離 し 、 ウ ィ リ ア ム スE培 地 で 培 養 し た と こ ろ 、3時闇 後 に ゛い 展 が 始ま り 、24時 間 後に は 単 層 を形 成 し 、 こ のm周 は6日 「 朋 維 持 さ れ た 。 肝 特 異 的 な 代 謝 機 能 の ー つ で あ る ア ル ブ ミ ン の 合 成 お よ び 分 泌 に つ い て、 細 胞 を[ ° S] ‐ メ チオ ニ ン 存在 下 で 培 養し 、 そ の 上itを 免 疫 沈 降 し て 分 析 し た と こ ろ 、 分 離 直 後 の 肝 細 胞 で は 低 か っ た が 培 養1‑3日 後 に はL¥Y1カ ‖ し6口 後 に は 再 び 減 少 し た 。 一 方 、 ア ル ブ ミ ン の mRN八 レ ベ ル は 、 分 離 面 後 か ら 培 養 後3日 目 ま で 同 程 度 に 維 持 さ れ て い た 。 ―884―
し たが って 、分 離ぬ後の細|胞では翻訳以I絳の機能が低下して韜り、培凝す る こ と に よ り そ の 機 能 が 回 復し たこ とが 示さ れた 。さ らに 、エ ピネフ リン に よ っ て 活 性 化 さ れ る グ リ コー ゲン 分解 反応 を調 べた とこ ろ、 アルブ ミン の 合成 およ び分 泌と 同様 に、 培養1‑3日 後に 増加したが6日後には減少した。
こ の よ う に 、 分 離 し た 肝 細 胞を 培養 する と、 肝特 異的 な機 能が 、数日 問保 持 さ れ て お り 、 こ の 実 験 系 がウ シの 肝機 能の 細胞 、分 子レ ベル での研 究に 有用であることが明らかとなった。
2) ウ シ 初 代 培 養肝 細 胞 を 門Jい て 、HpとCRPの 合 成 に 対 する インタ ーロ イ キン (IL) ‑if3、IL‑6、腫 瘍壊 死因子(TNF) ‑a,、 グル ココ ルチコ イド 、 お よ び プ ロ ラ ク チ ン (PRL)の 効 果 に つ い て 、 各 々 の タン パ ク 質 の 合 成 お よ び 分 泌 量 とmRNAレ ベ ル の 測 定 に よ り 分 析 し た 。Hpの合 成 お よ び 分 泌 は IL‑6とTNF‑aに よ り増 加 し . ナ こが 、11‑1pで は効 果は なか った 。これ らは mRNAレ ベ ル の 変 化 と パ ラ レ ル な の で 、 主 に 翻 訳 前 調 節の 効 果 と 考 え ら れ た 。 ま た 、 こ れ ら の サ イ ト カイ ンの 作用 に対 して デキ サメ サゾ ンは影 響を 与 え な か っ た 。CRPのmRNAレ ベ ル もIL‑6とTNF‑aに よ り 士 曽 加 し た が 、 IL.‑1pでは変化しなかった。これらの成緞は、他の勁物稀の急ヤI:罰.lタンパク 質 合成 にお いてTNF‑aとIL‑1{3は共 通し た伝 達経 路に より 作用 すると ぃう 報 告 と は 一 致 し な ぃ 。 さ ら に 、 従 来 、 知 見 が な かっ たPRLに よっ ても、Hpと CRPの 合 成 が 誘 導 さ れ た 。こ れ ら 全 て の 結 果 は 、 ウ シHpお よ びCRPの 遺 伝 子 の転 写調 節に はウ シ特 有の 情報 伝達経 路が 存在することを示唆している。
以上 のよ うに 本論 文は 、ウ シ肝 細胞 の初代培養法を用いて、急性相タン パ ク質 の新 しい 合成 調節 様式 を明 らか にしており、ウシ特有の生体防御機 構 の解 明に 寄与 する もの であ る。 よっ て審査員一同は、中川紀子氏が博士
( 獣 医 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。
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