学部教育における日本語のレポート作成指導
―長崎大学全学日本語教育における教育実践―
夛田美有紀
キーワード:学部教育、レポート作成、構成、結論
1.はじめに-全学教育日本語における筆者の授業実践-
長崎大学では1、2年の学部留学生を対象とした日本語クラスを全学日本 語という名称で週に2コマ開講している。学部留学生はこの全学日本語を履 修した後は、 「日本語」を授業で学ぶ機会はなくなる。そのため、筆者が担当 する全学日本語の授業においては、大学で必要とされると思われるレポート 作成とグループ発表を行ってきた。具体的には1コマ目を新聞記事などの読 解、2コマ目をレポート作成の留意点の導入とレポート作成、翌週の1コマ 目を発表の留意点の導入とグループ分けと発表原稿の作成、2コマ目を発表 と質疑応答という流れで行ってきた。
レポートや発表原稿の作成を提示する際に参考とした4冊の教科書
注1では、
いずれも、論構成について、序論・本論・結論の三段落に分ける、本論では 考察や主張を行うと説明されていた。そのため、本授業でも論構成は三つと し、意見を述べるレポートや発表を課すことにした。
長崎大学には、学部一年生を対象とした教養セミナーというものがある。
これは、大学での勉強に慣れるための橋渡し的な授業で、高校での受身的な 勉強から、大学での自分から課題を見つけて調べ、それを報告できるように なることを主な目的としている。学生向けガイドブックのレポートの書き方 についての説明の中にも、レポートを書く際には起承転結、序論-本論-結 論という組み立てをはっきりさせてから書く、本論では問題提起したことに 対して最終的な主張をするための根拠をあげ、最終的な結論を導くためにま とめていく、と書かれている。
教養セミナーは新入生全員が対象なので、一年生は全員、このレポートの
書き方を雛型とし、これから大学で課されるレポートをこなしていくと考え
られる。つまり、長崎大学で課せられる多くのレポートは自分の主張を述べ ることが求められているといえる。
本稿では担当授業で行ったレポート作成、発表原稿作成、グループ発表の 三種類のアウトプット活動の中で、レポート作成の指導法について考察を行 う。発表はグループでさせていたため、序論、本論、結論の書き手が異なる が、レポートは一人で最後まで書いてあるからである。
2.各期の授業の概要と学生のレポート 2.1 2007年前期まで
2005年前期から2007年前期までは新聞やインターネットからの記事を2種
類、それぞれA4サイズ1枚になるように修正したものを読ませ、内容の確認 をした。その後、レポートの書き方として『留学生のための日本語作文演習
(中上級用)―第5版―』 (宮原彬・守山惠子著、学内版)を中心に文レベル の問題点(て形接続ばかりにしない、呼応表現など)と段落レベルの問題点
(段落内は同じテーマでまとめる、段落間のつながりが分かるようにするな ど)を1項目ずつ取り上げた。レポートは読み物に関連したテーマで、かつ、
回を重ねるごとにレポートの体裁が整っていくよう、1回目は自分の経験に ついて説明し、問題点について考えさせるもの、2~4回目は賛成か反対か を述べ、理由を説明させるもの、5~7回目は問題または提案を一つか二つ 取り上げ、その問題点や提案について説明させるものを課した。1回目は序 論・本論・結論に分けて書くことと、それぞれの段落で何を書くかについて 確認した程度で書かせ、どの程度書けるかも見た。7回目は今までの学習の 総まとめとして学習項目を設けずに書かせた。レポートの評価はその授業で 説明したレポートを書くときの注意点に気をつけて書けているかどうかを基 準とし、文法的な間違いは意味が分からないほどでない限りは評価の対象と しなかった。
2006年まではこの方法である程度レポートが書けるようになったものの、
テーマによっては主張が述べられない、あるいは主張を的確に表現できてい
ないレポートもあった。学生が書いたレポートを見て、次の回で取り上げる
学習項目を決めていたため、学習項目では主張の仕方、論構成を考え、各段
落に盛り込むべき内容を中心に取り上げた。その結果、それなりに主張が述
べられ、論点が明確になったものが多かったが、結論部分が気になるものが
多かった。最終週に課したものでも、結論が結論らしくなく、収まりが悪い ものが目に付いたのである。これは毎回全体的な構成に留意させていたとは いえ、結論について重点的に取り上げなかったことが原因ではないかと考え た。
2007年前期の受講学生のうち、学部一年生注2
のレポートを、今までの授業
で気になっていた構成の習得の観点から見ると、序論・本論・結論に分ける ことはできていても、段落同士のつながり、特に結論と序論・本論とのつな がりが分かりにくいレポートが多かった。結論部分の問題を見ると、①本論 までに述べたことを繰り返す、②本論の続きのように別の提案や説明を述べ る、③一文あるいは二文と簡潔すぎる、④本論までに述べていないことでま とめる、⑤今後の展望が本論から飛躍している、⑥まとめのあとに余分な文 を入れている、の六種類に分けられた。
こうした問題は、学習項目で文レベルについては例文、練習ともに多く提 示できたのに比べ、段落間の関連はモデル文も練習も少なかったことが原因 ではないかと考えた。
2.2
2008年前期2008年前期も今までと同様、新聞やインターネットからの記事を2種類使