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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:能田 佳祐

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名: IL-1β, TNF-α and TGFβ1 regulate mouse amelotin gene transcription in gingival epithelial cells IL-1βTNF-αおよびTGFβ1は歯肉上皮細胞においてマウスアメロチン遺伝子の転写を

調節する)

審査委員:(主 査) 教 授

(副 査) 教 授 教 授 島 潔

接合上皮は、歯肉とエナメル質との接合部に位置する歯肉上皮であり、接合上皮のエナメル質への付着 はヘミデスモゾーム結合による上皮性付着であり、歯周組織の健康を維持する役割を担っている。

アメロチン (AMTN)は、成熟期のエナメル芽細胞および接合上皮の内側基底板に限局して発現する分泌 エナメルタンパク質の1つであり、その局在から、接合上皮の歯面への付着および防御因子としての機能 が示唆されている。

慢性歯周炎は、歯周病原細菌の感染により惹起される炎症性疾患である。細菌感染に対する生体の炎症 反応は、免疫担当細胞により制御され、歯周組織内で炎症性サイトカインやマトリックスメタロプロテア ーゼが過剰に産生されると、結合組織の破壊や骨吸収等の臨床症状が生じる。インターロイキン-1β (IL-1β) は、歯周病の病態生理に応答する炎症性メディエーターである。歯肉溝滲出液中のIL-1β濃度は歯周病の重 症度を反映し、歯周炎症の臨床パラメーターであるプロービングポケット深さおよびプロービング時の出 血よりも感度が高いことが報告されている。腫瘍壊死因子-α (TNF-α)は、閉経後骨粗鬆症、関節リウマチお よび歯周炎等の多くの疾患での急性および慢性炎症反応の重要なサイトカインである。AMTN遺伝子発現 は炎症歯肉中で有意に増加し、歯肉上皮細胞においてトランスフォーミング成長因子β1 (TGFβ1)によって 誘導されるアポトーシスの開始時に、AMTN遺伝子発現が一時的に増加することが報告されている。しか しながら、歯肉上皮細胞における炎症性サイトカインによるAMTN遺伝子発現の調節についての報告はな い。本研究では、マウス歯肉上皮細胞 (GE1)におけるAMTN遺伝子発現に対するIL-1βおよびTNF-αの影 響を解析した。さらに、マウス歯肉上皮細胞でのアポトーシスの進行中にTGFβ1が誘導するAMTN遺伝 子発現が抑制されるメカニズムを解析するため、アポトーシス促進因子である Bax の過剰発現による AMTN遺伝子発現の変化を解析した。

IL-1β (1 ng/ml)またはTNF-α (10 ng/ml)GE1細胞を刺激すると、刺激6時間後にAMTN mRNA量は上昇 し、12および24時間後に最大となった。AMTNタンパク質量はIL-1β (1 ng/ml)およびTNF-α10 ng/ml 6時間後に増加し、12および24時間後に最大となった。-116AMTN (-116~+60)-238AMTN (-238~+60) -460AMTN (-460~+60) -705AMTN (-705~+60) および -800AMTN (-800~+60)の長さのマウスAMTN遺伝 子プロモーターを含むルシフェラーゼコンストラクトをGE1細胞にそれぞれ導入し、IL-1β1 ng/ml)また TNF-α (10 ng/ml)で刺激すると、全てのコンストラクトで転写活性は上昇した。-460AMTNコンストラク ト中のC/EBP1C/EBP2およびYY1応答配列に3塩基対の変異を挿入した-460AMTN mC/EBP1-460AMTN mC/EBP2および-460AMTN mYY1GE1細胞に導入すると、IL-1βおよびTNF-αによる転写活性の上昇は 部分的に抑制され、2ヶ所に3塩基対ずつの変異を挿入した-460AMTN mC/EBP1+mC/EBP2GE1細胞に

(2)

導入すると、転写活性の上昇は完全に抑制された。-460AMTNを導入したGE1細胞にリン酸化阻害剤を作 用させIL-1βまたはTNF-αで刺激すると、チロシンキナーゼ (HA)MEK1/2キナーゼ (U0126)PI3キナ ーゼ (LY294002)により転写活性の上昇が抑制された。ゲルシフトアッセイの結果、C/EBP1C/EBP2およ YY1と核内タンパク質の結合は、IL-1βおよびTNF-α刺激12時間後に増加した。C/EBP1C/EBP2およ YY1と核内タンパク質の結合は、40倍濃度の非標識の同配列をそれぞれ加えると結合バンドは消失した。

クロマチン免疫沈降法 (ChIPアッセイ)の結果、C/EBP1C/EBP2およびYY1配列へのC /EBPβおよびYY1 の結合は、IL-1βおよびTNF-α刺激12時間後に増加した。リン酸化阻害剤を用いたChIPアッセイの結果、

C/EBP1C/EBP2およびYY1配列へのC /EBPβおよびYY1の結合は、HAU0126およびLY294002によ って抑制された。

マウスAMTNSmad3およびBax mRNA量に対するTGFβ1の影響をリアルタイムPCRで解析した結果、

AMTN mRNA量はTGFβ1刺激24時間後に最大となり、その後減少した。Smad3およびBax mRNA量は、

TGFβ1刺激72時間まで継続的に上昇した。ウエスタンブロットの結果、AMTNタンパク質量はTGFβ1 48時間後に最大となった。TUNEL染色の結果、Baxの過剰発現によりアポトーシスの誘導が認められ た。GE1細胞にBax発現ベクターを導入すると、TGFβ1が誘導するAMTN mRNA量およびAMTN転写活 性の上昇は抑制された。Bax過剰発現によるSmad3、リン酸化Smad3およびBaxタンパク質発現への影響 をウエスタンブロットで解析すると、Baxの過剰発現の結果、Baxタンパク質は核内では発現せず、TGFβ1 が誘導するSmad3およびリン酸化Smad3タンパク質発現量の増加を抑制しなかった。ChIPアッセイの結 果、Bax発現ベクターをGE1細胞に導入すると、TGFβ1が誘導するSmad3Smad応答配列 (SBE)との結 合を抑制した。

以上の結果から、IL-1βおよびTNF-αはチロシンキナーゼ、MEKおよびPI3K経路を介して、C/EBPβ およびYY1転写因子を誘導し、マウスAMTN遺伝子プロモーター中のC/EBP1C/EBP2およびYY1配列 への結合を増加させることでAMTN遺伝子発現量を上昇させることが明らかになった。また、TGFβ1が誘 導するSmad3SBEとの結合を介したAMTN mRNA量の上昇は、TGFβ1が誘導するBaxにより阻害され、

Smad3Bax間には、間接的な抑制作用が存在することを明らかにした。炎症性サイトカインによるAMTN の発現の増加は、接合上皮の恒常性の維持や、歯周組織の防御機構に関与することが示唆された。これら の研究成果は、歯周病の予防および治療の発展に大きく寄与するものである。

よって本論文の著者は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上 平 成29年12月21日

参照

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