30歳以上の女性における体脂肪率(水中体重法)と 肥満度などとの関係
よ ユ
西山久美子 勝野久美子
き田原 靖昭 綱分 憲明
浦田 秀子 江藤 宏美
森 俊介 大塚健作
要旨30歳以上の一般市民女性35名において,水中体重法による体脂肪率と日 常診療で用いられている各種肥満の判定法との関係にっき検討した.体脂肪率と各種 肥満判定法との間には,すべて有意の正の相関が認められた.体脂肪率30%以上を 肥満とすると,35名中15名が肥満であった.各種肥満判定法によるこれら15名の 肥満者の検出率は,R I58.3%,BM I26.7%,皮脂厚2点法60%,Broca法40%.
桂法73.3%,加藤法53.3%で,桂法がも』っとも高かったが,他方非肥満者を肥満と する危険率も桂法がもっとも高かった.
長大医短紀要4:81−84,1990
Key words:体脂肪率,体格指数,皮脂厚和,肥満度,中高年女性
はじめに
日常診療・検診などにおける肥満の判定は,
身長。体重などから肥満度や体格指数を算出 したり,あるいは皮下脂肪厚などにより判定 することが多い.しかし,これらの方法は必 ずしも体脂肪量を反映したものとはいいがた い.一方わが国における体脂肪量に関する研 究は,若年者やスポーッ選手などを対象にし たものが多く,中高年者に関する報告はまだ 少ないと思われる.今回われわれは,30歳
から一5(}歳代の女性において水中体重法によ る体脂肪量を測定する機会を得たので,日常 用いられている肥満判定法との関係を検討し
た成績を報告する.
対象および方法
対象は,長崎市在住の一般市民女性で,水 中体重の測定希望があった33歳から58歳の 女性35名である.水中体重は,長崎大学教 養部保健体育実験室において,中にブランコ 様の台座がついたステンレスタンクにて測定
した.この測定値より身体密度を算出し,
Bro2ekらの改良式1),%Fat=(4.570/身体 密度一4,142)×100に代入し体脂肪率を求め た.さらに,身長,体重,身体周囲径などの 計測および栄研式皮脂厚計を用いて皮下脂肪 厚(以下皮脂厚)を測定した.なお皮脂厚は,
上腕部,肩甲骨下部,腹部,側腹部,胸部,
大腿部,膝部,腋下部の8部位を測定し,す
長崎大学医療技術短期大学部看護学科 長崎県立女子短期大学体育科
長崎大学教養部保健体育学教室 琴海町立病院
一81一
西山久美子他
べて共同研究者のY.Tが実施した.
日常用いられている肥満判定法として,皮 脂厚和では2点法(上腕部+肩甲骨下部,以 下SK2)を,体格指数はRohrer指数(以 下RI)とBodymassindex(以下BMI),
肥満度としてはBroca法,桂法。加藤法を
用いた.以下にその式を示す.
体重(㎏)
R1=・ ×107 身長3(㎝)
体重(㎏)
BMI=・ ×104
身長2(m)
体重
Broca法= ×100 身長一100 体重
桂法= ×100 (身長一100)×0.9 体重
加藤法= ×100 (身長一50)×0.5
体脂肪による肥満の判定は,%Fat30%以 上を肥満(以下%Fat肥満),他を非肥満
(以下%Fat非肥満)とし,その他の肥満判 定法の墓準はR亘は160以上,βM Iは25 以上,S E2は45膿以上,3種の肥満度は
いずれも肥満度110%以上を肥満とした2).
表1体脂肪率と皮脂厚各部位・
肥満度・体格指数・皮脂厚和の相関
結果
1)対象者の各測定値
対象者の年齢および各測定値の平均値(M
±:S D)は次のとおりである.年齢は46.8
±7.1歳,体脂肪率は28.4±5.8%,肥満度は 監oca法99.6±11,6%,桂法110.6±12.9%,
加藤法102.9±10.5%,体格指数はR I146.2
±17.6,βM122.5±2.4,皮脂厚和S K:2 40.5±11.4㎜であった.
2)体脂肪率と各種肥満判定法との相関関係 a)体脂肪率と皮脂厚との相関
皮脂厚8部位個々の値と体脂肪率との問に は,胸部,大腿部,膝部を除く5部位で有意
項 目 相関係数
皮 脂 厚
上腕部 0.515縮
肩甲骨下部 O.441辮
腹 部 0。605継
側腹部 0。573購
胸 部 0,312
大腿部 0,295
膝 部 O,204
腋下 部 0,514繍
肥 満 度
Broca 法 0。621継
桂 法 0.621辮
加 藤 法 O、514態
体格指数 Rohrer指数 O.639縮
BodyκassInde其 0,592**
皮脂厚和(2点法) 0,515継
縮P<O.01 の正の相関が得られた(表1).中でも腹部,
側腹部との相関が高かった.
b)体脂肪率と各種肥満判定法との相関 Broca法,桂法,加藤法による肥満度,R 1,BM Iによる体格指数それにSK2と体 脂肪率との問には,いずれも有意の正の相関 が得られた(表1).相関係数はR Iが0.639 ともっとも高く,っいでBroca法と桂法の
0.621,以下,BM I O.592,S麗2 0.515,
加藤法の0.514の順であった,
3)体脂肪率による肥満判定と他の各種肥満 判定法との比較
次に%Fat肥満や%Fat非肥満が各種肥満 判定法でどのように判定されるかを検討した,
なお,%Fat30%以上の者すなわち%Fat肥 満者は35名中15名であった.
一82一
30才以上の女性における体脂肪率(水中体重法)と肥満度などとの関係
a)体格指数
R I160以上,BM I25以上を肥満とし,
図1にこれらの体格指数と体脂肪率との関係 を示す.(図中シャドウ部分は%Fat肥満の
範囲)
まずR Iによる肥満者は9名で,このうち
%:Fat肥満は8名であった.すなわちR Iに よると,%:Fat肥満者15名の中8名<53.3
%)および%Fat非肥満者20名中1名(5%)
が肥満と判定された.
次に,BM Iによる肥満者は6名で,この うち%Fat肥満が4名であった.すなわちB M Iでは%Fat肥満者15名中わずか4名
(26.7%)しか肥満と判定されなかった.
b)皮脂厚和(S Kl2)
S K245㎜以上を示した肥満者は13名 であり,そのうち%Fat肥満は9名(%Fat 肥満者の60%)で,一方%Fat非肥満4名
130 120 110
Rohrer 指数
80 :…1…嚢…………i…縫…………1
70 嚢萎難il
o 蒙1
60
●
:;澱;i:;;
●
50 o ●● 難
o ●
40 ■
6◎
o 譲…ii鑓iii
30 8
20
●o o●
董iiiii
o
o
15
20 25 30 3540(%
∫ ∫ 5 ∫ 5
以
19
24 29 34 39上
体脂肪率
Body Mass hdex
o
蒙iiii
ii羅iミiii iii灘iiiii
2 o o
羅
●
●o
嚢ミiiき
9 8¢︐ 遮iiiiきi=iii葉iiiiii
o■
o 藩緊
2D o
o ●
● 郵iミii
辱
15
20 25 30 3540(シ
∫ ∫ ∫ ∫ ∫
19 24 29 34 39
以 上
体脂肪率
図1 体格指数,皮脂厚和と体脂肪率
(mm)
皮脂厚和
m)
70 慧簿
襲ii蓑
60 ■
● 鰹
50
●
■
塗馨■灘、,
40 oo o●
30 o
鷺o 8
繋ii…灘鰻
●
●
20 §i{ii
β
o
o
15 20 25 30 35 4σ(
∫ ∫ ∫ ∫ ∫
以 19
24 29 34 39よ
体脂肪率
肥
(%)
オ両 薯oo
度9
Broca法
40 30
20i…萎薫iiiiii
憲嚢…義……薦…
鐸 璽
10
o 鼠 :i:iii駿iiiiミ
oo 露蓼9
oo包
馨鰻灘
翻
980 ooo 菩o ・ン_
磯
70
15
∫19 20
〜
24 25
∫
29 30 35
∫ ∫
34 39
40(舞
以上
体脂肪率
肥
(%)
3曲両
100
度
桂 法
40 30
o liii・霧
驚i
i難襲
20 oo● 囎■り
奮iiii、
10
o
り,
噂■ 縫
oo 9 i難議
go
o︐ 零o
趨
■
80
7015
519 20 ∫24 25
∫
29 30
∫
34 35
∫
39 40
以上
(
体脂肪率
図2 肥満度と体脂肪率
(%)
130
120肥
れの
満1。。
度go
加 藤 法
==鱗解
40 30 20
o
liii…嚢iii……婁……聾 ぢiミ§
10
o
脅
雛︐
00
◎ooo襲Φo
諺i 、 験験顛 go 動 轟
@9 i懸
80 70
‡iミ灘i
15
519 20 ∫24 25
〜
29
30∫
34
35
∫
39
40以上
(
体脂肪率
一83一
西山久美子他
(%Fat非肥満者の20%)が肥満と判定され
た(図1).
c)肥満度
次にBroca法,桂法,加藤法との関係にっ いて図2に示した.図1と同様シャドウ部分 は%Fat肥満の範囲である.
肥満度110以上の肥満者は,Broca法によ ると7名で,同様に桂法における肥満は19 名,加藤法では11名であった.
っいでこれら3方法により判定された肥満 のうち,%Fat肥満者がどの程度含まれるか をみると,3方法で大きな差異がみられた.
即ちBroca法による肥満者7名中6名が%
Fat肥満者(%Fat肥満者の40%)であり,
1名が%Fat非肥満者(%:Fat非肥満者の5
%)であった.また桂法による肥満者19名 のうち,%:Fat肥満者は11名(%Fat肥満 者の73.3%)であったが,一方%Fat非肥満 者は8名(%Fat非肥満者の40%)で,加 藤法による肥満者11名中,%Fat肥満は8 名(%Fat肥満者の53.3%),%Fat非肥満 者は3名(%Fat非肥満者の15%)であっ
た。
考 察
体脂肪量の測定法では水中体重法がもっと も標準的な方法であるが3),日常診療におけ る応用は現実的とはいえない.したがって,
広く用いられている便宜的な肥満判定法と体 脂肪量との関係を検討しておくことは意義が あると考えられる.
今回30歳以上の女性にっいて体脂肪量と 各種肥満判定法の関係にっいて検討した結果 いずれも0.5から0.6程度の正の相関が得ら れた.しかし,個々の例でみると必ずしも体 脂肪量を反映しているとはいいがたく,また 各種肥満判定法により,%Fat肥満者の検出 率にもかなりの差があることが示された.
体脂肪率との相関については,長嶺による
と皮下脂肪厚が体格指数より高いとしている がり,今回の成績ではわずかながら,むしろ 体格指数の方が高いという結果であった.ま た,Broca法,桂法,加藤法による肥満判定 法との関係にっいて,%Fat肥満者の検出率 はBroca法40%,桂法73.3%,加藤法53,3
%であったが,一方%Fat非肥満者を肥満と される率では,Broca法5%,桂法40%,
加藤法15%で,桂法は非肥満者を肥満とす る率も高かった.すなわち%Fat肥満者の検 出率が高い方法は,非肥満者を肥満とする危 険率も高く,今回の結果からいずれがもっと も体脂肪量をよく反映しているかについては 結論ずけることは出来なかった.なお肥満度 や体格指数は身長の影響を受けることが指摘 されており5》6),今後この点にっいても検討 を要するものと思われる.
本論文の要旨は第28回日本糖尿病学会九 州地方会において報告した.
参考文献
1.Bro2ek J,Grande F,AndersonJ.T,anα
KeysA:Densitometricanalysisofbody
composition:Revisio蹴of some quanti。
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6.北川薫:ローレル指数の検討一身体密度 及び相対成長式からの研究一.体育学研 究1674:19;41−45.
(1990年12月28日受理)
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