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ドイツの証券取引開示規制と商法改正

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(1)

論 説

ドイツの証券取引開示規制 と商法改正

一国際的証券市場への対応とその問題について一

佐 藤 誠 二

    

1980年代後半以降、ヨーロッパの証券市場 はEU(欧州連合)統合 とい う大 きな 目標 に向か っ て急速 に変貌 して きている。1992年EC(欧州共同体)市場統合 を経 て、1993年 11月 のマ ース トリヒ ト条約の発効 によ り成立 した15カ国か らなるEUは、相 互承 認 (mutual recognition)原 則の もとに証券市場 について も国際的競争力ある域 内統合市場 (internal market)を 加速 的 に 成立 させ る過程 にある。そ して、この証券市場統合 を生み出す上で、基礎 となる取引所法規定 の 調和化がはか られて きた。取引所取引の上場認可、 日論見書 の 開示 、投資家へ の継続 的情報 開 示、インサ イダー取引の回避、等 に関す る一連のEU指令の域 内諸国法への転換がそれである。

こうした欧州の証券市場統合の流れの中で、国際的競争能力ある市場機構 を構築す るため、域 内諸国内の取引所機構 の組織的・技術的変更が不可欠 とされた。 ドイツにお いて も、DAX(ド

イツ株価指数)の導入 (1988年)、 IBIS(取引所のオ ンライ ン統合 取引・情報 システム)の開設 (1991年)ド イツ証券取引所株式会社 の創立 (1993年)、 新規 (店)市場の創設 (1996年)等々、

国際的証券市場 に対する ドイツ市場 の競争力 を高め る機構改革が急 速 に実現 されて きた。1)そ て、かかる市場機構 の改革 とともに、 ドイツの取引所法 (Bbrsengesetz)も 改正 された。 ドイツ では証券市場規制 に係 わるEU理事会指令 を1986年に国内法 に転換 し、1896年旧取 引所 法 、1910 年旧取引所上場認可命令 を大幅 に改正 した。その後、この1986年取引所法 と取引所上場認可命 令 は、金融市場の国際的展開に統合す るため、 ドイツ版 ビッグバ ンを押 し進める金融市場促進 法 と 平行 して1989年1996年に部分改正 し今 日に至 っている。

本稿で取 り上 げるのは、 こ う した経緯 に よ り成立す る現行取 引所 法 と取 引所上 場 認可命 令

(2)

(1996年時点)に基づ く証券取引開示規制である。この ドイツにおける証券取 引 開示規制 につい ては、これ まで我が国ではほ とん ど取 り上げ られて こなかった といって よい。従来、 ドイツ企業 の資本調達が銀行支配のなかで間接金融方式 に依存 し、また、 ドイツの証券市場が英米 とくにア メリカの証券市場 に比べて未発達であ り、開示規制 について もさほ ど厳格 な ものでなかったこ と がその一因であろう。 しか し、EUが域 内諸国の証券市場の統合 を目指す過程 の なかで、 ドイツ において も国際的競争力ある市場活力の向上 を図つて、市場の よ り透明性 を求めた開示規制の見 直 しが行 われて きた。それは ビッグバ ン構想の中で 日下、進展 している我が国の会計制度改 革 と 相通 じるところがある。そこで、以下では、比較制度論の立場 に立 って も検討する余地のあ る ド イツにおける証券取引開示規制の内容 について現行法規 を跡付 けなが ら考察す る。ただ し、取 引 所法お よび取引所上場認可命令 は、我が国の証券取引法お よび財務諸表等規則 とは異 な り、年度 決算書等の会計書類の作成、表示 に関 して具体的会計規準 を有 していない。それ を担 うのが商法 会計法 (商法典 における会計規準)である。周知の ように、 ドイツにおける会計規制は商法会計 法 を中心 に して、株式法、有限会社法、協 同組合法、開示法 、信用制度法、保険監督法 、所 得税 法等 にお ける各種会計規制がそれ と関連 しあ う、ひとつの法体系 を形作 つている。取引所法 も例 外ではな く、商法会計法 との強い連携 の もとに開示規制が構成 されてお り、 ドイツの場合、取 引 所法改革 は商法改正 と交錯 して実施 されて きた。従 って、本稿では、直接的 には、現行の取 引所 法 を中心 とした開示規制の内容 を取 り上げるが、近年の商法改正の動向 と絡 めなが ら、それが 国 際的証券市場 に向けて どう対応 し、 また どの ような問題 を生 じせ しめているのか について検討 し てみたい。

2)

ドイツの証券取 引市場の区分

ドイツにおける証券取引市場 は、1987年取引所法の改正以降、公式市場 、規制市場 、 自由市場 3つの区分 (Segument)から構成 される。さらに1997年か らは中小規模 のベ ンチ ャー企業 を 対象 とす る新規市場が加 えられた。証券取引市場 における開示規制の内容 は、それ らの市場 区分 に応 じて異 なる。そ こで、証券取引開示規制 を取 り上げる前 に、まずは、各市場 区分 につ いて概 括的に考察 してお こう。

3)

(1)公式市場 (Amtlicher Handel)

取引所法第36条1項は、「取引所 に対 して取引所価格の公式確定 (公式登録)が行 われ るべ き

(3)

有価証券は、第41条もしくは他 の法律 に別段の定めがない限 り、認可 を必 要 とす る。」 と してい るが、この公式登録 に基づ く取引市場 は公式市場 と呼ばれ、 ドイツにおいて、国内外の大企業 の 有価証券取引 を対象 とす る国際的 に も認め られる市場 である。公式市場 における有価証券の認可 前提 として、公衆の保護及び正規の取引所取引に求め られる諸条件 を有価証券の発行者が満た し ていること、公衆が発行者及び有価証券 に対す る適切 な判断を しうる必要記載事項 を含 んだ 目論 見書 (PrOspekt)が申請書 に添付 されること、認可 に際 して公衆 を欺いた リー般 の利害 に著 し く 侵害す る状況がみ られない こと、が規定 される (取引所法第36条3項)。 この公式市場 に関 して、

取引所法第38条 1項は、連邦政府が法規命令 によって連邦議会の議決 を得た上で公衆の保護及 び 正規の取引所取引のため、認可の条件 、 日論見書の記載事項 、 日論見書の開示時期、認可 方法 を 定めることがで きる としてお り、この規定 を根拠 に して、「有価証券取 引 に対 す る公式登録 に関 す る有価証券認可命令 (取引所上場認可命令)」 (以下、取引所上場認可命令 と呼 ぶ 。)が存 在 す る。さらに、この「取引所上場認可命令」において、上場認可の具体的前提が規定 されるが 、そ の主たる ものをあげれば次の とお りである。

一新規 に認可 されるべ き株式の予定相場価値tその見積が可能でない場合 は株式の認可 され る 会社の商法典第266条3項Aの意味での 自己資本が最低 、250万 ドイツマル クなければな らな (取引所上場認可命令第2条1項)。

一株式以外の有価証券の認可 については、総券面額が最低50万マルクでなければならない (取 引所上場認可命令第2条 2項)。

一認可 される株式の発行者 は最低3年、企業 として存在 し、年度決算書 を開示 していなけれ ば ならない (取引所上場認可命令第3条)。

一認可 される株式 は、欧州経済共同体の加盟国 もしくは欧州経済圏の契約国のひとつ もしくは 複数 における公衆 に十分 、すなわち総券面額の最低で も25%は分布 していなければな らない (第9条)。

なお、のちに述べ るように、開示規制 との関係では公式市場 に有価証券 を上場する企業 (発 )は、 日論見書の提 出 とともに年度決算書 、状況報告書お よび中間報告書 (Zwischenbericht) の継続的開示が義務づけ られる。

(2)規制市場 (Gerogelter Markt)

有価証券 は取引市場 において公式登録 によつて認可 されない場合、非公式市場 、つ ま り規 制市 場 において も上場認可 されることがで きる。 この規制市場 における有価証券の上場認可の主要 な

(4)

前提 は、発行者及び有価証券が正規の取引所取引にとって必要である要件に合致 していること.、

公衆の投資意思決定 にとって実質的意義 を有する発行者及び有価証券に関する記載事項 を含んだ 企業報告書 (Unternehmensbericht,公 式市場の 目論見書に相当する。)を認可 申請 に際 して添付 す ることである (取引所法第73条 1項)。 この規制市場 における上場認可の ための必要要件 、企 業報告書の記載事項、開示の時期 と形式、認可方法、取引所価格の確定 と開示、等に対す る詳細 は取引所規則 (B6rsenOrdnung)に規定 される (取引所法第72条)。 ただ し、発行者たる企業の最 低存続期間については規定はな く、公式市場の ように中間報告書の開示義務 も存在 しない。規制 市場 は とくに、振興企業の市場参画のために存在す る もの とされる。

(3)自由市場 (Freiverkehr)

公式市場 において も規制市場 において も認可 され ない有価証券 は、取引施行規則 (Handels―

richtlinien)に基づ き、正規の取引遂行、事業発展が保証 される と認め られ る ときに 自由市場 に おいて も上場認可が可能である (取引所法第78条)。 自由市場 は、例 えば、 フラ ンクフル ト証券 取引業者協会が取 り決めるような私法上の取引所規則 を法的基礎 とする市場区分である。この市 場では形式的な認可前提 はほんの僅か しか適用 されず、広範囲のオプシ ョン取引 と外国株式が取 り引 きされている。ただ し、 ドイッ国内企業の株式 については、ほんの僅か取 り引 きされるにす ぎない。

(4)新規市場 (Neuer Markt)

1997年 3月 に、 ドイッ取引所 は中小規模のベ ンチ ャー企業に対する有価証券取引を活性化す る ことを目的に「新規市場」 という取引区分 を開始 させた。この新規市場は1971年に成長証券 の コ ンピュータ市場 を目指 して創設 されたアメ リカの店頭市場 。NASDAQを 指 向 して創 設 され、

1997年当初 に既 に5,000銘柄 を越 える取引が行われた といわれてい る。 この新規市場 にお け る有 価証券 に対 して、規制市場 における認可前提が準用 され、それ と同時に有価証券の発行者には ド

イツ取引所が確定 した透明性基準 に従 い、年度決算書 の

IAS、 US¨

GAAPも しくはGoBへの準 拠 、年度決算書 における監査役会及び取締役会の持分所有の開示、年度決算書の遅 くとも4ケ 後の開示 、四半期報告書 における事業経過・主要指標 の記載・四半期報告書の遅 くとも2ケ 月後 の開示、少 な くとも年一回の分析実施、株主総会の開催時期、等の義務が付与 されるとされてい る。

(5)

2ロ ドイ ッにお ける取 引所 開示 規 制

既 に述べた ように、 ドイッの取引所市場 区分の うちの公式市場 に対する公式登録 (上場認可)

に関 して取引所上場認可命令が存在す る。規制市場、自由市場の登録 に関 して も、各取引所規則 において一定の開示規制が設け られているが、公式市場ほど厳格 なものではない。73の条項 か ら 構成 される取引所上場認可命令 は、有価証券の公式登録 を受ける大企業 を対象 として ドイッにお ける取引所開示規制の中心部分であ り、その内容 も詳細 にわたっている。以下では、この取 引所 上場認可命令 に焦点づけて、 ドイッにおける証券取引開示規制の現状 を考察 してみ よう。

4)

取引所上場認可命令の構成 1987年 (1996.7.17ま での改正部分 を含 む)

1章 公式登録 に対する有価証券の認可 (第 1条〜第52条)

1節 認可前提 (第1条〜第12条)

2節 目論見書

1款 目論見書の内容 (第 13条〜第32条)

2款 特別な場合の 目論見書内容 (第 33条〜第42条)

3款 目論見書の開示 (第 43条〜第44条)

4款 目論見書 を開示す る義務の免責 (第45〜47条) 3節 認可方法 (第48条〜第52条)

2章 認可 され る有価証券の発行者の義務 (第 53条〜第70条) 1節 中間報告書

1款 中間報告書の内容 (第 53条〜第56条)

2款 特別 な場合の中間報告書の内容 (第 57条〜第60条)

3款 中間報告書の開示 (第61条〜第62条)

2節 その他の義務 (第63条〜第70条)

3章 正規性違反、最終規定 (第71条〜第73条)

(1)取引所法発行開示規制 (11)日論見書の作成

公式市場 に認可 される場合、認可 申請書 に 目論見書が添付 されなければならない。この 目論見

(6)

書 に関 して、取引所上場認可命令第13条は、一般原則 を掲 げているが、それによると、日論見書 は、認可 される有価証券の評価 にとつて重要である事実関係及び法的関係 に関 して情報 を提供 し なければな らず、正確 かつ完全 な ものでなければならない (第13条1項)。 また、 日論見書 には、

1)目論見書の内容 につ き責任 を有す る自然人 もしくは会社 、 ii)認 可 される有価証券、iii)認 される有価証券の発行者、市)認 可 される有価証券の発行者の年度決算書及び 目論見書 にお け る その他の記載事項 についての監査、に関す る諸事項の記載が義務づけ られている (第13条2項)。

こうした一般原貝1に基づ き、さらに取引所上場認可命令 は第14条か ら第32条において、 日論 見 書の内容 に関 して次の ような規定 を設 けてい る (特別な場合 における 目論見書 の内容 に関 して は 33条〜第42条に規定 される)。

14条 目論見書 の内容 につ き責任 を有す る自然人 もしくは会社 に関する記載 15条 有価証券 に関す る一般 的記載

16条 株式に関す る特別の記載

17条 株式 としての有価証券 に関す る特別の記載 18条 発行者 に関す る一般的記載

19条 発行者の資本 に関す る記載 20条 発行者の営業活動 に関す る記載

21条 発行者の財産 。財務・収益状態 に関す る記載 22条 発行者 の会計報告か らの記載

23条 資金の源泉 と使途に関す る表の作成 24条 資本参加企業 に関す る記載

25条 1株あた り利益及び配当金 に関す る記載 26条 コンツェル ン決算書の記載

27条 上場認可社債の発行者の負債 に関す る記載事項 28条 発行者の営業執行機関及び監査機 関に関す る記載 29条 発行者の最近の営業経過及 び営業の見通 しに関す る記載

30条  目論見書 における発行者の年度決算書及びその他の記載内容 に関す る監査の記載 31条 株式 を代理す る投資証書 に関す る記載

32条 株式 を代理す る投資証書 の発行者 に関する記載

ここで会計関係 の記載事項 については第21条以下が該当す るが、それ らの うち、特 に取 り上 げ られるべ き規定は次の ものであろう。

(7)

取引所上場認可命令第21条 1項は次の ように規定す る。

「 目論見書 は、発行者の財産状態、財務状態 、収益状態 に関 して

1.貸借対照表お よび損益計算書 におけるかわ りに附属説明書 において行 われる記載内容 も 含めて、直近の3事業年度 について比較可能な表示 の形態での貸借対照表お よび損益計算 (第22条)、 前営業年度の附属説明書 ;債 務証書の認可 について は直近 の2営業 年度 に ついてのみ比較可能な ものでなければならない。

2.直近の3事業年度 についての資金の調達 と運用 に関す る表 (第22条)

3.発行者が持分 を所有す る企業 に関す る詳細 を含めなければならない。

さらに取引所上場認可命令第22条 1項は 目論見書 における会計報告か らの記載 に関 して、次 の ように規定 している。

Rl)発行者が コンツェル ン決算書の作成のみ を義務づけ られているときには、その コンツェル ン決算書 は第21条 1項 1に 基づ き目論見書 に含め られなければならない。発行者が個別決算 書の作成 もまた義務づけられているときには、双方の年度決算書が含め られなければな らな い。認可委員会は、他方の年度決算書がなん ら重要 な追加的記載 を含 まない ときには、一方 の年度決算書のみ を含めることを発行者 に認めることがで きる。」

以上 の ように取引所上場認可命令 は、 日論見書 において貸借対照表、損益計算書、附属説明書 の年度決算書 、コンッェル ン決算書が作成 される場合 には年度決算書 とコンツェルン決算書の双 方、 もしくはその どち らかの決算書 、お よびに、運動貸借対照表 (資金計算書)、 発行者 が持 ち 分 を所有する企業の詳細 を記載す ることを義務づ けているが、第21条1項でい う「発行者の財 産 状態 、財務状態、収益状態」は商法典第264条 2項、第297条 2項に掲げる資本会社 (コ ンツェル )の「財産状態、財務状態、収益状態 に関す る実質的諸関係 に合致する写像」に相応す る。  イツ商法典は、この第264条2項、第297条 2項の 目標規範 に基づ き、資本会社

(コ

ンツェル ン)

に対 して正規の簿記の諸原則 (GoB)│こ準拠 した年度決算書

(コ

ンッェル ン決算書)の作 成 と開 示 を義務づけている。また、後述す るように、商法典第267条において、公式市場 と規 制市場 の 上場会社 について、それを大資本会社 とみな して、商法上の年度決算書の作成 と開示の規制下 に おいている。それによって、取引所の 目論見書の発行 開示規制は、その会計法的基礎 を商法上 の 諸規定 と正規の簿記の諸原則 に委ねることになる。

(12)目論見書の開示

さて、以上の内容 を有す る目論見書 は、規定 される開示内容の国内での広範囲の衆知 をはか る

(8)

ため上場認可委員会が指定す る取引所公告指定紙 (新)において開示 される。上場認可 申請が 複数の取引所公告指定紙 に開示 される ときには、 日論見書 も同時に開示 される。また、連邦公報 において 目論見書 または 目論見書の公告指定紙名お よび公衆が これ らを入手 しうる場所 について の情報 を開示することになる (取引所法第36条4項 )3なお、取引所上場認可命令 第43条 にお い て 目論見書の開示期間に関 して、「少 な くとも有価証券の上場前3週日は開示 され なけれ ば な ら ない」 とされている。

(2)取引所法継続開示規制

(21)年度決算書 と状況報告書の作成 と開示

ドイツにおける取引所法 は、取引所法第44条1項3及び第44条2項を根拠 として有価証券 を 公式登録す る発行者 (企)に対 して、取引所上場認可命令第65条 1項及び2項に基づ き年度決 算書 と状況報告書 の継続的開示の義務 を課 している。

すなわち、まず、取引所法第44条 1項3は、上場認可 され る有価証券の発行者の義務 と して

「公衆及び上場認可委員会 に、発行者及び上場有価証券 に関す る情報 を適切 に通知す る」 こ とを 掲 げ、 さらに同第44条2項では「連邦政府 は、連邦上院の同意 を得て法規命令 によつて1項 3によ り行われる開示及び通知 についての方法、範囲及び様式 ならびに1項4による義務が生 ず る期 日及び前提要件 につ き定める権 限を有す る。」 としている。

そ して、この規定 を根拠 に して連邦政府の定める取引所上場認可命令第65条「年度決算書 お よ び状況報告書の提供」の1項お よび2項はつ ぎの ような規定 をおいている。

(1)上

場認可 された有価証券の発行者 は、年度決算書及 び状況報告書が この法規命令 の適用 領 域 において公開 されない ときには、その年度決算書 と状況報告書 を確定後すみやかに支払所 において公衆の利用に供 さなければな らない。

(2)発

行者が個別決算書 もコンツェル ン決算書 も作成す る場合、双方 の年 度 決算書 が 第1項 規定 に従い、公衆の利用 に供 されねばな らない。上場認可委員会 は もう一方の年度決算書 に 重要 な追加的記載が含 まれない ときには、一方の年度決算書のみを公衆の利用 に供す る こ と

を認めることがで きる。

この ように、 ドイツの取引所法は有価証券の公式認可 (上)会社 に対 して、 日論見書 に よる 発行開示規制 と並 んで、年度決算書 と状況報告書、さらにコンツェル ン決算書 を作成す る場 合 に はその双方かその どちらかの継続開示規制 を設けている。 しか し、先にふれた ように.これらの決 算書情報の作成、処理 に関 して、取引所法 は個別具体的な規制 を設 けてお らず、その実質的規 制

(9)

内容 は商法典の会計規準 に委ね られることになる。

その根拠規定が商法典第267条の「規模階級 の分類」である。商法典第267条は、資本会社 を大 中小の規模 に分類 し、その うちの大資本会社 に公式市場 と規 制市場 の上場 会社 を含 めてい る。

従 って、公式市場 と規制市場 において有価証券 を上場する資本会社 は、取引所法 に基づ く開示 規 制に対 して、商法典第3篇「商業帳簿」の うち大資本会社 に適用 される会計規準 を遵守す る こ と が義務づ け られることになる。

商法典第267条は次の ように定めている。

「大規模資本会社 とは、2項に掲 げる三つの指標の うち、少な くとも二つの指標 を超 える もの をい う。資本会社 は、株式 または資本会社 によって発行 されたその他の有価証券が欧州経済共 同 体加盟国の取引所 において公式市場 もしくは規制市場 で認可 され るか、規制 自由市場 に含 まれ る か または公式市場 もしくは規制市場での認可 申請が行 われている ときには、常 に大規模資本会社

とみなされる。

ドイツにおける現行商法典は、資本会社 と人的会社 の会社法形態の区分の上 にたって、また資 本会社 に関 しては大 中小の規模 区分 に応 じて貸借対照表項 目と損益計算書項 目の下位分類 、附属 説明書 の報告義務 の範囲、法定監査及び公示義務等の規定 を段 階的に規定す る。この場合、公式 市場 と規制市場 における有価証券 を上場 ない し認可 申請 している株式会社 は商法上の大規模資本 会社 と同等の取 り扱 いを受 けることにな り、取引所法 による上場 ・非上場の基本的会社 区分 は、

商法典の資本会社 の規模 区分 と連結す る。商法上の年度決算書等の記載。開示 に関わる実質的 な 会計規準が取引所法の発行開示規制の基礎 に据 えられることになる。

(22)中間報告書の作成 と開示

ドイツの取引所法はEU指令 を転換 して、1986年の改正 により中間報告書の作成 と開示 に関す る義務規定 を設けている。公式市場 において有価証券の登録が認可 される発行者 は年度決算書 に 加 えて中間報告書 を作成 し開示 しなければな らない。この中間報告書の作成。開示義務 について は、取引所法第44b条 に次の ように規定 される。

Rl)認可 される株式の発行者 は、営業年度内に、正規 に少 な くとも、報告期 間内の発行者 の財 務状態及 び事業経過の実質的諸関係 に合致 した写像 を数値事項 と記述事項 に基づいて伝達 す る中間報告書 を開示す ることが義務づけ られる。

(2)連

邦政府 は連邦議会の議決 を経 た法規命令 によつて、公衆の保護のために中間報告書 の内 容 につ き、とくに記載 される数値事項及 び記述事項並 びにその開示 の時期 と形式 についての 諸規定 を定めることが授権 される。法規命令 は、例外 的場合、 と くに交渉 の利益 を危 険 にす

(10)

るあ るい は発行者側 に危惧 され る著 しい損 害 の観 点か ら、中間報告書 にお ける個 々の記 載 を なす こ とを除外 しうる こ とを定 め る こ とが で きる。」

この第44b条 の うち、第2項 1文に基づ き、中間報告書の作成 と開示 につ いて、取 引所 上場認 可命令第2編1節〜第3節 (第 53条〜第62条)が適用 され る。

る。その内容 は次の とお りである。

1節 中間報告書の内容 53条 一般原則 54条 数値記載事項 55条 説明記載事項 56条 コンツェル ン決算書

2節 特別な場合の中間報告書の内容 57条 数値記載事項の適用

58条 第三国の発行者

59条 欧州経済共同体の複数参加国における中間報告書 60条 個 々の記載事項 に関する免責

3節 中間報告書の開示 61条 開示の形態 と時期 62条 認可委員会の通知

これ らの規定の うち、まず、第53条では中間報告書 に関す る一般原則 が次 の ように掲 げ られ る。

「中間報告書 は、発行者の営業活動が営業年度のは じめの 6月 間において どの ように展開 され たかの判断を可能にさせ るものでなければならない。中間報告書は報告期間における発行者の諸 活動 と成果 に関する数値記載事項 ならびにそれに対する説明 を含 まなければならず、第58条 2項 の規定 を遵守 して ドイツ語で作成 されねばならない。」

こうした一般原則 に基づ き、第54条において次の会計関連の数値記載事項が列挙 される。

(1)数

値記載は、少 な くとも、会計報告 に適用 される商法上の諸規定の意味での売上収益額 、 税引前 もしくは税引後の損益 を表示 しなければならない。各数値記載 に関 しては、前年度の 相応期 間に対す る比較数値 を表示 しなければな らない。

(2)発

行者は、報告期間について中間配当を行 うか、それを予定 しているときには、数値記載 の場合、当該期間に対する税引後損益お よび配当金額 もしくは配当予定金額が表示 されなけ

(11)

ればな らない。

(3)数

値記載が決算書監査人に よつて監査 される ときには、追加的注記事項並 びに限定意見 も しくはその撤回を含めた確認の付記が完全 に呈示 されねばな らない。

)株

式が国内の取引所 にのみ公式登録 され る発行者 について、上場認可委員会は、追加 的 な 表明能力の観点か ら不相応 の多額の費用 を回避 させ るため に発行 者 に とつてや む を得 ない か、 もしくは別の理由で この例外が正当化 しうるならば、見積数値記載の形式で損益 を表示 す ることを認めることがで きる。中間報告書か ら、公衆が見積数値が関わつていることを明 確 に認識で きる ように しなければな らない。

その他、中間報告書 には、発行者の営業活動の展開 と損益の判断にとつて必要 な、売上収益 の ゼ グメン ト、受注状況、原価 と価格の動向、従業員数等の記述的説明が義務づけ られ (取引所 上 場認可命令第55条)、 また、発行者が コンツェル ン決算書 を開示 してい る場合 には、個 別会社 か コンツェル ンの どち らかについて中間報告書 を作成で きるとされている (取引所上場認可命令 第 56条)。

  

取引所上場認可命令 (法規命令)

公式市場上場会社

発行開示規制 │     1         継続 開示規制

目論見書 年度決算書・コンツェル ン決算書 中間報告書

大規模資本会社

商法典第267条 (資本会社の規模分類)

(12)

なお、中間報告書 は、報告期間の終了後 2月 以内に、取引所公告指定紙の少な くとも下紙 に も しくは連邦公報 または支払場所 に公衆が無償で利用で きる印刷物 として開示 されなければならな い。さらに、中間報告書が連邦公報に開示 されない ときには、連邦公報において中間報告書が開 示 される場所、公衆のために保存 されているかの指示が連邦公報において周知 されねばならない (取引所上場認可命令第60条)。

さて、以上が現行の取引所法 に基づ く ドイッの公式市場 において有価証券 を公式登録 (上)

する企業 に適用 される証券取引開示規制の概要である。これ ら開示規制の具体的内容は連邦政府 の法規命令「取引所上場認可命令」に定め られている。 しか し、この「取引所上場認可命令」 に は開示 される会計事項の処理、表示 に関 して実体的な法規定は存在 しない。それ らは、商法典第 267条における「規模階級の分類規定」に連結 して大規模資本会社 と同等 の商法会計規準 に依存 す ることになる。これに対 して、中間報告書 は商法において作成、開示の義務づけられていない 取引所法特有の開示規制である。ただ し、そ こにおける会計記載事項 も、「会計報告 に適用 され る商法諸規定」(取引所上場認可命令第54条)に基づ き作成 される。 ドイッの証券取 引開示規制 は従 って、その実質的内容 を商法会計規準 に委ねている。この関係 を図示すれば前頁のようにな ろ う。

3.取引所 開示 規制 と国際会 計基 準

ところで、 ドイッにおいて取引所開示規制は、その実質的法基盤 を必ず しも ドイッ商法にのみ 委ねる ものではない。特 に、 ドイツ国外 に所在する上場外国企業 に対 して、年度決算書 をは じめ とす る会計書類 を ドイッ商法以外の会計規準 に準拠することを許容する。

取引所上場認可命令第22条4項が次の ように規定 しているか らである。

「欧州経済共同体以外 もしくは欧州経済圏に関する条約のその他の協定国以外 に居住する発行 者の場合、その年度決算書が会社 の年度決算書 と状況報告書 に関するこの法規命令の適用領域 に おける諸規定 に合致 しないで、かつ発行者の財産状態、財務状態、収益状態 に関する実質的諸 関 係 に合致 した写像 を伝達 しない ときには、追加的記載が 目論見書 に掲載 されなければならない。」

また、取引所上場認可命令第65条4項の規定は次の ようである。

「欧州経済共同体以外 もしくは欧州経済圏に関す る条約のその他の協定国以外 に居住する発行 者の場合 、会社の年度決算書 もしくは状況報告書 に関す るこの法規命令の適用領域 における諸規

(13)

定 に合致 しないで、かつ発行者の財産状態、財務状態、収益状態の実質的諸関係 に合致 した写像 を伝達 しない ときには、発行者 はその支払場所で公衆の利用 に供 さなければならない。」

これ らの規定は ドイッの証券取引市場 (公式市場)に上場す る外国企業 に対 して、 日論見書 の 記載 と年度決算書お よび状況報告書の作成 。開示 に関 して、 ドイッ商法会計規準への準拠 を条件 付 けずに、「財産状態、財務状態 、収益状 態 に関す る実質的諸 関係 に合致 した写像」 いわゆる

「真実且つ公正 なる写像」を要件 に、他国の会計規準への準拠 をも承認するものである。

5)

この点、かかる取引所法開示規制の免責規制 と接続 して、商法典において も、コンツェル ン決 算書 に関 して一定の要件 を満たす場合、 ドイッ商法会 計規準 に準拠 した決算書 の免責規定 を、

EU指令 に応 じて、1985年改正時 において既 に規定 してはいた。すなわち、商法典第291条にお い て、国内の親企業であ りかつ他の親企業 (欧州経済共同体加盟国内に居住する)の子企業で もあ る企業 に対 して、コンッェル ン決算書及びコンッェルン状況報告書の作成免責に関する規定 を掲 げ、さらに商法典第292条では、第291条の コンッェル ン決算書 と状況報告書の免責規定が欧州経 済共同体の非加盟国に居住する親企業 に も適用で きることを、連邦法務大臣が連邦参議院の承認 を必要 としない法規命令 によって決定す る権限を有すると規定 していた。そ して、この商法典第 292条を受けた連邦法務大臣は、「欧州経済共同体の加盟国以外の国に居住する親企業の免責 コン ツェル ン決算書 に関す る法規命令」、いわゆる「コンッェル ン決算書免責命令 (KonBefrV)」 を 1991年11月 15日付で制定 し、11月30日付 で発効 させた。

ただ し、それ らの免責規定は、欧州経済共同体非加盟国において作成 される免責 コンツェル ン 決算書が指令93/849EWGつ ま りEU第 7号指令

(コ

ンッェル ン決算書 に関す る指令)の要件 に 一致 して、 ドイツ商法によるコンツェル ン決算書 と等価値 (gleichwertig)で あること、つ ま り

「等価値性の原則」 を条件 とした ものであった。

現在 、この免責 システムは国内の ドイツ企業 にまで範囲 を拡大 した。1998年の「資本市場 にお ける ドイッ・ コンッェル ンの競争能力改善お よび社員消費貸借 の受容 の容易化 のための法律」

(以下、「資本調達容易化法 (KapAEG)」 と呼ぶ。)6)の成立 によって改正 された商法典 は、第292 条の後 に第292a条「作成義務の免責」 を新設 し、 ドイッ商法 に依 る コ ンッェル ン決算書 の免責 を、外国企業 だけでな く国内外 の取引所 に上場す る ドイッ親企業 にまで拡大せ しめている。それ はまた、EU指令 とIASとの等価値性 を認めて、 ドイッ法に基づかない、広 く国際的 に認 め られ た会計規準 に準拠 したコンツェル ン決算書の適用 を ドイッ企業 にも容認するものであった。

商法改正の政府法案 に付 された政府理 由書 はその事情 について以下の ように説明 している。

「今 日、アメリカ合衆国で上場 される他のEU加盟国に居住す る企業は、既 に、国内法規 の免

(14)

責 によつて、UA―GAAP規準の コンツェル ン決算書 をヨーロ ッパの コンツェル ン会計法 との調整 計算表 な しに作成 している。EU連絡委員会がEU会計指令 とIASと の一致 を確 認 した こ とに よ

り、こうした実務 は一層拡大す るだろう。

US‐

GAAP規準で作成 される外国企業 の コ ンツ ェル ン 決算書 は、EU法に基づ くと、上場 目的に際 して ドイツにおいて承認 されなけれ ばな らない。 さ らに、その決算書 はコンツェル ン決算書免責法規命令 に基づいて、免責決算書 として用いる こ と が可能である。その場合、当該の決算書 は ドイツに居住す る親企業が ドイツ法 に依拠 して作成す る部分 コンツェル ン決算書 に代 わる もの とみなされる。にもかかわ らず、 ドイツ企業 に とつて は この ような可能性 は従来、閉ざされていた。従 って、かかる観点か らもまた、連邦政府 は こ う し た内国法人が差別化 される状態は継続 されるべ きでない とい う見解 をもっている。

7)

さらに、最終修正法案 に付 された法務委員会理由書 は次の ごとく述べている。

「 しか し、法務委員会 は、免責規定が外国の資本市場 を利用す る企業のため にのみ役立て られ るべ きとい う見解ではない。外 国の資本市場の利用 に関連づけることで、国内の資本市場 を利用 する ドイツ親企業 に とつて、免責規定の利用が妨 げ られることになる。 しか し、かか る企業 につ いて も包括的かつ国際的に比較可能な情報 に対する外国の資本提供者のニーズ に対応す るため、

国際的に認め られた会計諸原則 に基づ くコンツェル ン決算書 を作成す る要請 は存在 しうる。この 場合、取引所認可命令第21条以下の諸規定、 とりわけ第22条4項に基づいて取引所上場 に際 して 国際基準 によるコンツェル ン決算書 を提 出す ることが可能な外 国企業 と、 ドイツの企業 とが国内 の取引所 において競合 している典 を考慮 しなければならない。さらに、F新規 市場 』 で 自身の株 式が売買 される ドイツ企業 はコンツェル ン決算書 を

US―

GAAPに基づ くか もしくはIASを適用 し て作成 しなければならない。かかる要求 を満たすため、政府法案で提案 された免責規定 は国内の 取引所 に上場 される全 ての企業 にまで広 げて適用 された。

8)

以上み られるように、アメリカの コンピュー タ市場 。NASDAQを指向 して創 設 され た新規市 場 も加 えて、外国企業 との競合 関係 のます ます強 まっている証券取引市場 を背景 に して、現 時点 の ドイツ商法 は、EU会計指令 とIASとの等価値性 を根拠 に して、取引所の上場 目的 に対 して 、 外国企業のみならず国内企業 に対 して も ドイツ法 に依拠 したコンツェル ン決算書 を免 責 し、IAS あるいは

US―

GAAPの会計規準の適用 を承認 している。

この点、法務委員会報告書 は次の ように述べている。

「商法典第292a条の規定 によつて、今後、取引所上場 に際 して、また、取引所認可命 令 第21条 以下 と販売 目論見書指令第8条が要請す る財産状態、財務状態、収益状態 に関す る記載 について

も、この第292a条の掲 げる国際的に求め られた諸基準 に基づ くコンツェル ン決算書が利用可能 と

(15)

なる。取引所上場認可命令の該当規定は、商法典第292a条 2項に基づ く免責 コンッェル ン決算書 にもこの 『 コ ンツェル ン決算書 』 の概 念 がお よぶ こ とを前提 に して解釈 され なけれ ば な らな い。」

9)

したがって、 ドイツ商法会計規準 に実質的に依存 す る取 引所 開示規 制 も国内外 の企業 に対 し て、必然的に

IAS、 US―

GAAPの適用 を妨げる ものでない。

4ロ ドイ ツ取 引所 開示規 制 と商 法 改正 問題

ドイツの取引所法は公式市場、規制市場、自由市場 、新規市場か らなる証券取引市場 において 有価証券 を上場す る企業 に対 して、基礎 的開示規制 を設けている。また、公式市場 における有価 証券の公式登録 (上)に際 しては、取引所上場認可命令が取引所法 を根拠 に詳細 な発行開示 及 び継続開示の諸規定 を定めている。本稿では、EU域内諸国の資本市場の統一化 を 目標 に、一連 の理事会指令 を ドイッ国内法 に転換 し成立 をみ、1986年1989年1994年と改正の進 め られて き た現行取引所法 を中心 に取 り上 げ、そ こにおける開示規制の内容 を商法会計規準 との相互の関係 の中で考察 して きた。

EU理事会が発布 した取引所 開示規制関連の指令 については次の ものがある。

(1)「

取引所上場認可指令 (Bbrsenzulassungsrichtlinie)」 (79/279/EG 1979年 3月 5日)

(2)「

取引所 目論見書指令 (BbrsenprOspektrichitlinie)」 (80/390/EG 1980年 3月17日)

(3)「

中間報告書指令 (Zwischenberichtsrichtlinie)」 (82/121/EG 1982年 2月15日 )

)「

1980年取引所 目論見書指令の改正指令」(87/345/EG 1987年 6月22日 )

(5)「

販売 目論見書指令 (Verkaufsprospektrichtlinie)」 (89/298/EG 1989年 4月17日)

(6)「

1980年取引所 目論見書指令の改正指令」(90/211/EG 1990年 4月23日 )

ところで、Bienerに よれば、EUの取引所指令 は開示 される年度決算書お よび コ ンツェル ン決 算書の形式及び内容 に関 して何 ら特別の規定 を含 む ものでない とい う。従 って、それは、一般 的 法規 に基づ く決算書 とそれに附属す る説明が問題 とされる限 りにおいて、取引所法の開示義務 を 履行す るに当たってIASに基づ き作成 されるコンツェル ン決算書 の利用 を さまたげ る もので な い。株式 もしくは債務証書 をEUにおける証券取引所 に公式登録す ることを申請す る会社 はその 会社 の年度決算書、そ して コンッェル ン決算書 を作成するときにはそれ も含めて、あるいはその コンッェル ン決算書のみをそのつ ど遅滞な く開示 しなければならない。これ らの書類が会社決算 書 に関する理事会指令の規定に一致 しな く、そ して当該会社 の財産状態、財務状態、収益状態 の

(16)

実質的諸関係 に合致す る写像 を提供 しない ときには、追加的記載が行われなければならない。 そ れが必要か否かは、取引所認可委員会の義務づけ られた判断による。同様の規制 は、取引所 認可 目論見書お よび販売 目論見書 に関す る各指令 にも含 まれる。その場合 に も、取引所上場認可委員 会 は、非連結 もしくは連結 された決算書が会社の年度決算書 に関す る理事会指令 に一致せず に、

発行者の財産状態 、財務状態、収益状態 に合致す る写像 を伝達 しない ときには、よ り詳細 な も し くは補完的な記載 を要請す ることがで きる。ある加盟国において容認 された 目論見書 は他の加盟 国において も容認 されなければな らない。他の加盟国は当該国の市場 にとつて もっぱ ら特有の補 完的な報告 を要求 して もよい とされている。 さらにまた、証券取引所 に株式 を公式登録 申請 す る 会社が開示すべ き中間報告書の形式 と内容 に関す る要請は、IASと何 ら矛盾 しないほ ど初 歩 的 な

ものだ とい う。D

確 か に、現行の ドイツ取引所法は、英米の証券規制 と比較すれば、発行者側 に とつて必ず しも 厳格 な内容 を含む ものでない。 しか し、EU域内の資本流通の 自由な移動 と活性 化 を 目的 とす る

EU指令 を転換 して、一層の市場の透明性 、情報 開示 の強化 を求めていることは事実 であ る。 た だ し、この取引所法 は開示 されるべ き決算書等の書類の形式、内容 に関 して実体的会計規準 を有 していない。取引所法 は商法上の会計規準 (GoBと諸会計規準)に実質的法基 盤 を委 ねてお り、

ドイツ商法が債権者保護 にたったいわゆる保守主義的会計規制 を超 えて、投資家サイ ドの情報要 求 に も適合 しうる可能性 を与 えている。そ こに、EU域内のみな らず広 く国際化 した資本市場 と そ こにおける国際的に承認 される会計規準

(と

くにIAS)の今 日的な情報要請 に商法が対 応 す る 一定の素地 をみることがで きよう。

さて、Buddeは「取引所上場会社 は独 自の途 を進 まなければな らないのか」 と題 した論孜 で、

「結果 として、取引所上場会社 、取引所 、取引所監督局並 びに株主、投資家 の 間 には、会 計報告 の範囲を拡大することが望 ま しい とす る点で合意が確認 される。その場合、IASが標 準 と して容 認 される。従 つて、IASが ドイツ法 に取 り入 られるべ きな らば、HGBへの組 入 れが行 われね ば な らないのか、 もしくは取引所法が適切 な入れ物 なのか どうかが更 に問題 となる。0と述べ て、

国際資本市場への対応への二つの道 をあげたが、 ドイツの場合、HGBへの組み入れ」 の道が選 択 された。 ドイツでは、実体的法規定 を有す る商法の改正 を通 じて取引所法開示規制 をIASに 応 させ ることを試みている。

既 にみた ように、 ドイツ商法 は1985年の改正 において、他のEU加盟国に所在す る国外企業 と その国外企業 を親企業 とす る国内企業 に対 して、 ドイツ法 によるコンツェル ン決算書の免責規定 を置 き、さらに1998年の改正 においては国内外の取引所 に上場す る国内親企業 に対 して、その免

(17)

責規定の範囲を拡大 した。確 か に、こうした商法の改正は、それ 自体が、資本市場 を指向 した コ ンッェル ン決算書の情報提供機能 を重視す る国際化への対応である。商法改正 に付 された立法 当 局の見解 は、この改正があ くまで証券市場 における情報 開示 を 目的 と した ものであ って、それ は、課税 に も配当に も関わ らず、慎重性原則 と税務上の利益決定 に対す る商事貸借対照表の基準 性原則 も保持 され る としている。

こうした配 当 に も課税 に も影響 しない、情報 開示 目的のみ に資す る コ ンツェル ン決算書 を Buddeは「公告 一決算書」 と称 している。 しか し、かれは先の二つの道の うち商法改正 の道が選 ばれる とした ら、それは企業の配当決定 に も大 きな影響 を与 えるとしている。

Bienerは 、そ うした影響 を商法改正の「マイナスの貢献」 とも呼 んでい る。Bienerは 、 コ ン ツェル ン決算書の免責規定 をもって一時 しの ぎの「国際的 な取 引所 上場 の 目的のための特殊 な GoBと してのIASの容認」②と位置づ け、伝統的に制定法支配の ドイツにあ って、私的 な規制物 であるIASを制定法規範のなかにどう繋 ぎ止めるかが、今後 の課題 であ る と述べ てい る。 この 点、既述 の「資本調達容易化法」 と同時平行的に成立 した「企業領域 における統制お よび透 明性 に関す る法律」(以下、「企業領域統制 。透明化法 (KonTraG)」 と呼ぶ。)を通 じて、商法 に新設 された「私的会計委員会」(商法典第342条)条項 に基づ き創設 された ドイツ版FASB「ドイッ会 計基準委員会 (DRSC,oder GASC)」

IAS、 US―

GAAPの ドイツ にお け る適用 をその委員会 の 勧告 。開発 によって可能な もの としている。0しか し、こうした法 的解決 は、一層 の問題 を投 げ かけている。それは ドイツ会計基準委員会の勧告 。開発 を経てIASが GoBと して認知 された場 合、それが コンツェル ン決算書 だけでな く年度決算書 (個別決算書)と基準性原則 に基づ き税務 上の利益算定 に影響す るのか否か とい う問題である。 ドイツにあ つてGoBは帳 簿記録 と年度決 算書の作成のすべ てに関わる利益算定の一般条項 としての機能 を持つ会計制度の機軸的法施設で ある。それはまた、基準性原則 によって税務上の利益 算定 に も基礎 に も置 かれ る法施設 で もあ る。 したが って、GoBは証 券取 引 の開示 規 制 のみ に関 わ る もので はない 。IASあるい は

US―

GAAP=GoBの図式が今後、 ドイツの伝統的な利益算定機構 にどう波及 して影響するするのか、

国際的証券市場 に対応 した取引所 開示規制の変革 はGoBを機軸 とした ドイ ッの会計 制度 の根 幹 に関わる問題 を今 、投 げかけて もいるのである。

)

1)なお、ドイツにおける取引所機構改革の内容に関しては、以下が詳しい。『図説 ヨーロッパの証券市場』

1997年版、財団法人日本証券経済研究所、平成9年

(第

2編 ドイツの証券市場)。

(18)

2)1987年取引所法の開示規制 については既 に次の拙稿で検討 した。「第 2章 商法会計の法システム」『 ドイッ 会計の新展開〜国際化への戦略的アプローチ』

(佐

藤博明編著)森山書店、1999年。本稿は、その後 、改正 を 経た現行の1996年取引所法 を中心 に、この数年来の新たな商法改正の動向をも踏 まえた最新の証券取引所開示 規制の内容 に関 して取 り上げている。

3)以下の内容 については次 を参照。Bankrecht,Stand 3.Marz 1997,1.Aufl.1997./Hans― Lothar Mertin;

Das B6rsen Handbuch,1998, S。

151‐

154.

4)取引所 法お よび取 引所上場認可命令の条文 とその解釈 に関 しては、次 を参 照 。Schwark Eberhard;

B6rsengesetz,  Komlnentar zum  B6rsengesetz und zu  den  bbrsenrechtlichen  Nebenbe‐

stimmungen,2.Aufl.,1994./Hans― Lothar Mertin;aoaoO。

5)なお、この免責規定は取引所上場認可命令第58条に基づ き、第三国の発行者の中間報告書にも適用 される。

6)7)Gesetzentwurf der Bundesregierung,Entwurf eines Gesetzes zur Verbesserung der Wettbewerbsfahigkeit deutscher Konzerne an  internationalen  Kapitallnarkten und  zur Erleichterung der Aufnahme von Gesellschafterdarlehen(Kapitalaufnahmeerleichterungsgesetz‐

KapAEG),in:Bundestag Drucksache 13/7141,1997.資 本調達容易化法ならびにその法案 の商法改正 部分 を訳出紹介 した もの として、次 を参照。佐藤誠二、稲見亨「『資本調達容易化法』による ドイツ商法会計 法の改正 について」静岡大学『経済研究』3巻2号 、1998年

8)Beschluβerrlpfehlung und Bericht des Rechtsausschusses(6。 Ausschuβ)zu dem Gesetzentwurf der Bundesregierung― Drucksache 13/7141‑Entwurf eines Gesetzes zur Verbesserung der Wettbewerbsftthigkeit deutscher  Konzerne an  internationalen  Kapitalmarkten und  zur Erleichterung der Aufnahme von Gesellschafterdarlehen(Kapitalaufnahmeerleichterungsgesetz―

KapAEG),in:Bundestag Drucksache 13/9909,1998.

9)Ebenda.

10)Herbert Biener; K6nnen die IAS als GoB in das deutsche Recht eingefthrt werden?, in:

Rechnungslegung Prifung und Beratung,1996,S.101‐ 103.

11)Wolfgang Dieter Budde,Miissen die B6rsennotierten Gesellschaften einige Wege gehen, S。

99‐

102.

12)Herbert Biener; a.a.0。

,S.111‑115.

13)こ の点の詳細については、佐藤誠二、稲見亨「国際資本市場への ドイツ商法会計の対応(2)」『会計』154巻5

号、1998年を参照。

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