日 本 語 語 藁 の 研 究
はじめに 一 1 語葉と語葉体系 1-1 語葉の定義 1-2 語葉体系 4 2 単語b 3 語の形
目 次
1
2
2
2
7 9 9 3-1 語形b 3-2 日本語らしい語形と日本語らしくない語形ι寸、 3-3 音素の分布・機能負担量 3-4 拍の種類と構造 3-5 (1) (2) 同音語と類音語寸~ , 同音語4 類音語3-6
短し、語と長し、語(単音節語と多音節語) (1) 短い語♂ (2) 長い語4
語の機能 4-1 概念を固定化し伝達する機能 4-2 概念を拡充し徴密化する機能 白5
語の数匂… 5-1 ことばの権 5-2 特殊な語ト 5-3 基礎語葉 5-4 基本語葉 5-5 基幹語葉 町 5-6 理解語葉と使用語葉 5-7 語数とカバー率 6 語の出自(語種)。
-1 日本語の語葉の中の非固有成分 6-2 和 語 (1) 語形 (2) 音象徴語 (3) 品詞 (引語義と造語力1
nU ヴ a Q U ハ υ A U O A “ 1 i 1 i T i Q A O A O A お お お お 沼 お お お 幻 却 日 明 日 目 白 節 句 口 均 祁 m m mほ6-3
漢 語 (1)語形 寸 (2) 音象徴語 寸み』勾 (3) 品調同3恥 (母語義と造語力 (5) 漢語の身元 6-4 外来語(洋語)6-
5
混種語干司←
6 語種と語葉徴標‘ 7 語の構成と造語法川曽7-1
語のなりたち h 7-2 語構成と造語法 7-3 語の構成成分(単位) 7-4 語の構成 7-5 複合語とその成分 ヲh 7-6 造語に伴う変音現象 (1)連濁 培 (2) 転音柿,t. (3) 音便 (4) 音韻添加 (5) 音韻脱落(
ω
音韻融合 (り連声 (8) 半濁音化 4 (9) その他4 7-7 統語構造のし1ろし1ろ (1) N=今V構 造品"む (2)VF
宇V
2
構 造 ト仕ト (3) NA=今V構造日勾令 (4) A=今V構造 (5) AD=今V構造匂 (ωN=今NA構 造 唱吋 (り N=今A構 造九(
8
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80 80 84 84 85 86 86 89 ド トドれ ぐ1
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108 108 109 114 115 116 116 116 116 117 117 117の も の た も せ た さ ろ せ 列 置 い さ 並 前 副 本 陣 崎 ろ 列 を 査 造 量 . J W 造 造 , 造 い 並 分 構 構 構 造 心 構 構 造 構 の を 成
A
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一 / ‘ 、 、 , t ‘、 , t 、、 円t 畳語(重複構造) 名 詞 ... ~ 動詞 2 守忌 巴 ~ , ., ~ ~ . ~ ., 円 ・ " ',・..
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, .・, .・.,嘱唱 3 ,・ι.喝、 形容詞,.・ 司ι
語 辛 -宇 詞 新 川 性 瞬 間 四 副 感 そg
接 接 n UG
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月t 117 117 117 118 118 118 118 118 119 120 120 121 122 123 124 126 127 127 127 127 128 130 7-11 品詞の転成舎ヨも勾 ‘ .,~白 勾吋 省酢、 、 <.,~ 謁砂 唱"" 136 (1) 語形無変更 U 凶旬制剤, .叫,.~弘匂民"".,旬託 臼ゆ迫可 ド同托吋 F μ d 恥句川十日 い 136 (2) 語形変更 申合齢旬仙・4ト・両":九,μ" !智旬格予ヲ.,唱切地中・4唱旬淘司 レF舟 司、旬担ド 137 7-12 造語法や‘,.砲 が 噌 4 許 a 唱~ ~ ,吟唱 場指柿唱'‘ ト噌 島 唱b 司、d何 3、、見』之喝 138 (1) 語根創造唱詮智句切..ー,.駐屯'"~ ~ . ~ . " ..結 F 世鼻咽肘~~ ~ " .,"マ..'('.'融“屯指,,ρ 恥日 138 (2) 既存の語葉資料の利用 負J、暗シ!唱 k ド匂 ‘ 十 〈ぜ持 ト μ ト叫 139a
合成."' 岨 4ド‘ 叫 時 惨恥~ "、./.- 伊 同 叫 時 139 b 混講 cf
昔用 " d 縮約 時い 日 九 、 ι岬町ト 叫可 e 文字による造語 ,. f逆成 ‘.8
語の意味。初、J ν 8-1 語義と指示対象 白,.,E
143 144 145 148 150 152 1528-2 意義素・意味象徴 ・b・..~ " . .,‘〉‘ 噌 匂 喝 事~ . ~・, . β , 154 8-3 範列的関係と統合的関係 、 句 、,り,. μ6・匂』咽寸" 155 8-4 反義・類義・対義・偏義 a忌F時島 シ巳唱 ・ ・f忌砂、,,訪.". 156 8-5 原義・転義 ・aト 日"", 可 亀戸、4蜘 .., " ~ 、.4レ咽陶 159 8ー-6 単義・多義~ ~ .,! ..~ 苧・ ." ,トぜ忌恥・4ぞ... ~ .' ... > .. ト 1 時~ ~・ 叫酔 ι ,事,.ι." 160 8ー 7 いろいろな意味 、吋b ・補'、喝 、巳,.,指,-μ,事~ , ..., ~ 恥‘内亀歩"ム,匂唱 ト" " 161 (1) 具体的な意味 守ド司d 巴 ド噌‘'時 叫砂 刷 ‘ 叫 ,.. 崎山 υ 守吋トー・岨帽 161 (2) 文法的な意味.,;匂'"ぜ,.".守唱伽白‘",白、句 . ~ "伽,,,忌,.i.,モト 弓.",,ト齢、お屯匂を 162 8-8 複合語の意味 "1.'柚 6 酔偶.,"".,叫..h ド咽 ‘ゐμ 句、前,,柑叫 163 8-9 語感 ・号唱"", 祖~ ,. 斗,u・lモ ,.,唱おa喝淘1・4 担、や‘也 ., 1, "'、.噌♂?吋",,,,,, ,," 166 (1) 指示対象に由来する語感 ‘ν ~ • .,・♂., ,・ , ,炉・噌も4幼砂柿崎:..,唱が手〉鈍, 167 (2) 語の素性や使用法に由来する語感 、 時 旬 ..,均、 可 唱" 167 (3) 語形などに由来する語感4 ・u唱"-幹"事3恥.',ぜ・ 姐' ‘“ ~ . ~ " ~唱,.,ι 4・ 167 8-10 語棄の体系と連想 品句 、ド? 判ト4 トl咽""I恥 屯-,1" "持 ,"" 168 8-11 語義の変化,,省',砂;',τ, 、,予唱e・..$ , .,..~ ..母唱, ,伽問 砂 五. 172 (1) 具象→抽象4ぜμl匂時 """ ,角叫ト lた時 可 吋 ト 4,・,旬唱 柑ド噌〈肘勾 、"" 173 (2) 空間→時間 h匂噂争・可也l恥話♂Z嘗晶司 ・ 白むヰ.,手喝た引忌k ν 6がF担脚, ,手 .,'.・巳〆恥語 173 (訪 空間→血縁・心理 ι唱・ (必感覚の移行何' 1句 (5) 一般化・唱" ., 174 174 174 4 w D 5 門 4 門 i 円t -i 1 ム 唱 i 昇 落 上 下 化 の の 殊 値 値 特 価 価
。
7
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語の表記ト却 少ー1 表記法と語意識‘泊, 9--2
没正書法性 ,, 177 177 争-3
漢字正字意識と好字志向 4 争-4 漢字と仮名の機能分担 ‘' (1) 片仮名語 噛也抱口込山制ー (2) 漢字語 177 178 類義異表記 ι , ,記""~ ~砂 守毎号本る伊 b9
9
0
0
0
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2
3
3
口 口 四 凶 同 時 四 時 国 (3) ローマ字語d 9--5 9--6
(1) (2) け 部 語 分 と 記 き 記 表 書 表 同 (3) 同義異表記IV
争一7 文字列,唱,宅,"、,4・e , ,句 、.",白",‘~ .,..~ " ~ ~ 、 砂ぜ"",伊 も, " "略 " 184 10 語葉資事ト辞書と語葉表ー ,ι b唱トド叶トV叫",噌 吋 や 匂 吋 作 187 1かー1 辞 書,-<~ ..唱,,宮唱$何 唱 蜘 喝 、4ト.., ~ ~ .,ト唱与胡 ι 4 " ' " 4砂,.,. 187 (1) 辞書の現実旬喝、1 吋ト,., "守句喝 ト ,.,,叶'" '匂島 l,.守~ , ., " ~ " ..ド,. 包唱 187 (2) 望ましい辞書の要件降 ・ 処5・e嘘"",‘・会、母 ρ~• " " ~ , "'~惨&唱、臨・ U 島., 190 (3) 主な辞書⑩噌旬、 ー 可吋ト ~., ~ 右,叶勧h伊.~ .,、噛俳,,食れ令‘ 昔戸、特,寸齢 191 1か一2 語葉表など",.,'"・",ハ、句~ ..'.柿 ,、北白",通咽p,・.,~ , ~ " ・ " . '. ~ド l 砂".ー, 192 11 対照語葉論 ・斗ト 唱“ 奇寸砂 4噌匂場ト 6ぞ号持釘俳・ 1唱ト9・ 喧噌見f、暗,.,‘ 11-1 個々の単語の対照 b 11-2 語葉体系の対照.,.., 194 194 195 11-3 語葉構造の対照 ←ν L品 目 “ 担 " , "叫ド~ , 4 "九 日肺伊喝A 肘 匂!酔 e・咽 195 11-4 造語法の対照 ,¥・,‘・針通、 , ・,"匂,ι。 島,,ち♂,.,.."..,・匂,.喝ト ・h噌S♂奇 196 12 語葉教育一内容と方法 μ 守ドリ,ぽ吋.1 唱助町 ・a恥 '" . .. .' " . ~砂、、刷" , 、f静 ♂ 198 12-1 語葉教育の内容..,.,.,セ事品主勾れず~ ~ <.費、寸ト :匂 ・ , .暗旬.,,捗酢., " '" 198 (1) 初級レベル.、守"~ ,命・・-;~加 初制 b 喝 " ~・., ~ D ,‘ b屯・ 争予叫砂 6・時""""",,,,, 199 (2) 中級レベルι 1、.,,. ゐ ふ 匂噌・.h, り 吋 時 j'.,匂句寸ト← h喝,., 199 (砂上級レベルι子会、 ,,"'守、.四・, ,白4・9争d信・"-".,、、 ー 200 12-2 語葉教育の方法 ".I旬唱ι 1崎唱 吋!ト ・ト ト町 ι " ., 句 ",,, 200 おわりに -参考文献
V
204 206はじめに
言語の習得に関して, (単語)と(文法)の両面が大切だと言われることが多い。し かし(単語〉と言い, (文法〉と言っても,それらが,切り離して別個に扱えるもので ないことは,少しでも言語を科学的に考察しようとした人には理解されるところであ ろう。文法規則にいくら通暁していても,相当数の単語を知っていなければ,現実の言 語の運用は明らかに不可能である。一体,単語を知らずして文法規則に通じるという こと自体,ありえぬことである。上述したきわめて常識的な考え方にも,言語のあり 方と言語研究とにおける基本を見てとらなければならないであろう。 日本では,生きのよい魚として喜ばれ,端午の節句の「のぼり J になったり,球団 の名前になったりしている「鯉Jは,中国の「登竜門j の話の影響もあって,とかく めでたい魚という好印象がつよい。また真鯉は食用に供されることも多い。しかし, 一般に魚を食べることの少ないヨーロッパの内陸部の国々では,r
鯉Jは汚い泥水の中 にいるサエナイ魚であり, ドイツでもクリスマスの時を除いては食べられることも珍 しく,r
男児の成長jや「立身出世Jのイメージとはどうしても結びつかないものであ る。また,一般の日本人は「山J を,緑の木々でおおわれているものと考えているこ とが多いが,北アメリカでは,雪をいただく岩山と考えるのが普通のようである。 ‘Longman Lexicon of Contemporary English'の mountainの項には,“avery large and high hi 11, especially of bare or snow-covered rock"と記されており, Albrecht Reumの‘ A bictionary of English Style'が挙げている mountainの代表的な連体修 飾語 (epithets) の中にも,“wooded" (木の茂った)はあるが“green" 緑色の)は ない。国土が平坦で,海抜 180 メートルの山が最高峰であるデンマークではr
山J ( “bjerg")という語による比喰にも,風土的な制約がつきまとっていると考えられる。 単語の世界は広くかっ深い大海であって,形と意味の 2つの領域にわたっている。 また,言語の他の部門である音韻・文法とはちがって,生活の様式・伝統文化などと の関わりも深いため,その全体像をつかむことも容易ではない。先に「鯉Jや「山 J を例にとって触れた内包や連想や比輸の研究は,もっともむずかしい分野であって, それらの分野における外国語との対照ということになると,一層困難は大きくなり, 今後の研究にまっところが多い。 以下本論文では, 日本語の共時的・対照的研究として,語集について総覧し,日本 語の語葉面での特徴について分析考察する。 11
語 藁 と 語 葉 体 系
1-1 語 葉 の 定 義
「語葉」は,英語の vocabulary, フ ラ ン ス 語 の vocabulaire (又は lexique), ド イツ語の Wortschatzなどに相当する語で,中国語の詞葉
G
司、に〉と閉じである。「葉」 は「はりねずみ,たぐい・なかま,集める・集まるjとし寸意味をもっ文字で,r
語葉」 という語の中で用いられているのは,その 2番 目 の 字 義 で あ る 「 た ぐ い ・ な か まJで あろう。ただし,諸橋轍次著『漢和大辞典~ (1960) には「語葉Jの見出し語はあるが, 出典は挙げていない。本邦での用例としては,文部省編輯寮の書物名としての『語葉』 (明治 4年)が古く,島崎藤村の『落梅集』や宮本百合子の『伸子』などにも使用例が 見 ら れ る 。 漢 語 「 語 葉Jは,その字義のごとく「語の群がり,語の集まりJを指すの であって,個々の語(または単語,英語の word,フランス語の mot,ドイツ語の Wort, 中国語の単調)を指すものではない。俗に,ある特定の単語を指して「語葉」という ことがあり,文学・語学の専門家の中にも,特定の語をとりあげて,r
そ の 語 棄 の 使 い 方 は 正 し く な し リ な ど と 言 う 人 が あ る が , も ち ろ ん こ れ も 「 語 葉 」 と い う 語 を 誤 っ て 使った例である。「語葉Jを少し厳密に定義するとr
一 定 の 範 囲 に お い て 行 わ れ る 語 の集合である」ということになる。 たとえば,ある時代とか,ある地域とか,ある集団とか,ある世代とか,ある作品の 中 で と か , あ る 個 人 の 家 庭 生 活 の 中 で と か い う よ う に , 通 例 な ん ら か の 限 定 の つ い た (語の集合〉を指す。具体的には,r
王朝時代語葉J,r
近 松 語 葉J,r
漁村語葉J,r
近畿 方 言 の 語 葉J;r
ブラジノレ移民 2世・ 3世 の 語 葉J,r
枕 草 子 の 美 的 語 葉J,r
現 代 新 聞 雑 誌の語葉J,r
小 学 校 1年 生 の 理 解 語 葉J,r
山岳語葉」などというふうに用いられる。 眼定を最小限に,つまり範囲を最大限にするとr
日本語の語葉J とか「英語の語葉J とかになる。この場合は,過去から現在まで使われてきた, 日本語や英語の単語の総 体 を 指 す こ と に な る 。 さ て , 最 後 の 限 定 も と り 除 い て , た だ 単 に 「 語 葉 」 そ の も の に つ い て 考 え る こ と が あ る だ ろ う か 。 そ れ は , 一 般 言 語 学 ・ 言 語 理 論 の 上 で は 行 わ れ る が,普通は特定の言語についてroo
語 の 語 葉Jとじて論じられるものである。1-2
語 葉 体 系 さて,r
語 の 集 合jとされる語葉に体系があるかという問いが発せられることがある。 言語を構造的にとらえる場合には,音韻・文法・語葉・文字(あるいは表記)というふ うに,分野を分けて考えるのが通例であるが,このうち語葉を除いた音韻・文法・文字 (表記)については,誰しもその体系の存在を疑う人はいない。しかし,語棄について は体系を云々することをはばかる人もいる。だからこそ(語棄に体系はあるか) (汐文 2社 新・日本語講座 1
W
現代日本語の単語と文字J
1975 の第 3章《前田富棋氏執筆))) といった立論がなされるのである。 しかしながら,語業体系を全面的なかたちでは認めない人でも,ある部分,ある範 曙内の語棄については,体系の存在を否定することはできないであろう。親族呼称・ 身体部位名称・階級名称・指示詞(コソアドことばともいう)・擬音語や擬態語などの 音象徴語がその例となる。このうち,親族呼称は自然レベルの体系であり,階級名称 などは人為レベノレの体系である。またパラダイム(語表)に示されるような指示詞や 音象徴語は言語レベルでの体系を示していると言える。 次の図のような親族関係語葉を見ると,r
自分Jを中心にした立体的な構造のあるこ とがわかる。これは,われわれ日本人が外界の存在である親族に対して付けた呼称の 体系である。この体系の要素の一つ一つに名としての語が与えられているので,結果 としてそれらの語の集合である語棄にも体系が見られることになったと考えられる。 その意味で, (自然レベル〉という呼称がふさわしいと考える。 しかし,このような部分的な語業体系が常に(自然的・外在的〉なものであるとは 図 1 親 族 関 係 祖一一千且 tH._祖 父 一 「 母 父一「母 l オ-
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/J オ---計一一一一---ハ 〆、--ー一ー守ーーーーー 同9・ ン' 、 シ ン. ニL ニエーーーーーー 内ーァーウ トl
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弟 市il 自分 配偶者 J.... ム I~ ス ス----メ コ一一一ーーヨ 一一「ーメ '・-:;> "7 マ ゴ ゴコ 、 戸 『 ( ム ム ム ス ス 久 コ メ コ 3 /ーー、、、 = は 夫 婦 関 係 J Ill は親子関係﹂限らない。たとえば,係員一係長一課長一部長とか,巡査一巡査部長一警部補ー警部 一警視-警視正とかの役職や官職の名称をとりあげてみよう。これらは人間社会の 1 つの約束によるもので,時代や社会のすがた,会社や機関の規模・組織実態と関わる ことが多く,それなりの永続性はあっても変更可能なものである。その意味で,先の 場合と対比して, (人為的〉と呼んでもよいだろう。チチとノ¥ノ¥の間に「チハJ とか, 自分とムスコの問に「ジムJ とかいった中間者の設定・存在が考えようもないのに対 して,
r
課長心得jとか「課長補佐」といったポストの新増設や廃止ができるのとは対 照的である。近くは,警察官の階級の中に「巡査長」が新設された例があり,遠くは, 旧日本陸軍で長らく「伍長勤務上等兵Jが慣例的に行われ,やがて「兵長J として固 定した例がある。 いずれの言語の中にも,このような部分的な語葉の体系があり,その中には上述の ように自然的なものと人為的なものとの別があることがわかる。前者は,個々の言語 を越えて普遍的に存在するもので,後者は,当然のことながら,個々の言語ごとに有 無の差があり,分布のちがいがあるものである。以上のような自然レベル,人為レベ ルの体系のほかに,言語レベルでの体系がある。日本語の指示詞は,英語・フランス 語などのそれよりも整然とした体系をもつものである。 表 1 指 示 詞 ( コ ソ ア ド ) の 体 系¥¥
+レ +コ +チラ +ッチ 十ナタ +イツ +ノ +ンナ +引き音節 コー コレ ココ コチラ コッチ (コナタ) コイツ コノ コンナ コワ ソー ソレ ソコ ソチラ ソッチ (ソナタ) ソイツ ソノ ソンナ ソウ アソコ (アナタ) 、 、 アー ア レ (アスコ・ アチラ ア ッ チ アイツ アノ ア ン ナ アア アコ) (カナタ) ドー ドレ ドコ ドチラ ドッチ ドナタ ドイツ ドノ ドンナ ドク 意 味 もの 場 所 方角 方角 人(敬)・ 人(卑) 指 定 形 容 積 子 (方角) 品 詞 代 名 詞 i車 体 詞 ilJ 詞 また,日本語の音象徴語は,コリア語などごく少数の外国語を除くと,諸言語の中 でもきわめて高い体系性をもっていると言える。これらは, 日本語の中の言語的な制 度として存在していて,諸言語に共通する制度ではない。また「課長Jr
課長補佐Jの ようなレベルの語ともちがっていて,使用しないですますこともできないものである。 いわば日本語の特質を形成していると見られる体系である。 4さて,体系という観点から,言語構造の各レベルを眺めると,音韻体系・文字(表記) 体系・文法体系という順に,体系性が高い方から低い方へと並ぶと見ーられる。そして, このあとに語業体系を付け加えることができる。私見では, この高から低への順は, 体系をなす要素(元とも。‘ elements') の数の少ない方から多い方への順と同一であ ると言える。換言すれば,体系性の高低は, 要素 の数 の大小とは逆の関係になるので ある。要素が少ない音韻(音素‘ phonemes') の場合は, 1個の要素の増減も,ただちに 体系の破壊・変更につながるので,容易には行われないが,語業の場合は,要素が無 数に存在するようなもので,基本的でない特殊な単語の増減はまったく自由であって, 現実にも間断なくそれが行われていると見られる。音韻のような固い体系を, (閉じた 体系) とか(閉ざされた体系〉 とか呼ぶのに対して, 語葉の一般に見られるゆるい体 系を, 〈聞いた体系) とかく開かれた体系〉 とか呼ぶ。 さらに具体的に述べるならば, 現代日本語の母音音素は5種であって,アオイ (青い・葵・青井) と発音するときに, アの代わりに/a/や
/
a
/
を使ってみるなどということはゆるされないが,(/ /内は音声 でなく,音韻としてとらえられた音を示す。音声の場合には[ ]が用いられる。)r
苦 痛 を覚えたJ という代わりに,少し通俗性を避けて「痛苦を覚えたJ ということなどは 容易なことである。また, 「あざ笑うJという語の代わりに「馬鹿にして笑うJという ことができるが,音素列/ude/(腕)を他の音素を借りて表すことは絶対にできない。語 棄のレベルでは, ここに例示したような言い換え,別語の使用がきわめて簡単に行わ れるのである。文法体系は, ちょうどこの音韻体系と語葉体系の中間に位すると考え られる。 当為・当然の表現として「ナケレパナラナイJ のほか, 「ネパナラヌJ「ベキ デアルJなどが選択可能であり,推量の表現として「ラシイ Jr
ヨワダJなどのほかに 「ミタイダjを使うこともできる。 しかし, 語葉の場合ほどには, 選択・交換は自由 でない。共同行為者を表す格助詞は「トJ であって,助詞相当連語を加えても 「トト モニJr
トイッショニJなどわずかしかなく,交換範囲が隈られていて,語葉よりは体 系が固いと見られるのである。 ここに上述した日本語の語葉の部分体系の例を整理し て示す。 語 { 自 然 的 : 親 族 呼 称 な ど 委 │ 人 為 的 : 階 級 名 称 な ど系
l
言語的:指示詞・音象徴語など ここにフランス語の一対の語がある。 pere:mere ‘p訂正は「父J, em訂正は「母」を意味する語である。今もしとても論理的にものを 考える人が,これらの 2語を教えられたとすると, ‘ー訂正は「親」 を意味する要素で,5
‘p-'は「男性Jを, em-'は「女性Jを意味する要素と考えるかもしれない。教えられ た2語を,考えられる要素 3項に分析したわけで,そこまでの過程には少しも誤りは 含まれていない。(誤りは,推論の前提
r
2
語が論理的に構成されたものであるJ とい うところにある。)次に同じ人が「男きょうだいjを意味する‘fr訂正を教えられたと しよう。この人は,先刻の分析の誤りに気づいて,すぐ‘ー色re'を「肉親jとか「親族J を意味する要素であったと修正するだろう。そして,音声学の知識があれば,両唇性 は「尊属J を意味するなどという,前項要素に関する微調整も行うかもしれない。し かし,自然言語についてこのような分析を施すことはパ、ずれ早晩行きづまるはずであ る。f女きょうだしリを意味する‘ s@ur'を与えられたら,r
親 族Jを意味すると考えた ‘一訂正が含まれていなし、から,推論がすべて御破算になり,万事休すである。現実の 言語の単語の中には,ごくわずかに, p色re mereのような語形と意味とのある種の相 闘を感じさせるものがあるが,大部分はどんな似寄りも感じさせないもの同士である。 以上,語の意味について,あるいは,語の意味と語形の両面について,体系を考え てきた。しかし,語葉体系というものは,もう少し広く解釈して,語の使用率につい ても語の出自についても考えられるべきものである。それらについては後の章におい て考える。 62
単 語
前章では,r
単 語J(r語J)について定義することなく,r
語 葉j を「語の集合Jと定 義した。ここではr
単 語J (r語J) について考えてみなければならない。 単語はもちろん言語単位の一つである。伝統的な言語学では「比較的独立性をもっ た,最小の意味的な統一体」と定義されてきた。意味をもった統一体としては,大きい 単位として「文章J,次に「文J,その一部分としての f段 落J,次に「節j,次に「文 節」があげられる。独立性を問題にしなければr
白さ」の「ーさjや,r
おじいさん」 の 「 お -Jr
ーさん」なども意味をもっている単位として数えることができる。しかし, 独立性という条件を考えるとr
ーさJr
おーJr
ーさんJなどは明久かに除外される。 では,r
)
1
1を渡る」の「を」や,r
転 ば ぬ 先 の 杖Jの「転ばJr
ぬJr
のJなどはどうか。 独立性とい5
基準だけからは,どれも資格をもたなし、から,単語ではないという結論 にならざるをえないであろう。しかし,次のように考えることも可能である。「転ばJ はたしかにそれだけでは自立して用いられない形であるがr
転 ぶJr
転 べJという自 立的な形(つまり単語)と並ぶ 1形 で あ る 。 そ し て 「 転 ばJ が別個の独立した単語と 考えられるならば,r
ぬJも別単語と考えられることになる。また,り11Jr
渡るJr
先j f杖Jに高い独立性が認められるならば,それらの聞に置かれている,残余の成分と しての「を」や「の」にも,結果として独立性が認められることになる。伝統的な定義 の中に「比較的 J という暖味な部分が入っているのは,このような言語の実態が反映 しているのである。フランス語の‘ de la France' (フランスの,フランスから)は 3 語であるがに‘ duJapon' (日本の,日本から)は 2語なのか,‘ du'は‘ de'+ ‘le'の縮 約形だからやはり 3語と数えるべきか。基準の立て方が常に問題になるのである。イ エスペルセン (0. J espersen)は英語の副詞・接続詞・前置詞・間投詞は一括して「小 辞J (particle) として扱うことを提案している。一般に,独立性という基準から見れ ば,名詞がもっとも高く,動詞がこれにつづき,最後に冠詞がくることになろう。まず 品詞そのものが言語ごとにそのありょうを異にし,また印欧語のようには品詞を分け ることがむずかしい中国語のような言語もあるわけで,あらゆる言語に適用できる単 語の普遍的な定義を考えることは不可能に近いと言わなければならない。日本語の場 合,印欧語に比べると,形態素('morphemes' )はかなり高い独立性をもっていると考 えられるので,助詞・助動詞をもひとしく単語として扱うのが普通である。 単語はもちろん形態ぬきに考えられるものではない。そして,観念の単位や事物そ のものの単位と必ずしも一対ーの対応をしているものでもない。「菜の花Jはもともと は 3語であったが,現代では l語になっている。しかし,同じく(名詞+助詞+名詞) という構造である「猿のこしかけ J は依然 3語である。このような場合,アクセント 7の山がただ 1か 所 だ け か ど う か と い う よ う な 外 形 的 な こ と が あ る 程 度 ま で は 基 準 と し て 用 い る こ と が で き る 。 し か し こ れ も 絶 対 的 な も の で は な い 。 体 操 競 技 の わ ざ の 一 つ である「後方まきつけとび出し一回ひねり」というのは,単語か否か,街頭の投函用ポ ス ト を 指 す 「 明 治 四 十 一 年 式 上 方 差 し 入 れ 下 方 引 出 し 直 立 円 筒 赤 色 郵 便 箱Jは単語か 否 か 。 ア ク セ ン ト の 単 複 は 単 語 認 定 の 大 き な よ り ど こ ろ で は あ る が , 後 に 述 べ る よ う に , 長 単 位 の も の に つ い て は ア ク セ ン ト だ け で 判 断 す る こ と が で き な い 。 ま た 「 横 車 を押すJ
r
顔が広しリのような慣用匂は,句末を除くとほぼこの形のまま用いられるか ら,単語の一部である複合語と閉じ性質をもっていると言える。このように見てくると, 「最小の意味的な統一体」という規定も,形態と関連させて理解される必要があり, 最 終 的 に は 個 々 の 社 会 , 個 々 の 時 代 の 言 語 主 体 の 共 時 意 識 に よ っ て 決 定 さ れ る こ と に なる。「菜の花」はまさに時とともにとらえ方が変わった例である。イエスペルセンの い う よ う に , 語 の 認 定 は , 意 味 の 面 だ け か ら で も , 形 態 の 面 だ け か ら で も で き な い こ となのである。 語および語葉の諸相を研究の対象とする学問は「語葉論 J(lexicology,lexicologie, Wortkunde) と呼ばれるが,語葉論から見ると,日本語の語は, (1)形 (2)意 味 (3) 出自 (4) 機 能 (5) 構 造 (6) 位 相 などをもっている。また,語葉は, (i)計量 的側面 (並)構造的側面 (温)運用的側面 な ど か ら 考 察 さ れ る こ と が 多 い 。 語 葉 論 が , 体 系 的 記 述 を 目 指 し 全 体 を 捉 え る の に 対 し て , 辞 書 は 個 々 の 語 に つ い て 個 別 的具体的な記述をするという点で,対照的である。 83
語 の 形
3-1 語 形 一般には・発音・文字・文法上の形態などを総称して「語形Jということがあるが, 厳密には,個々の単語を成り立たせている音素(‘phQnemes'.単音を一定の基準によ り解釈整理して抽出したもので,最小の音韻論的単位)または音素列を「語形J とい う。例示するならば,動詞「書く jの 未 然 形 の 語 形 は 「 書 かj だ,のように使うのが 一般の使い方である。日本人は,語を書き表した文字(表記形)のことをしばしば語 形と考えて,r
抜と抜とは語形がちがうJとか「飛白と緋とでは語形を異にする Jとか 言うことがあるが,これらは文字・表記レベルのことであって,語形というのは正し くなくr
表 記 形J というべきである。 前章で触れたように,単語は一定の形と一定の意味をもっている。その「一定の形j とは,一定の音素,または一定の音素列を指している。「山」は/jama/,r
川jは/kawa/ というように,いくつかの選ばれた音素が一定の順序で並んでいる。単語の中には, 「胃J/i/,r
絵J/e/,r
尾J/
0
/
,r
毛J/ke/,r
目J/me/のように短いものもあって,音素がただの 1個であるものも, 2個以上であるものもある。また単語の中には,
r
端j - , ・ . ,,
.
.
/hafi/と「箸J/hafi/と「橋 J/hafi/と「鳴J/hafi/のように,音素の種類と配列が同 じであって,アクセントだけが異なるものがある。こういう単語の組はいわゆる「同音 異義語jまたは単に「同音語Jと呼ばれている。(もっとも,後述するように「同音(異 義)語jはアクセントの異聞を問題にL
ない概念であるから,当然同一アクセントであ る「止場Jr
千 葉Jr
飼養Jr
使用Jr
試用Jr
私用Jr
仕様」もそれらとはアクセントの ちがう「姿容Jr
枝 葉Jもすべてが同音語である。同様に「どうかJr
同価Jr
同化Jr
銅 貨Jr
道 家Jや「高 Jr
鷹Jr
多 寡Jr
他 科Jr
他 課Jr
多 価J なども互いに同音語関係に ある。)形という語を広く解釈すれば,アクセントも語形の中に含めて考えられるが, 通例アクセントは音素とは別の「超分節音素J(または「かぶせ音素」‘ suprasegmental phoneme') の lつとされるものであるから,上に記したように,一般にアクセントを 考慮外において,音素だけで語形を考えるのがならわしである。 なおr
牛乳J と「ミルク」や「遊星」と「惑星Jや「リラ J と「ライラック」のよ うな,意味上いちおう等価と見なされる単語の組が存在するが,し、ずれも語形が異なる から当然別語として扱われる。f南 京 豆Jr
落 花 生Jr
ピーナッツ」のように 3種以上に なっても,閉じように別語とすることには変わりはない。(ただし,菓子販売業者間では, これらは異なる商品を指す語とされている。) しかし,語形のちがいが小さい場合,たとえば「やはりJr
やっぱりJr
やっぱしJ, 「むずかししリ「むつかししリ,r
舌 つ づ みJr
舌づっみん「さんしょくすみれJr
さんし 9きすみれj,
r
とくしょJr
どくしょJ (ともに読書)のような場合は別語扱いをしない のが普通である。これらは,いわゆる「語形のゆれj といわれる現象の例である。こ の場合も,同語・別語の判断をする基準は,厳密には立てにくいであろう。「しわがれ るj に対する「しゃがれるjは口頭語の中での転靴形であるが,一般にはそれほど使 われる形ではなし、からr
ゆれJの中には入れない方がよい。「くんだり Jはもと「下 りJから生まれた形ではあるが,r
都会から遠く離れた辺地」の意味になっており,かっ
r
xx
くんだりjのように地名に後接して接尾辞的にしか使われなし1から,やはり 「ゆれJ としては扱えない。単語ではないが,r
ーさまJr
ーさんJr
ーちゃんJの聞に もちがいが認められるので,r
ーさまJから出たもので用法も似ているが, 3形を「ゆ れJ と認めることはできない。すなわちr
ーさま」には独立の名詞用法がありr
さ まさまJr
さまざまJのような重複形式があるが,あとの 2者にはない。「ーさん」に は「ゾウさんJrおサルさん」のような用法があるが,r
ーさまjにはない。「ーちゃんJ には,姓や役職名のあとに付ける用法や,r
ご苦労さまJr
おはようさんJr
お疲れさんJ のような用法がなく,反対に「運ちゃんJr
ワンちゃんJのような独自の用法があるか らである。(ただし,近年一部に,姓の一宇をとって,近藤氏を「こんちゃんj,沢井 氏を「おさわちゃんJなどと愛称ふうに呼ぶことがある。)3-2
日 本 語 ら し い 語 形 と 日 本 語 ら し く な い 語 形 「ボ、パ ナJという人の名前がある。もちろん片仮名で書かれているが,かりに平仮 名で書かれていても,日本の人の名前とは考えようもない。「ボj という拍(モーラ emora') ぢr
パj という拍も「ナ」という拍も,どれも日本語の中で程度の差はあ っても使われている拍である。にもかかわらず,r
ボパナJという名前が,日本語らし くないという強い印象を与えるのは,r
ボJr
パJr
ナJの 3個の拍のそれぞれの位置か 配列順序に起因していると考えるほかはない。語頭の「ポ、j,r
ボ」の直後の「パj,r
ボ パ」のあとにつづく「ナj,こういう拍の種類と位置と連なりにこそ,日本語らしくな いとの印象の原因が求められる。では次のような語については,どういう印象がもた れるだろうか。 A ザブキ グジニア ピ ド ゴ シ ュ チ ブ グ グ ダ ニ ス ク B シ パ ス カ イ セ リ ア ダ ナ ツ ズ マ ラ チ ャ A群と B群とを比べるとき,多分 A群は日本語らしくなく B群は日本語らしいと感 じる人が多いであろう。(ちなみに言えば A群はポーランドの地名, B群はトルコの 地名である) 以下に具体的な拍と拍連続(音素と音素列)をとりあげて,語形面での日本語らし さについて吟味する。1
0
(1) チ ュ ー シ ャ ・ ミ ュ ー ・ リ ャ この 3者はどれも和語(以下「固有日本語」の意味で用いる。参照「語の出自」の 項)とは考えられない。チューシャは漢語(参照「語の出自jの項)にも漢語以外に もある語形であるが,ミューやリャは漢語にもないもので,外来語(参照「語の出自」 の項)であろうとの見当が付けられるものである。ミューは長さの単位μ。リャは外 来語にもない。(驚きなどを表す感叫語としてなら,臨時的にリャが使われることがあ るかもしれない。「ればJから転じたリャが
r
寒けりゃ行かないよJのようにぞんざ いな口頭語の中で用いられることがあるが,自立語ではない。) これらは,古い日本語にはなかった劫音の拍を含んでいるために,日本語らしさを感 じさせないと考えられる。チューシャは 2個の劫音の拍からできており, リャはラ行 音が語頭にあるため,いっそう日本語らしくなくなっている。スザク(朱雀,スサカと も。ただし,スは「朱」の呉音)やゲンザ(験者.栃木・秋田などでトンボの 1種 オ ニヤンマを指す。「修験者Jの上略語。児童による山伏への連想から生まれた語)のよ うに,劫音の拍の直音化が行われたのにも,表記法の問題とは別に音韻面での和化の力 がはたらいていたことが考えられる。フランス語の‘jupon' ジュポン)が日本語に 入って「ズボン」になったのも, (ベチコートやスリップからズボンへと意味上の変化 も見られるが)同じように劫音の直音化の例と考えられる。 (2) デビュー・ゲバルト・ダプノレベッド・パラ・ザマ;パパイヤ・ピペット・ポ プ ラ ; ギ プ ス ・ ペ ダ ル 語 頭 に 濁 音/
g
,z,d, bん 半 濁 音/
p
/
をもっ語は日本語として意識されにくい。まして, 濁音や半濁音の拍が連続する語形は,いっそう日本語印象を弱めるものである。パラ は外来語と感じる人もあるようであるが,言うまでもなく古語ウバラまたはイバラの 第 1拍が脱落したものであり,ザマは和語サマの第 1拍の有声化(=濁音)によって できた俗語形と説明されている。現代日本語の中には,もちろん濁音-
:
r
:
始 ま る 和 語 も ド ブ・ブタ・ガニマタ・パテル・ザラメ・ゴリ・ガラ・ジレルなどいくつもあるが,多か れ少なかれ俗語的印象の伴うのは避けがたい。また,濁音からは,混濁・不快・不整 合が感じられるという人も少なくない。そこにも濁音の特殊性,殊に語頭における稀 少性からくる特別の印象がはたらいているとおもわれる。 語頭の半濁音は,濁音よりもさらに珍しいという印象が強くなって, 日本語らしさ がさらに減少する。パパイヤ以下の3例は,もともと出現頻度が低くて珍しい半濁音 の拍の連続であるから, 日本語としては語音構造上きわめて珍しい部類に属するもの である。ギプス・ペダルのような濁音と半濁音の拍の連続もやはり珍しい特異なもの である。 このように語頭に濁音・半濁音の拍をもっ語は,いわゆる擬音語・擬態語などの音 11象徴語を除けば, 日本語としては珍しいものであるため, 日本語らしくないと感じさ せることとなるのである。とくに半濁音の方は,漢字音としては語頭に立つことは皆 無であるので,半濁音が語頭にある語は,和語である確率は小さく,漢語である可能 性は完全にないと考えて差し支えがない。結果として,‘p-の形の語は外来語である 確率がきわめて高いということになる。(近松門左衛門の『冥途の飛脚』の中に「同じ 事とよ豊川に,声の高瀬がさす腕には,ぱま,さんきう,ごう, りう,すむゐそれそ れ何と J とあり,また『浮世風 g~ にも「ちゑいパマくわいといふものだっさ j とあ って
r
パマj という語が使われている。このパマについて,一部に漢語とする注釈な どがあるが,数字「八J の入声韻尾の消失した近世中国音を模したものと考えられる から,日本漢字音と見ることはできない。パマは漢語とは考えられない。詳しくはr
6
語の出自」の項において論じる) (3) テープ・マーチ・コード~..ヒーヤリ・ボート・トーイ 引き音節 (2拍分の長さをもっ「長音Jの後半 1拍分の引きのばされた部分をいう。 引きのばされた部分は, 5種の異なる母音音素であるが,引きのばされるところに共 通の弁別的特徴があると認めて,単一の音韻論的単位と見なす場合にこの術語を用い る)を含む語は,必ずしも非日本語的とは言えない。現代日本語では,トーイ(遠い), オーキイ(大きい), トール(通る),コージ(麹)など,和語にも引き音節をもって いる語がある。また,音象徴語で,表情化・象徴化の手続きとして引き音節をもつこ とになったヒーヤリc
r
冷やすJから)や音象徴語ではないが閉じ手続きによったと考 えられるマールイやマルーイ(ともに「丸しリから),あるいは,音象徴語の変異形と 考えられるスート(rスト」・「スットJから),ヌート(fヌットjから)などいろいろ あげることができる。しかし,マーチ,ヒーヤリ,ヌート,マノレーイなどの引き音節 は,マー,ヒー,ヌー,ルーなどの長音が漢字音には存在しなし、から,これらが和語 でなければ,漢語ではない外来成分ということになるものである。 日本の漢字音には/a:/や/
i
:
/
は存在しない。また,ウー,ズー,ブー,ムーやミュ ーなども存在しない。したがって,このような拍とそれにつづく引き音節を含む語は漢 語でないと判断して差し支えない。引き音節自体は,自本語の中で決して特異なもの ではないが,漢語と外来語を除外すると,引き音節を含む語はかなり少なくなる。全 体として引き音節も日本語印象を弱めるはたらきをすると言えるだろう。多分,引き音 節が日本語の歴史の中で珍しい存在でな〈なったのが,平安時代以後であるという事 実と関係しているであろう。 (注) 日本漢字音の分布については,玉村文郎「日本語の音韻の概説J(r国語シリ ーズ 別 冊 3W日本語と日本語教育一発音・表現編-~ 1975J)を参照。 (4) ロ ー ズ ・ イ オ ー ・ オ ロ シ ャ 12古い日本語は語頭にラ行音をもっていなかったと考えられている。助動詞の中の完 了の「りJ,推量の「らしJ
r
らむJ,接尾辞の「らJr
ろ」などは,いずれも自立して 文節の頭に立つことのない付属成分である。だから,ローズ,リク,ラクダ¥ルーム, レンズなどを,吟味ぬきでいきなり和語でないと判断してもよい。これらは,漢語で なければ他の外来要素,つまり外来語であると考えられるものである。ローズ(ろう ず・破損のため売り物にならなくなった商品。ロズ「撞頭」からできた語と考えられ る)も漢語由来であろう。イオーはユオーから変化した語形で,漢語「硫黄J に発し ていると考えられる。 /liu/→/rju/→/rju:/という変化の過程をたどってできた「硫」 の漢音とは別に,古く語頭のラ行子音を忌避して, /r-/のない/ju/から生まれた語形と考えられる。/li u huang/-今/rjuhuang/→ /juwau/→ /juwa/または→/juwo:/→/juo:/
としづ過程が考えられる。また呉音/lu/→/ru/→ /ju/という過程も考えられる。古語 としては「ユワJ という形があった。ただし,ユオーの語源としては別に「湯の泡J 「湯泡J を想定する説があるが,十分な説得性に欠ける。 「ノウゼンカズラJ (陵若かづら)は「陵若(害)J の字音レウセウ(リョウショワ) の転かと考えられているが,そうだとすれば,とれも語頭ラ行音回避の例となる。ちな みに「ノウゼンカズラJ を指す現代コリア語形は「ヌンソフワ J/nruosohwa/である。 以上は語頭位置にあったラ行音を脱落させたり変質させたりした例であるが,オロ シャ‘Russia'の場合は,語頭ラ行子音の準備音を顕在化させて,語頭ラ行音の前に 1 拍をつけて,元来の語頭拍を結果として第 2拍の位置に転じてしまうという手続きを とっている。このように,さまざまな手続きを経た変容によって,ラ行子音を語頭に 置かないよう‘にしてきたのが日本語の強い性格であったから,もし語頭にラ行子音を もっ語(付属語や接尾辞を除く)があれば,それは和語ではないと即決してもよいの である。 (5) サハラ・オホーツク・タフ・ゼヒ・キホー・アヒル・ハハ・タハタ・ゴホン 語中・語尾のハ行音の拍は,平安時代中期ごろから変化しはじめ,ワイウエオにな った。したがって,和語としては,語中・語尾にハ行の拍をもっているものは珍しい。 サハラ砂漠の名を習った日本人はサワラと読んでしまうことが,とくに戦前には多か ったが,これも歴史的かなづかいの干渉と,語中・語尾のハ行音の転化(いわゆる「ハ 行転呼音J)との影響であろう。第 2拍以後にハ行の拍をもっていて,明確に和語と認 められるものは,ハハ(母),ホホ(頬,ホオの語形のゆれ,ホオの新しい言い方と見 られる)など,きわめて少ないから,複合語タハタ(タ十ハタ)などを除けば,多く は外来要素である漢語と外来語と考えられる。ゴホン・エへン・オホホホなどは生理 的・感情的な感叫語で,和語ではあるが一般の単語ではなし1。語中・語尾のハ行の拍 は,日本語らしさを減殺するものである。
1
3
以上は,主として過去の日本語の内部において起こった「ハ行転呼現象jからの説 明であるが,このハ行子音は,早くに上田万年の
rp
音 考Jで考察され,今日 p>F >hの過程を辿ったことが認められている特別の音素である。ところで,近代英語の 子音頻度表(単形態素, 2音節までの語における)を見ると,/
h
/
は語頭では 238回 (24子音音素中第 8位),語中では 2回(最下位第 24位),語尾で、は/
w
/
,/r
/
と ともに O固となっていて,やはり語中・語尾では無視できるほど出現率が低いことが わかる(市河三喜編『英語学辞典~ 1940 研究社)。ちなみに印欧語のイタリック語派 では,/
h
/
は現実の音声的実現を伴わず,正書法上のはたらきしかもたない存在にな っており, 日本語の場合と同じく特殊な感叫語・笑い声に臨時的に現れるだけであっ て, もはや現代では音韻としては無視される存在である。 このように子音音素/
h
/
は,他の言語においても史的変化をこうむりやすい音素 であり,位置によっては影がうすくなる存在であることが指摘できるのである。日本 語史の重要な事象と見られる現象の中にも このように普遍的側面が認められるので ある。 (6) エレベーター・セレナーデ・ゲレンデ・ゲレツ・セケン・セメテ・デレデレ 日本語の母音音素はどのように用いられているであろうか。現代日本語の母音音素 のおおよその出現率を把握するために、論者は次のような調査を行った(参照 玉 村 文郎「日本語らしさJ←国語学会春季大会公開講演資料一 1989年 5月 於武庫川女子 大学)。すなわち、語形に特定の規制のない名詞を対象とし、日本語固有の性質を見る ために、現代語の和語の3拍語について調べた。調査資料としたのは『新潮現代国語 辞典(第 1版U
(1985)で、全 1408ページの 19.7切に相当する 278ページに見られた 818語を分析したものである。表2は、ア、キ・ギ、ス・ズ、テ・デ、ノ、ハ・パ・ パ、ミ、ユという語頭拍をもっ3拍名詞を調べたものであり、同表から 3拍名詞の第 2拍と第 3拍の位置での出現数の和は、/a/1211,/i/812,/u/442,/e/389/o/385である が、第 2拍 は/a/435,/u/165,/i/149,/o/123,/e/37 で/e/が最も少ないこと、第 3拍 は/a/776,/i/663,/e/352,/u/277,/o/262 で/e/の出現数が増すことなどがわかる。限 定した範囲での調査であるが、表2からは/
a
/
および/i/の2音素は出現数が多く、 しかも出現位置に制限がないのに対し、/
e
/
の出現数は少なくとりわけ語頭にその傾向 が顕著であることが知られる。調査の範囲ではテ(手)とデ(出)を語頭にもつ和語 が 126語見られ、またケ(毛・襲)、セ(背・瀬)、ネ(寝・根・値・子)、メ(目・ 芽)などにも/
e
/
を語頭にもつ幾つかの和語があるものの、全体的に見れば、なお他 の母音音素に比して/
e
/
の出現数の明らかに少ないことが認められるのであるo ちな みに、表3は漢語や外来語までも含めた調査ではあるが、やはり/
e
/
の出現率が最下 位であることを示している。 14表
2
3
拍 和 語 名 詞 の 音 素 分 布ぷぉ竺当世
k g s z t/c d n h b l U e。
ja ju jQI
N Q y' 合計 ア 1 156 2 25 20 6 29 9 17 l 6 1 4o
17 17 4 1 63 35 18 13 18 3 1 0 2 3 0 156 3 16 15 13 14 5 15 7 11 1 12o
28 19 0 1 38 55 6 28 20 2 3 2 0 0 2 78 2 79 1 5 7 9 5 10 4 2 8 2 5o
4 11 4 25 16 14 4 14 2 0 1 0 3 1 80 8 8 2 4 2 16 3 5 1 3o
14 13 0 15 26 6 23 7 0 0 2 0 0 1 ス・ズ 1 76 77 2 6 7 11 7 11 3 6 3 2 9o
8 3 1 27 18 18 6 6 1 0 1 0 0 0 77 3 7 18 3 5。
8 ワ 4。
4o
16 9 0 11 38 2 12 12 1 0 0 0 0 1 テ・デ 1 98 28 126 2 18 15 17 11 13 3 8 6 5 11o
15 1 2 50 20 32 2 21 0 0 0 0 1 0 126 3 9 25 4 12 7 13 3 11。
2 1 12 25 1 24 49 7 31 14。
。
。
0 0 1 / 42 1 1 2 1 2 0 0 1 0 2 1 1 2 2 2 l 5。
5 l 1 6 42 5 7。
4。
7 l。。
2 1 5 8 2 1 11 14 1 11 3 1 2 0 0 1 0 0 0 /、'"・,{1 145 12 2 23 15 14 13 9 28 6 19 l 4o
9 15 0 1 68 26 31 5 12 13 1 0 0 2 0 158 3 17 20 11 14 5 14 1 11 4 10 1 26 18 3 1 27 58 5 42 18 4 1 0 1 0 2 、 l 127 125 2 2 16 14 9 14 18 17 6 11 2 4o
10 0 1 36 15 32 2 28 5 2 2 0 3 2 127 3 12 21 10 8 5 15 6 3 8o
14 21 3 22 50 5 27 20 3 0 0。
。
。
ニエ 15;。
│ 1 0 3 │ 2 1 6 9 5 l 4 2 3 2 l 5 8 52 3 1 2 8 3 4 3 6 l 3。
2o
10 7 1 1 8 20 3 15 3 1 0 0 1 1 0 1 計818語 ( 注 左 欄 の1,2,3は そ れ ぞ れ 第 1拍 、 第2拍 、 第 3拍を指す) 表 3 <母音音素頻度表〉 / a /14.61%
/0/
1
3
.
0
8
/ i /1
0
.
9
6
/u/
7
.
8
3
/ e /5
.
8
2
計52.30%
染 田 利f言 「 出 現 頻 度 か ら 見 た 子 音 お よ び 母 音 の 特 性J (r
天 理 大 学 学 報 第49輯J) このように母音音素/e/は , 現 代 日 本 語 の 中 で , と く に 和 語 名 詞 の 語 頭 部 分 に お い て は 出 現 率 の 低 い も の で あ る か ら,/
e
/
の 連 続 と い う の は き わ だ っ て 珍 し い も の と い う 印 象を与える結果になる。 1967年 ご ろ に 流 行 し た 「 け め 子 の う たJと い う の は , 作 詞 者 が 創 造 し た 人 名 の/kemeko/と い う 音 素 連 続 ヱ 列 拍 の 連 続 が < 奇 妙 さ > と い う 印 象 を 与 15えるのに効果があったが,その際潜在力としてはたらいたのは,このような日本語に おける/e/の使用率の低さであったことが指摘できる.上掲の例語のうち「エレベータ ー」などは外来語・漢語であり,和語「セメテJ
r
デレデレJのたぐいは稀少例の代表 である。したがって/e/の連続はやはり日本語らしくないものとの印象を与えるもの と言える。 (7) ハ ッ ト リ ・ ヤ ッ パ リ ・ ソ ッ ト ー ・ ポ ッ ト ・ オ ッ ト ー 促音の拍/Q/の存在も,日本語らしさを低めるはたらきがあると考えられる。 /Q/も 古代日本語にはなかったと考えられており,現代においても多少とも雅語的でないと の語形印象が伴うものである。キト→キット,ピタト→ピタットのように音象徴語に はよく用いられ,ヤハリ→ヤッパリ,マタク→マツタク,マシロ→マツシロのように, 音の面で強調を示すときに/Q/がよく用いられる。促音音素/Q/の特殊な性質がうかが えるだろう。これらを通じて, /Q/が語形の表情化(論理的変化を伴わない,語の感情 価値の増幅)にあずかる度合が大きいと言えるだろう。なお,漢語のうち,元来入声 音をもっていたものが,複合語の前項成分に立っときには,後項成分の語頭音h.
t . k・S との関係で,カッパツ(活発), リッタイ(立体),ガッコー(学校),イッサイ (一切)のように/Q/に変わることがある。 (8) チ ョ ン ガ ー ・ ア ン ゼ ン ベ ン ・ イ ン タ ー ン ・ コ ン モ ン セ ン ス ・ モ ン ド ・ ヒンヤリ・タンマリ 按音/N/の拍も,やや日本語らしくないという感じを与える。 /N/も古い時代には存 在しなかったので,伝統的な雅語に見られることは少なく,逆に,外来成分や音象徴 語,近世ごろから登場した俗語に多く現れるためである。モンド(主水)はモヒトリ から転じたもので,ヒンヤリはヒヤスからの分出形ヒヤリに按音が挿入された形であ る。またタンマリもタマルから生まれた,按音添加形と考えられる。 モンド以下は和語であるが,ヒヤリとヒンヤリのように,また,ミナとミンナ,オ ナジとオンナジ,マガ(聞が)とマンガのように,有声音,とりわけ/
m
/
,/
n
/
の前に 接音/
N
/
の入ることが多い。総じて/
N
/
をもっている語は,古くからあった語から転じ てできた比較的新しい語であって,/
N
/
の印象は,典雅な固有日本語とは結びつかない と言えるのである。 以上,語形の面での日本語らしさを考えるのに, 日本語らしくない要素 8項をとり あげて,裏がわから眺めてきた。ここで,上記 8項をまとめてみると,r
よく使われる ものに日本語らしさが感じられ,反対にあまり使われないもの,珍しいものには感じ られなしリと言えるだろう。個々の音素や拍の出現頻度以外に,音素や拍の組み合わ せや位置も, 日本語らしさの多少を決する役割の一端をになっている。つまり,どん1
6
な位置にも現れ,どんな音素や拍とも結合して,よく使われる音素・拍が,もっとも 日本語らしいと感じられるのである。
(
0
直音と劫音 (証)語頭の清音と濁音・半濁音 (温)短音と長音(引き音節の有無) (iv) 語 頭 ラ 行 音 の 有 無 (v) 語 中 ・ 語 尾 の ハ 行 音 の 有 無 (vi)エ列音 (vn)促 音 の 有 無 (v孟)接音の有無 の 8項目のうち, (ili)までは左がわの方が標準的一般的で, 日本語らしいのである。 (お)(v) (vn)(岨)では無い方, (vi)ではエ列音よりも他のア列音などの方が日本語ら しいことになる。 レネベチオーゼ・セシリンケ・ミョクソイ・ゲセテ・ハシクのような音素列は,ど れも現代日本語では使われていないものである。つまり1 どれも語としては存在しな いものである。しかし,最後のハシクなどは,誰にも, 日本語の音素結合の目録内の 偶然のブランクに過ぎないと考えられるものである。上記の音素列について,多くの 日本人は最初のものから最後のものに進むにつれて, 日本語らしさが増すと感じるで あろう。 ここに見てきた語形面での日本語らしさはまだ十分には解明できていない。日本人 には,たとえば,セシリンケとハシクのいずれがより日本語らしいかに答えることは 簡単である。しかし,外国人にはそう簡単なことではあるまい。音素結合目録内の偶 然のブランクと日本語として受けつけられないような音素結合とを見きわめるために は,無意識的であっても日本語の語形の分布について体得している必要がある。3-3
音 素 の 分 布 ・ 機 能 負 担 量 前節で語形の日本語らしさを考えたとき,音素や拍の現れ方を基準にしたが,その ような音素などの分布を調べ分析することは,単に音韻論の推進だけでなく,語葉教 育にも資することが多い。機 能 負 担 量 (functionalburdening, functional load) というのは,ある言語にお いて,音韻論的対立が語の意味の識別に関してになう役割の軽重の度合のことであるo
別言すれば,個々の音素が語の意味の決定に消極的に関わる度合のことである。すで に,語形上の日本語らしさを考えるときに,素朴なかたちで機能負担量という考え方 をとってきた。
市河三喜編『英語学辞典j (1940年 第 1刷)には, (単形態素 2音節までの語にお ける子音頻度統計)が紹介されている。 類似の調査として, 3-2で一部を紹介した和語 2拍名詞の音素頻度表の全体から, 語頭・語中・語尾の各位置を総合すると,第 1拍では/ka/,第 2拍 で は/ri/の出現率 がもっとも高い。いま,これらを組み合わせると,和語2拍名詞の典型として, /kari/ という語形が浮かび上がってくる。雁,狩り,借り,仮り,刈りなどがいかにも日本 語らしい名調の姿なのである。
3-4
拍 の 種 類 と 構 造 音素は単独で,または他の音素と結合して音節 (syllable,syllabe, Silbe)をかた ちづくっている。その場合の音素のならび方には,どんな言語にもそれぞれ一定の規 律があって,まったく無規律というわけではない。すでに 3-2で触れたように,本書 では(拍〉という考え方で, 日本語の音節の特徴を捉える。 日本語の拍は,すべて次のA,Bのどちらかに属する。 A (1C +(1S+)] lV………・・・……… 一般拍 B N (援音), Q (促音), V' (引き音節)………特殊拍 Cは子音音素 Sは半母音音素 Vは母音音素を示す。 Sは,/
j
/
と/w/の 2音素だけであるが,現代日本の共通語では/jfにつづく母音音 素は/a
/
,/u
/
,/
0
/
の 3種だけ, /w/につづ、く母音音素は/a
/
1種だけである。 なお, ( ]や( )の中は非必須成分であることを示す。以下同じ。 以下に個々の拍を例示する。 AI lV (井,鵜,柄,尾など) A2 lC+lV (蚊,野,木,戸など) AJ lS+lV (矢,湯,世;和,輪など) A4 lC+lS+lV (茶,斜,署,著,序など) この型のときには Sとしては/j/だけで, /w/は含まれない。ただし,古い日本 語や方言音は別である。 A B 2種のうち, Aの拍は,語頭・語中・語尾のどの位置にも現れるが Bの拍は 語頭には現れない。また,r
からからJ→「かんらかんらJ,r
きと」→「きっとJ,r
ま るい」→「まーるい」のように,語中・語尾に挿入・添加されて,一種の表情化を強 める拍として用いられる。古代日本語には存在しなかったものである。その意味で, Bは特殊拍とされるのである。 なお,ここで、漢字音の構造についても,同様に記号化して示すことにする。個々の 漢字は,もとの中国での多様なタイプの単音節構造に関わらず,日本では次の一般式で18
表される 1拍 か 2拍かの構造になる。 核 ↓ (1CI+ (1S+)J lVI
、
I l l -E ' e B i l l -E, 〆
v
' E A+
γ
N
印 rill ﹄ 4 E f l l t+
r E p a -E E ﹄ E B E E E E E ι、
← 一 第 1 拍 ー → ( ← ー 第 2 拍ー→) この漢字音の一般式について,次の説明をつけなければならない。 ①VI以外はゼロであることもある。 ②Sは/
j
/
と/
w
/
の 2種であるが,/j
/
の出現率の方が高い。 ③/Q/
は 現 れ な い 。 た だ し , 熟 字 の 前 項 成 分 の 末 尾 部 に は 「 出 発Jr
一筆Jr
国家」 「率先J の場合のようにしばしば現れる。 ④V'は Vl が/e
/
,/0
/
,/
u
/
で あ る と き に し か 現 れ な い 。 カ ー , キ ー の よ う な 漢 字 音は存在しなし、から。 ⑤C2 は/
t
/
か/
k
/
に限られる。 ⑥V2は/
u
/
か/i/に限られる。 (⑤⑥から,一般式の第 2拍 下 段 は , 具 体 的 に は , チ ・ ツ ・ キ ・ ク ・ イ に 限 ら れ る。付言すれば, C 2が/
t
/
の場合, V 2が/
u
/
で、あれば漢音, /i/であれば呉音で ある。) ⑦/
j
u
/
,/
J
u
k
u
ん
/
j
u
t
u
/
,/
j
u
n
/
を末尾にもつ1
・2
拍 字 の 語 頭 音 は/s/
またはIzl
である。 具体的に例を示してみよう。 1Vl 阿 亜 以 宇 会 汚 lS+1V1 野 癒 余 予 和 話 lCl 十1VI 左 加 多 義 母 不 1Cl+lS+1Vl 斜 所 書 叙 朱 受 1VI+V' 英 映 王 応 lS+lVI+N 腕 湾 lS +lVl十1C 2十1V2 約 欲 惑 1Cl +lVl+V' 偶 答 経 数 清 合 1Cl +lVl+N 感 真 全 凡 鈍 寸 1Cl +lVl+1C2+1V2 角 徳 的 錯 月 罰 1Cl+1S+1Vl+1C2+1V2 熟 釈 直 若 辱 脈19
上記の日本語の拍の構造,漢字音の構造的知識があると,未知の漢語の確定につい て,次のように論理的に辿ることが可能である。例は,冬季オリンピックでのアイス ホッケーの優勝戦の T V実況放送のアナウンサーのことばである。 「さすがソ連チームの選手はキジンがはやいですね。j 上文中のキジンにはどんな漢字をあてるべきか。 一一次のような順で答えを考えてみる。 1) 漢字何字の語か。 1字か 2字 か 3宇か。なぜその字数だと考えるのか。 2) 2字以上と考える場合,区切りはどこにあるか。また,なぜそう考えるのか。 3) 結局キジンにはどんな漢字が当てられるのか。 一一(漢字音はすべて 1拍 か 2拍である〉から,キジンは「キ+ジ+ンJか 「 キ + ジンJか「キジ+ン」のいずれかであって 1字の「キジンJ は音読みとしては考え られない。ところが,
r
ンIN/J
は自立拍(すなわち第 1拍)にはならなし、から,上記 のうち,r
ンJを 1字とする「キ+ジ+ンJと「キジ十ンJとは成り立たない。また「キ ジ+ンJについてはもう 1つ問題がある。すなわち (C 2はI
t
l
かI
k
l
に限られる〉と いう条件にも抵触するから採用できないのである。したがって,キジンは「キ+ジンj としか分析しょうがないことになって, 2字漢語であることがわかる。結局,r
奇・帰・ 貴・杷・気・希・汽Jなどのグループと「人・仁・神 t陣・尋・訊・迅Jなどのグ‘ル ープから,r
…がはやしリとし1う文型に適合する動作名詞を想定して解を得ることにな る。こうして,意味・場面から「帰陣jだけがふさわしいものとして選び出されるこ とになる。 キジンの場合には漢字音しか存在しないが,時には音か訓か判明しないことがある。 なお,r
帰陣」はもともと「戦場に出ていた将兵がおのが陣地に帰ること」を意味して いたが,このように球技などにおいて味方のゴールに帰ることも指すようになってき ている。 3-5 同 音 語 と 類 音 語 (1)同音語 2つ以上の語をかたちづくっている音素の種類と配列がたがいに完全に同ーである 場合,それらを「同音(異義)語」‘homonym'と呼ぶことは先に述べたが,厳密には,同綴字の同音語 (the巴 担 ofa tent; the巴 担 ofthe earth)を可lOmonym'と言
い,異綴字の同音語 (gauge gage)を‘homophone'と呼ぶ。しかし,表記上(正字
法)‘orthography'の観念を有せず,それが習慣化していない日本語では,同一語を幾
とおりにも書くということもあって (泉貨紙:仙花紙, 涙 : 泊 : な み だ , 肝 腎 :
肝 心 な ど ),厳密な適用はむずかしく,