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妊娠末期に発症した牛の第四胃左方変位における

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第83回獣医学会講演抄録 45

第83回麻布獣医学会 一般演題9

妊娠末期に発症した牛の第四胃左方変位における

       腹腔鏡下整復術の検討

小野田麻衣,磯 日出夫,小中 一成,内山 史一,加藤 真紀,山田 裕 磯動物病院 栃木県

【はじめに】

 近年,牛の第四胃左方変位(以下LDA)は増加傾 向にあり,経済的損失の大きい疾患である。その発 生時期は分娩後に多いが,妊娠末期に発症すること も少なくない。分娩後に発症した症例の治療は七福 継切開法による外科的整復により行われることが圧 倒的多い。しかし,妊娠末期に発症した場合は妊娠 子宮が大きいことにより,治療法が制限されるので 外科療法は極めて困難である。よって,演者らは妊 娠末期にLDAを発症した症例に,腹腔鏡下で変位し た第四胃を整復固定させ,良好な成績が得られたの で報告する。

【材料および方法】

 症例は食欲不振と左腹部にピンギング音を聴取し た妊娠末期の7頭を用いた。術式は,左側最後肋骨 後部に第1ポートとして10mm腹腔用トロッカーを 挿入し,腹腔用硬性鏡にて左腹部に膨満した第四胃 を確認。次いで第2ポートとして左側第11〜12肋間 に13mm腹腔用トロッカーを挿入し,イソ式第四胃 カニューレを変位膨満した第四胃に刺入し,続いて トグルピンを胃内に投入してガスを体外に除去した。

やがて縮小した第四胃が下方へ動き始めるのを利用 して体外にあるトグルの糸をイソ式長穿刺器の内針 に結び,腹腔内から第四胃を右前腹壁に整復し,体 外から固定した。この一連の第四胃の移動は第1ポ ート腹腔鏡目視下で,操作は第2ポートから行った。

また,手術画面と手術時間を比較した。

【結果】

 全例で術後の食欲回復が早く,分娩時および周産 期疾患の事故もなく治癒した。術後3ケ月経過した 現在でも再発は見られなかった。また症例の手術時 の平均妊娠日数270.3(264〜275),分娩までの平均 日数14.7(10〜21)であり,実際の分娩に基づく妊 娠期間は283.3(280〜289)であった。また,手術 肩総および手術時間においては右心乱切開法より軽 度であり,手術時間も短かった。

【考察】

 通常,妊娠末期のLDAにおいては,分娩誘起した 後に右乙部切開法により整復を試みるが,術後の泌 乳量増加が少なく,周産期疾患を招くなど問題点が 多い。分娩前の手術は,左脚心切開法(ユトレヒト 法)が有効とされるが,家畜の体格と術者の手の長 さとの関係や,妊娠子宮により腹腔内が占有されて いることなどのため容易ではない。この点,本法は 妊娠末期であっても腹腔鏡により観察し,変位した 第四胃やその他の異常を確認しながら整復できる長 所があり,成功率も高いものと思われた。よって,

妊娠末期のLDAの外科処置法として選択すべき方法 と考えられた。さらに,低浸襲であることは,今後 益々重要視される動物福祉の観点からも有用な方法

と考えられた。

参照

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