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     ( 日 本 系 サ ケ の 海 洋 生 活 史 ) 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 科 学 ) 福 若 雅 章

     学位論文題名

Ocean Life History of Japanese Chum Salmon      〇刀cor 乃ッ刀C カ勿S カピ勿

     ( 日 本 系 サ ケ の 海 洋 生 活 史 ) 学位論文内容の要旨

  日本では、サケ属魚類の中でサケ(Oncorhynchus keta)が最も多く生息 し、古代から漁獲対象となっている。サケ成熟魚は、繁殖のために海から河 川ヘ回遊することから、河川や沿岸で漁業が行われてきた。沖合域では、第 二次世界大戦後に日本の公海流し網漁業が発展したが、「北太平洋における 溯河性魚類の系群の保存のための条約」が発効した1993年以降、日本のサ ケ漁業の主対象は日本沿岸水域の資源に移った。最近の日本の多くのサケ資 源は人工増殖により維持されている。さけ類(サケのほか少量のベニザケ aカer々a,ギンザケひ々jsUfcカ,マスノスケひ姑カaげォscカaを含む)の水 揚げ金額は、2006年では793億円(海面漁業全水揚げ金額の5%)に上り、

海面漁業対象魚種の中で最も高かった。

  生活史を通した成長と死亡率は、漁業資源の評価と管理に必要な基礎的な 情報である。しかし、日本系サケ資源では海洋生活期を通した生活史パラメ ータに関して得られた情報が少ない。そこで本研究では、日本系サケ資源の 管理方策を検討するため、体成長や死亡率などの生活史パラメータを推定し た。それを用いてサケの生活史を予測し、公海流し網漁業の停止の影響を考 察した。

【材料及び方法】

1.鱗と耳石を用いた成長速度推定法

  サケ属魚類の成長速度推定法を検討するため、サケおよびベニザケの鱗隆 起線と耳石微細構造の形成機構について調べた。鱗隆起線については、飼育 実験と沿岸採集幼魚の鱗の観察により、鱗チェック形成機構、鱗径一体長関 係、隆起線形成速度・間隔と体成長の関係を推定した。耳石微細構造は、飼

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育 実験 に より 耳石 径 一体 長 関係 と 微細 構造 形 成の 周 期性を検証し た。

2.海洋生活期のサケの滅耗過程

  サケ海洋死亡率とそれに及ばす環境の影響を調べるため、海洋生活初期に おける幼魚の分布と死亡率、沖合域での死亡率を推定し、回帰率と沿岸環境 との関係を調べた。海洋生活初期の分布にっいては、本州日本海沿岸域で曳 き網による調査を行い、海洋環境とサイズクラス別分布の関係を推定した。

海洋初期死亡は、本州日本海沿岸域で行われた沿岸県と国による共同鰭切り 標識放流実験結果を用いて、放流直後の死亡率を推定した。べーリング海海 盆域におけるトロール調査結果と年齢別回帰数から、catch―atーageモデル による沖合域での死亡率を推定した。さらに、本州日本海沿岸の放流数、回 帰数および沿岸環境データに基づぃて、海洋死亡率への環境の影響を推定し た。

3.海洋環境と漁業の影響下でのサケ生活史の変化

  海洋成長の年変化を調べるため、沖合調査漁具のサイズ選択性を検討する とともに、漁獲統計や孵化場における生物学的モニタリング結果を用いて、

サケの豊度と生活史形質のトレンドに及ばす環境の影響を調べた。また、成 熟サイズに及ばす公海流し網漁業の影響を検討するために、これまで検討し てきた体成長速度、死亡率などの生活史パラメータ推定値を用いて、孵化場 産サケの最適成熟閾値サイズを予測した。

【結果と考察】

1.成長速度推定

  サケ属魚類では、鱗や耳石を用いた成長履歴解析が可能と判断された。こ の中で、サケ耳石微細構造における日輪形成の周期性を確認した。また、耳 石径と体長の間には、アロメトリー関係が得られた。このことから、海洋生 活初期のサケ幼魚では、アロメトリー関係を仮定した成長逆算が可能と判断 した。孵化場産サケ幼魚では、放流時に鱗チェックが形成されることがある。

これを用いた放流体長の逆算が可能であり、標識サケ幼魚の放流後の成長速 度が計算できた。個別標識されたべニザケの飼育実験から、隆起線形成速度 と鱗成長の問には、体成長と.正の相関関係が求められた。これら三者の相互 関係から、鱗隆起線間隔と体成長間には正の相関関係が認められた。これら のことから、鱗隆起線間隔を用いても体成長速度は推定できた。しかし、個 成長を推定するには、鱗径を用いた成長逆算の精度の方が高かった。これら の鱗隆起線の形成機構から、年輪の特徴である狭い隆起線間隔や不連続な隆

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起線は、冬季の成長停滞と春季の成長再開により形成されると推察された。

  一般に、サケ属魚類では鱗年輪を用いた成長逆算が行われている。本研究 では、鱗による成長逆算法の再検討を行った。しかし、海洋生活初期では年 輪が未形成のため、年輪を用いた成長逆算ができない。海洋生活初期の成長 速度推定には、耳石日輪や鱗放流チェックを用いた成長逆算、あるいは隆起 線間隔からの成長推定が有効と判断きれた。

2.海洋生活期の減耗過程

  サケ小型幼魚(<75 mm FL)と大型幼魚(>75 mm FL)は沿岸域での分布が 異なり、小型幼魚は海洋環境にかかわらず海岸付近にとどまり、大型幼魚は 塩分などを指標に、すみ場所選択を積極的に行っていることが分かった。放 流直後数日から数週間までの死亡率は極端に高かったが、それに比べ沖合回 遊中の未成魚の死亡率は低かった。放流から回帰までの海洋死亡率は、放流 時の沿岸環境と放流数に相関していた。これらのことから、孵化場産サケで は、放流直後の数週間の海洋生活初期に沿岸環境の影響を強く受けて死亡率 が高くなっており、この時期が年級群豊度レベルの決定期と判断された。

3.生活史特性の変化

  漁具間比較試験により、10種目合で構成された調査流し網のサケのサイ ズ選択性を調べたところ、体サイズが大きいほど選択強度が高かった。サイ ズ選択性によるバイアスを補正して、1971年以降のサケの沖合域での年齢 別平均体長を計算した。補正した平均体長は、漁獲魚の平均体長よりも小さ かったが、その経年変動は同様であった。このことから、経年変動の観察に 漁獲魚の平均体長を用いても、その経年トレンドが追跡できることが分かっ た。

  サケの漁獲数、海洋成長、成熟体長・年齢などの経年トレンドを調べた。

サケの漁獲数は,1930年代にロシア沿岸で多かったが、その後各国の沿岸 水域では減少し、1950―1980年代まで北太平洋・べーリング海など沖合水域 で多かった。1990年代初めに公海漁業が停止されたが、日本の沿岸漁獲数 は1980年代以降に増加し、現在は歴史的な高水準にあり、北太平洋沿岸国 の中で最も多い。沿岸漁獲数の増加と同時に、海洋成長と成熟体長は低下し、

成熟年齢は高くなった。これは、海洋環境の変化により幼魚期の生残率が高 まったため、沖合のサケ密度が増加し、密度依存的に成長速度が低下したた めと考えられている。しかし、1990年代中盤以降、漁獲数は依然として高 い水準にあるが、海洋成長と成熟サイズは回復しており、沖合域の海洋環境 もサケにとって好転したと考えられている。

(4)

  推定された生活史パラメータを用いて、サケ成熟閾値サイズを予測した結 果、公海流し網漁業も成熟サイズを減少させる選択圧として働いていたこと が分かった。公海漁業の停止は、この選択圧の緩和として働き、沖合環境の 好転による海洋成長の増加とともに成熟サイズの回復に寄与したと考えら れた。溯河性サケ科魚類に対する遠洋域のサイズ選択的漁業の停止は、母川 内や河口周辺沿岸域での成熟魚対象の終端漁業への加入群の体サイズ回復 をもたらす可能性が高い。この停止は、産卵親魚生物量増加のための有効な 管理方策と考えられた。

【総合考察】

  公海漁業の停止に加え、日本系サケ資源の管理方策として自然産卵群の再 生が必要と考えた。その理由は、(1)将来の環境や人為的かく乱に対して 頑健にするため、(2)増殖事業のコストを軽減するため、およぴ(3)生 態系サービスとしての公共的な付加価値を高めるためである。資源水準が高 く、成熟サイズが回復しつっある今こそ、サケ自然再生産を復活させる好機 であり、その具体的対策を図る必要がある。

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学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 准教授

帰 山 雅 秀 桜 井 泰 憲 五 嶋 聖 治 工 藤 秀 明

     学位 論文題 名

Ocean Life History of Japanese Chum Salmon      〇刀 cor 霞ツ刀 C カ勿 S カ ¢勿

     ( 日 本 系 サ ケ の 海 洋 生 活 史 )

  日 本で はサ ケ属 魚類(Oncor緲門 あ船spp.) の中 でサ ケ(〇.ぬぬ)が最も多く生息し、

古 代 か ら 漁 業 の 対 象 と な っ て い る 。 わ が 国 に 船 け る 最 近 の サ ケ 資 源 は 人 工 孵 化 放 流 に よ り 維 持 さ れ て お り , 海 面 漁 業 対 象 魚 種 の 中 で 最 も 多 い 。 生 活 史 を 通 し た 成 長 と 死 亡 率 は , 水 産 資 源 の 評 価 と 管 理 に 必 要 な 基 礎 的 な 情 報 で あ る が 、 日 本 系 サ ケ で は 海 洋 生 活 期 を 通 し た 生 活 史 パ ラ メ ー タ に っ い て 得 ら れ た 情 報 が き わ め て 少 な い 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 日 本 系 サ ケ 資 源 の 管 理 方 策 を 確 立 す る た め 、 体 成 長 や 死 亡 率 な ど の 生 活 史 パ ラメ ータ を明 らか にす るこ と を目 的と した .

材 料 及 び 方 法

1. 鱗 と 耳 石 を 用 い た 成 長 速 度 推 定 法

  サ ケ 属 魚 類 の 成 長 速 度 推 定 法 を 検 討 す る た め 、 サ ケ お よ ぴ ベ ニ ザ ケ の 鱗 隆 起 線 と 耳 石 微 細 構 造 の 形 成 機 構 を , 鱗 隆 起 線 、 鱗 チ ェ ッ ク 形 成 機 構 、 鱗 径 ・ 体 長 関 係 、 隆 起 線 の 形 成 速 度 ・ 間 隔 と 体 成 長 の 関 係 , 耳 石 径 ‐ 体 長 関 係 と 耳 石 の 微 細 構 造 形 成 の 周 期 性 か ら 検 討 し た 。

2.海 洋 生 活 期 の サ ケ の 死 亡 ス ケ ジ ュ ー ル

  サ ケ 海 洋 死 亡 率 と そ れ に 及 ば す 環 境 の 影 響 を 明 ら か に す る た め 、 海 洋 生 活 初 期 に お け る 幼 魚 の 分 布 と 死 亡 率 、 沖 合 域 で の 死 亡 率 の 推 定 、 海 洋 生 活 期 の 死 亡 率 に 及 ば す 環 境 の 影 響 を , 本 州 日 本 海 沿 岸 域 に お け る 標 識 放 流 試 験 と 沿 岸 調 査 、 べ ー リ ン グ 海 海 盆 域 に お け る ト ロ ー ル 調 査 お よ び 年 齢 別 回 帰 数 か らcatch‑at‑ageモ デ ル に よ る 沖 合 域 で の 死 亡 率 の 推 定 を 行 っ た 。

3.海 洋 環 境 と 漁 業 の 影 響 下 で の サ ケ 生 活 史 の 変 化

  海 洋 成 長 の 年 変 化 を 調 べ る た め に 沖 合 調 査 漁 具 の サ イ ズ 選 択 性 を 検 討 す る と と も に 、 漁 獲 統 計 や 生 物 学 的 モ ニ タ リ ン グ 結 果 を 用 い て サ ケ の 豊 度 と 生 活 史 形 質 の ト レ ン ド に 及 ば す 環 境 の 影 響 を 調 べ た 。 ま た 、 成 熟 サ イ ズ に 及 ぼ す 公 海 流 し 網 漁 業 の 影 響 を

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検討するために、体成長速度、死亡率などの生活史パラメータ推定値を用いて、孵化 場産サケ.の最適成熟閾値サイズを推定した。

結果と考察

1.成長速度推定法

  サケ属魚類の鱗隆起線およぴ耳石微細構造の形成機構を,鱗チェック形成機構,耳 石日輪形成速度およぴ鱗隆起線形成過程橙どから明らかにした.サケの放流時の鱗チ エック形成,鱗隆起線の形成速度と間隔,鱗の年帯形成メカニズムを明らかにすると ともに,鱗径―体長のアロメトリー式から鱗による成長バックカリキュレーション法 を確立した.

2.海洋生活期の死亡スケジュール

  サケ小型幼魚(<―75 mm FL)と大型幼魚(>75 mm FL)は沿岸域での分布が異なり、

小型幼魚は海洋環境にかかわらず海岸付近にとどまり、大型幼魚は塩分などを指標に すみ場所選択を積極的に行っていることが分かった。放流直後数日から数週間の間で は死亡率が極端に高かったが、それに比べ沖合回遊中の未成魚の死亡率は低かった。

放流から回帰までの海洋死亡率は、放流時の沿岸環境と放流数に相関していた。これ らのことから、孵化場産サケの放流直後数週間の海洋生活初期は、死亡率が高く沿岸 環境の影響を強く受け、年級群強度を決定している危険期であることが分かった。

3.生活史特性の変化

  漁具間比較試験により10種目合調査流し網のサケのサイズ選択性を調べたところ、

体サイズが大きいほど選択強度が高いことが分かった。サケ漁獲数は,1930年代はロ シア沿岸で多かったが、その後減少し、1950‑1980年代は沖合水域で多かった。1990 年代初めまでに公海漁業が停止されたが、サケ沿岸漁獲数は1980年代以降に増加し、

現在では歴史的な高水準にある。沿岸漁獲数の増加と同時に海洋成長と成熟体長は低 下し、成熟年齢は高くなった。これは、海洋環境の変化により幼魚期の生残率が高ま ったため沖合のサケ密度が増加し、密度依存的に成長速度が低下したためと考えられ ている。しかし、1990年代中盤以降、漁獲数は依然として高い水準にあるが、海洋成 長と成熟サイズは回復しており、沖合域の海洋環境もサケにとって好転したと考えら れている。

  推定された生活史パラメータを用いてサケ成熟閾値サイズを予測したところ、公海 流し網漁業も成熟サイズを減少させる選択圧として働くことが分かった。公海漁業の 停止はこの選択圧の緩和として働き、沖合環境の好転とともに成熟サイズの回復に寄 与したと考えられた。

  以上のように,本研究ではオホーツク海,北太平洋およびべーリング海に広く分布 する日本系シロザケの海洋生活史パラメータを明らかにすることにより,海洋環境収 容カをべースした持続可能な資源管理の重要性を指摘した.また,将来の環境変動や 人為的撹乱に対して頑健であることや生態系サービスへの貢献等から,サケ自然産卵 群の再確立を提言したい.本研究成果は,水産資源管理において今後重要と考えられ

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ている順応的管理と予防原則からなるりスク管理に大きく寄与するものと考えられ る,よって審査員一同は申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるも のと判定した。

参照

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