1.はじめに
三重大学では、幅広い教養の基盤に立った高度な専門知識や技術を有し、地域のイノベーショ ンを推進できる人財を育成するために「4つの力」、すなわち「感じる力」「考える力」「コミュ ニケーション力」、それらを総合した「生きる力」を養成するという教育目標を掲げている。
この「4つの力」のうち、他者との交わりにおいて、感じたこと、考えたことの表現に必要不 可欠なのは「コミュニケーション力」である。近年、大学教育においても、学習者参加型・体 験型の授業であるアクティブ・ラーニングを実施することによって、この「コミュミケーショ ン力」を向上させる協働学習が試行されてきた。
筆者の担当する人文学部の自由選択科目「日本語コミュニケーション
A
」でも、日本語の 知識習得やコミュニケーション力向上、さらには異文化理解の目的で、アクティブ・ラーニン グを取り入れ、留学生と日本人学生の協働学習を行っている。2017年前期「日本語コミュニ ケーションA
」開始時の42
名の学生の履修動機に、「留学生と日本人学生の交流・コミュニ ケーションが可能だから」と述べた学生が31
名(73.8
%)いた。そして、「コミュニケーショ ンが苦手、 自身がないので」、「コミュニケーション力向上のため」 という学生が12
名 人文論叢(三重大学)第35号2018
日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み
- 留学生と日本人学生の協働学習から - 早 野 香 代
要旨:三重大学の教育目標である「4つの力」のうちの「コミュニケーション力」の育成のため、
2017
年前期「日本語コミュニケーションA
」の授業で、知識構成型ジグソー法を試みた。本稿 ではそのジグソー法の実践を紹介し、履修者の振り返りから協働学習の効果と問題点を考察する。このジグソー法は、「日本語コミュニケーション」という大きな課題を
6
つの専門のテーマから 多角的に学ぶ日本人学生と留学生の協働学習である。実施後の学生の振り返りから、「おもしろ い・楽しい」という感想とともに、「多様性・異文化理解」、「新しい知識の習得」、「コミュニケー ション能力」、「効率性」、「深い学習」などにプラスの評価が得られ、多様な他者との協力的な活 動ができた喜びやおもしろさの発見があったとのコメントが得られた。そして、この意識の変容 から、自らの学びの質や効率をも見直し、今回のジグソー法の問題点の改善策を提案する学生も 現れた。これは、学生主体の「協調」路線の協働学習になったと同時に、E.アロンソンの志向を 継承する協力的なものへ変えてゆくジグソー法にもなったと評価できる。このジグソー法は、今 後も留学生と日本人学生が共存する大学の様々な分野で生かされるべきであり、それを生かす学 習法を異なる分野間で共有し、大学全体における「コミュニケーション能力」の向上、引いては「生きる力」の養成に繋げるべきであろう。留学生と日本人学生との日本語力の差というものは、
多様性を受容する観点においては利点となるが、全ての学生が深い理解を得るという到達目標に おいては課題が残る。言語能力の差がある中での有効な協働学習の方法や方略の研究は今後の課 題となる。
(28.
6
%)見られた。また、その他、編入学生が多かったこともあるが、7名(16%)の学生 が、「アクティブ・ラーニングの授業を受けたことがないから/受ける機会があまりないため」としていた。これらのことから、留学生と日本人学生が交流しコミュニケーション力をつけた いというニーズが多くあるものの、留学生と日本人学生が交流し意見交換できる場が少ないと いう現状や、人文学部の専門分野におけるアクティブ・ラーニングの授業が少ない(あるいは、
周知されていない)という実態が伺えた。
留学生と日本人学生の協働学習においては、異文化間教育や言語教育の分野で数多く報告が ある。本学でも、教育学部人間発達科学課程の日本語教育コース専門科目「日本語教授法」で 実施されている。ここでは日本語教育を志す学生が、日本語教育における専門知識に加え、異 文化理解、異文化接触、異文化コミュニケーションを学べたとの報告がある(服部
2015
)。し かし、異文化理解、異文化接触、異文化コミュニケーションというものは、言語の教育現場の みならず、広く現代の日本社会でも必要とされている。したがって、これらが学べる協働学習 は、現代のグローバルな社会で活躍する人材を育成する大学教育のどの分野においても活用さ れるべきであろう。本稿では、日本語コミュニケーション力を向上すべく実施した人文学部の「日本語コミュニ ケーション
A
」におけるアクティブ・ラーニングの一手法、ジグソー法を紹介し、履修者の 振り返りからジグソー法という協働学習の効果と問題点を探り、多分野での活用の幅を広げた い。2.協働学習の定義とジグソー法
「きょうどう」の表記は多々あるが、本稿では、舘岡(2005)に倣い、参加者が互いに働き かけあいながら協力して創造的な活動を行うという意味で、col
l aborati on
を「協働」と呼び(舘岡
2005
:p.95
)、「協働」を重視した学習を「協働学習」と呼ぶことにする。類似した語に、「協同」や「協調」もある。E.アロンソン(2016)では、cooperati
vel earni ng
を「協同学習」と、coll aborati vel earni ng
を「協調学習」と訳し、前者は、主に初等中等段階 で議論されてきたもので、教師が主導権を持ち、活動を細かく構造化したものとしている。後 者は、高等教育や成人教育の場面で進められており、課題は教師から与えられるものであって も、学習者が自分たちで勉強の目的や方法を決めるものとしている。そして、後者は、問い自 体や教師の権威を疑うことが重要であり、また、意見の対立を認めることも必要である。学生 が今生きている集団(家族、仲間、地域)からより広い「学習・学問の共同体」への参加が目 的である(E.アロンソン2016
:p.166
)。その他に、三宅他(2016)は、人と人との相互作用 について、一人ひとりの意見が、建設的な方向で、たくさんの問題が解けるような抽象化の方 向で変わっていくものを「建設的相互作用」と名づけ、「建設的相互作用」を通して一人ひと りが自分の考えを深める学習をcol l aborati vel earni ng
「協調学習」と呼んでいる(三宅他2016
:pp.6- 7
)。つまり、「協同学習」と「協調学習」は質が異なるが、「協働学習」は学習者 間の相互作用を重要視した学習という点では「協調学習」と同類である。よって、本稿では、上記で述べた「協調学習」の原理を「協働学習」にも参照して考えていきたい。
「ジグソー法」はグループ学習であり、「ジグソーグループ」と「エクスパートグループ」
という
2
種類のグループを作る。目的はジグソーグループでの資料の読解・理解であるが、このグループは人種・性・成績等の面で多様であることが望ましい。そして皆が同じ資料を読む のではなく、各々のメンバーが異なる部分を読み、それをグループで総合することで各自の学 習を進めて行くものである(友野
2016
:p.4
)。起源は、1970年代アメリカ合衆国テキサス州 の人種分離廃止後の混乱が続く学校で、クラス内に存在する異文化間の偏見や否定的な評価を 克服し、人種的な差別や偏見の存在する社会を教育によって変革することを目指した、アメリ カの社会心理学者エリオット・アロンソン(Ell i otAronson
)によって考案された学習法であ る。この当初のジグソーは、「協同」か「協調」かの区別で言うと、「協同学習」の一つであっ た(E.アロンソン2016
:pp.165- 166
)。近年、時代の趨勢に従い、「協同」ではなく「協調」路線のジグソー法が求められてきた。日 本の学校現場では、現在、授業の中心的な課題の探求における「協調学習」を通じた知識構成 に焦点化した「知識構成型ジグソー法」と呼ばれるものが主流になってきている(友野
2016
:p. 3
)。ところが、友野(2016)は、近年、起源のE.
アロンソンの著作にはあまり関心が払わ れず、ジグソーが生まれた背景や、それが持つ教育的思想が十分に理解されていないのではな いかとの懸念を述べている。ジグソー法は、学力向上のためであるだけでなく、学校文化を変 えていく戦略であることを理解することで、より豊かな実践が可能になると言うのだ(p.3
)。筆者も、「協調」路線を維持しつつも、E.アロンソンの競争的・敵対的学校文化を協力的・協 同的なものへ変えていこうとする志向に今一度目を向け、留学生と日本人学生が協力的・協働 的に学習できるジグソー法を試みることにした。
3.日本語教育における実践
大学の日本語教育におけるジグソー法の実践報告には、有田(2004)、大島(2009)、砂川・
朱(2008)、朱・砂川(2010)などがある。
有田(2004)は、日本語教員養成入門科目におけるジグソー法の試みより、受講者の情意的 機能への動機付け、学習内容理解の深化、「責任」意識による学習意欲向上等の効果が観察さ れたと報告している。大島(2009)は、大学留学生への日本社会に関する知識の構築の必要性 から、ジグソー型ブック・トークを
1
学期間実践し、その効果と課題を報告した。砂川・朱(2008)は、学術的コミュニケーション能力の向上を目指すジグソー法の試みを報告し、朱・
砂川(2010)は、大学院授業から、学生の意識変容が生じた原因を活動間の有機的連携という 観点から考察し、ジグソー法がもたらす活動間の有機的連携が、学生に自主的・共同的な研究 態度の必要性を自覚させる要因となったことを明らかにした。
このように、有田(2004)は教員養成入門科目の学生を対象に「異文化間教育としての日本 語教育」の知識を、大島(2009)は学部留学生を対象に「日本社会」の知識を、砂川・朱
(2008)、朱・砂川(2008、2010)は中国の大学院生を対象に「日本語や日本語教育」に関する 学術論文の知識を得るべく知識構成型ジグソー法を行い、自主的・協働的な意識の芽生えや、
学びの深さを報告している。しかしながら、有田(2004)以外は、異文化・異言語の者同士が 協働学習で得られた効果の報告ではない。そこで、本稿は、教員養成科目ではない「日本語コ ミュニケーション
A
」という自由選択科目を履修した異文化・異言語の者同士、つまり、留 学生と日本人学生の協働学習の「知識構成型ジグソー法」を報告する。早野香代 日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み-留学生と日本人学生の協働学習から-
4.「日本語コミュニケーション A」におけるジグソー法の試み
4.1 コースの概要2017
年前期、筆者は三重大学人文学部で自由選択科目「日本語コミュニケーションA
」を 担当した。この科目は、留学生と日本人学生が協働で学ぶ授業であり、履修者は留学生15
名(韓国人
8
名、中国人3
名、台湾人3
名、タイ人1
名)と人文学部の日本人学生27
名(法律経 済科25
名、文化学科2
名)の合計42
名であった。履修者は、各々専門も異なれば、日本語能 力も異なる。異文化、異言語の学生ではあるが、日本語のコミュニケーションについて理解し、その運用能力を高め、異文化間の相互理解を深める、また、卒業認定単位を取得するという目 標は同一である。この多文化・多言語という状況は、社会問題の深刻さこそ異なれども、E.ア ロンソンのジグソー法が生まれた状況と類似していると言えよう。
4.2 コースのシラバス
「日本語コミュニケーション
A
」のシラバスは、コースの前半が日本語の発音、表記、語 彙、文法、敬語、表現と6
つのテーマに関して講義と協働学習を行い、後半は日本語の口頭表 現、文章表現を学び、協働でその運用を試みるものである。コースの最後には、言語活動の集 大成として、「日本語コミュニケーション」についての学びを深めるジグソー法を実施するこ とにした(4.3
参照)。そして、期末試験の代わりに、レポートの提出を課題とした。4.3 知識構成型ジグソー法の試み
有田(2004)では、全
14
回の講義のうち前半8
回(8週)でジグソー法を行ったが、筆者 は、全15
回の講義の中で、前半行ったコミュニケーション活動の集大成となるよう、11回目 後半から15
回目のコース後半5
回にわたりジグソー法を実施した。参加人数は、留学生15
名、日本人学生
26
名の合計41
名であった。本来、ジグソーとエクスパートのグループ数は同一で あることが望ましいが、それが可能な人数ではなかったので、6つのグループが6
名、1つの グループ5
名の計7
つのジグソーグループをつくった。表 1 2017前期「日本語コミュニケーション A」のシラバス
「日本語コミュニケーション
A
」のシラバス1
.ガイダンス8
.口頭表現 話す能力2
.日本語の発音9
.口頭表現 インタビュー3
.日本語の表記10
.文章表現 報告文・意見文4
.日本語の語彙11
.文章表現 レポート/
ジグソー説明5
.日本語の文法12
.ジグソーテーマ別学習6
.日本語の敬語13
.ジグソー発表Ⅰ7
.日本人の表現14
.ジグソー発表Ⅱ/
確認テスト15
.ジグソーテスト解答/
振り返り/
レポート提出4.3.1 専門家テーマ
1
つのジグソーグループが5
~6名の編成となったため、テーマを6
つ準備した。1
「あいさつのコミュニケーション」4
「公共圏のコミュニケーション」2
「スピーチのコミュニケーション」5
「異文化間のコミュニケーション」3
「比喩とコミュニケーション」6
「日本語とコミュニケーション」資料は、滝浦(2015)の『日本語とコミュニケーション』より抜き出した。各テーマの資料 は、いずれも
14
~17頁で、両面印刷のA4
用紙4
枚程度であった。採用した理由は、様々な 角度から日本語のコミュニケーションを捉えており、最終的にそれぞれの知識が構築・統合さ れ、「日本語コミュニケーション」に関する理解が深められることが期待できるためである。また、異文化・異言語の留学生と日本人学生間で情報交換・意見交換がされやすい題材を含ん でいたことも採用を決める要因となった。
4.3.2 知識構成型ジグソー法の実践
筆者は第
11
回目から第15
回目まで、以下のようにジグソー法を実践した。【手順】
1
.(11回目後半)ジグソー法についての説明・グループ分け・課題提示・ジグソー法の説明を行い、グループ(ジグソー/エクスパート)分けを行う。
・6つのエクスパートグループに分かれ、学習する資料を配布する。
・エクスパートグループでどのようにグループ学習を進めるか、学習計画を立てる。
・グループ毎に、次回までの課題(レジュメ作成など)を設け、確認する。
2
.(12回目)テーマ別学習・エクスパートグループにて、課題を持ち寄り、資料の内容を理解する。
・個々の疑問点をグループで解決し、発表の準備をする。
・ジグソーグループにて発表する際のレジュメを作成する。
・発表後の確認テストの問題を作成する。
3
.(13回目・14回目前半)発表・評価・各々が準備したレジュメを用いて、ジグソーグループで発表する。
1
人20
分(質疑応答込)で、13回目に4
名、14回目に2
名が発表する。4
.(14回目後半)確認テスト/個人で振り返り・各エクスパートグループで作成した確認テストを実施する。
・テスト終了後、ジグソー法に関して、個々で振り返り文を書く。
5
.(15回目)確認テスト解答/グループで振り返り・採点した確認テストを返却し、結果を発表する。
・エクスパートグループで、ジグソーグループでの個々の発表の出来や質疑応答を報告し 合い、活動全般をグループで振り返る。
・各エクスパートグループより解答の解説を行い、グループでの振り返りを発表する。
ジグソー法の特性上、学生には極力出席を呼びかけていたが、各回
1
~2名欠席者が出た。特に発表時に欠席者が出ると支障をきたすことは説明してあったが、止むを得ない事情であっ 早野香代 日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み-留学生と日本人学生の協働学習から-
たので、発表者不在のグループは、隣のグループと合同で行った。また、予め欠席が分かって いた者は発表順を変更し、出席可能な日に発表を変える対策を取った。
4.3.3 発表の評価
前述の【手順】3の個々の発表に対して、同じグループのメンバーが評価を行った。「A. 全体的によくわかった」「B.半分以上わかった」「C.あまりわからなかった」の
3
段階で評 価し、発表の内容や仕方、レジュメに関してもコメントを記入した(表2
参照)。自分の発表に対しても、「A.よくできた」「B.まあまあ」「C.あまりできなかった」の
3
段 階で自己評価を行った。評価の結果は、筆者が集計し、グループのメンバーからのコメントと 共に本人に報告した。全体に関わるコメントは、全体へのフィードバックで報告した。その内 容と考察に関しては、「4.5
受講者による評価」にて後述する。4.4 確認テスト
4.4.1 確認テストの作成
今回のジグソー法では、一人ひとりがより発表の重要性を感じ、正確にわかりやすく第三者 に学習内容を伝える努力をするように、発表後に確認テストを実施した。有田(2004)も、資 料全体の内容についての試験を実施し、グループのメンバー全員が
80
点以上に達した場合メ ンバー全員にボーナス・ポイントが加算され、評価にも反映させている(p.100
)。その結果、連帯責任が生まれ、授業参加や学習意欲の誘引になった(pp.
102- 103
)との報告があった。筆 者も同様の効果は期待するものの、少数ではあれ過度なプレッシャーへの否定的な意見もあっ たため、本テストでは、グループでの連帯責任となるポイントの加点などは行わず、個々の評 価への反映を行うのみとした。表 2 発表の評価
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確認テストは、専門グループ毎に学生ら自身が問題作成を行った。1つの専門のテーマで
10
点の配点とし、6つの専門のテーマで合計60
点満点のテストである(表3
参照)。テストの形態・形式は、すべて学生らに一任したため、レジュメ持ち込み可となった。そし て、どのテーマにおいても、比較的点数を取りやすい易しい問題を作成する傾向にあった。通 常テストには、集団内における個人の位置づけを目的とするものや目標が達成されたか否かの 判断を目的とするものがある(石井
1992
)。今回のテストは、後で行ったテストの評価に「確 認テストにはぴったりなレベルだと思った。」や「確認テストで復習することができたので、とても良かった。」とのコメントが見られたことから、学生ら自身は、クラス内での個人の位 置づけよりも、クラス全体での学習内容の理解、知識の定着という目標達成の判断に、テスト の目的を置いていたことが伺える。
また、学生らが自ら作成したテストの種類は、採点や解答が困難な主観的テストではなく、
採点に主観が入らず、解答しやすい客観的テストが主であった。ここで、テストの形式に着目 すると、○×で解答する真偽法(二肢選択法)が最も多く、多肢選択法、組み合わせ法、文脈 の中で空所を埋めさせる完成法なども作成されていた。真偽法や多肢選択法、組み合わせ法は 理解力を評価するための代表的な形式であるが、完成法は記入式で使用力をみるための形式で ある(石井
1992
:p.32
)。この完成法が含まれているのは問題1
.あいさつのコミュニケーショ ンで1
つのみであった。4.4.2 確認テストの結果
確認テストの結果は、表
4
の通りで、全体の平均点55. 6
点(60満点)であった。そのうち、日本人学生の平均点は
58. 5
点、留学生の平均点は50. 8
点で、7.7
点の差があった。唯一の使用力をみるための形式、完成法の問題含まれる問題
1
は、1~6のテーマの中で最 早野香代 日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み-留学生と日本人学生の協働学習から-
㺚㺼㺖㺼㺝㺎㺖㺼㺷㺎㺪㺽 Ꮫ⡠␒ྕ㸸 㸦㠃Ặྡࢆグධ㸧
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表 3 確認テスト
も平均点が低く、8.
6
点(10点満点)であった。やはり、理解力を評価する形式より、使用力 を評価する形式の方が難しいという結果が表れた。レジュメ持込可という条件であったにもか かわらず、記入できなかったため、内容に関する理解が不十分であったことは否めないが、授 業の中で、より使用力を伸ばす活動を行う必要性があることが示唆される。また、問
3
.比喩とコミュニケーションの 問題では、例文を見て「直喩・隠喩・換喩・提喩」のいずれかを記入する問題が出題され たが、「喩」を「愉」と書き誤った留学生が いたり、「隠喩」を「暗喩」と記入した日本 人学生がいたりしたため、正確に書くのが困 難な漢字への配慮が欠けていた点も反省事項 に挙がった。
また、グループ毎の平均点を見て、自分の 担当したテーマの得点が低い場合、発表のあ り方を反省することもできた。振り返ってみ ると、「留学生への説明が十分でなかったか もしれない」、「聞き手がわかるような具体的 な例をもっと提示すればよかったかもしれな い」等の反省点が出ており、聞き手の理解を
確認する際の踏み込み度の深さを追及する点が見られた。
4.5 受講者による評価 4.5.1 発表の理解度
ジグソーグループでの発表の内容に関する理解度の評価(4.
3. 3
参照)を集計すると、結果 は表5
のようになった。テーマによって、多少のばらつきはあるものの、どのテーマにおいて も、3分の2
以上の学生が、「A.全体的によくわかった」と評価している。2つのテーマにお表 4 確認テスト結果
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表 5 ジグソーグループでの理解度 テ ー マ
A
.全体的によくわかった
B
.半分以上 わかったC
.あまりわからなかった 未 記 入
1
.あいさつのコミュニケーション23
名(76.
67
%)6
名(20.
00
%)0
名(0.
00
%)1
名(0.
03
%)2
.スピーチのコミュニケーション20
名(66.
67
%)10
名(33.
33
%)0
名(0.
00
%)0
名(0.
00
%)3
.比喩とコミュニケーション25
名(83.
33
%)4
名(13.
33
%)0
名(0.
00
%)1
名(0.
03
%)4
.公共圏のコミュニケーション24
名(80.
00
%)4
名(13.
33
%)1
名(0.
03
%)1
名(0.
03
%)5
.異文化間のコミュニケーション24
名(77.
42
%)6
名(19.
35
%)1
名(0.
03
%)0
名(0.
00
%)6
.日本語とコミュニケーション24
名(80.
00
%)4
名(13.
33
%)0
名(0.
00
%)2
名(0.
07
%)いて「C.あまりわからなかった」とした学生は
1
名の留学生で、日本語のレベルが原因と本人 がその理由を記述していた。4.5.2 自由記述からの示唆
確認テスト実施後に、今回のジグソー学習についての振り返りを自由記述で行った。その記 述から得られたジグソー学習法の効果や問題点を考察する。ここでは、得丸(1998)、有田
(2004)を参考に、以下の手順で行った。
第
1
段階で、33名の自由記述による振り返り文から、この活動にとって重要と思われる表 現(文または文章)20個(おもしろい・楽しいなど)を抜き出した。第2
段階で、これらの うち共通項を持つと思われるものを、12項目としてまとめた。以下、その12
項目について例 を挙げて解説する。(1)おもしろい・楽しい・興味深い(13名)
「今までやったことのないジグソーという試みがおもしろかった」「エクスパートグルー プで学習する内容が全然違って面白かった」「留学生の母語の文化を比較できておもしろかっ た」「留学生ならではの視点からの説明や具体例が面白く印象に残った」「自分が担当した専 門分野について、より詳しくなれて、楽しかった」「みんなで作った問題を解きあうことが 新鮮でとても楽しかった」「発表時の工夫が興味深く参考になった」などの肯定的な感想が 多かった。ここで感じた「おもしろい・楽しい」ものとは、ジグソー法の試みや、エクスパー トグループ毎の異なるテーマ(学習内容)の他、留学生の文化や視点、専門性への追及、テ スト問題の作成と解答、発表の工夫などであった。
(2)多様性・異文化理解(13名)
「同じテーマの専門家複数からいろんな意見を聞くことが出来た」「留学生からの意見は とても新鮮で、日本人では気付かないことが多かった」「自分にはない視点・考えがあるの がわかった」「留学生がいたので、学びを深める中で、異文化に触れることができた」「同じ 文章のレジュメでも、人によって異なる工夫があったのは興味深く、参考になった」などが あった。ここでは、留学生と日本人学生の間はもちろん、日本人学生同士でも、意見や視点 の相違に気づき、その多様性を肯定的に認める意見が多く見られた。ジグソーグループでも、
エクスパートグループでも、1グループに
2
~3名留学生が入るよう編成した効果があった ものと判断できる。(3)新鮮・新しい知識の習得(11名)
「知らない単語や文脈もあるが、探しながらたくさんのことを学んだ」「ジグソー法も知 らない部分を知ることができ、新しい経験だった」「新しい専門的な知識を得て、新たな発 見もあった」「知らない分野について学べ、新鮮な気持ちで聞けた」「日本語コミュニケーショ ンにおける様々な見解を多角的に知ることができた」「今までは、共通課題を全員が読み、1 人がレジュメを作り発表するという形式が多かったが、未読の資料のレジュメを見て、発表 者からの情報を読み取るのは新鮮だった」との感想があった。大半がジグソー法を初めて体 験し、新鮮であったと言うものだった。また、その新しい学習法は新鮮なだけではなく、短 早野香代 日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み-留学生と日本人学生の協働学習から-
時間で多くの知識を得ることができたという効率の良さ(後述の(5))にも触れる学生が
5
名(留学生4
名、日本人学生1
名)もいたことは興味深かった。(4)コミュニケーション能力(9名)
「いろいろな方とコミュニケーションが取れてよかった」「コミュニケーション力を身に 付けることができた」「留学生の人とも改めて日本語を見直すことが出来た」「(日本人学生 が留学生に)ゆっくり質問してくれた」「論理的な説明で、留学生に対し、どのような日本 語を使えば伝わりやすいか良く考えた」「言葉だけで伝えるとなかなか分かりにくいと持っ たので、図を入れたりしてイメージしやすいようにした」「留学生にもわかるよう簡単な表 現を使うために、より深くそのテーマについて調べ、理解しなければならなかったことが、
自分にとっては良かった」「レジュメを元に、もっと話し言葉で説明すると、相手にも内容 が浸透しやすいと思った」などがあった。
留学生と日本人学生はもちろん、日本人学生の間においても、専門が異なると、互いに交 流する機会は少ない。さらには、日常の生活の中で、あるトピックについて、じっくり対話 するという機会もあまりないために、この授業が始まる当初、コミュニケーション活動に対 して苦手意識を持つものも多かった。そのため、授業を通して、「交流できてよかった」「コ ミュニケーションできてよかった」という感想が多くあった。また、対人コミュニケーショ ンにおいて、話し手が聞き手に自分の発言意図を誤解なく理解してもらえるように、相手の 文化的背景や日本語学習歴を加味して使用する語や表現を選んでいたことも興味深かった。
これは、対人コミュニケーションにおいて非常に重要な姿勢であり、必要なスキルでもある。
全ての学生に学習の成果が発揮できる発表の場を与えたことが、この姿勢を考え、実践する 機会となったと推測される。
(5)効率性(7名)
「効率が良く、効果も高い」「ジグソー法という形で、皆は自分で各自のレジュメを作っ て、周りの人に説明して、時間を節約している一方で、多くの知識を勉強することになって いて、いいやり方だ」「自分で今回の内容を全て読んでみんなと意見などの交換をするより も、自分に任された場所をしっかり精読して伝えるほうが、量も絞れて理解力も上がるし、
伝える内容も分かりやすくなっていたので、これはこれでよい方法かなと思った」「自分が 学ばなくてもグループの人の発表を聞けばわかるので、コミュニケーションの専門的なこと について短時間で学ぶことができた」「ジグソー法は、短時間で効率よく学べる学習法だ」
と評価するコメントが
7
名からあった。エクスパート毎で学習内容を分担し、個々がエクス パートになることで、1人ですべての資料を読むよりもはるかに量を減らし、理解の質も上 げることができるというのだ。特に留学生にとっては、今回の資料の1
つのテーマを読むだ けでもかなりの時間を要する。さらにそれを理解し、レジュメをまとめることは、日本人学 生の何倍もの労力を必要とするものもいる。しかし、大変ではあれ、ジグソー法はその資料 を自分は1
つ担当するだけでよい。残りの5
つは他のメンバーが担当し説明してくれ、結果、6
つのテーマ全体の内容を知り得るという点が時間・労力の両面において効率がよいと評価 されていた。(6)深い学習(6名)
「自分が発表の準備をする事で知識がかなり深まった」「確認テストの問題を作る際、自 分たちが学習したことで何を一番伝えたいか、覚えてほしいかを考える時間ができたので、
意見交換の時間は大切だと感じた」「エクスパート毎に分かれて学習することで、専門の分 野の知識を深めることができた」「留学生と学びを深める中で、異文化について触れること ができ、自分にとってはとても有意義な時間となった」「自分がエクスパートとなりみんな に理解してもらおうとすることで、自分の専門分野への理解や興味は深まっていくので、ジ グソー法と発表の形式の授業はとてもやりがいがあった」「他の発表で、もっとそのテーマ について詳しく知りたいと思うことがあったので、レジュメに自分の班が読んだ参考文献を 書いてほしかった」などが見られた。深い学習をどう定義するかはここでは追求せず、学生 らの振り返り文に現れていた「深い・深める・深まる」などの表現、あるいはそれに相当す る表現を抜き出した。文脈から学生らの言う深い学習とは、「他者に説明可能なレベルの理 解」や「必要かつ重要な内容を見抜く本質の探究」、「異文化との比較」「専門分野への更な る追及」を指すものと解釈した。
(7)協働性(6名)
「エクスパートグループの際に、もう少し留学生をサポートできる体制を整えてあげるべ きだった」「留学生の日本語の習熟度によっては自身が内容理解にまで至っていないため、
レジュメを読むのがやっとという状態のため、班によっては理解のばらつきが生まれてしま う」「隣の班の日本人専門家が質疑応答の時だけ留学生の側にいるという形をとれば留学生 も臆せず、発言できるようになるのではないか」「日本語文法について勉強して、直接発表 する経験を持てて嬉しい」「ジグソーグループの皆が、親切で詳細に説明してくれて理解で きた」「初めて勉強したが、日本人がよく教えてくれた。」「発表は自信がなくて心配したが、
みんながゆっくり質問してくれて答えることができた」などが見られた。日本人学生が留学 生をサポートできた面、サポートが不十分だった面、両面見られた。また、留学生の日本語 のレベル差によって生まれる、聞き手の理解のばらつきや、質疑応答への躊躇する態度など が指摘され、解決策を提案してきた学生もいた。
(8)自主性・意欲性(5名)
「意欲的に取り組めた」「自主勉強力を身に付けることができた」「内容を知らない人たち に説明する仕組みが、わかりやすく説明したいと言う心理を導き、しっかり学習する」「ジ グソーグループの中で、エクスパートが自分ひとりという状況が、意欲的に取り組むきっか けになった」「ジグソー法の仕組み自体が自ずと意欲的になる」と評価しているものが多かっ た。これは先行研究で報告された通りの評価が得られたと言える。
(9)難しい(5名)
「私にとっては、この形式はちょっと難しい。特に日本語で発表は大変。また、発表の評 価も私に取っては難しい。単語の勉強が充分足りない。」「レジュメを作ることが難しい。同 じグループのメンバーは私に手伝った。本当に感謝。」など留学生は、レジュメの作成も発 表も発表の評価も難しいとの意見があった。一方、日本人学生からは、「自分の担当は、自 早野香代 日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み-留学生と日本人学生の協働学習から-
分しか理解していないので、ジグソーグループの人たちに内容を伝えるのは難しかった。特 に留学生に内容を理解してもらうために、噛み砕いた説明をする必要があるが、内容をしっ かり理解し、具体例も知っておくことが重要であるとわかった。」など、留学生へのわかり やすい説明が難しいというものが多かった。実際、相手の言語レベルに合わせた説明にかな り苦悩していたようだ。また、「留学生が発表するには、やや内容が難しいのではないかと 感じた」など、学習内容や資料の難易度に言及する日本人学生の意見もあった。筆者も、こ れに関しては、資料を選ぶ際に吟味したのであるが、難しいからこそ協働で助け合わずには いられない状況ができることを狙い、あえて挑戦した。しかしながら、やはり留学生の日本 語レベルの差は一部で問題となった。また、それに対応する日本人学生のサポート力もグルー プによってばらつきが見られた。これは今後、様々なレベルに対応できるサポート力の向上 を目指す対策を検討する必要がある。
しかし、「私のグループは、異文化のコミュニケーションで、メンバーは、台湾人、韓国 人、タイ人と日本人を含んでいる。いろいろな意見を交換した。これは難しいが、おもしろ い。」と意見交換の難しさをおもしろいと感じた留学生もいたことは興味深かった。
(10)専門性(5名)
「学習内容自体がやや専門性の高いものだったので、日本人である自分にとっても勉強に なることが多かった」「自分がエクスパートとなりみんなに理解してもらおうとすることで、
自分の専門分野への理解や興味は深まっていくので、ジグソー学習と発表の形式の授業はと てもやりがいがあった」「他の発表で、もっとそのテーマについて詳しく知りたいと思うこと があったので、レジュメに自分の班が読んだ参考文献を書いてほしかった」「人によってレジュ メが違うので、エクスパートグループで統一したほうがよいのではないか」などがあった。専 門性への追求は、深い学習にもつながる。その内容が専門的で、発展しうる可能性を秘めて いるだけに、レジュメに情報の差があると不平等感を抱く者もいた。よって、エクスパートグ ループごとに、重要なキーワードや参考文献などの明記は統一する必要性があることを感じた。
(11)責任感・緊張・プレッシャー(4名)
「責任感をもって真剣に取り組めた」「テストのためにしっかり伝えなければならないと いう中で発表するのは、プレッシャーがあるし、いい緊張があると感じた」「エクスパート 一人ひとりが理解しなければならないという責任があるので、通常のグループ活動のように 他人任せにせず、一人ひとりが真剣に取り組むことができる」「グループの発表は少し緊張 したが、クラス全体の発表より、緊張せずにすむ」などがあった。エクスパート
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人での発 表やテストの実施が、個々の責任感を引き出したと察せられる。この責任感が、前述の自主 性や意欲性に繋がってゆくものと推測される。(12)実用性・有益性(3名)
「非常に為になる勉強方法であった」「留学生に内容を理解してもらうために、噛み砕い た説明をする必要があるが、内容をしっかり理解し、具体例も知っておくことが重要である とわかったので、今後のレジュメ作成や発表などに役立てて行きたい」「いろいろなことを 学んだ。文化とかコミュニケーションとか異文化間のコミュニケーションなど勉強になった。
自分がやってきたテーマはかなり役に立つと思う。」など、ジグソー法で得たものは、今後 の学生生活や日本社会でのコミュニケーション活動に役立つし、役立てて行きたいという意 見があった。
5.ジグソー法の効果と課題
学生の振り返りで最も多かったコメントに、「おもしろい・楽しい」(13名)、「多様性・異 文化理解」(13名)が見られた。これは、その後に続く「新しい知識の習得」(11名)や「コ ミュニケーション力」(9名)、「効率性」(7名)、「深い学習」(6名)などの学力向上に繋がる 評価以上に、多様な他者との協力的な活動ができた喜びやその活動のおもしろさの発見の大き さを示している。個々の多様性やインフォメーションのギャップがコミュニケーションのきっ かけとなり、建設的相互作用を生む重大な要素となったことが示唆される。
検討すべき課題としては、やはり留学生の日本語のレベル差が挙げられる。日本人と同様に 課題もこなし、積極的に議論する留学生もいれば、日本人学生を前に委縮して、分からない点 を質問すらできない留学生もいた。学生の振り返りからも、一部の留学生には、配布した資料 の日本語の語彙や内容が難しすぎたのではないかという指摘もあった。
しかし、ここで、E.アロンソン(2016)に立ち返りたい。E.アロンソンは、ジグソーグルー プは人種・性・成績等の面で多様であることが望ましいとしている。人種による言葉の壁、学 習歴や能力による成績の差をも、この活動の望ましい条件に挙げている。つまり、その違いが あるが故に、その差を埋めるべく、建設的相互作用が生まれ、多様性や異文化を理解しようと するプラスの効果を生み出せるのだ。今回、学生の振り返りから察するに、一部の学生はその 建設的相互作用への取り組み方がわからず、迷いや疑問を抱いたようだ。よって、どのように 協働で理解していくか、具体的な対策を講じる必要がある。そこで、今回、日本語の能力に差 がある学生に対する対応も含め、3つの対策を提案したい。
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つは、日本人学生の振り返りからの提案であるが、専門家グループ5
~6人で行った専門 のテーマに関する学習を日本人学生と留学生が1
対1
で行うペア・ワークへ転換するというも のだ。5~6人のグループであると、どの日本人学生がどの留学生にどこまでのサポートをす るか迷いや戸惑いが生まれ、中途半端に終わってしまう可能性がある。これが、ぺア・ワーク なら、役割分担が明確になり、理解度の確認も不明な点に関する説明も容易になる。よって、専門家グループでの学習の内容を理解する課程で、グループを細分化し、このペアワークを部 分的に用いることを提案したい。
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つ目は、専門家グループで、皆が一斉に同じ資料をすべて読むのでなく、各々が自分の日 本語力に応じ、選んだパートを分担して読み、内容を報告し合うという方法である。これは、今回のジグソー法においても、1つの専門グループが自分たちで考え実施していた。留学生の 日本語のレベル差が気になるようなら、資料の中で比較的分かりやすく短い部分を留学生が、
そうでない部分は日本人学生が担当するということも可能だ。
そして、3つ目は、日本語に自信のない留学生には資料を早めに渡すというものである。今 回は、グル―プ学習の
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週間前に資料を配布し、レジュメの作成も課題とした。学生によって は、時間が十分でなかった者もいたかもしれない。そして、課題をこなす時間と共に、資料の 難易度にも配慮する必要がある。今回、6つのうち2
つのテーマにおいて、留学生から難しかっ 早野香代 日本語のコミュニケーション力向上を図るジグソー法の試み-留学生と日本人学生の協働学習から-たとの意見が出た。協働学習の効果を期待して準備したものであったが、そのサポートをどの ようにしてよいか難しいとの意見も多かった。よって、留学生のレベルを把握し、グループで 可能なサポートを模索し、そのサポートをグループ間で具体的に紹介し合うということも検討 してもよいであろう。
他に問題となったのは、当日の発表者の欠席である。今回は、発表者が欠席したグループが 隣のグループに合流し、隣の発表者の内容を共有する形をとった。しかし、レジュメの追加や 席の移動にばたつき、発表が遅れてしまった。発表者も、突然のメンバー増加に、動揺する場 面が見られた。グループの規模が大きくなることで、輪が大きくなり、発表者の声が聞こえに くくなったり、質問もしにくくなったりする。したがって、体制的に可能であるならば、教員 かアシスタント・ティーチャーが欠席者の代わりに入るのがよいであろう。
6.まとめ
今回、「日本語コミュニケーション」という大きな課題を
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つの専門のテーマから多角的に 学ぶ知識構成型ジグソー法を報告した。その一つ一つが専門的かつ多様で、学生らがその抽象 化の追求のために建設的相互作用に加担していたことが「おもしろさ」や「深い学習」に繋がっ たものと推測される。そして、学生の振り返りから、ジグソー法には、意欲的に責任感を持っ て効率よく学習する中で、その専門分野をより深い学びに発展させることができること、また、多様性や異文化理解を可能にすることから、その過程で必要となるコミュニケーション力の向 上も期待されることがわかった。こういった協働学習を通して、自らの学びの質や効率をも見 直し、今回のジグソー法の問題点の改善策を提案するという、自主的かつ意欲的な姿勢を見せ た学生もいた。これは、学生主体の「協調」路線の協働学習になったと同時に、E.アロンソン の志向を継承する協力的なものへ変えてゆくジグソー法に値すると評価できよう。
このジグソー法は、留学生と日本人学生が共存する大学の様々な分野で生かされるべきであ り、それを生かす学習法を異なる分野間で共有し、大学全体における「コミュニケーション力」
の向上を図るべきであろう。そして、その試みが、今後の多文化共生社会を構成する一員とし て必要な「生きる力」の養成に加担できればと願う。
協働学習を実施する際の日本語力の差というものは、多様性の受容という観点においては大 いなる利点となるが、全ての学生が深い理解を得るという到達目標においては悩ましい課題と なる。今後は、協働学習において、語学力の差がある中で相互作用を高める環境や具体的な方 略を探ることを研究課題としたい。
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