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薄膜の形成とメソ細孔構造制御

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Academic year: 2021

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(1)

.序論

メソ多孔体(メソポーラス物質)はゼオライトな どのミクロ多孔体と多孔質ガラスなどのマクロ多孔 体との中間に位置する物質であり,その細孔径は

50nm程度である.均一な大きさの細孔をもち,その 細孔径分布は非常に狭いのが特徴である.組成や 元六方構造,層状構造,立方構造など細孔構造は多様 化しており,細孔の空間的な配置も規則正しいものが 多い.ゼオライトの小さな細孔では対応できない大き な分子や気体などの吸着・触媒作用などに対する材料 として期待されている.メソ多孔体が大きな分子や気

メソ多孔体

SBA-15

薄膜の形成とメソ細孔構造制御

田尻 恭之1)・香野  淳1)

(平成201130日受理)

Preparation of Mesoporous Silica SBA-15 Thin Films and  Mesostructure Control

Takayuki TAJIRI1) and Atsushi KOHNO1)

Received November 302008)

Abstract

Mesoporous silica SBA-15 thin films with hexagonal mesostructure have been successfully prepared  on Si substrate by spin-coat method.  The mesostructure of SBA-15 films was controlled by synthesis  conditions of the coating solution.  The lattice placing d(100) showed the increasing tendency with  increased synthesis temperature and time, resulting in the increase of the pore size. In addition, the  value of d(100) was controlled by the mole ratio of triblock copolymer in the coating solution.  The 

d(100) showed monotonic increase as the mole ratio of triblock copolymer solution to silica one was  decreased.  This increase is attributed to the increase of thickness of the silica framework.  X-ray  diffraction analysis showed that the one-dimensional pores of the prepared SBA-15 thin films were  aligned parallel to substrate surface.  Finally the mesostructure can be controlled by synthesis condi- tions of the coating solution independently of the crystal orientation of the substrate.

1) 福岡大学理学部物理科学科,〒814-0180 福岡市城南区七隈8-19-1

Department of Applied Physics, Faculty of Science, Fukuoka University, 8-19-1, Nanakuma, Jonan-ku, Fukuoka,  814-0180, Japan

体を吸着することができるという特徴を用いて,ガス 分子の物性研究[14],メソ多孔体薄膜の作成[59]やそ れを応用したガスセンサーの開発[10, 11]などの研究が おこなわれている.また,その均一な細孔構造を生か す方向として細孔を鋳型として用いて細孔中でナノス ケール物質の合成を行い,ナノスケール物質で顕在化 するサイズ効果に関係する研究もおこなわれている[12

15].メソ多孔体薄膜の細孔中でこのような微粒子を 合成することができれば,サイズ制御された微粒子を 薄膜中に配列させることが可能となる.

本研究では次元細孔を持つメソ多孔体SBA-15 薄膜化を行った.メソ多孔体の細孔の配列を制御して

(2)

薄膜を作成するためには,薄膜中のメソ構造を明ら かにし,その形成プロセスを制御することが重要であ る.本研究の対象物質であるSBA-15は,アモルファ スシリカの壁で隔てられた次元細孔が規則正しく配 列した次元ヘキサゴナル構造をしている(Fig.

⒜の内挿図参照).その細孔構造は界面活性剤の自己 組織化を利用して形成される.合成条件を変化させる ことにより細孔サイズやシリカ壁の厚みをコントロー ルすることができ,粉末試料では細孔サイズを

30 nmの範囲で変化させることができる[1618].また,

850℃の高温においても細孔構造が保持されており,

耐熱性にとても優れた物質である.薄膜中のその 元細孔のサイズおよび配向の制御を行うことを目的と して研究を行った.本研究ではスピンコート法を用い SBA-15薄膜を直接SiおよびSiO2/Siウェハー上に 作成し,その細孔構造と配向性を調べた.

.実験

メソ多孔体SBA-15の細孔構造は界面活性剤の自己 組織化を利用しているので,メソ構造の制御方法とし て塗布溶液作成時の反応時間,反応温度,組成比の 変化があげられる.よって,本研究では反応時間,反 応温度と溶液組成比を変化させSBA-15薄膜を作成し た.均一な膜厚を持つ薄膜を作成するためにスピン コート法を用い,p-type Si(100)ウェハー上に薄膜を 直接形成した.また,細孔構造が基板の結晶面によっ て変化する可能性があるので,この点を明らかにする ため,Si表面上にアモルファスSiO2を形成したSiO2/ Si(100)ウェハー上にもSBA-15薄膜を形成し,その構 造を調べた.

 薄膜作成に使用する塗布溶液は,まず界面活性剤で あるトリブロックコポリマーP123PEO20PPO70PEO20 とエタノールの混合溶液,およびシリカ源となる

TEOSTetraethoxysilane)とH2OHCl,エタノー ルの混合溶液の種類の溶液を作成する.その後,こ 種類の溶液を混合・攪拌し,一定温度で所定の時 間反応させ塗布溶液を作成した.この攪拌時の反応時 間,反応温度およびTEOSP123のモル比をそれぞ れ変化させSBA-15薄膜を作成した.P123TEOS 対するモル比をxとし,本研究ではx0.0080.034 範囲で変化させた.また,反応時間は分〜48時間,

反応温度は25℃〜80℃の範囲で変化させSBA-15薄膜 用塗布溶液を作成した.この塗布溶液を上記の種類 の基板上にスピンコート(10001500rpm(10sec)

20003000rpm(20sec))し,乾燥,焼成(450℃, 時間)を経てSBA-15薄膜を得た.焼成により薄膜中 の界面活性剤が取り除かれ,それに伴い細孔が形成さ

れる.

フ ー リ エ 変 換 赤 外 分 光(FT-IR)(FTS 7000  spectrometer; DESILAB) とX線 回 折(XRD)(Xʼ  Pert PRO system; PANalytical B.V.)を用いて作成

したSBA-15薄膜の構造の評価を行った.

.実験結果および考察

Siウェハー上に作成したSBA-15薄膜(x0.034 反応温度:40℃,反応時間:時間)のFT-IRスペ クトルをFig.に示す.図中の吸収ピークはSiO2 帰属するものであり,全測定領域においてSiO2に帰 属するスペクトル以外のものは観測されていない.以 上のことから,塗布溶液中でミセルを形成していた界 面活性剤が焼成過程を経て完全に取り除かれ,SiO2

を成分とする骨格のみの構造となっていることがわか る.他の塗布溶液の組成比,反応時間,反応温度で作 成した薄膜試料においても同様な結果が得られた.

Siウェハー上に作成したSBA-15薄膜(x0.0204 反応温度:75℃,反応時間:30分)のXRDパターン

2θ-θスキャン)をFig.⒜に示す.六方晶系P mmを反映した(100),200)の回折ピークが存在し,

これより次元細孔が次元ヘキサゴナル構造に配列 していることがわかった.(100)面の回折ピークから

Braggの条件より面間隔d(100)を見積もることがで きる.また,六方晶系における格子定数a0はa0× d(100)/3で求めることができる[16].細孔サイズはシ リカ壁の厚さが一定の場合はd(100)に比例する.塗布 溶液の合成条件により面間隔が変化するため回折角度 には違いが生じるものの,作成した全ての薄膜におい て同様な回折パターンが得られたことから,どの条件 でもヘキサゴナル構造となっていると考えられる.以

Absorbance [arb. unit]

2000 1600 1200 800 400

Wavenumber [cm-1]

Fig.FT-IR spectrum for the SBA-15 thin film (x

0.034, synthesis temperature: 40, time: 1 hr).

(3)

上のFT-IRXRDの結果から,d(100)は塗布溶液の 作成条件により異なるが,各塗布溶液で作成した薄膜 中のメソ構造は次元細孔が次元ヘキサゴナル構造 をしており,SBA-15薄膜をSi基板上に作成すること ができたといえる.

Figureの(100)回折ピークに関するΨ スキャンの結果である.Ψは基板表面に平行で回折 面(入射線と回折線を含む面)内にある軸のまわり の回転角で,表面と回折面が垂直なときをΨとし た.粉末試料では(110),(210),(220)回折ピーク が(100)と(200)回折ピークの近傍で観測されるが,

作成した薄膜の2θ-θスキャンに現れる回折ピーク は(h00)のみである.このことと,100)のΨスキャ ンの結果を合わせて考えると,次元細孔が基板にほ ぼ平行に配向していると考えられる.さらに,異なる

Intensity[arb.unit]

7 6 5 4 3 2 1

(100)

(200)

×50 (a)

Intensity[arb.unit]

80 60

40 20

0

(b)

Fig.The results of X-ray diffraction (XRD) for the  SBA-15 thin film (x0.0204, synthesis temper- ature: 75, time: 30 min ).   XRD pattern  measured by 2θ-θ scan and the schematic  drawing of the SBA-15 structure (inset), and 

 the profile of Ψ scan of (100) diffraction. 

塗布溶液を用いてSiウェハー上に作成したSBA-15 膜の(100)回折のpole figure測定を行った(Fig.).

測定範囲はφ=360°,Ψ90°である.塗布 溶液の作成条件にかかわらず,次元細孔はFig. からもわかるように基板表面にほぼ平行に配向してお り,また基板の特定の方向に配向する傾向は見られな かった.

 以上のように,様々な条件で合成した塗布溶液を用

いてSBA-15薄膜を作成することができ,溶液の合成

条件を変化させることによりメソ構造を変化させるこ とができた.以下に塗布溶液合成条件とd(100)の相関 について述べる.Figure⒜,⒝にそれぞれd(100)

の反応温度依存性,反応時間依存性を示す.ただし,

Fig.The  results  of  pole-figure  measurement  of  (100) diffraction for the SBA-15 thin films ( x0.0204, synthesis temperature: 70, time: 

45 min.  (b) the sample x0.0204, synthesis  temperature: 70, time: 2 hr).  The intensity  distribution was measured in the range of Ψ 

0-90 deg.  The dotted lines show Ψ3060 90 deg from inside to outside.

(4)

(a)においては各試料の作成条件が多少異なり,反応 時間が0.5時間の薄膜の結果をまとめたものであ る.同様に⒝は,反応温度が5570℃の試料の結果を まとめたものである.⒜においては温度以外,⒝にお いては時間以外の条件が全く同じでないために,Fig.

⒜,⒝は完全に正確な反応温度および反応時間依存 性を示しているわけではないが,定性的な変化を知る ことはできる.まず,塗布溶液作成時の反応温度によ る変化について示す.d(100)の反応温度依存性(Fig.

⒜)から,どのTEOSP123の組成比でも反応温 度の上昇に伴いd(100)が増加する傾向が見られる.ま た, 反 応 温 度 よ り もTEOSP123の 組 成 比 の 方 が

d(100)の変化に与える影響が大きいことがわかる.次

に,⒝の反応時間依存性から反応時間が長くなるにつ れてd(100)が大きくなる傾向が見られる.また,Fig.

⒜,⒝より塗布溶液の組成比とd(100)の相関が得ら れ,TEOSに対するP123のモル比が減少するにつれ d(100)が大きくなる傾向が見られる.これらは,参

考文献[]と同様な結果である.

ここで,SBA-15の細孔構造が形成される過程につ

いて簡単に述べる.溶液中で界面活性剤であるP123

はミセルを形成する.このミセルが凝集しロッド状 に連結する.このミセルロッドの疎水基にシリカ源 となるTEOSが結合し,このTEOSの結合したミセ ルロッドがハニカム状に連結する.以上の過程で,

TEOSが結合したミセルロッドの次元ヘキサゴナ ル構造が作られ,その後焼成を行うことで骨格部分に 含まれるシリコンが酸化しSiO2の骨格を形成し,界 面活性剤が取り除かれる.その界面活性剤が取り除か れた跡が細孔となる.溶液中で作られるミセルのサイ ズは反応温度の上昇および反応時間の延長に伴い大き くなる.焼成によってミセルを形成していた界面活性 剤を取り除き細孔を作成するので,ミセルのサイズが 80

60 40 20 0

d (100) [Å]

0.1 1 10

Time [hours]

TEOS : P123 = 1 : x x = 0.008 0.017 0.0204 0.034 (b) 80 60 40 20 0

d (100) ]

80 70 60 50 40 30

Temp [°C]

TEOS : P123 = 1 : x x = 0.008

0.017 0.0204 0.034 (a)

Fig.The synthesis temperature dependence and  the time dependence  of the lattice spacing  d(100)  of  the  SBA-15  thin  films.  The  broken  lines are guides to the eye. 

Intensity [arb. unit]

80 60

40 20

0

Si substrate SiO2 / Si substrate

(b)

Intensity [arb. unit]

8 7 6 5 4 3 2 1

SiO2 / Si substrate Si substrate

(a)

Fig.The results of XRD for the SBA-15 thin films  formed  on  Si  and  SiO2/Si  substrates.    The  SBA-15  (x0.0204)  was  synthesized  at 70  for 1 hr.   The XRD pattern measured by  2θθ scan, and  the profile of Ψ scan of  (100) diffraction.

(5)

大きくなるほど細孔サイズが大きくなることになる.

本研究で得られた結果は,Fig.⒜,⒝に示されたよ

うに,d(100)が反応温度の上昇および反応時間の延長

に伴い増大する振る舞いを示している.また,TEOS

に対するP123のモル比の減少に伴いd(100)が大きく なっている.これはTEOSの量すなわち骨格となる シリカ源が増加するために次元細孔を隔てているシ リカ壁が厚くなることに起因した結果と考えることが できる.

次元細孔の配向性やd(100)の基板の影響の有無を 調べるために,SiO2/Siウェハーを用いてSBA-15薄膜 を作成した.同じ塗布溶液を用い種類の基板上に作 成した薄膜のXRD2θ-θスキャンと(100)回折 ピークのΨスキャンの結果をそれぞれFig.⒜,⒝

に示す.種類の基板上に作成したSBA-15薄膜にお いてほぼ同じ回折パターンが得られ,等しいd(100) 持ち,次元細孔が基板に対してほぼ平行に配向して いることを示唆する結果が得られた.これは,細孔の サイズと配向性は基板に依存しないことを示してい る.また,Siウェハー上に作成したSBA-15薄膜と同 様に,細孔は基板に平行であること以外,配向性に一 定の規則性は存在せず,メソ構造は塗布溶液の合成条 件によりコントロールすることができる.

.結論

次元細孔が次元ヘキサゴナル構造をしたメソ多 孔体SBA-15の薄膜をスピンコート法を用いてSiおよ SiO2/Siウェハー上に作成した.塗布溶液の合成条 件を変化させSBA-15薄膜中のメソ細孔構造の変化を 調べた.メソ細孔構造の制御には種類の方法があ る.つは細孔サイズのコントロールであり,もう つはシリカ壁の厚さのコントロールである.メソ細孔 構造をコントロールするパラメータとして塗布溶液の 作成条件(反応温度,反応時間,TEOSP123の組 成比)と基板の計項目をそれぞれ変化させSBA-15

薄膜を作成した.作成した全ての薄膜は,XRDの結 果より,配向性の良い次元細孔が次元ヘキサゴナ ル構造をしていることが確かめられた.塗布溶液の合 成条件を変化させることにより薄膜中の細孔構造を制 御することに成功した.作成条件の変化に伴い面間隔 d(100)を約25105Åと変化させることができ,同条 件で作成した薄膜はほぼ同じd(100)を示し再現性があ ることも確認できた.d(100)は塗布溶液合成時の反応 温度の上昇および反応時間の延長に伴い増加した.こ れは,細孔の起源となる塗布溶液中で形成されるミセ ルのサイズが反応温度の上昇,反応時間の延長に伴 い大きくなることに起因している.つまり,薄膜中

の細孔サイズが大きくなったことを意味する.また,

TEOSに対するP123のモル比の減少に伴ってd(100)

が大きくなる傾向が見られた.これはシリカ源が増加 することによりシリカ骨格の厚さが増加したことを意 味する.薄膜中の次元細孔は基板に依存することな く基板表面に平行に配向し,また細孔サイズとシリカ 壁の厚さは塗布溶液の作成条件に依存する.今後,基 板上に作成したSBA-15薄膜の細孔中でナノスケール 微粒子を作成し,基板上にサイズ制御されたナノ微粒 子を配置する技術の開発を行う.

参考文献

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Fig. 1   FT-IR spectrum for the SBA- 15  thin film ( x =
Fig. 3   The  results  of  pole-figure  measurement  of  ( 100 ) diffraction for the SBA- 15  thin films ( ⒜ x = 0
Fig. 4   The synthesis temperature dependence  ⒜ and  the time dependence  ⒝  of the lattice spacing  d ( 100 )  of  the  SBA- 15   thin  films.  The  broken  lines are guides to the eye. 

参照

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