149
騒音の身体発育に及ぼす影響 旺
連続型騒音と断続型騒音との影響度の比較
猪 狩 原
1 課 題
われわれが環境から受ける騒音は実に多種多様である。しかしこれをわれわれの受容器 官が受け容れる刺戟としての形式からみれば (1)間断なく流れてくるものであるか,でな
ければ ②切れ切れの断落をもったものであるか,の二様でしかない。
そして,さきのものを連続型騒音,あとのものを断続型騒音と呼称することにする。
これらの騒音が,われわれの健康に影響し,精神生活にもまた支障をもたらすために・
その防LL対策が構ぜられる機運に向いつ》あるわけである。
ところでこのことに関連して,一般人の間に,連続型騒音と断続型騒音とで,どちらが より影響が大きいかということが未解決のま・論議されている。この事実に着眼し,身体 特に発育を中心とする方向から,心理学的に検討することによって一応の解決を求めよう
としたことが,この研究の主要な任務なのである。
1956年4月,日本応用心理学会において,身体発育に対する騒音の影響について,L乞 ねずみを対象とする動物実験の結果を報告したのであったが,その内容の概略について云 えば,騒音はしろねずみの伸長発育にも,肥大発育にもどちらにも抑制的影響を及ぼすも のであることを明かにしたことであった。
この実験は100phブザー音の連読型を刺戟としたものであったことから,この刺戟を同 じ強さの断続型に換えることによつて,連・断いずれの型の削戟がより大きな影響度を示 すかを検証することにしよう。
因に連続型騒音の実験結果についての詳細は,筆者の次の著述を参照されたい。
(1)応用心理学論文集 第7集
(2)茨城大学教育学部紀要 第6集
亜 対象とその管理
同腹のしろねずみ一1957・6・5生一14匹を日令28で離乳し,これと同時に♂・♀の 員数と体重が均分されるように2群に分離飼育を始め,日令43に到って現に示している体
重発育の優勢なものを実験群一E・G一とし,劣勢なものを統制群一C・G一とした。但し その優と劣との差は僅かに2.539にすぎない。
こうして分たれた両群の性別分配は,それぞれ♂1,♀5となっている。
これらの対象はすべてフクシンやマジックインキなどで,色わけして個体の符号標識が 施されている。
飼育箱は間[96cm,奥行48,高さ42の空間の全面を金網展りとして,観察を便利にし 清潔を保つようにした。そしてこの内部には給飼器・給水器・喫噛板が配置されている。
飼糧は基本飼糧と,その他のものとにした。基本飼糧は,とうもろこし40彩,小麦40%
いずれも四つ割程度の粗粉,魚粉15%,糠i5%を混合したものでこれが日常の定食で毎夕 刻に給与される。他に時に応じて鮮肉・鮮魚・鮮菜を給したわけである。
皿 道具 と 装 置
所要の断続型騒音刺戟を得るために,次のような道具を用い実験装置を考案した。
(1)変 圧 器 〇−130V
この変圧器の目盛55vのところで,必要な100phのブザーの刺戟音が得られた。
(2)Buzzer
大型のもので低霊圧一55v一で発振させるため長時間の使用に耐え得る。
(3)断続音発振器
これは自案自製で,この製作には苦心した。%hpのMotorに3箇の歯車を加装し廻 第1図 断 落 角 度 図 転を遅らせ,最後の歯車の
シャフトに円い木板をとり
10 五 5 ミ
条 )侭
@ つけ,これに銅板を断落をあ Sも 〉く〜o
@ 鷺 つけて植えこみ,これを電 悉火 寮 ,
β 流域として発振させる仕組 獄 、 ・ である。
z 身
第1図がそれであって,図中二
瓜ヤ 瞬,一.葵骸麟域 鐸 様の数字はいずれも中心角度を
[=コ ー断落域絶繰域 ゜ 示したものである。
侃 拗・中囎z諺 以上の道財組立てて,第2
x 直径 lr・5em
ノの
@描
図のような装置ができたわけで
ソ
蓮
猪 狩: 騒音の身体発育に及ぼす影響皿 151
オ2図断続型利激〜論振裟置図
AqOOV
11 発雛,
[コ@ 落域
ζ縁威)
B。zz
s罵、
M。屠「あP
㈲ 上 皿L天 秤 感度0・19
(5)物 指
(6)実験 日 誌
騒実日 Page 1956 月 日 曜天気
国
1 条 件 1 刺激の種類 2 刺激の型 3 刺激の強さ Phone 4 電 圧 VoltS 5 刺激時間 hour
皿 給 飼
時 剛材 矧数 量隊 量陳取状況
一一
第 1 回 9 91
一}一一
第 2 回 1
1 一一一一一一一一 一一
1
謔R回1 i 1 一一
翼 計 量
\骸/生別1 1 2−7u−3415161計【平均小・1、平均1酬平均
冒一一一一一一一一一一一一一 1 凶7 1
身「E・Gll
1 一一一幅7
一ぼ冒一 1 由
長ic・G÷
体一 E・G δ♀ 一一一一
一 一 一一
C・G 8 1
重 一♀1 77−一 1 1
】V 観察管理
IV刺 戟
上のような装置では,発振域と断落域とが,長短を伴いながら交替するのであるから.
一廻転の刺戟音系列の全体にも部分にもリズムが感ぜられないように留意したし・そのこ とには成功しているとする。
発振域は長短14分節で構成されているのである。従って断落域もまた14分節である。
この一系列の1廻転は30〃であって,発振域の14分節の中心角を合計すると150°となり
!5q−_12.5〃従って30× 360
が1廻転の刺戟時間となるわけである。
この刺戟は毎日20侍に開始され,翌朝6時に序止するのであるから,この10侍間では
12.5 ×1200=・15000
=250!
=4° 10!
が1日の刺戟時間で,これがまた58日間一日令28から100まで一続くのであるから総体 としての延ぺ刺戟時間数は241時40分となるわけである。
そして各分節の発振域あるいは断落域の時間を中心角に対応させてみると次のように なっている。
中心角 30°……2.50秒(発振域にはない)
20°……1.67 10°……0.83 7.5°……0.63 5°……0.42 2.5°……0.21
つまり発振音は1.67秒の長いものから0・21秒という瞬間音までのものが配列されている のである。
V 連・断二実験における条件の異同
影響の度合を比較しようとする連続型の実験と,断続型の実験とは,比鮫するためにあ らゆる条件が同様であることが望ましいことはもちろんであるが,遺憾ながら若干の相違 がある。いまその主要なものをあげてみると次のようである。
(1)実験の季節
連続型実験が10月紺2月の冬季間に実施したのに対し,断続型では6^げ10月の夏季で
猪 狩: 騒音の身体発育に及ぼす影響∬ 153
あること。
②対象の性別員数
連続型が♂3,♀2計5であるのに対し,断続型では♂1,♀5計6となっているこ
と。
(3)刺戟の質量
同じBuzzer音100phであるが,型と時間の長短がある。これは研究の目的のために そうなるのであるが,連続型の刺戟時間が580時であるのに対し連続型では241時間余 で皆にも満たない短さであること。
などが大きな相違であるが,結果からみて(1)②の条件の差異もそれほど問題にするほど のことではなかったと思われた。
VI断続型実験の結果
比較される連続型実験についての詳細はさきに掲げた文献によること〜して,こ〜では 比較する断続型実験の結果について,対象の伸長並びに肥大発育の様子を記述することに
しよう。
(a)体重発育について
日令28を第1回とし,以後3昼夜毎に,日令133に到るまで,延べ36回の測定値を表示 したものが第1表で,表中第7回乃至25回の期間が日令43から100に渉る刺戟期間である。
日令28から42まで,すなわち本表の第1回から7回までの測定は,分離飼育された2群の 離乳後の発育を確めて優勢な1群をE・Gとし,他の劣勢な1群をC・Gとしたかつため であり,また第26回以後の測走は,刺戟から解放された後の発育経過を観察しようとした ためのものである。この期間は日令100以後に相当するのであるが,ねずみの身体発育は おおよそ120日をもって完了するとされているのである。そしてこの期間の測走観察は刺 戟効果をより一層明瞭に知ることができる有効な手がかりを得られると考えたわけであ
るo
少々問題の本旨から逸脱するきらいもあるが,騒音のはげしい都会から脱け出して,閑 静な田園の郷里に相当日数滞在すると,普通は体重を増すものである。これなどは騒音か ら解放された効果であって,本実験における第26回以後の測定を必要とする意味と相通う ものがあるのである。ついでにも少し脱線を試みておこう。
田舎のものが大都会に住居を換えると,騒音のために早ければ2・3ケ月で軽い脚気症 を患うことが多い。その場合俗に云われるように脚気は「田舎の朝露を踏めば治る」のも
第 1 表 体 重 測 定 値 表 (単位g)
1\瑞1 一闇圏一一一一 実 験 群一一 統 制 群
測定 δ
一 (1) .一幽一一
梶@ (5)
r−一一一一
v (6) 3 〔1) ♀ (5) }計 (6)
順序一1
」測定値 平堀測定値【平均測定値 平均 測定値 平均 測定値 平均測定値平均 I l
1 一 39.8 39.80 18・・8P36・161
220.6 36.77 33.3 33.30 197.5 39.50 235.8[ 39.30
2−一一一 …一一 一一一@ 一一π.
@46.7 46.70 214,η42,941
1一一闇一πr 26L4 一一
S3.57 −一一一
43.50 219.6 263.1
[43.85
1
55.3 55.30 263.5 52.70】318.8 53.13 51.0 51.00 266.6153.32 317.6 52.93 −一一一一
i4 60.0 60.00 279.91 55.98 339.9 56.65
128q・315磁6
339.11−一一一一一1 1−一一
T6.52
… 5
72.5 72.501
』「
R09.31 61.86 一一R81.8F63.63
1 −174,274.20
312.2i
旨62.44レr一
β86.4…
一一一一
@ 6 90.7 90.701411.0ト82.20501.71−一一 一一 W3.62
1
X0,590.50
一一@ 「
R98.61 1 5
V9.72 489.r 8L52
7−一一 102.81102.80__.一_1 −1
466.5 93.30 569.3 94.88 104.4104.40 452.3 90.46 556.7 92.78
『i 一一
P一 一
8 125.7 125,701 539.0 107.80 664.7 110.78 122.6122.60 518.7 103.74 641.3 −一一一 106.88−一一…一一τ一 一一一9 一一一一一一一134.6P 一一.一一一一134.60 一562.7 112.54 697.31116.22一一一 132.8 132.80556.0 一一一111.20 688.8 114.80p
一m−一
一一一一}r 1 一一一一一一
10 14τ.2 147.20 615.4 123.08 762.6127.10 148.5 148.50 627.3 125.46 775.8 一一 129.30
『剛 一一一 一一 一一」一 一 }π一π罰圃「T}げ1
ll 160.6160.60667.1 133.42 827.71137.95 165.7 165.70 683.9137.78−一『[一一』一 854.6 142.43
一一一一 鼈鼈鼈
㎜ 団
12 174.0174.00721.4 144.28 895.4 149.23 173.2 173.20 702.5 1P40.50875.7 145.95 13 179.7179.70742.8 148.56 922.5 153.75 186.1 186.10 741.3 148.26 927.4 154.57
一7一田憎一一
14 185.1 185.10775.8 155.16 960.9 160.15 195.90 778.3 155.66 974.2 162.36
一一一 一 一
15 201.3201.30 861.7 172.34 1063.0 177.17 213.6 213.60 846.01169.20 一 176.60
i 16
213.7213.70 886.2
一
P77.24
一
P099.9 183.32 228.5 228.50
I
@ I I
X00.OI180.0011128.5 188.08
i 17 231.9231.90934.7186.94 1166.6 194.43 245.024「.OO i IX64.61192。921209.6 1
201.60 18 236.4 236.40 983.2 196.64 1219・61203.27 252.7 252.70 1019.1203.82…1271.8211.97 19 250.2250.20 1025.9 205.181276.1212.68 262.0
262.・・i11・・.・
220.0011362.O I
227.00 20 25τ.0257.00 1067.2 213.44
1
P324.21220.70 一㎝冒} 「
Q66.0266.00 1 1092.2 1
Q18.4411358.2…226.37
一 一鼈鼈鼈齠ス 一} 1
21一一
272.7272.70 1187.7 237.54 1460.4 243.40 287.21287.20 1100.0
l I1220.001387.2i231.20 1
一一w{ 『 1
22 276.4276.40−一一一一一一一一
1186.2237.24 1462.6 243.77 290.3 290.30 1120.91224.18ヨ1411.2235.20 23 1一269・21269.201171.0234.20 1440.211240・03 τ岸一
Q93.0
一一…} 一一u 1
Q93・°°ll57・51231・5°撃撃S5°5m24L75
l I 一 1 一一一 1
24 1Q81.2 281.20 1238.3 247.66 1519.5253.2う 303.4 303.401277.01255.401580.4 263.40 l l
25 287.0 1287.001176.0235.2∩
一 11463.0
243.83
..}一 一一一一
l l 1305.0305.001222.0244.401527.0254.50
26
287.OI287.Odll64.O I
232.80 1P451.0241.83 304.1304.10 罰皿}『 一一一11191.d238.32 1495.7」249.28 1
27 293.5塑陣232.88 11457・9
P242・98 306.5306.50 1185.4 237.08
1149L9248.65
一一一一一P 一一一一 P「伽幽一一 一一一一
w
28 298.5298.50・1146.7 229.34 1445.21240.87 312.0 312.001217.4 −一一㎝ 243.48 1529.4 254.90
1 一一『
29 307.1 307.101192.1 238.42 1499.21249.87 321.6 321.601255.5 −¶{『251.101577.1 262.85−一一一凶iヒー
30 309.5 309.50 1272.2 254.44 1P581.71263.62 322.2322.201199.7−一一一一239.94 1521.9 253.65
一一一一 @1 1
31 304.7 304.70 1251.6 250.32 1556.3259.38 319.4319.401227. 1245.42 1546.5 257.75
一
32 315.7 315.70 1229.7 245.94
1545.41257.57
332.5332・5011318.5263.70 1651.0 275.17 33 313.玉313.10 1157.2 231.441470.3245.05 332.3
ト
R32.30 1415.9 283.181748.2・291.37 34 349.7
1349.701305.5
261.10
1
1655.2275.87 356.8356.80 1401.2 280.24
1758.。1293.。。
35 359.O
359.。。1344.7 268.94
117°3・7
P283・95 360.4 360.40 1430.1286,021
Il790.51298.42
36 361.5 361.5011297.2259.44 1658.71276.45 359. 4,359.401390.2278604i1749.6261.601 1
猪 狩: 騒音の身体発育に及ぼす影響皿 155
40ひフ
邪図断締・輔赫舶鰍重縮都市の瀦棚鞭れ
@ 《韓 9)た効果であると説明した 、・ものである。
重卸 何となれば刺戟音は, :が! 間脳に運ばれて怖れ,喜
300
Q
._ノ ノ
秩^》ハ犠野徽雫万/ /〈垂体に運ばれることによ/_悉/〆掬1つて・各般の内分泌を変 、
,一a^ 調させるのである。この
ノ //
200
P50
P00
ノ
@ ,
@ .ゾ、.
@ ///ノ
^/ 〃 /ゐ 〆・ノ ー一…_一烈僻 一 ■ 一 一 一 一
毒 ことはさきほどの説明の
@ 根拠となると同時に,本
@ 研究の中心的な背後をな
拒初 乙 して、・るのである。
@ ♂ さて第3図は第俵 u鱗♀ を醗化したものである
50 ノ ー一.__
Y 衆鱗♀ が,この醐に従ってし
ばらくE・GとC・Gと
02 の発育経過を比較検討し
ロ 121跨てみよう。
(曲線の途中の縦線はそれぞれ刺戟の始めと終りを示す) 当初E・Gの体重はC
・Gを凌駕しーて経過したものであったが,刺戟開始後それが漸次に劣勢化し,刺戟を撒去 しても,なおしばらくはそれが持続する。しかしやがてE・G本来の優位を取り戻してい くという経過がみられるのである。このことは第3図の♂についてみると明瞭であるが♀
群の方は途中で受胎による体重の急激な増大とか,また分娩による急激な減退とかの生理 現象が伴うとこによる混乱のために,この傾向がはっきりしていない。
そしてこのような傾向は連続型実鹸においても外見的には全く同様なのである。た雪ど ちらかと云えば,連続型実験の曲線が一層すっきりとこの傾向を表わしているのであるが おそらくは両実験における条件の差異から起ることなのであろう。すなわち,断続型実験 の場合♀の数が多いこと,実験の季節が夏季であること,断続型刺戟が連続型刺戟よりも 影響度が低いことなどが複合された結果であるはずであるとみているところである。
、 ・ずれにしても,断続型騒音刺戟も連続型と同様にしろねずみの体重発育に対して消極
的な意味をもつ抑制効果を表わすものであることが解るわけである。
では断続型刺戟がもつ影響度はどの程度のものであるのだろうか,これを数値で表わす ことができれば興味も大きいし,本課題の主眼である連続型との比較のためにも至便であ るわけである。
このことについては従来から抑制効果指数と称するものを設定して用いているわけであ るが,それは影響が固定したと思われる期間,すなわち刺戟を撒去する直前の30日間の両 群の平均体重から
抑制効果指数(S.E・Q)=
C・Gの平均1佳重一耳1Gの平均体重×100 C・Gの平均体電
とする算式によって得られると考えたのである。一この抑制効果指数のこと をStress Effect Quotient と呼称していこうと思っている。一この算式で計算すると, ♂……
5.76 ♀……0.89 ♂+♀……1.86の効果指数一S・E・Q一が得られる。そして♂のS・
E・Qが♀よりもずっと大きいことは♀群に起る受胎・分娩現象によって起ることとであ ってその意味で♂の方が信頼してよい数値であるとすることが至当なものと考えられる。
それならば一ヒのS・E・Q5.76とはどのような意味かというと,それはこうなのである こ・に仮りに2・kgの燗があるとすると・その饗すなわち・L152kgだ・ナ瀦のた
め肥れないでいるということなのである。
一般に都市で育つものには,すんなりしたやせ型が多いが,田園育ちはずんぐりした,
でぶ型に見える。このような事実も音から考えてみなければならないのではなかろうか。
(b)身長発育について
しろねずみの身長とは, 耳間から尾根までの駆間長であって,人間について云う坐高に 相当するもので, それは牛・馬・豚などに適用する慣例にならったものである。
た9身長を測るということはかなり困難を伴うものである。というのはスケールを当て たとき,ちょうどバビンスキー反射に似た駆間の収縮反射をひき起すこと・,発育につれ て伸びる毛で,ますます深く尾根が覆われてゆくので見当つけにくいため困難を感ずるわ けである。従って測定値そのものは,ある程度信頼度が低くなっていることはいなめないの であるが,技術的な習熟によって,この困難は大体において克服できたものと思っている。
第2表 身長発育平均値(単位cm)
i1\〉遼測定順序
\\言苓一群 別\\」
28i 43i 5S 73}88−・611181133
実 験 群 一 7.03 10.25 16,921
統 制 群 7.85 10.08
13.23「14.87h5.54il6.1716.42 1
16.75
ρ
猪 狩: 騒音の身体発育に及ぼす影響皿 157 第2表は毎15日の測定値であり,またこれを曲線図形で現わしたものが第4図である。
矛姻鄭静吻飼窟舶朔銃育躯 (輩位C醐
2σ
15
,,・rP鯛一一醒6−
@ 〆ノダ・ク\〉\ 7
\1,/
10
5 一一一 ア制禅
日緬 43 5δ 73 8δ 106 118 β3
曲線の途中の→印はそれぞれ刺戟の始めと終りを示す
図でもわかるように,当初優勢だったE・Gの身長は,刺戟の開始後おもむろに劣勢化 し,刺戟から解放されると,E・G本来の優勢を取り戻して再び優位にたつところの一連 の経過は,体重発育の場合にみられたものと全く相似ている。こ〜において断続型刺戟も
また,連続型刺戟と同じようにしろねずみの身長発育に対して抑制的に影響するものであ ることが知られるわけである。
次にご》でもまた抑制効果指数一S・E・Q一を求めてみると
S・E・Q−C2Ωの撃篇冨群均身量×1・・
佃し平均身長は刺戟の終結前30日間の平均身長で体重における場合と同じである。
♂……3.11,♀・・…・0.49,♂+♀……1・24となる。
さてこ》では,二つのことに注目する必要がある。その…つは体重についてもみられた ように,依然として♀の数値が♂に比較して低いということ・,他の一つは♂・♀の性別 からみても,また♂+♀の全体としてからみても,いずれのS・E・Qも体重より小さい ということの二つである。
このことは,もしかするとそれぞれの背後に,一つは♀の生理構造が♂よりも簡単なた めに一いやあるいはより精密にできているために一そうなるのではなかろうかという こと㌧,他の一つは伸長発育そのものは肥大発育よりも,より原本的固有的性質をもった
ものであるという事実がひそんでいるのかも知れないということである。
これらの疑問に対しては今後実験を積み重ね,また対象を他の哺乳動物・魚類・昆虫・
植物などに替えてみることによって徐々に解明してゆきたいと考えている。
次には,これら伸長および肥大発育に対する騒音刺戟の抑制効果の表われる背後には何 があるのであろうかということに就いては,刺戟が脳下垂体に作用して生じた内分泌の変 調ということで説明されるものと推察するのであるが,このことは直接脳下垂体そのもの が騒音によっていかような反応を示したかを詮索する以外には解決や断定のための方法は 得られないことになるので,騒音研究のためには,この方而にもまた多くのことが残され ているとしなければならない問題があるわけである。
㎎ 連続型刺戟と断続型刺戟とにおける影響度の比較
前節までの記述によって断続型刺戟の結果が展開され,しかも断続型が連続型と同じよ うにしろねずみの身体発育に抑制的影響を与えることが知られたわけであるが,とすれば 次には連・断いずれの刺戟がより大きな影響をもっているかという主題に答えなければな らない。そしてその解答は連・断両実験におけるS・E・Qを比較することによって得ら れると考え,第3表及び第4表を掲げて体重発育と身長発育の両面からその検討を進めよ
第3表 体重発育に対する連続型騒音と断続 第4表 身長発育に対する連続型騒音と断続型
型騒音との影響度の比較 騒音との影響度の比較
100ph連続型 1・・ph断続型1 縢課一『一一1100ph連続型 100ph断続型
実験酬御副
選
実験群,欄醐実験副統繍一 1平1 平
1 均 156.58 171.32 257.57 273.31 均 14.32 14.70 14.66 15.13
値 値
3 『『
劾 ♂ 隅一一一
果指 5.76 1R.11
数1 数
1副;均値
121.81 136.77
1Q17.131219.07
@ 1
1値1
13.20 13.33 14.31
1 14。38
P 1
♀ 一一 ♀ 一
効1
[11・・94数1
0.89
効果指数
0.98 0.49
全
平1均値
143.07
ll55・5°[223・87
@ 一
228.11 全
P
平均値 113.76 113・93目4・37
14.55
効 i 効1
果指数
7.99 正.86
@ 1 婁レ・∵1・以
_ ザ ー 一
う9
猪 狩:騒音の身体発育に及ぼす影響巫 159
第3表はその体重関係のものであって,♂群でも♀群でも,また全体としても,いずれ の場合からみても連続型刺戟によるS・E・Qが大きくなっている。すなわち♂群では連 続型の8.60に対し断続型の5.76,♀群ではそれが10.94に対する0・89,♂♀全体では7・99 対1.86でその差は6.13である。
従って断続型に比較して連続型がずっと大きな影響度を示したとすることができるので
ある。
ところで身長発育における同様な比較をみると,いさ・か異るものが表われる。
すなわち,♂群の比較では断続型の指数が僅かにまさっているし,♂♀全体でもまた極 めて僅かではあるが指数は大きいのである。た9♀群だけが,これも極めて僅かではある が連続型が優っていることが体重の場合に似通うのである。しかしこれはあくまでも指数 の上での僅少の差異であって,むしろ両実験の間には差異がないものとしたいようにも考 えられる。
そしてこの結果が,第冊節b項の中で述ぺたように肥大発育に比して,伸長発育のこう むる影響の低弱であるとした背景が何であるかという問題が,いよいよ重大であることを 物語っているものとしてよいのではなかろうかQ
珊 結 論
以上の吟味と考察によって,連続型の刺戟と断続型刺戟とがしろねずみの身体発育に対 してどちらがより大きな影響を与えたか,という本研究の課題に対して次のように結論す ることができるであろう。
すなわち,連・断二型式ともに与える影響はいずれも抑制的なものであるけれども,そ の度合は連続型が断続型よりも大きいのであって,特に肥大発育については,それがけん 著であるが,伸長発育についてはほとんど差異が認められないと結論されることになる。
そして断続型の影響が連続型のそれより低弱であるということは,刺戟音の断落した各 域の総和だけ断続型刺戟時間が連続型の刺戟侍間より不足しているために起るものと解釈
しなければならないであろう。換言すれば特定時間内に受ける刺戟音の総量の差というこ とによって,課題の本質的解明がなされたものとしたいのである。