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空間スケール

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Academic year: 2021

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ディビジョン番号 ディビジョン名

理論化学・情報化学・計算化学

大項目 3. 計算化学 中項目 3-4. 材料設計

小項目 3-4-2. 高分子材料構造

概要(200字以内)

新たな物性や機能を持つ高分子材料を設計す るには,構造式に注目するだけでは不十分で あり,結晶化度や相分離構造といった高次構 造まで把握する必要がある。しかし,現状の 分子シミュレーションは時間・空間スケール の点で,粗視化シミュレーションは現実の材 料との対応の点で不十分であり,分子描像に 基礎を置く統合シミュレーションの発展が望 まれる。長期的には,分子シミュレーション の大規模化や,力場の精度向上を期待する。

現状と最前線

高分子材料の機能や物性を原子レベルで理解し 新たな材料の設計に繋げる方法論として,分子 シミュレーションが広く活用されている。[1]

現状では,完全な結晶もしくは非晶状態であれ ば,力場パラメータの工夫により種々の物性を 精度良く再現できる水準に達している。ところ が現実の高分子材料は,結晶・非晶およびこれ らの中間状態が複雑に入り組んでおり,構造式 から予想するよりも遙かに複雑な高次構造が材 料の物性に大きく影響している。

右図は,分子動力学シミュレーションによって 高分子電解質(Nafion®)ゲルのナノ相分離構 造を再現した結果である。電解質中の低分子や イオンの透過機構を解明し,より高機能な高分 子電解質を設計するためには,ナノ相分離とい う高次構造に関する情報が不可欠であった。

50.0Å 50.0Å F2

C F

C

O

F2C F

C O

CF3

F2 C

F2 C S O3

11 6

主鎖(疎水性)

親水基

高分子材料の構造式と高次構造の例

(Nafion®構造式とゲルの相分離構造)

空間スケール

時間スケール

粗視化シミュ レーション

①分子的描像による 粗視化描像の意味付け

分子シミュ

レーション ②適用

スケールの拡大

(2)

ところで,高分子材料の高次構造予測に分子シミュレーションを適用するには,現状では時 間スケールと空間スケールの限界がある。高分子の緩和は非常に遅く,平衡構造に達するの にミリ秒以上の時間を要するケースは珍しくない。数十 nm サイズの結晶や相分離構造の形成 を原子レベルの分子シミュレーションで扱うのは,計算コストの面で非現実的である。

これに対して,より長時間・大規模な系を扱う手法として,密度汎関数理論や散逸粒子動力 学法といった物理的モデルに基づく粗視化シミュレーション手法が提唱されている。日本で は OCTA[2]の一部として入手可能であり,最近では利用者が増えていると思われる。これらの 手法では,分子的描像は大胆に単純化されたパラメータに繰り込まれ,構造式レベルの情報 は失われている。そのため,モデル系の定性的な理解には非常に強力な手法であるが,現実 の材料との対応が見えにくく,シミュレーションの成果を分子設計に活用するのが難しい。

そこで,高分子材料の高次構造予測にあたっては,粗視化シミュレーションの簡明な描像 を構造式レベルの詳細な分子的描像によって基礎づける,統合シミュレーション手法の発展 が強く望まれる。さらには,長期的には全原子シミュレーションの適用範囲が拡大され,高 分子材料の構造・物性・機能の全てについて分子的描像のままの取り扱いが可能になること を期待したい。また,初期構造に依存せず確実に平衡構造を得るためには,多次元自由エネ ルギー面上の極小点を効率よく探索するアルゴリズムの開発も必要であろう。

一方,分子シミュレーションの計算精度向上のためには,力場パラメータの改良が不可欠 である。これには2つの方向性が考えられる。1つは,古典的ポテンシャル関数の範囲内で 関数形やパラメータを工夫して改良を進める方法である。もう1つは,力場を量子力学的に 計算する方法であり,様々な第一原理MD法や量子/古典ハイブリッド法が提案されている。

大規模な系を量子力学的に計算する手法として,現在の主流は密度汎関数理論(DFT)である が,弱い分子間相互作用の記述に難があり,単純に古典力場を DFT で置き換えるだけでは精度 の向上は望めない。分子間相互作用の記述に重点を置いた DFT の発展が望まれる。

[1] 岡崎進『コンピュータシミュレーションの基礎』(化学同人,2000)など [2] ソフトマテリアル統合シミュレータ OCTA(http://octa.jp/)

将来予測と方向性

・5年後までに解決・実現が望まれる課題

分子シミュレーションと粗視化シミュレーションとの統合

多次元自由エネルギー面上の極小点を効率よく探索するアルゴリズムの開発

・10年後までに解決・実現が望まれる課題

大規模かつ長時間の分子シミュレーションが可能な環境(ハード/ソフト)の実現 大規模系について弱い分子間相互作用の正確な記述が可能な第一原理計算手法の開発 キーワード

分子シミュレーション,粗視化シミュレーション,マルチスケール・モデリング,

高分子材料,分子間相互作用

(執筆者: 茂本 勇 )

参照

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