人間中心設計 にお け る成 熟度 モデルの考 え方
平 沢 尚 毅
1.は じ め に
情 報 技 術(lnformationTechnology:以 下IT)の 急 激 な発 展 と もな い,複 雑 な あ る い は こ れ ま で の 経 験 に な い 操 作 系 が市 場 に 出 回 る こ とに な っ て い る 。 そ の た め,製 品 のユ ー ザ ビ リ テ ィに 対 す る 関心 が,こ の 数 年 高 ま りつ つ あ る 。 一 般 的 に
,製 造 業 で は ユ ー ザ ビ リテ ィ活 動 は 製 品 の 使 いや す さ を扱 う故 に,デ ザ イ ン部 門 の 担 当 で あ る とみ な さ れ て き た。 特 に,国 内 で は 開発 の 最 終 段 階 で の 操 作 性 の 評 価 を指 して 言 う こ とが 多 い 。
一 方 ,ISO13407に 示 さ れ る よ う に,ユ ー ザ ビ リテ ィ活 動 はユ ー ザ テ ス テ ィ ン グ に と ど ま る も の で は な く,開 発 上 流 か ら製 造 を経 て 販 売,保 守 に至 る全 て の 製 品 ラ イ フサ イ ク ル に お い て 実 施 され る もの で あ る 。
これ らの 活 動 を改 善 す るた め に は,ISO9000sの よ う に活 動 の可 否 を2値 的 な 評 価 で 行 う よ り も,企 業 の 状 況 に応 じた 細 か な対 応 で あ る こ とが 望 ま しい 。 適 切 な評 価 レベ ル の設 定 に よ っ て,正 し く現 状 を把 握 し,次 の 目標 に 向 か っ て, 段 階 的 にユ ー ザ ビ リ テ ィ活 動 の 改 善 を計 画 す る こ とが で き る。 こ の段 階 的 な レ ベ ル 設 定 を記 述 した もの が 成 熟 度 モ デ ル(maturitymodel)の 特 徴 で あ る。 人 間 中 心 活 動 に対 す る成 熟 度 モ デ ル は,製 品 の ユ ー ザ ビ リテ ィの み な らず あ る い は 情 報 シ ス テ ム 開 発 組 織 の 評 価 に は欠 か せ な い もの で あ る。現 在(2000年4月) の段 階 で,国 際 的 に い くつ か の 研 究 グ ル ー プが ユ ー ザ ビ リテ ィ に 関 す る 成 熟 度 モ デ ル研 究 を進 め て い る 。 本 報 告 は,そ の 中 の特 徴 あ る 成 果 につ い て 解 説 を行
う。
〔195〕
196 商 学 討 究 第51巻 第1号
2.INUSE(lnformationEngineeringUsabilitySupportCentres) プ ロ ジ エ ク ト
2‑1.UsabilityMaturityモ デ ル
欧 州 に お け るINUSEプ ロ ジ ェ ク トの 中 でWP(WorkPackage)5と し て,
"A
ssessmentofUsabilityEngineeringProcess"と し て 次 の2つ の プ ロ ジ ェ ク トが 行 わ れ,現 在 も継 続 さ れ て い る 。
1)WP5.1
2)WP5.2
ToidentifyamaturityassessmentprocessforUsabilityEn‑
gineeringProcessesinanorganization'sdevelopment,lifecy‑
cle"
ToinvestigateformalschemesforqualityasSuranceofusa‑
bilityprocedures,productsandstaffperformingwork 、
WP5.1で は,人 間 中 心 設 計 が ど の 程 度 の 成 熟 度 で 達 成 さ れ て い る か を 評 価 す る こ と を 目 的 と し て 次 の2つ の 研 究 が 実 施 さ れ て い る 。・こ れ が,工NUSEに お け るUsabilityMaturityモ デ ル(以 下UMM)で あ る 。
a)UsabilityMaturityModel:Processes(Earthy,(1998a))
,b)UsabilityMaturityModel=HumanCentrednessScale(Earthy,(1998b))
一 方 ,WP5.2で は,・ユ ー ザ ビ リ テ ィ コ ン サ ル テ ィ ン グ を 行 う 企 業 と,IT 製 品 の 利 用 品 質 の 保 証 を ど の 様 に 与 え る か と い う こ と が 検 討 さ れ て い る 。 ユ ー ザ ビ リ テ ィ フ ン サ ル テ ィ ン グ サ ー ビ ス を 与 え る 企 業 に つ い て は,前 述 の2つ の UMM:UsabilityMaturityMode1を 併 用 し た 評 価 手 法 を 提 案 し て い る 。 ま た, IT製 品 に つ い て は,「ISO13407に 準 拠 し て 設 計 さ れ た 」 と い う こ と を ど の 様
な 手 順 で 評 価 す る か が 案 と し て 示 さ れ て い る 。 こ の 文 書 案 に お い て 「認 証
(certification)」 に 必 要 な 項 目 は 次 の も の と さ れ て い る 。
口 口 口 口 口 口 口 口 口
人間 中心設 計 にお ける成熟 度 モデ ルの考 え方 登録 された製造者 の名前 と住所
製造場所(上 記 の異 な る場合) 認証 された製品 のID
製品が 意図す る利用状 況の記述
製造段 階で実施 された アセス メ ン トの詳細 認証機 関の名前
全て の認証 基準へ の参 照 認証番号 と認証の 日付 有効期 間
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こ こ で の 認 証 作 業 は,製 品 の 製 造 中 も し くは 製 造 後 に顧 客 また は認 証 機 関 の 要 求 に よ り実 施 さ れ,最 終 的 に認 証 を受 け た 製 品 は認 証 機 関 の 発 効 す る 「 マ ー ク(未 定)」 を 使 用 す る こ と と な っ て い る。 い ず れ に し て も,INUSEに よ る 認 証 方 法 は検 討 段 階 で あ り,実 現 され て い る もの で は な い 。 む しろ,ユ ー ザ ビ リテ ィ を企 業 の 品 質 シス テ ム と して 定 着 させ る よ う な コ ンサ ル テ ィ ン グ活 動 の ツー ル と して 上 記 の 成 果 が 活 用 され る と予 測 され る。
2‑2.UsabilityMaturityModel=Processes
WP5.1の 成 熟 度 モ デ ル の1つ で あ る 『UsabilityMaturityModel:Processes』
は,表1一 ① 〜 ② に 示 す よ う に,シ ス テ ム 開 発 に お け る 人 間 中 心 設 計 に 焦 点 を あ て た も の で あ る 。 こ こ で は,人 間 中 心 設 計 活 動 を,基 本 活 動(BasicPractice)
と そ の 集 合 で あ る プ ロ セ ス に 分 け て 定 義 し て い る 。 こ こ で の プ ロ セ ス は,ソ フ ト ウ ェ ア 工 学 で 定 義 さ れ て い る 『イ ン プ ッ トを ア ウ トプ ッ トへ 変 換 す る 相 互 に 関 連 し た 一 連 の 活 動 の 集 合 』 と 同 じ よ う に 定 義 さ れ て い る も の で あ る 。 こ の プ
ロ セ ス の 中 で,2,3,4,5,6に つ い て は,ISO13407Human‑centred
designprocessesforinteractivesystemsに お い て 定 義 さ れ て い る も の と対 応 可 能 で あ る 。
こ の モ デ ル は,人 間 中 心 活 動 の 定 義 と と も に,そ れ ら を 遂 行 す る た め の 組 織
198 商 学 討 究 第51巻 第1号
表1UMMに よ る開発 プ ロセスの 人間 中心性 評価 ①
プ ロ セ ス 基 本 活 動(BasePractice)
1シ ス ゲム戦 絡 におい て 鷺CDの 内容 を確
認 する
㌔1) エ ン ドユ ー ザ ー の 声 を表 現 す る。
2) 市場 に関する知識 を収集す る。
3) シ ス テ ム の 戦 略 を 定 義 し,計 画 す る。
4) 市 場 の フ ィー ドバ ッ クを 収 集 す る。
5) ユ ー ザ ー の トレ ン ドを分 析 す る。
壌 慧C簿季続 きを讃函す る
玉
1) ス テ ー ク ホ ル ダ ー を 明 確 にす る。
2) ス テ ー ク ホ ル ダー の 意 見 を聞 く。
3) ユ ーザ ー の 開 発 へ の 参 加 を具 体 的 に計 画 す る 。 4) HCD手 技 法 を 選 択 す る。
5) プ ロ ジ ェ ク ト内 でHCDア プ ロー チ を明 確 にす る。
6) HCD開 発 プ ロ セ ス を計 画 す る。
7) HCD開 発 プ ロ セ ス を管 理 す る。
8) HCD活 動 を組 織 的 に 支 援 す る。
9) HCD開 発の支援体制 を整備す る。
3ユ ー ザ ー と親 織 の 要 求 を1持定 鷺 す る
、;
1) シ ス テ ム の 目標 を 明確 に し,文 書 化 す る。
2) ス テー ク ホ ル ダ ー の リス ク を評 価 す る。
3) シ ス テ ム を 定 義 す る 。
4) ユ ー ザ ー と組 織 の 要 求 を 生 成 す る。
5) ユ ー ザ ビ リ テ ィ の 目的 を 設 定 す る 。
4稀 職 鼓涜 を理解 起,糠 定鵜す為'
、'1) ユ ー ザ ー タ ス ク を確 認 し,文 書 化 す る。
2) 重 要 なユ ー ザ ー属 性 を 明確 に し,文 書 化 す る。
3) 組 織 環 境 を確 認 し,文 書 化 す る 。
4) 技 術 環 境 を確 認 し,文 書 化 す る 。
5) 物 理 環 境 を確 認 し,文 書 化 す る 。
人 間中心設 計 にお け る成熟 度 モデ ルの考 え方 表1UMMに よる開発 プ ロセ スの人 間中心 性評価 ②
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プ ロ セ ス 基 本 活 動(BasePractice)
嚢 ヂザイ ン解 を舞戚す 篇
、1) 機 能 を 分 担 す る。
2) 合 成 の タス クモ デ ル を作 る。
3) シ ス テ ム デ ザ イ ン を作 る。
4) 現行知識をデザ イン解 を開発す るために使 う。
5) シ ス テ ム を特 定 して ゆ く。
6) プ ロ トタイ プ を 開 発 す る 。 7) ユ ー ザ ー 訓練 を 開 発 す る 。 8) ユ ー ザ ー サ ポ ー トを開 発 す る。
、
奪"裏 塞に対 穏竃ヂぜ インを認穣iする
ヒ'.'二 玉
1) 評価 の 文脈 を特 定 化 し,評 価 す る。
2) シ ス テ ム の 要 求 を定 義 す るた め に初 期 の プ ロ トタ イ プ を 評価 す る 。
3) デ ザ イ ン を改 善 す る た め に プ ロ トタ イ プ を 評 価 す る。
4) シ ス テ ムへ の 要 求 に 適 合 して い るか チ ェ ッ クす る た め に シ ス テ ム を評 価 す る。
5) シ ス テ ム が 要 求 され た 行 動(ス タ イ ル,規 格,法 規 な ど)が と られ た か 評 価 す る。
6) シ ス テ ム が組 織 や ユ ー ザ ー 要 求 に適 合 し続 け る か を 評価 す る 。
、