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わが国における電子行政の評価活動 2.1

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1. 問題の所在

1.1. サービスイノベーションの特質 近年, サービスサイエンス及びサービスイ ノベーションという概念に大きな注目が集まっ ている。 サービスサイエンスとは, 従来経験 や勘が重視されてきたサービス分野を科学的 対象として解析し, 仮説とモデルを用いてさ まざまなサービスの最適性を導出しようとす る 学 融 合 的 な 新 し い 科 学 の こ と で あ る (Ark, 2003;COC, 2004;安部, 2005;須藤, 2007等)。

そして, サービスサイエンスから得られる 知見に基づき今後進展すると期待されている のが, 「サービスイノベーション」 である。

サービスイノベーションは, 財としてのサー ビスのイノベーションを意味する概念である と同時に, 知識集約型サービス活動 (KISA:

Knowledge-Intensive Service Activities) によってもたらされる多面的なイノベーショ ン を も 包 含 す る , 幅 広 い 概 念 で あ る (Kuusisto and Meyer, 2002;OECD, 2006)。

「サービス」 のイノベーションは, 「モノ」

のイノベーションと比較して, 少なくとも次

の2つの大きな特徴をもっている。

1) 利用者との協働による価値の共創 まず, サービスイノベーションにおいては, 顧客との相互作用を通じて価値を共創するイ ノベーション (Customer-led Innovation / Producer-User-interaction-Based Innovation) がきわめて重要となる。

伝統的なイノベーションは一般に, 高度な 技術知識を有する専門家によって組織の内部 で推進され, その成果は, 購買・製造・流通 等の工程を経て, 最終消費者まで一方向的に 届けられてきた。 それゆえ顧客は, イノベー ション・プロセスに, 生産物を選び, 消費す る場面で消費者として参加するだけであった (Sampson, 2001)。 しかし高度ICTが企業に 浸透して取引費用が低下するにつれて, 外部 にあるアイデアを積極的に活用して新しい財 を生み出し, 市場への新しい経路を切り拓く オープン・イノベーションが, 富の重要な源 泉になってきた (Chesbrough, 2003)。

われわれはいまや, 全人類が情報を発信す る情報爆発時代に突入しつつある (喜連川他,

Public Innovation and E-Government : Consideration of the Measurement Framework

on the Impacts of e-Government

後藤 玲子 ([email protected])

キーワード

パブリック・イノベーション, 電子行政, プログラム評価, 論理モデル, 成熟度モデル, 公共 ICT支出の生産性上昇効果, 無形資産価値

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2007)。 人類の創出する情報量がかつてない ほどの勢いで爆発的に増加し, 全世界の人々 が 高 度 情 報 通 信 技 術 (ICT : Information and Communication Technologies) を低コ ストで利活用できるようになると, サプライ チェーンに参加する企業間の境界だけでなく, 生産者と消費者の境界までもが希薄化してゆ く。 そこでは, 内部におけるイノベーション を活性化するという明確な意図をもって顧客 と協働し, 爆発的に増加する情報をダイナミッ クに利活用して新しい価値を共創すること (Co-creation of value) が, ビジネスの価 値や生活の価値を大きく左右することになる と考えられる (図1)。

図1:顧客との協働による価値の共創

2) 多面的で学際的なイノベーション 第2に, サービスイノベーションは, 「多 元的な, 融合領域におけるイノベーション」

(Multidimensional and Multidisciplinary Innovation) という性質を有する。 従来のナ ショナル・イノベーション・システム論にお いては, 有形財 (tangible goods) とそれを 生み出す源泉としての技術に主要な関心が注 がれてきた。 しかし現実のイノベーション・

プロセスにおいては, 技術開発から設計, 購

買, 製造, 物流, 販売・マーケティング, そ してサービス提供に至る工程の各場面におい て , 無 形 の 知 識 集 約 的 な サ ー ビ ス 活 動 (KISA) が重要な機能を果たしている。

富は, 科学者や専門的技術者によってのみ 生み出されるのではなく, ①技術と製品の革 新, ②流通システムの革新, ③組織の革新,

④ネットワークと価値連鎖 (value chain) の革新, そして⑤顧客との相互作用というよ うに, 多元的な源泉をもつ (OECD, 2005:

p.33)。 それゆえ, サービスイノベーション を科学的に解析するためのサービスサイエン スは, 諸学を融合した新しい科学として発達 していくことが当初から強調されているので ある。

1.2. パブリック・イノベーションと電子行 政:本稿の主題と構成

OECD [2006] において知識集約型サービ ス活動 (KISA) の研究対象として取り上げ られている産業部門は, ①ソフトウェア産業,

②ヘルスケア産業, ③旅行・観光業, そして

④ 資 源 集 約 型 産 業 で あ る 。 他 方 で , COC [2004] や橋本 [2006] でもっとも注目されて いる部門・産業の1つは, ⑤公共部門・公共 サービス業である。

公共部門・公共サービスにおけるイノベー ションの社会的・経済的重要性を説明するた めには, 政府部門及び公共サービスの経済規 模を確認するだけで十分であろう。 2006年に おける実質GDP約548.4兆円のうち, 公的需 要の構成比は約117.9兆円 (構成比21.5%) に のぼる。 公共サービス業の市場規模につい ては, 国民皆保険のもとで官製市場としての 側面が大きい 「健康サービス産業」 に着目す ると, その市場規模は2002年時点で約55.7兆 円であり, 2010年には約75兆円に達すると

内訳は, 政府最終消費需要95.3兆円 (GDP構成比17.4%), 公的固定資本形成22.4兆円 (同4.1%), 公的在 庫品増加2,520億円 (同0.05%)。 2000年実質連鎖価格。 資料は, 内閣府 「国民経済計算」。

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(3)

予測されている。 政府部門及び公共サービス の生産性を高めなければ, 少子高齢化が進む 先進諸国において一国全体の富と雇用・就労, そして生活環境を含む人々の豊かさの維持し 向上することは困難であるといっても過言で はない。

これほどまでに重要であるにも関わらず, 従来のイノベーション研究では, 政府部門は 民間部門のイノベーションを促進する 「触媒」

と位置づけられ, 自らを変革しイノベーショ ンを推進する主体として扱われることは殆ど なかった (Freeman, 1992;OECD, 2001;

Steil et al., 2002;Fornahl and Brenner, 2003等)。 また, パブリック・イノベーショ ンを主題的に論じている研究はいくつかある が (Light, 1998; Osborne and Brown, 2005;Bekkers et al., 2006等), 主なテー マ は , 新 し い 公 共 経 営 手 法 (NPM : New Public Management) , 公 民 連 携 (PPP : Public-Private Partnership), 業務・システ ム最適化計画 (EA), グッド・ガバナンス等 の組織的・制度的イノベーションであり, 公 共分野のサービスイノベーションを主題的に 探求しようとする試みは, ほぼ皆無である。

「パラダイム」 という用語の創始者である トーマス・クーンは, 「一般に認められた科 学的業績で, 一時期の間, 専門家に対して問 い方や答え方のモデルを与えるもの」 (Kuh n, 1970:p.v) をパラダイム (paradigm:

共同規範) と称し, 科学革命は支配的パラダ

イムの交代の歴史であるとした。 クーンも主 張したように, 社会経済システムのパラダイ ムの方向性は, 新しい科学に基づくイノベー ションがいかなる経済状態で, いかなる政治 的・社会的な文脈の中で遂行されるかに大き く依存する (Piore.and Sable, 1984:pp.38- 48 邦訳pp.51-65 ;須藤, 1995:pp.56-79)。

したがって本稿では, 公共分野におけるサー ビスイノベーションの重要性を明確に考慮に して, 「パブリック・イノベーション」 (pub- lic innovation or innovation in the polity domain:公共領域における革新) について 考察する

「領域」 (domain) という用語は, 青木 [2001] に従い, 「自然人ないし組織といった 経済主体の集合, および継起的な期間におい てそれぞれの経済主体が選択できる物理的に 可能な行動の集合」 よって構成される場を意 味する概念であると定義する (青木, 2001:

p.27)。

「パブリック・イノベーション」 は, 公共 ガバナンスの革新, つまり公共領域における 意思決定のあり方等統治の民主化を含む, 幅 広い概念である。 青木 [2001] によれば,

「 公 共 領 域 」 (polity domain, 直 訳 す る と

「政治ドメイン」) では, 民間主体と異なる行 動選択集合を賦与された集権的主体である

「政府」 が主要なプレイヤーとなる。 民間主 体は政府の行動選択によるインパクトから逃 れることができず, 文脈に依存する形で行動

内訳は, 「医療サービス」 31.3兆円, 「医療用医薬品」 6.4兆円, 「介護サービス」 5.2兆円, 「スポーツ・健 康維持増進サービス」 3.1兆円, その他 (「医療用具」 や 「福祉用具」, 「医療関連サービス」, 「第三分野保険」

等)。 資料は, 経済産業省 「サービス産業の現状と課題」 (平成16年6月)。

「パブリック・ドメイン」 (public domain) という用語は一般に, 社会全体の公共財という意味で用いら れるため, 英語訳では混同を避けた。 なお 「公共財」 (public goods) は経済学の用語で, ①使用者排除不 可能性, ②消費の非競合性という性質を兼ね備えた財を意味する。 経済学における 「財」 (goods) とは, 人 間のニーズ及び欲求を満足させる物的手段 (無形財 intangible goods を含む) のことで, 広義ではサー ビス (services) を含むが, 本稿では 「財」 という用語を, サービスを含む概念として用いずに, 必要に応 じて財・サービスと併記する。

(4)

する。 民間部門が政府の行動選択集合に影響 を与えることのできる方法は, 政府を支持す るか否かを政治的に選択することによってで ある (ibid, pp.26-34)。 しかし, 公共領域内 で活動する民間主体は, 政府の行動選択集合 を規定する法制度や政策に, PDCAサイクル (Plan 計画 −Do 実行 −Check 評価

−Action 改善 サイクル) の各場面でさ まざまな方法で関与している。 そのため, 政 治的な選択以外の方法でも政府の行動選択集 合に影響を与えうる。 別の言い方をすると, 公共財・サービスの配分・分配は政府の行動 選択に大きく影響を受けて行われるが, その 生産−消費−処分の各段階で関与する民間主 体の行動は, 政府の行動選択集合に影響を及 ぼしうる。 それゆえ, 投票行動という政治的 な選択に寄らずとも, 政府の行動選択集合を 変化させ, より民主的な統治を実現すること は可能である。

パブリック・イノベーションはこのように 多様な意味をもつ概念であるから, 本稿で全 方位的に考察することは難しい。 サービスイ ノベーションのインパクトは, 高度ICTを駆 使することによりサービスの科学的管理が容 易になる分野で特に大きい。 よって具体的な 考察対象を, 行政部門においてICTを利活用 したサービス革新や業務革新等の活動 (以下,

「電子行政」 という) に定める

ICTを有効利用して行政効率や行政サービ スの質を高めるためには, 電子行政の目指す べき価値を明確化して評価フレームワークを 構造化し, PDCAサイクルを継続的に回して いくことが不可欠である。 したがって, 価値 評価に関連する事項に焦点を絞って考察を進 めることとする。

本稿の構成は, 以下の通りである。 続く第

2節では, わが国における電子行政評価活動 の現況を分析整理する。 第3節では, OECD 諸国の先進事例や先行研究を参照しながら, わが国の電子行政に係る課題を明らかにし, 解決の方向性を示す。 最後に第4節で本稿を まとめ, 今後の研究課題を述べる。

2. わが国における電子行政の評価活動 2.1. 政策評価・業績評価に係る概念の整理

わが国における電子行政評価の現況につい て述べる前に, 政策評価や業績評価で頻繁に 登 場 す る 概 念 を 先 に 定 義 ・ 整 理 し て お く (Wholey et al., 1994;Hatry, 1999;東, 2001; Rossi et al., 2004;廣瀬, 2006;行 政管理研究センター編, 2001等を参照)。

1) 政策体系, 評価基準, 評価手法

行政評価等は, 政策評価と行政評価・監視 からなる。 2001年1月の中央省庁再編に伴っ て導入されたわが国の政策評価制度は, 政策 評価について規律するものである。 評価専担 組織は総務省行政評価局だが, 各行政機関 (府省等) が第一次的に自己評価を行うこと とされており, 総務省行政評価局は, 府省横 断的な政策や, 全政府的見地から府省横断的 に行う必要のある政策評価を担うことになっ ている。 PDCAの実施, 第三者評価, 情報共 有等は義務付けられているが, 予算編成上の 財政規律との連動は考慮されていない。

一般に政策とは, 政策 (狭義の政策), 施 策, 事務事業からなる 「政策体系」 を意味す る。 「政策」 (policy) は特定の政策課題に対 応 す る た め の 基 本 方 針 を , 「 施 策 」 (pro- gram) は政策を実現するための具体的な方 策や対策を, 「事務事業」 (project) は施策 を具現化するための個々の行政手段を意味し,

本稿では, 「電子行政」 という用語を, 国と地方公共団体の双方を含む行政部門において, 戦略的目的で ICTを利活用しようとする活動を包括的に指す概念として用いる。 電子行政投資や電子行政サービスは各々, 戦略的目的でICTを利活用するために行われる公共投資, 公共サービスを指すものとする。

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それぞれは目的−手段関係にある。 「使命」

(mission) や 「戦略」 (strategy) は中長期 的な政策課題に対応するためのビジョンのこ とで, 政策 (狭義) の上位概念である。

日本の政策評価制度で 「評価の観点」 の

「一般的基準」 とされているのは, ①必要性 (ニーズに照らした妥当性, 行政が行う必要 性), ②効率性 (費用に対する効果の効率),

③有効性 (期待される効果に対するインパク ト), ④公平性 (受益や費用の公平分配),

⑤優先性 (他の政策と比べた優先度) 等であ 。 行政のマネジメント・サイクルと評価 の観点は, 図2のような関係にある。 成果 (アウトカム) 等の定義については後述する。

政策評価手法には, ①事業評価 (プロジェ クト評価), ②実績評価 (業績評価), ③総合 評価 (プログラム評価) の3種類がある。

①事業評価 (プロジェクト評価) の主たる 対象は事務事業で, 目的は行政活動の採否, 選択等に資する情報を提供することである。

一般に, 事前評価では必要性等が, 事後評価 では妥当性を含む評価が行われる。

②実績評価 (業績評価) の主たる対象は施 策等で, 目的は, インプット, スループット, アウトプット及びアウトカムに関する達成度 合いの情報の提供にある。 日本でもっとも多 用されている政策評価手法である。

③総合評価 (プログラム評価) の主たる対 象は政策 (狭義) や施策で, 目的は効果の明 確化や, 問題点の解決に資する情報を提供す ることである。 政策・施策実施から一定期間 が経過した時点で, 特定の課題について, 直 接的効果, 因果関係, 波及効果 (副次的効果) の発生状況および発生プロセス等を総合的に 評価することが多い。 ただし3.1で後述する ように, プログラム評価を事前に行うことは 可能であり, 有用でもある。

2) 業績測定フレームワーク, 論理モデル 一般に, 政策や公共サービス等の実績を定 期的に測定することを, 「業績測定」 (per- formance measurement) という。 結果重視 で市民中心の政府活動を実施するためには, 利用者目線で政策等の効果を最大化し, 費用

1993年米国政府業績評価法 (GPRA:Government Performance Results Act of 1993) でもっとも重視 されている評価の観点。

行政評価・監視の場合, 評価基準は, 合規性, 合目的性, 効率性, 経済性等である。

費用対便益分析 (cost-benefit analysis) では, 有形・無形の経済的便益と費用との関係から純便益を把 握する。 費用対効果分析 (cost effectiveness analysis) では, 限界費用の観点から, 特定の効果 (経済的 価値であってもよい) と費用との関係を分析評価する。

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図2:行政のマネジメント・サイクルと評価の観点

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やリスクを最小化することが求められる。 そ のためには, 特定プログラムと期待されるア ウトカムの関係を仮定した因果連鎖を仮定す ることが有用である。 その因果連鎖を一般に

「論理モデル」 (logic model) といい, 政策 等と業績との関係を図3のように表す。

論理モデルは, 行政活動によって生じる変 化のプロセスに即して, 活動の結果として期 待される業績の改善状態で表現される価値の 連鎖を図示したものである。 測定指標は利用 者目線でミッションから定めてゆき, 測定活 動はインプット指標から行うことになる。

アウトカム等は複数ありうるため, 論理モ デルは, 図4のようなダイアグラムで表現さ れることも多い。 そのため, 構造方程式分析

(structural equation analysis) のような解 析手法がしばしば用いられる。

業績測定指標は, 実績評価だけでなく, 事 業評価や総合評価に用いることができる。 例 えば, インプットに対するアウトプットの効 率性, アウトプットに対するアウトカムの有 効性, インプットに対するアウトカムの費用 対便益計算に, 業績測定指標を用いることが 可能である (図2を参照)。 ただしプログラ ムが特定のアウトカムへの 「インパクト」

(影響) を実際にもたらしたかどうかを評価 する際には, アウトカムに影響を与える外部 要因を考慮し, 適切に制御した上で評価しな ければならない。

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図4:論理モデルの例

(7)

3) アウトカム, アウトプット, スループッ ト, インプット

これまで特段定義してこなかったアウトカ ム等の用語をここで定義する。 一般に 「アウ トカム」 (成果) とは, 施策を実施すること によって生じた結果 (事象, 生じたこと, 条 件や行動, 態度の変化等) のことで, プログ ラム等が担っている使命や任務を意味する。

プログラム計画期間内におけるアウトカムの 達成度合いを定量的に測定するための指標を,

「アウトカム指標」 という。

アウトカムは, 達成プロセスを踏まえて, いくつかの段階に分けることができる。 図3 で示したように, 少なくとも 「最終アウトカ ム」 と 「中間アウトカム」 の2段階に分けて おくことが肝要である。

「最終 (遠位) アウトカム」 とは, プログ ラムが望んでいる結果のことであり, 最上位 におかれるミッション (使命) の対象のこと である。 これは, 教育や所得, 雇用, 生活環 境等の, 市民にとって重要な事柄の状態によっ て表現される。 プログラムの多くは, 短期的 なアウトカムと, 長期的なアウトカムをもた らす. それゆえ, 実施中のプログラムの改善 にあたっては, 短期的な最終アウトカムを把 握することが必要となる。 一方, 「中間 (近 位) アウトカム」 とは, 最終アウトカムの達 成につながることが期待されるアウトカムの ことであり, 最終アウトカムからみればアウ トプットとなるものである。

「アウトプット」 とは, アウトカムを達成 するために, 政策担当者が実行したことによっ て企業や市民に届けられた生産物や, 生産さ れたサービスの量のことで, 供給側で制御可 能な, プログラムやプロジェクト等の目標の 対象物を指す。 計画期間内における, 施策等 によってもたらされた生産物を測定するため の指標を, 「アウトプット指標」 という。

「スループット」 とは, インプットが投入 され, アウトプットが生産されるまでに実施

される活動やプロセスによってもたらされる 作業量・活動量, あるいは実現能力や機能の ことで, スループットを測定するための指標 を, 「スループット指標」 という。

最後に 「インプット」 とは, アウトカムを 達成するために投入される, 有形・無形の物 的, 人的, 金銭的, 時間的, 関係的資源のこ とである。

4) バランスト・スコアカード (BSC) と業 績測定参照モデル (PRM)

業績測定には, 民間部門で発達してきたバ ラ ン ス ト ・ ス コ ア カ ー ド (BSC: balanced scorecard) がしばしば用いられる (Kaplan and Norton, 1993;2000)。 BSCでは, 主要 なアウトカム指標のことを 「重要目標達成指 標」 (KGI:Key Goal Indicator), アウト カムにいたる途中段階で把握すべき業績測 定 指 標 を 「 主 要 業 績 指 標 」 (KPI : Key Performance Indicator) , 目 標 達 成 の 鍵 と なる行動等の要因を 「主要成功要因」 (CSF:

Critical Success Factor) という。 BSCの枠 組みを用いて, ①顧客の視点, ②財務の視点,

③内部プロセスの視点, ④学習と成長の視点 という4つの視点ごとに各種指標を体系化・

構造化した図は, 「戦略マップ」 と称される (Kaplan and Norton, 2004)。

EA (Enterprise Architecture) に基づく

「業績測定参照モデル」 (PRM:Performance Measurement Model) は, 戦略マップを単 線化したモデルに基づき, ①アウトカムの達 成度合いを管理するための指標 (「成果KPI」

という), ②アウトプットとスループットの 実行度合いを管理するための指標 (「プロセ スKPI」 という), ③インプットの実施度合 いを管理するための指標 (「インプットKPI」

という) によって電子行政プログラム等の業 績を測定・管理・評価するためのフレームワー クである (OMB, 2005;経済産業省, 2005;

NMDA, 2006)。 図 5 に , BSCの 指 標 と ,

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PRMの汎用KPIとの関係を示しておく。

図5:バランスト・スコアカードと業績測定 参照モデル

2.2. わが国における電子行政の取組み 政策評価・業績評価に関する基本概念の定 義と整理が完了したので, 電子行政の取組み と政策評価の現況を整理していく。

1) 電子行政の取組み (2001年〜2005年) 行財政の効率的な運営を目的としていた電 子行政の取組みは, 1990年代の情報通信技術 の飛躍的な進展と, 2000年以降のIT戦略推 進体制の整備を背景として, 大きな変化を遂 げてゆく。

まず政府においては, 2001年1月に 「5年 以内に世界最先端のIT国家となる」 ことを 目標とした e-Japan戦略 が策定され, 高 度情報通信ネットワーク社会推進本部 (以下, IT戦略本部という) を中心として, 官民が 総力を挙げて情報化を推進する体制が整えら れた。

ICT基盤整備を重視していた e-Japan戦 は, ICT利活用重視を掲げた e-Japan 戦略Ⅱ (2003年7月) へと発展を遂げてい く。 このような流れの中で, IT戦略本部に 設置された各府省情報化統括責任者 (CIO) 連絡会議において, 2003年7月に 電子政府 構築計画 (2004年6月一部改定) が策定さ れ, 府省内の電子行政プロジェクト等を横断

的 に 調 整 す る 場 で あ る 各 府 省 PMO (Program Management Office) の設置や, オンラインサービスの利用促進, 業務・シス テム最適化の取組み等が進められてきた。

地方公共団体に関しては, 2001年10月に 電子政府・電子自治体推進プログラム が, 2003年8月に 電子自治体推進指針 が総務 省において策定され, 2004年度には, 全市町 村が接続した総合行政ネットワークと公的個 人認証サービスの本格的運用が始まった。 ま た, 各地方公共団体における電子自治体の取 組みを調整し, 全体最適を追求するための支 援組織として, 県グループPMO間を調整す る電子自治体推進室 (全体PMO) の役割を 財団法人地方自治情報センターが担い, 共同 アウトソーシング事業や自治体EA事業, デー タ標準化等を推進する体制も整えられた。

2) 2001年〜2005年の電子行政戦略の評価 電子政府・電子自治体の推進は, 2001年の e-Japan戦略 からはじまるわが国のIT戦 略における重点領域の一つとされ, 電子政府 に対しては5年間で3兆円超の予算が投じら れてきた。 電子行政を支えるICT基盤はかな り整備されてきたが, 電子行政の取組みは, 必ずしも国民や企業の期待する成果 (アウト カム) をもたらすには至っていないというの が, 2005年末時点までの評価である (IT戦 略本部評価専門調査会, 2004, 2005;内閣府, 2004)。

た と え ば , e-Japan 戦 略 Ⅱ に お け る

「行政サービスの利便性向上」 というアウト カム目標に関するアウトプット指標として用 いられた 「国の行政機関が扱う申請・届出等 手続のオンライン化率」 をみると, 目標の97

%に対して実績は96.2% (2003年度末時点) であり, ほぼ目標が達成されている。 しかし アウトカム指標の1つである利用率を確認す ると, 同時点における各府省の汎用的な電子 申請システム (行政相談や社会保険関係手続

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(9)

等) の 「オンラインによる申請・届出等手続 の利用率」 は, わずか0.7%に留まっていた (総務省行政評価局, 2004)。 「行政サービス の利便性の向上」というアウトカム目標が達 成されているとは, みなしがたい状況であった。

e-Japan戦略Ⅱ に関する政府の取組状 況の評価等を行うためにIT戦略本部に設置 された評価専門調査会は, わが国IT戦略の 最大の問題は, 「国民が求める成果 (アウト カム) 目標と, 行政担当者がめざす施策実施 (アウトプット) 目標の乖離 (ギャップ)」 に ある, と指摘した (IT戦略本部評価専門調 査会, 2004)。 この評価を踏まえ, 2006年1 月に IT新改革戦略 が新たなIT国家戦略 として策定された。 2007年度末現在までに, 利用者にとって真に意味のある電子行政を実 現するために, 以下のような評価活動が進め られている。

2.3. 電子行政の評価活動 (2006年度) 1) 国における組織・政策横断的な評価

まず第1に, 利用者目線でみた成果指標と 目標値が明確に定められ, その目標を達成し て全体最適を図るための推進体制が強化され ている。 具体的に述べると, IT新改革戦略 は, 電子行政について, 「世界一便利で効率 的な電子行政の実現」 を上位成果目標に掲げ, 主要下位成果目標として, ① 「利用者の利便 性の向上」, ② 「簡素で効率的な政府の実現」,

③ 「信頼性・安全性の確保, セキュリティ高 度化, 先端技術の育成・普及」 の3つを措い ている. 主要評価指標及び目標値は, それぞ れ, ①2010年までに申請・届出等手続におけ るオンライン利用率50%以上を達成すること,

②業務・システムの最適化対象85分野 (うち 府省共通23) の最適化を実現することであ

。 表1に示したように, これらについて,

「目標の焦点化」 と 「重点的予算配分」 が講 じ ら れ , 府 省 横 断 的 調 整 を 行 う GPMO (Government PMO: 内 閣 官 房 電 子 政 府 推 進管理室) も設置され, 成果達成のための取 組みが進められている (表1)。 電子自治体 についても, 2006年7月に総務省が 電子自 治体オンライン利用促進指針 を策定し, 地 方公共団体に対して国同様の目標達成を促し ているところである。

表1:電子行政戦略の主要成果目標等

IT新改革戦略 に関する施策の評価等 を行う組織である 「IT新改革戦略評価専門 調査会」 は, 利用者の目線に立ってIT戦略 の評価を行うため, 利用者の 「実感」 に関す る実績評価を行うことを決定している。 既に 電子政府サービスの一部について, 利用者の 実感等に関するパイロット調査が実施されて

現在は, 「IT新改革戦略評価専門調査会」 が同様の評価機能を担っており, 下部組織として, 「電子政府評 価委員会」 および 「医療評価委員会」 が設置されている。

③に関する指標・目標値は特に定められていない。

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(10)

いる10

2) 個々のプロジェクト等の評価活動 個々のICTプロジェクトないしプログラム 評価については, EAを中核にしたマネジメ ント体系の整備が進められている。

EAとは, 業務・システムを統一的な手法 でモデル化し, 現在の業務・システムから理 想型 (To Beモデル) へと業務・システムを 一体的に改善することを目的とした, 組織等 の最適化手法のことである (図6)。

「As Is」 から 「To Be」 への移行を図る 際に電子行政プログラム等の業績管理を行う た め に 用 い ら れ る の が , 2.2末 尾 で 述 べ た

「業績測定参照モデル」 (PRM) である。 現 在, PRMに基づくIT投資評価・ITポートフォ リオ評価の試行的導入が進められ, 費用対効 果を重視したITマネジメントが実施されは

じめている (経済産業省, 2005;NMDA, 2006)。

3. 電子行政評価活動に関する主要な課題と 解決の方向性

電子行政の取組みにおいて最終利用者目線 のアウトカムやPDCAプロセスの目標管理が 明確に意識されるようになったことは, 高く 評価すべきことであろう。 しかしなお, いく つもの課題がある。 本節では, 欧米主要国の 先進事例や先行研究を参考にしながら, 主要 な課題とその解決の方向性を示す。

3.1. 首尾一貫した共通測定フレームワーク に基づく組織横断的評価

2006年末時点では, アウトプット指標しか 定められていない電子行政プログラムが数多 く存在する。 日本では, 共通の測定指標と首

10 調査実施主体は 「電子政府評価委員会」, 調査実施時期は2006年12月。 個人と企業に対して, 不動産登記 や国税等のオンライン化利用促進対象手続に関する利用者の実感等が調査された。 詳細は, IT戦略本部電子 政府評価委員会[2007]。

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図6:EAに基づく最適化の考え方

(11)

尾一貫した分析手法に基づいてプロジェクト

/プログラムを組織横断的に評価するという 活動が十分には行われていないからである。

表2は, OECDが2003年から2004年にかけ て実施した, OECD諸国の電子行政評価活動 に関する調査結果をまとめたものである。 日 本を含む多くのOECD諸国において, 電子行 政プロジェクトは今世紀に入ってから本格的 に始動した。 政策のインパクトを総合的に評 価するには, 相応の時間が必要である。 その ため, 個々の電子行政プロジェクトやプログ ラムをアドホックに評価しているだけという ケースが大半であったという (OECD, 2005:

p.104)。 よって, 日本の電子行政評価活動が 他国と比べて著しく後れをとっているとはい えない11

しかし一部の国は, 2003年〜2004年の調査 時点ですでに先進的な取組みを行っている。

例えばオランダは, 主要な公共IT基盤整備 プロジェクトの費用対便益および費用対効果 を共通指標に基づいて事前評価し, 意思決定 に用いている。 デンマークの場合, 組織横断 的な電子行政プロジェクトのベストプラクティ スを収集・共有して, プロジェクトの事前評 価に必要な経済的便益の評価に用いている。

オーストラリアは, 共通のフレームワークに 基づいて社会的・経済的な費用対効果を測定 し, 首尾一貫した手法で横断的に評価分析す ることによって, 電子行政サービスの質を改 善している (OECD, 2005:pp.97-129)。

2.1及び2.3で触れた日本のPRMは, 米連 邦政府のPRMを参考にして作成されたため, 日米のPRMは非常に似ている。 だが, その

運用・機能は大きく異なる。 わが国のPRM は, 各府省や地方公共団体等が自らのICTプ ロジェクト等の業績評価を行うために開発さ れたものであって, ベンチマークデータが収 集され, そのデータやベストプラクティス等 が横断的に分析・公表されるものではない。

したがって, 電子行政プロジェクト/プログ ラムに関する大半の意思決定は, 同一機能を もつ業務・システムに従来投じられてきた物 的費用と比較した費用削減効果や, 経験や勘 といった属人的・定性的な価値判断にかなり の程度依存しているのではいかと考えられる.

他方でアメリカの場合には, 1996年のクリン ガ ー ・ コ ー エ ン 法 (IT Management Reform Act of 1996) 以降の諸改革によっ て, 電子政府を含む公共IT調達・投資プロ ジェクトを共通の枠組みに基づいて事前評価 し, 重複投資を抑制することが制度的に義務 づけられている。 各省にはプロセス評価, 業 績評価の実施・報告義務も課されているため, ベストプラクティスに基づく評価フレームワー ク自体の改善も図られている (経済産業省, 2004;米連邦政府e-Govホームページ< http:

//www.whitehouse.gov/omb/egov/>)。

EUでは, 2007年度から, 利用者満足度を 含むベンチマークデータの収集を加盟国に義 務付け, 電子行政のアウトカムを利用者目線 で横断的に評価分析し, 公表することが予定 されている12。 電子行政を利用者にとって真 に意味のあるものに改善するために, 組織や 業務, サービスごとに大きく異なる基準や手 法を用いてアドホックに評価するのではなく, 共通評価フレームワークに基づいて, 府省間,

11 総務省行政評価局[2004]が, わが国で初めて実施された, 電子政府に関する組織横断的な実績評価活動で ある。 なお2006年度末の時点では, 行政サービスのオンライン化率, オンライン利用率, 満足度等に関する 実績評価や, 業務・システム最適化プロジェクトのROI (投資収益率) に関する事前評価等が行われている。

12 ①行政コスト削減効果, ②一公務員当たりの電子行政サービス取扱い件数, ③フルタイム換算の雇用創出 効果 (費用削減効果), ④電子行政サービスの質, ⑤企業または市民の費用 (ユーロ換算) または時間節約 効果, ⑥利用者満足度等のデータが収集される予定である (European Commission, 2006)。

(12)

国・地方間を横断的に評価し, 電子行政の全 体最適を図っていかなければならない。

3.2. 目指すべき価値の明確化と構造化 電子行政の評価を行うに当たって非常に重 要なのは, 目指すべき価値を明確化すること である。 表1に示したように, 現在のわが国 の電子行政戦略では, 1つの成果目標に対し て1つの測定指標が設定されている。 例えば,

「オンライン行政サービスの利便性向上」 と いう目標に対しては, 「オンライン利用率」

という1つの指標値が挙げられている。 しか しオンライン利用率は, オンラインサービス の利便性を測定する1つの指標にすぎない。

さらに, オンラインサービスの利便性は, オ ンラインサービスの質を説明する一つの要素 にすぎない。 サービスの質を図るための汎用 的な評価指標は, 利便性ではなく利用者満足 度であり, 利用者満足度さえも, サービスの

「価値」 を表す要素の1つにすぎない。

目標や指標の数が少ないと, 目標の達成に 向けて何をすればよいかが明確になり, 業績 測定のコストも安く済む。 しかし, 目指すべ き価値と目標・指標との因果関係が希薄で, そのために無駄なコストが費やされるリスク も大きくなる。

数字が一人歩きするリスクを回避するため には, ミッションレベルの目的とその目的に よって実現すべき価値を明確にし, その上で 論理モデルを構築することが必要である。 そ こでOECD[2003]13や, 豊かさに関する経済学 的研究 (Frey and Stutzer, 2000, 2002;

Veenhoven, 2002) を踏まえて電子行政評価 のための電子行政評価のための論理モデルと して示したものが, 図7である。

最終アウトカムには, およそ政策が目指す べき最終目標である, 「市民生活の豊かさの 向上」 をおいた。 民間部門がグループ企業を

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䋨಴ᚲ䋩OECD[2005]p.105 表2:OECD諸国における電子行政の評価活動 (調査時点:2003〜2004年)

(13)

含めた事業体全体の経営戦略とICT戦略を整 合的に策定し, ICTを利活用して企業価値を 高めようとしているように, 電子行政戦略も, パブリック・イノベーションを推進して公共 業務やサービス, 公共ガバナンスを改善する ことを目的として行われるべきものである。

およそ行政活動は, 市民生活の豊かさの向 上を目的としている。 その目的を実現するた めにICTをどのように活用すればよいのかと いう点が, 電子行政戦略では問われている。

したがって電子行政のインパクト評価は, 以 下のような市民生活の豊かさを代理する価値 の純益を評価すべきであろう。

・経済的便益…政府と利用者のコスト・リス クの節減による実質国民所得の純増等

・社会経済的便益…イノベーション活性化等 を通じた産業活性化や就業率の上昇等

・社会的便益…公共ネットワークを活用した 医療・介護・雇用・福祉の連携による健康 改善度や災害による被害の減少率等

・政治的便益…透明性の拡大や行政マネジメ ント・サイクルにおける利用者の参加拡大

個別の電子行政プロジェクト/プログラム の評価を行う際には, 図7で示した中間アウ トカムについて, より具体的な測定指標を定 めなければならない。 アウトカムの業績測定 指標としては, PRMの業績測定指標 (OMB, 2005;経済産業省, 2005;NMDA, 2006), OECDがまとめた電子行政の費用・便益評価 用チェックリスト (OECD, 2005:pp.118- 125) , EU の eGovernment Economics Project (eGEP) が提案する測定フレームワー ク等が参考になる (図8;eGEP, 2006a)。

3.3. 公共ICT支出の生産性上昇効果の計測 最終アウトカム目線で総合的な価値評価を 行う前に, 掌握が比較的容易で, かつ経済的 に重要な評価事項がある。 それは, 公共ICT 支出の生産性上昇効果である。 1.3で述べた

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図7:電子行政の論理モデル (アウトプット〜アウトカム部分)

13 OECD [2003] が挙げる電子行政のミッションは, 以下の5つ。

・効率化…業務処理やサービス提供の効率向上。

・サービスの質の向上…多様な利用者ニーズを適切に汲み取ったサービス提供。

・政策効果の向上…ICT産業の振興や, 情報活用による教育や医療等の政策効果の改善。

・改革の促進…ICT利活用による公共マネジメントの近代化や透明性の拡大。

・公共ガバナンスの進化…透明性や参加機会の拡大による, 政府と市民との間の信頼関係の醸成。

(14)

ように, 国民経済において大きな位置を占め る公共部門・公共サービスの生産性の伸びは, 今後の経済的豊かさを大きく左右すると考え られる。 したがって米競争力会議は, 公共部 門も民間部門のようにICTを戦略的に活用し てパブリック・イノベーションを推進し, 公 共部門の生産性とサービスの質を高めるべき であるという問題提起を行っているのである (COC, 2004)。

公共ICT支出の生産性上昇効果については, eGEPがきわめて興味深い報告書を公表して いる。

「経済モデル」 と題された報告書では, 公 共ICT投資が公共部門の生産性の伸びに与え るインパクトに関する理論モデルの構築と, その実証が行われている (eGEP, 2006b)。

理論モデルでは, 公共部門の労働生産性の 伸びを以下の5つで説明できるという仮説が 措かれている。

・スミス効果…規模の内部経済等による市場 拡大を通じた生産性上昇効果。 「公共サー ビスの供給は需要に基づく」 という強い仮

定をおく。

・リカード効果…機械による労働代替による 生産性上昇効果。 公務員の雇用調整の困難 さを考慮し, 人件費の伸びと投資財価格の 伸びの相対関係でリカード効果を測定でき るという仮定をおく。

・バックオフィス効果…業務・組織の再編に よる生産性向上効果。

・シュンペーター効果…イノベーション (新 しい財・サービスの創造等) による生産性 上昇効果。

・その他の波及効果…民間ICT需要, 電子行 政サービスプロバイダの供給能力, 公務員 を含む一般教育水準等への影響を通じた生 産性上昇効果。

実証では, データ上の制約から, 下記A, Bの2つの重回帰モデルを用いて, 電子行政 投資の生産性上昇効果が推計されている。

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図8:eGEPによる電子行政の測定フレームワーク

参照

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