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金融商品の公正価値測定と損益の認識

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(1)

金融商品の公正価値測定と損益の認識

今田正

Abstract

The prlmary purpose of the paper is to analyse a reasoned framework of principles that will provide the basis for the development of one or more accounting standards for recognition and measurement of financial instruments and for the presentation of resulting gains and losses.

A number of national standard‑setters and The International Accounting Standards Committee have undertaken a project to develop the standards on various aspects of recognition and measurement of financial instruments.For example,IASC completed an interim international standards on recognition and measurement of financial instruments in 1998.The common features of those proposal are recognition of financial instruments at the time an enterprise becomes a party to the underlying contract and measurement of all financial assets and financial liabilities at fair value.

The paper examines if fair value measurement of financial instruments on balance sheet make sense what do the resulting gains and losses represent?

はじめに

金融商品の会計が注目される所以はいうま でもなく,それを契機とする未履行契約の資 産,負債としての貸借対照表への認識計上と その時価測定にあるが,これはまた,この時 価の変動によって生じる損益の認識,すなは ち,損益計算書計上の問題と一体となってい る。この問題は時価の変動によって生じる損 益を会計上いかなる利益と考えるかという理 論上の問題を含んでいる。

この金融商品に関する会計は国際的に同時 進行的にその基準化が計られている。IASC は,1998年12月に金融商品に関するIAS第39号

「金融商品:認識及び測定」(1)を表し,また,

アメリカのFASBは,1998年6月に,SFAS第 133号「デリバティブ及びヘッジ活動に関す

る会計処理」(2)を表している。このような国 際的な動きに連動して,わが国においても,

企業会計審議会が,平成11年2月に,「金融 商品に係る会計基準の設定に関する意見書」

(単に『意見書」という.)を表した。

例えば,『意見書』の特徴は,金融資産や 金融負債においては,契約時におけるその発 生の認識と測定における時価評価の原則を基 本としつつ「保有目的」に応じた測定等(3),

IASC基準やFASB基準等の国際基準を踏まえ たものとなっており,基本的には共通の概念 内容をなしている。

以下では,これら諸基準の対比を行うなか で,金融商品会計の基本的特徴を公正価値測 定と評価差額の認識処理に焦点を当てて分析 することとする。

(2)

( 1 )   IASC ,  I n t e r n α t i o nαl  Accounting S tαnd

α r d s  N o . 3 9 .  F i n a n c i a l  I n s t r u m e n t s  :  R e c ‑ o g n i t i o n   and Measurement

, 

December  1 9 9 8 .  

( 2 )  FASB ,  S t α t e m e n t   0 1   Fin α n c i a l  Accoun‑

t i n g  S t α nd α r d s  No.133 ,  Accounting f o r   D e r i v a t i v e  I n s t r u m e n t s  and Hedging Ac‑

t i v i t i e s ,  June 1 9 9 8 .  

( 3 )企業会計審議会「金融商品に係る会計基準の

設定に関する意見書」平成

1 1

m

の三

の ( 3 ) 。

.金融商品の認識計上

測定の前提は資産負債の発生の認識であ る。まず金融商品の認識基準について検討し ようo

わが国『意見書』は,金融資産および金融 負債の認識に関して,

I

金融資産の契約上の 権利又は金融負債の契約上の義務を生じさせ る契約を締結したときは,原則として,当該 金融資産又は金融負債の発生を認識しなけれ ばならない」

ω

とするo

一般に,商品等の売買又は役務の提供の対 価に係る金融債権債務は,商品等の受け渡し 又は役務の提供の完了によりその発生を認識 するが,金融資産及び金融負債を対象とする 取引については,当該取引の契約時から当該 金融資産又は金融負債の時価の変動リスクや 契約の相手方の財政状態に基づく信用リスク が契約当事者に生じるため,契約締結時にお いてその発生を認識することとした。したがっ て,有価証券については原則として約定時に 発生を認識し,デリパティプ取引については,

契約上の決済時ではなく契約の締結時にその 発生を認識するという。

このように, もっぱらリスク管理に基づく オンバランス化が論理化されているが,その 論理はFASBとほぼ同じものとなっているo

FASB

が表したSFAS

1 3 3

号は,全てのデリ

パティブを契約上の権利又は義務に基づき資 産又は負債として貸借対照表上に認識すると した

ω。すなはち,デリパティブが資産,

負債の定義を満たす権利,義務を表すことを もって貸借対照表計上を論理づけたのであるo

また,

IASC!

IAS

第3

9

号において,企業 は金融商品に関する契約の当事者となった時 点で,金融資産又は金融負債を貸借対照表上 で認識しなければならないとした。すなはち,

デリパティブ等を含め契約時点においてオン ノぜランス処理を規定したのである(3)

例えば,先渡契約(一定の将来時点に特定の価

格で金融商品ないし現物商品を購入ないし売却す

る契約)は,実際に交換が行われる決済日を待 つことなく,契約時に資産,負債として認識 されるo企業が先渡契約の当事者になった時,

権利及びび義務の公正価値はしばしば等しく,

先渡契約の公正価値ゼロであるo しかし,双 方の当事者がその契約時から契約対象の価格

リスクに晒される

ω

, というのである。

(1)企業会計審議会「金融商品に係る会計基準の設

定に関する意見書」第二の

1

( 2 )   FASB

, 

o p .  c i t .

, 

p a r a . 1 7 .   ( 3 )   IASC

, 

o p .  c i t .

, 

p a r a . 2 7 .   ( 4 )  I b i d . ,  p a r a . 2 9 ( c ) .  

2 .

金融商品の時価評価と損益認識

(1)わが国

f

意見書』の規定

『意見書』は金融資産および金融負債の時 価評価の基礎を次のように論理づけるo

金融資産については,一般的には,市場が 存在すること等により客観的な価額として時 価を把握できるとともに,当該価額により換 金・決済等を行うことが可能である。時価に よる自由な換金・決済等が可能な金融資産に ついては,投資情報としても,企業の財務認

(3)

識としても,さらに,国際的調和化の観点か らも, これを時価評価し,適切に財務諸表に 反映することが必要であると

ω

その貸借対照表価額については,一般債権 については,債権金額と取得価額が異なる場 合は「償却原価」により 債務者の財政状態 及び経営成績の悪化等による債権の実質価額 の減少については取得価額から貸倒引当金 を控除した金額で計上する

ω

有価証券については,これを保有目的によっ

4

つに区分した

ω

売買目的有価証券は時価をもって評価し,

評価差額は当期の損益に認識するo満期保有 目的の債権は償却原価で,また,子会社株式 及び関連会社株式は取得原価で計上する。こ れら以外のその他有価証券は時価をもって評 価し,評価差額は洗い替え方式に基づき, (1)  評価差額の合計額を資本の部に計上するか,

( 2 )

時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価 差額は資本の部に計上し,時価が取得原価を 下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失とし て処理するとした。

デリパティプについては,デリパティブ取 引から生じる正味の債権及び債務は,時価を もって評価し,評価差額は原則として当期の 損益として処理するとしたのである(4)o

ヘッジ取引については,へッジ会計につい ては,時価評価されているへッジ手段に係る 損益又は評価差額をへッジ対象に係る損益が 認識されるまで資産又は負債として繰り延べ る方法によることを原則とする,いわゆる繰 延法へッジとして規定した∞。

ただし,へッジ対象である資産又は負債に 係る相場変動等を損益に反映させることがで きる場合には,当該資産又は負債に係る損益 とへッジ手段に係る損益とを同一の会計期間 に認識する方法も, これを認めるとしてい

(6)

( 2 )   FASB

の規定

FASB

SFAS

1 3 3

号において, (1)デ リパティプは資産・負債の定義に合致する権 利・義務を表わすことをもって,財務諸表に 認識されるべきであるとした∞。

また,測定については,

( 2 )

公正価値は金融 商品に関して最も適合的な測定方法であり,

デリパティプに関しては唯一適合的な測定方 法である。なぜならば,デリパティプの歴史 的原価はゼロであり, しかも,デリパティブ はいずれもその公正価値相当額で決済または 売却される, というのである

ωo

また,デ リバティプが公正価値で測定されるとすれば,

それら公正価値の変動に伴う利得・損失は財 務諸表に認識されねばならないとした

ω

ただし,第

1 3 3

号はデリパティブの公正価 値測定を規定したのであって,全ての金融商 品 の 公 正 価 値 測 定 を 規 定 し た わ け で は な (10)。しかし,このことによってまた,へッ ジ会計の必要性も生じるのである。すなはち,

デリパティブ取引は公正価値で測定され,利 得・損失が認識される。しかし,公正価値変 動が損益に反映されない資産又は負債のへッ

ジ手段として用いられているデリパティブ取 引についても原則が適用されるとすればヘッ

ジ対象とへッジ手段の利得・損失が期間的に 対応しない。そこで,へッジの効果を財務諸 表に反映させるためには,へッジ対象とへッ

ジ手段の利得・損失を同ーの会計期間に認識 するへッジ会計が必要となるo もし全ての金 融商品が公正価値で測定されれば,へッジ対 象とへッジ手段の双方が公正価値をもって測 定され,その変動損益が同じ期間に対応する

ことになるというのである。

1 3 3

号は,デリパティブの公正価値の変 動損益に関する会計処理を,へッジとして指 定されているか,へッジ関係の一部分として 適格かどうかに依拠し,そして,もしそうな

(4)

らば,それを保有している理由に依拠すると して次のように整理した

{11〉0

a . へッジとして指定されていない場合:

へッジ手段として指定されないデリパティブ についての利得・損失は,当期に稼得利益で 認識する

o

b . 公正価値へッジ: 対象エクスポージャー は認識された資産・負債もしくは未認識の確 定約定(f i r mcommitment) の公正価値の変 動である

o

公正価値のへッジ手段として指定され,か っ適格なデリパティブについての利得・損失 はへッジされているリスクに帰属可能なへッ ジ対象の損益の発生と同じ期間に稼得利益に 認識する,とされる(凶

o

W i l s o n ,  A . C . ,  W a t e r s ,  G . a n d  B r y a n ,  B . J .  

は次のような事例を設ける ω o [設例]

X 社は, 1 9 9 9 年 1

1 日 , 8.5% 利付きの 3 年物社債 1 0 0 万ドルを発行した。これは固定金利債務である から,その公正価値は市場金利の変動につれて変 動する。この公正価値エクスポージャーをへッジ するために, 1 9 9 9 年 1 月 1 日に社債発行と同時に想 定元本1 0 0 万ドルの3 年間の金利スワップを締結し た。当スワップはX 社が想定元本についての固定 金利 ( 8 . 5 % ) を受取り,スワップ契約の相手方に同 じ想定元本についての変動金利を支払うよう指定 されている。両契約者はそれらの金利を交換する ことなく,差額を決済する。 X社は 8.5% の固定金 利を受取り, LIBOR を支払って決済し,毎決算日 に変動金利の再改定を行うことになる。スワップ 契約から受取る 8.5% は債務の 8.5% の金利の支払 いであり,会社はワップの変動金利のみを支払う のであるから,スワップ契約は結果的に固定金利 債務を LIBOR 変動金利債務と交換することになる。

さらに, LIBOR は 1 9 9 9 年 1 月 1 日に 8.5% ,そし て 1 9 9 9 年 1 2 月 3 1 日に 8% であったと仮定しよう。同 日,スワップの公正価値は 9 , 1 2 5 ドルで、あると仮定 しよう。これはX 社の純受取であるから資産を表 して表している。社債の公正価値は 1 , 0 1 0 , 7 1 3 ドル であると仮定しよう。社債の公正価値の変動額 1 0 , 7 1 3 ドルのうち, 8 , 9 1 5 ドルは金利の変動に起因 し,残りはデフォルト・リスクを反映すると仮定し

ょう。同社は 1 9 9 9 年 1 2 月 3 1 日に,次のような調整 仕訳を行うことになる。

(借)スワップ 9 , 1 2 5 貸)スワップ利益 9 , 1 2 5 (借)社債損失 8 , 9 1 5 貸)社債プレミアム 8 , 9 1 5 社債の公正価値の変動額は 1 0 , 7 1 3 ドルであるが,

金利エクスポージャーに起因する 8 , 9 1 5 ドルだけが 当期の稼得利益に認識される。 1 9 9 9 年 1 2

月3

1 日に おける社債の帳簿価額は 1 , 0 0 8 , 9 1 5 ドルで、あるから 債務の実効金利は 8% である。同社は残りの 2 年間 にわたり,実効利回り調整額としてプレミアムを 認識し, 2 0 0 0 年 1 2 月 3 1 日に次の処理を行う。

(借)社債利息 8 0 , 7 1 3 貸)現 金 8 5 , 0 0 0 社債プレミアム 4 , 2 8 7  

(借)現 金 5 , 0 0 0 貸)スワップ 5 , 0 0 0 支払利息の計上額は新たな利回り率 8% に基づい ている 0 , 0 0 8 , 9 1 5 ドル X8%=80 , 7 1 3 ドル)。スワッ プ契約は会社が受取る利息 8.5% と支払う LIBOR8

%との差額分を現金で受取っで決済される。

C.

キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー ・ へ ッ ジ : この 対象エクスポージャーには認識された資産又 は負債,あるいは予定取引 C f o r e c a s t e dt r a n ‑ s a c t i o n ) が含まれる。この場合,キャッシュ・

フローのへッジ手段として指定され,かっ適 格なデリパティプについての利得・損失の有 効部分は,その他の包括利益の構成要素(稼 得利益の外部)として計上し,繰り延べ,そ してへッジされている予定取引が稼得利益に 影響を与える期間に稼得利益に再分類される。

デリパティプについて残っている(非有効部 分の)利得・損失があれば,即時に稼得利益 で認識するとされる(凶。このように,予定取 引は確定約定とは区別され,後者が公正価値 へッジであるのに対して,前者はキャッシュ・

フロー・へッジに位置づけられたのである。

設例をもって示そう(則。

[設例]

1 9 9 9 年1 1 月 1 日 , X 社は Y 社の株式 1 0 0 , 0 0 0 株を

時価 5 0 ドルで取得する。同社はその株式を 2 0 0 0 年

の第 4 四半期に売却する計画である。株価の下落を

考慮し,行使価格が 5 0 ドルの株式のプット・オプショ

ンを購入し,各オプション株当り 1ドルのプレミア

ムを支払うとすれば,当社はこのオプションにつ

(5)

いて,まず次のように処理する。

[ 1 9 9 9 年 1 1

1 日]

(借)オプション 1 0 0 , 0 0 0

( 貸 ) 現 金 1 0 0 , 0 0 0 1 0 0 , 0 0 0 ドルは当該オプションの時間的価値要素 を表している。行使価格と時価とは等しいのであ るから,この時点で本源的価値は存在しない。

1 9 9 9 年 1 2 月 3 1 日,当株式の市場価格は 4 7 ドルで,

オプションの公正価値は 4 5 0 . 0 0 0 ドルで、あるとする。

オプションは現在各 3 ドル,総額 3 0 0 , 0 0 0 ドルほど インザ・マネーである。その他の 1 5 0 , 0 0 0 ドルは時 間的価値要素であり それはオプションがいかに 価値あるものとなるかの市場の見積りを表してい る。ステイトメント第 1 3 3 号はオプションを次のよ うに公正価値で評価することを要求している。

[ 1 9 9 9 年 1 2 月 3 1 日]

(借)オプション 3 5 0 , 0 0 0

(貸)未実現利益 3 0 0 , 0 0 0 稼得利益 5 0 , 0 0 0   オプション勘定は既に 1 0 0 , 0 0 0 ドルとして計上さ れているから,公正価値の変動分は 3 5 0 , 0 0 0 ドルで ある。この 3 5 0 , 0 0 0 ドルの変動額は当該証券の売却 に伴う期待将来キャッシュ・フローの累積的変動額 ( 3 ドル x100 , 0 0 0 株)を超過する。超過累積利益は 当期稼得利益に認識し, 3 0 0 , 0 0 0 ドルはその他の包 括利益に振り替えられ,資本の部に計上される。

この 3 0 0 , 0 0 0 ドルは証券が売却されるときに稼得利 益に振り替えられることになる。

d . 外 貨 へ ッ ジ : 外 貨 へ ッ ジ 手 段 と し て 指 定 を さ れ , か っ 適 格 な デ リ パ テ ィ ブ も し く

は 非 デ リ パ テ ィ プ に つ い て の 利 得 ・ 損 失 は 次 の よ う に 処 理 す る

(16)o

① 外 貨 建 の 確 定 約 定 お よ び 売 却 可 能 証 券 の 公 正 価 値 へ ッ ジ に お い て , へ ッ ジ 手 段 た る デ リ パ テ ィ ブ も し く は 非 デ リ パ テ ィ プ に つ い て の 利 得 ・ 損 失 と へ ッ ジ 対 象 た る 確 定 約 定 に つ い て の 損 失 ・ 利 得 は 同 じ 会 計 期 間 に 稼 得 利 益 に認識する。

② 外 貨 建 予 定 取 引 の キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー ・ へ ッ ジ に お い て , へ ッ ジ 手 段 た る デ リ パ テ ィ 7 '1こついての利得・損失の有効部分は,その 他 の 包 括 利 益 の 構 成 要 素 ( 稼 得 利 益 の 外 部 ) と し て 計 上 し , へ ッ ジ さ れ て い る 予 定 取 引 が

稼 得 利 益 に 影 響 を 与 え る 期 間 に 稼 得 利 益 に 再 配 分 す る

o

へ ッ ジ 手 段 に つ い て 残 っ て い る ( 非 有 効 部 分 ) 利 得 ・ 損 失 は 稼 得 利 益 で 認 識 する。

③海外事業体への純投資のへッジにおいて,

へ ッ ジ 手 段 た る デ リ パ テ ィ ブ も し く は 非 デ リ パティフーについての利得・損失は,それがへッ ジ と し て 有 効 で あ る 範 囲 内 で , 累 積 換 算 調 整 の 一 部 分 と し て , そ の 他 の 包 括 利 益 に 計 上 す る

o

設例でみよう(1

7)

[設例]

1 9 9 9 年 1 月 1 日 , X 社は外国企業である F 社に純投 資を有し,その額は 1 0 0 百万 LCU である。このエ クスポージャーをへッジするために, X 社は 2 0 0 1 年 1 2

3 1 日に 1 0 0 百万 LCU を売却する先渡契約を 締結した。もし年度末までに交換レートが下落す れば,純投資額も減少し為替差損が発生するが,

これはその他の包括利益に振り替える。しかしな がら, X 社の先渡契約を決済するための LCU の購 入価格は 1 9 9 9 年 1

1 日に固定された売却価格を下 回る。先渡契約は純投資の有効な経済的へッジで あるから,先渡契約に基づく差益をその他の包括 利益に振り替えることになる。これらの損益は 1 0 0

%へッジにみえても完全に相殺されることはない。

換算差損益はもっぱら直物レートの変動に基づい ているが,純投資をへッジする先渡契約は割引価 値を考慮に入れているからである。

以 上 が 損 益 認 識 と へ ッ ジ 会 計 基 準 の 要 点 で ある

o

か つ て , 多 く の デ リ パ テ ィ プ は 当 初 の 現 金 投 下 を 必 要 と し な い こ と か ら 財 務 諸 表 上 認 識 さ れ な か っ た 。 ま た , そ れ が 認 識 さ れ る 場 合 で も , デ リ パ テ ィ プ に 関 す る 未 実 現 損 益 は 当 期 の 利 益 と し て 認 識 さ れ る こ と な く , 繰 り 延 べ ら れ た 。 新 ア プ ロ ー チ は デ リ パ テ ィ プ の 貸 借 対 照 表 計 上 と 公 正 価 値 測 定 を 規 定 し た の で あ る ( ヘ 特 に , 確 定 約 定 を 公 正 価 値 ヘ ッ ジ の 対 象 に 含 め る こ と は

GAAP

上 は 認 め ら れ る こ と は な か っ た 契 約 の 資 産 ・ 負 債 計 上 を も たらすこととなったのである(1

9)

ところで,

FASB

と し て は , 貸 借 対 照 表 上

の 全 て の 金 融 商 品 が 公 正 価 値 で 測 定 さ れ る よ

(6)

うな会計モデルへの転換がへッジ問題の最も 優れた概念的解決法であるoだが,この時点 で全ての金融商品の公正価値測定を求めるこ とは適当ではなく,この問題は別個のフ。ロジェ クトで追求される,という(問。

(1)

前掲『意見書

J m

の三の

( 3 )

(2)  r

意見書』同四の

1

(3)  r

意見書』周囲の

2

(4)  r

意見書』同四の

4

(5)  r

意見書』同六の

4

の(1)。

(6)  r

意見書』同六の

4

( 2 )

(7) FASB

, 

SFAS No. 1 3 3

, 

o p .  c i t .

, 

p a r a . 3 a .   (  8) I b i d . ,  p a r a . 3 b .  

(9) I b i d . ,  p a r a . 2 2 9 .   ( 1 0 )   I b i d . ,  p a r a . 3 3 3 .   ( 1 1 )  I b i d . ,  p a r a . 1 8 .   ( 1 2 )   I b i d . ,  p a r a . 1 8 b .  

( 1 3 )   Wilson

, 

A.C.

, 

Waters

, 

G.and Bryan

, 

B .   J . ,  The D e c i s i o n  on D e r i v a t i v e s ,  FASB  Statement  n o . 1 3 3   e s t a b l i s h e s   compre‑

h e n s i v e  a c c o u n t i n g  r e q u i r e m e n t s .  J o u r ‑ nαl  0 1  Account α ncy

, 

November 1 9 9 8

, 

p  p . 2 6 ‑ 2 8 .

これは,(田中建二著『時価会計入 門』中央経済社,平成1

1

8 5

頁)において詳 細に検討されている。

( 1 4 )   FASB

, 

o p .  c i t .

, 

p a r a .  1 8 c .  Wilson

, 

A. C .   and Smith

, 

G. R.

, 

Proposed Accounting  f o r  D e r i v a t i v e s : D o e s  i t   Adress t h e  Con‑

c e r n s  o f  C u r r e n t  Accounting? Accoun‑

t i n g  Horizons

, 

Vo l . 1 1

, 

No.3

, 

September  1 9 9 7 ,  p . 7 7 .  

( 1 5 )   Wilson

, 

A. C .

, 

Water

, 

G.and Bryan

, 

B .   J . ,  o p .  c i t . ,  p . 2 7 .  

( 1 6 )   FASB ,  o p .  c i t . ,  p a r a . 1 8 d .  

( 1 7 )   Wilson

, 

A. C .

, 

Water

, 

G. and Bryan

, 

B .   J .

, 

o p .  c i t .

p . 2 8 .  

( 1 8 )   Wilson

, 

A. C

, 

and Rasch

, 

R. H.

, 

New  Accounting f o r  D e r i v a t i v e  and Hedging  A c t i v i t i e s ,  The CPA JOUTnαl ,  O c t o b e r   1 9 9 8

, 

p . 2 4 .  

( 1 9 )   Royall

, 

R. I I   and S t o n e

, 

G.A.

, 

Guide t o   t h e  New FASB Statement on D e r i v a t i v e s   and Hedging

, 

The Jour

γω

l  0 1  Corpor α t e   Accounting αndFin α n c e ,  Summer 1 9 9 8 ,  p . 1 3 .  

( 2 0 )   FASB.  o p .  c i t . ,  p a r a . 3 3 3 .  

3 .   ASB における時価評価と損益認識

(1)金融商品の時価評価と損益処理

イギリスにおける時価評価とその損益の認 識と処理法をASBの『討議資料

J I

デリパティ

プとその他の金融商品

J

l)によって検討しょ つ。

ASB

は,現在の歴史的原価システムは金融 商品に関しては, もはや発展性を有しない。

ま た , 金 融 商 品 が カ レ ン ト 価 値

( c u r r e n t v a l u e )

をもって測定されなければ,その利 得・損失も見過ごされる。かくて,

ASB

全ての金融商品をカレント価値をもって測定

し,それに伴う利得・損失をその発生時に認 識するという一般原則を示した(2)o このよ うに,

ASB

の時価評価は全ての金融商品を対 象とするが,全ての変動損益を損益計算書に 含めるのではない。全ての利得・損失をその 発生時の損益計算書に計上するのは不適切で あり,損益をどこに報告するかはカレント価 値による金融商品の測定にとって本質的であ

るという

ωo

ASB

の結論は,価値変動損益の一部は損益 計算書に計上し,その他は総認識利得損失計 算書(

t h estatement of t o t a l  r e c o g n i s e d  g a ‑ i n s  and losses:STRGL)

に含めるとするo

すなはち,

ASB

は次の

4

つの選択肢のうち,

暫定的に,

b .

のアプローチをとるというの である

ω

a .

全て損益計算書で報告する方法,

b .

ある利得及び損失は損益計算書に計上し,そ の他の利得及び損失はSTRGLに計上する方

c

ある利得及び損失は当初貸借対照表の項目内 に計上しておき,それが実現したときに損益 計算書に「再分類」する方法,

d .

当初STRGLに計上しそれが実現する将来 期間に損益計算書に「再分類

J

する方法。

(7)

では,その損益の区分はいかになされるの

ASB

は「公開草案」において

STRGL

計上されるべき損益について次のような原則 を示した

ω

「主要に企業の持続的営業活動を可能とするため に継続して保有される資産・負債について生じる損 益は損益計算書ではなく,総認識利得・損失計算書 で報告されるべきである。その他の損益はすべて損 益計算書に報告されるべきである。

J

これは,現在の実務でいえば,二つの主要 な項目として,固定資産の再評価から生じる 損益,海外事業体への純投資の換算差損益が 上げられるという

ωo

では, この原則はい かなる金融商品に適用されるのか。

STRGL

に適格な最も基本的な金融商品は金利の変動 に伴う固定金利債務の価値変動がその例であ るとされるoすなはち,固定金利債務は固定 資産の対照物とみることができ,

r

それは営

業活動の成果というより,むしろ,主要に企 業の持続を可能とするために保有される」と いう(7)o また,報告企業によって発行され た非持分証券も固定金利債務と同様に取り扱 うべきであるo すなはち,金利変動に伴う価 値変動は

STRGL

に計上され,これは実現ま た未実現損益の両方に適用されるとするo た,利子費用は損益計算書にそのまま計上さ れることになるo さらに,金利スワップのよ うに,債務を固定金利から変動金利へ,また その逆にというように用いられる金融商品に 限っては,その価値変動は

STRGL

で認識さ れることになる

ωo

また,海外事業体への純投資の換算差額が 発生することがあれば

STRGL

に認識される ことになる。このように海外事業への投資の 換算リスクに備えるために用いられる通貨デ リパティブや外貨建債務に関する換算差損益

STRGL

に表示される∞o

そして,その他全ての価値変動損益は損益

計算書上に認識されるO 特に,売却目的,投 機目的,あるいは投資目的で保有される金融 商品の価値変動は損益計算書に計上するとし たのである(10)

( 2 )   ASB

におけるヘッジ会計の位置づけ

ASB

は制限をもうけながらも,一定のへッ ジ会計を容認するo

r

討議資料』はへッジ会

計 が 用 い ら れ る 要 因 を 次 の よ う に 整 理 す (11)0

①測定上の差異:すなはち,認識された保 有資産又は負債であって,へッジ手段及びへッ ジ対象の双方が財務諸表上に認識されるが,

測定基準が異なっている場合。

②認識上の差異:確定契約

( f i r mc o n t r a c t ‑ s )

から生じる将来キャッシュ・フローのへッ

ジであって,へッジ対象は保有資産又は負債 であるが,財務諸表上に認識されない場合。

③保有上の差異:未契約の将来取引

( u n ‑ c o n t r a c t e d  f u t u r e   t r a n s a c t i o n s )

から生じ

る将来キャッシュ・フローのへッジであるが,

へッジ対象ポジションに関して未だ何らの資 産又は負債も保有されていない場合。

これらのうち,①の測定上の差異は,全て の金融商品が同じカレント価値で測定され,

損益が全てその発生時に計上されるとすれば,

このケースは大幅に減少することになる。議 論が集中するのは,いわゆる「将来取引」に 係る②および③のケースである(12)が,結局,

ASB

メンバーの見解は三つに分かれるとい

{ m

o第一は,へッジ会計は全く用いられ るべきではないとする見解であるo第二は,

原価で測定されている資産及び負債のへッジ と,確定約定を認めるというものである。第 三は,第二の見解に加えて,確定した契約で はないが,経営活動上履行を拘束されている 将来取引のへッジも認めるというものである。

これら

ASB

の観点は,次のように,

FASB 

(8)

のそれとの比較において明確となる

ω o

①まず,

FASB

の公正価値測定の提案がデ リパティブに関してのみであるのに対して,

ASB

のそれはデリパティプを含む全ての金融 商品を対象としていることであるo したがっ

ASB

におけるへッジ会計の比重は

FASB

のそれに比べ相対的に小さいものとなる。

②FASBは変動金利債務をキャッシュ・フ ロー・エクスポージャーとみなす。したがっ て,変動金利債務から固定金利債務に変換す るスワップ取引はキャッシュ・フロー・へッ ジに区分され,その損益は,その他の包括利 益に計上され,のちに稼得利益に振り替えら れる。一方,固定金利債務を公正価値エクス ポージャーとして分類するo したがって,債 務を固定金利から変動金利に変換する金利ス ワップは公正価値へッジとして分類され,そ の損益は固定金利債務の損益と共に稼得利益 に計上される。これに対して『討議資料』で は,全ての債務及びこれに関連するデリバティ フ守について生じる損益は共にその他の包括利 益/STRGL'こ表示すべきとするo

③FASBは契約されたもの, また未契約 (予定の〉のもの全ての将来取引のへッジに 関してへッジ会計を要求するo ~討議資料』

は契約によって,あるいは経営活動上で履行 することを拘束されているものに限って将来 取引にへッジ会計を認めるo

④FASBはその他の包括利益を予定取引の へッジに伴う損益の一時的な「貯水槽」とし て用いているo それら損益は予定取引が履行 される後の期間に稼得利益に再配分される。

これに対して,イギリスでは,

i

財務業績の 報告

J (財務報告基準第 3

号)によって,ある項 目が,一旦STRGLに計上されたからには,

それは当期業績の一項目として計上されたの であって,後の期間に損益計算書に再び計上 されることはない。

(  1) ASB ,  D i s c u s s i o n  Pα

:p

e r  i n  i s s u e ,  D e r i v a ‑ t i v e s  and o t h e r  F i n a n c i a l  I n s t r u m e n t s ,  J u l y  1 9 9 6 .  

(2) I b i d .   , p a r a . 2 . 5 . 2 .   (3) I b i d .  

p a r a . 2 . 5 . 3 .   (4) I b i d . , p a r a s . 3 . 2 . 1 ,  3 . 2 . 1 3 .  

(5 )  ASB

, 

Exposure  Dr α

'f

t

, 

S t a t e m e n t   o f   P r i n c i p l e s  f o r  F i n a n c i a l  Reporting ,  No‑

vember 1 9 9 5 , p a r a . 6 . 2 7 .  

(  6) ASB

, 

D i s c u s s i o n  Pα : p e r  i n  i s s u e

, 

o p .  c i t .

, 

p a r a . 3 . 3 . 3 .  

(  7)  I b i d .   , p a r a . 3 . 3 . 6 .   (  8)  I b i d .  

p a r a . 3 . 3

.1

0 .   (9) I b i d . , p a r a . 3 . 3 . 1 9 .   ( 1 0 )   I b i d .  

p a r a . 3 . 3 . 2 7 .   ( 1 1 )   I b i d .   , para

.4

. 3 . 2 .   ( 1 2 )   I b i d . , para

.4.1.

6 .   ( 1 3 )   I b i d . , para

.4

. 3 . 1 9 .   ( 1 4 )   I b i d .   , p a r a . 3 . 5 .  

4 .   I A S C f

こおける時価評価と損益認識

(1)基本原則

IASC

の金融商品会計の基本的方向性から 検討しようo金融商品の損益認識に関するI

ASC

の見解は,

1 9 9 7

年に表された『テeイスカッ

ション・ペイパー

J i

金融資産及び金融負債 の会計」ωに示されているo 同書のいう「金 融資産及び金融負債の公正価値の変動から生 じる全ての損益は利益Ci

ncome)

であり,

その発生時に利益に認識されねばならない」

というのが基本方向である(2)o

つぎに,へッジ会計について, ~ディスカッ ション・ペイパー』は,まずへッジ会計が用 いられる場面,すなはち,へッジ対象を次の ように整理している

ωo

①予定の非約定取引のへッジを反映させる 場合で,これは予定の未契約の将来取引にお ける将来キャッシュ・フローのへッジのため 金融商品が取得された場合であるoこの場合,

へッジ対象ポジションに関して資産,負債は

(9)

認識されていない。

②測定上の差異に基づく場合で,ヘッジ手 段とへッジ対象が同じ基準で測定されない場 合に生じる。

③認識上の差異に基づく場合で,かかる差 異はへッジ手段は認識されているが,へッジ 対象が認識されていないか,その逆である場 合であるo例えば,先物契約のような認識さ れた金融商品が通常の会計実務では認識され ない購入確定契約の価格リスクをへッジする ために取得されたような場合であるo

ただし,これらについて,予定の非約定取 引のへッジに関し,原則論でいえば,決算日 において確定約定が存在しない将来取引は当 期における会計的認識の基礎を有しない。予 定の非約定取引のへッジは当初認識において 公正価値で測定するという原則とも一貫性を 有しないという(4)o

これらへッジ対象のうち,保有資産・負債 のへッジについては,全ての金融商品が公正 価値で測定されるとすれば,測定上の差異か ら生じる潜在的な非対応は現在よりかなり小 さいものになろう。これが全ての金融商品の 公正価値測定と全ての損益をその発生時に認 識するという原則の一つの根拠となっている

という。しかしこれらの原則が直接に基準化 されたわけではない。

( 2 )   I A S

3 9

号における評価規定と損益認識

1 9 9 8

6

月に,

I A S C t

ま「公開草案」第

6 2

「金融商品:認識および測定

J( E 6 2 )

を表し たがベこれは,

1 9 9 8

1 2

月に

IAS

3 9

「金融商品:認識および測定J(6)として公表 された。ただし,同

3 9

号は金融資産及び金融 負債の全面的な公正価値測定と価値変動の損 益計算書での認識という前掲の『ディスカッ

ション・ぺイパー』で示された「包括基準」

に向けた過渡的性格の「暫定基準」であるが,

そのことを踏まえて,同号の考え方に則して 検討しよう。

①認識と測定企業は金融商品を含む契約の 当事者となった時点で,金融資産及び金融負 債を貸借対照表上で認識しなければならない と,デリパティプを含めてオン・バランスさ れるというのが原則である。すなはち,企業 はデリパティブに関する全ての契約上の権利,

義務を貸借対照表上に資産,負債として認識 することになる

m

測定については,金融資産及び金融負債の 当初認識は,金融資産及び金融負債が当初認 識される時点では原価,すなはち,企業は支 払われた対価または受け取った対価の公正価 値で測定する(8)。金融資産の当初認識以降 の測定は,企業の保有目的に基づき次のよう に区分して規定される(9)o

( a )

満期保有の投資: これは償却原価法で 測定する。

( b )

トレーディング目的で保有する資産:

公正価値で測定し,その変動損益は損益計算 書で認識するo

( c )

売却可能投資: 公正価値で測定し,そ の変動損益は企業の選択により,損益計算書 文は資本の部で認識するo

( d )

自ら作りだした貸付金及び債権(トレー ディング目的で保有されるものを除く) 償却 原価で測定する(アモチゼーションやアキミュ

レーションは損益計算書で認識)。

( e )

市場での公表市場価格が得られないか,

その公正価値が信頼性をもって測定できない 金融資産: 原価又は償却原価で測定する (アモチゼーションやアキミュレーションは損益計 算書で認識)。

また,金融負債の当初認識以降の測定も企 業の保有目的によって,二つに区分されるo ¥ 

( a )

次の

( b )

を除く全ての金融負債は償却原価 で測定するo

(10)

( b )

トレーディング金融負債及び負債たるデ リパティブは公正価値で測定する。

以上にみたところから,へッジ関係にない 金融資産・負債の公正価値変動に伴って発生 した利得・損失の処理法を整理すれば,

( a )

レーディング目的の金融資産・負債の公正価 値の変動から生じる利得・損失は,発生した 期の損益計算書で認識するo また,

( b )

売却可 能資産から生じる利得・損失については,発 生した期の損益に含めるか,資本の部の独立 項目として計上し当該金融資産が売却,回 収または処分されるか,また,減損が決定さ れる年度まで据え置くという,いずれかの方 法によるとしたのである

( 1 %

② ヘ ッ ジ 会 計 第3

9

号は,へッジ関係を

( a )

正価値へッジ,

( b )

キャッシュ・フロー・へッ

( c )

在外事業体への純投資のへッジに区分 し,その会計処理を次のように規定する

ω

( a )

公正価値へッジ: これは,貸借対照表 に認識されている資産又は負債,または,そ のような,資産又は負債の特定部分の公正価 値の変動で,特定のリスクに帰属するエクス ポージャーのへッジをいうoすなはち,貸借 対照表上の資産又は負債で金利・為替・価格 の変動リスクのうち,ある特定のリスク部分 を対象とするヘッジである

ω o

この場合,へッジ手段の公正価値測定によ る利得・損失は,発生時に損益計算書で認識 するo一方,へッジ対象の損益のうちへッジ されたリスクに帰属する部分は,当該へッジ 対象の簿価を修正し,かっ損益計算書で、認、識 する(13), とするo

( b )

キャッシュ・フロー・へッジ: 認識さ れた資産又は負債に関連する特定のリスクか ら発生する将来キャッシュ・フローの変動 (例えば,変動利付債務の将来金利支払の全部また は一部),あるいは予定取引(例えば,将来見 込まれる購入または販売取引), また, ある資

産を一定の価格で購入するという確定約定は 公正価値エクスポージャーの特徴を持つが,

キャッシュ・フロー・へッジとするo

この場合,へッジ手段に生じた利得・損失 のうちへッジとして有効と認められる部分は,

株主持分変動計算書を通じて直接資本の部で 認識するoへッジとして有効と認められない 部分はへッジ手段がデリパティプの場合には,

発生した期の損益として認識する。ただし,

へッジ手段がデリパティプでない場合は,当 該へッジ手段の損益は,損益計算書で認識さ れるか,または直接資本の部で認識される。

このように,キャッシュ・フロー・へッジ においては,ヘッジ手段に焦点が置かれ,へッ ジ手段の公正価値測定による変動損益を資本 の部に計上し,繰り延べるのである。

( c )

在外事業体への純投資のへッジ: キャッ シュ・フロー・へッジと同様の会計処理を行 うとされる(叫。

これらのへッジ規定のうち注目されるのは,

FASB

のSFAS

1 3 3

号と

IAS

3 9

号との確定 約定の扱いの差異であるo前者においては,

確定約定は価格と数量が決まっているところ から,公正価値変動リスクのエクスポージャー のへッジ,すなはち,公正価値へッジとして 位置づけた。これに対して,

IAS

3 9

号では 確定約定自体は実務上資産・負債を認識しな いのに対して,ヘッジ対象としてのそれの公 正価値の変動を資産・負債として認識するこ とを避ける意味から,キャッシュ・フロー・

へッジに位置づけるとしたことである。

(  1 )  IASC

, 

D i s c u s s i o n   Pα : p e r .   Accounting  f o r  F i n a n c i a l  A s s e t s  and F i n a n c i a l  L i a ‑ b i l i t i e s .  March 1 9 9 7 .  

(2) I b i d .

, 

Chapter 6

, 

p a r a .  5 .

1. 

(3) I b i d . ,  para

.4

. 1 0 .  

(4) I b i d . ,  para

.4

. 1 4 .  

(5) IASC ,  Exposure Dr α ' ! t ( E 6 2 ) ,  F i n a n c i a l  

(11)

I n s t r u m e n t s : R e c o g n i t i o n  and Measure‑

ment

, 

J  une 1 9 9 8 .  

(6) IASC ,  IASNo.39 ,  F i n a n c i a l  I n s t r u m e n t ‑ s : R e c o g n i t i o n   and Measurement ,  De‑

cember 1 9 9 8 .   (7) I b i d . ,  p a r a . 2 7 .   (8) I b i d . ,  p a r a . 6 6 .   (9) I b i d .

, 

p a r a . 6 9 .   ( 1 0 )   I b i d . ,  p a r a . 1 0 3 .   ( 1 1 )   I b i d . ,  p a r a . 1 3 7 .   ( 1 2 )   I b i d . ,  p a r a . 1 3 7 .   ( 1 3 )   I b i d . ,  p a r a . 1 5 3 .   ( 1 4 )   I b i d . ,  p a r a . 1 3 7 .  

おわりに

以上,国際会計基準をはじめ,各国会計基 準における金融商品の評価規定とその評価差 額の処理基準の比較・検討を行った。それら の諸特徴を要約しよう。

第一に,それら会計基準のうちには,デリ パティプを含む全ての金融商品の認識と測定 を規定したものもあれば(例えば,

IASC

及び

ASB)

,直接にはデリパティブを規定したも のもある(例えば,

FASB)が,基本的には,

金融商品の公正価値測定を基底に据えながら も,一方に過渡的性格を有していることであ る。伊

3

えば,

IASC  r

ディスカッション・ペ

イパー』は,金融資産及び金融負債をすべて,

その保有意図にかかわらず公正価値で測定し,

その変動損益を,その発生時に利益として損 益計算書で認識することを原則として提起し たのである

ωo

これが今後予定される金融 商品会計の「包括基準」のベースとなる考え 方を示すものであるとされている。かかる意 味からして, ここに分析した

SFAS

1 3 3

も,またIAS第3

9

号も当初から「暫定基準」

として位置づけられており,わが国『意見書』

の性格もその例外ではないとみられるのであ

o

このような金融商品会計の過渡的性格から,

これら諸基準の測定基準の特徴は,全ての金 融商品の時価評価を原則としながらも,

i

営者の保有意図」に基づいた区分処理を規定 していることであるo例えば,

IAS

第3

9

号の 場合,金融資産については公正価値による測 定を基礎としながらも 償却原価での測定 (例えば,満期保有投資)を認めており,また金 融負債については償却原価を原則とし,公正 価値測定(トレーデイング金融負債及びデリパティ

プ契約)を規定したのであるo

だが,すくなくとも,全てのデリパティブ を資産,負債として認識し,その公正価値を もって測定するという要請は,その結果とし ての実現,未実現損益が財務諸表上に表示さ れねばならないがその主要な 受け皿' と なるのが,包括利益アプローチとへッジ会計 の採用である

ωo

かくて,特徴の第二は,公正価値測定に伴 う金融資産又は金融負債の公正価値変動損益 の取扱いについて前述の区分評価の対局に 区分表示という,いわゆる「包括利益

j

といっ た損益計算書外項目の概念が(我が国「意見 書」を除いて)用意されていることである

ω

例えば,

IAS

によれば,すべての金融資産 (満期保有のもの及び公正価値の測定が不可能なも のを除く)を公正価値で測定し,評価損益は

①売買目的の金融資産に係るものは損益計算 書に計上する一方②売買目的以外で保有す る金融資産に係るものは,

i)損益計算書に

計上するか,

i i )

株主持分変動計算書を通じ て資本の部に計上し,金融資産の売却時に損 益計算書に計上する方法のどちらかの選択を

i

忍めたのである。

第三に, これら金融商品会計基準の最後の 特徴は,へッジ会計の必要を認め,繰延へッ ジ会計を排し(4) へッジ会計を3つに区分 したのである。例えば,

SFAS

1 3 3

号はデ

(12)

リパティプは全て公正価値をもって測定し,

その結果生じる損益は,まず,へッジ目的で ないものは全て当期の稼得利益に含める。そ して,へッジ目的のものは,公正価値へッジ,

キャッシュ・フロー・へッジ,外貨へッジに 区分し, このうち,適格な公正価値へッジに 係る損益(へッジ対象についてはへッジされたリ スクに帰属する部分)は当期の稼得利益に含め,

キャッシュ・フロー・へッジの有効部分及び 外貨へッジのうち外貨建予定取引のへッジの 有効部分については,これをその他の包括利 益に計上し,再分類調整するとしたのである。

いうまでもなく,現在の会計モデルを前提 とするかぎり,へッジ会計は避けられない。

へッジ会計に替わる方法は金融商品の認識と 測定の差異を無くすことである

o

すなはち,

へッジ会計に替わる方法がすべての金融商品 を認識し,公正価値をもって測定することで あ る と す れ ば ∞ , へ ッ ジ 会 計 も ま た 過 渡 的 制度のものといえよう

o

(  1) IASC ,  D i s c u s s i o n  Pα per ,  o p . c i t . ,  Chap‑

t e r  1 ,  p a r a . 5 . 5 ,  Chapter 6 ,  p a r a . 5 . 1 .   (2) Johnson ,  L . T .  and Swieringa ,  R . J . ,  De‑

r i v a t i v e s ,  Hedging and Comprehensive  Income ,  Accounting Horizons ,  Vo l . l O ,   No

4 .

December 1 9 9 6

, 

p .   1 1 8 .  

(  3  )  FASB ,  SFASNo.130 ,  Reporting  Com‑

p r e h e n s i v e  Income ,  June 1 9 9 7 ,  Appendix  A , para

.4

8 .  

(4) IASC ,  o p .  c i t . ,  Chapter6 ,  para

.4

. 7 .   (5) Johnson ,  L . T .  and Swieringa ,  R . J . ,  o p .  

c i t . ,  p . 1 1 6 .  

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