博 士 ( 工 学 ) 茂 庭 昌 弘
学 位 論 文 題 名
横方向固相エピタキシャル法による シリコン単結晶薄膜形成の研究
学位論文内容の要旨
半導 体 デバ イス は、1947年に トラ ンジ スタ とし て産 声を 上げ 、1959年に集積回路とぃう己の進む べ きを 見 い出 し、 構成素子及ぴ配線の微細化による大規 模化とぃう道をひた走りに走って、いまや集 積 度も 動 作ク ロッ ク周波数もギガピットスケールとぃう 規模も性能も飛躍的な進化を遂げた。これら の チッ プ が普 段の ありふれた風景の裏側に数知れず住み ついて多くの電子機器を気の効いた必需品に 変 えた 。 賢い 機器 たち がネ ット ワー クの 世界 と融 合し たと きに 、 知の 革命、IT革命が始まった。イ ン ター ネ ット で検 索をすれば、かつては専門家の書斎や 大きな図書館の奥深くでしか得られなかった 情 報が 、 誰で も、 何時でも、瞬時に入手できるようにな った。航空券や宿泊の予約、売買もできるよ う にな り 、大 きな 組織でなければできなかったようなグ ローバルな企業活動が、例えば今日からでも わ ず か な 人 数 で 始 め ら れ る よ う に な っ た 。 人 々 の 暮 ら し や 経 済 活 動 が 変 わ り 始 め た 。 IT関 連 機 器 の 特 長 は 、 フ レ キシ ブ ルで きめ 細か い処 理が でき るこ とで ある 。IT技術 を牽 引 する ULSIの い っそ うの 進化 は、 今後 深刻 にな るで あろ う環 境問 題へ の 対応 も含めて、個々の人々の事情 に も対 応 でき る柔 らか な社 会の 到来 を約 束す るに 違い ない 。IT機 器が 暮らしの風景に溶け込んでゆ く た め に 重 要 な キ ー ワ ー ド は モ バ イル(Mobile) で あり 、そ の時 、ULSIに 求め られ るの は 高い 処理 能カと低消費電カである。
ULSIの 処 理 能 カ と は 、 高 速 、高 集 積の こと であ り、 これ まで も重 要な 指標 であ った 。ULSIは、
回 路パ タ ーン を微 細化することによりこれらを実現して きた。しかし、近年にいたって、微細寸法の 最 小値 を 規定 する りソグラフイー光源の短波長化の遅滞 が著しく、微細化一本鑓で突き進むのは難し く なっ て きた 。微 細化とその他いくっかの手法で総合的 に高集積化、高速化を実現してゆかなければ なら ない。
そこ で 、そ のよ うな観点で今後重要になってゆくのがSi―On‑Insulator (SOI)構造である。これを 用 いる こ とに より 、例えば、アクテイブデバイスの積層 集積が可能となり、集積度の向上が期待され る。 また、Metal―Oxide―Semiconductor Field―Effect‑Transistor (MOSFET)をSOI構造の上に乗せれば そ れ だ け で 、 従 来 の バ ル クSi上 のMOSFETに 比 べ 接 合 容 量 が 減 少 し 、MOSFETの 高 速 動 作が 期 待さ れる 。また、Si0エ膜などの絶縁 膜で結晶から絶縁分離されているため、微細化にともな って深刻さが 増す と予想されるソフトエラーに対しても問題低減が期待で きる。
本研 究 にお いて は、 積層 デバ イス 構造 を形 成する際のキープロセスである低温のSOI形成技術とし て 、Si膜 厚制 御性 と平 坦性 に優 れるL―SPEを 選び 、結 晶成 長の 基 本的 な性 質を 調べL‑SPEプ ロ セス 設 計の 指 針を 明ら かに する こと を目 的と する 。本研究において、L‑SPE技術に対する基礎的な物理的 理 解、 お よぴ 、L‑SPEをLSI量産プロセスに組み込んでゆ く際のプロセス開発指針が明らかになれば、
0.13―0.10 ym世 代、 さら には それ 以 降の 世代における 、積層デバイス構造を有するメモリセルの開 発 、ひ い ては 今後 のエレクトロニクス市場で求められる 半導体メモりのさらなる大容量化に向け、有 用な 寄与をなしえるものと思われる。
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本論文は8章から構成されている。以下に各章の要旨を示す。
第1章では、本研究の背景と目的を述ぺる。
第2章では、本研究に関する従来の歴史について述べ、固相成長法の特色を明らかにし、他のSOI 形成技術に対する位置付けをする。
第3章では、シードレスとぃう簡便なアプローチをとる場合にはどのような考え方で固相成長プロ セスを構築してゆけばよいかを明らかにすることを目的に、結晶化の制御を試みる。本研究では、局 所ドーピングと基板段差構造を利用したシードレス固相成長技術の検討を行なった。基板段差構造と ライン状の局所ドーピング領域を直角に交差させる方式で、交差部における段差・ドーピングの相乗 効果が、核の選択形成を実現する。本法は、素子積層構造に付随した層間接続部の形成工程と共有す ることができ、簡便である。
第4章では、固相エピタキシャル成長温度と同等もしくはそれ以下の低温で行なえるスパッタエツ チング法を基板表面清浄化技術として、選択し検討した。micro‑Probe RHEEEDを用いてArの昇温 脱離の様子を細かく観察した。その結果、a‑Si膜を堆積する前にアニールによりArを気相中に廃棄 しておくことが
L‑SPE
の前処理プロセスとして必須とわかった。一方で、L‑SPEの低温プロセスと いう特長を損ねないために、できるだけ低温であることが求められる。このような観点で、各種の条 件(温度、時間)でアニールした試料表面をRHEED
で観察し、最適なアニール条件を探索した。第5章では、確定したエッチング条件で基板単結晶表面をクリーニングし、実際に堆積した非晶質
Si
膜を用いて横方向固相エピタキシヤル成長を実現する。y‑RHEEDを用いた結晶方位の解析により、Si0
^膜上の領域にまでわたって固相でエピタキシャル成長してゆくことを確認した。実際にL‑SPE
結晶上 にMOSFET
を試作し、結晶の電気的な品質を評価した結果、MOSFET
の電気的特性はL−SPE
成長の成長モードの変化と対応して変化することを明らかにした。第6章では、横方向固相エピタキシャル成長領域を拡大するための試みとして、局所ドーピング法 と堆積
Si
膜の厚膜化について検討する。局所ドーピング法は、シード領域に直交してライン状の局 所ドーピング領域を設けることにより、ドーピング領域を先行して結晶化する横方向成長が隣接する ノンドープ領域のL―SPEを促すことを狙ったものである。ドーピング領域近傍(2ym‑off)において ドーピング領域と同様の速い成長が得られ、これにより、約14 ymの長い横方向成長をノンドープ 領域において実現でき、有効性を確認した。L‑SPE
における非晶質Si膜の厚さの影響は、本章の検討により初めて明らかになったもので、厚 膜化に伴い、横方向成長速度の増加、11101
ファセット成長距離の増加など、デバイス応用上望まし い成長が得られることがわかった。一旦厚膜で堆積した膜を薄膜化しても同様の成長が維持できるこ とから、厚膜化が膜質の改善をもたらしたものと考えられる。第
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章では、非晶質Si
の成膜条件を最適化するための指針の明確化を目的に、L‑SPE成長特性に 及ぼす膜堆積時の基板温度の影響について検討を行なった。膜堆積温度を低くするほどL‑SPEの{1101
ファセット成長速度が速くなることを見出した。{1101ファセット成長速度が細孔の径Dmと 細孔中心間の距離dm
との比Dmldm
で決まることを示した。モデルにより予測される{110)ファセッ ト成長速度のDmldm依存性を実験結果とを比較したところ、両者はよい一致をみたことから、モデ ルの定量的な妥当性が確認できた。また、本章においては、L‑SPEプロセスの量産プロセス適用に向 け た展 望 とし て 、CVD
法 に よる 非 晶 質Si
膜 形成 の 重要 性 を 提唱 し 、その可能 性を探っ た。第8章では、本論文の結論を述べている。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 長 谷 川 英 機 副 査 教 授 雨 宮 好 仁 副 査 教 授 福 井 孝 志 副 査 助 教 授 橋 詰 保
学 位 論 文 題 名
横方向固相エピタキシャル法による シリコン単結晶薄膜形成の研究
21世 紀の 高度 情報 社会 では 、社 会 のす みず みま でネ ット ワー クが 行き 渡る ように し 、全 ての 人々 があ らゆ る局面で、安全に、高品位の情報 を入手・共有・交換できる よ うに する こと が強 く要 請されている。このため種々の情 報通信システムの高度化が 求 めら れ、 すべ ての 情報 通信ハードウェアシステムの根幹 に位置してきているシリコ ン 大 規 模 集 積 回 路 に 対 し て も 、 革 新 的 高 性 能 化 が 緊 急 に 求 め ら れ て い る 。 超高速・超高 密度集積回路を実現するため、シリコン産業のロードマップに沿って、
Si‑On‑Insulator(SOI)構 造が 導入 され つっ ある のは 、その現われのひとっであり、
SOI構造 は今 後益 々重 要と なる と考 えら れて いる 。集 積回路の重要な性能指標は、素 子 の動 作速 度と 集積 度で あり 、これまで、プレーナ構造上で、素子サイズ・回路パタ ー ンを微細化することにより、高速化と高集積化が達成さ れてきた、。SOI構造の導入 は 、シ リコ ン層 自身 の薄 層化 により、素子サイズ・回路パターンのさらなる微細化を 可 能と する ので ある 。ま た、SOI構造の上にMOS電界効果トランジスタ(Metal‑Oxideー Semiconductor Field‑Effect‑Transistor: MOSFET)を作製した場合、従来のMOSFETに 比 べ接 合容 量が 減少 し、 動作 速度も飛躍的に向上される。また、各能動層が絶縁膜で 分 離さ れて いる ため 、微 細化 にともなって深刻になるソフトエラーの低減化が期待で き る。 さら に、 積層 集積 が可 能 なSOI構 造形 成技 術が 開発されれぱ、アクティブデバ イ ス の 積 層 集 積 が 可 能 と な り 、 集 積 度 や 機 能 の 大 幅 な 向 上 が 期 待 で き る 。 本 論文 は、 この よう な背 景の もと に、 積層 集積 が可能な低温のSOI形成技術として 重 要 とな ると 期待 され る「シリコン単結晶薄膜の横方向固相エピタキ シャル成長法」
に 関 して 、そ の結 晶成 長機構を明らかにするとともに、シリコン膜厚 の制御性を向上 し 、 かつ 、横 方向 工ピ タキシャル領域の拡大を実現する成長プロセス の開拓を試みた も の で あ る 。 本 論 文 は8章 か ら 構 成 さ れ て い る 。 以 下 に 各 章 の 要 旨 を 示 す 。
第1章では、本研究の背景と 目的を述べている。
第2章で は、 本研 究に 関す る従 来 の歴 史に つい て述 べ、 他のSOI形 成技術と比較 し て 、 横 方 向 固 相 エ ピ タ キ シ ャ ル 成 長 法 の 特 色 を 明 ら か に し て い る 。
第3章で は、 局所 ドー ピン グ と基 板段 差構 造を 利用したシードレス固相成長技術 を
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検 討し た結 果に 関し て述べている。基板段差構造とライン 状の局所ドーピング領域を 直 角に 交差 させ る方 式により、交差部における段差・ドー ピングの相乗効果が生じ、
核 の選 択形 成を 実現 する こと を明 かに し てい る。
第4章で は、 基 板表 面清 浄化 技術 とし て、 んス パッ タエッチングプロセスの検討を 行 って いる 。こ の方 法は 、固相エピ タキシャル成長温度と同じ程度あるいくはそれ以 下 の低 温で 行な える 特徴 があ る。micro‑Probe RHEEEDを用 いた んの 昇温 脱離 過程の 詳 細な 評価 より 、a‑Si膜 を堆積する 直前のアニールによりんを気相中に廃棄すること が 、 基 板 表 面 清 浄 プ ロ セ ス と し て 有 効 で あ る こ と が 見 出 さ れ て い る 。 第5章 で は 、 シ ー ド 付 き 固 相 成 長 に よ るSOI構 造 の 形 成 とそ の評 価結 果、 およ び MOSFETの 試 作 と そ の 評 価 結 果 が 述 べ ら れ て い る 。LL‑RHEEDを 用い た結 晶方 位の 解 析 によ り、Si02膜上 の領 域で のSi層の 固相 エ ピタ キシ ャル 成長 が確 認さ れて いる 。 ま た、 試作MOSFETの 電気 的特 性は 、横 方向 気 相成 長の 成長 モー ドと 強い 相関 があ る こ と が 明 ら か さ れ て い る 。
第6章で は、 横 方向 固相 エピ タキ シャ ル成 長領 域を 拡大するた めの試みとして、局 所 ドー ピン グ法 と堆 積Si膜の 厚膜化について検討した結果を述べ ている。シード領域 に 直交 して ライ ン状 の局 所ド ーピング領域を設けることにより、 隣接するノンドープ 領 域の 成長 速度 を増 大さ せ、 ノン ドー プ領 域 に14LLmの横方向成 長領域を形成するこ と に成 功し てい る、 。ま た、 非晶 質Si膜の 厚 膜化 によ り、 横方 向成 長速 度の 増加 、 {110)ファセット成長 距離の増加など望ましい効果が得られることをも明らかにしてい る。
第7章で は、 非品 質Si膜の 成膜 条件 の最 適 化を 目的 に、横方向 成長特性に及ばす膜 堆積 時の 基板 温 度の 影響 につ いて 検討 を行 なっ てい る。 膜堆 積温 度を 低 くす るほ ど {110)フ ァセ ッ ト成 長速 度が 速くなるという新しい結果を見出し 、これが非晶質Si膜 中に 存在 する 細 孔に 関連 付け ている。そこで、細孔がエピタキシ ャル成長を妨げると いう 新し いモ デ ルを たて 、定 量的 解析 を行 い、{1101ファセット 成長速度が細孔の径 Dmと 細 孔 中 心 間 の 距 離dmと の比Dmldmで決 まる こと ・を 示し てい る。 さ らに 、こ れ を実 験結 果と 比 較し 、モ デル の定 量的 な妥 当性 を確 認し ている。最後に、CVD法によ る非 晶質Si膜 形 成を 検討 し、 横方向成長プロセスが量産プロセス ヘ適用可能であるこ とを 結論 して い る。
第8章では、本論文の結論を述べている。
こ れ を 要 す る に 、 本論 文は 、積 層集 積が 可能 な低 温のSOI形 成技 術と して 重要 な
「シ リコ ン単 結晶 薄膜 の横方向固相エピタキシャル 成長」に関して、その結晶成長機 構を 明ら かに する とと もに、Si膜厚制御性の向上と 横方向領域の拡大を実現する成長 プロ セス を開 拓し 、い くっかの有益な知見を得たも のであり、半導体工学の進歩に寄 与す ると ころ 大で ある 。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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