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反応反復におよぼす言語強化の影響

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(1)

反応反復におよぼす言語強化の影響

著者 杉村 健

雑誌名 奈良学芸大学紀要. 人文・社会科学

巻 12

ページ 154‑162

発行年 1964‑02‑29

その他のタイトル EFFECTS OF VERBAL REWARD AND PUNISHMENT ON RESPONSE REPETITIONS

URL http://hdl.handle.net/10105/3473

(2)

154

反応反復におよぼす言語強化の影響

f一・  日    '..;

(心 理 学 教 室)、

Stone (1948)は言語学習における罰の作用を検討するた馴こ、刺激語に対して1から10まで の数字を言い当てるThorndike的事態で、多くの刺激語のうち1個だけにその反応が何であっ ても「まちがい」と言って他には何も言わない群と、すべての反応に対して何も言わない統制群 とを比較した。その結果、まちがいという言語的な罰はそれが与えられたS・R結合を強めるだ けでなく、罰を受けた刺激語の前後にある何も言われなかった刺激語に対する反応の結合をも強 めるという事実を見出した。

これに対してDuncan (1950)は、罰は少しではあるが反応を固定させ、賞は罰以上に反応を 固定させるという仮説を検討するためには、同じ実験計画の中で賞の作用をも決定する必要があ ると考え、 Stoneの実験に「正しい」と言う群と無意味綴を言う群を加えて実験した。その結果 (1)賞はS・R結合を相当強める、 (2)罰はS・R結合を強めも弱めもしない、 (3)賞あるいは罰を与

えた刺激語の前後にある刺激語への反応反復には「効果ゐ波及」があらわれないことを見出し、

罰が言語結合を強めるというStoneの仮説を否定した。そして賞は学習の初期において結合を 強めるが、罰の効果はある程度の試行がなされてからでないと生じないと考え、もっと試行を増 すならば罰の効果があらわれることを暗示し、さらに罰が与えられた結合でさえも強められも弱 められもしないのだから、その罰からの「効果の波及」がないのは当然だと論じた。また賞の

「効果の波及」がみられなかった理由としては、 (1)試行数が少ないこと、 (2)従来の研究では賞を 与えた語の前後にある刺激語に対して罰を与えていることの二つをあげ、 (1)についてはもっと試 行数を増して賞の結合を強めるならばその波及があらわれるだろうと述べている。

ところが彼の実験は全部で6試行であり、従来の研究に較べて少ないとは言えず、また6試行 間の賞反応の反復率は48.0%であって不充分な結合ではない。しかし彼は、賞(あるいは罰)痩 応のまわりに罰(あるいは賞)を与える伝統的な方法との比較が必要であることを暗示してお り、このことがStoneやDuncanの方法における言語的賞罰の効果を決定するきめ手となろう。

「効果の波及」現象に関する最近の研究によると、 Thorndikeが考えたように賞の効果がそ のまわりのS・R結合に波及するという自動的な作用によるのではなく、反応間の系列的効果、

特に数反応の習慣が主な要因であって、賞あるいは罰は数の推測習慣を促進するように作用する という説が有力である(岩原、 1958)。もしこの説が正しいならば、一つの刺激語だけに賞あるい は罰を与える方法でも「効果の波及」があらわれるはずであり、そしてこの事態ではその刺激語 のまわりの反応には罰も賞も与えないので、伝統的な方法よりも純粋な賞および罰の効果が期待 できると考えられる。

本研究では、 「正しい」 、 「まちがい」 、何も言わないの3条件に、伝統的な賞の波及と罰の 波及の方法を加え、さらにそれぞれに無意味語と有意味語の刺激を用いて言語的賞罰の効果を綜 合的に検討した。

(3)

方      法

被験者 被験者は15才から19才までの少年250名で、年令とIQがほぼ等しい30名ずつの 5群と20名ずっの5群に分け、前者には無意味の刺激語を、後者には有意味語を課した。

手続 無意味語、有意味意語それぞれ 5群のうち、 R群は 8番目と18番目の二つの Key Stimulus (以下KS)には、それに対する反応の如何にかかわらず実験者が「正しい」と言って他 の刺激語への反応には何も言わず、 W群ではKSに「まちがい」と言ってその他には何も言わ ないDuncanの方法を用いたOまたWRW群はKSへの反応はすべて「正しい」 、それ以外はす べて「まちがい」と言い、 RWR群ではKSに「まちがい」 、他は「正しい」と言う場合であっ て、この二つは伝統的な「効果の波及」のやり方と同じである。最後の1群は全刺激語に対して 反応が何であっても何も言わない統制群である。

刺激語は清音2音節綴の有意味語と無意味語ともに25個ずつで、 1個ずつ13cmX 8cmの白色カ

‑ドに平仮名で書いてあり、有意味と無意味の両方のリストに含まれる各50個ずつの文字が、ほ ぼ同数ずっ使用されるように配慮した。刺激語の挺示境は各群間では同じであるが群内では被験 者ごとにかえて語境による影響をなくし、さらにどの語もほぼ同数ずつKSに使用した。被験者 に次のような教示を与えてやり方をよく理解させTI。

「この25枚のカ‑ドには意味のない言葉(または意味のある言東)が書いてあり、それには言 葉の発音や意味とは無関係に1から10までのうちのいずれか一つの番号がきめてあります。この カードを1枚ずつ見せますからその番号を当てて下きい。ただし、 1、 1、 1、 ‑とか、 1、

2、 3、 ‑‑‑というような答え万をしてはいけません。全部すんだら続けてあと4回やりますか ら、できるだけ沢山あてて下さい。 (以下各群で異なる)

.R群: 2枚か3枚のカードだけについて答が合っていたら『正しい』と言いますから、それを よく覚え、次のときにそのカードが出たらその番号を言って下さい。その他のカードについて は、答が正しくてもまちがっていても何も言いません。

W群: 2枚か3枚のカードだけについて答がまちがっていたら『まちがい』と言いますから、

次のときにそのカードが出たらそれと違う番号を言って下さい。 (以下R群と同じ)

WRW群とRWR群:答が合っそいたら『正しい』、まちがっていたら『まちがい』と言いま すから、正しいと言われたのをよく覚えて次のときにそのカードが出たらその番号を言って下さ い。まちがいと言われたときは次にそのカードが出たらそれと違う番号を言って下さい。

統制群:答が合っているかまちがっているかは教えませが、終りまでしっかりやって下さい。」

以上のような教示であるが、実際には刺激語と遵合している正しい番号が定幼てあるのではな く、先に述べた計画に従って「正しい」 、 「まちがい」 、何も言わないのいずれかを与えた。刺 激語の提示時間は3秒としたが、被験者の反応の遅速によって多少の変動があっT=。全部で声試 行同じ語順で挺示し、そq)試行間隔は5秒としたD

結     果

相隣る試行間の反応反復率 二つの試行間で、同一刺激に対して同一反応がなされたときを反 応反復と呼ぶが、この場合、相隣る試行間での反復ととび離れた試行間の反復が算出できる。こ

こではKSとそのまわりの前後それぞれ3刺激語についての相隣る試行間の反応反復率を算出し

(4)

156

反応反復におよぼす言語強化の影響(杉村)

た Tablelは全5試行についての反応反復率、それを前半(1‑3試行)と後芋(3‑ 試 行)に分けた場合およびそれらをKSの前後別に平均した値を示したものである。全試行のとき は、 5試行(反復可能数4)でKSが2個だから、無意味語の場合の反復可能数は4× 2 ×30‑

240で前半、後半それぞれ120となり、有意味語では4× 2×20‑160 (前後80ずつ)である。

表の値はこの反復可能数に対する割合である。

無意味語:KSにおける全試行についての反復率はR群から表の頓に、 27.9%、 13.3%こ38.3

%、 16.7%、 14.6%であり、 W群とRWR群は統制群とあまり違いがなく、それ故に「まちが い」は効果がなかったが、これに対してR群とWRW群はともにかなり高い反復率を示した。分 散分析の結果1%水準で群差が認められ(F‑12.21, <*/‑ 4と145)、 WRW群とR群およびR群 とRWR群の間の差が有意であった。前半、後半別にみると、 R群とWRW群において試行と ともに反復率の増加する傾向があるが(24.2%う31.7%; 29.2%→47.5%)、他の3群では両者 の差はわずかであった。 KSの前の反応反復ではRWR群に勾配がうかがえ(26.3%→17.5%) 、 またKSの後にはRWR群以外の4群にあらわれた。しかしWRW群の下降勾配だけが統計的に有 意であった(23.8%‑サ13.8% ;F‑4.55、 df‑ 2と58、 Pく.05)c三つの刺激語に対する反復率の 平均では、 KSの前後ともにRWR群が他の4群よりも大きかった(22.6%と24.7%)< またR群 とWRW群では前半に、 W群では後半の方により急激な後勾配があらわれた(それぞれ18.3%→

9.2%、 27.5%う14.2%、 21.7%う12.5%)。

有意味語:KSにおける全試行の反復率はR群から境に、 51.9%、 14.4%、 52.5%、 19.4%、

12.5?で、これら5群の差は分散分析の結果1%水準で有意であった(^‑27.50、 #‑4と11 5)0 R群とWRW群はほとんど同じ値で無意味語におけるような差がなく、また両群は他の3群 よりも有意に高い反復を示した。 W群、 RWR群ともに統制群よりも高い反復率であったが、統 計的な有意差は認められない(RWR群と統制群の差、 £‑1.06)。前半、後半別では無意味譜の ときと同じように、 R群とWRW群において試行にともなう反復率の増加が認められるが(41.5

%‑>62.5%、 40.0%‑>65.0%)、他の群には大きな変化がなかった. KSの前の反応反復にはどの 群にも一定の傾向がなかったが、 KSの後にはR群とWRW群において下降勾配があらわれたo WRW群の勾配はなだらかでないがそれらの値は有意差を示し(21.3%→6.9%→13.8%;F‑

5.21、 df‑ 2と38、蝣P‑.Ol)、 R群の勾配は有意水準に達しなかった(23.8→15.6; i?‑2.10)<

反復率の平均はKSの前後ともにW群とRWR群において高い傾向があった。前半、後半別の勾 配を較べると、無意味語のときとは逆にR群とWRW群の後半における後勾配の万が急激であり

(25.0%→15.0%、 23.8%う8.8%)、またW群の前半にも勾配がうかがえる(25.0%→17.5 mm

とび触れた拭行間も含めたときの反応反復率 Table 2は先の相隣る試行間の反復にとび離れ た試行間の反復を加えたときの反応反復率を示したものである。反復可能数は無意味語のときは 10× 2 ×30‑600であり、有意味語では10× 2 ×20こ‑400 となる.なおこの場合には全5試行に ついての反復率を算出し、前半、後半には分けなかった。

無意味語:Tablelと同じ傾向を示しているが、 R群、 W群およびWRW群の後勾配が強めら れ、統制群は逆にゆるやかになった。分散分析の結果でiまR群とWRW群がともに1%水準で有 意な勾配を示し(R群、 18.5%‑*11.0%、 F‑6.65; WRW群、 21.2^‑^11.3^、 ^‑8.70; dfは ともに2と58 )、 W群は有意にならなかった。したがってこのような算出法によると、 Tablel のときのWRW群に加えてR群の下降勾配も統計的に有意になると言える。

(5)
(6)

158

反応反復におよばす言語強化の影響(杉村)

Table 2

Percentage of Response Repetitions for the Stimuli around the Key Stimulus

(Included A′′ Repetitions)

Mean 1 ‑3   ‑2   ‑1  K S

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Table 3

Percentage of Response Repetitions for the Stimuli around the Repeated Key Stimulus

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Table 4

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C O   ( O   O   N   C O

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(7)

有意味語:KSの反復率はTable lよりやや低いが相対的な関係はまったく一致しているo L かLKSのまわりの反復率には頗著な傾向がなく、 WRW群はTablelのときよりもなだらかな勾 酉己になっている。

反応反復したKSの前後の反応反復奉 読行間の反応反復を調べるとき、 KSの反応反復の有 無によってその前後の刺激語に対する反復率を算出することができる Table 3はとび離れた試 行間をも含めて、 KSへの反応が反復された試行問について、その前後の反応反復を数えたもの である。表の値はKSの反復数に対する割合であり、したがってKSの反復率はすべて100^にな

る。

無意味語:RWR群を除く他の4群において後勾配があらわれ、このうちW群とWRW群が1%

水準で有意な下降勾配を示した(W群、 25.4?」→4.0^、 ^‑6.05、 #‑ 2と56; WRW群、 22.9

%う9.1^、 ^‑5.50、 df‑ 2と58)。平均値ではKSの前後ともにRWR群がかなりの高率であっ た。

有意味語:W群と統制群に前勾配が、 R群、 W群およびWRW群に後勾配がうかがえるが、最 も急であるR群の勾配でも有意水準に達しなかった CF‑2.78)(

反応の変化度 反応の変化度とは1個の刺激語に対していくつの異なった数で反応したかその 程度を示すものである。本実験では5試行あるからその値は1から5の間に分布する。たとえ ば、 5試行全部同じ数で反応したときの変化度は1であり、 3、 5、 2、 4、 6の如きは5とな

る。試行間の反応反復率が高いとき、一般的にはこの値は小さくなるが完全に逆の関係にあると きは言えない。たとえば、 3、 2、 3、 2、 3の場合、相隣る反復は0でとび離れた試行間の反 復は4となるが、変化度は2であってかなり小さい。 Table4は各群のKSとその前後の3刺激語 について平均変化度を示したものである。

無意味語: KSに対する反応の変化度はR群から表の順に、 3.33、 3.83、 3.05、 3.80、 3.90と なり、統制群が最大でWRW群が最小であった。分散分析の結果、群間の差が1 %水準で有意に なったので(F‑9.38、 <*/‑ 4と145)、 2群間の比較をしたところ、統制群とWRW群の差のみが 有意で(3.90対3.05、ォ‑2.47)、統制群とR群、 R群とWRW群の差はいずれも統計的に有意 でなかった。 KSの前後の反応の変化度には、 R群、 W群およびWRW群の後勾配とW群の前勾 配が認められるが、 WRW群だけが1%水準で有意になり(3.40→3.97、 F‑7.26、 #‑ 2と58)、

R群は有意水準に達しなかった(F‑2.95),

有意味語:KSの変化度はR群から項に、 2.53、 4.13、 2.68、 3.80、 3.78となり、反応反復の とき(Tablel、 Table2)と同様に無意味語のときよりもR群とWRW群にもとずく群差が大 きかった。群間の差が有意であるので(^‑97.02、 df‑4と115)、 2群間の比較をしたところ 統制群とR群(3.78対2.53、ォ‑2.55)、統制群とWRW群(3.78対2.1 、 i‑2.35)の差が有意 であり、統制群とW群の差は統計的に有意でなかった。I KSのまわりの変化度にはR群とWRW 群において僅かな勾配が暗示されるだけであった(WRW群のF‑1.68)。

先に述べたように、反応の変化度と試行間の反応反復の間には負の相関があり、相隣る試行 間のみよりもとび離れた試行間をも含めたときの反復率の方に,変化度とのより高い相関が予 想される。ここでは無意味語のKSだけについて相関係数を計算したが、変化度と相隣る試行間 の反復率はr‑‑0.75、とび離れた試行間も含めたときはrニー0.93であって後者が高く(Pく.

01)、予想通りの結果であった。なお、相隣る試行間ととび離れた試行間も含めたときの反復率 の相関はr=20.88であった。

(8)

160

反応反復におよぼす言語強化の影響(杉村)

議     論

賞と罰の効果 KSに対する反応反復および変化度の結果は、言語的な賞はS‑R結合をかなり 強めるが、罰の効果はほとんどないというDuncanの研究と一致しT=。

賞を与えたときは、無意味語よりも有意味語における反応反復が高く、これは一般に有意味語 の万が学習がやさしいことから当然の結果であろう。しかし同じ賞でも、それが刺激系列中でた だ1個だけ与えられたときと、その賞のまわりに罰を同時に与えるときとでは、その効果が異な ることが予想できる。すなわち後の場合は、すべての反応に対して賞か罰が与えられるために、

より緊張的な事態が構成されて賞の孤立が一層はっきりするので、学習が促進きれると考えられ る。本実験の無意味語のときは予想通りにWRW群の反復率が高かったが、有意味語ではR群と WRW群の値がほとんど同じであった。これはおそらく、刺激語が意味を持っているために刺激

語間の弁別が容易になり、賞だけが与えられてもそれが有効に作用することによるのであろう。

罰の効果を上に述べたような賞の効果に対応させて考えてみるならば、無意味語よりも有意味 語の万が罰の作用を強く受けやすく、また無意味語ではW群よりもRWR群において罰が効果的 に作用するであろうと考えられる。しかし本実験では、刺激語の質による相違も罰の与え方によ る相違も、そして統制群とW群あるいはRWR群との差も認められなかった。このような結果は 数反応の習慣が存在することを暗示していると同時に、 1から10までの数のうらから異なった数 を5個言うこと(罰のとき)の方が、同じ数を反復する(賞のとき)よりも困難であることによ るものと考えられる。後者のような実験事態に内在する問題があるとするならば、これまでずっ と用いられてきた1から10までの数を言い当てるやり方では、賞罰の純粋な効果を決定すること は困難であろう。

「効果の波及」 WRW群の後勾配は従来の多くの研究と一致し、またその平均値はKSの前 後ともに無意味譜のときの反復率が有意味語よりも高く、これは岩原の研究(岩原、 1955)と類 似している。しかしRWR群には何ら一定の傾向がなく、ほぼ同じ方法で後勾配を見出した研究

(岩原、 1958)とは一致しなかった。

R群では無意味語、有意味語ともに後勾配が認められた。統計的な検定の結果は必ずしも満足 すべきものと言えないが、 Duncanの結果(KS後の反復率は20.7%、 18.0%、 20.7% の境であ

る)と異なって、いずれの測度においても下降勾配が示されているので、 「効果の波及」現象を 否定するわけにはいかない。またW群でも、無意味語のときはR群とほぼ同じ傾向であり、特に 反応反復したKSの後の反復率には5群中で最も急な下降勾配が認められた(Table3)< しかし Duncanはこの仕方で反応反復を算出していないので直接比較できないが、彼の結果(KS後の反 復率は境に19.3%、 21.3%、 29.3%)は上昇的であり、たとえわれわれのような算出法を用いて

も下降勾配はえられないであろう。

このようにDuncan とわれわれの結果が一致しない理由の一つとして実験手続のちがいがあげ られる。彼の実験では刺激語が39個あり、 1番目から16番目と、 28番目から39番目の刺激語に対 する反応には、 「正しい」 、 「まちがい」、無意味語を言う、何も言わないの四つのいずれかを、

あらかじめ定めた頓でランダムに与える.そして22番目がKSであってここで群の処理を行い、

17番目から21番目と23番目から27番目の刺激語に対する反応には何も言わないというやり方であ った。これに対してわれわれのは、 Duncanの17番目から27番目の間だけに相当すると言えるo それ故、彼のやり方は反応に対して与えられる効果(「正しい」とか「まちがい」とか何も言わな

(9)

いとか)の点でわれわれの場合より条件が複雑であり、そのた釧こ数反応の習慣が妨害されたの ではないかと考えられる。

無意味語のとき、 WRW群がR群よりも急な勾配を示しているが、これはKSの反復率が高い ことによると考えるよりも、 WRW群はR群よりも緊張的事態であって賞の孤立がもたらす作用 が数反応に対してより有効に働くからであると考える万が正しいと思える。一般にKSの反復率 が高いときに勾配があらわれやすいと考えられがらであるが、たとえば無意味語のR群、 WRW 群ともに試行がすすむにつれてKSの反復率は増加するのに前半の方により急な勾配があらわれ ているので(Tablel)、 KSの反復率と勾配の間には必ずしも一定の関係があるとはいえない。

要     約

刺激語に対して1から10までの数字を言い当てるThorndike的な「効果の波及」実験におい て、反応反復におよぼす言語的な賞罰の効果を綜合的に検討した.特定の刺激語(KS)に対す る反応だけにいつも「正しい」 (R群)または「まちがい」 (W群)という Duncan的な方法 と、 KS以外の刺激語への反応に対してもいつも「まちがい」 (WRW群)または「正しい」 (R WR群)という伝統的な方法、さらにどの刺激譜への反応にも何も言わない統制群の合計5群を 作り、それぞれに無意味語と有意味語の刺激を用い、 15才から19才までの少年を被験者として実 験を行った。

KSの反応反復率は、無意味語ではWRW群が最も高く次がR群であり、これらはともに統制 群との間に有意差を示した。しかしW群とRWR群では統制群との差異がなかった。有意味語の

ときはR群とWRW群がはとんど同じで、ともに統制群や無意味語のWRW群より高い値を示し たが、 W群とRWR群は統制群との差がなかった。 R群とW群の結果はDuncanの研究と一致し た。 「効果の波及」については、無意味語のときWRW群、 R群、 W群において後勾配が認め

られ, WRW群は4個の測度で、 R群とW群はそれぞれ1個の測度において統計的に有意であ った.しかしRWR群には何ら一定の傾向がなかった.有意味語ではWRW群とR群の後勾配 が暗示されるにすぎなかった。 WRW群の結果は従釆の研究と‑致したが、 R群とW群の後勾配 は、 「効果の波及」がまったくあらわれなかったという Duncan の研究と矛盾するものであっ た。以上の結果を、賞および罰の与え万、刺激語の質、 Duncanの実験との比較などの点につい て、数反応の習慣を仮定する立場から考察した。

(本研究にあたり東京教育大学岩原信九郎助教授の御指導に厚く感謝します) 文     献

Duncan, C. P. The action of various after‑effects on response repetition. /. e坤. Psychol‑,

1950, 40, 380‑289.

岩原信九郎  効果の波及に関する研究I ‑刺激語の質について‑  心理学研究 1955, 26,

231‑234.

Iwahara, S. Studies of the "spread of effect" ;V. The spread of the effect of verbal punishment and the meaningfulness of cuestimuli. Jap‑ Psychol‑ Res‑, 1958, 1, 38‑50.

岩原信九郎 「効果の波及」に関する研究:Ⅶ・理論的考察  心理学評論1958, 2, 1‑13.

Stone, G. R. The effect of negative incentives in serial learning ; III. Fxation due to an isolated verbal punishment. J. gen. PsychoL, 3948, 38, 207‑216.

(昭和38年9月27日受理)

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162

EFFECTS OF VERBAL REWARD AND PUNISHMENT

ON RESPONSE REPETITIONS

Takeshi Sugimura

Depertment of Psychology, Nara Gakugei University, Nara, Japan

The purpose of this experiment was to determine the effects of verbal reward and punishment on response repetitions under Thorndikian 'spread of effect' experiment.

Boys aged 15 to 19 years, were presented either one list of 25 two syllabled meaningless (abbreviated to N) or meaningful(M) Japanese kana to which S was required to guess with a number one through 10. Out of 25 stimuli, the 8th and 18th stimulus wards were nominated to Key Stimuli (KS), and the same list was repeatedly presented to >S for five trials. N and M conditions were each divided into five subgroups depending upon whether E said "Right" for the guessed numbers to two KS irrespective of the response numbers (R group), "Wrong" for them (W group), "Right" to KS and "Wrong" to all

the other stinuli(WRW group), "Wrong" to KS and "Right" to the others(RWR group), or said 'nothing' for all responses to all stimuli (Control group). These treatments were

prearranged regardless of S's responses before the experiment began, but were unknown to &

Response Repetitions to KS: Per cent repetitions of responses to KS (Tables 1 and 2) were significantly higher in WRW group and R group than in Control group under N condition, but the differences among W group, RWR group and Control group were small.

Almost similar results were obtained under M condition, but per cent repetitions in WRW group and R group were higher than those in WRW group under N condition. Mean response variabilities (Table 4) indicated similar trends to those of response repetitions, although the both measures were inversely correlated. The above results of R group and W group were conformed to Duncan's findings (Duncan, 1950).

'Spread of Effect': Response repetitions around KS showed statistically significant after- gradient in WRW group (Tables 1 to 4), R group (Table 2) and W group (Table 3) under N condition, but no significant gradients were revealed under M condition. The results in WRW group were in accordance with many previous data, but the obtained 'spread of effect' phenomena in R and W groups seem to disagree with Duncan's experi- ment in which no gradient was found.

These findimgs may be interpreted in line with the guessing sequence hypothesis. The

discrepacey between Duncan's experimental procedure and ours were discussed.

参照

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