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降雨時に河川へ流出する溶存有機物の移行挙動 高畠容子

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Academic year: 2021

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- 89 -

降雨時に河川へ流出する溶存有機物の移行挙動

高畠容子1, 長尾誠也2, 柴田英昭3

1北海道大学 大学院環境科学院

2金沢大学 環日本海域環境研究センター LLRL

3北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター

Takahatake, Y., Nagao, S., Shibata, H.: Dynamics of dissolved organic materials in a mountain stream during storm events

【はじめに】

河川水の溶存有機炭素(DOC)濃度は降雨時や融雪期に高濃度になることが知られている。そのた め、河川のDOCフラックスを算出する際、融雪期・降雨時を無視するとDOCフラックスの過小評価 につながる。また、土地利用改変・地球温暖化により河川水の DOC 濃度が増加していること、地球 温暖化により降雨・降雪パターンが変化していることから、降雨時における溶存有機物の河川フラッ クスを正確に見積もる必要がある。しかし、降雨時の DOC 濃度変動は流域により異なり、また同一 流域であっても降雨により異なることが報告されている。したがって、DOC濃度変動と降雨、流域と の関係を解明する必要がある。本研究では北海道北部の北海道大学雨龍研究林内を流れる小河川の泥

川(図1)において詳細な降雨、河川流況の観測、DOC濃度測定、河川水中溶存有機物の40~60%を

占めるとともに流域環境ごとに特性が異なる溶存腐植物質の簡易測定、その他溶存物質濃度測定、河 川水の水素・酸素安定同位体比測定を行い、降雨時における河川水の DOC 濃度変動を支配する要因 を検討した。

【試料採取、測定項目】

図1に示した2地点に観測点を設置し、試料採取を行った。上流観測点は勾配が急な森林地帯、下 流観測点は河畔湿地帯で、DOC供給源として知られ

ている。各観測点で2006年~2008年にかけて平水 時に数回試料採取を行った。下流観測点には連続採 水器を設置し、降雨量や河川水位、流速、濁度の観 測とともに、1時間当たり10㎜以上の降雨時に河川 水を1時間ごとに24回採水した。研究対象とした降 雨イベントは計5回で、2007年6月22日、8月9 日、9月21日、27日、2008年9月3日である。採 取した試料は河川水安定同位体比測定用試料を分取 したのち、ろ過を行い、分析項目ごとに適宜保存し た。

DOC濃度測定、三次元蛍光スペクトル分析、紫外 可視吸収スペクトル分析、高速液体サイズ排除クロ マトグラフィー分析(蛍光検出:320/430 nm, 275/335

nm、紫外検出:280 nm)、栄養塩濃度測定、主要陽・

陰イオン濃度測定、河川水の水素・酸素同位体比測

上流 観測点

下流 観測点 雨竜研究林

日本

北海道

上流 観測点

下流 観測点 上流

観測点

下流 観測点 雨竜研究林

日本

北海道

図1:泥川流域と観測点

(2)

- 90 - 定を行った。

【結果、考察】

全降雨イベント時の DOC 濃度変動幅と河川水位変 動幅との関連性を図 2 に示した。水位変動が大きい 2007年9月21日の降雨イベントと他の4イベントを 比べたとき、DOC濃度変動幅が水位変動幅に依存す るといえる。しかし4イベントのみを比べたとき、

DOC 濃度変動幅と水位変動幅には関係が見られな い。これより、DOC濃度変動幅は水位変動幅だけで決 まらず、降雨状況が関係すると考えられる。

図3には2008年9月3日の降雨イベント時のDOC 濃度と河川水位を示した。降雨観測2~4時間後に水位

が 0.6mから 1.2mに急激に上昇して最高位となり、7

時間後からは緩やかに減少し、23 時間後には0.8mと なった。DOC濃度は降雨観測4 時間後に急増し、5.5 mg/Lから最高値の10.6mg/Lとなり、9時間後から徐々 に減少し、23時間後には5.6mg/Lとなった。このとき の河川水の水素・酸素同位体比は図3のように、水位 変動や DOC 濃度変動と似た変動を示した。先行研究 より、この変動は河川水の起源がSubsurface waterへ変 化したことにより生じたと推察される。

280 nm における紫外検出の高速液体サイズ排除ク

ロマトグラフィー(HPSEC)の結果は、図4に示した。

平常時、ピーク①は上流観測点において観察されず、

下流観測点においてのみ観察された下流域に特徴的な ピークである。ピーク①/ピーク②(図 5)は降雨観 測3時間後から急増し、6時間後に最高値となったこ とから、降雨イベント時の DOC 濃度変動は上流の森 林地帯より下流の河畔湿地帯の影響を強く受けること を示唆している。

以上の結果より、降雨イベント時には湿地帯の Subsurface層からの寄与が増大し、DOC濃度増加を引 き起こすことが明らかとなった。

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0 5 10 15 20

降雨観測からの経過時間(h) 0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0 5 10 15 20

降雨観測からの経過時間(h) δ

18

O (‰) DOC (mg/L)

-12.1 -11.1 -10.1 -9.1 河川水

酸素同 位体比(

)

0 0.4 0.8 1.2

0 5 10 15 20

降雨観測からの経過時間(h)

河川 水位( m)

0 2 4 6 8 10 12 14

D O C (m g/ L)

水位 (m) δ

18

O (‰) DOC (mg/L)

-12.1 -11.1 -10.1 -9.1 河川水

酸素同 位体比(

)

0 0.4 0.8 1.2

0 5 10 15 20

降雨観測からの経過時間(h)

河川 水位( m)

0 2 4 6 8 10 12 14

D O C (m g/ L)

水位 (m)

降雨観測1時間後

降雨観測8時間後

降雨観測21時間後 ピーク① ピーク②

降雨観測1時間後

降雨観測8時間後

降雨観測21時間後 ピーク① ピーク②

降雨観測1時間後

降雨観測8時間後

降雨観測21時間後 ピーク① ピーク②

図4:

2008年9月3日 の 降 雨 イ ベ ン ト 時 の HPSEC( 紫 外 検 出 : 280 nm)のクロマトグラ

図5:

図4のピーク①とピーク②の比(ピーク① の高さ/ピーク②の高さ)

2007年8月9日

2008年9月3日 2007年6月22日

2007年9月21日

2007年9月27日

0 3 6 9

0 1 2

水位変動幅 (m)

DOC濃度変(mg/L)

2007年8月9日

2008年9月3日 2007年6月22日

2007年9月21日

2007年9月27日

0 3 6 9

0 1 2

水位変動幅 (m)

DOC濃度変(mg/L)

図2:全降雨イベントにおけるDOC濃度変動幅と 河川水位変動幅

図3:2008年9月3日の降雨イベント時の河川水位、

河川水DOC濃度、河川水酸素安定同位体比の降雨

観測直後から23時間後までの経時変化

参照

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