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Special Issue 特集論文 Invited Peer-Reviewed Article 招待査読論文 Formation of the Inbound Tourism Business Ecosystem: The Role of Tour Operators in Hawaii インバウ

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The Role of Tour Operators in Hawaii

インバウンド観光ビジネスエコシステムの形成

― ハワイにおけるツアーオペレーターの果たした役割 ―

Chiharu Kashiwagi

 *1 流通科学大学

柏木 千春

*1 University of Marketing and Distribution Sciences, Chiharu_Kashiwagi@red.umds.ac.jp

Abstract : Who and what comprise the tourism business ecosystem for the Japanese tourism market in Hawaii? To

answer this question, this paper focused on the behavior of an international tour operator (JTB Hawaii) and conducted a case study from the viewpoint of tourism management. We examined the process by which JTB Hawaii established their share of the Japanese tourism market by building various tourism-related businesses and supporting local communities, while simultaneously adapting to the changing times. This study suggests that JTB Hawaii’s actions included: (1) a bi-directional process that co-created economic and social values, (2) expansion to become a core tourism business for the entire region, and (3) implementation of survival measures as a private company by creating a public service organization.

Keyword : Tourism business ecosystem (TBE), Inbound, Destination management, Tour operator

要約:ハワイでは,誰が,いかにして,日本市場向けの観光ビジネスエコシステムを形成していったのか。本論文では,この問 いに応えるために,国際的なツアーオペレーターである JTB ハワイの行動に着目し,観光地経営の視座に立った事例研究を試 みる。日本企業が,時代の変化に適応しながら,各種の観光関連事業者や地域コミュニティと共に日本市場向けの観光事業を発 展させていく過程を追跡する。結論として,本研究は,JTB ハワイの行動には,①経済的価値と社会的価値を共創しようとする 2方向の形成過程があること,②独自の事業が地域全体の観光事業の基盤として拡大し,定着していったこと,③民間企業の生 き残り策が公的サービス組織を生み出したことを提示する。 キーワード:観光ビジネスエコシステム,インバウンド,観光地経営,ツアーオペレーター

Information : Received 1 December 2019; Accepted 24 December 2019

I.研究の背景と目的

1.研究の背景

日本政府は,観光交流人口の拡大を地方創生の柱とし ている。その牽引役として期待されるのが,日本版 DMO (Destination Management/Marketing Organization)であ る。2015 年以降,政府が推奨する「地域の稼ぐ力を引き 出す(Japan Tourism Agency, 2019c)」観光地経営組織 (DMO)の数は,候補法人を含め 252 団体に達している

(Japan Tourism Agency, 2019c)。

観光による地域が稼ぐ仕組みの構成員は,単一の企業 や産業に留まらない。観光地では,地域固有の自然環境, 文化的資源を核として集積した宿泊,観光施設,交通な どの主要な観光事業者が,観光サービス提供を支える地 域事業者や公的機関,住民など地域コミュニティの理解 と協力を得ながら観光客をもてなすことで便益を得る。 観光研究領域では,観光地における多様な構成員(観光 事業者,観光客,地域資源,地域コミュニティなど)間 の関係性に着目し,生態学上の概念である「生態系(エ

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コシステム)」として捉えた観光地経営の必要性が唱えら れている(Murphy, 1985)。

エコシステムの概念は,経営学研究領域においても「ビ ジネスエコシステム(Business Ecosystem: BE)」として 援用されている。始まりは,Moore(1993/1993)が「企 業を単一産業の一部ではなく,多様な産業にまたがる 1 つの BE の一部」と捉え,その生態系の中で,「異なる企 業や業界と共に競争あるいは協力しながら,価値を生み 出す」と論じたことに遡る。Murphy(1985)と Moore (1993/1993)のエコシステム概念の援用には,異なる点 がある。前者は,観光客を含む地域コミュニティ,地域 資源,観光産業との「均衡」を重視しているのに対し, 後者は,価値を享受する顧客を除き,価値を創出するた めに自らの資源を出し合い協働することで互いに便益を 得ようとする集合体(BE)に着目している。日本版 DMO が目指す観光地経営は,地域が稼ぐ仕組みを創造する「観 光ビジネスエコシステム(Tourism Business Ecosystem: TBE)」の育成と,持続可能な観光地であるための観光 事業者,観光客,地域資源,地域コミュニティで構成さ れる観光地エコシステムの均衡の管理が要求される。 近年,BE 概念を援用したイノベーション研究が蓄積 されつつある。その研究対象の多くは,製造業や IoT プ ラットフォーム業など企業間関係においてモジュラー性 の高い水平分業化された産業(Sugiyama & Takao, 2011) である。他方,観光サービスを対象とした研究は乏しく, 加えて,BE 形成過程(Eguchi & Senoo, 2015)や,生成 段階のアプローチ不足(La, 2012)など,動態的側面を 捉えきれていない(Sugiyama & Takao, 2011)。日本は今, 観光を地方創生の柱とし,地域の稼ぐ力を引き出す DMO の確立を目指している。このような状況の中で,TBE を 牽引する中核的なアクターに求められる資質や機能を整 理し,TBE 形成過程を明らかにしようとする研究は, DMOが,TBE 育成方策の計画と実行を講じる際に参考 となるだろう。 2.研究の目的と方法 政府並びに DMO の注目する標的市場が,訪日外国人 旅行者である。2003 年から開始した政府による外国人誘 客宣伝活動以降,2018 年の訪日外国人旅行者数約 3,120

万人(Japan National Tourism Organization, n.d.),旅行消 費額 4 兆 5,200 億円(Japan Tourism Agency, 2019b)と, 市場規模は堅調に成長している。拡大基調は,地域にも 広がりつつある。2018 年の訪日外国人延べ宿泊者数は, 過去最高の 9,428 万人泊に達し,その内,地方部1)での

宿泊が 4 割を上回る結果となった(Japan Tourism Agency, 2019d)。今後,外国人旅行者による地域経済効果の創 出には,「地域が稼ぐ仕組み」を創出するインバウンド 観光ビジネスエコシステム(Inbound Tourism Business Ecosystem: ITBE)の形成が求められる。 本研究の目的は,誰が,いかにして ITBE を形成させ たのかを知ることにある。中核的アクターによる ITBE 形成過程の理解は,DMO が,特定市場に対応したイン バウンド観光事業を推進する際に,TBE 形成の支援と観 光事業者,観光客,地域資源,地域コミュニティとの関 係性の均衡を保つ管理方策に活かすことができるだろう。 研究方法は,動的で経時的な変化の追跡が求められる ことから事例研究を採用した。研究対象には,国際的な 観光地ハワイに所在する日本の大手ツアーオペレーター (Tour Operator: TO)2)JTBハワイを選定する。ハワイは,

日本市場を観光産業の重要なターゲットとして成長させ た観光地であり,地理的(海に四方を囲まれた島),文化 的(特有の文化を保有),産業構造の基盤(農業から観光 へと拡大)の点で,日本と類似した特徴を持っている。 このような場に,日系 TO の中で,いち早く進出したの が JTB ハワイである。ITBE 形成における TO の機能に ついて 2 章に記すが,同社は,日本人の海外旅行市場開 拓段階から現在に至るまで,ハワイにおいて日本人観光 客が必要とする価値を届ける仕組み(価値システム)の 開発や,商品サービスの提供を事業者と共に創造する先 駆的企業である。したがって,JTB ハワイの企業行動の 変容に着目することは,ハワイにおける日本市場対応型 ITBE形成の過程を知る上で有意義であると判断した。 なお,情報源には,公的機関や企業,研究者によって 公式に発表された文書とインタビューから得られた口述 記録を採用した。その際,複数の証拠源の利用,証拠の 連鎖の維持,主要な情報提供者による事例研究レポート のレビューを行うこと(Yin, 1994)で,研究の妥当性の 確保に努めた。

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事例記述の前に,次章では,TBE 形成の仕組みを確認 した後,中核的アクターとしての TO の機能について述 べる。

II.TBE 形成と牽引役としてのツアーオペレーター

1.TBE 形成の仕組み

Sugiyama and Takao(2011)は,BE を「新しい価値創 造の構想の実現に対し,人工物の開発や生産などによっ て貢献しようとするエージェントの集合体」と定義した。 その際,「価値システムの構造」を価値システム,人工物 (商品やサービス)システム,組織間システム(BE)の 3層で表し,BE の境界が,顧客に価値を届けるシステム を起点に,人工物の開発,生産に必要な資源保有者を選 択することによって規定されると述べている。つまり, 価値システムの構造は,BE 構成員の選択と範囲を規定 しながら BE を形成していく仕組みとも言えるだろう。 Eguchi and Senoo(2015)の研究では,BE 形成過程の

枠組みとして価値システムの構造(Sugiyama & Takao, 2011)の各層を引用している。

図 1 は,Sugiyama and Takao(2011)の概念図を基に, 観光地における価値システムの構造(TBE 形成の仕組 み)として作成したものである。この図では,彼らが BE による価値創造のための商品やサービスなどの開発や生 産の仕組みを「人工物システム」と名付けていたのに対 し,「資源システム」と読み替える。その意図は,観光地 経営の観点から,観光商品の基礎単位として(非人工的 創造物である)自然環境資源が存在すること(UNWTO, 2007),自然環境資源の有限性や制御不可能性といった人 工的,人為的な操作の難しい性質を意識したことにある。

本研究では,Eguchi and Senoo(2015)と同様に,図 1 で示した構造上の各層を TBE 形成過程の枠組みとして, 中核的アクター3)の行動を追跡する。 2.キーストーン種 TO の事業特性:TBE 形成に及ぼす 正と負の側面 Moore(1993/1993)は,BE 全体に恩恵をもたらし, 観光地の価値システム構造(TBE 形成の仕組み)

価値システム

資源システム

個別資源を結合した商品・サービス ービジネス・エコシステムで創出される資源ー

組織間システム

ービジネス・エコシステムー

個別資源を保有するアクター

「何を(価値)」

「どのような方法で届けるか」

「どのような

資源(商品・サービス)

を使って」

「誰が」「誰と共に」

「誰に(ターゲット)」

出所:Sugiyama and Takao(2011)の概念図を基に,筆者が作成したもの 図 1  

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変化に直面した際の生き残りの可能性を高めることので きる存在を生物学から引用して「キーストーン種」と呼 称する。本研究では,BE 形成を牽引するアクターを 「キーストーン種」と名付け,その役割を担える有望な企 業として,TO に着目する。以降,TO の事業特性と TBE 形成との関わりについて述べる。 (1)サプライチェーンの管理機能 TOは,特定市場をターゲットとした観光のサプライ チェーン(資源の発掘と調達,商品サービスの製造,販 売までの一連の流れ)を独自に構築し,主導的な立場に ある。こうした TO の立場に期待する地域の観光関連事 業者は,自社商品サービスの販売委託やパッケージツアー としての商品化に積極的に関わろうとする。反面,大規 模な TO が支配力を強めてしまうことによる観光関連事 業者の交渉力の低下や,利己的な大量生産型商品開発に よる地域らしさの欠如が懸念される(Ammirato, Felicetti, & Gala, 2015)。 (2)組み合わせ機能 収益原理の 1 つである範囲の経済を支えるのは,「組 み合わせ」である(Kagono & Inoue, 2011)。組み合わせ の利点には,顧客価値の増大,コスト削減や固定費の分 散による効率性,情報や知識の多重利用などが挙げられ る(Kagono & Inoue, 2011)。TO は,外部の資源の調達 と調整を行いながら,それらを組み合わせ,独自の価値 システムで顧客に価値を届ける事業を行う。 (3)柔軟性の高さ 企業を取り巻く環境の不確実性に対抗する手段には, 「外部性を進めて柔軟性を保つ」方法がある(Kagono & Inoue, 2011)。TO は,環境の変化に応じて,外部資源の 発掘と提供を受け,価値システムに組み込む。TO には, 自由に資源を取捨選択できるという点で,柔軟性の高い 性質がある。反面,柔軟性が,利己的な行為を招く可能 性もある。集客力の高い時は,資源保有者に対し増販体 制へシフトするための仕入れ量を要求する。しかし,集 客力に陰りが見え始めると,身勝手に切り捨てる可能性 もある。 (4)外来種としての存在 地域外部から参入する国際的 TO は,言わば外来種の ような存在である。TO は,本社のある国・地域市場で ブランド力があり,顧客のニーズや行動特性にも熟知し ている。また,インバウンド特定市場をいち早く拡大さ せる強力な牽引役となり得る。しかし,外来種は,エコ システムや経済に重大な影響を与えることもある。支配 者となった国際的 TO は,観光地全体の持続可能な開発 ではなく,当該地域での投資の見返りに,できるだけ迅 速な利益の刈り取りを目指してしまう恐れがある。こう した行為が,許容量の超過,環境の悪化,社会的基盤へ の負荷,サービスの劣化を招き,持続的な観光地発展の 障害になりかねない(Ammirato et al., 2015)。 以上,2 章では,TBE 形成の仕組みを示した後,キー ストーン種としての TO の正と負の側面を整理した。以 降,3 章では,日系 TO の代表的企業である JTB ハワイ の行動変容を追跡し,ITBE 形成過程を検証する。4 章で は,本研究によって得られた結果から,理論的発見と実 務上の示唆を述べる。

III.ハワイにおける ITBE の形成

1.ハワイ州の概要 ハワイ州は,1959 年にアメリカ合衆国 50 州の中で最 後に加盟した州である(Consulate General of Japan in Honolulu, 2019)。州の総面積は,16,634 km2(東京都の

約 7.6 倍),142 万 491 人(2018 年 7 月 1 日現在)が暮ら している(Consulate General of Japan in Honolulu, 2019; State of Hawaii, 2019)。居住者の人種は,多様である。 2018年の国勢調査(United States Census Bureau, 2018) によると,白人 24.3%(34.6 万人),ハワイアン系 6.4% (9.1 万人)に対し,アジア系(純粋)37.6%(53.4 万人)

であり,アジア系の中で,フィリピン系 15.5%(22.0 万 人)の次に多いのが日系 11.5%(16.3 万人)である。そ の背景には,移民政策がある(Consulate General of Japan in Honolulu, 2019)。日本人の移民は,1868 年から開始し た。特に,1885 年から 1924 年までの間,国や民間企業 の斡旋による日本人移民者数は増え続け,1930 年時点で

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ハワイ州全人口の 42.7%にまで上っていた(Consulate General of Japan in Honolulu, 2019)。契約期間終了後もハ ワイに定住した人が,現在の日系アメリカ人コミュニティ を形成している。 この地の基幹産業は,観光である。州を構成する 8 つ の島の内,6 つの島が観光客を受け入れ,年間約 1,000 万人弱の来訪者が訪れる(State of Hawaii, 2019)。2018 年の観光消費額は,約 1.92 兆円(1 ドル 110 円換算), 政府機関に次いで第 2 位の労働雇用創出(12 万 5,600 人:全体の 18.7%)をもたらしている(State of Hawaii, 2019)。ハワイを訪れるインバウンド観光客の中で圧倒 的な割合を占めるのが,日本人である。Hawaii Tourism Authority(2019a)の 2018 年実績報告によると,航空機 利 用 の 来 訪 者 9,761,488 人 の 内 , ア メ リ カ 本 土 西 部 4,203,894人(43.1%),アメリカ本土東部 2,173,458 人 (22.3%)に次いで,日本は 1,489,778 人(15.3%)と 3 番目に多く,エリアで捉えた太平洋州(415,764 人),そ の他のアジア(379,925 人)の来訪者を上回る。 一方,日本人から見たハワイは,最も行ってみたい場 所であり,他の国地域と比べて圧倒的な人気を安定的に 維持している(JTB, 2019)。その人気は,憧れだけに留 まらない。2018 年実績によると,日本人が多く訪れた海 外旅行訪問先順位では,韓国,中国,台湾,タイに次い で 5 位,海外旅行訪問先経験率 1 位(44.1%)であり, 2回以上のハワイへの再来訪者数割合は,中国(77.0%), アメリカ本土(73.1%)に次いで 3 位(66.7%)であっ た(JTB, 2019)。中国とアメリカ本土は,ハワイと比べ て業務出張目的の割合が高いことを考慮すれば,ハワイ における「(義務ではない)観光旅行」の割合(80.2%) の高さ(JTB, 2019)もまた,日本人のハワイ人気を裏付 ける側面と言えよう。 日本市場対応型の観光基盤が作られた主要素として, Sudo and Endo(2005)は,①ハワイのイメージ形成(映 画,流行歌などのエンターテイメント,マスメディアの 力),②可処分所得と余暇時間の増加を背景とした大衆観 光消費者の出現,③技術の進歩(予約発券業務のシステ ム化)④旅行業界の組織化(パッケージツアー),⑤規制 の強化と緩和を挙げている。2 節では,彼らが要因の一 つに挙げた④の代表企業である JTB ハワイの活動につい て記述する。 2.JTB ハワイの活動 JTBは,日本の大手 TO の中で初のハワイ進出と旅行 団の送客を実現し,進出から 56 年目となる今もなお, 観光事業に邁進している。ハワイ州が,JTB ホノルル支 店開設 50 周年を記念し,2014 年 10 月 1 日を「JTB DAY」と制定したのも,これまでの貢献に対する評価と 言えよう。 この節では,時代の変化の中で,JTB ハワイがどのよ うな課題に直面し,どのようにそれを乗り越えようとし たのか,実際に現場に携わった社員のインタビューを基 に,3 つの時代に区分し,その一例を紹介する。 (1)団体旅行市場の開拓と拡大(1960 年代後半~90 年代) 海外旅行の自由化(1964 年)は,個人旅行だけでなく 団体旅行需要を拡大する絶好の機会であった。1970 年代 当時 JTB ホノルル支店(JTB ハワイの前身)で団体手配 マネージャーであった浅沼氏(元ホノルル支店長)は, 「この時期は,ハワイにおいて日本の TO の力,特にホテ ルなどの手配力がなかった。しかし,ハワイに根付いて いく実感はあった」とそう振り返る。1977 年 3 月単月の 個人旅行パッケージツアーと団体旅行の実績は,10,000 人程度だったという。State of Hawaii(2019)の統計デー タによると,1977 年の 1 日当たりの州外来訪者数は,平 均 7,053 人であり,単純に 30 日で計算した 1 か月推計 211,590人と比べると 5%弱の扱いとなる。日本における 海外旅行市場が未成熟期の実績数としてみれば,現地で の仕入れ交渉と共に,日本側の営業担当社員の努力を窺 い知ることができる。 1978年には,日本傷痍軍人会ハワイ大会の斡旋業務を 受託する。その際,日本からの来訪 500 名とアメリカ元 軍人との交流の機会が設定された。交流の実現には,日 系二世の協力が欠かせなかった。ホノルル支店開設以降 3人目の支店長は,「(事業を 1 つずつ実現するために は,)地域の中にしっかりと入っていく必要性がある」と 浅沼氏に語っていた。 1980年代初期には,某企業の招待旅行を近畿日本ツー リスト(KNT)と協業で受託した。KNT の存在は,日本

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で競争相手でも,現地では協働するパートナーである。 パートナーとは,互いに調整しながら情報共有すること が不可欠であった。 1980年代後半から 1990 年代初めにかけて,団体旅行 は民間企業を中心に 1 団体 1,000 人から 2,000 人規模へ と大型化していた。しかし,バブル崩壊後,民間企業の 海外旅行需要は,じわじわと冷え込んでいった。こうし た中で,JTB ホノルル支店は,新たなターゲットとして 学生団体に目を向けた。日系人の移民の歴史や平和教育, 英会話,異文化体験,スポーツアクティビティ,治安の 良さ,温暖な気候などといったハワイの特性は,修学旅 行に適したコンテンツとなる。早速,ホノルル日本人商 工会議所とハワイ州産業経済開発観光局と共に誘致活動 を開始する。商工会議所会員の観光産業比率は,そう高 いわけではない4)。それにも関わらず,商工会議所が協 力したのは,「学生達が再びハワイへ来訪する時に,ビジ ネス機会を生む期待があった」と浅沼氏は振り返る。日 本側の営業活動には,JTB 各支店の教育旅行営業担当者 の協力を得ながら進められた。 このような団体旅行対応型の事業は,日本全国の支店 に所属する営業担当者が営業及び企画,添乗を担当し, ハワイでは仕入れ・斡旋を担当するという顧客の送りと 受けの仕組みを構築している。その際,受け地側では, 空港や主要なホテルに JTB 団体旅行専用カウンターを設 置するなど,顧客の利便性と関係機関の負担軽減を考え た対応を行っている。 (2)大量消費型観光の終焉―生産者志向型から顧客志向 型パッケージツアーへの転換(1990 年代) 大手 TO が,海外旅行へ行く手段として「パッケージ ツアー」を主力とする中で,「(海外輸入航空券を使った) 格安航空券」の販売で旅行業界に参入してきたのが, H.I.Sである(H.I.S, n.d.)。当時の H.I.S のビジネスモデ ルは,若者や旅慣れた人々のニーズを満たす新たな旅の 手段を提案した。同時に,国内の航空業界や既存の旅行 業界にも大きな変化をもたらした。政府は,日本の航空 会社の裁量に任せた柔軟な価格設定を認め,1994 年 4 月より 1 名から適用可能な個人旅行向け新運賃制度導 入 に踏み切った(Ministry of Land, Infrastructure and

Transportation, 2003)。旅慣れた顧客が増えていく中で, 航空会社は,IT 技術を使った独自の予約システムやマイ レージプログラム導入を開始し,旅行会社を介さずに予 約決済のできる環境を整えていった(ANA, n.d.; JAL, n.d.)。 このような状況の中で,JTB は,パッケージツアー離 れの要因を徹底的に分析した5)。結果,従来のような TO の効率性を重視したシステムを大きく見直し,より自由 な行動を望む顧客に応える新たなシステムへと転換させ た。それが,1995 年から開始した「オリオリシステム」 である。新たな商品には,「お客様が自由であること,安 心したパッケージツアーであること,快適であること」 とする「LOOK 宣言」が掲げられた。現地では,新しい 商品へと変革するために,各観光関連事業者と粘り強い 交渉をしている。ここでは,その一例を示す。 ① 2 次交通対策(オリオリトロリーやバスの充実) JTBの観光客は,滞在中,食事,観光,買い物の移動 手段としてオリオリトロリーやバスを無料で利用できる。 これらは,8 分から 10 分間隔で運行し,観光客の移動を より一層便利にした。日本人観光客向け交通システムの 導入は,観光関連事業者ネットワークの拡大や市民生活 にも良い効果をもたらしている。導入前の日本人観光客 の滞在は,ワイキキビーチ周辺のホテルに集中していた。 しかし,導入による利便性の向上と行動範囲の拡大によっ て,ワイキキビーチから離れたホテルを使ったパッケー ジツアーの企画がしやすくなった。結果,JTB は,受入 可能な客室数を増やす一方で,新規契約先ホテル及び 周辺の商業施設や飲食店も,売り上げに繋がるビジネス 機会を得ている。さらに,日本人観光客の公共バス利 用を大幅に減らし,市民の暮らしに対する負荷を軽減 した。 ② サービス品質の向上(オリオリタクシー) 一般のタクシーは,とても古く,乗車に不安を感じる 声が多かった。そこで,一定の条件(車体は 5 年以内の もの,ユニフォームの着用,領収書の発行,日本語ので きる配車係をつけること)を満たすタクシーをオリオリ タクシーとした。 ③ サービス提供プロセスの改善(宿泊施設) ハワイの商慣習では,客室清掃係が,通常 12 時頃に

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出勤し,清掃後の 15 時以降にチェックイン時間を設定 していた。そのため,日本を夜の時間帯に出発し,ハワ イに早朝到着する観光客は,長時間の飛行から解放され ても 15 時までチェックインできない。そこで,JTB は, 日本人観光客が航空機の出発する午前便に合わせて早朝 にチェックアウトする事実を伝え,朝から清掃可能であ ることをホテル側に提案した。約 5 年の交渉の末,日本 人観光客の 12 時チェックインを実現させた。 ④ サービス提供プロセスの改善(ストレスフリーな空 港送迎と初日昼食の変更) 従来のパッケージツアーでは,空港から市内に向かう 際,入国審査を終えて全ての観光客が揃ってから一度に 輸送する効率性重視のシステムを運用していた。また, ホテルチェックイン時間までの間,本人が望まなくても 市内観光と量の多いランチビュッフェに付き合わなけれ ばならなかった。オリオリシステムでは,空港で他の人 を待たずに空港送迎手段(専用シャトルバスもしくはオ リオリタクシー)が選択でき,昼食もアロハタワーにあ る 4 か所のレストランで 24 種類のメニューの中から選 択できる食事券を配布する形に変更した。また,食事券 は当日だけでなく滞在中好きな時間に使えるようにした。 (3)コミュニティ・リレーションズの強化(1990 年代 半ば~)6) 毎年 3 月に開催される日本とハワイの文化交流イベン ト「ホノルルフェスティバル」は,2019 年で 25 周年を 迎えた。今や,ハワイ州認定の「レガシーイベント」と なり,その内容も日本の文化芸能団体の旅行機会の創出 を狙ったイベントから,地域コミュニティや国際社会に 対する公益性の高いイベントへと転換している。桑原氏 (元 JTB ハワイ取締役)は,初開催に向けた企画の段階 から「単に神輿を地元の人に担がせるような内容ではな く,文化交流を核としたい」と考えていた。州政府始め 関係機関との交渉を開始して約 3 年後の 1995 年に,第 一回目が開催された。イベントでは,日本各地から来た 文化芸能団体が,大通りや集客力のある施設会場に分散 して演技を披露した。その際,衣装や道具など現地調達 の必要な場合でも,できる限り現物に近い形で再現する ための努力を惜しまない。例えば,笠間稲荷神社の流鏑 馬では,人通りの多いアウアヒ通りを通行止めにし,馬 を走らせ弓をひくといった許可取りの難しい企画でも, 粘り強く交渉し実現させている。イベントは,日本の文 化芸能団体にとって,独自の文化芸能を世界へ発信でき るだけでなく,活動自体に誇りを感じる機会である。一 方,ホノルル市民にとっても,日本の文化芸能に触れる 貴重な体験の場を創出した。 節目は,1997 年に訪れる。イベントは,すでに 3 年目 を迎えていた。ハワイでは,州最大の祭りとなり,地元 の人が心待ちにするイベントへと成長していた。また, 州教育局が,教育的価値を評価し,この年から州の教育 プログラムとして組み込んでいる。ちょうどその頃,社 内では,費用のかかるイベントを廃止する声もでていた。 しかし,JTB ハワイの最終的な判断は「もはや 1 企業の おもちゃで終わってしまうようなイベントではない。継 続する道を考えるべきである」と,財団法人化を模索す る。結果,2000 年には,「ホノルルフェスティバル財団」 とコミュニティの教育支援や文化財の保護などを行う 「Good will7)財団」を設立させている。現在のホノルル フェスティバルでは,JTB は 1 スポンサーにすぎず,JTB 以外の企業もメンバーに入っている。また,イベントの 内容も日本文化だけでなく世界各国の文化を紹介する国 際的なイベントへと進化し続けている。 3.ITBE 形成における JTB ハワイの役割 前節の事例から発見した事象を以下にまとめる。 (1)生き残り行動がもたらす外部経済効果 JTBハワイが,競争優位性と事業の維持,拡大のため の価値システムの開発と改変を行う過程で創出した産物 は,日本市場向け観光事業の基盤として定着し,サービ ス品質の向上など経済的効果に寄与している。具体的に は,観光客向け交通システム,外国語対応ツール(食事 券を始め,ホテルチェックインや免税店での買い物時に 旅券,航空券代わりに提示する顧客情報カードなど)が 観光事業の基盤となり,オリオリタクシー導入や,ホテ ルのチェックイン時間の改善などがサービス品質の向上 策として挙げられる。また,JTB ハワイは,持続可能な 地域コミュニティ向けサービスを提供するために財団法

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人 2 団体を設立した。このような行動は,社会的効果を もたらしている。 (2)JTB ハワイによる ITBE 形成 図 2 は,外来種(外資系企業の参入)である JTB ハワ イによる ITBE 形成の過程を表している。 以下,その特徴を述べる。 ① 価値システム起点の流れ JTBは,海外旅行の自由化(1964 年)の 5 年前から海 外旅行企画商品(日本国内金融機関と連携した海外積立 旅行やパッケージツアー)販売体制の構築といった価値 システムの開発に取り組んでいた(JTB 100 shunenjigyo suishiniinkai, 2012)。そして,自由化の年にハワイへ支店 を設け,パッケージツアーの企画や仕様に沿った商品サー ビス開発のために,資源保有者であるアクターとの関係 構築(組織間システムの形成)に努めた。この組織間シ ステムには,日本では競合関係にある企業も含まれる。 互いに同一業界の中で競争しながらも,日本市場拡大の ための情報交換や大きな事業を共同で斡旋する。 このように,JTB が独自の事業確立に向けた行動をと る時には,価値システムを起点に,仕様・企画に則った 資源システムの開発を手掛け,資源を調達するための組 織間システムを形成している。 ② 組織間システム起点の流れ 文化交流イベントの実現に向けて,JTB ハワイが着手 したのは,州政府を始め公共団体,地元企業との交渉と 協力要請であった。このように,まずは「組織間システ ム」を構築した上で,イベントで披露する「資源システ ム」を編集しながら「価値システム(イベント)」を作り 上げている。 ③ 2WAY の流れが生み出す新たな公益 JTBハワイは,文化交流イベント独自の BE を形成す る過程で,[1]継続の危機,[2]政府からの評価,[3] 地域コミュニティからの評価に直面し,自成しようとし た結果,新たな公的サービス組織を生み出している。そ の後も,新たな組織が,価値システムを使ったサービス を提供する中で,公益性の高い組織間システム8)を築い ている。 上述の通り,JTB ハワイは,価値システム起点だけで なく組織間システム起点の 2WAY で事業推進すること JTB ハワイによる ITBE 形成過程 資源システム 価値 システム 組織間 システム 企業 (キーストーン) 改変 改変 公益性の高い 価値 システム 公益性の高い 組織 創造 資源 システム 組織間 システム

企業の

ビジネス・

エコシステム

① ① ① ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ITBEネットワーク 地域のインバウンド観光ビジネス・エコシステム(ITBE)

出所:Eguchi and Senoo(2015)による BE 形成過程の図を参考に筆者作成 図 2  

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で,持続的で堅牢な BE を形成している。このエコシス テムが,市場開拓のための駆動力となり,自社の創り上 げた組織間システムは経済的循環を,財団法人とその活 動を支える組織間システムは社会的循環をもたらす役割 を担う。この 2 種の組織間システム同士もまた互いに影 響し合いながら,ハワイにおける ITBE は進化し続けて いる。

IV.討議と結論

本研究は,BE 概念を用いた既存研究上,開拓の余地 のある BE 形成過程について,観光地経営の視座から捉 えている。観光地経営方式は,国並びに各地域が強い関 心を寄せているものの,未だ手探りの状態にある。そこ で,本研究では,日本同様に海に囲まれたハワイにおい て,今もなお日本市場の維持,拡大を図る TO(JTB ハ ワイ)が,キーストーン種として ITBE 形成に影響を及 ぼしながら地域に根付いていく行動変容を探索した。「誰 が,どのような機能を活かして,どのように ITBE は形 成されるのか」といった過程を知ることは,インバウン ド誘客を目指す地域の DMO が,持続的な観光イノベー ションをもたらす BE の育成と共に,地域内の観光事業 者,地域コミュニティ,地域資源と観光客との間の均衡 を図る管理方策の検討に活かせるであろう。以下,本研 究から得られた理論的な発見と実務的な示唆を述べる。 1.理論的な発見 (1)2WAY の進行が,持続的で堅牢性のある TBE を形 成する JTBハワイによる TBE 形成では,日本人観光客が効率 的かつ不便を感じずに海外旅行へ行くための予約販売 サービスの仕組みづくりといった価値システムの構築か ら始める場合と,地域におけるコミュニティ内の団体や 行政等との関係づくり強化といった組織間システムの構 築から始める場合の 2WAY で進められている。2WAY の 事業推進により,外来種であるキーストーン種は,地域 コミュニティや地域資源に悪影響を及ぼすことなく地域 に根付いていったと考える。この現象は,Eguchi and Senoo(2015)による半導体メーカーとペット向け保険 会社の比較事例研究では,(非観光領域の)BE 形成過程 が 1WAY の事業推進を通じて進むものと捉えていた点と 異なる。 (2)キーストーン種の自成が新たな公益を生むことが ある 本研究は,キーストーン種が,TBE 形成過程におい て,自社のビジネスと地域コミュニティや地域資源との 均衡を図るために,公的サービス提供に向けた新たな組 織化,資源システム,価値システムの改変を行うことを 確認した。この行動は,経済活動と社会貢献活動という 2面性を備えたまま,継続的に事業を推進するための防 衛策であり,キーストーン種としての存在意義を示す強 化策でもある。 2.実務的な示唆 (1)ターゲット市場対応の TO がキーストーンになり うる 観光活動の成熟化やデジタル時代の発展に伴い,TO によるパッケージツアーの販売力は弱まっている。こう した状況の中でも,日本人のハワイ旅行パッケージツアー 利用率は,いまだに高い(JTB, 2019)。日本においても, インバウンド観光誘客を図る方策として,特定市場に対 応した TO もしくは TO 同様の組み合わせ機能(範囲の 経済)と販売ネットワーク機能(規模の経済)を有する 民間事業者の誘致,活動支援,地域内事業者と協働する 機会の創出が,実質的な ITBE 形成に有効と考える。中 でも,旅行会社等が企画した団体ツアーや個人旅行パッ ケージツアー利用率の高いベトナム(41.3%),中国 (39.6%),台湾(39.5%)市場の開拓には,期待できる

方策となるだろう(Japan Tourism Agency, 2019a)。

(2)外来種 TO による ITBE 形成には,地域の有力者や 在日外国人を味方につける ハワイの事例では,日本市場向けの ITBE 形成の初期 あるいは改変段階で,組織間システム形成の支援者となっ たのが,日系人や在ハワイ日本人であった。彼らの有す る人的ネットワークや情報などの資源提供がなければ,

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商慣習や文化的背景の異なる地で事業を根付かせ,発展 させることはできなかった。このことから,今後,ITBE 形成の促進と管理の役割を期待される DMO は,地域の 有力者の理解と在日外国人コミュニティに地域の魅力を 伝え,応援してもらえる関係づくりにもっと目を向ける 必要があるだろう。 (3)個人レベルの地域愛着とコミュニティとの密接な関 係が,TBE 形成の基本となる 今回の調査対象者には,①個人レベルでも地域コミュ ニティに深くかかわり,家族的な人間関係を築く,②地 域愛着がある,③政府,DMO,事業者との積極的なコ ミュニケーションと連携を心がける,④イベント運営や プロモーションなど「一緒にやる」経験が仲間意識を高 めている,といった共通した行動や思いが存在する。 DMOは,地域内で働く人々にも,地域コミュニティと の接触と「一緒にやる」機会を提供することで,盤石な TBEのネットワークを築くことができるだろう。 3.本研究の限界 本研究は,単一事例を対象としているため,一般化可 能性の問題が残っている。今後は,複数の事例研究を重 ねることで,更なる検証が必要である。 謝辞 株式会社 JTB 広報室並びに浅沼様(元 JTB ホノルル支 店長),辻野様(元 JTB ハワイ代表取締役),今岡様(元 JTBハワイ部長),桑原様(元 JTB ハワイ取締役),鈴木 様(JTB ハワイスペシャリスト兼ホノルルフェスティバ ル財団事務局主事),梶原様(JTB 海外仕入商品事業部部 長)には,大変お忙しい中,本調査のご協力をいただい た。改めて皆様に感謝を申し添える。 付記 本研究は,JSP 科研費(課題番号:18H00910)研究助 成による成果の一部である。 注 1) 三大都市圏以外(東京,神奈川,千葉,埼玉,愛知,大阪, 京都,兵庫)の都道府県を指す。 2) TO とは,企画に基づいて海外旅行先のホテルやレストラ ン,交通手段などの予約手配を行い,パッケージツアーな どの旅行商品として販売を行う会社のことである(JTB Tourism Research & Consulting Co., n.d.)。

3) 本研究では,BE 構成員を「エージェント(Sugiyama & Takao, 2011)」ではなく「アクター」とした。観光領域にお けるエージェントは,代理業のような民間事業者を想起さ せやすいことと,TBE 構成員として民間事業者だけなく, 公的機関や住民も含まれることを理由に変更した。 4) 浅沼氏によると「ホノルル日本人商工会議所は,弁護士, 銀行,不動産業など日系人中心のビジネス従事者のトップ が多く参加する団体である。JAL,JTB は長年の会員ではあ るが,旅行業界の比率は極めて低かったと記憶している。 JTBとしては,団体旅行の営業と斡旋業務のいずれにおい ても大切な団体であり,地元に根を下ろすための社会貢献 の上からもこのような「ローカル」日系人の重鎮たちとの 関係構築は重要である」と述べている。 5) 以降の記述は,JTB 関係者インタビュー(実施日:2018 年 7月 20 日,2018 年 9 月 18 日,2019 年 3 月 11 日,12 日) 記録と JTB Hawaii Travel, LLC.(2015).「Oli Oli ハワイ.com」 『JTB Hawaii Travel, LLC』.(https://www.oliolihawaii.com/) (December 19, 2019)掲載情報を参照した。

6) JTB 関係者インタビュー(実施日:2019 年 3 月 11 日,12 日)記録と Honolulu Festival Foundation(n.d.).「Honolulu Festival」『 Honolulu Festival Foundation 』.( https:// www.honolulufestival.com/ja/)(December 19, 2019)掲載情 報を参照した。 7) 1983 年設立の「PanPacific Goodwill 財団」を,事業内容の 一つであった「チャリティゴルフ大会」の発展的解消をきっ かけに,名称変更して新たに設立された団体。文化,教育, チャリティ,若者の交流による日布間の良好な関係づくり やハワイにおける文化遺産の保全などを目的としている。 8) 例えば,文化交流イベント運営ボランティアスタッフ(日 本の現役大学生がゼミ活動や講義の一環で参加),州内や他 の国・地域の文化団体(イベント参加者),州内の小中学校 (教育プログラムの参加)などが挙げられる。 References

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図 1 は,Sugiyama and Takao(2011)の概念図を基に, 観光地における価値システムの構造(TBE 形成の仕組 み)として作成したものである。この図では,彼らが BE による価値創造のための商品やサービスなどの開発や生 産の仕組みを「人工物システム」と名付けていたのに対 し,「資源システム」と読み替える。その意図は,観光地 経営の観点から,観光商品の基礎単位として(非人工的 創造物である)自然環境資源が存在すること(UNWTO, 2007),自然環境資源の有限性や制御不可能性といった人

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