要素価格フロンティアーと所得分配再論
要素価格フロンティアーと所得分配再論
児玉元平
1
伝統的な生産と分配理論の基礎的分析概念である生産函数における一つの 生産要糸としての資本は,最近ヒックス的表現でいえば 世界中の経済学者 が多忙的に取組んでいる大事業の一つ〟と考えられる概念である○
(1)
新古典派理論は生産函数の存在を大前提として,限界生産力の概念によっ て,生産物の労働と資本との問の分配現象を説明する。この線にそって利潤 率を説明せんとするならば,資本は一つの価値概念として規定しなければな らない。この点で根本的な難点が派生する。資本の量を価値達として規定す るためには,賃金率,利子率があらかじめきまっておらねばならない。換言 すれば,賃金率と利子率が変化すれば,資本の価値も変化する。しかし、資 本の価値童がきまらなければ賃金率と利子率はきまらない。推理は循環的ト
ラップに落込む。限界生産力理論を開拓したのひとびとの中には,この点につ いて若干の認識をもつ者もあった。たとえば,ウイクセルはつぎのように述 べている。「生産と消費の均衡が生ずる以前に,資本は既に固定的であると いうことは,まったく考えられぬことではないけれども,明らかに,無意味 なことであろう。いろいろな単位で表現されるにしろ,二商品の相対的交換 価値の変化は,資本の組成要素が同時に多少ともかなりの変動をおこさない かぎり、資本の価値の変化を生ぜしめるであろう。しかし,たとえ,資本を 密生史的に考えて,それぞれの異なった年代にわたって蓄積された労働と土 地の一定量であるとみた場合でも,商品価値の変化はまたその生産の条件を 変化させ,そのことによって,資本の構成に大なり小なりの変化をもたらす にちがいないであろう。」このウイクセルの言葉についてガレニヤーニはつ
(2)
ぎのような批判をあたえる。「ウイクセルのいうように,無意味であること
が正しければ,われわれは自問してよい。 r諮義」の理論は,いったいわれ われに如何なる認識を可能ならしめるのであろうかと。均衡における分配と 価格体系とを決定するために,他の与件のうちでも,とりわけ経済における 生産要素の可処分量が必要である。要素の一つである資本について,均衡が 達成される以前にその数量を知ることができないとすれば,われわれはその 理論をもって,たんに何の理論もなしに知りうることだけを,つまり,既に 事実上存在している均衡状態の分配と相対的価格を決定しうるにすぎないで あろうO そして,われわれは,決定因たる数量として用いるべき資本の価値 を,そこから引出さなければならないであろう。」
(3)
資本の価値が均衡以前に確定しない理由についてまたウイクセノレはつぎの ように説明する。 rこの不確定性は,勿論第1I乙は資本は労働や土地とちが って本源的生産要采ではなく,生産とは独立的に,あるいは生産に先立って 存在しえないという事実にもとづくものである。資本の発生と維持とは不可 避的に生産が行なわれていることを前提とするものであるG しかし,この不 確定性は,さらにもう一つの根深い原因をもっているO 現実に,資本の量は 物理的な条件によって決定されるのでなく,一方ではわれわれをして貯蓄せ しめ資本を蓄積せしめ,他方において既存の資本を消費せしめるところの精 神的な諸力の聞の均衡によって決定されるのであるO 換言すれば,定常的状 態の下においてさえ,資本の蓄積それ自体は、生産と交換の問題における必 要な要素なのであるoJこれらのウイクセjレの文章から類推されることは、
(4)
彼の資本モデルにおいて、経済の存在資本の価値を均衡決定のための与件と したことについて,彼がいかに困惑を感じ,不確信であったかという事実で あるo ウイクセノレ資本モデ、ルにおける資本価値を所与とする仕方について は,既iこノレッツもその難点を指摘し,ウイクセルのモデノレでは(勿論ベエー ム・パヴエjレクにおいても)方程式が1個不足している。資本の価値を所与 とすることは均衡に不可欠の条,件の一つが当初から与件としておかれている ことを意味し,その意味で,問題の完全な解決には失敗したと批判する。
「ウイクセノレ,また彼以前にはベエーム・パヴエノレクの果した業績は,均衡 の諸条件を明らかにすることであるO しかし,彼等は,この均衡を,彼等の
要素価格フロンティアーと所得分配再論 3 選んだ与件の助けを借りて完全に決定することに失敗しているoJガレニャ
(5)
ーニは,ウイクセルのいう不確定性自体が所謂限界生産力的分配理論の根本 的な難点であって, ウイクセノレモデソレの循環論的性格を露出しているのであ るo r可処分資本がえられなければ,均衡状態を知ることはできない。ま た,均衡状態が成立たなければ,可処分資本量を知ることはできないロ」経
(6) 済の存在資本を価値のタームで測定すれば,資本をして分配の決定要因たら
しめることはできなくなる。
ウイクセノレは,生産函数という概念を陽表的に使用し,一次の同次性を仮 定したという意味で,彼の分配理論は最も近代的であった。ウイクセjレは,
¥7)
生産函数には資本の代りに,生産期間乃至投資期間という概念を導入した。
そして他方,経済の存在資本の価値を生産物で、測りこれを所与と仮定した。
しかし,資本の価値が賃金率や利子率に依存するという所謂ウイクセノレ効果 を最初に指摘したのはまたウイクセルであった。ロビンソンによれば,新古
(8)
典派学説!こはこの点が適当に考慮されていないのであるO かくて,最近にい
(9)
たるまでは分配理論における資本価値の問題はほとんど体系的に論議される ことがなかった。ウイクセノレが指摘し,しかも不完全なままに残した問題 を,資本理論乃至分配理論の根本的な問題として取扱ったのはロビンソンで あるo r一定の生産方法に必要な資本の価値は,実質賃金率に依存するとい うこと,このことは資本の蓄積および賃金利潤の決定に関する全理論の鍵で あるoJロビンソン以後,生産函数との関述において資本の問題が新古典派
( 1日
理論の基礎的前提にかかわる問題として再吟味されるようになったo そし て,資本の同質性,異質性,技術の再転換というような問題が派生的に論ぜ られるようになったD この小論では,分配の限界生産力的分析方法に最も批
¥11)
判的であるガレニヤーニの所説を吟味し,あわせて,要素価格フロンティア
( 12)
一概念の有用性を再検討することにしたい。
2
サムエノレソンによれば, リカードにしたがって経済学が分配ゐ法則を解明 する研究であるとするならば,要来価格フロンティアーの概念は最も主要な
経済的分析概念であるo このフロンティアーによって賃金率と利潤率との関 係が陽表的に示されるのであるO サムエノレソンは,この要素価格フロンティ
( 13)
アーの分析概念を使用することによって伝統的な分配理論乃至資本理論を擁 護するo異質的な資本,固定的な要素比のモデルでも新古典派的理論の命題 に意味をあたえることができるとするo
そこで,ガレニヤーニは,このサムエノレソ的分析の批判的吟味から出発す るoサムエルソンの分析では,異質的な資本財は同質的な存在に還元され,
その限界生産物は利潤率(利子率)にひとしくなるo かくて,伝て再生され 統的な理論の説明は,利潤理論の基礎的問題を明らかにする有用な偶話とし
る。
サムエルソンではリニヤープログラミング的手法が使用され,消費財部門 (その産出量をCで示そう)と資本財部門(その産出量をムKで示そう)の 二部門が想定され,両部門で同ーの資本財が使用されるo生産は年単位で行 われ,資本の消耗率は年d率とする。ヒックスでは要素価格線の導出には、
資本は永久的な耐周期間をもち,減価償却は無視され,資本財部門の産出は 純投資にひとしく恕定されているが,ヒックスとサムエJレソンのモデルでは ともに価格算定式には要素価格支払に関する穿イムラッグが無視されてい るO
( 1 品
まず,各産業部門では単一の技術プロセスのみが存在すると仮定しようo
消費財を価値の基準として,資本財の価格Pkは消費財で測られるとするo
価格方程式は、
Pk = alPk ( r十d)+ b1w 1 = a2Pk ( r + d ) + b2w
(1) (2) 賃金は生産の完了時点で支払われるとするo この式でalは資本財部門での 資本投入係数, b2は労働の投入係数を示し,利潤率r,賃金率(消費財で はかった)wは両産業部門で同ーと仮定される。む, a2, b1, b2, d はす べて既知で,未知数はし W,Pkである。方程式は 2個。そこで ,W とr との関係は
w = 一1 ‑al ( 一r十d)
b2 + (a2b1‑atb2) (r十d) (3)
要素価格フロンティアーと所得分配再論 5
d=oとすれば,
w= ‑ 1 ‑at!:
b2 + (a2 b1 ‑al b2) r (4) となるo(3)式はサムエノレソンの要素価格方程式,ヒックスの賃金方程式を示 している。賃金率が外生的にあたえられるならば,手1]1国率と価格比はこれら の方程式より求められるO
r = 0のとさの栂大賃金率をWで示すと,
w= ‑ 1 ‑a1d b2 + (a2b1 ‑ alb2) d w=oのとさの概大利潤率をRで示すと,
R = ̲ 1 ‑ald
一 一 一 一 一
al
(5)
(6)
また、資本財の価格は,
b1
P". 一一 一 一 一 一 一 一 一
民 b2+ (a2b1‑alb2) ( r + d) (7) a2b1/a1b2 = mとおく,これは,消費財部門における資本労働比率と資本 財部門における資本労働比率との比を示しているD この比の値は要素価格フ ロンィアーの形に重要な意味をもっているo a2b1‑alb2;三Oであるとrの 非負の値にとってPI<> Oとなるoa2b1‑alb2 < Oである場では、 PI<> Oで あるためには,
r! bι一 一 一 ̲ , 1
¥alb2 ‑ a2b1 でなければならない。しかし,
a長tih‑d
〉
Rであるから, Pk>oであるためには O亘r孟Rであらねばならぬ。
両産業部門で資本労働比率が同一である場合 (m=1)賃金方程式は,
w = 一 一 一 一 一 一 一__~L=-~:L0_ + d) b2
(8) となり、直線で示されるO この場合には,
AU一
4A a
一 2
一 一 b
司i
‑一
W 一 一
(9)
R = 1 ‑a1d
a1 (10)
もし,消費財部門の資本労働比率が資本財部門の資本労働比率よりも大であ ると、 m>l,要素価格フロンティアーは原点にたいして凸の曲線で示さ れ,消費財部門の資本労働比率の方がより小であるならば, m<l,要素価 格フロンティアーは原点にとって凹の曲線で示されるであろう。もっとも,
このことは両部門で同じ資本財が使用されているという仮定に依拠するもの であり,乙の仮定が捨てられると修正されねばならない(1日。
ガレニヤーニは,サムエルソンと
守 1iく'll ちがって純投資零の定常経済を仮定
する。そのために彼は綜合的消費財 ¥'; 産業という概念を導入する。資本財 部門では,消費財部門と自己部門と の資本消耗をちょうど置換えるにひ としい産出量を生産するD 乙の場合 ¥¥'1
の消費財の量は賃金と利潤とに分配 b、、ぅ、
される純生産物にひとしいof純蓄積 ¥ 、
、、
零の経済はもっぱら綜合産業からの ¥ 、、、
¥
みなりたつO」目
。
o rl R r 要素価格フロンティアーを単一技術の場合として第l図 で 示 そ うo載片 O Wは r 0のときの極大賃金率を示し,また,所与の技術のもとで綜合 的消費財産業の労働者一人あたりの純生産物を測るD そこで, W1Wは賃金 率の水準がW1である場合の一人あたり利潤として受取られる消費財の量を 示す。つぎの関係がえられる。W1W tan α口 一 一 一 一 ニ
W1P Or1
j e E
E ‑‑ 4・ ・ ι
(
これは,労働者一人あたりの資本の価値を示すことになるD 即ち,点線W P の勾配は,綜合的産業で労働者一人あたり資本の量は固定的であるから,生 産物の賃金と利潤との聞の分配パターンの変化に対応して資本財価格がどの
要素価格フロンティアーと所得分配再論 7 ように変化するかを示すであろう。既述のごとく.m = 1であると,要素価 格フロンティアーは直線となるから, Pkはコンスタントである。 wが上昇 し rが低下しても資本財価格は不変であるロわれわれはこれを中立的ウイ クセノレ効果とよんでもよい。ところで,第1図 の ど と し 要 素 価 格 曲 線 が 原
(1百
点にたいして凹の場合には rの上昇 wの低下はPkを上昇せしめ rの 低下 wの上昇はPkを下落せしめるO 乙れは資本財部門の資本労働比率が 消費財部門のそれよりも大である場合, (m< 1) ,利子率の変化が消費財 よりも資本財により多く影響するからであるO われわれは,これを,逆の (または負の)ウイクセjレ効果とよぶことができるom>lの場合,消費財 部門の資本労働比率の方がより大である場合には,要素価格曲線は原点にた いして凸となり wの上昇 rの低下はPkの上昇を結果する。これは正の ウイクセJレ効果とよぶことができるO ウイクセノレ自身はこれが正常的な場合 と考えた。
単一技術でm =1,で a1=a2,b1=b2であれば,
dw a1 ̲ ̲ ‑.K
dr b2 L (12) となり,要素価格線の勾配は全体としての資本労働比率を示しているoWと
rとの変化にかかわらずK/Lはコンスタントである。資本財価格もコンス タントであるO そこで,この曲線の弾力性と資本財価格とのfl,t
dw r,..,. rPkK
一一一一一一】 一 一 一 一
一 dr w .L k ‑ wL (13) の動向によって相対的分配率の変化を知ることができるo ファーグソンはこ の場合生産と市場との新古典派的関係が成立するc即ち,資本労働比率の低 下と賃金率の低下,手IJi閏率の上昇とが結び、つくと述べているが,単一技術の
( 18)
場合この関係は成立しない。 K/LはコンスタントであるO 新古典派的命題 が成立するのは複数技術が存在し,各要素価格曲線が直線であるが,その包 絡線が原点にたいして凸となる場合である。そこでつぎにわれわれは,複数 技術の場合を取扱う。
3
複数技術が存在し,各技術プロセスで固定的投入係数があると,それに対 応してそれぞれの技術を示す要素価格が存在するo α技術, β技術, γ技術
~~ 2図
¥V
。
r︐a ︑ イ Lv ' paβ 口 ハ
R α
第 3図 w
wf
w~
r3RβRα r
があり,各要素価格線がすべて直線となる場合は第2図で示される。連続的な 技術変化が可能であればその包絡線はなめらかな凸形の曲線となり,包絡線 上の各点はそれぞれ異なった技術を示すであろうo勿論すべての要素価格曲 線が同ーの形をとる必然性はない。第3図の場合も考えられるo各賃金水準 または利潤率にたいして最も有利な生産プロセスが採用されるであろうo そ れぞれの技術で生産される消費財の生産費はどの技術が使用されたかに依存 する。 r2の水準でα技術が使用されると賃金水準はwrであるD いまr2と
W 2 aとでα技術のときの資本財価格とβ技術のときの資本財価格とを計算し
てみるo他方r2でW 2sとでまたα技術のときの資本財価格とβ技術のとき の資本財価格とを計算するoそれぞれ異なった資本財価格が生ずるDそれに応 じてまた消費財の生産費も異なるであろうo現在の価格状態の下で,より安 価な技術を採用せんとする生産者の傾向は rにとって最高のWをあたえる 技術にスイッチせしめるD 逆にいえば,あたえられた賃金水準にたいして最 高の利潤率をあたえる技術が選択されるであろoかくてo Wとrとの関係は 各要素価格線の包絡線であたえられる。これが複数技術の存在する場合の賃
要素価格フロンティアーと所得分配再論 9 金フロンティアー,または,要素価格フロンティアーとよばれるものであ る。各要素価格線が交叉する点で技術のスイッチが生ずるoこの交叉点では 各技術は共存しうるo第3図の要素価格フロンティアーはWαABRα線で示 され rが零から極大率Rにむかつて上昇するにつれ,技術はαからβへ, さらにまたβよりαへ再転換されることを示す。綜合的消費財産業の労働者 一人あたり純生産物,資本の価値は第3図で見ると rがraを乙えて上昇 したとすると,生産の技術はαにスイッチされるoowa>OWs,即ち,労 働者一人あたりの生産物は増大するoまた点線で示される waB線の勾配よ りも,点線WsBの勾配の方が大であるから,労働者一人あたりの資本の価 値も増大するo
いま,述続的な技術変化が可能とし,要素価格フロンティアーがなめらか 第 4図
w
W 2
rt r
な包絡線をえがくと仮定しようO それでは,この包絡線の形状については確 定的な乙とがいえるであろうか。第2図のごとく,各要素価格線が直線形をと る場合には,包絡線は原点にたいして凸形をとる。また,各要素価格線が凸 形である場合にも包絡線は凸形をとるo さらに,各要素価格線がたとえ凹の 形であっても,その包絡線も凹の形をとる必然性はなし、。しかし,包絡線が 凹となる可能性は排除されない。また,包絡線の全範囲にわたって凹の形を とることもなく,ある部分では凸の形もとりうるO ヒックスはつぎのように 述べているo r技術の可変性は現実にとられる賃金曲線が内曲りとなる可能 性をより大ならしめる方向にはたらくことは明らかである。包絡線が外曲り となる可能性は排除されないけれども,単一技術のみが使用される場合にお けるよりもその可能性は小であるとd思われるoJ
U9l
ガレニャーニは第4図のごとき包絡線をえがくD そ乙で,われわれも乙の 図にしたがって考察をつづけようo qは一人あたりの純生産物, kは労働者 一人あたりの資本の価値を示すとしよう。このqとkとがrの変化に応じて どのように変化するかは第4図で見られる。 rがr1から r2!乙上昇すると,
qはq1から q2!乙上昇し, kはk1からk2!こ上昇するo そこで W,q,
k, rの聞の確定的な関係はつぎのごとく示される。 W= e (r), q = q (r), k=k(r)。
サムエルソンは代用的生産函数の概念をもって,資本財の異質性l乙関する 問題を解決しようとするD 現実の経済はrとwとの関係を示す包絡線をあた える生産要素曲線群をもっ経済であるD これを,代用的資本を含む代用的生 産函数でもって説明しようとするD サムエノレソンでは純資本形成をもっ経済 が想定されているが,これを批判するガレニャーニでは定常的経済が仮定さ れる。サムエノレソンの偶話はつぎのごとく展開されるo生産函数は,
s = S (J, L) (14) 乙乙で, Sは生産物の量, Jは資本の量で,代用的資本を示し, J = PaKa
+ PsKs +… … と し て 評 価 さ れ るD ここで異質的資本財の均衡市場価格 は,要素価格フロンティアーにそって賃金と利潤が変化すれば変化するとこ ろのウエイトの役割を果たしている。ここで,ガレニャーニはサムエJレソン
要系価格フロンティアーと所得分配再論 11
の要素投入の均等比率の仮定の下では異質的資本の価格は rとwとが変 化しても変化しないウエイトであると述べているが,たしかに包絡線が直線
四)
の場合はそうであるが, たとえ各要素価格線が直線であっても,包絡線が原 点にとって凸の形をとるときは, rとwとの変化に応じて各技術に適合した 資本の価格は変化するであろうO サムエノレソンのモデルはこの場合を取扱っ ているのであるo Lは労働を示す。 この生産函数は一次の同次と仮定され る。つぎの条件がみたされる。
(1)~~一=e
ρ
ー‑)θL ¥ aJ I ここで, w=e(r)は現実経済における rとwとの 関係であるo
) f ‑ = q (
す), ここで,q = q
(r)は現実経済における労働者一人 あたりの生産物とrとの関係であるo生産函数に関する仮定により, オイラーの定理が成立するo
-~- = (-~~-)十(苛)-2
そこで, (1)の条件により,
f
=e(r)+ r ̲JL日式をθSIθJについて微分して,
d
( ‑ ‑ r ‑ )
d(-~-)
d (-~-)
d (‑{‑) であるから,
d (士) d (を)
d (訂~) d (苛)
d (交)
d (言)
(1日
( 16)
+一一+竺五士L~
a] d (交)山(18)
(19)
(1)の条件により,
一:‑=ーピ(r ) 印)
e' ( r)は,現実経済の包絡線を示す方程式より導出した微分係数であるD
もし, S (J, L)が現実経済におけるrとwとの関係をあたえるものとす
θS 、 θS
るならば,一←ーのそれそれの水準に対応して r 一一→である点の包絡線
θ J θ J
の勾配にひとしい J/Lがなければならない。ところで,既述のごとく,現 実の経済では,包絡線は部分的に或いは全体的に原点にたいして凹となるか もしれない。その場合,一一ーの上昇とともにθS J/Lは上昇するO この関係
~, 8J
は新古典派理論では生じない。クラーク=ラムゼ的偶話の想像的経済では,
資本の限界生産物は資本労働比率の上昇により上昇すべきでないからであ るoそれでは,包絡線が直線の場合はどうか。直線の場合資本労働比率 J/Lはコンスタントであるo それにもかかわらず限界生産物は変化する口 最後に包絡線が原点にとって凸となる場合はどうか,ヒックスはこの可能性 を最も大とする。この凸性は代用的生産函数の存在を保証するであろうか。
ガレニャーニはつぎのように必ずしも保証するものでないことを証明す るo
印式と位。式より,
? ? = e ( r ) + r {
ーピ( r ) }
ω乙の式で定義された S/Lが q=q(r)にひとしいかどうかを確認してみ ようD 白)1のS/Lは第4図で各r水準に対応する包絡線上の一点における接 線の勾配で示されるD 他方qは,同一の点で包絡線に接する要素価格線の賃 金率軸における載片で示されるo そこで, (21)は要素価格線が原点にとって凹 であるような場合には,どのようなrの水準でもqより大となるD 反対に要 素価格線が凸である場合にはqより小となるロ要素価格線が直線の場合にの みqにひとしくなる。そこで白1)式は(1)の条件と(2)の条件をみたす。代用的生 産函数は,すべての要素価格線が直線である場合にのみ存するo要素価格線 が直線となるのは,既述のごとく, m = 1,即ち K/Lが両部門で同一であ
要素価格フロンティアーと所得分配再論 13
る場合であるo と乙ろで,サムエJレソンの場合,代用的生産函数は,所得分 配率を要素価格フロンティアーの弾力性によって示されることと関係してい
るO
一Tj 一T
U
l L r
一 一
w一一一
= 町 一
wr一λu一AU
印刷一
r
‑ d一d一
四)
(お)
第5図 で は 各 要 素 価 格 曲 線 が 直 線 と な る 多 数 技 術 の 存 在 す る 場 合 の 包 絡 線 を示しているo代用的生産函数がこの場合には存在するo包絡線は原点にと って凸であるoJ/Lの減少とrの上昇 wの低下とが結びつくo これは新古 典 派 的 命 題 と 合 致 す るo サムエノレソンのモデルm=lである。ガレニャー ニはこの条件の意味を考察するo既述のごとく, m = 1では各技術で資本労 働比率は二つの産業でひとしいことを示す。各要素価格線が直線である場合 にまた、この線上では賃金率と利潤率が変化しても,相対価格はコンスタン
トであることを意味するO 二 つ の 産 業の要素比率が均等であれば,消費 w 財は消費財自身と労働とによって生 産される技術と同一である。商品の 異質性とは生産条件の差異によって 定義できるから,直線的な要素価格 線は消費財は消費財自身と労働とに よって生産されることを芯味する口 もし,技術のスペルトノレが,すべて 直線的な要素価格線で構成されるも
第 5図
。
r のであるならば,消資財は,消費財自身と労働との可変的な比率で生産されることになるo その比率は要素価格 曲線の勾配で示されるD そこで r,w, qの関係はクラーク=ラムゼ的偶 請は新古典派的命題を正当化するD 投入係数の同一性の仮定は,異質的資本 の現実経済をしてクラーク=ラムゼ的偶話の想像的経済に転化せしめるoサ ムエルソンはいうっ 「労働と同質的な資本は同質的な純国民生産物の流れを
生産する。それは消費財と純資本形成よりなりたつ。二つは一対ーの関係を基 礎として(長期的にも,または短期的でさえも)無限に代替可能なのである からoJこの場合,代用的資本と資本とは同じものであるo どのような rの
凶
水準でもJ/L,即ち,包絡線の勾配はまたそのrの水準における包絡線の接 線たる要素価格線の勾配であるo
4
つぎに多数財の一般均衡モデノレが提示されるom1固の財Ql.・.Q皿がm個の 産業で生産されるとするO 各産業では単一の生産方法のみ存在し,生産規校 にたいし収穫不変を仮定するD そこで, Qlの生産にはl単位あたり労働2
b1と,Ql, Q2, Q3…・・・のall単位, a21単位, a31単位……を必要とす るO 同様に Q2の生産には1単位あたり b2の労働量と QlQ2 Q3……のa12 単位, a22単位, a32単位……を必要とする。 Q3以下の生産にも同様の投 入係数が示される。賃金は生産完了時点で支払はれるとし,賃金は,賃金財 Gで支払われるo h個の財が賃金財を結成し、その構成比率は入lA.2...A.h
とするo (mミh)すべての産業部門で賃金率と利潤率(利子率)は同ーと 仮定し,さらにGを価値単位としてその価格を lすると,価格決定方程式体 系はつぎのごとく示されるであろうO
Pl = (allPl + a21P2 +……十amlPm)( 1 + r ) + b1 W P2 = (a12Pl + a22P2十 … … +am2Pm) ( 1 + r ) + b2 W
P皿 =(almPl + a2mP2十 … … +ammPm) ( 1 + r ) + bmw
1 = A.1Pl + 入2P+ ・・・・・・ 十A.hPh (24) ここで方程式は (m+1)個で (m+2)個の未知数が存在するD そこで,
wとPをrの函数として示すことができるO ここで,すべてのm個の財の生 産手段として直接的または間接的に使用される財をこの生産体系にとって基 礎的な生産物とよぼう。この賃金財Gの生産体系についてつぎのような仮定
白2)
をおこうo
(1) 体系は生産手段の純置替以上の余剰を生産しうるO
要素価格フロンティアーと所得分配再論 15 (2) m個の財のうち少なくとも 1個はその体系的にとって基礎的生産物で ある。
(3) その基礎的生産物のうち少なくともl個の直接生産には労働を必要と する。そこで労働はすべてのm個の財の生産に直接的または間接的に入って
くるo
(4) 非基礎的生産物の1クツレープが存在し,そのクツレーフ。中の各生産物は 直接的にまたは間接的にそのグノレーフ。中の全ての生産物の生産に入ってくる ような場合には,そのク勺レープの自己純再生産率は、基礎的生産物の純再生 産率よりも大であるo ここで,純再生産率というのはスラッファーの標準比 率 (Standardra tio)一体系の生産手段にたいする純生産物の比率ーに相当 する。
側
ここで要素価格フロンテーを求めるO 以上の仮定の下で, w = 0のときの 極大利潤率Rが求められ r 0のときの極大賃金率Wが求めらるo 0三三 r 三
五Rの条件でmf回の財の価格は正と なるoG生産体系にとって要素価格 線が定義される。いまm伺の産業は 純生産物ーそれは全く Gからなる) を一定の比率であたえるとしようo
そしてその合成産業を綜合的賃金財 産業とよぼう。第6図を見うoOWは 綜合産業における労働者一人あたり
第 6図
w
︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑
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︑ ↑
︑ ︑ 一
‑
︑
‑
q
‑ E I
﹄E
H H H N
O r 1 1 .1
の純生産を示し,点線W Pの勾配(P
点で)は労働者一人あたりの資本の価値を示すD
もし,この要案価格フロンティヤーが直線で示されると資金の価値は賃金 率と利潤率の変化にかかわらず変化しない。そこで,賃金財についてはつぎ のような価格方程式が示される。
1 = a (1 + r ) + bw (251 ここでbは (b1Al+ b2A2 +…・・・+bhAh)でー単位のGの直接生産に必要 な労働呈を示し aはm個の産業の投入係数より求められる定数であるo 乙
の式はGの生産条件はその生産手段の条件と同一であり,そこで,その生産 手段は同質的であることを怠味しているo以上は各財にとって単一の技術が ある場合であるが,複数的な技術がある場合には,それぞれの方法には異なっ た生産手段を必要とするかもしれない。ある財は不要となり,新な財が必要 となるかもしれない。いづれにしても,どのようなこつの技術体系を比較す る場合にも,財を二つのグループに区別して考える必要があるo一つは両体 系とも賃金に入り且両体系に共通的な財であり,他は,体系のーにとって特 有な財であるoGの全ての可能な技術体系を形成するために各方法を結合し て,それぞれの対応的な要素価格線をグラフに示すことができるD そして,
それから,その包絡線としての要素価格フロンィアーを示すことができるo
技術変化の可能性が連続的と仮定されるであろうO このフロンティアーはま た原点にとって凸または凹の形をとることも可能であるo
ここで,代用的な生産函数も以前と同じ方法で吟味されるow=e (r) はこの包絡線を示すt方程式であり, q=q(r)はこの綜合的賃金財産業に おける労働者一人ありの純生産物と rとの関係を示す方程式であるoそこ で,問題は, θS/θL=e (8S/θJ)とS/L= q (θS/θJ)の関係が存在するよ うな一次の間次である生産函数S= S C J, L)が存在しうるということで ある。この場合でも,全の各要素価格線が直線である場合,その場合にのみ この生産函数の存在は可能であるD しかし,各要素価格線が直線であるとい うことは,賃金財Gはそれ自身と労働とによって生産されることと同じこと を意味しているのである口 Gがそれ自身と労働との可変的な比率で生産可能 な場合にのみ代用的生産函数としての S=SCJ,L)は存在し, J はGの 生産に使用される資本を示し, S C J, L)はGの生産函数なのである。
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ここで,ガレニヤーニは,伝統的な分配理論‑それは分配の限界生産力理 論であるがーについて三つの問題を提起するo(1)労働と資本の量が国民生産 物の水準を説明し,且二つの要素の限界生産物によってその分配を説明する ような巨視的な生産函数が存在するであろうかo(2)どのような単一の生産物
要素価格フロンティアーと所得分配再論 17 にしろそれに対して類以の生産函数が考えられるであろうか。 (3)伝統的な分 配理論の基礎的前提であるところの,利潤率の低下は資本集約的方法を有利 ならしめこれを採用せしめるという思考についてである。
ガレニヤーニは第lの問題は既にサムエjレソン的な代用的生産函数の吟味 によって解決しているという。即ち,経済では単一の生産物のみが生産され ているO したがって集計の問題は存在しない。他方,色々な異なった生産物 が生産されているならば,巨視的な生産函数は存在しない。そのいづれかで、
ある。つぎに第2の問題であるが,伝統的な理論では,どのような財にしろ その生産技術的条件は資本と労働とを生産要素とした生産函数により表現さ れる口この思考では,均衡状態では資本の限界生産物が利潤率にひとしくな るような資本と労働の比率が存在する。そして同時にこの比率に対して賃金 率にひとしい労働の限界生産物が存在し,生産物は賃金と利潤として分配さ れるo伝統理論では生産函数では技術変化の連続性が仮定されるのが普通で あるが,乙の場合,ー財の技術プロセスはrの変化に対して述続的に変化す ると仮定されるO かくてr,q, Wの関係は賃金曲線のなめらかな包絡線で 示されることになるO しかし,このような結果が労働と資本とを生産要宗と した生産函数より求められるは,既にサムエノレソンの代用的生産函数の吟味 で明らかにされたように,一財がそれ自身と労働とによって可変的な組合わ せで生産されるような場合にのみ可能であるo ところで,ガレニヤーニがこ の場合最も強く主張することは資本の限界生産物が利子率にひとしいという 命題をおきうるのは,資本が生産物と同じ単位で一つの価値呈として表現さ れる場合にかぎるという点であるD もし,資本がこのような価値で表現され るならば,この価値はwとrの変化に応じて変化するO それ故にこのような 資本を合む生産函数は分配から独立的lこ決定することはできないのである。
このガレニヤーニの批判は既にウイクセjレの限界生産力理論にたいして示さ れているo ウイクセノレの生産函数では資本は生産期間の概念,或いは日付の
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ついた労働の呈で表示されているD これらは分配とは独立的であるO しか し,他方,ウイクセノレは経済の存在資本は生産物で測った価値で示してい る'J この資本は分配とは独立的にきめられないのである。ガレニヤーニはい
うo iウイクセノレは,このような可処分資本を資本財の価値額として測定す るO この手続は,資本が分配の変化からは独立した大きさとしてとらまえら れるという必要条件を否定するものであるD 即ち,資本財のあたえられた集 合の(任意の単位で表わされた)価値は分配を決定すると乙ろの数量として とらまえることはできないのである。」ウイクセルは,資本を価値として示
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すことにより,賃金と利子率との関係をつぎのように示している i大なる 量の資本と比較して小なる量の労働者は,常に,より長い生産期間,より高 い賃金,より低い利子率と結びつくO 換言すれば,資本家が企業者である場 合,生産期間の延長化は、賃金の上昇とそれから生ずる低い利子率に対抗す る資本家側の反作用であると考えられる。 Jrの低下 wの上昇は企業者に
間)
よってより長期の生産方法,より資本集約的な技術が採用される傾向があ るO ところで,ウイクセノレはまたつぎのようにいっている I資 本 の 増 加 は,他の条件ひとしし可かがり,賃金と地代の低落と同時に生ずるというとは 先験的には考えられないように思れる。ーもっとも,乙の問題はおそらくさ らにもっと検討すべきであるけれども。」ウイクセノレが将来更に吟味すべき
(27)
問題と考えたものは,今日技術の再転換問題という形で展開されている。ロ ビンソンがまずこの問題を RuthCohen Curiosumとして再提起したo ガ
128) レニヤーニがここで提起した問題もこの技術再転換の問題である。
新古典派的な命題ではrの低下とともに資本集約度の高い技術がより有利 となるO この命題はrの低‑下はより高い資本労働比率を必要とする消費財の 相対価格を低下せしめるという命題と結びつく O この二つの命題は rの低 下はより資本集約的な生産技術の採用を有利ならしめるという原理から派生 するO この原理にしたがえば,分配は需要と供給とによって説明される。 r の低下につれて,消費財‑の生産体系が変化し,消費者はより資本集約的な財 の方を代替的に使用するD このことは,経済において労働にたいする資本の 比率を上昇せしめる。そこで,もし,雇用労働量がその供給にひとしいと仮 定するならば rの低下に応じて使用される資本の量は増加する。 rと資本 使用量とのこの関係は資本にたいする需要回数で考えられ,資本市坊におけ る競争は rの適当な低下を辺じて純貯蓄を吸収せしめると考えられた。他