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口蹄疫の流行および防疫措置に関する疫学解析と定量的評価

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動衛研研究報告 第 123 号,83-84(平成 29 年 3 月)

口蹄疫はピコルナウイルス科アフトウイルス属に属す る口蹄疫ウイルスによる偶蹄類動物の急性伝染病であ る。本病は伝播力が非常に強く,発生時の経済的影響が 大きいことから,国際的に重要な家畜伝染病として位置 づけられ,国内では家畜伝染病予防法の法定伝染病に定 められている。2010 年 4 月,国内で 10 年ぶりとなる口 蹄疫が宮崎県で発生した。初発事例の摘発後,発生農場 での家畜の殺処分と死体の埋却,周辺地域の移動制限な どの防疫措置が直ちに実施されたが,感染が拡大したた めに,緊急ワクチン接種によるまん延防止策がとられた。

最終的には,宮崎県の一部地域に流行を封じ込めること ができたものの,292 例の感染農場が摘発され,ワクチ ン接種家畜を含む約 29 万頭の家畜が殺処分されるに至 り,この口蹄疫の流行は地域の畜産業に大きな被害を与 えた。

本流行の教訓を今後の口蹄疫の防疫対策に活かすため には,今回発生した口蹄疫の伝播の特徴と防疫対策の有 効性を検証することが重要である。そこで本研究では,

今後の口蹄疫の防疫対策の立案に資することを目的とし て,2010 年に発生した口蹄疫の流行データを疫学的に 解析することで口蹄疫の伝播リスク要因を明らかにする とともに,流行データを基に口蹄疫の感染拡大を再現す るシミュレーションモデルを構築することにより,口蹄 疫の流行動態を明らかにし,発生時に講じる防疫措置の 有効性を評価した。

まず,今回の口蹄疫が畜産密集地域での発生だったこ

とを踏まえ,口蹄疫の伝播経路として,近距離での農場 間伝播,いわゆる近隣伝播に着目し,近隣伝播のリスク 要因を流行データを用いて解析した。発生農場を中心と した半径 0.5 km 以内の周辺農場に近隣伝播が起こった と仮定し,周辺農場の感染リスクに関連する要因を解析 した結果,発生農場が豚農場であった場合は近隣伝播を 起こすリスクが高いこと,周辺農場が飼養規模の大きい 牛農場であった場合は感染を受けるリスクが高いことが 明らかになった。一方,発生農場における発症から届出 までの日数,発生農場における発症から殺処分終了まで の日数,発生農場と周辺農場の距離,および周辺農場が 発生農場の風下にあった時間は,周辺農場の感染の有無 と有意な関連は認められなかった。

次に,口蹄疫流行データを用いて,移動制限後の農場 間の口蹄疫の感染拡大をシミュレーションする口蹄疫の 伝播モデルを構築した。伝播モデルの構築にあたって,

農場間の伝播率は,農場間の距離,動物種および農場の 飼養頭数によって変化すると仮定し,移動制限開始から ワクチン接種前までの流行データを用いて推定した。推 定した農場間の伝播率を組み込んで伝播モデルを構築 し,口蹄疫流行地域の 1,210 戸を対象に感染拡大のシミュ レーションを行った結果,構築した伝播モデルは,当時 の移動制限開始からワクチン接種までの感染拡大を概ね 再現していた。シミュレーションの結果,ワクチン接種 を行わなければ,当該地域では感染が更に拡大し,最終 的な感染戸数は中央値で 651 戸に達すると推定された。

更に,ワクチン接種を行わなかった場合の流行規模を ベースラインとして,殺処分やワクチン接種などの防疫 学位取得者の論文要旨

口蹄疫の流行および防疫措置に関する疫学解析と定量的評価

早山陽子

Epidemiological analysis and quantitative evaluation of control measures for the foot-and-mouth disease epidemic

Yoko H Yoko H

AYAMA

研 究 紹 介

農研機構 動物衛生研究部門 ウイルス・疫学研究領域 疫学ユニット

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早山陽子

Bull. Natl. Inst. Anim. Health  No.123. 83-84(March 2017)

84

措置の有効性を伝播モデルを用いて比較した。感染農場 を摘発後 24 時間以内に早期殺処分した場合,感染戸数 はベースラインの約 3 割に低下すると推定された。初発 農場を早く摘発した場合,小規模な流行で終息する可能 性が高いが,ベースラインと同程度の大規模流行が起こ る可能性も残されていた。追加的な防疫措置として,摘 発農場周辺(0.5 km または 1 km)の予防的殺処分を行 なった場合,感染戸数はベースラインの 1 割以下に抑え られた。しかしながら,予防的殺処分では,1 日当たり の殺処分戸数が,ベースラインや摘発後 24 時間以内の 早期殺処分の場合よりも大幅に増加して 20 〜 50 戸に達 し,1 日当りの防疫対応の許容範囲を超える可能性があ ると考えられた。また,移動制限開始 7 日目または 28 日目に,摘発農場周辺 10km にワクチン接種を行った場 合,感染戸数はベースラインの約 1 割と約 4 割にそれぞ れ抑えられたが,700 戸以上の農場がワクチン接種の対 象になると推定され,ワクチン接種動物の接種後の取り 扱いが問題になると考えられた。

本研究により,2010 年に発生した口蹄疫の伝播リス クの要因を明らかにすることができた。流行地域では,

豚農場が近隣伝播に大きな役割を果たしていたと考えら れ,豚農場と牛農場が密集した当該地域では近隣伝播が 起こるリスクが高かったと考えられた。また,流行デー タに基づいて口蹄疫の伝播モデルを構築し,発生時に講 じる防疫措置の有効性を比較したところ,感染農場の早 期殺処分と初発農場の早期摘発は,感染拡大を効果的・

効率的に防ぐことができると考えられた。追加的な防疫 措置として,予防的殺処分とワクチン接種は,感染戸数 を大幅に減少させる効果を有しているものの,これらの 措置は 1 日当たりの殺処分戸数の増加やワクチン接種戸 数の増加など実施する上で解決が必要な課題を有してい た。本研究で得られた成果は,今後,口蹄疫の防疫対策 の充実を図る上で有益な知見を提供するものである。

岐阜大学大学院連合獣医学研究科 博士(獣医学)

平成 26 年 9 月 24 日授与

参照

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