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吹雪時の視程推定手法とその活用に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 松 澤 学 位 論 文 題 名

吹雪時の視程推定手法とその活用に関する研究 学位論文内容の要旨

  吹雪 による 視程障 害は冬 期道路 の安全性を脅かし,時には多重事故の誘因となる。このため,

吹雪 による 視程障 害対策 は積雪 寒冷地に おいて は重要 な課題 である 。とこ ろで,吹雪による視 程障 害は空 間的, 時間的 にも変 動が大き い。従 って, 吹雪情 報をド ライバ ーに提供することで ドライバーが吹雪を回避する行動をとることが可能となり,冬期道路の安全性や安´己丶感を向上 させ るのに 有効と 考えら れる。 しかし, 視程の 情報は ,峠な ど一部 の地点 に視程計が設置され てい るだけ で,現 時点で は,吹 雪時の視 程を簡 易に広 域で現 況把握 ・予測 する汎用的な方法・

技術 は明ら かにさ れてい なぃ。 このため ,吹雪 情報を 提供す ること による 冬期道路の安全性や 安心 感を向 上の可 能性に ついて 示された 研究は 存在し なぃ。 そこで ,本研 究は,容易に入手で きる 気象デ ータか ら吹雪 時の視 程を推定 する手 法の開 発を行 い,そ の手法 を活用して広域での 吹雪 情報( 視程情 報)を 提供す るシステ ムを試 作し, 実際に ドライ バーに 吹雪情報を提供し,

冬期道路の安全性や安心感の向上について調査を行った。

  第1章「 序 論」で は,上 に示し たよう な,研 究の背 景およ び,既 存研究に おける 視程把 握方 法について整理し,吹雪対策における本研究の位置づけを記した。

  第2章「 吹 雪の物 理モデ ル」で は,ま ず,乱 流拡散 係数を 高さの 関数で与 えて乱 流拡散 方程 式 の 一般 解 を 解 くこ と で , 初め て 降 雪を伴 う吹雪 時の飛雪 空間密 度の垂 直分布 式を導 いた。

  従来 ,降雪 のなぃ 吹雪時 (地吹 雪)に は乱流 拡散理論 が適用 され, 塩谷の 式で知られる飛雪 空間 密度の 垂直分 布式が 成り立 っことが 知られ ていた 。しか し,し かし, 降雪を伴う吹雪時の 飛雪 空間密 度の垂 直分布 につい ては,乱 流拡散 方程式 を解い た研究 はあっ たが,乱流拡散係数 を 高 さに よ らず 一定と おいた ため, 降雪強 度を限り なく0に 近づけ たとき に塩谷 の式と の連続 性が 失われ るとい う問題 があっ た。そこ で,著 者は, 塩谷と 同様に ,乱流 拡散係数を高さの関 数で 与えて 乱流拡 散方程 式の一 般解を解 くこと で,塩 谷の式 を包含 する飛 雪空間密度の垂直分 布式 (竹内 ・松沢 の式) を初め て導いた 。さら に,浮 遊粒子 の落下 速度と 降雪粒子の落下速度 を 分 け て , こ の 垂 直 分 布 式 を 改 良 し た 松 沢 ・ 竹 内 の 式 ( 式(2. め ) を 導 い た 。

,:±ヤ,,・寺〕に〕・訣     wf  M

ここで,

ル:飛雪空間密度[g/m3],P:降雪強度[g/ (m2s)],Wb:浮遊粒子の落下速度[m/s],り:降雪粒子 の落下速度[m/s],み:基準となる高さ[m],堪:ゑでの飛雪空間密度[g/m3],ロ:摩擦速度[m/s], 々:カルマン定数

である。

  第3章 「気 象条件 による 吹雪時 の視程推 定手法 の理論 」では ,吹雪 時の視 程を推 定する 手法 を明らかにした。

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(2)

  ま ず, 飛 雪流 量と 視程 の関係式 の改良を行った。竹内と福沢 による従来の式では,視程 の悪 い領域で実測値との 誤差が大きくなった点を改良 し,視程の悪い領域で誤差が小さい関係式(式

(3.5 ))を示し た。

Vis = 10{‑0.77310g(N ‑V)+2.85}

ここで,Vis:視程[m],ル :飛雪空間密度[g/m3],レ :風速[m/s]

  っ ぎに ,容 易に 入 手で きる 気象 デ ータ から視程を 推定する手法を開発した。過 去にも気象と 視程 との 関係 式は 存 在し たが ,本 研 究の 手法は,物 理モデルを適用している点が 異なる。この 手法 の特 長は ,パ ラ メー タの 値の 変 更が 可能であり ,他の地域へもパラメータの 調整によって 適用 が可 能な 点に あ る。 また ,入 カ する 気象値に予 測値を用いることで,視程の 予測も可能に なる。具体的な視程推定手 法の手順は次の通りである。

◎式(2.7)の定数(未知 数)を定め,任意の高さzの 飛雪空間密度ルを求める。ここでは,既存 研究から,FYb=0.35 [m/s],Jvr1一2[m/s],zt=0.15 [m],Nc=30[g/捫,6P0.036協[ソs](協 は, 高さ10mの風 速)と与 えた。これらの定数と,降 雪強度を式(2.7)に用いて ルを求めた。

◎任 意の 高さzで の風速レ と,◎で求めた飛雪空間密 度ルを式(3.5,)に与える ことで視程が 得られる。

  第4章 「視 程推 定精 度の 評 価」 では ,視 程推 定 手法 の精 度に つ いて検討を行っ た。2002/03 冬期 で吹 雪の 発生 し た16日を 対象 に ,視 程を5階 級に 分け て視 程 推定値と視程実 測値の比較を 行っ た。10分 毎の デ ニタ に対 して は ,視 程推 定値 と視 程 実測 値と の適中率が3讎 ,広義の適中 率が71% ,見 逃し 率 が讎 とな った 。 また ,1時 間 毎の デー タに 対 しては,適中率 が38%,広義 の適 中率 が7囃, 見逃 し率 が 讎と なっ た。 また 視 程200m未 満を ー つのカテゴリー とすると,実 際 に 視 程200m未 満 の 状 態 が 発 生 し た81事 例 中70事 例 を適 中さ せ てい るこ とか ら, 視 程200m 未満 の状 態を 気象 条 件か ら推 定す る こと については ,かなり精度良く推定できる ことがわかっ た。また,ここで与えた定 数のうち,ゑでの飛雪空間密 度堪[g/m3]や摩擦速度ロ[m/s]と,高 さ10mの 風速 との 関係 式を 求 め, その 式を 用い る こと で,1時 間毎 のデ ータ に 対し ては ,適 中 率が52%,広義の適中率が79%となり,視程推定精度が 向上する可能性があること が示された。

  第5章 「吹 雪の 広域 情報 提 供シ ステ ムの 開発 」 では ,本 研究 で 明らかにした視 程推定手法に 基づ ぃて 広域 の視 程 情報 を作 成し , これ を含む吹雪 情報をドライバーに提供する システムを開 発し た。 シス テム に は,PCお よび 携 帯電 話のWeb上で の情 報提 供 と条件に応じた メールでの緊 急通知の機能を持たせた。

  第6章 .「 吹雪 情報が冬 期道路の安全性や安心感に 与える効果」では,吹雪情報 をドライバー に提 供す る実 験を 初 めて 行い 、冬 期 道路 の安全性や 安心感に与える効果を把握し た。本研究で 開発 した 視程 推定 手 法を 用い て作 成 した 視程情報を 含む吹雪情報をドライバーに 提供し,ドラ イバ ーが 情報 を受 け て吹 雪を 避け る よう な交通行動 の変更があることを,初めて 確認した。実 験に よる と, 吹雪 情 報を 受け とっ た ドラ イバ ーの6割 が, 情報 に よって交通行動 を変えたこと がわ かっ た。 また , 交通 行動 を変 え なく ても,安心 感が向上したと答えたドライ バーも多かっ た。 その 内容 とし て は, 出発 時間 の 変更 が最も多く ,次いで経路の変更であった 。また,交通 行動を変えなくても,安´ い感が向上したと答えたドラ イバーも多く,吹雪情報が 冬期道路の安 全性と安´己丶感の向上に 効果があることがわかった。また,吹雪情報を受け取ったドライバーに 吹雪 情報 の精 度に 対 する 満足 度を 尋 ねた とこ ろ, 現況 値 につ いて は約7讎のドラ イバーが「満 足」,「ほば満足」と回答 した。

  第7章 「結 論」 では ,以 上 の研 究を まと め, 筆 者が 開発 した 視 程推定手法は, 道路情報提供 にお ける 吹雪 時の 視 程推 定手 法と し て十 分利用可能 なものであり,視程情報を含 む吹雪情報の 提供は,吹雪対策の一方策 としてドライバーの安全性や安´己丶感の向上に有効であるという結論 を示した。

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学位論文審査の要旨

主査   教   授   佐藤馨一 副査   教   授   加賀屋誠一 副査   教   授   清水康行

副査   客員教授   西村浩一(低温科学研究所)

学 ・ 位 論 文 題 名

吹雪時の視程推定手法とその活用に関する研究

  吹雪 によ る視 程障 害 は冬 期道 路の 安 全性 を脅 かし ,時 に は多 重事 故の 誘因 と なる 。このた め,

吹 雪 に よ る 視 程 障 害 対 策 は 積 雪 寒 冷 地 にお い ては 重要 な課 題 であ る。 しか し, 視 程の 情報 は,

峠 な ど 一 部 の 地 点 に 視 程 計 が 設 置 さ れ てい る だけ で, 現時 点 では ,吹 雪時 の視 程 を簡 易に 広域 で 現 況 把 握 ・ 予 測 す る 汎 用 的 な 方 法 ・ 技術 は 明ら かに され て いな い。 この ため , 吹雪 情報 を提 供 す る こ と に よ る 冬 期 道 路 の 安 全 性 や 安心 感 を向 上の 可能 性 につ いて 示さ れた 研 究は 存在 しな い 。そ こで ,本 研究 は ,容 易に 入手 で きる 気象 デー タか ら 吹雪 時の 視程 を推 定 する 手法の開 発′

を 行 い , そ の 手 法 を 活 用 し て 広 域 で の 吹雪 情 報( 視程 情報 ) を提 供す るシ ステ ム を試 作し ,実 際 にド ライ バー に吹 雪 情報 を提 供し , 冬期 道路 の安 全性 や 安心 感の 向上 につ い て調 査を行っ た。

  第1章 「 序 論 」 で は , 上 に 示 し た よ う な , 研 究 の 背 景 お よ び , 既存 研究 にお け る視 程把 握方 法 につ いて 整理 し, 吹 雪対 策に おけ る 本研 究の 位置 づけ を 記し た。

  第2章 「 吹 雪 の 物 理 モ デ ル 」 で は , ま ず , 乱 流 拡 散 係 数 を 高 さ の関 数で 与え て 乱流 拡散 方程 式 の 一 般 解 を 解 く こ と で , 初 め て 降 雪 を伴 う 吹雪 時の 飛雪 空 間密 度の 垂直 分布 式 を導 いた 。従 来 , 降 雪 の な い 吹 雪 時 ( 地 吹 雪 ) に は 乱流 拡 散理 論が 適用 さ れ, 塩谷 の式 で知 ら れる 飛雪 空間 密 度 の 垂 直 分 布 式 が 成 り 立 っ こ と が 知 られ て いた 。し かし , しか し, 降雪 を伴 う 吹雪 時の 飛雪 空 間 密 度 の 垂 直 分 布 に つ い て は , 乱 流 拡散 方 程式 を解 いた 研 究は あっ たが ,乱 流 拡散 係数 を高 さ に よ ら ず 一 定 と お い た た め , 降 雪 強 度 を 限 り な くOに 近 づ け た とき に塩 谷の 式 との 連続 陸が 失 わ れ る と い う 問 題 が あ っ た 。 そ こ で ,著 者 は, 塩谷 と同 様 に, 乱流 拡散 係数 を 高さ の関 数で 与 え て 乱 流 拡 散 方 程 式 の 一 般 解 を 解 く こと で ,塩 谷の 式を 包 含す る飛 雪空 間密 度 の垂 直分 布式

( 竹 内 ・ 松 沢 の 式 ) を 初 め て 導 い た 。 さら に ,浮 遊粒 子の 落 下速 度と 降雪 粒子 の 落下 速度 を分 け て, この 垂直 分布 式 を改 良し た松 沢 ・竹 内の 式を 導い た 。

  第3章 「 気 象 条 件 に よ る 吹 雪 時 の 視 程 推 定 手 法 の 理 論 」 で は , 吹雪 時の 視程 を 推定 する 手法 を 明 ら か に し た 。 竹 内 と 福 沢 に よ る 従 来の 式 では ,視 程の 悪 い領 域で 実測 値と の 誤差 が大 きく な った 点を 改良 し, 視 程の 悪い 領域 で 誤差 が小 さい 関係 式 を示 した 。

ぬ= 10{‑0.77310g(N‑V)+2.85)

ここで,Vis:視程[m],ル:飛雪空間密度[g/m3],〆:風速[m/s]

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(4)

  っぎに,容易に入手できる気象データから視程を推定する手法を開発した。過去にも気象と 視程との関係式は存在したが,本研究の手法は,物理モデルを適用している点が異なる。この 手法の特長は,パラメータの値の変更が可能であり,他の地域へもパラメータの調整によって 適用が可能な点にある。また,入カする気象値に予測値を用いることで,視程の予測も可能に なる。

  第4章「視程推定精度の評価」では,視程推定手法の精度について検討を行った。2002/03 冬期で吹雪の発生した16日を対象に,視程を5階級に分けて視程推定値と視程実測値の比較を 行った。10分毎のデータに対しては,視程推定値と視程実測値との適中率が36%,広義の適中 率が71%,見逃し率が0%となった。また、視程200m未満をーつのカテゴリーとすると,実際に 視程200m未満の状態が発生した81事例中70事例を適中させていることから,視程200m未満 の状態を気象条件から推定することについては,かなり精度良く推定できることがわかった。

  第5章「吹雪の広域情報提供システムの開発」では,本研究で明らかにした視程推定手法に 基づぃて広域の視程情報を作成し,これを含む吹雪情報をドライバーに提供するシステムを開 発した。システムには,PCおよぴ携帯電話のWeb上での情報提供と条件に応じたメールでの緊 急通知の機能を持たせた。

  第6章「吹雪情報が冬期道路の安全性や安心感に与える効果」では,吹雪情報をドライバー に提供する実験を初めて行い、冬期道路の安全性や安心感に与える効果を把握した。本研究で 開発した視程推定手法を用いて作成した視程情報を含む吹雪情報をドライバーに提供し,ドラ イバーが情報を受けて吹雪を避けるような交通行動の変更があることを,初めて確認した。実 験によると,吹雪情報を受けとったドライバーの6割が,情報によって交通行動を変えたこと がわかった。また,交通行動を変えなくても,安心感が向上したと答えたドライバーも多かっ た。また,吹雪情報を受け取ったドライバーに吹雪情報の精度に対する満足度を尋ねたところ,

現 況 値 に つ い て は 約70%の ド ラ イ バ ー が 「 満 足 」 , 「 ほ ぼ 満 足 」 と 回 答 し た 。   第7章「結論」では,以上の研究をまとめ,筆者が開発した視程推定手法は,道路情報提供 における吹雪時の視程推定手法として十分利用可能なものであり,視程情報を含む吹雪情報の 提供は,吹雪対策の一方策としてドライバーの安全陸や安心感の向上に有効であるという結論 を示した。

  これを要するに、著者は、吹雪時の視程推定手法を新しく開発し、その信頼性を確かめると ともに、ドライバーへの満足度調査を実施し、冬期道路管理の向上を目指したものであり、交 通安全工学、交通計画学、流体力学、雪氷工学の発展に貢献するところ大なるものがある。

  よ って著者 は、北 海道大学 博士( 工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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