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キーワード:学部教育、レポート作成、構成、結論

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Academic year: 2021

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(1)

学部教育における日本語のレポート作成指導

―長崎大学全学日本語教育における教育実践―

夛田美有紀

キーワード:学部教育、レポート作成、構成、結論

1.はじめに-全学教育日本語における筆者の授業実践-

長崎大学では1、2年の学部留学生を対象とした日本語クラスを全学日本 語という名称で週に2コマ開講している。学部留学生はこの全学日本語を履 修した後は、 「日本語」を授業で学ぶ機会はなくなる。そのため、筆者が担当 する全学日本語の授業においては、大学で必要とされると思われるレポート 作成とグループ発表を行ってきた。具体的には1コマ目を新聞記事などの読 解、2コマ目をレポート作成の留意点の導入とレポート作成、翌週の1コマ 目を発表の留意点の導入とグループ分けと発表原稿の作成、2コマ目を発表 と質疑応答という流れで行ってきた。

レポートや発表原稿の作成を提示する際に参考とした4冊の教科書

注1

では、

いずれも、論構成について、序論・本論・結論の三段落に分ける、本論では 考察や主張を行うと説明されていた。そのため、本授業でも論構成は三つと し、意見を述べるレポートや発表を課すことにした。

長崎大学には、学部一年生を対象とした教養セミナーというものがある。

これは、大学での勉強に慣れるための橋渡し的な授業で、高校での受身的な 勉強から、大学での自分から課題を見つけて調べ、それを報告できるように なることを主な目的としている。学生向けガイドブックのレポートの書き方 についての説明の中にも、レポートを書く際には起承転結、序論-本論-結 論という組み立てをはっきりさせてから書く、本論では問題提起したことに 対して最終的な主張をするための根拠をあげ、最終的な結論を導くためにま とめていく、と書かれている。

教養セミナーは新入生全員が対象なので、一年生は全員、このレポートの

書き方を雛型とし、これから大学で課されるレポートをこなしていくと考え

(2)

られる。つまり、長崎大学で課せられる多くのレポートは自分の主張を述べ ることが求められているといえる。

本稿では担当授業で行ったレポート作成、発表原稿作成、グループ発表の 三種類のアウトプット活動の中で、レポート作成の指導法について考察を行 う。発表はグループでさせていたため、序論、本論、結論の書き手が異なる が、レポートは一人で最後まで書いてあるからである。

2.各期の授業の概要と学生のレポート 2.1 2007年前期まで

2005年前期から2007年前期までは新聞やインターネットからの記事を2種

類、それぞれA4サイズ1枚になるように修正したものを読ませ、内容の確認 をした。その後、レポートの書き方として『留学生のための日本語作文演習

(中上級用)―第5版―』 (宮原彬・守山惠子著、学内版)を中心に文レベル の問題点(て形接続ばかりにしない、呼応表現など)と段落レベルの問題点

(段落内は同じテーマでまとめる、段落間のつながりが分かるようにするな ど)を1項目ずつ取り上げた。レポートは読み物に関連したテーマで、かつ、

回を重ねるごとにレポートの体裁が整っていくよう、1回目は自分の経験に ついて説明し、問題点について考えさせるもの、2~4回目は賛成か反対か を述べ、理由を説明させるもの、5~7回目は問題または提案を一つか二つ 取り上げ、その問題点や提案について説明させるものを課した。1回目は序 論・本論・結論に分けて書くことと、それぞれの段落で何を書くかについて 確認した程度で書かせ、どの程度書けるかも見た。7回目は今までの学習の 総まとめとして学習項目を設けずに書かせた。レポートの評価はその授業で 説明したレポートを書くときの注意点に気をつけて書けているかどうかを基 準とし、文法的な間違いは意味が分からないほどでない限りは評価の対象と しなかった。

2006年まではこの方法である程度レポートが書けるようになったものの、

テーマによっては主張が述べられない、あるいは主張を的確に表現できてい

ないレポートもあった。学生が書いたレポートを見て、次の回で取り上げる

学習項目を決めていたため、学習項目では主張の仕方、論構成を考え、各段

落に盛り込むべき内容を中心に取り上げた。その結果、それなりに主張が述

べられ、論点が明確になったものが多かったが、結論部分が気になるものが

(3)

多かった。最終週に課したものでも、結論が結論らしくなく、収まりが悪い ものが目に付いたのである。これは毎回全体的な構成に留意させていたとは いえ、結論について重点的に取り上げなかったことが原因ではないかと考え た。

2007年前期の受講学生のうち、学部一年生注2

のレポートを、今までの授業

で気になっていた構成の習得の観点から見ると、序論・本論・結論に分ける ことはできていても、段落同士のつながり、特に結論と序論・本論とのつな がりが分かりにくいレポートが多かった。結論部分の問題を見ると、①本論 までに述べたことを繰り返す、②本論の続きのように別の提案や説明を述べ る、③一文あるいは二文と簡潔すぎる、④本論までに述べていないことでま とめる、⑤今後の展望が本論から飛躍している、⑥まとめのあとに余分な文 を入れている、の六種類に分けられた。

こうした問題は、学習項目で文レベルについては例文、練習ともに多く提 示できたのに比べ、段落間の関連はモデル文も練習も少なかったことが原因 ではないかと考えた。

2.2

2008年前期

2008年前期も今までと同様、新聞やインターネットからの記事を2種類使

うことにしたが、2007年前期の学生のレポートと2008年前期のプレースメン トテストの結果から、今まで1つにつきA4一枚程度の分量であった記事を2 つでA4サイズ1枚と減らし、レポート作成のための練習に時間をかけられる ようにした。レポート作成の提示に参考とするものも、構成の練習が多くで きるよう『大学で学ぶための日本語ライティング』 (佐々木瑞枝・細井和代・

藤尾喜代子著、ジャパンタイムズ)を中心にした。レポート課題は、記事の

内容と学習項目を考慮し、1回目は対策について説明させるもの、2回目は

自分の経験とその経験についての意見を述べさせるもの、3~7回目は問題

または提案を一つか二つ取り上げ、その問題点や提案について説明させるも

のにした。今までと異なり、1回目から書き方についての練習をした。7回

目は今までと同様、今まで学習したことの総まとめとして学習項目を設けず

に書かせた。レポートの評価も、今までと同様、その授業で説明したレポー

トを書くときの注意点に気をつけて書けているかを基準としたが、その基準

が学生に分かるよう、今まで習った項目と今回習った項目を評価項目の欄に

(4)

書き出した。文法的な間違いは今まで同様、意味が分からないほどでない限 りは評価の対象としなかった。

受講学生のうち、学部一年生のレポートを見ると、半数が今まで気になっ ていた結論の序論・本論との関連が明確になっていた。これは2007年のレポー トの結論部分に見られた、本論までに述べたことを繰り返す、一文あるいは 二文と簡潔すぎるという二つの問題について、1回目から口頭で繰り返し注 意してきたことも功を奏したと言える。残りの半数のレポートの結論部分の 問題は、①本論までに述べていないことでまとめる、②一文あるいは二文と 簡潔すぎる、③本論の続きのように提案や説明を書く、④今後の展望が飛躍 している、⑤主張が不明の5種類に分けられた。

結論を三文以上で書くように言ったにもかかわらず簡潔に書いたレポート があったのは残念であったが、数は少なかった。それ以外に見られた問題点 は前年にも見られた問題がほとんどである。

つまり、段落間の関連を明確にさせる練習をするだけでは、自分のレポー トに応用させにくかったと考えられる。結論部分で本論までとどう関連させ るのかについて個々のレポートで考えさせれば、こうした問題は解決できる のではないかと考えた。

2.3

2009年前期

論構成について個々のレポートで考えさせるために、レポートを書いた翌 週に返却し、コメントと自分の考察を加えて清書させる活動を入れることを 考えた。レポートだけでなく、発表原稿についても清書させる活動を入れた。

授業の流れは次の通りである。一週目はオリエンテーションとして1時間 目に読解とレポート作成、3時間目に発表準備と発表を行い、二週目から授 業に入った。二週目は読解、書き方、レポート下書き、三週目は発表の準備、

レポート清書、四週目は発表原稿の清書、発表を行った。これを四回繰り返 し、最終週は1時間目に読解、3時間目にレポート作成を行った。読解は2008 年度に使ったものから四つ選んで使用し、最終週の記事は1つにつきA4一枚 弱のものを2種類、新しく作った。

一度目のレポート(下書き段階のもの)は、文法的な間違いや段落間の関

連などについてコメントを書いて返却し、それをもとに清書した。コメント

は、それに従って書き直せば理想的なレポートになる、というものではなく、

(5)

コメントの間違いから文の作り方や構成を考え、自分で再構成できるような ものにした。特に構成や、文と文の関連性の明確化を意識させられるような コメントになるようにした。

レポートを見ると、一週目のレポートや二週目のレポートの下書きでは提 案だけで終わり、結論がなかったものが多かったが、三週目のレポート清書 である程度論構成が意識できたのか、次の記事についてのレポートの下書き では結論を作れているものが多かった。これ以降、論構成については結論の 書き方を中心にコメントを書くようにした結果、論構成についてのコメント は書かなくてもすむ学生が増えていったが、5回目に扱った年功序列と成果 主義についての記事についてのレポートは、本論で書いたことを結論で繰り 返したり、本論までに述べていないことを結論で述べたりするなど、構成に 乱れが出た。これは、取り上げた問題が、扱った記事の情報だけでは意見が 書きにくかったことが考えられる。

3.結論の書き方の指導のために

今後さらに学生が多様化することが考えられ、専門教育を日本語で受ける ようになる準備段階としての教養教育における日本語教育が重要になってい くと思われる。

また、2007年度のレポートにも2008年度のレポートにも見られた、本論ま でに述べていないことを書く、本論の続きのように提案や説明を書く、今後 の展望が飛躍している、の3種類の問題点は、今後の展望を結論で書こうと して現れた問題であろうと思われる。この問題を解決するには、今後の展望 を書かせる際、初めはある程度の枠を与え、どの程度なら展望になるのか、

それを超えると飛躍になるのだ、ということが分かるようにするとよいと思 われる。

気になったのは1回目で結論らしい結論が書けていたのに、2回目からは

結論がまとめられなくなった学生がいたことである。2007年度前期の1名の

学生は授業評価が低かったことから、動機付けの低さがレポートの完成度に

影響したと思われる。2008年度前期の1名の学生は自分の主張を日本語で正

確に表現すること事態が難しかったようで、読み物の内容が身近でなくなる

と考えをまとめて表現することが難しくなったようである。こうした学生へ

のケアもある程度は視野に入れるべきであろう。

(6)

留学生のレポートについては、文法よりも文章の構成が問題だと指摘する 指導教官が多かった(佐藤・仁科 1994) 、 「正しさ」と「構成」より「内容」

と「豊かさ」を重視する学部教員が多かった(坂井

2005)、

「文法的な誤用 があっても分かりやすいと判定されることがあるのに対して全体の構成がよ くなければ(中略)結果として分かりにくいと判定されるのではないだろう か」 (長谷川・堤

2007)という報告がある。2008年度の授業のように構成の

練習を多くすることにより、主張を肉付けしてレポートを作成させるのは今 後専門の授業でのレポートの評価を高くするのに効果的ではないかと思われ る。今までは結論に重点を置いた練習はしてこなかったのだが、 「物事にはけ じめやまとまりが大切なように(中略)文章でも書き終わりのくふうがたい せつになります。 」 (平井

1972 p.276)という指摘や、

「読者というものは文 章を読みおわったとき、その文章全体に対する評価を下します。 (中略)です から、文章の終わりの部分で読者に心地よい読後感を与えられるよう、筆者 としては全力を尽くす必要があります。 」 (石黒

2004 p.32)という指摘があ

るように、終わりの収まり方がよいと、レポートとしての印象がよいように 思うので、本論で自分の主張を明確に説明できる練習と平行して、結論でど うレポートを収めていくかということも意識をさせるようにしたほうがよい と考える。

このことから、学部留学生の教養段階におけるレポート作成の授業で論構 成を習得させる場合には、序論、本論、結論、の順に教えていくよりも最初 に各段落の概要、次に各段落の書き方、と各段落を少しずつ同時に提示して いくといいのではないかと思われる。

謝辞 本稿は2009年3月に行われた専門日本語教育学会研究集会において発 表したものをもとに、2009年4月からの授業を行い、まとめたものである。

研究集会においてコメント、意見を下さった方々に感謝したい。

1) 『論文ワークブック』浜田麻里・平尾得子・由井紀久子著 くろしお出版、

『留学生の日本語4論文作成編』アカデミック・ジャパニーズ研究会編著

アルク、『日本語ライティング』佐々木瑞枝・細井和代・藤尾喜代子著

ジャパンタイムズ、 『留学生のための論理的な文章の書き方』二通信子・

(7)

佐藤不二子 スリーエーネットワーク

2)全学日本語科目は学部1、2年生を対象としているが、受講するのは主 に1年生である。学部1年生は受講できる曜日が学部ごとに決められてい るが、学部2年生は自由に受講できる。こうした正規の学部学生に加え、

長崎大学で学部3年生を過ごす短期留学の学生も受講している。学部1年 生、学部2年生、短期留学生はそれぞれ日本語能力も背景も異なるため、

本授業を受講するターゲットとして設定されている学部1年生を考察の対 象としている。

資料

2009年前期に扱ったテーマとレポート課題

1回目

テーマ:大学における喫煙者の不満 レポート課題:

・完全分煙後、外で吸う学生が増えたということは、非喫煙者の健康が守ら れていないということだが、非喫煙者の健康を守るために、大学はどんな対 策をとればいいと思うか。

・喫煙者として、肩身の狭い思いをしないためにはどうすればいいと思うか。

・非喫煙者として、喫煙者の人権を無視しないためにはどんな対応をすれば いいと思うか。

2回目

テーマ:教会群暫定リスト入り レポート課題:

・生活の場が観光地になると、どんな問題があるか。問題を一つか二つあげ、

その対策について述べること。

・観光客のマナーを向上させるにはどうすればいいか。対策を一つか二つあ げ、方法について詳しく述べること。

・観光客が来ると観光地の周辺にお土産屋などが立ち並び、景観が悪くなる

可能性がある。景観を守るためにはどうすればいいか。提案は一つか二つあ

げ、方法について詳しく述べること。

(8)

3回目

テーマ:活気ある商店街と廃れる街 レポート課題:

・昔からある商店街に来る客を増やすためにどうしたらいいか。

・大型ショッピングセンターと商店街はどうすれば共存できるか。 (大型ショッ ピングセンターができると商店街は廃れるが、新しく別のショッピングセン ターができれば、前のショッピングセンターが廃れてしまう。このような負 の連鎖は止められないのか。)

・長崎を社会的弱者に優しい町にするにはどうすればいいか。

4回目

テーマ:コンビニ深夜規制 レポート課題:

・コンビニの深夜営業規制は今後全国に広まると思うか。広まった場合/広 まらなかった場合の問題はどう対処すればよいか。

・深夜営業をやめるなら、失職者を出してもかまわないか。失職者を出す場 合は失職者への手当てなどの、失職者を出さない場合は売り上げ減などの 対策をどうすればよいか。

・コンビニだけでなく、他の店も含めて深夜営業の規制をすべきか。深夜営 業をやめる/やめないことによって起こる問題はどう対処すればよいか。

5回目

テーマ:成果主義と年功序列 レポート課題:

・年功主義を評価する人が増えているが、それでも年功主義は廃止するべき か。廃止するなら、どのような給料体系にするのか、廃止しないなら、年 功主義の問題点をどのように解決するのか。

・成果主義が中年社員だけでなく新入社員にも支持されなくなっているが、

成果主義の評価を続けるべきか、やめるべきか。続けるなら、どのように

続けるか。続けないなら、どのように評価して給与の査定をすべきか。

(9)

6回目

テーマ:水ビジネスと環境 レポート課題:

・今後ペットボトル入りの飲料水が売れなくなる可能性がある。どんな飲料 水だったら売れると思うか。

・水の危機が起こらないよう、どうすればいいか。企業、市民、国など、立 場を一つ決めて述べること。

・市民として、安全と環境保護を両立させて生活するにはどうすればいいか。

・ペットボトル入りミネラルウォーターが環境保護に役立つにはどうすれば いいか。商品を売る企業か市の立場で述べること。

参考文献

石黒圭(2004)『よく分かる文章表現の技術 Ⅱ』明治書院

坂井恵美子(2005) 「学部教員による留学生の作文評価―総合的評価の分析―」

『大分大学留学生センター紀要』2号

pp.19-30

佐々木瑞枝・細井和代・藤尾喜代子(2006『大学で学ぶための日本語ライティ ング』ジャパンタイムズ

佐藤勢紀子・仁科浩美(1994「:留学生の専門日本語読解・作文に関するアン ケート調査」 『東北大学留学生センター紀要』第2号

pp.45-54

長崎大学 全学教育実施委員会、教養セミナー委員会、長崎大学大学教育機 能開発センター(2008) 『教養セミナーガイドラインブック’

08』

(学生に配 布するもの)

―(2008) 『教養セミナーガイドライン2008』 (教養セミナー担当教 員に配布するもの)

長谷川哲子・堤良一(2007「:大学教員による非母語話者作文に対する評価」

『第9回専門日本語教育学会研究討論会 発表要旨集』

pp.18-19

平井昌夫(1972) 『新版 文章を書く技術』現代教養文庫

宮原彬・守山惠子(2005) 『留学生のための日本語作文演習(中上級用)―第 5版―』長崎大学留学生センター

(留学生センター 講師)

参照

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