フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶
無拠出給付に焦点をあてて
清 水 泰 幸
︑
目 次 ︑
はじめに . 第三章 国籍要件の撤廃へ
第一章 フランスの社会的保護 ゜ 第一節 フランスにおける外国人の法的地位と平等原則
第一節 フランスにおける社会的保護の概要− 第二節 フランスにおける共同体法の影響
第二節 社会保険的構成の限界 ー最低所得保障の必要性ー 第三節 立法的解決へ
第三節社会保障上の無拠出給付と国籍要件 おわりに
第二章 共同体法における﹁社会保障﹂法理の展開
第一節 社会保障上の平等取扱い原則 ︑
第二節社会保障上の無拠出給付の概念
︵以上本号︶
第三節 規則一四〇八号と共同体の締結した条約との関係
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五ー一︶ 四三七
四三八
はじめに
一 問題の所在
いわゆる経済の地球規模化にともなって︑日本においても外資系企業や情報通信技術分野などで外国人労働者が多 ︵1︶く見られるようになった︒このように労働市場の国際化が急速に進行しつつある昨今であるが︑日本における外国人 ︵2︶労働者の社会保障を検討する上で︑いまだ国籍は無視できない要素であると思われる︒たとえば国によっては︑社会 ︵3︶保険法の分野で属人主義的な適用法の決定がおこなわれる場合がある︒
日本が一九八一年に﹁難民の地位に関する条約︵難民条約︶﹂を批准したことによって︑国民年金法については一 ︵4︶九八二年に︑国民健康保険法については一九八六年に国籍要件が撤廃された︒この意味において︑日本の社会保障法
制における属人主義的要素は縮小したようにも見える︒しかし現在でも生活保護法は︑日本国民であることを扶助の ︵5︶要件にしていると一般に解されており︑例外的に外国人永住者等については︑厚生労働省の予算措置として生活保護 ︵6︶法の準用という形で給付が行われているにすぎない︒諸外国においてはベルギー︑ドイッ︑イタリア︑イギリスなど
で日本の生活保護にあたる給付に国籍要件がおかれており︑公的扶助に国籍要件が付されるという構図は︑日本以外 ︵7︶にも見ることができる︒
国際法の平面においては︑国連の難民条約二一二条が公的扶助および公的援助に関する内外人平等待遇を定めている
が︑その一方で労働法制と社会保障における内国民待遇を定める同条約二四条は﹁当該難民が居住している当該締約
国の国内法令において︑公の資金から全額支給される給付の全部または一部に関して:・特別の措置を定めるこ
と﹂を締約国に許容している︒また社会保障め最低基準を定めるILO一〇二号条約六八条では︑内外入平等原則の
例外として﹁公の資金を財源とする給付又は給付の部分及び過渡的な制度については︑外国人⁝に関する特別な
規則を国内の法令で定め.ることができる﹂としている︒
このように国際的に見ても︑公的資金を財源として事前の拠出を受給要件としない社会的給付︵以下ではこのよう
な給付を﹁無拠出給付﹂とする︶は︑支給対象として自国民を想定していることがうかがわれる︒したがって外国人
を無拠出給付から排除することは︑許容されているように見える︒これは十分な正当性をもって説明されうる取扱い ︵8︶ −なのだろうか︒説明されるとすれば︑いかなる論拠に基づくのだろうか︒本稿では︑社会的給付をなす基準として︑
現実に国籍が重要な要素になっていることをふまえた上で︑どのような社会的給付が外国人を排除しているのかに注
意を払いながら︑無拠出給付と国籍との関係に焦点を当てて︑社会保障における内外人平等の限界とその画定基準の
検討を目的とする︒
二 検討対象の設定 ︵9︶ . 社会保障制度は国民国家の理念のもとで発展してきたが︑今後は日本の社会保障においても外国人労働者が無視で ︵10︶きない存在となるであろう︒外国人が当然に経済活動を営み同時に生活人として存在するという︑いわゆる国際化の
中での社会保障に関して︑日本における検討は︑いまだ十分とは言い難い状況にあると思われる︒こうした現状から
すれば︑国際的な社会保障制度の連携・調整が今日においてもっとも緊密なレベルで実現されているヨーロッパの状
況を見ておくことが適切であろう︒
しかしここで問題となるのが︑ヨーロッパ統合の恩恵を受けるには︑構成国の国民でなければならないということ
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︑︵一︶ ︐・ ︵都法四十五−一︶ 四三九
四四〇
である︒地域経済統合は︑必然的に域内出身者と域外出身者を差別的に取り扱うのである︒言い換えれば︑特定のカ
テゴリの人や物を優遇することによって︑地域経済統合はその目的を達成する︒したがってある構成国の国内法の観
点からすれば︑外国人を二つのカテゴリに区分して︑二通りの処遇形態を用意することになる︒すなわち域内出身者
か︑あるいは域外出身者かの区別である︒しかし︑出身を理由として外国人を差別的に処遇することは︑国内法にお
ける法の下の平等に反するのではないかという疑問を生じさせる︒なぜならこのような事態は︑いわば外国人の処遇
に関する二重基準を招来することになるからである︒
ヨーロッパには域外からの移民労働者も多数存在しており︑特にフランスにおいては︑戦間期以来︑周辺国や旧植 ︵11︶民地から移民労働者を受け入れてきた歴史が存在する︒これらの移民労働者は︑移民先であるフランスで家族を形成 ︵12︶して子どもはフランス国籍であるなど︑生活基盤をフランスに築いて引退後の生活もそこで送ろうとする者が少なく
︵13︶ ︵14︶
ない︒しかし︑ヨーロッパ以外を出身とする移民労働者は︑現役時代の賃金水準が低かったために︑必然的に引退後の老齢年金の給付水準も低くなってしまう︒
これに対して欧州連合︵EU︶を出身とする老齢者の場合には︑総収入が一定額未満であれば︑無拠出給付である
生活保障的な付加手当を受給することができる︒この手当が拠出制年金に加算されることで︑フランスにおいては︑
EU出身者に対して一定水準の最低所得保障がなされてきた︒論理的には︑現役世代に賃金水準の低かったヨーロッ
パ以外を出身とする移民労働者にこそ︑付加手当の必要性は高いといえるであろう︒しかしフランス社会保障法典
は︑このような手当に国籍要件を付しており︑例外的に外国人に対して支給される場合には︑当該外国人の出身国に
おいてフランス人に同様の待遇を保障することを定めた﹁相互性の条約﹂の存在を給付の要件としてきた︵以下︑こ
のような条件を﹁相互性条件﹂とする︶︒相互性条件は︑結果的にEU以外を出身とする移民労働者を付加手当から
排除する効果を持ったのである︒
右のように︑付加手当のような無拠出給付について︑EU以外を出身とする移民労働者は︑EU出身者と比較した
ときに不利な状況に立たされていた︒しかし一九九〇年になってフランス憲法院は︑平等原則を援用して付加手当の お 支給を﹁合法的にフランス領土に居住する外国人﹂に認めるべきであるという判断を下した︒フランスにおいて︑初
︑めて社会権における内外人平等を宣言したこの判決は︑後に大きな反響を呼ぶことになった︒
また一九九〇年頃を一つの転機として︑ヨーロッパの平面においても欧州共同体司法裁判所が一定のEU外出身者
に対して︑無拠出給付の支給を認めるという判断を下すようになった︒このような判断は︑やがてヨー︐ロッパの主流
となって︑フランスに対して外圧として作用した︒これを受けて︑フランスの無拠出給付に存在した国籍要件および
相互性条件は︑一九九八年の法改正によって撤廃された︒
以上のように︑フランスでは無拠出給付についても内外人平等原則が確立したが︑先に見た難民条約二四条および
ILO一〇二号条約六八条の規定からすると︑無拠出給付における国籍要件および相互性条件の撤廃は︑論理必然的
な条約上の要請ではなかった︒それにもかかわらず︑なぜフランスではこのような国籍要件および相互性条件が撤廃
されたのか︒これを明らかにするには︑無拠出給付と国籍要件の関係について改めて考究する必要があると思われ
・ る︒そこで以下では︑フランス法︑ヨーロッパ法のそれぞれの平面において︑さらにヨーロッパ法がフランス法に与
えた影響という観点から︑無拠出給付にどのような位置づけが与えられてきたのかについて検討していくことにしよ
︑つ ・
︵1︶ 日本に在留する外国人労勧者は︑二〇〇一年で約一七万人であった︒これは一九九二年比で約二倍となっている︒経済産
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四四一
四四二
業省編﹃経済産業白書 二〇〇三﹄二一二頁参照︒
︵2︶外国人が日本国憲法二五条の生存権の享有主体であるかについては︑﹁限られた財政状態の下での社会保障等︑積極的な
国の配慮義務は︑まず﹃国民﹄に対するものであり︑合理的な理由があれば︑﹃国民﹄にそれを享受する優先権を認めるこ
とも許されると思われるが︑生存の基本に関わるような領域で一定の要件を有する外国人に憲法の保障を及ぼす立法がそも
そも社会権の性質に矛盾するわけではない﹂とされる︒芦部信喜編﹃憲法皿人権︵一︶﹄︵有斐閣︑一九七八年︶一二頁︒そ
の一方で﹁司法の第一次的役割は︑訴訟当事者の権利侵害の救済﹂なのであって︑﹁そこで救済することが︑ほかの事案に
どのような波及効果を及ぼし︑それが大規模な予算措置を講じる必要があるのでは︑などと考えること自体が政治的な判断
であり︑司法の領域からはずれた考慮をしていることになる﹂とも言われている︒渋谷秀樹﹃日本国憲法の論じ方﹄︵有斐
閣︑二〇〇二年︶︐一五〇頁︒﹁法的に﹂社会保障の権利を考えるという点については未だ議論の余地は多いと言えるだろう︒
︵3︶ 岩村正彦﹃社会保障法1﹄︵弘文堂︑二〇〇一年︶一八九頁︒属人主義という用語は︑本来は国際私法における適用法決
定の基準であり︑大陸法系では本国法が︑英米法系では住所地法が用いられる︒筒井若水編﹃国際法辞典﹄︵有斐閣︑一九
九八年︶一三五頁参照︒社会保障法の適用法決定は︑外観上は国際私法に類似しているが︑考え方として一致しているわけ
ではない︒社会保障は国がおこなう公的活動であることから︑国自身が社会保障法の人的適用対象や空間的適用対象を決定
できることがその理由である︒岩村正彦﹁EC社会保障規則による家族給付の支給調整︵一︶ーフランス家族給付のE
C加盟国民への支給をめぐってー﹂法学五三巻二号八頁以下参照︒適用法の決定に関しては︑自国と勤務地国における
社会保険の二重加入が大きな問題となりつつある︒このような二重適用をさけるために二国間あるいは多国間の社会保障協.
定が締結されるが︑日本は︑現在までにイギリス︑ドイツのニカ国と締結しているにとどまっている︒フランスは約四〇力
国︑イギリスは約二〇力国︑アメリカは約二〇力国と社会保障協定を締結していることと比較すると︑日本の現状は著しく
遅れているといわざるを得ない︒経済産業省編﹃通商白書 二〇〇三﹄=二八頁参照︒
︵4︶ 馬渡淳一郎﹁社会保障の人的適用範囲﹂﹃講座社会保障法第一巻 二一世紀の社会保障法﹄︵法律文化社︑二〇〇一年︶一
=頁︒国民健康保険法︵国保法︶については︑その施行規則一条二号に国籍要件がおかれていたために︑一部の例外を除
いて外国人は法の適用から排除されていた︒一九八六年四月に当該国籍要件は撤廃された︒高藤昭﹃外国人と社会保障法﹄
︵明石書房︑二〇〇一年︶一〇四頁参照︒また︑在留資格を有しない外国人の国民健康保険への加入については︑学説上争
いがあり︑下級審裁判例でも判断が分かれていた︒先頃︑最高裁判所はこの問題について初めて判断を下し︑国保法五条は︑
在留資格のない外国人を国民健康保険の被保険者から一律に排除する趣旨を定めた規定ではないが︑そのような外国人が同
法五条の﹁住所を有する者﹂に該当するためには︑居住の事実のみでは足りず︑居住地とする市町村に外国人登録をしてい
ること︑入管法上の在留特別許可を求めていること︑加えて入国の経緯︑現在までの在留資格の変遷︑家族に関する事情︑
滞在期間︑および生活状況に照らして︑当事者が居住地においで安定的な生活を営んでおり︑将来にわたってこれを維持す
︐ る蓋然性が高いと認められることが必要であるとした︒最判平成一六年一月一五日︑判例時報一八五〇号一゜六頁︒
︵5︶ 加藤・菊池ほか﹃社会保障法 第二版﹄︵有斐閣︑二〇〇三年︶二九三頁参照︒生活保護法二条は﹁すべて国民は︑この
法律の定める要件を満たす限り︑この法律による保護⁝を無差別平等に受けることができる﹂と規定している︒これに
対して﹁外国人に対する保護は一方的行政措置によるもので︑権利としてこれらの保護を請求することはできず︑保護を受
ける権利が侵害されても不服申し立てができない﹂とされる︒林弘子﹁最低生活保障と平等原則 外国人への適用を中心に﹂
﹃講座社会保障法第五巻 住居保障法・公的扶助法﹄⌒法律文化社︑二〇〇一年︶一四一頁︒
︵6︶︐岩村︑菊池編﹃目で見る社会保障法教材﹄︵有斐閣︑一九九九年︶九〇頁︒準用の措置は︑昭和二九年五月八日社発第三
八二号通知による︒生活保護法と非定住外国人をめぐる問題については︑桑原洋子﹃社会福祉法制要説 第四版﹄七七頁以
下を参照︒また医療保険に加入していない非定住外国人が不慮の事故にあった場合にバ生活保護法の準用が認められず救急
医療の供給が阻害されるおそれがある︒特に在留資格を有しない外国人に関してこの問題は深刻である︒日本の社会保障法
制の構造は︑社会保険による保障から漏れてしまうと︑直ちに﹁最後のセーフティネット﹂である生活保護法に到達する構
造になっていることも︑こうした問題の一因であると考えられる︒
︵7︶ 岡伸一﹃欧州統合と社会保障 −労働者の国際移動と社会保障の調整1﹄︵ミネルヴァ書房︑一九九九年︶七二頁︒
︵8︶ 拠出と給付の関係について︑荒木教授は次のように述べている︒﹁拠出義務の存否によって︑社会保障の構造を基本づけ
るのはぺ制度論としてはともかく︑法体系の問題としては︑さほど重要な意味を持たないと考える︒⁝したがって︑拠
出の問題は︑給付の構造・性格に関連させて考察すれば足り︑それ自体を独自の法的要素として認める必要は乏しいと考え︐
る﹂︒荒木誠之﹃社会保障の法的構造﹄︵有斐閣︑一九八三年︶一八頁︒ 4︑
︵9︶ 籾井教授は﹁社会保障法は︑国家自らが責任主体となっておこなう全国民的規模での生活保障政策︵生存権保障に他なら
ない︶を具体化する法制﹂としている︒籾井常喜﹃社会保障法 労働法実務体系一八﹄︵総合労働研究所︑一九七二年︶四
一頁︒荒木教授は﹁全国民を対象とする包括的な社会制度が社会保障であるから︑その責任を最終的に引き受けるのは国で
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四四三
四四四
なければならない﹂とする︒荒木誠之﹃社会保障法読本 第三版﹄︵有斐閣︑二〇〇二年︶七頁︒
︵10︶ 平成=年八月二二日閣議決定された第九次雇用対策基本計画では︑﹁経済社会のグローバル化に伴い︑我が国の企業︑
研究機関等においては︑⁝専門的︑技術的分野の外国人労働者に対するニーズが一層高まっている︒このような状況の
中で︑我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から︑専門的︑技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極
的に推進する﹂と謳われている︒また日本は︑情報通信技術分野において技術者資格の国際的相互認証を実施しており︑対
象となる外国人労働者については在留資格要件の緩和措置がとられている︒日本が最初に相互認証国としたのはインドで
あった︒経済産業省編﹃経済産業白書 二〇〇三﹄一三七頁参照︒
︵11︶ フランスにおける二〇〇〇年の外国人労働者数は約一六〇万人とされており︑これは就業者数と失業者数を合計した労働
力人口に占める割合の六%程度となっている︒このうちEU以外を出身とする外国人労働者は約一〇〇万人であり︑労働力
人口に対して約四%を占めている︒外国人労働者を国籍別に見ると二〇〇一年の数値で︑ポルトガル人が二二・九%︑アル
ジェリア人が一四・四%︑モロッコ人が=・五%である︒また外国人労働者の年齢構成は︑過去四〇年間のフランス経済
の歴史を反映しているとされており︑五〇歳から六〇歳の男性層が七・八%で最大となっている︒フランス大使館ホーム
ページ﹃フランスの統計資料﹄﹁七・雇用﹂︒このことから引退後の外国人労働者の所得保障が緊要の課題となっていること
がうかがわれる︒
︵12︶ ﹁フランスは歴史的に国籍の出生地主義を採用してきた国﹂であり︑﹁現行法では︑外国人の両親からフランスで生まれ
た子どもにも一定の条件で国籍取得を認めている﹂とされる︒本間圭一﹃パリの移民・外国人 −欧州統合時代の共生
社会 ﹄︵高文研︑二〇〇一年︶一九四頁以下︒しかし国籍法や移民関連法は政権交代のたびに改正されていることも事
実である︒
︵13︶ 林瑞恵﹃フランスの異邦人﹄︵中央公論社︑一九八四年︶一九五頁以下を参照︒
︵14︶ 林瑞恵・前掲注︵13︶三四頁参照︒
︵15︶Oひ︒芭85︒°︒⑩ー心︒800巨心︒Nご5緩こΦΦρbs8ご一⑩⑩Pカ゜ωOb︒°
第一章 フランスの社会的保護
第一節フランスにおける社会的保護の概要
本章では︑フランスにおける無拠出給付の位置づけを明らかにするために︑フランスの社会的保護の構成と社会保
障制度の成立過程︑および現代のフランス社会が直面している課題を瞥見する︒
一 社会的保護の構成 あ フランスにおいて日本の社会保障に対応する概念は︑社会的保護︵︼︶﹃OけΦ6﹇一〇ゴrc◎OO﹂巴O︶とされており︑フランスで ︑︵17︶いう社会保障︵co⑳6己一ユ■ひcoOO﹂知一Φ︶は︑日本の社会保険とほぼ同一の概念である.若干の注意を要するのが︑社会的保
護の基本的要素である社会保障と社会扶助︵巴qΦc力OO﹂巴Φ︶について︑法典上の分類と一般的な用法が必ずしも一致
していないことである︒社会的保護に関する法源は︑社会保障法典︵OOq①巳Φ一①ωひO己ユ吟⑳o◎06声巴O︶︑労働法典︵○OO︒
合胃③<巨︶︑社会事業および家族法典︵○○ユOαΦ一.餌6古︷OコooOO一知一〇〇けOOo◎壁﹁口巳一〇c◎︶に存在するが︑まず法典上の分類に
ついて確認しておこう︒ ・ ︑ 法典上の規定では︑①﹁社会保険︵③゜︒°・烏き8c︒°・06巨Φ゜・︶﹂︑﹁労働災害・職業病補償︵﹃9碧豊○⇒巳Φ゜・③8巳Φづ訂合
胃碧巴9日巴③90°︒肩o甘゜・°︒一9弓巴Φc︒︶﹂︑および﹁家族給付︵肩窃芭﹂o田乙・竃巴Φ゜・︶﹂の一一一部門の総体が﹁社会保障﹂と
呼ばれており︑これらは社会保障法典に規定されて毒・①に聖て・②労働法典で規定される﹁失業補償︵巨き
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︑ ︵都法四十五ー一︶ 四四五
四四六
巳切豊o⇒合90日品Φ︶﹂制度︑③社会保障法典および保険法典で規定される﹁補足的社会的保護︵肩9Φ昆o白︒︒o︒巨Φ 8日噂辰ヨΦ昌曽Φ︶制度﹂︑ならびに︑④社会事業および家族法典に根拠条文をおく﹁社会扶助︵巴OΦ・︒8巨Φ︶﹂制度 ︵21︶の四つを併せたものが社会的保護とされている︒
これに対して一般的な用法では︑根拠条文がどの法典に存在するかは重視せずに︑事前の拠出を受給要件とする社
会保険などを社会保障として︑国庫を財源に無拠出給付を行う制度を社会扶助として︑ゆるやかに二つに区分して
W麗︒本稿では︑社会保障法典第W編に規定される各種手当を扱うが︑これらの手当は︑広義の社会扶助とされるこ
とが多い︒また後述するフランス政府の見解においても同様の立場が取られている︒
以上のように法典上と一般的な用法において概念の﹁ずれ﹂が生じたのは︑フランス社会保障制度特有の成立過程
に起因していると思われる︒またこの成立過程の影響は︑現在の制度の特徴としても現れているので︑以下ではフラ
ンス社会保障制度の成立過程について概観する︒
二 社会保障の成立 お フランスの社会保障はその﹁非国家的構成﹂を特質としている︒ここでの﹁非国家的構成﹂とは︑①制度運営にお ける﹁当事者原則﹂︑②拠出11財政運営における﹁当事者負担原則﹂からなっており︑このような構成は︑社会保障 制度において財源および管理運営が﹁当事者自身によって担われるべき﹂であり︑裏返せば﹁管理における国家の介 入︑財政面への国家の関与を極小に抑えるべき﹂という考え方から生じている︒ 戦前のフランス社会保険制度は﹁共済組合原則﹂のもとにあったが︑第二次大戦後は﹁社会保険から社会保障へ﹂ の転換を目指して︑新たな社会保障制度が構築された︒フランスの目指した社会保障は﹁ベヴァリッジの目標をビス
∨ ︑ ︑
︵29︶ ︵30︶ マルクの方式で﹂実現するものと表現される︒戦後の社会保障制度の起点となったのが一九四五年一〇月四日の﹁社
会保障の組織に関するオルドナンス﹂と一九四六年五月三百の﹁社会保障の一般化に関する法律﹂で麩超・
これらの法律の基本方針となったのが︑当時社会保障総務長官であったピエール・ラロック︵霊Φ胃Φ↑碧o自Φ︶の
お ソ
.立案によるいわゆるラロックプランである︒ラロックプランの中核をなすのは︑管理運営および財政について国からの独立を謳った﹁自律性の原則﹂︑社会保障の対象を被用者以外にも拡大しようとした・コ般化原則﹈︑および管理運︐︒営を一元的に行うことによって効率化を目指した﹁単歪庫原則三あつ︵超ご﹂のなかの﹁自律性の原則﹂とは・﹁管
@理運営制度における自律性原則﹂ど﹁財政的自律性原則﹂から遼・﹁財政的自律性原則﹂とは・社会保障の財源を
︐国庫に依存することな↑︑被保険者や使用者なピ関係当事者の支払う保険料や拠出金のみで護するもので曇・フ
︑ランスの社会保障は﹁自律性原則﹂のもとで共済組合的な社会保険を中心として発展してきたのであって︑そこにお
いては国家は︑後見監督機関としての役割を与えられるのにどどまって藁・
@
サ在のフランスの社会保障において︑国家の介入が増大しつつあることは事実で曇・しかし社会保障が国家主
定の距離をおきながら構成ざれてきたことは︑国庫を財源とする無拠出給付を社会保障とは異なる論理のもとに位置 ︵39︶ づけることになったのである︒
三 フランス社会保障制度の現在 ー一般制度を中心に1
ー フランス社会保障制度の概要 ︑ ・
フランス社会保障制度の特徴は︑当事者自治︑および共済組合的性格を残した職域別の社会保険ということに集約
される︒︐現在のフランス社会保障制度の主たる法源は︑社会保障法典︵OoユΦOΦ冨゜︒舎巨9︒o巳巴Φ以下︑本法典中
.フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四四七 ︑
四四八
ゐ の条文を参照するときはCss.と略す︶である︒同法典は︑冒頭において次のように社会保障の原則を定めてい
る︒Css.L.一=1一条
﹁社会保障組織は国民連帯の原則にもとつく︒
社会保障組織は︑稼得能力を減少あるいは消滅させる恐れのあるすべての要保障事故︵口乙︒ρ已Φ︒︒︶から︑労働者お
よびその家族を保障する︒社会保障組織は︑母性︑父性の負担︑および家族の負担もまた対象とする︒﹂
﹁社会保障組織は︑この法典に定められた枠内において︑社会保険︑労働災害および職業病︑老齢手当︑ならびに
家族給付の業務をおこなう︒﹂
せ この条文で述べられている社会保障組織とは︑社会保障における基礎制度︵﹃侭雪o昔9︒・Φ︶のことである︒基礎
制度は︑商工業被用者を対象とする一般制度︵誌o︒戸日Φo︒合曾巴︶︑公務員などを対象とする特別制度︵品聴∋①切︒︒冨♀
p巨︶︑自営業者などを対象とする自治制度︵忌σ︒5Φ゜︒き8⇒o日Φc︒︶︑および農業従事者を対象とする農業制度︵款§Φ ロ 提口o巳Φ︶から構成されている︒
職業人口のなかで商工業被用者の占める割合が格段に増加した現代においては︑一般制度は﹁加入者数においても ︵43︶ ︵44︶財政規模においても最大の社会保障組織﹂であり︑名実共にフランス社会保障制度の中心的役割を果たしている︒以
下では︑一般制度を中心として社会保障制度の概要を見ていこう︒
2 一般制度の構成
一般制度は︑フランスに居住する商工業被用者を加入対象としており︑Css.L.三=﹁二条は﹁その年齢に
かかわらず︑また︑たとえ年金受給者であっても︑その国籍︑性別に関わらず︑一人または複数の使用者のもとで︑
賃金を支払われるすべての人あるいはその資格や場所の如何にかかわらず労働するすべての人は︑その報酬の金額お
よび性質︑その契約の形態︑性格︑あるいは有効性にかかわらず︑一般制度の社会保険に強制的に加入する﹂と規定
している︒つまり特別制度の対象とならない被用者は︑一般制度に加入することを義務づけられる︒一般制度に加入 お ・する労働者は︑家族手当および労災補償を除く社会保険について︑保険料の労働者負担分を支払う義務を負う︒一般 り 制度の社会保険によってカバーされる要保障事故は︑Css.L.三=ー一条に規定されており︑﹁疾病︑障害︑
老齢︑死亡︑寡婦あるいは寡夫︑および出産﹂である︒また一般制度は︑社会保険に加えて﹁労働災害および職業病﹂
に対する補償と﹁家族給付﹂を扱う︒ あ 管理運営主体は金庫︵6餌﹂乙︒°・︒︶である︒金庫は︑全国レベル︑地方レベル︑県レベルという階層構造を取っており︑
疾病や労災については︑全国被用者疾病保険金庫︵CNAMTS︶を頂点に︑地方疾病保険金庫︵CRAM︶︑初級
疾病保険金庫︵CPAM︶が業務にあたる︒老齢については全国被用者老齢保険金庫︵CNAVTS︶が対応するが︑
これは下部組織を持たない︒家族給付については︑全国家族手当金庫︵CNAF︶︑県単位で設置されている家族手
当金庫︵CAF︶という構成になっている︒保険料の徴収は︑社会保障・家族手当保険料徴収連合会︵URSSAF︶
が一括して行う︒給付や窓口業務は︑疾病についてはCPAM︑家族給付についてはCAFがあたる︒老齢について ゼ はCNAVTSが下部組織を持たないためCRAMがこれにあたる︒拠出と給付について︑いわば入り口がひとつな
のに対して︑出口が複数存在するといえるだろう︒
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四四九
〆
四五〇
3 一般制度の給付
一般制度に加入した被保険者が受給できるのは︑①社会保険︵労災・職業病を除く︶給付︑②労災.職業病に関す
る給付︑③家族給付に分類される︒①社会保険については︑︵一︶疾病・出産保険︑障害保険︑︵二︶死亡保険︑︵三︶ が 老齢保険︑︵四︶寡婦︵寡夫︶保険︵器゜・巨自8<Φ己く譜①︶からなる︒﹁これらの権利の取得要件および給付内容につ ゼき︑国籍による異なる取り扱いは存在しない﹂とされるが︑外国人がこれらの給付を受給するためには︑合法的に居 ︵50︶住していることが必要となる︒
②労災・職業病に対する給付は︑﹁治療︑リハビリテーション︑職業再訓練等に関する現物給付﹂︑﹁一時的労務不
能に対する休業補償給付﹂︑﹁恒久的労務不能に対する年金﹂︑﹁被災者が死亡した場合の遺族年金﹂︑および﹁葬祭 ︵51︶料﹂からなっている︒ ヨ ③家族給付については︑フランスでは人口の伸び悩みが戦間期以来の懸案であり︑かつては隣国ドイツとの国力比
較という観点から︑現在では急速に進行する高齢化対策という観点から︑政策上重要な位置を占めている︒
以上のように︑フランスの社会保障制度は︑保険料拠出を主たる財源とする社会保険を中心として構成されて ︵53︶ ︵54︶いる︒しかし社会保険的構成は︑被保険者が有効な拠出を為しえてこそ機能しうる︒したがって︑すでに貧困な状態
にあって新たな拠出が困難な者に対しては︑社会保険的構成のもとでは有効な所得保障が困難になる︒こうした問題
点に注意を払いながら︑次節では社会保険的構成の限界を検討する︒
︵16︶ 川口美貴﹃国際社会法の研究﹄︵信山社︑一九九九年︶三八一頁︒また社会的保護の概念は︑社会保障費用の国際比較の 観点からも重要とされている︒藤井良治﹁総論 ーフランスの社会保障体系1﹂藤井︑塩野谷編﹃先進諸国の社会保
障6 フランス﹄︵東京大学出版会︑二〇〇〇年︶.一〇頁参照︒
︵17︶ 藤井良治﹃現代フランスの社会保障﹄︵東京大学出版会︑一九九六年︶二二頁︒
︵18︶ ﹁法典が定める社会保障組織の中に﹃失業﹄および﹃社会福祉﹄に関する組織が含まれて﹂おらず︑﹁フランスでは︑こ
:の2つは︑﹃本来の社会保障﹄ないしは﹃法定社会保障﹄を補足するもあという位置づけがなされている﹂︒藤井・前掲注
︵17︶二一頁︒ ︑ ﹁
︵19︶ 川口・前掲注︵16︶三八一頁︒
︵20︶ 川口・前掲注︵16︶三八一頁︒ ︑
︑. ︵21︶ 川口・前掲注︵16︶三八一頁︒ ︵22︶ 法律学の教科書や判例の分類においてこうした立場が取られている9例えば︑﹄Φふ51国︒qΦ9①自合碧良b知○這b吋宝怠−
○§隠句OO§㎏的⑳登こrO°OC︵目碧已eub︒O臼には無拠出給付に関する記述はごくわずかしか存在しない︒これに対し
て︑芦合巴coo碩Φ詳P国o亘㊦詳↑§﹃Pbδ鷲§↑︑9登Q災合忘↑︑§昌§句ooざ↑霧令登今二≦o暮o宮o°・e冨PNOO心︒はその題名にも
かかわらず︑︐社会保障法典に規定されている老齢者および障害者のための給付制度について詳述している︒これはべ国.﹀日5−
合見﹄6註§災9合80§⑩句㎏︒音゜O巴oNw﹂Φ◎︒やにおいても同様である︒他方で︑﹄Φ自と8ρ已oωOεΦ胃o∈︵魯③巨﹃Pbさ☆合
§是§註款句06ざ合寒・登゜O巴oNピト︒OO一のように社会的保護に関して網羅的に取り扱っているものもある︒
︵23︶ 田端博邦﹁フランスにおける社会保障制度の成立過程﹂東京大学社会科学研究所編﹃福祉国家2 福祉国家の展開田﹄︵東
京大学出版会︑︐一九八四年︶一一五頁︒
︵24︶ 田端・前掲注︵23︶=七頁︒ ︑
︵25︶ 田端・前掲注︵23︶一︑一五頁︒ ︐ .
︵26︶ 田端・前掲注︵23︶=五頁︒ .
︵27︶ 田端.前掲注︵23︶一四五頁以下を参照︒﹁共済組合原則﹂と﹁国家主義﹂との対置については﹁もっぱら集団︵σ︒﹃o唇?
∋Φ2︶の利益によって動機づけられる仲間同士の友情ある関与と︑責任を負わず︑常に独立性を保持するとはいえない官吏・
の規則との間には︑共通するものは全くない﹂として表される︒田端・前掲注︵23︶一四七頁︒また一九世紀に創設された
共済組合の内部には﹁自ずと相互扶助組織としての自律性が内在する﹂といわれる︒伊奈川秀和﹃フランスに学ぶ社会保障 改革﹄︵中央法規︑二〇〇〇年︶六四頁︒ . .
フランズにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五ー一︶ 四五一
四五二
︵28︶ 藤井・前掲注︵17︶一八頁︒また﹁﹃社会保険から社会保障へ﹄という定式は︑所得保障システムの多様化と人的適用範
囲の拡大とを意味する﹂とされる︒加藤智章﹃医療保健と年金保険 フランス社会保障制度における自律と平等﹄︵北海道
図書刊行会︑一九九五年︶四頁︒
︵29︶8〒●B5°︒O唇︒胃o反9きqPbさ昌合§切魯×註瓜8息9Q寒︒霞゜二︶巴oNふOO一カ゜ωOぷコ08一゜
︵30︶ ラロックプランがベヴァリッジ報告から受けた影響については︑加藤智章﹁フランス社会保障制度の構造とその特徴
ーラロックプランの成立までー﹂北大法学論集三五巻三・四合併号︵一九八四年︶一八五頁以下に詳しい︒
︵31︶ 田端・前掲注︵23︶一二五頁︒
︵32︶ 一九四五年から四六年にかけての一連の社会保障立法を形成したのは︑フランス解放に大きく貢献した労働者階級であっ
た︒このことから︑社会保障は労働者の﹁獲得物﹂と見なされていた︒工藤恒夫﹃現代フランス社会保障論﹄︵青木書店︑
一九八四年︶一四〇頁参照︒
︵33︶ 田端博邦﹁社会保障の歴史﹂藤井︑塩野谷編﹃先進諸国の社会保障6 フランス﹄︵東京大学出版会︑二〇〇〇年︶=
五頁︒
︵34︶ 加藤智章﹃医療保健と年金保険 フランス社会保障制度における自律と平等﹄︵北海道図書刊行会︑一九九五年︶二頁︒
︵35︶ 加藤・前掲注︵34︶四九頁︒
︵36︶ 加藤・前掲注︵34︶四九頁︒
︵37︶ 加藤・前掲注︵34︶四九頁︒
︵38︶ 伊奈川秀和﹃フランスに学ぶ社会保障改革﹄︵中央法規︑二〇〇〇年︶一〇八頁以下参照︒
︵39︶ 呂﹄o品Φ§魯5︒↑§﹃Pbさ画s§↑︑99災§↑︑§§さ899$ミO§Sさ吻試§bO8も﹄9°︒°
︵40︶ 現在の法典は︑一九八五年=一月一七日のデクレ第一三五三号によって成立した︒滝沢正﹃フランス法 第二版﹄︵三省
堂︑二〇〇二年︶三二一二頁︒
︵41︶ 藤井・前掲注︵16︶九頁︒
︵42︶ 藤井・前掲注︵16︶九頁︑加藤・前掲注︵34︶七頁︒
︵43︶ 藤井・前掲注︵16︶=二頁
︵44︶ ﹁フランスの社会保障は一般制度によってその特徴を知ることができる﹂とされる︒藤井・前掲注︵16︶一三頁︒
︑︵45︶ 川口・前掲注︵16︶三八三頁︒
︵46︶ラランス社会保障制度の概要については︑伊奈川・前掲注︵16︶三三三頁以下に詳しい︒
︵47︶ このような制度構成の成立については︑一九六七年改革に関する加藤二四二頁以下を参照︒
︵48︶ 寡婦︵寡夫︶保険は︑子を養育中あるいは九年間以上一六歳以下の子を養育していた五五才以下の再婚していない生存配
偶者に対して︑︑一時的に最低所得を保障する寡婦︵寡夫︶手当︵巴089⇒<︒已毒σqΦ︶︵Css.L.三五六−一条以下︶を
保険料拠出を条件に支給する︒川口.前掲注︵16︶三八六頁参昭⁝︒
︵49︶ 川口・前掲注︵16︶三八六頁︒
︵50︶ Css.L.︑一一五−六条︑L.=五−七条︒
︵51︶ 川口・前掲注︵16︶三八六ー三八七頁︒
︵52︶ Css.L.五一一−一条以下で規定される家族給付は一〇種類以上にのぼる︒家族給付の詳細にρいては︑岩村正彦 ﹁EC社会保障規則による家族給付の支給調整︵一︶ ーフランス家族給付のEC加盟国民への支給をめぐってー﹂
法学五三巻二号一六頁以下参照︒ ・ ︑ . . −
︵53︶ ﹁フランスの社会保護制度は︑基本的には職業活動に基礎を置いている︒社会保障は労働所得からの拠出を主たる財源と
し︑・労使の代表によって運営されている︒こうした社会保障の歴史的特徴は︑⁝国と税が重要な役割を果たしているア
ングロサクソン諸国の制度と大きく異なる﹂︒藤井・前掲注︵17︶二二頁︒
︵54︶†﹄°O唇Φ胃o巨∨§°9ひ゜も゜c︒OQ︒7 ︐ ︑ ︑
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五ー一︶ 四五三
1
四五四
第二節社会保険的構成の限界−最低所得保障の必要性ー
一 老齢者最低所得保障給付︵∋ゴ一ヨ⊂ヨく苗≡ΦωωOMV︶の成立 ︵55︶1 老齢者の所得保障の必要性
フランスの社会保障が﹁ベヴァリッジの目標をビスマルクの方式で﹂と述べられることは前述した︒これは︑社会 ︵56︶保障の手段あるいは方法においては︑社会保険の技術を採用することを意味している︒しかし︑顕在化した貧困につ
いて当事者に拠出を求めることは不可能であり︑この点で拠出を給付の前提とする社会保険の限界は明らかであっ
た︒第二次大戦直後のフランスでは︑ラロックプランのもとで新たな社会保障制度が構築されていた一方で︑貧困な ︵57︶老齢者に対する所得保障についても可能な限りの措置が講じられていた︒ ︵58︶ 貧困な老齢者に対する所得保障の必要性は︑第二次大戦中から指摘されていた︒戦前の一九三〇年社会保険法のも
とでは︑被保険者が六〇歳に達したときに三〇年以上の保険料拠出を条件として︑賃金の四〇%が退職年金の最低額 ︵59︶として保障されると制度設計されていた︒しかし一九三〇年法成立時に︑すでに壮年期や老年期にあった者は︑三〇
年以上の拠出を果たすことが事実上不可能であった︒したがって一九三〇年法のもとでは︑実際に受給できる年金は ︵60︶低水準にとどまるか︑あるいは無年金者を生じさせた︒このような事態に対して︑ナチス・ドイツ占領下のヴィシー
政府は︑一九四一年三月一四日法のもとで無拠出の老齢福祉年金である老齢被用者手当︵呂o⇔昌o⇒餌∈︵蕊Φ∈︵け﹃㌣ ︵61︶<巨oξ゜︒°・§忌゜︒AVTS︶を創設した︒大戦後のフランス政府は一旦︑一九四一年三月一四日法の無効を宣言した ︵62︶後に︑一九四五年二月二日のオルドナンスによって︑新たな老齢被用者手当を創設した︵一九四八年には被用者以外 ︵63︶を対象として老齢非被用者手当が創設された︶︒無拠出給付である老齢被用者手当は︑社会保険給付とは性格が異な
︵64︶り﹁老齢者の所得保障の緊急性と必要性の高さに対応するもの﹂であった︒
2 付加手当︵巴oo昌05°︒已暑ほヨ①2母o︶の創設 ︑ ︐ ︵65︶ AVTSは︑老齢者の所得保障としては不十分と見なされていたことから︑一九五六年六月三〇日法は︑国民連帯 ノ
基金︵呵O白α切づ旬試O﹃P知一qΦo力○已q騨昌吟ひ︶を設置して︑老齢者に対して無拠出給付である付加手当︵巴8豊自c・6冨ひ白雪− ︵66︶ ︵67︶ひ書Φ︶を創設した︒また一九五七年には︑付加手当の対象者は障害者にも拡大された︒ ︵68︶ 付加手当は︑収入︵﹃Φo力◎◎︵り已﹃︵WΦ︶がデクレで定められた額未満の者に対して︑個別的に当事者の収入を補足するも ..︐
のである︒当時の政府は︑付加手当とAVTSの併給を認めることによって︑老齢者に対する所得保障の充実を目指
︵69︶
していた︒AVTSおよび付加手当はいずれも事前の拠出を必要としない無拠出給付であることから︑これらの手当を併給したときの合計額が老齢者の最低所得となった︒AVTSに付加手当を加えたものは﹁老齢者最低所得保障給︵70︶ . ︵71︶付︵∋巨∋巨⇒己Φ巨①゜︒°︒o以下MVと略す︶と呼ばれている︒
加藤教授によると﹁︵MVは︶単一の給付によって実現されるものではなく︑いくつかの年金や手当から構成され︑ ︵72︶二つの段階に分類され﹂る︒﹁第一段階は︑老齢基礎手当︵巴o︒昌oつ目白巨巴ΦO⑦ぴ9Φ︶といわれ︑拠出制年金や老
齢被傭者手海によって充当される・﹁第二段階は国民連帯基金による付加手当であり老齢被傭者手当や拠出制年 ゆ 金の支給によっても老齢者に対する所得保障として十分でない場合に︑それを補うものとして支給される﹂︒
たとえば老齢年金を含めた総収入額がAVTS額を上回るものの︑デクレで定められた額を下回る場合には.おお
むねその差額分を補足する付加手当が支給される︒したがって付加手当の支給額自体は一律ではなく︑申請者の収入
状況に応じて個別的に算出される︒ . ︑
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四五五
四五六
二 現在におけるMVの状況と構造
ここで現在のMVのおかれている状況とその構造を見ておこう︒なお︑国民連帯基金は一九九四年に改組されて︑ ︵75︶ ︵76︶老齢部門は老齢連帯基金︵FSV︶が担当することになった︒AVTSは︑現在も老齢年金の支給額の指標として頻
︵77︶ ︵78︶繁に参照されるが︑前述のとおり一九三〇年社会保険法に対する経過措置なのでいずれは消滅する︒また拠出制年金
給付の充実によって︑付加手当の支給対象者は次第に減少しつつある︒老齢部門の付加手当の受給者数は︑一九九〇 ︵79︶年の一一八万二千人に対して一九九九年一二月には七二万七千人にまで減少している︒MVの構成についても︑第一
段階は拠出制老齢年金給付で満たされて︑第二段階の一部を無拠出給付である付加手当で補足するというケースが見
られるようになった︒以下ではMVの構成を図一を使って具体的に見ていこう︒
1 第一段階
当事者に何らかの収入がある場合には︑まず第一段階に充当される︒一九三〇年法の対象者であって︑六五歳以上 ︵80︶でフランス本土あるいは海外県に居住しており︑総収入額がAVTS額に満たない場合には︑それを上限として個人 ︵81︶に応じた額のAVTSが支給される︵Css.L.八=1一条以下︶︒
一般制度あるいはその他の制度に加入していて︑何らかの老齢年金を受給している場合には︑Css︒L.八一四
ー二条による加算規定が適用される︒対象者は六五歳以上︵障害年金受給者は六〇歳以上︶で︑総収入︵拠出制年金
給付を含む︶がAVTS額を下回る者である︒この要件に該当する者は︑加入している制度から追加的に給付を受け ︵82︶ることで︑総収入はAVTS額まで引き上げられる︒これを﹁﹂.八一四−二条による加算︵日巳○冨け﹂oづ合い゜o︒一十
︵83︶︵84︶
b。)
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・・ −− ・ ウ﹈︑ ︵5
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四五七
、
四五八
AVTSの対象外の者で︑かつ︑いかなる年金受給権も持たない無年金者は︑L.八一四ー一条によって︑特別手
当︵巴06昌8°︒冨口芭①︶が支給される︒その支給額は︑AVTSにほぼ等しい︒
2 第二段階 ︵85︶ 当事者の総収入がAVTS額まで引き上げられたのち︑第二段階としてMV基準額を上限として付加手当が支給さ
れる︒付加手当の受給要件はCss︒L︒八一五−二条以下に定められており︑六五歳以上の者︵障害年金受給者は ︵86︶六〇歳以上︶でフランス本土あるいは海外県に居住しており︑収入がデクレで定められた額未満で︑第一段階に充当
される何らかの給付もしくは収入がある場合とされている︒第一段階︑および第二段階ともに手当支給要件が六五歳
以上となっているので︑MVの対象者は六五歳以上の老齢者となる︒
付加手当の支給業務は︑年金支払担当機関︵具体的にはCRAMなど︶または第一段階に充当される手当の支払担 ︵87︶ ︵︒︒°︒︶当機関がおこなう︒付加手当の財源は租税であり︑FSVを介して支払担当機関に償還される︒収入として認定され
る範囲は︑年金給付︑職業活動による所得︑地代収入などが含まれる︒さらに申請者の保持している動産および不動 ︵89︶産の市場価値の三%が収入として認定されるが︵Css︒R︒八一五ー二八条︶︑現に居住している土地建物はそこ
から除外される︵Css︒R︒八一五ー二五条︶︒また家族手当給付も収入から除外される︒収入の認定に際しては︑ ︵90︶書面での審査が原則であり︑現場での調査は例外的である︒その他︑付加手当受給者の被相続財産に対して︑手当の ︵91︶支給に要した費用が事後的に回収されることがある︒
ここまで老齢の場合における社会保険的構成の限界とともに︑その対応策としてのMVを取り上げてきた︒前述の
ように保険料拠出が期待できないところでは社会保険制度は機能しないのであって︑MVは︑新たな拠出が不可能な
︵92︶ 引退労働者の所得保障の必要性に対応するものである︒
ところで保険料拠出という点から考えるとき︑失業問題は社会保険的構成を選択しているフランス社会保障制度に
・ 大きな打撃を与えることになる︒フランスの失業率は九〇年代をとおして一〇%付近で推移しており︑また︑離職期
︵93︶ 間は平均で=一ヶ月を上回っている︒こうした失業問題は︑フランスの社会的保護にどのような影響をもたらしたの
だろうか︒この観点から︑次節ではさらに広い人的対象範囲を持つ最低所得保障制度について検討を加えていこう︒
︵55︶ 藤井・前掲注︵17︶=二四頁以下︑および加藤・前掲注︵34︶一・九〇頁以下参照︒.
︵56︶十↑06Φ胃o日︾§°9ごb◆c︒びc︒°
︵57︶ 加藤・前掲注︵34︶一九二頁︒
︵58︶ 中上光夫﹁フランスにおける高齢者最低所得保障の起原 ﹈老齢被用者手当1﹂国際地域学研究第二号︵一九九九
年︶六二頁︒
︵59︶ 田端・前掲注︵33︶一〇九頁︒
︵60︶ 中上・前掲注︵58︶六〇頁︒
︵61︶ 中上・前掲注︵58︶六三頁︒一九三〇年法施行時において三〇歳以上の者は︑五年間の拠出を条件に最低年金が保証され た︒しかしその給付額は︑満額の年金額の三〇分の一に拠出年数を掛けた額か︑あるいは六〇〇フランのいずれか高い方の
額とされた︒
︵62︶ 加藤・前掲注︵34︶八〇頁︒
︵63︶加藤・前掲注︵34︶一二五頁︒ちなみに老齢非被用者手当の支給額は老齢被用者手当の半額であった︒加藤・前掲注︵34︶
一九五頁参照︒
︵64︶ 加藤・前掲注︵34︶八二頁︒
︵65︶ 加藤・前掲注︵34︶一九五頁︒ ︐
︵66︶ ぺ○ゴきξい︑9bo9巨Φ日98ロ巴98霧註巨.﹂o目巴合O量o号Φ烏盆巴惹O碧︒︒一.椙巳8註8貯5否巴︒︒Φ合貸o宕8昌ヨ巨窟亨
・昌Φユo冨゜︒舎巨法゜︒oo巨o知∈︻≧σa宣Φ田゜︒︐亘宮88合呵oa°︒5豊05巴ユΦ゜︒o巨呂貫知b跨uお㊤N∨b°一〇〇一九五六年法が成立
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四五九
四六〇
した背景にはアルジェリア独立戦争の影響もあったといわれる︒﹁安心して出発せよ︒国が諸君の老後を見る﹂として召集
兵の精神面を支える役目も持っていた︒
︵67︶ド09已ジ゜§◆95°も﹂8
︵68︶†﹄°O唇Φ胃o巨§°9S°も゜Φ一〇°
︵69︶ 加藤・前掲注︵34︶一九二頁︒
︵70︶ この訳語については︑加藤・前掲注︵34︶二〇九頁︑注1にしたがった︒
︑︵71︶ ﹄と゜O唇Φ胃o巨§°9S.も゜Φ8°
︵72︶ 加藤・前掲注︵34︶二〇〇頁︒
︵73︶ 加藤・前掲注︵34︶二〇〇頁︒
︵74︶ 加藤・前掲注︵34︶二〇〇頁︒
︵75︶ FSVは国の機関として一九九四年一月一日に設置された︒﹄と﹄唇Φ胃o巨§°§°も゜O°︒°︒㌧
︵76︶ 障害部門は︑障害特別基金︵FSI︶が担当する︒﹄と゜O唇Φ胃o反§°§Pc︒9°
︵77︶ ﹁AVTSは︑一般制度の年金の最低基準として用いられており︑その意味で現在は象徴的役割を果たしている﹂とされ
る︒藤井・前掲注︵17︶ニニ五頁︒
︵78︶ 一九八四年の新規申請はたった二件であった︒中上・前掲注︵58︶七二頁参照︒またAVTSの受給者数は︑一九五九年
には七六万八千人であったのが一九八三年には四万七千人にまで減少している︒藤井・前掲注︵17︶=二五頁参照︒
︵79︶十﹄°O已駕胃8×uo95°も゜巴ρ
︵80︶二〇〇一年一月一日現在で単身者年間一八〇二四フランである︒
︵81︶ 加藤智章﹁第6章 年金制度﹂藤井︑塩野谷編﹃先進諸国の社会保障6 フランス﹄︵東京大学出版会︑二〇〇〇年︶一
四〇頁︒
︵82︶ V﹄°O唇Φ胃o巨∨§°註S°;右Φ一〇°
︵83︶ 霊註︒×≦巴︒;暮﹃Pミ§ふ§ミ瓜§§§竺●軌鮪§So目合§↓§§∨§§へ災§↑︑べ§§信§§ぷ9合ρ呵ロ一⑩零も゜8°﹄1
﹄°O已OO胃o己七§°9ごb◎一〇°
︵84︶ ﹁﹂.八一四−二条による加算﹂に要した費用は︑FSVによって負担される︒﹄LOにb①胃o巨§°昆゜も゜Φ一〇
︵85︶.二〇〇一年一月一日現在で︑単身者年間四三八四八フラン︑夫婦二人の世帯で年間七八六七〇フラン〇十90已駕胃o巨§°
昌゜も゜Φ一心︒右収入基準額よりもMV基準額の方が低く設定されている︒
︵86︶ 二〇〇一年一月一日現在で︑単身者年間四四九一四プラン︑夫婦二人の世帯で年間七八六七〇フラン︒
︵87︶ FSVの財源は︑一般化社会拠出金︵CSG︶︑雇用者分担金にかかる八%の税︑社会連帯社会拠出金の黒字分などから
なる︒﹄と゜06Φ胃o日∨§°o泣゜も゜㎝o︒c︒° ・
︵88︶﹄と゜O唇Φ胃℃長§§°も゜巴O
︵89︶ 申請日から遡って五年以内におこなわれた卑属に対する贈与については︑その市場価値の三%が︑五年以上一〇年以内の
贈与については一・五%が収入として認定される︒申請日から遡って一〇年以内におこなわれたそれ以外の者に対するの贈
与の場合には︑受贈者から贈与者に対して終身年金が支払われているものと見なされる︵Css.R.八一五−二五条およ
びR.八一五−二八条︶︒
︵90︶ 中上・前掲注︵58︶七七頁︑注三︒
︵91︶﹄1﹄﹄唇Φ胃o日u§°§°も゜O一心︒°また﹁FNSの付加手当の受給者が死亡して二五万フランを超える遺産があったばあい︑.
.二五万フランを超える遺産は国が徴収する﹂︒藤井・前掲注︵17︶一三六頁︒なお回収については︑五年間で時効となる︵C
ss.L.八一五ー一二条︶︒
︵92︶ 加藤・前掲注︵34︶一九五頁︒−
︵93︶ 日本労働研究機構編﹃海外調査シリーズ五ニ フランスの労働事情﹄︵日本労働研究機構︑二〇〇一年︶三七頁︒
第三節社会保障上の無拠出給付と国籍要件
一 社会的ミニマム︵∋一コ一∋①ωOO一①⊂×︶の成立 ︑ ︐
︑ 1 現代における社会保障の課題現代フランスの社会保障は︑高失業率および離職期間の長期化という二重の意味で重大な失業問題に直面して
フランスにおける社会保障給付と内外人平等原則︵一︶ ︵都法四十五−一︶ 四六一