長崎大学留学生センター紀要 第
14号
2006年学部留学生のためのレポート作成指導のために
‑ 2005
年後期全学 日本語 Ⅰ Ⅰ Ⅰ のデー タか ら ‑
41
多田 美有紀
キーワー ド :学部留学生、書 く技能、 レポー ト作成
1
.は じめに
学部留学生 は入学後、 日本人 と同 じように講義 を受 け、研究室 に入 り、卒業 論文 を書 いて卒業す る
。それだけの 日本語能力があると判断 されて入学 してい るのであるが、専門教育 の理解 を助 けるためにも、入学後 も日本語教育 は必要 であろう。三牧
(1995 p.19)も 「 講義 をはじめレポー ト・ 試験 ・ゼ ミでの発表 などは通常 日本語で行われるため、専門 日本語注
1のニーズは非常 に高い」と述べ ている
。しか し、一年次の 日本語の授業 は他学部 の留学生 との混成 クラスであ ることが多い。留学生 は学部 ごとに異 なる日本語基準で入学す るため、同 じ一 年生で も留学生間で 日本語 レベルに差があ り、 また会話が非常 に長 けていて も 書かせ る と意図が通 じない、 とい うように留学生一人ひ とりの 日本語の四技能
( 読 む、書 く、聞 く、話 す)の能力 にも差がみ られ ることがある。 こうした学部 留学生 を一つのクラスで教 える場合、何 をどう取 り上 げるのか、 どこまで教 え
るのかを考 えるのは難 しい。
筆者 は、四技能 の中で も特 に書 く能力の向上 に関心 を持 ってきた。一般教養 科 目や専門科 目の授業 には、 レポー トを課 し、それ によ り成績評価 をす るもの があるか らである。 また、卒業論文が必修の場合 は、卒業論文 を書 き上 げなけ れば卒業で きない。金森 ( 2 005) は上級 レベルの 日本語学習者が レポー トを書
く際の問題点 として、① レポー トに求 め られている ものが分か らないため、 レ ポー トとしての基準 を満た していない、②文章 としてまとまりに欠 けるため、
文法的 には間違 っていないのに分か りに くい文章 になる、( 卦文体 の差 を意識 し
ないため、 レポー トらし くない文章 になる、④単純 な助詞の誤用や漢字の間違
い、 また は呼応の不備や文のね じれが ある、の四点 を挙 げている
。これ らの問
題点 は、筆者 の担当 してきた学部留学生 について も当てはまる点であ り、 こう
した問題点 を補強 してい くことが書 く技能の向上 につなが ると言 える。
本稿では
2005年後期 に筆者が担当 した長崎大学全学教育 日本語
ⅠⅠ Ⅰ で学生が書 いた レポー トをもとに、学部留学生 に対す るレポー ト指導 について考 えたい。
2
.全学教育 日本語の授業 と受講学生の概要
授業 は
1日
2コマ (
1校時 と
4校時)行われ、
1学期 に
15週
(15週 目は試験 冒) ある。
1コマは
90分である
。一年生の学部留学生 に向 けて開講 されている 科 目であ り、曜 日によって受講で きる学部が決 まっている
。しか し、二年生の 学部留学生、大学交換留学生、英語 による短期 プログラム学生等 については制 約がな く、 どの授業 も受講可能である。
学部留学生 は一般入試、私費外国人留学生特別選抜 どち らかの試験で入学 し ている。一般入試 は大学入試セ ンター試験 と個別学力検査な どを、私費外国人 留学生特別選抜 は日本留学試験 と個別学力検査 な どを受 ける。
3
.本授業の概要
本授業 は学部留学生 ( 以下、学生)が今後大学で勉強す るのに必要 と思われ るレポー ト作成、発表の能力 を向上 させ ることを目的 としている
。そのために、
日本で今話題 となってい る出来事で学生が意見 を述べ られそうな ものを新聞や インターネ ッ トの記事か ら選 び、 レポー ト作成 と発表の きっか け とする。記事 は学生が さまざまな視点か ら考 え、意見が まとめ られ るよう、一回の授業で二 種類取 り上 げた。二種類 は同 じテーマの もので賛成 の意見 と反対 の意見、 とい
うように、一つの出来事 を別 の角度か ら見ているものを選 んだ。 どちらも
A4で 1枚程度 の分量 とし、多い場合 は少 し修正 を加 えて一枚 に収 めた。二種類 の 記事で分量が少ない場合 は三種類 にした。
読解 はレポー ト作成や発表 に必要な時間 を考慮 し、二週 に一度行 った。記事 には普段 あ まり使わない語嚢や表現があるが、二週 同 じテーマを扱 うことによ
り、主要な語嚢や表現 を理解 し、考 えを深め、意見 をまとめやす くなると考 え たか らで もある
。扱 うテーマは回を重ね るにつれて、 より身近でない もの、抽 象的な ものを取 り上 げていき、内容的 にも難易度別 になるように配慮 した。 ま た
、2005年後期 は受講生の多 くが経済学部の学生であったので、経済的な切 り 口で扱 えそ うなテーマを
2回の うち
1回は取 り上 げた。
レポー トや発表の課題 は 2つ以上出 し、学生が書 きやすい、発表 しやすい と
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2006年
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以上 の点 に留意 し、次のような流れで授業 を行 った。
1
週 目 :オ リエ ンテーシ ョン。二週 目か ら行 う授業 を
1コマで
2コマ分行 い、
来週 か らの授業 内容 の流れ を把握す る。
1
校時・ ・ ・ ‑( 丑読解 ( 約
30分)、内容 の確認 と内容 についての質疑応答 ( 参レポー トの書 き方の説明 ( 約20分)、 レポー ト作成 4 校時‑‑( 彰発表方法の説明 ( 約20 分)、 グループ分 け、発表準備
②発表
2
週 目 :
1校時‑‑読解 ( 約
1時間)、内容 の確認 と内容 についての質疑応答 4 校時‑‑レポー トの書 き方の説明 と練習 ( 約
30分)、 レポー ト作成
3週 目 :
1校時・ ‑‑発表方法の説明 と練習 ( 約20 分)、グループ分 け、発表準備
4
校時・ ‑‑発表
4
週 目
〜13 週 目は
2週 目と
3週 目を繰 り返す。
14
週 目 :
1校時・ ‑‑読解 ( 約
1時間)、内容 の確認 と内容 についての質疑応答
4校時‑‑レポー トの書 き方の説明 と練習 ( 約
30分)、 レポー ト作成、
授業評価
偶数遇 の
4校時 はレポー トの書 き方 を説明す る前 に二週間前 に書いた レポー トを返却 し、 フィー ドバ ックを行 った。 レポー ト作成 の留意点 を説明 し、簡単 な練習 をした後、 レポー ト作成 をす るのであるが、 レポー ト用紙 にはレポー ト のアウ トライ ンを書 く欄 を設 け、論構成 に留意で きるようにした。アウ トライ
ンは評価 の対象 としなかったため、書 いていない学生 もいたが、アウ トライ ン を書いたほうが レポー トを書 きやす くなると何度 も言 ったので、大半の学生 は 書いていた。
奇数週
1校時の発表 の準備 の前 にも二週間前の発表の評価 を返却 した。 その
後 くじ引 きでグループ分 けを行 い、グループで発表課題選 び、発表のアウ トラ
イン決 め、発表原稿作成 を行わせた。発表時 は、他 のグループの発表 を聞 くよ
う、発表評価 シー トを書かせた。
5週 目までは評価 とコメン トを書いて もらっ
ていたが、数字 による評価 は難 しい ようだったので、
7週 目か らコメン トのみ
を書 く形式 に変 えた。
提 出 された レポー トや授業 で行 われた発表 の評価 は筆者 のみで行 い、 それ ら を成績 に反映 させ た。 レポー トも発表 も授業時 間内 に作成 、準備 を行 うた め、
内容 、書 き方、発表 の しかた な どを評価 の対 象 とした注2。ただ し、内容 の理解 が 困難 なほ ど文法 の間違 いが多 い場合 は評価 を下 げた。
各授業 で行 った こ とを以下 の表 に示 す。 なお、課題 は多 くの学 生が選 んだ も の とそ うで ない ものが あったが、選 んだ課題 に よって評価 が偏 る とい うことは なか った。「読解」欄 が空欄 になってい る ところは発 表 の週 で あ る。 日付 の下 に あ る 「〜 回 目」 は、 テーマ を扱 った回数 で あ る。
表
1 2005年後期全学 日本語
ⅠⅠⅠ(夢 田) 注
3内容月 日 読
解
学習項 目課 題
10月 衝動買いを誘 ・普通体で書 く (D衝動買いの経験 3日
1回目 導する ・です .ます体 (②母国 と日本の商品の売 り方の違い彰今売 られている商品であまり売れてい で発表する ない もの、 もつと売れた らいい と思つ
・難 しい言葉へ ている商品を売 り込む
の配慮方法 ③衝動買いをしてよかつた例 とその理由②衝動買いをさせ るための工夫で効果的でない と思った ことと改善の提案 10月
・睡眠覚醒 リ
・話 し言葉 と書 (∋自分の生活で不健康な点 と今後の対策127回目日 ・バーチャル
ズム障害
だけじゃない ・長文 を書 く時の注意点き言葉の違い (塾電話 とメールの使い分 け とその理由 10月 ・グループ作業 (彰子 どもの頃か らインターネッ トを使わ 24日 の しかた せ るべ きかo理由 と長所 .短所 も説明o・発表者が変わ (参体 を壊す可能性がある趣味の長所 と短 るときの注意 所oそのような趣味 と健康 を両立 させ
点 るための提案
10月 ・揺れる成果 ・似た表現の使 ①物 を売 るのが 目的の企業での中年社員 31日
主義
い分 け の評価方法 とその理由3回目 ・社員の発明 ・各段落で書 く ②アルバイ トの能力給の評価方法 とその
の評価 こと 理由
11月 ・引用の し方 (丑年功序列の長所 と短所o企業 にこの制 7日 ・分か りやすい 度 は必要かo
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・ 「 脱 ニー ト」 ・接続方法 の使 ①若者 自立塾が短期 間で成果 をあげるた
14日 試練 い分 け めの提案
4
回 目
・'05「 選択」 ② ニー トを減 らすた めの企業 としての対
考 策 の提案
11月
・長文 の読 み方 ( 丑ニー トを防 ぐために学校 がすべ きプロ
21日 ( 区切 り) グラムや システムの提案
・段落 の分 け方 ( 卦新卒者 を優先 的 に採用す る日本 の シス テム につ いての意見
11月・踊 る 「 食」 ・文末表現、助 ( ∋サプ リメ ン トを上手 に とるた めの情報
28日 と 「 健康」 詞相 当句 の使 収集方法 と購入方法
5
回 目 ・サプリメント 情報 い分 け ②視聴者 をひ きつ ける食 べ物 の情報番組
12月・引用文 にある ( ∋店 の経営者 の立場 か ら、 テ レビや雑誌
5
日 難語 の扱 い方 に取 り上 げ られていないサプ リメ ン ト
・長文 の読 み方 や食 品 を売 り込 む方法
( 強調) ( 塾あふれ る情報 と上手 に付 き合 ってい く 方法
12月・所有 しない ・結論 の書 き方、①所有 しない社会で予想 され る問題点 と
12日 社会 引用の しかた その解決 方法
6
回 目 ・環境 負荷 の ・擬態語 に代 わ ( 塾耐用年数 が長 い もの を売 る場合 の企業 少 ない生活 る言葉、接続 の儲 け方
実現 表現 の使 い方 ③環境保護 のた めに今後 すべ き取 り組 み
・リサイクル の コス ト とその問題点
12月
・読 み方 に気 を ① まだ家電 が使 える状態 で も、毎年売 り
19日 つ けるための 出 され る環境 負荷 の少 ない家電製 品 に
原稿 の書 き方 ② レンタル した ほ うがいい もの、所有 し 買 い換 えた ほ うがいいか○ た ほ うか いい もの とその理 由
1月・暮 らし守れ ・結論 の書 き方 ( ∋重伝建地 区 は建物 が保存 され るだ けで
16日 ぬ重伝建制 ・事実 と意見 の いいか、住民 の立場 か行政 の立場 か ら
7
回 目 度 書 き分 け 意見 を述 べ るo
・幸 せ大 国 を ・分 か りやす い ②観光地で ない街 は町の発 展のために個
めざ して⑨ 説明の しかた ③長崎市 で 「 ④ 町並 み保存地 区で ある東 山手 .南 山手 性 を出すべ きか、チ ェー ン店 をふやす べ きかo 地 区を住 みやすい町 にす るた めの対策 な点 とその解決方法 社会的弱者」 に とって不便
1月
・今 までの まと ( ∋客が減 った駅前商店街が生 き残 るため
23日
め ( ③古い町並 みの維持 と住民 の快適 な生活 ④景観保護 と人 口増加 に対応す るために 参社会的弱者が不 自由な く買い物で きる 建 て るべ き住居 の提案 の提案 の両立 のための提案 ようにす るための提案
1月・惨劇 と向 き ・今 までの ま と ( 丑報道被害者 を作 らない報道ルールの提
30日合 う め 莱
8回目
・個人情報保 ②報道被害者 を守 る方法の提案
4
.受講学生 と分析対象学生
本授業 を受講 した学生 は
22名である。学生の内訳 は、学部学生 は
19名 ( 全員 中国)で、 うち、工学部
1年生 は
2名、工学部
3年生 は
1名、環境科学部
2午 生 は
2名、経済学部
1年生 は
14名である。学部交換留学生 は
4名 で、 うち、0
5年春来 日の教育学部学生 は
2名 (
2名 とも韓国) 、水産科学部 は
1名 ( 中国)、
05
年秋来 日の教育学部学生 は
1名 ( ベ トナム)である。英語 による短期 プログ ラム生 は
2名で、
2名 とも環境科学部所属の中国の学生である。
分析の対象 としたのは
8回課 した レポー トをすべて提出 した経済学部一年生
10名で、全員 中国人である。
9名 は一般入試 により入学 している。
5
. レポー ト評価の変化
5‑1評価 の変化
レポー トは
A+〜 C‑ と0の
10段階で評価 を行 った。表
2は回 ごとのその評 価 を得た留学生の数である。 その評価 を得た学生がいなかった ところは空欄 に
してある。
長崎大学留学生 セ ンター紀要 第14号 2006年
表
2回 ご との評価人数
47
1
回目
2回目
3回目
4回目
5回目
6回目
7回目
8回目
A+A 1 1 1 3
A‑ 2 4 4 1
B+
2 2 3 3 4 2B
6 5 1 2 3 1 1B‑
4 3 1 1 1 2C+
6 2 1C 1 2
C ‑ 1 3
2
回 目では
2名が
1回 目よ り高い評価 を得 ているが、
3回 目には
2回 目の最 低評価 で ある
B‑か らさらに低 いC+評価 を得た学生が
6名 と半数 を超 えた。
逆 に、
3回目には
2回 目で最 も高かった評価 よ りさ らに高いA ‑を得た学生が
2名 いた。 この ことか ら
3回 目は半数以上 の学生 には難 しか った と思われ る。
3
回 目か ら
5回 冒までは最低 の評価 は
C+、
B‑、
Bと上が ってい る
。最高 の評価 は
5回 目で下が ってい るものの、
3回 目か ら
5回 目まで はレポー トの作 成能力が向上 した学生が多 い と見ていいので はないだ ろうか。
6
回 目か ら
8回 目までの最高評価 は変わ らないが、最低評価 は
6回 目で
5回 目よ り低 い評価 である
C、
C一評価 の学生が 1名ずつ現れ る。 この最低評価 は 5回 目までに出現 していた最低評価 よ りも低 い評価 である
。この ことか ら
6回 目のレポー トも半数以上 の学生 には難 しか った もの と思われ る
。7
回 目では最低評価 は
C+に上が るが、
8回 目で は
6回 目 と同様 に
Aが最高 評価、
C‑が最低評価 となる。この
8回 目で は上位 グループ と下位 グループに 分かれ、 中間層がいな くなった ことが特徴的である。
評価 の変化 で特徴が見 られた 3 回 目、 6 回 目、 8 回 目について個々 に見 る
。3
回 目は
1、
2回 目が 自分 の体験 について説明す るだ けであった課題が、 自
分 のアイデア を出 し、理 由付 けをしなけれ ば論構成 が成 り立たない もの となっ
た。評価 が下が った学生 のレポー トはアイデアが書 いてあるだ けで理 由付 けが
されていない、 アルバ イ トで感 じた評価方法の不満 を説明す るだ けで、新 しい
評価方法 の提案が なされていない、 といった もので あった。 2回 目よ り評価 が
上 が った学生 は、 自分 の アルバ イ トの評価 でいい と思 った ところの説明や改善 点 の説明 な どを行 ってい る。 この こ とか ら、
2
回 目 までの単 な る説明 の レポー トか ら、理 由付 けの レポー トを書 くこ とへ と発展 させ る こ とに留意 で きたか ど うかで差 が 出た と言 える。6回 目は環境保護対 策 を1つだ け挙 げ、 それ を詳 し く説 明す る とい うように、
焦点 を一 つ に絞 って書 くのが課題 で あ った。 しか し、 レポー トの中 には対策 を 列挙 し、説 明が不足 してい る ものが多 く見 られた。 また、 アイデ アが なか った のか、 自分 の言 いた い こ とを 日本語 で表現 しづ らか ったのか、 イ ンターネ ッ ト な どで調 べ た情報 の引用 に終始 してい るレポー トもあった。八若 (2001)は韓 国人 日本語 中級学習者 の読解材料 か らの情報使 用 につ いて、読解能力上位群 は 読解材料 か ら有意 に多 くの情報 を使 い、読解能 力下位群 は上位群 に比 べ て読解 材料 の コピー を有意 に多 く使 い、言 いか えを少 な く使 うこ とを明 らか に した。
この こ とか ら、学生 が言 いた い こ とを読解材料 や 自分 で集 めて きた材料 をうま くレポー トに引用 で きるか どうかが この回の レポー トの出来 を左 右 した と言 え る。
8回 目で評価 が低 か った レポー トは(∋「報道 され る側 に立 って報 道すべ きだ」
とい った一般 的 な漠然 とした提案 しか されず、報道 され る側 に立 つ とは具体 的 に どうす る こ となのか についての説 明が不足 してい る、②知 らない人 か ら勧誘 の電話 がかか って きた、 とい った体験 を説 明 してい るのみで、 その体験 か ら情 報流 出対策 につ いて述 べ る際 に論 の飛躍 が あ る、③ 7回 目まで は段落 に分 けて
レポー トが書 けていた に も関わ らず、 この回だ けは段落分 けを していなか った、
の三種類 に分 け られた。扱 うテーマが具体 的 な ものか らよ り抽 象 的 な ものへ と 移 るにつれ、 「具体 的 な説 明」 が困難 になった学生 が多 か った と考 え られ る。
5‑2 ま とめ
今 回の レポー トで は経験 の説 明 とその理 由付 け、書 きた い ことの絞込 み、 ア イデアの具体 的 な説 明 とい った ことが で きてい るレポー トが いい評価 を得 てい た ことが分 か った。 この こ とか ら、課題 に応 じて適切 な レポー トが書 け るよ う にな るた め には、課題 に何 が求 め られ てい るのか を考 えさせ る時 間 を与 えた ほ うが よい よ うに思 われ る。今 回 はレポー ト作成 時間 を出来 るだ け長 くとるた め に、 レポー トの書 き方 の説 明 を30分以 内 に行 った後 、 す ぐに レポー ト作 成作業 に入 った。 しか し、数分 で も課題 の内容 を教室全体 で吟味 す る時 間が あれ ば、
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2006年
49 説明不足や理 由の欠如 といった レポー トが減 るので はないだ ろうか。 さらに今 回は特 に強制 をしなか った論構成作成 を出来 るだ け書かせれ ば、課題 で求 め ら れている ことと自分が書 いていることとの隔た りが意識 で きる と思われ る。 そ の上でなお、 テーマ による影響 を受 けやすい学生 には、 レポー ト返却後、論構 成 を再度考 えさせ、論構成 を意識 させ てい くべ きであろう。宮谷
(2001)が指 摘す るように、談話構造 に関す る知識 を書 く過程 と結 びつ けて指導す ることが 上級学習者 に も必要で、 レポー ト作成 には効果的で ある と考 えるか らである。今 回取 り上 げたテーマ は、学生 の評価が下が った3回 目は意図的 に難 し くし たが、 6回目は大 きいテーマ を扱 ったため、で きるだ け身近 に感 じられ る課題 にしたつ もりだった。 8回目 も、学生 の身近 な もの として感 じられ るような課 題 を出 したのだが、いずれ もこち らの意図 とは逆 に、難 しい課題 となった よう
だ。衣川
( 1 997)
が指摘 す るように課題 の指示文が レポー トの出来 を左右す る ので、課題 の提示方法 によ り配慮すれ ば、評価が下が る学生が少 なか ったので はないだ ろうか。 6回 目で扱 った環境 問題 の ようにテーマが広い ものは環境 問 題 の中で も大気汚染 に限定す るな ど、 ある程度絞 ったほ うが書 きやすい と思わ れた。6. おわ リに
今 回分析 の対象 とした学生 のレポー トは課題 の影響 とテーマの影響 によ り評 価が変化 していた。前回 と同 じような課題 (意見文、説明文 な ど) を与 えた回 は評価が上が ってい ることが多かったが、違 う種類 の課題 を与 えた ときは、書 くときに留意 すべ き点 を説明 していた に も関わ らず、前の課題 の書 き方 と同 じ 書 き方 をして評価が低 くなる傾 向が見 られた。課題 が前 回 と同 じ種類 の もので も、話題、テーマが理解 しに くい もの、理解で きて も課題 で求 め られてい る対 策やアイデアが浮かび に くい ものは評価が下が る傾 向 にあった。
この ことか ら、話題や課題 の取 り上 げ方 について再吟味す る必要が ある と思 われた。今回 は身近 な話題 か らよ り一般的 な話題 へ と移行 させたが、身近 な話 題 に限定 し、 その中で内容 を難 し くす る とい う方法 も考 え られ る。身近 なテー マか ら身近で ないテーマ に移行 させてい くのであれ ば、 その際の落差 を感 じさ せないためには どうす るべ きか、 また それ らを どう提示す るべ きか について再 考すべ きであ る。
また、 レポー ト作成 の前段階でテーマに興味 を持 ち、 レポー ト課題 の説明 を
十分 に読 み込 めれ ば、論構成 の評価 はある程度高い と思われた。従 って扱 った テーマについて知識 や興味が ない、意見が持 てない、 といった学生 をある程度 の レポー トが書 けるようにす るためには、記事 の内容 を的確 に把握 させ るだけ でな く、記事 の内容 についてのデ ィスカ ッシ ョンを活発 にさせ る必要がある。
他の学生 の意見 を聞 くことで 自分 の意見が持 て、 その意見 を深 め ることがで き ると考 えるか らである。
学生の レポー トには少 なか らず間違 いが ある。 その間違 いをすべて直す と、
学生 は受 け取 った ときに間違 いの多 さに驚 いて しまうだ ろう。中 には書 く気が な くなって しまう学生 もいるか もしれ ない。宮原 (1998)が指摘 しているよう に、「学習者 の意欲 との折 り合 いをつ け」、学期が終 わ るまで積極 的 に書 けるよ うに配慮 す ることが必要である。 その上で、上記 の点 に留意 させ、 よ りよいレ ポー トが書 けるようになれば と考 えてい る。
今 回分析 の対象 としたデータの数が11と少 なか ったため、今後 もデータを集 め、 よ り一般化す る必要がある。 さらに、集 めたデータについては今後質的分 析 を行 い、一人一人 の学生の レポー トを書 く能力 の変化 を分析 してい く予定で ある。 また、 レポー ト評価 を専門教員 な どに もして もらい、評価 の違 いをみる ことによ り、学部留学生 を対象 とした 日本語 の授業 で扱 うべ き項 目について多 角的 に考察 したい。
(付記) この研究 は教育研究推進支援経費 (学長裁量経費)の助成 を受 けた。
参考文献
金森 由実 (2005)「上級 レベルの作文指導一表現形式 を中心 とした指導の効果
‑」『大分大学留学生セ ンター紀要』2号 pp.1‑17
衣 川 隆生 (1997)「作 文 の課題 に よって どの よ うに文章産 出過程 が変 わ るか 一上級学習者 の場合‑」『筑波大学留学生セ ンター 日本語教育論集』第12
号
pp.89‑104
八若妻美子 (2001)「韓 国人 日本語学習者 の作文 にお ける読解材料 か らの情報 使用一読解能力 との関連 か ら‑」『世界 の 日本語教育』11国際交流基金 日 本語国際セ ンター pp.103‑114
三牧陽子
(1995)「『専門 日本語』教育‑ニーズ と位置づ け‑」『大 阪大学 における日本語教育』大阪大学留学生 セ ンター pp.18‑26
長崎大学留学生センター紀要 第
14号
2006年
51富谷敦美
(2001)「 談話構造分析 を活か した初級作文指導の可能性
」『 岐阜大学
留学生セ ンター紀要
』pp.17‑30宮原 彬 (
1998)「中級後期か ら上級段階 にある学習者 の作文 の問題点‑作文 教材作成 のための類型化 の試み‑
」『 長崎大学留学生セ ンター紀要』第
6号
pp.1
‑23注
1
「 専門 日本語
」を三牧
(1995 p.18)は 「 専門分野の研究活動 あるいは受講 に必要 とされ る」 と定義 している。
2
発表 の評価項 目は発表の仕方 を説明 した際 に学生 に示 した。評価項 目をグ ループ評価 と個人評価 に分 け、グループ評価 は 「 発表時間、序論 ・本論 ・ 結論 の明確 さ」 を、個人評価 は 「 話す速 さ、声 の大 きさ、言葉の聞 き取 り やす さ、 内容 の分か りやす さ、発表の工夫の程度
」を各
5点満点で評価 し
た 。
3