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日本海におけるスルメイカ漁場形成機構の解明 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)清藤秀理 学位 論文題名

夜間可視衛星画像データを用いた

日本海におけるスルメイカ漁場形成機構の解明 学位論文内容の要旨

【緒言】

  アカイカ科イカ類に属するスルメイカ(Todarodes pacificus)は、日本と韓 国 の重要な水産 資源の1種である が、その資源 変動は大きい。本種は、1998 年 に日本のTAC (Total Allowance Catch:漁獲可能量)対象種に選定され、

よ り 精度の高い資 源評価と漁業 管理が求めら れるようにな った。スルメイ カ の 漁獲 量 は、1970年前 後 をピ ー クに 急激 に 減少 し 、1986年 には10万 ト ン 以 下にまで減少 したが、1989年以降 は増加の傾向 にある。本種 の資源変 動 は 、資源自体の 再生産一加入 過程の成否、 および漁獲努 力量と漁場形成 の時空間的変化などの要因が考えられる。

  これ までのスルメ イカ資源と生 態に関する調査 研究では、調 査船による 漁 獲 ・観測データ や様式放流・ 再捕などによ り、その分布 ・豊度や回遊経 路 が調べられている。しかし、年間を通した生息海域全体での分布・移動、

あ る いは海洋環境 と統合した漁 場形成に関す る知見は断片 的である。スル メ イ カ漁業の特徴 として、イカ 釣りのための 照明を用いた 漁法があげられ る 。 この灯りは、 夜間可視衛星 画像からも確 認されており 、これと海洋環 境 と の比較により 、時空間的な スルメイカの 漁場形成や、 資源の動態を明 らかにすることは可能と判断される。

  そこ で本研究では 、主に人工衛 星による夜間可 視画像データ を用いて、

イ カ 釣り漁船の灯 りを漁場形成 の指標として 使用できるか を検証し、その 画 像 を用いて日本 海におけるス ルメイカの索 餌・産卵回遊 経路およびスル メ イ カ漁場の季節 ・経年変化を 調べた。さら に、スルメイ カの回遊と漁場 形 成 に 関 わ る 海 洋 環 境 と の 関 係 を 明 ら か す る こ と を 目 的 と し た 。

【 使用 デー タ 】

( 衛星 デ― タ )

  人 工衛星デ ータは格子か らなっており、 格子サイズは 各衛星によっ て異

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なる 。各 格子 は画素値(Digital Number;DN)として表さ れており、水温 や ク ロ ロ フィ ル 濃度 の算 出 には 、 特定 の アル ゴ リズ ム式 に よっ て 算出 さ れ る。以下に使用した衛星データについて記述する。

1.米国軍事気象衛星DMSP(Defense Meteorological Satellite Program)搭載の   OLS(Operational Line Scan)セ ンサ ー によ る1994年から1999年まで の6   年 間の 夜 間可 視 衛星 画 像デ ータ : 格子 サ イズ は2.7km、画 素値(DN)は0   〜 63の 値で 表 され て いる 。 数値 が大 き いほ ど観測してい る輝度値が大     きいことを示している。

2. NOAA(National Oceanographic Atmospheric Administrator)衛星搭載の     AVHRR(Advanced Very High Resolution Radiometer)センサーによる1994   年 か ら1999年 ま で の6年 間 の 海 面 水 温 デ ー 夕 : 格 子 サ イ ズ はlkm、 画   素 値はOへ255で 、 以下 の 推定 式 によ っ て水 温を 算 出し て いる 。 海面 水   温(℃)‑O.15*DN−2.0。

3.Orbview2/SeaWiFS(Sea Wide Field Sensor)による1997年9月から1999年   12月 ま で の 約2年 半 の 海 面 ク ロ ロ フ イ ル 濃 度 デ ー タ : 格 子 サ イ ズ は   9km、 画 素 値 はO〜255で 、 以 下 の 推 定 式 に よっ て海 面 クロ ロ フア ル 濃   度を算出している。海面クロロフアル濃度(mg/m3)二ニ10 0.015゛D〃―2.o。

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  ス ルメ イカ漁 場の水温鉛直 構造を調べるた めに、韓国水 産振興院によ っ   て公表された水温データを用いた。

【 解 析方 法 】

1. 解 析 の 整 合 性 を 持 た せ る た め に 、 各 衛 星 デー タ の格 子 サイ ズを 全 て   NOAA/AVHRRセ ン サ ー に よ る 水 温 デ ー タ の lkmに 一 致 さ せ た 。 2. DMSP/OLSによる夜間可 視衛星画像デ ータから、スル メイカ漁船分 布を   推定 す るた めに、夜間可 視衛星画像デー タと山形水産 試験場調査船 「最   上丸 」 の集 魚灯の光量と の比較を行った 。次に、夜間 可視衛星画像 デー   タ か ら、 日本 海 にお け る空 間 的栓 ス ルメ イカ 漁 船分 布 を抽 出 する ため   に、 日 本海 全域の輝度値 ヒストグラムを 調査した。漁 船分布域とそ れ以   外 の 分 布 域 と の し き い 値 決 定 に は 、 判 別 分 析 法 を 用 い た 。 3. 1994年‑ 1999年ま でのDMSP/OLS月合 成 画像 を 作成 し、 ス ルメ イ カ漁   船分 布 の季 節変動を用い て日本海の海域 区分を行った 。スルメイカ 漁場   は、 あ る程 度の広がりを もって分布して いるため、対 象海域の海域 区分   を 行 う た め の 衛 星 画 像 デ ー タ の 格 子 サ イ ズ を 、lkm格子 か ら30 ( 約   54km) 格 子 に 再 構 築 し た 。 再 構 築 さ れ た 対象 海 域の 格 子総 数 は385個   であ る 。そ して、各格子 間にっいて階層 型クラスター 分析を行った 。階   層型 ク ラス ター分析は、 個体間の似てい る度合いを距 離で評価し、 距離

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  の近いものから同じクラスターであると判定し、融合していく方法であ   る。次に、6年間の各格子に占める漁場面積アノマリーの経年変化を調   べた。漁場面積は、各格子に占めるピクセル数の割合(%)とし、格子   毎にアノマリーを計算し、その経年変化を調べた。各格子総数は2,365   である。正アノマリーの場合は、漁場面積が6年間の平均よりも拡大の   傾向を示し、 負のアノマリーの 場合は縮小傾向を示 すことになる。

4.3で区分されたスルメイカ漁場の水温、およびクロロフイル濃度との関   係について調べた。また、スルメイカ漁場における水平的な水温フロン     ト 、 海 色 フ ロ ン ト 、 お よ び 水 温 鉛 直 構 造 に つ い て 調 べ た 。

【結果と考察】

!壅聞亘塑贊塁画餐データと最上丸との.ヒヒ較2

  光量88kwである最上丸による光は、夜間可視衛星画像上において最大3 ピ クセル、平均1.6ピクセル、すなわち周囲2km以内に影響を及ぼしてい ることが明らかとなった。また、最上丸と考えられる高輝度域から周囲2km の 画 素値 を調べたところ、 最大DN値は51、平均DN値は20.5であった 。 こ れらのことから、光量88kwの光でも夜間可視衛星画像データから抽出 が可能であることが示された。

〈スルメイカQ回遊経墜ユ懣塑墜盛〉

  夜間可視衛星画像の季節変動によって、日本海を9つの海域に区分する ことができた。9っに区分された海域の季節変動から、スルメイカの回遊 経路を、北上回遊パターンと南下回遊パターンの2っに大別することがで きた。北上パターンのーっは、日本沿岸を北上するパタ一・ンで、二つ目は 韓半島東岸域を北上し、大和堆を経て北部日本海ヘ回遊するパターンであ る。南下回遊パターンのーっは、北部日本海から日本沿岸を経て対馬海峡 へ回遊するパターン、二つ目は日本海北部海域から大和堆を経て韓半島東 岸域ヘ回遊する、あるいは大和堆から隠岐諸島を経て対馬海峡へ回遊する パターンである。このように区分された海域から、スルメイカの北上・南 下回遊パターンが明らかとなった。

  9っに区分された海域をもとに、各海域におけるスルメイカ漁場面積分 布アノマリーの経年変化に調べた。その結果、北上回遊期(1〜10月)に 変 動が大きかった年は、1998年と1999年の韓半島東岸海域、大和堆、北 部 日本海であった。このことから、1998年と1999年のスルメイカ回遊経 路が沖合に形成されていた可能性が示唆された。南下回遊期(9月〜12月)

に漁場面積の拡大が見られた年は1996年で、その海域は韓半島東岸海域、

ウルルン島周辺海域であった。したがって、1996年は韓半島東岸海域、お よ びウルルン島周辺海域において好漁場が形成されていたことが示唆さ

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れる。さらに、1996年と1998年は、典型的な豊漁年と不漁年である。不 漁年の1998年では、北上期におけるスルメイカ漁場の沖合化によって漁 獲量が減少し、逆に豊漁年の1996年では、ウルルン島周辺海域における 漁 場 面 積 の 拡 大 が 漁 獲 量 増 加 に っ な が っ た こ と が 考 え ら れ た 。

〈スルメイカ逸塑と塰注理壇との関係〉

  各スルメイカ漁場における海面水温は、1998年が高い傾向を示した。特 に、5月の韓半島東岸海域と日本沿岸海域、9月‑ 12月の韓半島東岸海域、

対馬海峡周辺海域において、その傾向が確認できた。この1998年におけ る水温の昇温傾向は、1998年のスルメイカ漁場の沖合化との関係が示唆さ れた。

  各スルメイカ漁場のクロロフィル濃度は、春と秋に高濃度ピークが確認 できた。特に、韓半島東岸海域におけるクロロフイル濃度は、他のスルメ イカ漁場に比べて、年間を通してクロロフイル濃度は高い傾向を示した。

これはスルメイカ回遊経路を考慮に入れると、幼稚仔、あるいは成熟した 親イカにとって索餌といった生態学的側面から好適環境が維持されてい たと推定された。

  スルメイカ漁場が形成されていた海域の水温鉛直構造の解析から、韓半 島東岸海域には鉛直フロント構造、およぴウルルン渦が確認できた。スル メイカ漁場は、フロント域の内側、すなわち沿岸陸棚域に形成されている ことが明らかとなった。また、フロントやウルルン渦の縁ではクロロフィ ル濃度も高い値を示した。これは、フロントやウルルン渦構造がクロロフ ィル濃度を増大させるだけでなく、スルメイカの索餌活動に強く影響を与 えていることを想定させる。これらのことから、韓半島東岸海域のスルメ イカ南下回遊経路は、高クロロフアル濃度で対馬暖流の影響をあまり受け な い 韓 半 島 東岸 海 域 の 陸 棚 海域 を 回 遊 し ている ことが 考えら れる 。

【おわりに】

  本研究では、人工衛星によるデータを用いることで、日本海におけるス ルメイカの回遊・漁場に関する知見と海洋環境との関係を、より具体的に 解析することができた。これは、海洋生態学的研究や水産海洋学的研究を 発 展 さ せ る 上 で の 、 一 っ のinnovativeな 方 法 の 提 案 で あ る 。

(5)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査 副査

教 授    教 授    教 授    助 教 授   助 教 授   助 教 授  

藤誠―

浦汀介 田浩ニ

    浩平(東海大学)

井泰憲 田園三郎

学 位 論 文 題 名

夜間可視衛星画像データを用いた

日本海におけるスルメイカ漁場形成機構の解明

  近 年 、国 連 海 洋法 に より 、排他 的経済水 域(EEZ)内での 充分な資源 の開発利 用と、も し資源が 必要以上 にある場 合に、そ れを他国 に利用させ ることを 義務付け られてい る。

このよう な状況の 中から、 わが国周 辺水域の 環境収容カ を明らか にするこ とを目的 に従 来の資源 量推定法 に加え、 広い海域 の資源量 や生産環境 を、短時 間かつ高 精度に探 査で きる新し い資源量 推定法や りアルタ イム海洋 生物資源環 境モニタ リングシ ステムの 開発 が急務で ある。そ して、持 続的に海 洋生物資 源を利用す る視点や 資源回復 計画案の 策定 上からも 、いつ、 どこに、 どのくら いの資源 が利用可能 かりアル タイムで 知る必要 があ る。

  本研究で対象としたアカイカ科イカ類に属するスルメイカ(Todarodes pacificus)は、日本 と韓 国 の 重要 な 水産 資 源 の1種で あるが、 その資源 変動は大き い。本種 は、1998年に 日 本のTAC (TotalA110wanceCatch:漁獲可能量)対象種に選定され、より精度の高い資源評 価と漁業 管理が求 められる ようにな った。ス ルメイカは 、日本に おけるイ カ類総漁 獲量 の大半を 占めてお り、重要 な水産資 源のーっ である。ス ルメイカ の国内漁 獲量は1970 代をピー クに徐々 に減少し 、1986年に最 も低く、1980年代後半か ら再び増 加の傾向 にあ る。本種 の漁獲量 の変化は その資源 量の変化 を反映して いるとさ れ、漁獲 量と秋季 の日 本海南西 海域にお けるスル メイカ幼 生の分布 豊度との間 には高い 相関があ ることが 指摘 されている。

  これまで のスルメ イカ資源 と生態に 関する調 査研究では 、調査船 による漁 獲・観測デ ータや様 式放流・ 再捕など により、 その分布 ・豊度や回 遊経路が 調べられ ている。 しか し、年間 を通した 生息海域 全体での 分布・移 動、あるい は海洋環 境と統合 した漁場 形成 に関する 知見は断 片的であ る。スル メイカ漁 業の特徴と して、イ カ釣りの ための照 明を

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用 いた 漁法 があ げら れる 。こ の灯りは、夜間可視衛星画像からも確認されており、夜間 可 視衛 星画 像は きわ めて 短時 間に広域にスルメイカ漁船分布情報を提供してくれる手段 で ある 。

  そこ で本 研究 では 、主 に人 工衛星による夜間可視画像データを用いて、イカ釣り漁船 の 灯り を漁 場形 成の 指標 とし て使用できるかを検証し、その画像を用いて臼本海におけ る スル メイ カの 索餌 ・産 卵回 遊経路およぴスルメイカ漁場の季節・経年変化を調べた。

さ らに 、ス ルメ イカ の回 遊と 漁場形成に関わる海洋環境との関係を明らかにしようとし た もの であ る。

特に審査員一同が評価した点は以下の通りである。

1 DMSP/OLSによ る夜 間可 視衛 星画 像デ ータ から 、ス ルメ イカ 漁船 分布を 推定 するた     め に、 夜間可 視衛 星画像データと山形水産試験場調査船「最上丸」の集魚灯の光量     と の 比 較 を 行 い 、 こ の デ ー タ に よ る ス ル メ イ カ 漁 船 分 布 推定 法 を 開 発 し た 。 2.階層 型ク ラスタ ー分 析を 応用 して 、夜 間可 視衛 星画 像の 季節 変動 によっ て、 日本海     9つの 海域 に区 分し 、9区 分さ れた 海域 の季 節変 動か ら、 スル メイカ の回 遊経路     を 、 北 上 回 遊 パ タ ー ン と 南 下 回遊 パ タ ー ン の2っ に 大 別 で きる こ と を 示 し た 。 3.不漁 年の1998年 では 、北 上期 にお ける スル メイ カ漁 場の 沖合 化に よって 漁獲 量が減     少 し、 逆に豊 漁年 の1996年では、ウルルン島周辺海域における漁場面積の拡大が漁     獲 量増 加にっ なが った こと を示 唆し た。

4.スル メイ カ漁場 が形 成さ れて いた 海域 の水 温鉛 直構 造の 解析 から 、韓半 島東 岸海域     に は鉛 直フロ ント 構造、およびウルルン渦が確認できた。スルメイカ漁場は、フロ     ン ト 域 の 内 側 、 す な わ ち 沿 岸 陸 棚 域 に 形 成 さ れ て い る こ とを 明 ら か に し た 。 5.夜間 可視 衛星画 像は きわ めて 短時 間に 広域 にス ルメ イカ 漁船 分布 情報を 提供 してく     れ る手 段であ る。 この手段を海洋に応用した例は少なく、本研究のような水産海洋     学 への 応用は きわ めて 新規 性が 認め られ る。

  以 上の 諸点 は、 日本海 におけるスルメイカ分布と回遊に関する重要な知見を得たもの であ り、 さら に夜 間可視 衛星画像という新しい観測手法を応用した水産科学研究である とし て高 く評 価で きる。

  よ って 審査 員一 同は、 本論文が、博士(水産科学)の学位論文として価値あるものと 認定 した 。

参照

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