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小学校現場における授業の ユニバーサルデザイン研究の可能性と課題

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Academic year: 2021

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明星大学発達支援研究センター紀要 MISSION March/2018 No. 3

Tatsuaki Murata:関西学院初等部副校長 日本授業UD学会関西支部代表

1.はじめに         

 授業のユニバーサルデザイン(以下、授業UD)

とは、特別な支援が必要な子どもを含めすべての 子どもが楽しく「わかる・できる」授業設計である。 

今、各地で授業UD研究が広がっている。校内研 修のテーマに授業UDを掲げる小学校は珍しくな い。隣接した複数の小学校と進学先中学校が共同 で授業UD研究に取り組むケースも増えてきた。

市町村単位で授業のUD化に取り組む動きも目に するようになってきた。なぜ、こうも広がるのだ ろうか。もちろん、授業UD研究が、すべての子 どもの「できる・わかる」の実現をめざし、全国 各地の授業実践を通じて、教師がその有効性に手 ごたえをつかみつつあることが最大の理由であろ うが、ここでは、それ以外に、授業UD研究に取 り組むよさは何なのかを論じたい。

2.「共通性」と「裁量権」        

       

 どの教室でも、授業にのれない子どもがいる。

ベネッセ教育総合研究所(

2015

)によると、小学 校5年生に、各教科の好き嫌いを尋ねたところ、

「とても好き」「まあ好き」の肯定的評価が、国語

58.5

%)社会(

55.6

%)算数(

68.4

%)に留まって いる。教科によっては、授業開始時点で、二人に 一人はすでに授業から脱落しかけているというこ とだ。厳しい。この状況の中で、授業UDに可能

性を感じている教師は多い。

 授業をUD化する視点として、「共有化」「焦点 化」「視覚化」「展開の構造化」「スモールステッ プ化」などがある。(図1.)これらの視点が、授 業にのれない子どもも含めすべての子どもをなん とかしたいが、でもどこから手をつけたらいいか がわからない教師に貴重な手がかりを与えてくれ る。

 ただし、そこから先は、教師の「職人性」が問 われることになる。一言で「視覚化」と言っても、

それはあくまで具体的支援を考える際の視点であ る。何をどのように視覚化をするのか、ブライン ドをかけるのか、アップとルーズを組み合わせて 提示するのかは、自分のクラスにどのような子が いるかによって決まる。たとえ同じ教師が2年続 けて、同じ単元の授業をしたとしても、子どもが

図1.授業のUD化モデル

村 田 辰 明

小学校現場における授業の

ユニバーサルデザイン研究の可能性と課題

【寄稿】

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15 小学校現場における授業のユニバーサルデザイン研究の可能性と課題

違えば、同じ視覚化でもその方法はかわってくる ことになる。

 「焦点化」「共有化」」「視覚化」など授業をUD 化する視点がもつ「共通性」が、教師に「安心感」

を与えてくれる。さらに、そこから先で具体的支 援を考える際に、教師一人ひとりに与えられてい る「裁量権」が、自分は目の前にいる子どもにしっ かり向き合っているという教育的職人としてのや りがいを教師に感じさせる。この絶妙な「共通性」

と「裁量権」のバランスが、授業UD研究に取り 組むよさ・可能性の一つである。

3.「主体的・対話的で深い学び」と「授業UD」

 新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」

の実現が求められている。授業UDは、それとも 親和性が高い。授業UDの実践にも良い実践、そ うでない実践があるので、授業UDを掲げた実践 すべてが、「主体的・対話的で深い学び」になる とは言わない。これは、授業UDを含めどんな流 儀の実践にも言えることだ。ただ、すべてとは言 わないが授業をUD化すると、「主体的・対話的 で深い学び」に近づきやすくはなる。キーワード は「深い学び」である。

 澤井(

2017

)は、「主体的・対話的で深い学び」

について、「主体的であること、対話的であるこ とは、いずれも『いい授業』の必要条件だと言え るでしょう。ただし、必ずしも十分条件とは言え ません。『いい授業』たり得るには、『深い学び』が、

不可欠なゆえんです。すなわち、『深い学び』が あってはじめて、その授業は望ましいものとなり、

アクティブ・ラーニングの条件を満たすと言えま す。」と述べている。主体的学び、対話的な学び、

深い学びのうち、特に深い学びがポイントとなる のである。

 一方、授業UDはどうだろう。授業UD研究で 評価される授業は、必ずと言ってよいほど、「焦 点化」「共有化」「視覚化」などが、教科の本質に つながっていくように考えられている。授業UD そのものは授業設計なので目的にはなりえない。

あくまで目的は、すべての子どもが楽しく参加・

理解し「教科の本質」に迫ることであり、授業U Dはそのための方法である。「深い学び」の実現 という点において、教科の本質を見据えた授業設 計を希求する授業UD研究と、新学習指導要領が 志向する方向は軌を一にしている。よって、これ から教師が取り組んでいかなければならない授業 改善の有効な方法の一つとして授業UD研究をと らえることは、校内研修の正攻法となりうる。こ れも小学校現場で授業UD研究に取り組むよさ・

可能性の一つである。

 同時に、学校全体で授業UD研究に取り組むこ とで、教師が授業を分析する視点を共有すること が可能となり、学校全体の授業力があがることに なる。多くの教師の授業が安定することが学校全 体の安定につながる。これもまた、授業UD研究 に取り組むよさである。

4.小学校現場における授業UD研究の課題     

 小学校現場で授業UD研究が広がる今だからこ そ、注意したいこともある。

一つ目。何のための授業UDかを再確認すること。

目的は、すべての子どもが教科の本質に楽しみな がらたどり着くことである。授業UDのブームに のって、意味のない視覚化をしたり、必要のない 場面で共有化を図ったりすることはない。UD風 の授業は、目的を見失っている。本末転倒である。

 二つ目。先のモデル図を更新すること。授業U D研究は始まったばかりである。現時点でもモデ ル図の信頼性は高いが、全国各地の実践を通じて、

より洗練、精緻化していくことが大切である。

 今こそ、子どもの困難さと可能性、教科の本質 から目をそらさない「誠実な授業UD研究」が求 められる。

【文献】

ベネッセ教育総合研究所(

2015

):第5回学習基本調査.

澤井陽介(

2017

):授業の見方.東洋館出版社.

参照

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